JP5452874B2 - 高膨張泡消火設備 - Google Patents

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Description

この発明は、石油タンクのピット、石油コンビナートのカルバート、或いは、船室、船倉等に用いられる、高膨張泡消火設備に関するものである。
泡消火設備では、放射ノズルから泡水溶液を放出し、それを発泡用網に衝突させて空気を吸い込むことにより発泡させ、この泡で火源を埋め尽くして窒息消火を行っている。ここで泡水溶液と生成された泡の体積比を示す発泡倍率が、80以上1000未満となるものを、高膨張泡消火設備という。
高膨張泡、例えば、発泡倍率500以上で泡を発生させるためには、放射ノズルの上流側から大量の空気を取り込む必要があり、大量の空気を取り込む場合には、室外の空気を吸引する方式(「アウトサイドエア」という)が一般的である。
しかし、このアウトサイドエアでは、外部の空気を利用するため、建屋にダクトを貫設したり、隔壁に穴を開けて泡発生機(発泡機)を配設したりするので、コストが嵩む等の問題がある。
そこで、上記問題を解決するため、泡を放出する区画内の空気を吸引する方式(「インサイドエア」という)の高膨張泡消火設備が用いられている(例えば、特許文献1、参照)。このインサイドエアの高膨張泡消火設備では、アウトサイドエアの高膨張泡消火設備に比べ、著しく発泡倍率が低下するが、その主な原因は、火災の発生により室内に発生する「煙」である。
この煙は、固体の微粒子、例えば、粒径1μm以下の微粒子、となって室内に浮遊する。この微粒子が、放射区画の空気に混じって空気吸引部に吸引されたときに、空気と一緒になって起泡部に供給され、発泡倍率を低下させているのである。
本発明者は、前記問題を解決するためには、煙粒子を除去すれば良いことに気がついたが、それを除去しなくとも発泡倍率の低下を防止することができるのではないか、と考えた。
一般に、高膨張泡等の泡は、泡原液に含まれる界面活性剤の二層膜であり、親水領域を挟む内側薄膜と外側薄膜とから構成されているが、前記両薄膜は、並んで同時に形成されながら、空気を抱え込み泡状態になる、といわれている。そして、本件発明者は、煙粒子などの異物が存在すると、発泡倍率が良くないのは、標準設定で放射ノズルを運転した場合は、前記放射ノズルからの泡水溶液の液滴の速度が速すぎて、前記両薄膜の形成が追いつかず、前記両薄膜を並んで同時に形成することができなくなり、発泡用網の網目を通り抜けてしまうためである、と考えた。
そこで、前記水溶液の液滴の速度を遅くすればよいが、この速度を遅くする手段として、発泡用網の内側直近に網状の流動規制部を設けることが考えられる(例えば、特許文献2、参照)。この手段では、放射ノズルから放出された泡水溶液の水滴は、前記流動規制部を通ることにより減速され、この減速された状態で前記発砲網に衝突し発泡する。
特開平06−165837号公報 実開平05−053660号公報
従来例では、放射ノズルと流動規制部との間隔が長いため、流動規制部に当たる泡水溶液の勢いは弱く、それに伴い、流動規制部に当たった段階で泡が生じる可能性が高くなる。これは、泡水溶液の速度が速いと、そのままの液体の状態で流動規制部を通過するが、ある程度まで速度が低下すると、前記流動規制部を通過する際泡になる。
そして、発泡用網と流動規制部が近接して設けられているので、泡水溶液が流動規制部に当たる際に生じた泡が、該発泡用網と該流動規制部の取付け位置における隙間に溜ってしまい、その溜まった泡が空気の取り込みの邪魔となり、該発泡用網からうまく発泡が行えなくなってしまう。つまり、流動規制部によって生じた泡が発泡用網の網目の一部を塞いでしまうので、発泡用網の全面積を発泡に利用できなくなってしまう。そのため、発泡倍率が設計通りにならないのである。
この発明は、上記事情に鑑み、発泡倍率の低下を防止することを目的とする。
