JP5455057B2 - 振動体の駆動方法、振動装置、該振動装置を有する駆動装置と塵埃除去装置と光学機器 - Google Patents

振動体の駆動方法、振動装置、該振動装置を有する駆動装置と塵埃除去装置と光学機器 Download PDF

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Description

本発明は、振動体の駆動方法と振動装置に関する。
特に、カメラ、ファクシミリ、スキャナー、プロジェクター、複写機、レーザビームプリンター、インクジェットプリンター、レンズ、双眼鏡、画像表示装置などの光学機器の塵埃除去装置に用いる振動装置、振動によって対象物を駆動させる駆動装置に関する。
近年の撮像装置においては、光学センサの分解能の向上とともに、使用中に光学系に付着するゴミが撮影画像に影響を及ぼすようになってきた。
特に、ビデオカメラ、スチルカメラの撮像素子の分解能はめざましく向上していることから、撮像素子に近く配置されている光学素子に塵埃が付着すると、画像欠陥を生じることになる。
例えば、赤外線カットフィルタ、光学ローパスフィルタなどに、外部からの埃や、内部の機械的な摺擦面で生ずる摩耗粉などが付着すると、撮像素子面での像のぼけが少ないため、撮影画像に埃の写り込みなどが生じる。
一方、コピー、ファクシミリ、スキャナーなどの撮像部は、ラインセンサをスキャン、またはラインセンサに近接させた原稿をスキャンすることによって平面原稿を読み取っている。
ここで、ラインセンサへの光線入射部に埃が付着すると、スキャン画像に写り込んでしまう。
また、原稿をスキャンする方式の機器、ファクシミリの読み取り部や、コピー機の自動原稿送り装置からの原稿を搬送中に読み取る、いわゆる流し読みの方式では、1つの埃が原稿送り方向へ連続する線画像となって写り込む。
これにより、画像の品質が大きく損ねられるという問題が生じる。
これらの塵埃を人手によって拭き取ることで画像品位は回復するが、使用中に付着した埃は撮影後に確認する他ない。
その間に撮影、スキャンした画像については塵埃の画像が映りこむため、ソフトウェアでの画像処理による修正が必要となるほか、複写機では同時に紙メディアに出力されてしまうため修正には多大な労力がかかる。
このような問題に対し、従来では、振動を付与することによってゴミを画像読み取り部から移動させる塵埃除去装置、及び、これを搭載した光学機器が提案されている(特許文献1参照)。
図11(a)は、特許文献1に開示された従来の塵埃除去装置の振動装置の構成を示す図である。
振動装置300は、受光した被写体像を電気信号に変換して画像データを作成する撮像素子301に設けられている。
振動装置300と撮像素子301とで、撮像素子301の表(おもて)面の空間が密封されている。
振動装置300は、矩形の板状を有する光学素子302、およびその両端部に接着によって固着された電気機械エネルギ変換素子である一対の圧電素子303a、303bから構成されている。
圧電素子303aには、交番電圧Vaが印加され、圧電素子303bには交番電圧Vbが印加されている。
図11(b)中のAは1次の面外曲げ振動の変位分布を表しており、Bは2次の面外曲げ振動の変位分布を表している。
縦軸は、振動装置300の撮像素子301が配置されている側と反対側の表面の面外方向の変位で、撮像素子301側の向きを負としている。横軸は、図示しているように振動装置300の長手方向の位置と対応している。
交番電圧Vaと交番電圧Vbは共に、1次の面外曲げ振動と2次の面外曲げ振動の共振現象に応答を有する周期の交番電圧となっていて、さらに交番電圧Vaと交番電圧Vbとは時間的な位相が異なっている。
これらによって、振動装置300には時間位相の異なる1次の面外曲げ振動と2次の面外曲げ振動の2つの振動が合成された振動が励起される。
図12、図13、図14、図15は2つの振動の時間的位相差が90°かつ振幅が1:1である場合の1次の面外曲げ振動、2次の面外曲げ振動、およびこれらの振動が重ね合わされた振動体の変位及び変位速度を、時間位相毎に示すグラフである。
縦軸は、変位及び変位速度で、撮像素子301側の向きを負としている。横軸は、図11(b)に示したのと同じく、振動装置300の長手方向の位置と対応している。
図中、波形Cは1次の面外曲げ振動の変位を示している。波形Dは2次の面外曲げ振動の変位を示している。
波形Eはこれら2つの振動が重ね合わされた振動装置300の変位を示す。
波形Gは波形Eの時間位相30°前の振動装置300の変位を示している。
波形Fは振動装置300における正規化された変位速度を示している。
塵埃除去装置を動作させた場合には、光学素子302の表面に付着した塵埃は、光学素子302が塵埃を面外(図12〜図15の縦軸の正の向き)に突き上げる時、光学素子302の表面の法線方向の力を受けて弾かれるように移動していく。
つまり、各時間位相で、変位速度を示す波形Fが正の値であるとき、塵埃は面外に突き上げられ、この時間位相における振動装置300の変位を示す波形Eの法線方向の力を受け、塵埃は移動していく。光学素子302を一定の角度(典型的には垂直)に立てた状態で上記変位を与えた場合には、光学素子302表面に付着している塵埃が光学素子302の表面の法線方向の力を受けて弾かれた場合には、一定の確率で再付着せずに、重力により落下する。
図12〜図15の矢印hは、塵埃が移動する向きを示している。
図12〜図15を見てみると、光学素子301の位置60から300において、振動の1周期の間では、横軸の負の向きに塵埃を移動させる振動の量より、正の向きに塵埃を移動させる振動の量がはるかに多い。
そのため、塵埃は横軸の正の向きに移動させることが可能になっている。
撮像素子301に対する光学素子302の有効部が位置60から位置300の範囲であった場合に、有効部から塵埃を除去することが可能となっている。
特開2008−207170号公報
しかしながら、上記した振動装置においては、以下に述べるような課題を有している。
特許文献1による振動装置では、振動装置300には多数の振動モードがあるために、所望の2つの振動モード以外にも不要な振動モードが混在する。
この不要な振動モードの混在によって、光学素子302表面の対象物を面外にたたき上げる時の面内方向の向きが逆方向になってしまう箇所や、面内方向の成分が小さい箇所が発生する。
箇所によっては、面内の移動方向が向き合って塵埃が移動できなくなったり、塵埃の付着力に対し移動力が小さくなったりして、塵埃を移動させる効率が低くなってしまう。
本発明は、上記課題に鑑み、振動によって塵埃を含む対象物を、効率よく所定の方向に移動させることが可能となる振動体の駆動方法、振動装置、該振動装置を有する駆動装置と塵埃除去装置と光学機器を提供することを目的とするものである。
