発明の概要
本発明は、像担持体に形成された潜像に、電子写真方式でトナー像を形成する画像形成装置の現像装置に現像剤を補給する現像剤補給装置に関するものであり、可撓性を有する材質で形成された現像剤収納容器と、一端が吸引手段と連通し、他端側が現像剤収納容器の最深部まで挿入される吸引部材を有し、現像剤収納容器内に挿入される吸引部材の領域に、その長手方向に複数の吸引孔を形成している。
このため、スクリュ、オーガ等の現像剤収納容器の内部で駆動を要する現像剤移動手段を使わずに吸引手段と接続されている現像剤収納容器の排出口付近から、容器内部で吸引ポンプと接続される出口部分から遠いところの現像剤も延長した吸引部材により吸引することができる。また、吸引手段により現像剤が吸引されると現像剤のあった部分が減容されるにしたがって、減容された現像剤収納容器が吸引孔に引き付けられて吸引孔を塞ぐ事が想定されるが、1つの吸引孔が塞がれても、別の吸引孔が開口されているので、その部分から現像剤を吸引することができる。
以下、図を参照して本発明の実施形態を説明する。各実施形態において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すに留め、重複説明は省略する。
本発明を適用した画像形成装置の一実施形態として、電子写真方式のプリンタ(以下、単に「プリンタ」という)について説明する。本実施形態に係るモノクロのプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、像担持体たるドラム状の感光体1の周囲に、帯電装置2、光書込装置3、現像装置4、転写装置5、ドラムクリーニング装置6、除電装置7を備えている。転写装置5よりも図中左側方には定着手段8が配設され、現像装置4には現像剤補給装置10が接続されている。
図示しない駆動モータによって図中時計回りに回転駆動する感光体1は、アルミ等からなる素管の表面に有機感光層が形成されたものであり、回転に伴って帯電装置2によって正又は負極性に一様帯電する。そして、図示しないパーソナルコンピュータ等から送られてくる画像情報に基づいて光走査情報を構築する光書込装置3から発せられるレーザー光Lの走査によって露光部の電位が減衰する。これにより、露光部周囲の地肌部よりも電位の小さい静電潜像を担持する。この静電潜像は、感光体1の回転に伴って現像装置4との対向位置である現像位置を通過する際に、現像装置4の現像ローラ4aに担持されるトナーと磁性キャリアとを含有する二成分の現像剤に摺擦される。そして、例えばネガ−ポジプロセスにした場合、この現像剤に含まれる負に帯電した感光体の露光された部分に負極性のトナーが静電的に付着しトナー画像に現像される。
現像位置よりも感光体回転方向下流側には、感光体1と転写装置5とが対向する転写位置9が形成されている。感光体1上で現像されたトナー画像は、感光体1の回転に伴ってこの転写位置に進入する際に、図示しない給紙手段によってタイミングを合わせて搬送されてくるシート状の転写紙Pに重ね合わされる。そして、感光体1の露光部と転写装置5との間に形成される転写電界の影響を受けて記録体P上に静電転写される。この転写の際に感光体1に静電的に付着した転写紙Pは、紙の重さ、剛性、紙と分離搬送のための部材(図示を省略)等の作用により感光体から分離される。このようにしてトナー画像が静電転写せしめられた記録体Pは、転写位置から定着手段8へと送られる。
定着手段8は、内部に図示しない熱源を有する加熱ローラ8aと、これに押圧される押圧ローラ8bとの接触によって定着ニップを形成している。これらローラは、互いの接触部でそれぞれの表面を同方向に移動させるように回転駆動される。かかる構成の定着手段8に送られた記録体Pは、定着ニップに挟み込まれてローラ表面移動方向に搬送される。この際、ニップ圧や加熱の影響によってトナー画像が定着せしめられる。定着後の転写紙Pは、図示しない排紙手段を経由して機外へと排出される。
転写位置を通過した感光体1表面は、その回転に伴ってドラムクリーニング装置6との対向位置を通過する際に、転写残トナーがクリーニングされる。そして、除電装置7によって残留電荷が取り除かれた後、帯電手段2によって一様帯電されて初期状態に戻る。
除電方法は、コロナ帯電を利用して強制的に電位を下げる方式のものでも、感光体に光を当てて露光することにより残留電位を下げる方式の何れでも良い。この除電装置7は感光体1の種類あるいは、帯電方式によっては省略することも可能である。
図1では、帯電装置2として帯電バイアスが印加される帯電ローラ等のバイアス部材を感光体1に接触させる方式のものを示したが、帯電チャージャ等の非接触方式のものを用いても良い。光書込装置3としてはレーザー光の照射によって静電潜像を形成するものを例示したが、LEDアレイからのLED光によって光書込を行なうものを用いても良い。また、ドラム状の感光体1を使用し帯電−光書込によって静電潜像を形成せずに、イオン照射等によって静電潜像を像担持体上に直接描画し形成するものでもよい。
