自動車エンジン等の内燃機関の着火に使用される公知のスパークプラグの一例として、図8に示した構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このスパークプラグ1は、先端(図8下端)に中心電極5を突出させた中空軸状(筒状)のセラミック製の絶縁体(筒状碍子または絶縁碍子)21と、この絶縁体21を包囲する形で保持、固定する筒状の(軸孔を有する)主体金具31、さらには、この主体金具31の先端31aに、中心電極5の先端とで火花ギャップを形成するように設けられた接地電極51などから構成されている。このようなスパークプラグ1は、主体金具31の先端寄り部位の筒状部の外周面に設けられたエンジンへの取り付け用のネジ34を、図示しないエンジンヘッドのプラグホール(ねじ穴)に、自身の後端寄り部位に設けられたねじ込み用多角形部38を介して回転させてねじ込み、この多角形部38とネジ34との間に位置するフランジ37をエンジンヘッド(プラグホールの開口端周縁)に着座させて取り付けられるように構成されている。なお、本願において、スパークプラグ1、又はその構成部材である主体金具31や絶縁体21等の構成部品及び部位(又は部分)において、先端というときは、図8におけるそれらの下端を言い、後端というときはその逆の端(上端)を言うものとする。
上記のようなスパークプラグ1を構成する主体金具31は、その内周面(内径)が、先端寄り部位(の内周面32)に対し、後端寄り部位(の内周面33)が大径をなすように形成されている。一方、絶縁体21は、先端に中心電極5を突出させている先方軸部(碍子脚部)22から後方に向けて、順次大径をなし、主体金具31の先端寄り部位の内周面33に包囲される先端側支持軸部25、そして、この主体金具31の後端寄り部位の内周面33に包囲される後端側支持軸部27とを備えている。そして、この後端側支持軸部27よりもスパークプラグ1の後端の端子3に向かう後方部位(主体金具31の後端より後方部位)は、それより細い後方軸部29をなしている。
このように形成された絶縁体21は、その先端側支持軸部25の先端(先端側支持軸部25の先端と先方軸部22の後端との境界部)に、環状で先細りテーパをなす先端向き環状テーパ面(環状突合せ部)23を備えており、その環状突合せ部23を、主体金具31の先端寄り部位の内周面32において内向きに突出する突出部35のうち、先すぼまり状のテーパをなす後端向きテーパ面である環状の受棚(環状受け棚)36に、気密保持部材として円環状(リング状)をなす金属製のパッキン(単にパッキンとも言う)41を介在させて突き合わせ、このパッキン41を介した突き合わせないし嵌合により気密の保持を図りつつその固定がなされている。すなわち、この突き合わせ状態の下で、主体金具31の後端部に設けられたカシメ用筒部39を内側(軸線G側)に折り曲げ、その筒部39であった折り曲げ部で、後方軸部29より相対的に大径をなす後端側支持軸部27の後端(環状後端向き面)28を先端側に圧縮するように加締めることで、前記した円環状(リング状)をなす金属製のパッキン41を先後に圧縮し、主体金具31内に絶縁体21を気密を保持して固定している。
上記のような構成のスパークプラグ1の製造においては、従来、図9に示したように、まず、主体金具31内に、環状をなすパッキン41を内挿して環状受け棚36に同心状に載置し、その後、中心電極5等を含む絶縁体21を内挿してから、上記したカシメ工程を行っていた。ところで、このように載置されるパッキン41は、円環状のものであるが、元々(組付ける前の部品)は、平座金形状の平板(以下、平パッキン41ともいう)である。一方、環状受け棚36は、図9の拡大図にも示したように、所定のテーパで、先すぼまり状のテーパ座面(凹面)をなしている。したがって、平パッキン41は、これを環状受け棚36に配置しただけの段階では、自身の先端向き面のうち、外周縁(外周縁又は外周縁寄り部位における円周部)がその環状受け棚36の外周縁(又は外周縁寄り部位)にて支持された状態となっている(図9の拡大図参照)。