本発明は、以下に述べる振動体の駆動方法と、以下に述べる構成の振動装置、該振動装置を有する駆動装置と塵埃除去装置と光学機器を提供するものである。本発明の振動体の駆動方法は、振動体に備えられた少なくとも2つの電気機械エネルギ変換素子に交番電圧を印加し、前記振動体に次数の異なる定在波を、所定の時間位相差を設けて発生させる振動体の駆動方法であって、
前記振動体は、第1の方向に並ぶ複数の節線を有する第1の振動モードと、
前記第1の方向に並ぶ節線の数が前記第1の振動モードと異なり、且つ前記第1の振動モードよりも固有振動数が高い第2の振動モードと、
固有振動数が、前記第1の振動モードと前記第2の振動モードの間に位置する第3の振動モードと、を有し、
前記第3の振動モードは、前記第1の振動モードまたは前記第2の振動モードと、前記第1の方向に並ぶ節線の数が同じであり、且つ前記第1の方向と交差する第2の方向に並ぶ節線の数が異なる振動モードであって、
前記第1の振動モードと前記第2の振動モードの内、前記第3の振動モードとの固有振動数の差が小さい振動モードに対する加振力を、固有振動数の差が大きい振動モードに対する加振力よりも大きくして駆動することを特徴とする。
また、本発明の振動体の振動装置は、少なくとも2つの電気機械エネルギ変換素子を有する振動体を備え、
前記電気機械エネルギ変換素子に交番電圧を印加し、前記振動体に次数の異なる定在波を、所定の時間位相差を設けて発生させる振動装置であって、
前記振動体は、第1の方向に並ぶ複数の節線を有する第1の振動モードと、
前記第1の方向に並ぶ節線の数が前記第1の振動モードと異なり、且つ前記第1の振動モードよりも固有振動数が高い第2の振動モードと、
固有振動数が、前記第1の振動モードと前記第2の振動モードの間に位置する第3の振動モードと、を有し、
前記第3の振動モードは、前記第1の振動モードまたは前記第2の振動モードと、前記第1の方向に並ぶ節線の数が同じであり、且つ前記第1の方向と交差する第2の方向に並ぶ節線の数が異なる振動モードを備え、
前記電気機械エネルギ変換素子の少なくとも一つは、複数に分割された分割電極を有し、
前記分割電極の分割位置が、
前記第1の振動モードと前記第2の振動モードの内、前記第3の振動モードとの固有振動数の差が大きい振動モードの節線の位置よりも、固有振動数の差が小さい振動モードの節線の位置に対して、より近くに設けられていることを特徴とする。
また、本発明の振動体の駆動装置は、上記した振動体の駆動方法を用いた振動装置または上記した本発明の振動装置を有し、
前記振動装置によって所定の方向に対象物を駆動することを特徴とする。
また、本発明の振動体の塵埃除去装置は、上記した振動体の駆動方法を用いた振動装置または上記した本発明の振動装置を有し、
前記振動装置によって所定の方向に塵埃を移動させて除去することを特徴とする。
また、本発明の振動体の光学機器は、上記した塵埃除去装置を有し、
前記塵埃除去装置によって光路上の塵埃を除去することを特徴とする。
本発明によれば、振動によって塵埃を含む対象物を、効率よく所定の方向に移動させることが可能となる振動体の駆動方法、振動装置、該振動装置を有する駆動装置、塵埃除去装置及び光学機器を実現することができる。
本発明の第1の実施形態における振動装置の図である。 図2(a)は本発明の第1の実施形態における第1の振動モードでの、光学素子の変形形状の斜視図であり、図2(b)は第2の振動モードでの、光学素子の変形形状の斜視図である。 本発明の第1の実施形態における第1の振動モード及び第2の振動モードの節線と各圧電素子の配置及び電極パターンの対応を示す図である。 従来技術での加振力の周波数と各振動モードの振動の大きさを表す図である。 図5(a−1)は本発明の第1の実施形態における第3の振動モードの光学素子の変形形状を示す斜視図、図5(a−2)は第1の方向Aから見た図である。また、図5(b−1)は本発明の第1の実施形態における第4の振動モードの光学素子の変形形状を示す斜視図、図5(b−2)は第1の方向Aから見た図である。 本発明の第1の実施形態における加振力の周波数と各振動モードの振動の大きさを表す図である。 本発明の第2の実施形態における第1の振動モード及び第2の振動モードの節線と各圧電素子の配置及び電極パターンの対応を示す図である。 図8(a)は従来技術での加振力の周波数と各振動モードの振動の大きさを表す図であり、図8(b)は本発明の第2の実施形態における加振力の周波数と各振動モードの振動の大きさを表す図である。 本発明の第3の実施形態における第1の振動モード及び第2の振動モードの節線と各圧電素子の配置及び電極パターンの対応を示す図である。 本発明の第4の実施形態における第1の振動モード及び第2の振動モードの節線と各圧電素子の配置及び電極パターンの対応を示す図である。 図11(a)は従来の振動装置の構成を示す図であり、図11(b)は従来の振動装置の振動体の面外1次曲げ振動と面外2次曲げ振動の変位分布と圧電素子の配置を示す図である。 従来の振動装置の、2つの振動の時間的位相差が90°である場合の面外1次曲げ振動、面外2次曲げ振動、およびこれらの振動が重ね合わされた振動体の変位を、時間位相毎に示すグラフである。 従来の振動装置の、2つの振動の時間的位相差が90°である場合の面外1次曲げ振動、面外2次曲げ振動、およびこれらの振動が重ね合わされた振動体の変位を、時間位相毎に示すグラフである。 従来の振動装置の、2つの振動の時間的位相差が90°である場合の面外1次曲げ振動、面外2次曲げ振動、およびこれらの振動が重ね合わされた振動体の変位を、時間位相毎に示すグラフである。 従来の振動装置の、2つの振動の時間的位相差が90°である場合の面外1次曲げ振動、面外2次曲げ振動、およびこれらの振動が重ね合わされた振動体の変位を、時間位相毎に示すグラフである。
以下に、本発明の実施形態について説明する。
[第1の実施形態]
図1を用いて、第1の実施形態におけるカメラに装備された振動装置の構成例について説明する。
本実施形態の振動装置は、塵埃を移動させて除去する塵埃除去装置として機能する。
図1において、1は光学素子で、2枚の電気機械エネルギ変換素子である圧電素子2(2a、2b)が接着によって撮像素子4と同じ側に固着されている。
制御回路100は電源101の発生する交番電圧の周波数及び電圧値及び時間位相を設定する。電源101は圧電素子2a、2bと電気的に接続されている。
光学素子1と圧電素子2で振動体3を構成している。振動体3は、受光素子である撮像素子4の表面の空間が密封されるように撮像素子4に取り付けられている。