転写装置5としては、転写バイアスが印加される転写ローラを感光体1に接触させるローラ接触方式のものを示したが、ベルトを接触させるベルト接触方式のものや、転写チャージャなどの非接触方式のものを用いても良い。ドラムクリーニング装置6として、クリーニングブレードによる掻き取り方式のものを示したが、クリーニングバイアスが印加されるブラシやローラを接触させる静電回収方式のものを用いてもよい。像担持体としてドラム状の感光体1を設けた例について説明したが、ベルト状の感光体などを用いても良い。
現像装置4は、磁性キャリアを含有する二成分の現像剤を循環させる2本のスクリュを通路内に有する撹拌・循環部4bと、磁石を内包した現像ローラ4aを有し、撹拌・循環部4bに現像剤補給装置10からの現像剤が搬送される。現像ローラ4aの表面はサンドブラスト処理により5〜20μmRZの範囲に荒らした状態で仕上げられている。このような表面処理に代えて、各種ブラスト処理を使用することが可能である。また、ブラスト処理に代えて、0.05〜1mmの深さを有する複数条の溝を形成することもある。像担持体にトナー像を形成すると現像装置に蓄えられていたトナーが減少するので、減少したトナーを現像剤補給装置10から現像剤(主にトナー)を補給する。
現像剤補給装置10は、図2に示すように、内部に補給用の現像剤が充填されて収納されている現像剤収納容器11と、現像剤収納容器11と現像装置4の間に配置され、現像剤収納容器11と連通することで現像剤収納容器11の現像剤を吸引して撹拌・循環部4bへ搬送する吸引手段12を備えている。現像剤補給装置10は、現像装置4と同じ高さまたは下方に設けられている。
吸引手段12は、吸引力を発生する吸引ポンプ14と、一端が吸引ポンプ14の吸引側と接続され、他端が現像剤収納容器11と接続されて連通する搬送パイプ131と、粉体ポンプ14の吐出側と撹拌・循環部4bとは搬送パイプ132とを備えている。
現像剤補給装置10は、粉体ポンプ14が作動すると、その吸引力によって現像剤収納容器11内の現像剤を搬送パイプ131からポンプ内に吸込み、搬送パイプ132を介して撹拌・循環部4bへと供給搬送する。撹拌・循環部4bには、必要に応じてトナー濃度検出装置などが設けられ(図示せず)、現像装置4の現像剤のトナー濃度が低下すると現像剤補給装置10を起動させ、現像剤(トナー)を補給する。このようにして、現像装置4の現像剤濃度を安定化させることで、出力する画像を良質に保つことができる。
図14(a)は、従来の剛性のある現像剤収納容器内に現像剤を充填した状態である。容器側面には容器内部に連通する排出口が形成されている。現像剤収納容器の内部にはスクリュ、コイル、アジテータなどの搬送部材を設けていないため、吸引手段により排出口から現像剤を吸引した場合、現像剤が容器の中に満たされているうちは現像剤を吸引できるが、ある程度吸引が進行して、図14(b)に示すように、現像剤の傾斜が安定した安息角になると現像剤が崩れなくなり、容器長手方向において排出口から遠くにある現像剤は搬送できなくなる。
図15(a)は、可撓性のある現像剤収納容器内に現像剤を充填した状態である。容器側面には容器内部に連通する排出口が形成されている。この場合も、現像剤収納容器の内部にはスクリュ、コイル、アジテータなどの搬送部材を設けていないため、吸引手段により排出口から現像剤を吸引した場合、現像剤が容器の中に満たされているうちは現像剤を吸引できるが、現像剤が吸引されるにしたがって容器が変形し、図15(b)に示すように、現像剤が減少した部分で、現像剤の移動経路が変形した容器によって閉塞し現像剤を吸引できなくなり残ってしまう。
次に、本発明が適用された現像剤収納容器(以下「収納容器」と記す)11の特徴について説明する。図2、図3に示すように、この収納容器11は、ポリエチレン/ナイロン/ポリエチレンテレフタラートの三層の複合シートを角袋状にヒートシールした可撓性を有するものである。収納容器の内寸は、縦60mm×横60mm×長さ400mmの長方形状の大きさに加工してあり、鉛直方向よりも水平方向への長さが長く形成された袋状とされている。
この収納容器11は、図3に示すように、ポリエチレン製の内径6mmの吸引通路となる吸引管15を備えている。吸引管15は、袋状の収納容器11と一体的に構成されている。吸引管15は、現像容器11の長手方向への長さよりも長く形成されていて、その一端15Aが容器側面11Cよりも外方に突出し、その他端15Bが容器側面11Cと反対側に位置する容器側面11Dまで届いている。つまり、吸引管15は容器下面15Aに配置されていて、容器長手方向全域に渡って配置されている。吸引管15は、ここでは容器全長よりも長く形成したが、収納容器11と同寸法としてもよい。吸引管15の一端15Aは、搬送パイプを介して吸引ポンプ14と連通している。
この吸引管15には、長手方向に40mm間隔で直径5mmの吸引孔16が複数形成している。複数の吸引孔16は、吸引ポンプ14に近い側から容器奥側へと、それぞれ符号A〜Eを付し16A〜16Eとする。この符号16A〜16Eは特定の吸引孔を説明する際に用い、吸引孔全体を説明する場合は単に符号16と記す。