この発明は、筒状に形成された発泡機本体と、該発泡機本体の先端側に設けられた発泡用網と、前記発泡機本体内部の後端側に設けられ、前記発泡用網に向って円錐状に広がる放射パターンで泡水溶液を放射する放射ノズルであって、前記放射により、配設されている区画内の火災により発生した煙を含む空気を前記発泡機本体の後端側から前記発泡機本体内に取り込む放射ノズルと、前記発泡用網と前記放射ノズルの間に設けられた中間網であって、前記放射ノズルから放射される泡水溶液を通過させることにより減速させ、この減速状態で前記発泡用網に衝突させるための中間網と、を備えた高膨張泡消火設備において;前記放射パターンは、鈍角であり、前記中間網は、前記発泡用網の基端から離れた位置に配設されるとともに、前記放射ノズルの放射圧が0.5MPaの場合に、前記放射パターンの外周が前記発泡機本体の内壁に当たる着地位置から、前記発泡用網側に向かって前記発泡機本体の全長に、0.3を乗じた距離までの領域内に配設し、前記放射ノズルから放射された泡水溶液が前記中間網全体に当たる様にしたことを特徴とする。
この発明は、以上の様に、前記中間網は、前記発泡用網の基端から離れた位置に配設されるとともに、前記放射ノズルの放射圧が0.5MPaの場合に、前記放射パターンの外周が前記発泡機本体の内壁に当たる着地位置から、前記発泡用網側に向かって前記発泡機本体の全長に、0.3を乗じた距離までの領域内に配設し、前記放射ノズルから放射された泡水溶液が前記中間網全体に当たる様にしたので、放射ノズルから放射された泡水溶液は、前記中間網抵抗を受けながら通過して適切な発泡流速になり、その後前記発泡用網に衝突する。そのため、発泡倍率の低下を防止することができる。
本件発明者は、流動規制部(中間網)の位置を適切にすることにより、前記問題は解決するものと考え、次の様な実験を行った。
図7に示すように、全長100cmの発泡機本体1の先端部に発泡用網2を設け、該発泡機本体1の後端部側に、放射圧が0.5MPaの放射ノズル3を内蔵させると共に、中間網4の配設位置として、P−1、P0、P1、P2、P3を選択した。
前記位置P0は、放射パターンWPの外周が発泡機本体1の内壁と当たる着地位置で、発泡機本体1の後端(放射ノズル3側)から40cmの位置にある。
前記位置P−1は、前記着地位置P0の上流側(放射ノズル3側)で、該着地位置P0から放射ノズル3側に20cm引っ込んだ位置である。
前記位置P1は、放射ノズル3から放射された泡水溶液Wの液滴が、中間網4の網目を通過できる限界位置であり、この位置P1は前記着地位置P0から下流側(発泡用網2側)に30cm離れている。前記着地位置P0から位置P1までの領域を、液滴速度規制領域、と呼ぶことにする。
前記位置P2は、前記位置P1と発泡機本体1の先端(発泡用網2側)との間に位置し、前記位置P0から45cm離れている。
前記位置P3は、前記発泡機本体の先端の位置で、前記位置P0から60cm離れている。
前記中間網4は、線径0.5〜0.8mm、メッシュ数7〜8個、空間目2.5〜3mm、開口率60〜70%、である。
実験の結果、次のことがわかった。
(1)着地位置P0〜位置P1(液滴速度規制領域)
位置P0〜位置P1に中間網4を垂設すると、発泡倍率は、727〜750倍となった。これらの位置P0〜P1は最も発泡倍率が好適な位置である。
(2)位置P−1
位置P−1に中間網4を配設すると、発泡倍率が686倍であった。このように、
着地位置P0〜位置P1に中間網4を垂設したときと比べて発泡倍率が良くない理由として、次のことが考えられる。
中間網4を放射ノズル3に近接した位置に垂設すると、円錐状に放出された泡水溶液は、発泡機本体1の内壁に当たる前に、中間網4に当たる。つまり、泡水溶液は放射後すぐに中間網4に当たって、放射速度が低下してしまうので、十分に空気を取り込むことができない。
更に述べると、この高膨張泡消火設備は、アスピレータ方式と呼ばれるもので、放射ノズル3から放出された泡水溶液が、放水によって生じる負圧により、周囲の空気を吸引するものである。このため、泡水溶液を放出してすぐに中間網4に当たると、泡水溶液の勢いの低下が大きく、それにより空気の取り込み量が低下する。又、それ以外にも、放射パターンと空気との接触面積が低下するので、空気の取り込み量が低下する。