その後、中心電極5等を含む絶縁体21を、主体金具31の後端側からその内側に内挿するのであるが、内挿される絶縁体21の先端側支持軸部25の先端の環状突合せ部23は、前記した環状受け棚36と同じ(又は同程度)のテーパで、先細り状のテーパ面(凸面)を有している。したがって、この段階で、絶縁体21の環状突合せ部23の内周縁(内周縁又は内周縁寄り部位における円周部)は、パッキン41の後端向き面の内周縁(又は内周縁寄り部位)に突き当っている状態にある(図9の拡大図参照)。すなわち、パッキン41の先後には、それぞれのテーパに対応した空隙が存在する。
このため、従来は、図9に示した段階において、その絶縁体21の後端側から、図中、2点鎖線で示したように、パイプ状の押圧ジグ(押圧体)60を外嵌し、絶縁体21におけるその後端側支持軸部27より後方の後方軸部29の外周面と、主体金具31の後端寄り部位(カシメ前のカシメ用筒部39)の内周面33との間に、この押圧ジグ60を配置し、この押圧ジグ60の先端(環状先端面)で、絶縁体21の後端側支持軸部27の後端の環状後端向き面28を先方にプレスしていた。すなわち、このプレスによって、平パッキン41を主体金具31における環状受け棚36、と絶縁体21における環状突合せ部23の両テーパ間で、強く挟み付けるように圧縮し、これを両テーパに近いテーパ(皿状)に、事前に成形(塑性変形)していた。
そして、このように塑性変形させたパッキン41や絶縁体等を主体金具31の内部に含むな仕掛品を、主体金具31の後端のカシメ用筒部39のカシメ工程に回し、そこで、上記したようにカシメ用筒部39を加締めることで、主体金具31内に絶縁体21を固定し、同時に、テーパ状に成形したパッキン41を上記両テーパ間で先後に圧縮して、主体金具31の内周面と絶縁体21の外周面との間の気密を確保して、スパークプラグの組立を行っていた。
なお、従来において、主体金具31の後端のカシメ工程における圧縮で同時に、パッキン41を平パッキン41からテーパ状に変形することとはせず、そのカシメ工程に先行して、別途、上記のようにテーパ状に先行成形(先行圧縮による予備成形)するかについては、次のような理由による。というのは、主体金具31の後端のカシメに必要な圧縮力と、平パッキン41をテーパ状に変形させてシールを確保するのに必要な圧縮力とは、基本的に大きく異なるためである。すなわち、信頼性の高い気密(シール性)を得るためには、パッキン41が、所定のテーパに予め変形されている必要があるが、そのためには、主体金具31の後端の加締め工程におけるプレスにおいて付与されるべき圧縮力よりも、相当程度大きい圧縮力を要するためである。別の言い方をすると、後端のカシメ工程における1回の圧縮工程で、同時にそのパッキンを所望とするテーパ状に変形し、かつ、高度のシールも確保されるように強くプレスすると、後端部のカシメにおける主体金具31の潰されや変形が好ましい状態に保持されないことがあるなどの問題があるためである。
ところで、近時は、スパークプラグ1の小型、小径化が強く要請されてきており、主体金具31の外周面に形成されている取り付け用のネジ34も、益々小さい(小径)ものが要請されている。一方、筒状をなす絶縁体21の小径化は、その肉厚の減少を招くことになり、高度の電気的な絶縁性(耐電圧性)の確保の観点からは難しい。こうしたことから、近時のスパークプラグ1においては、主体金具31の内周面33と、絶縁体21の後端側支持軸部27の外周面との間の半径方向のクリアランス(隙間)を小さくする設計を余儀なくされてきている。これにより、小径のものでは、主体金具31の内周面33と、絶縁体21の後端側支持軸部27の外周面との隙間が極めて小さくしか確保できないようになってきている。その結果として、絶縁体21の後端側支持軸部27の後端の環状後端向き面28の半径方向の幅は極めて小さくなってきている。こうしたことから、従来の押圧ジグ60を用いる上記した手法で、平パッキン41をテーパ状に先行成形するには、そのパイプ状の押圧ジグ60の肉厚(パイプの肉厚)も、その隙間にあわせて極めて薄いものとせざるを得ず、したがって、それに起因してスパークプラグ1の製造、組み立てにおいて深刻な問題が発生してきている。具体的には、絶縁体21の外部露出部(後端側支持軸部27より後方の後方部位29)における外径が12mm以下となり、主体金具31がこれを包囲するような寸法設定(ネジ径:M14以下、M12,M10など)となる小径のスパークプラグを製造する場合である。