本形態では、吸引管15を内径6mmとしたが、吸引できる管径であればこの管径に限定されるものではない。吸引管15の径が細いと現像剤が詰まり易くなり、太くなると吸引力が弱くなるため、現像剤の閉塞が発生し易くなるので、管径としては4mm〜12mmとするのが好ましい。
吸引管15の長さは、ほぼ現像容器11の奥行きの長さと同じになっていると良いので、現像容器の奥行きが350mmならば吸引管も350mmという具合に、現像容器15の奥行き方向(長手方向)への長さに応じて容器最深部となる容器側面11Dまで吸引管15の先端となる他端15Bが到達するように長さを調整すればよい。
各吸引孔16の大きさも、吸引管15に応じて大きさを変えても良いし、吸引ポンプ14側となる一端15A寄りの吸引孔16Aから容器奥側となる他端15Bよりも吸引孔16Eに向かうに従い、その開口面積を徐々に大きく形成してもよい。
本形態において、各吸引孔16は、吸引ポンプ14に近い吸引孔16Aから遠くなる吸入口16Eに向かって徐々に開口径を大きくして形成している。つまり、吸引孔の開口は、吸引孔16A<吸引孔16B<吸引孔16C<吸引孔16D<吸引孔16Eと設定されている。このように形成することによって、収納容器11の吸引ポンプ14側から最深部まで、吸引力が分散し容器全体に同じように吸引力が作用して収納容器11を一様に減容することができる。
吸引管15には、接続された吸引ポンプ14によって吸引管15のポンプ側が減圧されると、収納容器内の現像剤が吸引孔16を通して吸引管15内へと引き込まれて収納外部へと排出される。現像剤が排出されていく過程は、以下のとおりである。
最初は現像剤が収納容器内全体にあるので、各吸引孔16付近の現像剤を吸引して容器外部へと排出する。吸引によって排出されて行くにしたがって吸引孔16A〜16Eの上方で図3(a)に点線で示すように、コーン状に現像剤を減少させていく。現像剤が減少していくと、収納容器11が減圧されて変形し、現像剤がなくなったコーン状の空間を押しつぶして周りに合った現像剤を崩し、図3(b)に示すように吸引孔16A〜16Eの上に現像剤を均す。そして、現像剤の架橋することを防止しながら、現像剤の吸引と変形を繰り返して現像剤は全体的に減少していき、最終的に現像剤がすべて排出され、収納容器11はつぶれて減容される。
このように、本形態の収納容器11は、吸引孔16が収納容器11の手前側から最深部まで到達している個所があり、吸引孔16が複数設けられているので、容器全体から現像剤が吸引され容器の減容と現像剤の搬送が可能になる。また、本形態の収納容器11の場合、収納容器11の側面11C側から側面11Dに向かって吸引管15を挿入して配置しているので、容器が変形しても現像剤の排出口が容器で塞がれることが無く、吸引管15内部を通って容器外部へと排出できるので、安定して現像剤を供給することができる。
本形態において、吸引ポンプ14を作動して現像容器4に現像剤を補給すると、補給速度が1.0[g/sec]とすることができ、容器内部に残る現像剤の量を10[g]以下にすることができる。また、現像剤をある程度補給した後に、吸引ポンプ14を逆転させて収納容器11の中に空気を導入することによって現像剤に攪拌作用を与えることができ、現像剤の搬送を安定させることも可能である。
図3に示すように、吸引管15上の表面に、吸引管15内部に連通する吸引孔16を複数設けると、流速の速くなる粉体ポンプ14に近い側の吸引孔16Aから現像剤が吸引されていく。現像剤が吸引されると現像剤が減り、現像剤の減った分だけ容器内が減圧されて収納容器11が変形し、順次吸引孔をふさいでいって最深部の現像剤までを吸引することができる。
より具体的には、図4(a)に示すように、現像容器11が新品で、容器内部に現像剤が十分に収納されている場合で、吸引ポンプ14が作動して現像剤補給動作が開始されると、まず吸引孔16Aの付近にある現像剤が吸引される。吸引孔16A付近の現像剤がなくなると、図2(b)に矢印Bで示す方向に収納容器11が変形し、吸引孔16A付近の容器上面11Bあるいは容器側面11Cが吸引孔16Aを塞ぐ。吸引孔16Aが塞がれると、次に吸引ポンプ14に近い吸引孔16B付近の現像剤が吸引される。吸引孔16B付近の現像剤が補給され現像剤が無くなると、吸引孔16Aの場合と同様に矢印Cで示す方向に現像容器11が変形し、今度は吸引孔16B付近の容器上面16Bあるいは容器側面16Cが吸引孔16Bを塞ぐ。吸引孔16Aと吸引孔16Bが変形した収納容器11で塞がれると次に吸引孔16C付近の現像剤が補給され、最終的には吸引孔16E付近の現像剤がなくなるまで、現像剤の補給動作が可能となる。
このように、順次現像剤の吸引と吸引孔16の閉塞を続けることで、容器内部の現像剤(トナー)を補給する吸引孔16が見かけ上、吸引管15上を移動して現像剤を吸引する吸引力が維持され、容器内部の手前から最深部の現像剤までを容器外部へ排出して補給に用いることができるとともに、搬送速度を安定化することができる。
各吸引孔16の形状は、楕円形でも□型その他の多角形でもかまわないし、容器手前側から奥行き側に進むに従い、徐々に変化させても構わないが、最深部までとどく位置に吸引孔16を設けることが重要である。