被写体からの光が、光学素子1を透過し、撮像素子4に入射する。このときの撮像素子に入射する光が、光学素子1を透過する範囲が、光学有効部5である。
本実施形態においても特許文献1と同様に、同方向に節線が並ぶ次数の異なる2つの面外曲げ振動を、時間位相差を設けて励起する。本発明における上記節線とは、振動対象物(例えば光学素子)の所定の面に振動を与えて当該振動対象物の面上に定在波を発生させた場合に定在波の節となる部分を結んだ際に形成される仮想的線をいう。
このために本実施形態では、制御回路100は電源101の発生する交番電圧の周波数を、
紙面の左右方向(第1の方向、図中A)に節線が並び次数の異なる面外10次曲げ振動モード(第1の振動モード)と、面外11次曲げ振動モード(第2の振動モード)の両方に応答のある周波数としている。
図2(a)は、第1の振動モードの光学素子1の変形形状の斜視図であり、図2(b)は第2の振動モードの光学素子1の変形形状の斜視図である。
図2(a)及び2(b)において、Aは第1の方向で、Bは第1の方向と交差する第2の方向である。
本実施形態では第1の方向Aと第2の方向Bは直交している。Cは振動モードにおける節線である。第1の振動モードと第2の振動モードは、第1の方向Aに並ぶ複数の節線を有している。
また、第1の方向Aに並ぶ節線の数は、第1の振動モードで11であり、第2の振動モードで12であり、異なる。第1の振動モードは、面外曲げ変形の次数が第2の振動モードよりも少なく、波長が長いために、第2の振動モードよりも固有振動数が低い。
制御回路100は電源101の発生する2つの交番電圧の時間位相差を設定している。
これによって、振動体3に面外10次曲げ振動モード(第1の振動モード)と、面外11次曲げ振動モード(第2の振動モード)が異なる時間位相で生成される。
先行技術(特許文献1)と同様に、これらの合成された振動は、対象物を面外にたたき上げる時の面内方向の向きが、光学素子1の表面のほぼ全領域において同じとなる。
これによって、塵埃を含む振動によって移動させられる全ての物体に面内の一方向の力を付与し、一方向の移動を実現することが可能となっている。
図3を用いて、本実施形態の面外10次曲げ振動モード(第1の振動モード)及び面外11次曲げ振動モード(第2の振動モード)の節線と各圧電素子2の配置及び電極パターンの対応を説明する。
プロット6に、振動体3に励起する第1の振動モードの変位分布(図中7)と、同じく第2の振動モードの変位分布(図中8)を示している。
縦軸は光学素子1の面外方向の変位で、撮像素子4が配置されている側と反対側を正としている。横軸は図中の光学素子1の左右方向の位置と対応している。
また、本実施形態では、この2つの振動の曲げの中立面が光学素子1の内部になっている。
変位の正の箇所に配置されている圧電素子2には左右方向に伸縮の変形が生じ、変位の負の箇所に配置されている圧電素子2には逆位相(180°)の左右方向の伸縮の変形が生じる。
左右の両端の圧電素子2aと2bは矩形板形状で、左右方向(第1の方向A)においては、光学素子1の端から光学有効範囲5まで配置されており、上下方向(第2の方向B)においては、光学素子1の両端まで配置されている。
圧電素子2aと2bは、光学素子1と結合されている裏面には全面に一様な電極を有しており、反対面の表面には複数に分割された電極(以下、分割電極9)を有している。
分割電極9の分割箇所は、図中の破線で対応を示しているように、第1の振動モードの変位分布7での変位がほぼゼロとなる節の箇所と、第2の振動モードの変位分布8での変位がほぼゼロとなる節の箇所との中間の位置となっている。
分極時には、裏面の電極をグラウンド電位とし、表面の分割電極9には図中の+及び−で示しているように、隣合う電極には異なる極性の電位を印加している。左の圧電素子2aの分割電極には左端から+−+−の極性が与えられ、右の圧電素子2bには右端から+−+−の極性が与えられている。分極方向は圧電素子2の厚さ方向で、図3中では紙面に直交した方向である。
分極後には導電性を有する導電性塗料10を、分割電極9を跨るように施していて、分割電極9のいずれかの箇所に電圧を印加すると、一つの圧電素子2の分割電極9の全てが同電位となるようになっている。
圧電素子2は分極時の電位の極性と同じ電位の極性を与えると分極方向との直交方向に伸びる力が発生し、分極時の電位と異なる電位の極性を与えると縮む特性をもっている。
交番電圧を印加した際には、交番電圧の周期と一致した周期的な伸縮力を発生する。
また、交番電圧では分極時の極性によって、交番電圧に対する伸縮力の位相(0°または180°)が決定される。
交番電圧V1=A1×COS(2πft)を左の圧電素子2aに印加する。A1は電圧振幅値で、fは周波数で、tは時間である。
これとは時間位相がφだけ異なる交番電圧V2=A2×COS(2πft+φ)を右の圧電素子2bに印加する。A2は電圧振幅値である。
このとき、圧電素子2aと2bが逆位相の曲げ変形となる面外10次曲げ振動モード(第1の振動モード7)に主に寄与する電圧は、交番電圧V1とV2の差の成分のV(差)で、V(差)=V1−V2である。
一方、圧電素子2aと2bが同位相の曲げ変形となる面外11次曲げ振動モード(第2の振動モード8)に主に寄与する電圧は、交番電圧V1とV2の和の成分のV(和)で、V(和)=V1+V2である。
ここで、V(差)による圧電素子2で発生する伸縮力の位相について、V(差)を位相の基準として述べる。
左の圧電素子2aの伸縮力の位相の分布は、分割電極9に対応して左端から、0°、180°、0°、180°となる。右の圧電素子2bでは右端から、180°、0°、180°、0°となる。
この伸縮力の位相の分布は、面外10次曲げ振動モード(第1の振動モード)の変位分布7による圧電素子2の伸縮の変形の位相の分布とほぼ合致する。
このため、面外10次曲げ振動モード(第1の振動モード)の大きな振動を得ることが可能となっている。
一方、面外11次曲げ振動モード(第2の振動モード)の変位分布8による圧電素子2の伸縮の変形の位相の分布に対しての、伸縮力の位相の分布は、左の圧電素子2aで合致し、右の圧電素子2bで逆転している。
V(差)による面外11次曲げ振動(第2の振動モード)をみると、左の圧電素子2aによって励起される振動と、右の圧電素子2bによって励起される振動とが、大きさが等しく逆位相となって打ち消しあう。
このため、面外11次曲げ振動モード(第2の振動モード)の振動は発生しない。
また、面外10次曲げ振動モード(第1の振動モード)と左右方向の節数が異なる振動モードに対しても、伸縮力の位相の分布と変形の位相分布が異なり、振動を打ち消す効果によって、振動を小さくできる。
つぎに、V(和)による圧電素子2で発生する伸縮力の位相についてV(和)を位相の基準として述べる。