すなわち、このようなスパークプラグの小径化により、押圧ジグ60には、肉厚の薄いパイプを用いざるを得ないため、これを用いた上記した手法で、絶縁体21を介して平パッキン41を圧縮して、これをテーパに成形する工程においては、そのジグ60をなすパイプの先端の肉厚が極端に薄いことに起因して、その先端が潰れる等の変形が発生しやすいという問題の発生である。これにより、その押圧ジグ60の寿命が極めて短くなってきており、ジグの交換回数が増え、それに伴う交換手間が大きくかかるようになり、スパークプラグ1の製造効率の大幅な低下を招いているといった問題が発生している。
また、このような押圧ジグ60の薄肉化により、絶縁体21の環状後端向き面28が受ける単位面積あたりの圧縮力(面圧)が著しく大きくなり、これが原因で絶縁体21にキズが付いたりクラックが発生することもある。このようなキズやクラックの発生は、その発見も容易でない場合がある上に、これがスパークプラグの製造歩留まりの低下を招くため、重大な問題となっている。しかも、近時はスパークプラグの小径化が益々強く要請されてきており、したがって、上記した従来の手法では、そのような小径化の要請への対応が困難になってきている。
本発明は、スパークプラグの製造における如上の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、主体金具に内挿される筒状の絶縁体のうち、先端側支持軸部の先端の環状突合せ部を、主体金具内に形成された環状受け棚にて、気密性を保持して支持させるのに使用される環状のパッキン(気密保持部材)を、素材における平パッキンからテーパ状に圧縮成形するのに、主体金具を含むスパークプラグの小径化が進んだとしても、問題なくその圧縮成形をすることができる、スパークプラグの製造方法を提供することをその目的とする。
第1の発明は、軸孔を有する絶縁体と、前記軸孔に挿設される中心電極と、前記絶縁体の外周に配置される主体金具と、該主体金具の内側において、前記絶縁体を受ける環状受け棚と、前記主体金具と該環状受け棚との間に配置される気密保持部材とを有するスパークプラグの製造方法であって、
前記環状受け棚に、前記気密保持部材をなすための環状の平座金形状のパッキンを配置し、この平座金形状のパッキンの配置後、前記絶縁体を前記主体金具内に固定する前の段階において、
前記主体金具内にその後端側から、前記環状受け棚のテーパに対応する先細りテーパに形成された先端向き面である環状のプレス成形面を有する押付け体を挿入し、該プレス成形面にて前記平座金形状のパッキンをプレスすることによってテーパ形状のパッキンに変形しておくことを特徴とする。
第2の発明は、前記押付け体は、前記平座金形状のパッキンと前記プレス成形面とが接するとき、前記プレス成形面の中央において前記平座金形状のパッキンより先方に向けて突出する突出部を有していることを特徴とする、第1の発明のスパークプラグの製造方法である。そして、第3の発明は、前記突出部は、該パッキンがプレスされる際に、ガイド用軸部をなしていることを特徴とする、第2の発明のスパークプラグの製造方法である。また、第4の発明は、前記突出部は、前記平座金形状のパッキンをプレスした後において、前記平座金形状のパッキンの内側に隙間嵌め状態で嵌合することを特徴とする、第2又は第3のいずれか1の発明のスパークプラグの製造方法である。
第5の発明は、少なくとも、前記平座金形状のパッキンをプレスすることによってテーパ形状のパッキンに変形した後から、該押付け体を後退させる工程中、
該主体金具内にその後端側から流体を流し込むことを特徴とする、第1〜第4のいずれか1の発明のスパークプラグの製造方法である。また、第6の発明は、前記流体が圧縮空気である第5の発明のスパークプラグの製造方法である。
本発明では、主体金具内に配置した平座金形状のパッキン(平パッキン)をテーパ状のパッキン(テーパパッキン)に成形するにあたり、従来のように、絶縁体(内部に中心電極等を内挿、配置させた筒状の絶縁部材)を内挿し、この絶縁体を介してパイプ状の押圧ジグで、平パッキンをテーパパッキンに成形するのではない。すなわち、本発明では、この絶縁体を介することなく、これとは別の押付け体(以下、単にジグとも言う)を主体金具内に挿入し、そのプレス成形面にて前記平座金形状のパッキンをプレスすることによってテーパ形状(以下、テーパ状、又は単にテーパともいう)のパッキンに変形、成形するものである。よって、従来のようなパイプからなる押圧ジグとは異なり、その先端を薄くする必要もなく、中実材(例えば丸棒)からなる押付け体とすることができるため、その寿命が短くなることを防止できる。したがって、ジグの交換回数が増大することもないので、スパークプラグの製造効率の低下を招くこともない。