図5は、現像剤補給装置の別な形態を示すものである。図5に示す現像剤補給装置10Aは、収納容器と現像装置4の間に配置され、収納容器と連通することで収納容器の現像剤を吸引して撹拌・循環部4bへ搬送する吸引手段12を備えている点は、図2に示す現像剤補給装置10と同一構成である。相違点は、収納容器と吸引経路の関係が、図2に示す現像剤補給装置10と異なっている。図2で用いた収納容器11は、吸引管15を収納容器11が備えていたが、図5に示す収納容器110は、一端131aが吸引ポンプ14の吸引側と接続された搬送パイプ131の他端131bを吸引経路として用いている。現像剤補給装置10Aは、現像装置4と同じ高さまたは下方に設けられている。
図5に示す収納容器110は、吸引管15を備えていない点以外は、収納容器11と同様な構成で可撓性を有し、鉛直方向よりも水平方向への長さが長く形成された袋状の容器である。つまり、本形態では、吸引経路を容器本体110と別体として構成している。
収納容器110の長手方向に位置する一方の容器側面110Cの下面110A側には、容器内部に連通する排出口17が形成されていて、この排出口17から搬送パイプ131の他端131bが容器本体内に挿入されている。搬送パイプ131の他端131bは、容器側面110Cから、容器側面11Dに向かって挿入したときに容器長手方向全域に渡って延在する長さを有するとともに、容器長手方向に、容器内部と連通する複数の吸引孔16が形成されている。吸引孔16の大きさ、配置、形状は現像剤補給装置10で説明したものと同様である。
このような構成としても、図6(a)に示すように、最初は現像剤が収納容器内全体にあるので、各吸引孔16付近の現像剤を吸引して容器外部へと排出する。吸引によって排出されて行くにしたがって吸引孔16A〜16Eの上方で図6(a)に点線で示すように、コーン状に現像剤を減少させていく。現像剤が減少していくと、収納容器110が減圧されて変形し、現像剤がなくなったコーン状の空間を押しつぶして周りに合った現像剤を崩し、図6(b)に示すように吸引孔16A〜16Eの上に現像剤を均す。そして現像剤の架橋することを防止しながら、現像剤の吸引と変形を繰り返して現像剤は全体的に減少していき、最終的に現像剤がすべて排出され、収納容器110はつぶれて減容される。
本形態の収納容器110でも、吸引孔16が収納容器110の手前側から最深部まで到達している個所があり、吸引孔16が複数設けられているので、容器全体から現像剤が吸引され容器の減容と現像剤の搬送が可能になる。また、本形態の収納容器110の場合、収納容器11の側面110C側から側面110Dに向かって吸引通路となる搬送パイプ131の他端131bを挿入して配置しているので、容器が変形しても現像剤の排出口17が容器で塞がれることが無く、現像剤を搬送パイプ131の他端131b内部を通って容器外部へと排出できるので、安定して現像剤を供給することができる。これ以外の効果も収納容器11の場合と同様である。
図7は吸引経路の形態を示すものである。
図7(a)は、図3、図5に示した形態であり、一本の吸引通路となる吸引管15と搬送パイプ131の他端131bに複数の吸引孔16を設けたものである。
図7(b)は、収納容器の中に複数の吸引通路となる吸引管15と搬送パイプ131の他端131bを配置し、各吸引管15や搬送パイプ131の他端131bにそれぞれ複数の吸引孔16を設けたものである。吸引通路が吸引管15の場合、2本の吸引管15を収納容器11の下面11A側に容器幅方向に並べて装着しておき、搬送パイプ131を分岐させて各吸引管15に接続する。
吸引通路が搬送パイプ131の他端131bの場合、他端131bを予め分岐しておき、分岐された2本の他端131bに複数の吸引孔16をそれぞれ形成して収納容器110の下面110A側に容器幅方向に並べて配置するように容器内部に挿入する。
図7(c)は、吸引通路の数を更に増加したものであり、吸引管15の場合は、複数の吸引孔16を形成した4本の吸引管15を収納容器11の下面11A側に容器幅方向に並べて装着し、搬送パイプ131をさらに分岐させて各吸引管15に接続する。吸引通路が搬送パイプ131の他端131bの場合、他端131bを予め4つに分岐しておき、分岐された4本の他端131bに複数の吸引孔16をそれぞれ形成して収納容器110の下面110A側に容器幅方向に並べて配置するように容器内部に挿入する。
図7(b)、図7(c)において、吸引通路は、収納容器11,110の外側で分岐し、容器内部では分岐させないで、配置される複数の吸引管15や他端131bが独立して容器下面11A、110Aが広範囲に配置できるようにしている。
このような構成とすることで、収納容器11,110の内部の隅々まで吸引通路と吸引孔16を張り巡らせたることができ、高さが低く幅が広い収納容器でも、その容器内全域から現像剤を確実に吸引することができる。
図8は、減容可能な現像剤収納容器の別な形態を示す。図8,図9は、吸引管15が一体に形成された収納容器11として説明する。