左の圧電素子2aの伸縮力の位相の分布は、分割電極9に対応して左端から、0°、180°、0°、180°となる。
右の圧電素子2bでは右端から、0°、180°、0°、180°となる。
この伸縮力の位相の分布は、面外11次曲げ振動モード(第2の振動モード)の変位分布8による圧電素子2の伸縮の変形の位相の分布とほぼ合致する。このため、面外11次曲げ振動(第2の振動モード)の大きな振動を得ることが可能となっている。
V(和)の伸縮力による面外10次曲げ振動モード(第1の振動モード)をみると、左の圧電素子2aによって励起される振動と、右の圧電素子2bによって励起される振動とが、大きさが等しく逆位相となって打ち消しあう。このため、面外10次曲げ振動モード(第1の振動モード)の振動は発生しない。
また、面外11次曲げ振動モード(第2の振動モード)とは左右方向の節数が異なる振動モードに対しても、伸縮力の位相の分布と変形の位相分布とが異なり、振動を打ち消す効果によって、振動を小さくできる。
第1の振動モードに対する加振電圧のV(差)と、第2の振動モードに対する加振電圧のV(和)に時間位相差を設ける事で、第1の振動モードと第2の振動モードに時間位相差を持たせている。
これにより、塵埃を含む振動によって移動させられる全ての物体に面内の一方向の力を付与し、一方向の移動を実現することが可能となっている。
ここで、上記した従来技術(特許文献1)における課題について、更に詳細に説明する。
図4は、従来技術(特許文献1)のように、合成する2つの振動モードに対する加振力の大きさを同じとした場合の、加振力の周波数と各振動モードの振動の大きさを表すグラフである。
本実施形態においては、V(差)の大きさとV(和)の大きさを同じにした場合にあたる。
図中において、プロットのDが第1の振動モードの振動の大きさを示し、プロットのEが第2の振動モードの振動の大きさを示している。
これら二つの振動モードに対する加振力の大きさが同じであるので、各々の固有振動数での振動の大きさは等しくなる。
また、加振力の周波数が各々の固有振動数から遠ざかる程に、振動の大きさは小さくなる。
加振力の周波数が、各々の固有振動数から同じ差をもった周波数での振動の大きさは、第1の振動モードDと第2の振動モードEとで同じとなる。
前述したように、第1の振動モードDは、第2の振動モードEよりも固有振動数が低い。
振動体3にはこれら振動モードの固有振動数の付近に、他にも多くの振動モードが存在する(図4中、プロットのF及びG及びH)。
これらは、第1の振動モードDや第2の振動モードEと変位の分布が異なり、塵埃の駆動を阻害する不要な振動モードである。
Fの振動モードは、左右方向(第1の方向A)の曲げ次数が第1の振動モードDと同じく面外10次曲げ変形であり、かつ、上下方向(第2の方向B)に面外1次曲げ変形となる振動モード(第3の振動モード)である。
図5(a−1)は、第3の振動モードFの光学素子1の変形形状を示す斜視図で、図5(a−2)は第1の方向Aから見た図である。
第3の振動モードFの変形形状は、第1の振動モードDの変形形状に加えて上下方向(第2の方向B)にも変形がある。このため、第3の振動モードは、第1の振動モードDよりもやや高い固有振動数を有する。
多くの振動モードの中でも、第3の振動モードFの振動が特に大きくなる。
第3の振動モードFの振動が特に大きくなる理由について、ここで述べる。
第1の振動モードDの振動と第2の振動モードEの振動を発生させるために、圧電素子2a及び2bに交番電圧を印加して、左右方向(第1の方向A)に伸縮力を発生させ、振動体3の方向の曲げ変形力を発生させている。
前述したように、分割電極9の分割位置は、第1の振動モードD及び第2の振動モードEの節線の位置に近くなっている。
一方、第3の振動モードFも、第1の方向Aでの伸縮変形の位相分布が、圧電素子2の発生する伸縮力の位相分布に近くなっている。
このため、第3の振動モードFの振動が大きくなる。さらに、圧電素子2では、上下方向(第2の方向B)も分極方向と直交した方向であり、この方向にも伸縮力を発生して、振動体3に対して曲げ変形力を発生する。
第3の振動モードFは、この上下方向(第2の方向B)に曲げ変形がある振動モードである。これにより、第3の振動モードの振動はさらに大きくなる。
同様に、図4中のGに振動の大きさを示している左右方向(第1の方向A)の曲げ次数が第2の振動モードと同じ面外11次曲げ変形となり、かつ、上下方向(第2の方向B)に面外1次曲げ変形となる振動モード(第4の振動モード)の振動も、特に大きくなる。
図5(b−1)は、第4の振動モードGの光学素子1の変形形状を示す斜視図で、図5(b−2)は第1の方向Aから見た図である。
第4の振動モードGの変形形状は、第2の振動モードEの変形形状に加えて上下方向(第2の方向B)にも変形がある。このため、第4の振動モードGは、第2の振動モードEよりもやや高い固有振動数を有する。
第3の振動モードFや第4の振動モードGは、塵埃を移動させる為に励起する第1の振動モードD及び第2の振動モードEと、上下方向(第2の方向B)の変位分布が異なる。このため、これらの第3の振動モードFや第4の振動モードGの振動が大きいと、上下方向(第2の方向B)に振動のムラが生じて、塵埃を移動できない箇所や移動力が小さい箇所が発生し、塵埃を移動させる効率が低くなってしまう。
第1の振動モードDの振動と第2の振動モードEの振動が合成された振動は、塵埃などを移動させる搬送波成分と定在波成分に分ける事ができる。これら振動モードの振動が共に有する大きさ分が搬送波成分の大きさとなる。
また、この搬送波成分の大きさを各振動の大きさから差し引いた残りの大きさ分が、各振動に対応した定在波成分としての大きさとなる。
例えば、駆動周波数での第1の振動モードDの振動の大きさをDdとし、第2の振動モードEの大きさをEdとして、Dd>Edのように、振動の大きさの大小があった場合には、共にEdの大きさ分を有しているので、Edが搬送波成分の大きさとなる。
残りの(Dd−Ed)が定在波成分の大きさとなる。定在波成分は第1の振動モードである。
逆に、Dd<Edであった場合には、Ddが搬送波成分の大きさとなり、(Ed−Dd)が定在波成分の大きさとなる。定在波成分は第2の振動モードである。すなわち、より大きな搬送波成分を得て、塵埃等をより移動させるためには、駆動周波数における第1の振動モードDの振動の大きさDdと第2の振動モードEの振動の大きさEdの両方をより大きくする事が好適である。
第1の振動モードDと第2の振動モードEの固有振動数の中間であるf(図4中)の周波数を駆動周波数とすると、第1の振動モードDと第2の振動モードEとの両方が、より大きな振動となる。