また、絶縁体を介してプレスするものでないから、絶縁体にクラックが発生することもない。この意味において、スパークプラグの製造歩留まりの低下を招くことも防止できる。よって近時のように、スパークプラグの小径化がさらに強く要請されるとしても、その組立て上の問題なくその製造ができるため、これまでより小径の主体金具のスパークプラグの製造にも問題なく対応できる。なお、パッキンは、塑性変形しやすい構造用圧延鋼材などが用いられるため、押付け体は、これより高強度材(例えば、炭素工具鋼、合金工具鋼、高速度鋼など)で形成すればよいが、HRC50以上のものとするのが好ましい。
第2又は第3の発明では、その突出部が、プレス成形時のガイドとなってパッキンの孔(内側)に入り込むことができ、それによって成形前の平パッキンの位置決めをすることができるため、プレス成形を安定して行うことができる。また、パッキンはプレスされて変形する際に、外周側に拡がる(外径が大きくなるように変形する)と共に、内周側に拡がる(内径が小さくなるように変形する)ことがある。このように内径が小さくなるように変形しても、 第4の発明のように、プレス後、隙間が保持されてることとした場合には、押付け体をプレス後に後退させる(戻す)ときでも、その隙間がある分、押付け体との分離が確保できる。これにより、パッキンが押付け体につられて一緒に持ち上がる、といった問題を解消できる。したがって、突出部は、少なくとも、プレス成形時において、パッキンの内側(孔)と、微小でもよいから確実な隙間嵌め状態が得られるようにするとよい。そして、そのためには、突出部(又はガイド用軸部)は、その横断面が細い(小さい)方が良いが、あまり細いとパッキンの姿勢ないし位置が不安定となる。このため、突出部又はガイド用軸部は、微小隙間での隙間嵌め状態になるようにするとよい。
第5の発明のように、圧縮空気などの流体を流し込むことにより、パッキンを先端側に押付けることができる。したがって、その状態で、押付け体(ジグ)をプレス後に後退させるときでも、パッキンがジグに密着して一緒に持ち上がることを効率的に防止できるし、そのような持ち上がり等に起因するパッキンの傾きや反転などの問題も解消できる。すなわち、テーパ状にプレス成形後のパッキンは、テーパをなすジグのプレス成形面(以下、単に成形面とも言う)に密着したり、食い付きを起こしやすいため、プレス後、後退させる押付け体と一緒に持ち上がったり、その過程で、パッキンの外周縁の一部が主体金具の内周面に接触したりすることがあり、不安定な傾斜姿勢で落下し、その反動で反転して裏向きとなって環状受け棚に着座することがある。しかし、このように圧縮空気などの流体を流し込むことで、それらの防止が図られるため、次工程における円滑化が図られる。なお、流体の流し込みは、平パッキンを主体金具内に内挿した後、プレス過程の終了まで(ジグの後退完了まで)の全工程において行っても良いが、少なくとも、プレス開始後、押付け体(ジグ)の引き上げ(後退)過程において行えば良い。なお、流体は圧縮空気とするのが好ましいが、油を用いてもよい。
本発明を具体化した実施形態例について、図1〜図7に基づいて説明する。ただし、本例で製造されるスパークプラグの全体(完成品)の構成自体は、従来のもの(図8のもの)と基本的に同じものである。このため、それについての説明は省略するが、その構成部品である主体金具(接地電極の曲げ形成前のもの)31について説明した後、この内部に、気密保持部材である環状の平座金形状のパッキン(平パッキン)41を内挿して、該平パッキン41をテーパ状にプレスするプレス工程を中心としてその製造方法について説明する。
図1中、31は、本例で製造されるスパークプラグを構成する異径同心で筒状をなす主体金具である。この主体金具31は、その先端(図1の下端)31aから後方(図1の上方)に向かう所定範囲の円筒部の外周面に、エンジン(プラグホール)への取付け用のネジ34を備えており、そのネジ34の後方には、そのネジ込み時におけるシール確保用のフランジ37を有している。このフランジ37は、軸線G方向から見て円形をなし、円筒部の外周面において同心で外方に突出するように、そのネジ34より外径が大径をなしている。そして、この円形のフランジ37の後方にはねじ込み用の多角形部38を膨出状に備えており、この多角形部38の後方には薄肉のカシメ用筒部39を有している。