この位置で中間網に当たった泡水溶液は、その抵抗によって放射パターンの形状が、円錐の直径方向に小さくなり、発泡用網2の外側に当たる泡水溶液の量が減る。つまり、泡水溶液が発泡用網2に当たる量が不均一となり、当たる量が少ない部分から空気が抜け、当たる量が多い部分は発泡が追いつかず、それにより発泡倍率が低下する。
(3)位置P2
位置P2に中間網4を垂設すると、発泡倍率は、615倍となった。このように、着地位置P0〜位置P1に中間網4を垂設したときと比べて発泡倍率がよくない理由として、次のことが考えられる。
泡水溶液の放射速度が低下した状態で泡水溶液が中間網4に当たる。前記速度が低下している泡水溶液が中間網4に当たると、勢いがさらに抑制されてしまい、該中間網4を通り抜けることができない、又は、発泡網2まで届かない泡水溶液がでてくる。そのため、一部の泡水溶液は発泡用網2に到達しないので、うまく発泡が行えなくなってしまう。
(4)位置P3
位置P3に中間網4を垂設すると、発泡倍率は、545倍であった。このように、着地位置P0〜位置P1に中間網4を垂設したときと比べて発泡倍率が低い理由として、位置P2のときと同様の理由以外に次のことが考えられる。
放射ノズル3と中間網4との間隔が長いため、中間網4に当たる泡水溶液の勢いは弱く、それに伴い、中間網4に当たった段階で泡が生じる可能性が高くなる。これは、泡水溶液の速度が速いと、そのままの液体の状態で中間網を通過するが、ある程度まで速度が低下すると、前記中間網を通過する際泡になる。
特に、発泡用網2の形状が平面等で中間網4と隣接する場合、泡水溶液Wが中間網4に当たる際に生じた泡が、該発泡用網2と該中間網4の取付け位置における隙間に溜ってしまい、その溜まった泡が空気の取り込みの邪魔となり、該発泡用網2からうまく発泡が行えなくなってしまう。つまり、中間網4によって生じた泡が発泡用網2の網目の一部を塞いでしまうので、発泡用網2の全面積を発泡に利用できなくなってしまう。そのため、発泡倍率が良くないのである。
本件発明者は、上記実験により、中間網の配設位置として、着地位置P0〜位置P1の領域、
即ち、放射パターンの外周が前記発泡機本体の内壁に当たる着地位置から液滴が該中間網の網目を通過できる限界位置までの、液滴速度規制領域、
が最適であることを知り、この知見に基いて本発明を完成したものである。
この発明の第1実施例を図1〜図3により説明する。
火災監視区画である部屋(室)には、高膨張消火設備の発泡機Bが設けられている。この発泡機Bは、例えば、発泡倍率が500に設定されている。
前記発泡機Bは、筒状、例えば、断面方形状の発泡機本体1を備えており、該発泡機本体1の先端1a側には、発泡用網2が設けられている。前記発泡機本体1の後端1b側には、前記発泡用網2から所定距離、例えば、90cm、離れた位置に、放射ノズル3が内蔵されている。前記放射ノズル3は、前記発泡用網2に向って円錐状に広がる放射パターンWPで泡水溶液Wを放射する。
前記発泡機本体1内は、中間網4により仕切られている。この中間網4は、該本体1内に垂設され、その取付部5は、ビス6により内壁1fに固定されている。前記中間網4は、前記放射パターンWPの外周が発泡機本体1の内壁1fと当たる位置P0(着地位置)に設けられているが、この位置P0は、例えば、発泡機本体1の長手方向の中心から放射ノズル3側で、発泡機本体1の後端1bから40cm、離れている。
この中間網4は、方形状に形成され、線径0.65mm、メッシュ数7個、空間目2.98mm、開口率67.39%、に形成されている。これらの寸法は、必要に応じて適宜選択されるが、選択範囲としては、線径0.5〜0.8mm、メッシュ数7〜8個、空間目2.5〜3mm、開口率60〜70%、が好適である。
なお、開効率εは、次の式により求めることができる。但し、Aは空間目、dは線径を示す。
ε={A/(A+d)}2×100
次に、本実施例の作動について説明する。
前記火災監視区域内で火災が発生すると、図示しない火災感知器が該火災を検知し、制御盤に火災信号を送信する。
そうすると、該制御盤は、前記高膨張泡消火設備を起動させるので、発泡機本体1内に室内空気、即ち、前記発泡機本体1が配設されている近傍の部屋の空気Kが吸引されるとともに、放射ノズル3から泡水溶液Wが液滴となりながら円錐状の放射パターンWPを描いて放射される。