この時、第3の振動モードFの振動の大きさと第4の振動モードGの振動の大きさを比較する。第1の振動モードDと第2の振動モードEの固有振動数の間に固有振動数が位置し、固有振動数と駆動周波数の差がより近い、第3の振動モードFの方が、大きな振動となる。
図4の例では、第1の振動モードD及び第2の振動モードEの振動の大きさに比較し、第3の振動モードFの振動は半分程度の大きさで、第4の振動モードGの振動は4分の1程度の大きさである。
このため、第4の振動モードGよりも第3の振動モードFの方が、物体の一方向の移動をより阻害する。塵埃を移動させる効率を高くするためには、第3の振動モードの振動を小さくする事が課題である。
本実施形態では、第1の振動モードに対する加振電圧のV(差)を、第2の振動モードに対する加振電圧のV(和)よりも大きくする駆動方法を採っている。すなわち、第1の振動モードと第2の振動モードの内、第3の振動モードとの固有振動数の差が小さい振動モードに対する加振力を、固有振動数の差が大きい振動モードに対する加振力よりも大きくする振動体の駆動方法を採っている。
このような本実施形態における振動体の駆動方法による作用効果について、図6を用いて更に説明する。
図6は、本実施形態における加振力の周波数と各振動モードの振動の大きさを表すグラフである。
図中のプロットのDは第1の振動モードの振動の大きさで、プロットのEは第2の振動モードの振動の大きさである。プロットのFは第3の振動モードの振動の大きさで、プロットのGは第4の振動モードの振動の大きさである。
第1の振動モードD対する加振電圧のV(差)を、第2の振動モードEに対する加振電圧のV(和)よりも大きくしているため、各々の固有振動数での振動の大きさは、第2の振動モードEよりも、第1の振動モードDの方が大きくなっている。
また、加振力の周波数が、各々の固有振動数から同じ差をもった周波数での振動の大きさは、第1の振動モードDの振動の方が大きくなる。
第3の振動モードFは、変形形状が第1の振動モードDと似通っているために、第3の振動モードFの振動も、いずれの加振力の周波数でも僅かに大きくなる。この時、第1の振動モードDと第2の振動モードEの両方をより大きな振動とすることができる加振力の周波数はf1となり、駆動周波数をf1としている。
プロットのE´は、従来技術(特許文献1)のように、V(和)をV(差)と同じ大きさとした場合の第2の振動モードの振動の大きさである。
この場合には、第1の振動モードDと第2の振動モードE´の両方をより大きな振動とすることができる加振力の周波数はfとなり、駆動周波数はfとなる。
従来技術の場合の駆動周波数fよりも本実施形態での駆動周波数f1の方が、第3の振動モードFの固有振動数との差が大きく、本実施形態の方が第3の振動モードFの振動の大きさを小さくすることができる。
前述したように、第3の振動モードFの振動も、いずれの加振力の周波数でも大きくなるが、その量は僅かである。
一方、駆動周波数と第4の振動モードGの固有振動数の差が小さくなり、第4の振動モードGの振動は大きくなるが、十分に小さな値を保っている。
これにより、第3や第4の振動モード等の不要な振動モードによる共振周波数から駆動周波数を遠ざけることによって不要振動の応答を下げることができ、塵埃を移動させる効率を高くすることが可能となる。
V(差)をV(和)よりも小さくする等して、本実施形態とは逆に、第1の振動モードと第2の振動モードの内、第3の振動モードと固有振動数の差が大きい振動モードに対する加振力を、
固有振動数の差が小さい振動モードに対する加振力よりも大きくする振動体の駆動方法とした場合について、ここで述べる。
この場合には、図6中で、第1の振動モードの振動の大きさがプロットD´で、第2の振動モードの振動の大きさがプロットE´のようになる。
このとき、第1の振動モードと第2の振動モードの両方をより大きな振動とすることができる加振力の周波数はf2となり、駆動周波数はf2となる。
駆動周波数と第3の振動モードFの固有振動数の差が小さくなってしまう為に、第3の振動モードFの振動は大きくなってしまう。
そのため、本実施形態では上記したように、第1の振動モードと第2の振動モードの内、第3の振動モードと固有振動数の差が小さい振動モードに対する加振力を、固有振動数の差が大きい振動モードに対する加振力よりも大きくする振動体の駆動方法を採っている。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態における振動体の駆動方法例について説明する。
本実施形態では、塵埃を移動させるために合成する2つの振動を、図5で示した振動モードとしている。
一つ目の振動モードは、左右方向(第1の方向A)にの面外10次曲げ変形であり、かつ、上下方向(第2の方向B)に面外1次曲げ変形となる振動モード(図5(a−1)、(a−2))である。
本実施形態では、この振動モードを第1の振動モードと呼ぶこととする。
二つ目の振動モードは、左右方向(第1の方向A)にの面外11次曲げ変形であり、かつ、上下方向(第2の方向B)に面外1次曲げ変形となる振動モード(図5(b−1)、(b−2))である。
本実施形態では、この振動モードを第2の振動モードと呼ぶこととする。
第1の振動モードと第2の振動モードは、第1の方向Aに並ぶ複数の節線を有している。
また、第1の方向Aに並ぶ節線の数は、第1の振動モードで11であり、第2の振動モードで12であり、異なる。第1の振動モードは、面外曲げ変形の次数が第2の振動モードよりも少なく、波長が長いために、第2の振動モードよりも固有振動数が低い。
第1の振動モードと第2の振動モードを時間位相差を設けて生成すると、合成された振動は、対象物を第1の方向Aに移動する振動となる。
この合成された振動は、上下方向(第2の方向B)に見たときに、中央付近と上下端付近をより効率的に移動させる事ができる特徴をもっている。
また、上下方向(第2の方向B)に並ぶ節線が、第1の振動モードのものと第2の振動モードのものとで、ほぼ同じ位置にある。
これによって、この位置では振動の大きさがほぼゼロとなり、対象物を移動させない事が可能となっている。
図7を用いて、本実施形態の第1の振動モード及び第2の振動モードの節線と各圧電素子2の配置及び電極パターンの対応を説明する。
プロット6に、振動体3の上下方向(第2の方向B)の中央部に励起する第1の振動モードの変位分布(図中7)と、同じく第2の振動モードの変位分布(図中8)を示している。
縦軸は光学素子1の面外方向の変位で、撮像素子4が配置されている側と反対側を正としている。横軸は図中の光学素子1の左右方向の位置と対応している。
また、本実施形態でも、この2つの振動の曲げの中立面が光学素子1の内部になっている。