図8に示す収納容器11は、図8中の点線で示したように、収納容器11の縦方向に折り目111が予め設けられ、図8(a)に示す初期の現像剤の満たされた状態でのおよその外形が上面11Bの辺Xの長さが60mm、下面11Aの辺X1の幅が30mm、上面11Bと下面11Aをつなぐ側面11C,11Dの高さhが60mmの断面台形形状をなし、奥行き400mmとされた箱型で可撓性を有する現像剤収納容器である。折り目111は、容器上面110Bの中央付近と、台側面11C、11Dの中央付近にそれぞれ設けられている。本形態において、吸引管15は、吸引孔16(A〜E)が容器内部であって奥行方向全域に臨むように下面11A側に配置されている。
この収納容器11では、現像剤が吸引されるにしたがって、容器内圧が低下すると、容器が折り目111に沿って縮小し、最終的には図8(b)に示すように縦方向に折りたたまれる。このときに、吸引管15と平行な側面11E及び側面11Fの素材は、上面11Bや側面11C,11Dよりも硬い素材で形成されることが好ましい。側面11E,11Fを硬くすることによって、収納容器11の形状が安定して減容される。収納容器11が変形するときに現像剤を崩れ、下方に位置する吸引孔16の上に現像剤が流れ込むので、現像剤は安定して補給される。
可撓性を有する収納容器11を構成するフレキシブルな材料としては、ポリエステル,ポリエチレン,ポリウレタン,ポリプロピレン,ナイロン樹脂等のプラスチック製シートあるいは紙等を、単層であるいは異種のものを複層に加工したもの、さらには紙上に樹脂をコーティングした牛乳パックのようなものも用いることができる。
2層とも樹脂からなるものの場合、外部の圧力等によっても破れにくいものが好ましく、内側をポリエチレンのような軟性、外側をナイロン樹脂のような硬性のものからなるものが好適である。
収納容器11が備える吸引管15は、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン樹脂、超高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂(PET含む)、4弗化エチレンなどのフッ素系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン樹脂等の各種樹脂が使用できる。
樹脂によってはトナーと反応してしまうため、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂やフッ素系樹脂、PET、シリコーン樹脂などの素材の方がよい。本実施形態ではポリエチレン製チューブを用いたが他の樹脂でも使用可能である。また、軽量化の面からは好ましくは無いが、AL、銅、SUS等の各種金属の吸引管、ガラス製の吸引管としてもよい。
図9に示す収納容器11は、減容可能な現像剤収納容器の別な形態を示す。図9(a)は、初期の現像剤の満たされた収納容器11の状態を示す。このとき収納容器11のおよその外形は、縦60mm×横60の断面正方形状で奥行き400mmとされた箱型で可撓性を有する現像剤収納容器である。
収納容器11には、上面11Bと下面11Aを除く側面11C,11D,11E,11Fの中央付近に、点線で示したような容器の横方向に連続する折り目112が設けられた可撓性を有する現像剤収納容器である。吸引管16は収納容器内に下面11Aに配置されていて、吸引孔16(A〜E)が容器内部に臨んでいる。上面11Bと下面11Aは、側面11C,11D,11E,11Fよりも剛性を高くして折れ曲がり難くいものにしている。また、側面11C,11D,11E,11Fには折り目112が設けられているので、強度的に弱くなる。
このため、吸引ポンプ14が作動して現像剤が吸引されるにしたがって、収納容器11内が減圧されると、収納容器11が折り目112に沿って変形して縮小し平らにつぶれて、最終的には図9(b)吸引管15沿って折りたたまれ、収納容器11は現像剤を消費し終わると減容する。
仮に、収納容器11中の吸引管15の上部にある面の変形の仕方が、上面11Bの粉体ポンプ14に近い側面11C側が先につぶれるように不均一な場合でも、図4で説明したように、複数の吸引孔16が容器長手方向に複数形成されているため、吸引力が維持され、現像剤を滞ることなく補給することができる。
また、図7に示すように吸引通路を容器内で枝分かれさせたり、吸引通路を複数挿入したりして、下面11Aの全域の面積をカバーするようにして収納容器11中の現像剤を吸引することも可能である。
上述したように、本形態では、容器内部の現像剤を容器外部に排出するのに、スクリュやコイル等の容器内部で回転駆動する現像剤搬送手段や、衝撃部材等の可動部材で収納容器11,110に対して振動を与えることなく現像剤を容器外部へ搬送するので、使用後の容積の減容が可能で水平方向に長い現像剤収納容器を水平に装置本体にセットした場合でも、衝撃力や衝突音の発生が無く、容器内部の現像剤を最後まで安定して容器外部に搬送することができる。
また、現像装置4に対して振動や容器内部で回転駆動する現像剤搬送手段を用いなくても安定して現像剤を供給することができるので、振動や現像剤不足がなくなり、良好な画像を得ることができる。