このとき、放射ノズル3の放射角度は鈍角で放射されており、短い距離で中間網全体に泡水溶液を当てることができ、放射角度が鋭角なものと比べて、発泡機本体1の全長を短くすることができる。
この放射パターンWPの外周は、発泡機本体1の内壁と当たると同時に、液滴状となっている泡水溶液Wは中間網4の抵抗を受けながら網目を通過し減速される。この様に、前記泡水溶液Wは、中間網4により減速された後、発泡用網2に衝突して網目を通り発泡する。
この時、前記発泡用網2の網目への流入速度は、放射ノズル3からの放射圧力が高いのにかかわらず、前記中間網4により規制されて遅くなっているので、泡水溶液Wは、発泡し易い速度状態となっている。そのため、前記泡水溶液Wの液滴は、効率よく高膨張泡を形成することができる。
この発明の第2実施例を図4により説明するが、図1〜図3と同一図面符号は、その名称も機能も同一である。
この実施例と第1実施例との相違点は、中間網4の配設位置である。即ち、この配設位置P1は、前記放射ノズル3から放射された泡水溶液Wの液滴が、中間網4の網目を通過できる流速を維持できる限界位置である。
前述したように、本実施例では、前記放射パターンの外周が前記発泡機本体の内壁に当たる着地位置P0から液滴が該中間網4の網目を通過できる限界位置P1までの領域を、液滴速度規制領域、と呼んでいる。この位置P1は、前記着地位置P0より所定距離L、離れているが、この所定距離Lは、例えば、30cm、である。前記液滴速度規制領域の長さは、前記発泡機本体1の全長に、0.3を乗じた長さと同一、又は、略等しい長さに形成されている。
この実施例においても、泡水溶液Wは、中間網4により流速を適切に規制された後に、発泡用網4に衝突するので、設計した発泡倍率を得ることができる。
この発明の第3実施例を図5、図6により説明するが、図1〜図3と同一図面符号は、その名称も機能も同一である。
この実施例と第1実施例との相違点は、放射ノズル3が複数個配設されていることである。前記放射ノズル3の数は、例えば、4個であり、これらのノズル4は、並列に配設され、その先端部は、同一垂直面上に位置している。
本発明の実施例は、上記に限定されるものではなく、例えば、中間網4を垂設する代わりに、所定角度傾斜させて設けても良い。この傾斜角度は、例えば、1〜30度の範囲内で適宜選択することができる。
その他にも、中間網の空間目は、均一である必要はなく、放射ノズル3から放射される泡水溶液の圧力分布に応じて、その空間目の大きさを適宜選択することができる。
本発明の第1実施例を示す縦断面図である。 図1のII-II線断面図である。 中間網の拡大正面図である。 本発明の第2実施例を示す縦断面図である。 本発明の第3実施例を示す縦断面図である。 図5のVI-VI線断面図である。 本発明の実施の形態を示す縦断面図である。
符号の説明
1 発泡機本体
2 発泡用網
3 放射ノズル
4 中間網
B 高膨張泡消火設備
w 泡水溶液

Claims (1)

  1. 筒状に形成された発泡機本体と、該発泡機本体の先端側に設けられた発泡用網と、前記発泡機本体内部の後端側に設けられ、前記発泡用網に向って円錐状に広がる放射パターンで泡水溶液を放射する放射ノズルであって、前記放射により、配設されている区画内の火災により発生した煙を含む空気を前記発泡機本体の後端側から前記発泡機本体内に取り込む放射ノズルと、前記発泡用網と前記放射ノズルの間に設けられた中間網であって、前記放射ノズルから放射される泡水溶液を通過させることにより減速させ、この減速状態で前記発泡用網に衝突させるための中間網と、を備えた高膨張泡消火設備において;
    前記放射パターンは、鈍角であり、
    前記中間網は、前記発泡用網の基端から離れた位置に配設されるとともに、前記放射ノズルの放射圧が0.5MPaの場合に、前記放射パターンの外周が前記発泡機本体の内壁に当たる着地位置から、前記発泡用網側に向かって前記発泡機本体の全長に、0.3を乗じた距離までの領域内に配設し、前記放射ノズルから放射された泡水溶液が前記中間網全体に当たる様にしたことを特徴とする高膨張泡消火設備。
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