変位の正の箇所に配置されている圧電素子2には左右方向(第1の方向A)に伸縮の変形が生じ、変位の負の箇所に配置されている圧電素子2には逆位相(180°)の左右方向(第1の方向A)の伸縮の変形が生じる。
左右の両端の圧電素子2aと2bは矩形板形状で、第1の方向Aにおいては光学素子1の両端まで配置され、第2の方向Bにおいては光学素子1の端から光学有効範囲5まで配置されている。
圧電素子2aと2bは、光学素子1と結合されている裏面には全面に一様な電極を有しており、反対面の表面には分割電極9を有している。
分割電極9の左右方向(第1の方向A)の分割箇所は、図中の破線で対応を示しているように、第1の振動モードの変位分布7での変位がほぼゼロとなる節の箇所と、第2の振動モードの変位分布8での変位がほぼゼロとなる節の箇所との中間の位置となっている。
さらに、分割電極9は上下方向(第2の方向B)にも配置されており、その分割箇所は、圧電素子2の左右方向(第1の方向A)及び上下方向(第2の方向B)の伸縮変形の位相が反転する位置としている。
分極時には、裏面の電極をグラウンド電位とし、表面の分割電極9には図中の+及び−で示しているように、隣合う電極には異なる極性の電位を印加している。
上下方向(第1の方向A)の中央部の分割電極では、左の圧電素子2aで左端から+−+−の極性が与えられ、右の圧電素子2bでは右端から+−+−の極性が与えられている。
分極方向は圧電素子2の厚さ方向で、図7中では紙面に直交した方向である。
分極後には導電性を有する導電性塗料10を、分割電極9を跨るように施していて、分割電極9のいずれかの箇所に電圧を印加すると、一つの圧電素子2の分割電極9の全てが同電位となるようになっている。
交番電圧V1=A1×COS(2πft)を左の圧電素子2aに印加する。A1は電圧振幅値で、fは周波数で、tは時間である。
これとは時間位相がφだけ異なる交番電圧V2=A2×COS(2πft+φ)を右の圧電素子2bに印加する。A2は電圧振幅値である。
第1の実施形態と同様に、圧電素子2aと2bが逆位相の曲げ変形となる第1の振動モード7に主に寄与する電圧は、交番電圧V1とV2の差の成分のV(差)で、V(差)=V1−V2である。
一方、圧電素子2aと2bが同位相の曲げ変形となる第2の振動モード8に主に寄与する電圧は、交番電圧V1とV2の和の成分のV(和)で、V(和)=V1+V2である。
上下方向(第2の方向B)の分割電極9の分極方向の配置は、下から順に−+−もしくは+−+となっている。
これにより、第1の振動モードにも第2の振動モードにも、圧電素子2での伸縮の変形の位相の分布と伸縮力の位相の分布とが一致するようになっている。このため、第1の振動モード及び第2の振動モードの大きな振動を得ることが可能となっている。
ここで、本実施形態で、従来技術(特許文献1)を用いた場合の課題について、説明する。
図8(a)は、従来技術(特許文献1)のように、合成する2つの振動モードに対する加振力の大きさを同じとした場合の、加振力の周波数と各振動モードの振動の大きさを表すグラフである。
本実施形態においては、V(差)の大きさとV(和)の大きさを同じにした場合にあたる。
図中において、プロットのDが第1の振動モードの振動の大きさを示し、プロットのEが第2の振動モードの振動の大きさを示している。
これら二つの振動モードに対する加振力の大きさが同じであるので、各々の固有振動数での振動の大きさは等しくなる。
また、加振力の周波数が各々の固有振動数から遠ざかる程に、振動の大きさは小さくなる。
加振力の周波数が、各々の固有振動数から同じ差をもった周波数での振動の大きさは、第1の振動モードDと第2の振動モードEとで同じとなる。
前述したように、第1の振動モードDは、第2の振動モードEよりも固有振動数が低い。
振動体3にはこれら振動モードの固有振動数の付近に、他にも多くの振動モードが存在する(図8(a)中、プロットのF及びG及びH)。
これらは、第1の振動モードDと第2の振動モードEと変位の分布が異なり、塵埃の駆動を阻害する不要な振動モードである。
Fの振動モードは、左右方向(第1の方向A)の曲げ次数が第2の振動モードEと同じく面外11次曲げ変形であり、かつ、上下方向(第2の方向B)に面外曲げ変形が起こらない振動モード(第3の振動モード)である。
図2(b)は、第3の振動モードFの光学素子1の変形形状である。第3の振動モードFの変形形状は、第2の振動モードEの変形形状から上下方向(第2の方向B)の変形が除かれた状態になっている。
このため、第3の振動モードFは、第2の振動モードDよりもやや低い固有振動数を有する。多くの振動モードの中でも、第3の振動モードFの振動が特に大きくなる。
第3の振動モードFの振動が特に大きくなる理由について、ここで述べる。
第1の振動モードDと第2の振動モードEを発生させるために、圧電素子2a及び2bに交番電圧を印加して、左右方向(第1の方向A)と上下方向(第2の方向B)に伸縮力を発生させ、これら方向の曲げ変形力を発生させる。
前述したように、分割電極9の分割位置は、第1の振動モードD及び第2の振動モードEの伸縮変形の位相分布に対応した配置となっている。
一方、第3の振動モードFも、第1の方向Aでの伸縮変形の位相分布が、圧電素子2の発生する伸縮力の位相分布に近くなっている。
このため、第3の振動モードFの振動が大きくなる。同様に、図8(a)中のGに振動の大きさを示している左右方向(第1の方向A)の曲げ次数が第1の振動モードDと同じ面外10次曲げ変形となり、かつ、上下方向(第2の方向B)に面外曲げ変形が起こらない振動モード(第4の振動モード)の振動も、特に大きくなる。
図2(a)は、第4の振動モードGの光学素子1の変形形状である。
第4の振動モードGの変形形状は、第1の振動モードDの変形形状から上下方向(第2の方向B)の変形が除かれた状態になっている。
このため、第3の振動モードは、第1の振動モードDよりもやや低い固有振動数を有する。
第3の振動モードFや第4の振動モードGは、第1の振動モードD及び第2の振動モードEと上下方向(第2の方向B)の変位分布が異なるために、これらの振動モードが大きいと、上下方向(第2の方向B)に振動のムラが生じてしまう。
第1の振動モードDと第2の振動モードEの固有振動数の中間であるf(図8(a)中)の周波数を駆動周波数とすると、第1の振動モードDと第2の振動モードEとの両方をより大きな振動とすることができる。
この時、第3の振動モードFと第4の振動モードGの振動の大きさを比較すると、第1の振動モードと第2の振動モードの固有振動数の間に固有振動数が位置し、固有振動数と駆動周波数の差が小さい第3の振動モードFの方が、大きな振動となる。