図8及び図9は、容器に折り目111,112を予め形成し、変形が一定になるように形成したが、複数の吸引孔16を持った吸引管15または、搬送パイプ131の他端131bが収納容器の内部にあれば現像剤を排出して現像装置4に補給することは可能である。このため、可撓性を有し、吸引によって変形する収納容器の初期の形状は、上記のような角形に限らず、円筒形やその他の不定形であってもよい。図8,図9は、吸引管15が一体に形成された収納容器11として説明したが、吸引管15を持たない収納容器110に適用しても同様の効果を得ることができる。
図10は、吸引手段12を構成する吸引ポンプ14の一形態を示す。この吸引ポンプは、所謂一軸偏芯型の粉体ポンプであり、モータなどの駆動手段416によりロータ413が回転し、剛体のロータ413と可撓性のある材質で形成されたステータ411に囲まれた空間412が搬送パイプ131と接続する吸引孔414側から出口415側に移動するので、そこで吸引力が発生し、各収納容器11,110内の現像剤を収納容器内から吸引することができる。
この吸引ポンプ14(粉体ポンプ)の形状は、ロータ143は一条螺旋形状で外形φ9.55/φ11.75長さが13.5mmで、ステータ411は二条螺旋形状で内径φ13.4/φ9.0、長さ13.5mmで形成した。この吸引ポンプ14を回転数300rpmで駆動することにより、30kPa以上の吸引圧力を発生して、各収納容器11、110内から現像剤を吸引する。通常は圧力10kPa程度で使用し、ポンプの回転数、回転時間は補給する現像剤の量によって制御する。ロータ413、ステータ411の形状および回転数は、補給する現像剤の種類及び補給量に応じた形状や条件にすることができる。
図11〜図13は、現像剤補給装置10,10Aを備える画像形成装置の形態を示す。図1に示す画像形成装置では、感光体1とその周囲の機器とを個別に設けたプリンタの例を画像形成装置として説明したが、図11は、像担持体100、帯電装置200、現像装置400、クリーニング装置500等を一つのケースに収めてプロセスカートリッジ900とした画像形成装置を示す。符号501は像担持体100用の除電ランプを示し、符号403は廃現像剤タンクを示す。
像担持体100には、複数のローラ間に巻き掛けられた無端状の搬送ベルト701が配置されている。搬送ベルト701の内側には、像担持体100と対向する位置に、転写ローラを有する転写手段700が配設されている。この転写手段700と像担持体100との間には、給紙部600から給紙ローラ601で搬送され、レジストローラ602でタイミングを取られた用紙Pが搬送ベルト701によって搬送され、転写手段700の機能によって像担持体100上のトナー画像が用紙Pに転写される。トナー画像が転写された用紙Pは、搬送ベルト701で搬送され、定着手段800によって定着される。
この形態では、プロセスカートリッジ900の現像装置400に対して、現像剤補給手段10または現像剤補給手段10Aで現像剤を補給することによって、プロセスカートリッジ900を継続的に使用し、同カートリッジの原材料の使用を減らすことができる。また、現像剤は粉体ポンプ(吸引ポンプ)14で搬送して補給するので、現像装置400と収納容器11,110の距離が近くても遠くても、確実に現像剤を搬送することができるので、収納容器11,110と現像装置400と位置関係を、画像形成装置本体内の限られたスペースを有効に使用可能とするレイアウトにでき、フレキシブル性が向上して装置全体の大きさを抑えることができる。また、プロセスカートリッジ900の取出し位置や、収納容器11、110の位置も適宜配置することが可能になる。
図12は、画像形成装置の別な形態を示す概略図である。図12に示す画像形成装置は、図11に示した画像形成装置とは違って、現像剤補給装置10または現像剤補給装置10Aを現像装置400の上方に配置している。現像剤補給装置10または現像剤補給装置10Aは、図1や図11に示したように収納容器11または収納容器110から現像剤を吸引するので、画像形成装置本体のスペースを有効に使うことのできる配置にすることができ、フレキシブル性が向上して装置全体の大きさを抑えることができる。
図13は、画像形成装置のさらに別な形態を示す概略図である。図13に示す画像形成装置は、フルカラーの画像形成を行なえる画像形成装置の一形態を示す。この形態では、像担持体100、帯電装置200、現像装置400、クリーニング装置500の1つの画像形成部20として構成し、この画像形成部20を4つ備えたカラー画像を形成可能な画像形成装置の形態を示す。
この画像形成装置は、4つの画像形成部20が互いに間隔をあけて並列に配置された所謂タンデム型の画像形成装置である。4つの画像形成部20は、現像装置400内に収納される現像剤の色が異なる以外は同一構成であり、イエロ、マゼンタ、シアン、ブラックの現像剤がそれぞれ収納されている。各画像形成部20の像担持体100には、複数のローラ801〜803間に巻き掛けられて、図中時計周りに回転移動する中間転写体となる中間転写ベルト804が配置されている。中間搬送ベルト804の内側には、像担持体100と対向する位置に、転写ローラを有する転写手段700が配設されている。中間転写ベルト804には、各画像形成部20の像担持体上に形成されるトナー画像が各転写手段700の作用によって転写される。