図8(a)の例では、第1の振動モードD及び第2の振動モードEの振動の大きさに比較し、第3の振動モードFの振動は半分程度の大きさで、第4の振動モードGの振動は4分の1程度の大きさである。このため、第4の振動モードGよりも第3の振動モードFの方が、振動のムラを生じさせてしまう。
振動のムラを生じさせないためには、第3の振動モードFの振動を小さくする事が課題である。
本実施形態では、第2の振動モードに対する加振電圧のV(和)を、第1の振動モードに対する加振電圧のV(差)よりも大きくする駆動方法を採っている。
すなわち、第1の振動モードと第2の振動モードの内、第3の振動モードとの固有振動数の差が小さい振動モードに対する加振力を、固有振動数の差が大きい振動モードに対する加振力よりも大きくする振動体の駆動方法を採っている。
このような本実施形態における振動体の駆動方法による作用効果について、図8(b)を用いて更に説明する。
図8(b)は、本実施形態における加振力の周波数と各振動モードの振動の大きさを表すグラフである。
図中のプロットのDは第1の振動モードの振動の大きさで、プロットのEは第2の振動モードの大きさである。プロットのFは第3の振動モードの大きさで、プロットのGは第4の振動モードの大きさである。
第2の振動モードEに対する加振電圧のV(和)を、第1の振動モードD対する加振電圧のV(差)よりも大きくしているため、各々の固有振動数での振動の大きさは、第1の振動モードDよりも、第2の振動モードEの方が大きくなっている。
また、加振力の周波数が、各々の固有振動数から同じ差をもった周波数での振動の大きさは、第2の振動モードEの方が大きくなる。
第3の振動モードFは、変形形状が第2の振動モードEと似通っているために、第3の振動モードFの振動も、いずれの加振力の周波数でも僅かに大きくなる。
この時、これら振動モードの両方をより大きな振動とすることができる加振力の周波数はf1となり、駆動周波数をf1としている。
プロットのE´は、従来技術(特許文献1)のように、V(和)をV(差)と同じ大きさとした場合の第2の振動の大きさである。
この場合には、第1の振動モードDと第2の振動モードE´の両方をより大きな振動とすることができる加振力の周波数はfとなり、駆動周波数はfとなる。
従来技術の場合の駆動周波数fよりも、本実施形態での駆動周波数f1の方が、第3の振動モードFの固有振動数との差が大きく、第3の振動モードFの振動を小さくできている。
前述したように、第3の振動モードFの振動も、いずれの加振力の周波数でも大きくなるが、その量は僅かである。
一方、駆動周波数と第4の振動モードGの固有振動数の差が小さくなり、第4の振動モードGの振動は大きくなるが、十分に小さな値を保っている。
これにより、第3や第4の振動モード等の不要な振動モードによる共振周波数から駆動周波数を遠ざけることによって不要振動の応答を下げることができ、塵埃を移動させる効率を高くすることが可能となる。
[第3の実施形態]
第1の実施形態では、第1の振動モード及び第2の振動モードに対する加振力の大小の設定として、電圧の大小を設定する駆動方法を示した。
本実施形態では、圧電素子2の分割電極9の配置を有効に設けた振動装置について示す。
本実施形態が、第1の実施形態と異なっている点は、V(和)をV(差)と同じ大きさとしている点と、圧電素子2の分割電極9の配置が異なっている点である。
図9を用いて、本実施形態の面外10次曲げ振動モード(第1の振動モード)及び面外11次曲げ振動モード(第2の振動モード)の節線と各圧電素子2の配置及び電極パターンの対応を説明する。
プロット6に、振動体3に励起する第1の振動モードの変位分布(図中7)と、同じく第2の振動モードの変位分布(図中8)を示している。
縦軸は光学素子1の面外方向の変位で、撮像素子4が配置されている側と反対側を正としている。
横軸は図中の光学素子1の左右方向の位置と対応している。
分割電極9の分割箇所は、図中の破線で対応を示しているように、第1の振動モード7の変位分布7での変位が略ゼロとなる節の箇所としている。
これにより、圧電素子2の伸縮力の位相分布と、第1の振動モード7の伸縮変形の位相分布とが、第1の実施形態よりも合致した状態となっている。
これによって、V(差)による第1の振動モード7に対する加振力を大きくすることができる。
一方、圧電素子2の伸縮力の位相分布と、第2の振動モード8の伸縮変形の位相分布とは、第1の実施形態よりも位置ずれをもった状態となっている。これによって、V(和)による第2の振動モード8に対する加振力を小さくすることができる。
これらにより、第2の振動モード8に対する加振力よりも、第1の振動モード7に対する加振力の方を大きくすることができる。
これにより、前述した第1の実施形態の場合と同様に、塵埃を移動させる効率を高くすることが可能となる。
本実施形態では、圧電素子2の分割電極9の分割位置を、第1の振動モード7の節位置に略一致するように構成されている。
しかし、このような構成に限らず、圧電素子2の分割電極9の分割位置を、第2の振動モード8の節位置よりも、第1の振動モード7の節位置により近く設けるようにすることでも、程度の差こそあれ、本発明の効果は得られる。
更に、第1の振動モードと第2の振動モードの内、第3の振動モードとの固有振動数の差が大きい振動モードの節線の位置よりも、固有振動数の差が小さい振動モードの節線の位置に対して、分割電極の分割位置が、より近くに設けるようにすることが望ましい。
これにより、第1の実施形態の場合と同様に、第3の振動モード等の不要な振動モードによる共振周波数から駆動周波数を遠ざけることによって不要振動の応答を下げることができ、塵埃を移動させる効率を高くすることが可能となる。
また、本実施形態において、さらに第1の振動モードに対する加振電圧のV(差)を、第2の振動モード対する加振電圧のV(和)よりも大きくすると、さらに第3の振動モードの振動を小さくでき、より塵埃を移動させる効率を高くすることも可能である。
また、本実施形態において、圧電素子2の分割電極9の左右方向(第1の方向A)や上下方向(第2の方向B)での分割位置を、第2の振動モードの節の箇所に合致させたり、近く設けたりした場合も、本実施形態と同様の効果が得られる。
[第4の実施形態]
本実施形態が、第3の実施形態と異なる点は、図10に示す圧電素子2c及び2dを加え、圧電素子2を4つとしたことである。
圧電素子2a及び2bは、長辺が第2の方向Bに沿うように配置されている。それに対し、圧電素子2c及び2dは、長辺が、第1の方向Aに沿うように配置されている。
これにより、第1の方向Aにより数多くの分割電極を配置する事が可能となっている。
圧電素子2c及び2dの分割電極9の分割位置は、第1の振動モード7の節位置と合致させてある。