中間転写ベルト804を巻き掛けられたローラ803には、2次転写ローラなどから構成される2次転写手段805が対向配置されている。この2次転写手段805と中間転写ベルト804の間には用紙Pが搬送され、2次転写手段の作用により、中間転写ベルト804に転写された各色のトナー画像が用紙Pに一括転写される。各現像手段400には、補給するトナーの色が異なる収納容器11または収納容器110を備えた現像剤補給装置10または現像剤補給装置10Aがそれぞれ接続されている。
図1及び図11〜13に示した画像形成装置で用いるトナーは、高画質画像を実現するために、トナーの体積平均粒径が2〜8μmである。本トナーの重量平均粒径は3〜7μmであり、さらに好ましくは4〜6μmである。重量平均粒径3μm未満では長期間の使用でのトナー飛散による機内の汚れ、低湿環境下での画像濃度低下、感光体クリーニング不良等という問題が生じやすく、人体への影響も懸念される。また重量平均粒径が8μmを超える場合では100μm以下の微小スポットの解像度が充分でなく非画像部への飛び散りも多く画像品位が劣る傾向となる。
トナーには主に樹脂成分、顔料成分、ワックス成分及び外側の添加剤から形成されている。
樹脂としては、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレンメタクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、テルペン樹脂、ポリオール樹脂等がある。ビニル樹脂としては、ポリスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体:スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体:ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等がある。
ポリエステル樹脂としては以下のA群に示したような2価のアルコールと、B群に示したような二塩基酸塩からなるものであり、さらにC群に示したような3価以上のアルコールあるいはカルボン酸を第三成分として加えてもよい。
A群:エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4ブテンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3,3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2,0)−2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等。
B群:マレイン酸、フマール酸、メサコニン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタール酸、イソフタール酸、テレフタール酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、リノレイン酸、またはこれらの酸無水物または低級アルコールのエステル等。
C群:グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上のアルコール、トリメリト酸、ピロメリト酸等の3価以上のカルボン酸等。ポリオール樹脂としては、エポキシ樹脂と2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物、もしくはそのグリシジルエーテルとエポキシ基と反応する活性水素を分子中に1個有する化合物と、エポキシ樹脂と反応する活性水素を分子中に2個以上有する化合物を反応してなるものなどがある。
本発明で用いる顔料としては以下のものが用いられる。
黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物が挙げられる。
黄色顔料としては、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキが挙げられる。
また、橙色顔料としては、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGKが挙げられる。
赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bが挙げられる。
紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。
青色顔料としては、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBCが挙げられる。
緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ等がある。