圧電素子2c及び2dのそれぞれの分割電極9の分極方向は、図中の+−で示すとおり、圧電素子2a及び2bの分極方向の配置と連続するように、左右の両端から−+−の順で配置している。
これによって、V(差)が印加された際の第1の振動モード7に対する加振力をより大きくすることができる。
これによって、第3の実施形態よりも、さらに塵埃を移動させる効率を高くすることができる。
また、圧電素子2c及び2dの配置位置は、上下方向(第2の方向B)での中心位置を、第3の振動モードの節線の位置と合致させている。
これにより、第3の振動モードによる上下方向(第2の方向B)での、伸縮変形の位相分布と伸縮力の位相分布との関係により、第3の振動モードに対する加振力を発生し難いようにもできている。
[その他の実施形態]
これまでの実施形態で述べた振動モード以外を、対象物を移動させるために合成しても、本発明で意図する振動モードの固有振動数の関係を鑑みた加振力の大小を設定すれば、本発明の効果は得られる。
また、振動体の形状の代表的なものとして、矩形板形状のものを示したが、例えば円板形状や多角形形状などの如何なる形状の振動体であっても良く、振動体の形状を限るものではない。
さらに、加振力の大小の操作方法として、他にも、一方の振動モードの変形分布により合致した部分に対し、圧電特性を上げた物もしくは下げた物、積層圧電素子を用いた場合に積層数を増やした物や積層数を減らした物を対象とした発明である。
もしくは、層厚を変化させた物、さらには振動体の外部から振動体に加振力を与えることなどでも良く、特に限定されるものではない。
以上の各実施形態で説明した振動装置や振動体の駆動方法は、駆動装置に適用して所定の方向に対象物を駆動する駆動装置を構成することができる。
また、塵埃除去装置に適用して所定の方向に塵埃を移動させて除去する塵埃除去装置を構成することができる。
さらに、このような塵埃除去装置を適用して光路上の塵埃を除去する光学機器を構成することができる。
具体的には、例えばカメラ、ファクシミリ、スキャナー、プロジェクター、複写機、レーザビームプリンター、インクジェットプリンター、レンズ、双眼鏡、画像表示装置などの光学機器に適用することができる。
1:光学素子
2、2a、2b、2c、2d:圧電素子
3:振動体
4:撮像素子
5:光学有効範囲(光学有効部)
6:振動モードの変位分布
7:第1の振動モードの変位分布
8:第2の振動モードの変位分布
9:分割電極
10:導電性塗料
100:制御回路
101:電源

Claims (10)

  1. 振動体に備えられた少なくとも2つの電気機械エネルギ変換素子に交番電圧を印加し、前記振動体に次数の異なる定在波を、所定の時間位相差を設けて発生させる振動体の駆動方法であって、
    前記振動体は、第1の方向に並ぶ複数の節線を有する第1の振動モードと、
    前記第1の方向に並ぶ節線の数が前記第1の振動モードと異なり、且つ前記第1の振動モードよりも固有振動数が高い第2の振動モードと、
    固有振動数が、前記第1の振動モードと前記第2の振動モードの間に位置する第3の振動モードと、を有し、
    前記第3の振動モードは、前記第1の振動モードまたは前記第2の振動モードと、前記第1の方向に並ぶ節線の数が同じであり、且つ前記第1の方向と交差する第2の方向に並ぶ節線の数が異なる振動モードであって、
    前記第1の振動モードと前記第2の振動モードの内、前記第3の振動モードとの固有振動数の差が小さい振動モードに対する加振力を、固有振動数の差が大きい振動モードに対する加振力よりも大きくして駆動することを特徴とする振動体の駆動方法。
  2. 前記第1の振動モードと前記第2の振動モードの内、
    前記第3の振動モードと固有振動数の差が大きい振動モードを加振する加振電圧よりも、
    固有振動数の差が小さい振動モードを加振する加振電圧を大きくして駆動することを特徴とする請求項1に記載の振動体の駆動方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の振動体の駆動方法を用いた振動装置を有し、
    前記振動装置によって所定の方向に対象物を駆動することを特徴とする駆動装置。
  4. 請求項1または請求項2に記載の振動体の駆動方法を用いた振動装置を有し、
    前記振動装置によって所定の方向に塵埃を移動させて除去することを特徴とする塵埃除去装置。
  5. 請求項4に記載の塵埃除去装置を有し、
    前記塵埃除去装置によって光路上の塵埃を除去することを特徴とする光学機器。
  6. 少なくとも2つの電気機械エネルギ変換素子を有する振動体を備え、
    前記電気機械エネルギ変換素子に交番電圧を印加し、前記振動体に次数の異なる定在波を、所定の時間位相差を設けて発生させる振動装置であって、
    前記振動体は、第1の方向に並ぶ複数の節線を有する第1の振動モードと、
    前記第1の方向に並ぶ節線の数が前記第1の振動モードと異なり、且つ前記第1の振動モードよりも固有振動数が高い第2の振動モードと、
    固有振動数が、前記第1の振動モードと前記第2の振動モードの間に位置する第3の振動モードと、を有し、
    前記第3の振動モードは、前記第1の振動モードまたは前記第2の振動モードと、前記第1の方向に並ぶ節線の数が同じであり、且つ前記第1の方向と交差する第2の方向に並ぶ節線の数が異なる振動モードを備え、
    前記電気機械エネルギ変換素子の少なくとも一つは、複数に分割された分割電極を有し、
    前記分割電極の分割位置が、
    前記第1の振動モードと前記第2の振動モードの内、前記第3の振動モードとの固有振動数の差が大きい振動モードの節線の位置よりも、固有振動数の差が小さい振動モードの節線の位置に対して、より近くに設けられていることを特徴とする振動装置。
  7. 前記第1の振動モードと前記第2の振動モードの内、
    前記第3の振動モードと固有振動数の差が小さい振動モードの節線の位置と、前記分割電極の分割位置が略一致していることを特徴とする請求項6に記載の振動装置。
  8. 請求項6または請求項7に記載の振動装置を有し、
    前記振動装置によって所定の方向に対象物を駆動することを特徴とする駆動装置。
  9. 請求項6または請求項7に記載の振動装置を有し、
    前記振動装置によって所定の方向に塵埃を移動させて除去することを特徴とする塵埃除去装置。
  10. 請求項9に記載の塵埃除去装置を有し、
    前記塵埃除去装置によって光路上の塵埃を除去することを特徴とする光学機器。
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