これらは1種または2種以上を使用することができる。特にカラートナーにおいては、良好な顔料の均一分散が必須となり、顔料を直接大量の樹脂中に投入するのではなく、一度高濃度に顔料を分散させたマスターバッチを作製し、それを希釈する形で投入する方式が用いられている。この場合、一般的には、分散性を助けるために溶剤が使用されていたが、環境等の問題があり、本発明では水を使用して分散させた。水を使用する場合、マスターバッチ中の残水分が問題にならないように、温度コントロールが重要になる。
本発明のトナーには電荷制御剤をトナー粒子内部に配合(内添)している。電荷制御剤によって、現像システムに応じた最適の電荷量コントロールが可能となり、特に本発明を適用した現像装置では、粒度分布と電荷量とのバランスを更に安定したものとすることが可能である。トナーを正電荷性に制御するものとして、ニグロシンおよび四級アンモニウム塩、トリフェニルメタン系染料、イミダゾール金属錯体や塩類を、単独あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。また、トナーを負電荷性に制御するものとしてサリチル酸金属錯体や塩類、有機ホウ素塩類、カリックスアレン系化合物等が用いられる。また、本発明におけるトナーには定着時のオフセット防止のために離型剤を内添することが可能である。離型剤としては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックスなどの天然ワックス、モンタンワックスおよびその誘導体、パラフィンワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、サゾールワックス、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキルリン酸エステル等がある。これら離型剤の融点は65〜90[℃]であることが好ましい。この範囲より低い場合には、トナーの保存時のブロッキングが発生しやすくなり、この範囲より高い場合には定着温度が低い領域でオフセットが発生しやすくなる場合がある。
離型剤等の分散性を向上させるなどの目的の為に、添加剤を加えても良い。添加剤としては、スチレンアクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレンメタクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、テルペン樹脂、ポリオール樹脂等があり、それぞれの樹脂を2種以上混合した物でも良い。
樹脂は、結晶性ポリエステルを用いても良い。結晶性を有し、分子量分布がシャープでかつその低分子量分の絶対量を可能な限り多くした脂肪族系ポリエステルである。この樹脂はガラス転移温度(Tg)において結晶転移を起こすと同時に、固体状態から急激に溶融粘度が低下し、紙への定着機能を発現する。この結晶性ポリエステル樹脂の使用により、樹脂のTgや分子量を下げ過ぎることなく低温定着化を達成することができる。そのため、Tg低下に伴う保存性の低下はない。また、低分子量化に伴う高すぎる光沢や耐オフセット性の悪化もない。したがってこの結晶性ポリエステル樹脂の導入は、トナーの低温定着性の向上に非常に有効である。
トナーとしては、流動性向上剤として無機微粉体をトナー表面に付着または固着させてもよい。この無機微粉体の平均粒径は10〜200[nm]が適している。10[nm]より小さい粒径の場合には流動性に効果のある凹凸表面を作り出すことが難しく、200[nm]より大きい粒径の場合には粉体形状がラフになり、トナー形状の問題が生じる。
本発明の無機微粉体としてはSi、Ti、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、In、Ga、Ni、Mn、W、Fe、Co、Zn、Cr、Mo、Cu、Ag、V、Zr等の酸化物、水酸化物、炭酸化物、硫化物や複合酸化物が挙げられ、これらのうち安全性・安定性等から以下の酸化物を採用する事が多い。
特に、酸化珪素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミ(アルミナ、コランダム)の微粒子が好適に用いられる。さらに、疎水化処理剤等により添加剤の表面改質処理することが有効である。疎水化処理剤の代表例はシランカップリング剤で、以下のものが挙げられる。
ジメチルジクロルシラン、トリメチルクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルジクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、p−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、クロルメチルトリクロルシラン、ヘキサフェニルジシラザン、ヘキサトリルジシラザン等。
添加剤を疎水化処理することによって、ナノ粒子である添加剤の表面に水分が吸着しにくくなり、トナーの安定性が向上する。