一方、主体金具31の内周面は、ネジ34を有する円筒部の内周面32における内径に対し、フランジ37の後端(図示上端)寄り部位より後方の内周面33が、大径で同心状に形成されている。ただし、ネジ34を有する下方の円筒部の内周面32における先後方向の中間部には、周方向に沿って内向きに突出し、内径が円筒部の内周面32の内径より小径をなすフランジ35を備えており、この内向きに突出するフランジ35における後端向き面が、パッキン41が載置される環状受け棚36をなしている。この環状受け棚36は、先すぼまり状で、例えば、角度θが約30度の所定のテーパに形成されている。なお、外周面にネジ34を有する円筒部の先端31aには、主体金具31の軸線Gに沿って先方に向けて真っ直ぐ延びる曲げ加工前の接地電極51用の部材(棒状部材)が、その基端を介して溶接されている。
さて、次に、図2〜図6を参照しながら、本例製法において使用するプレス装置について説明する。このプレス装置は、上記した主体金具31をその先端31aから挿入させて、この主体金具31を支持するように形成された支持用金型をなす下型100と、パッキン41を圧縮変形する軸状の押付け体をなすパンチ(上型、上型パンチともいう)200、さらに、詳細は後述するが、この上型パンチ200を包囲しかつプレス工程において、この上型パンチ200に沿って主体金具31内に空気(圧縮空気)を供給可能の空気供給装置300とを含んで構成されている。なお、例えば、下型100は、プレス装置における図示しない固定盤に取付けられており、上型パンチ200及び空気供給装置300は、所定ストロークで上下動可能の図示しない可動盤にそれぞれ取付けられている。
このうち、下型100は、主体金具31をその先端31aから挿入し、外周面のネジ34の形成面である円筒部を収容可能なように、そのネジ34の外径より大きい(僅かに大きい)内径を有する横断面が円形の縦穴103を有している。そして、この縦穴103の内周に沿う上端縁面105にて、主体金具31における外周面のフランジ37の先端向き面を支持可能に形成されている。
また、上型パンチ(押付け体)200は、下型100の縦穴103と同軸で配置された、同心異径の円断面の円柱体からなり、図示下から、外径が、主体金具31のネジ34の形成面をなす円筒部内の内向きフランジ35の内径、及びプレス成形前の平パッキン41の内径より微量小さく、プレス過程において平パッキン41の内側に遊嵌状態(隙間嵌め状態)で嵌合し、かつそれより先方に突出する突出部をなすガイド用軸部203と、このガイド用軸部203より大径で、円筒部の内周面32の内径より小さい円柱状の成形用軸部207と、この成形用軸部207より大径で、主体金具31の後端寄り部位の円筒部の内周面33の内径より微量小さい基軸部209とを有している。この上型パンチ200は、成形用軸部207と、ガイド用軸部203との境界部である先端向き端面(環状端面)が、先細りテーパをなし、このテーパをなす環状端面が、平パッキン41をテーパ状に成形するプレス成形面205をなすように、主体金具31の環状受け棚36と同一テーパに形成されている。なお、成形用軸部207の長さ(軸長)は、主体金具31の後端と環状受け棚36との先後長より若干小さく設定されており、したがって、平パッキン41をプレスした際、成形用軸部207の後端が、主体金具31の後端より微量、先端側に位置するように設定されている。
なお、ガイド用軸部203は、上記もしたように、その外径が平パッキン41の内径より小さく設定されているが、プレスして変形させた後のテーパ状のパッキン41の内径よりも小さいものとなるように設定されている。またガイド用軸部203の長さは、成形用軸部207の長さと同程度とされている。そして、このような上型200は、上記した下型100内に配置される主体金具31のハンドリング(挿入、取り出し)を可能とするように、必要なストローク上下動が可能に、プレス装置の可動盤に取付けられている。なお、ガイド用軸部203の先端の外周には、面取りが付けられている。また、基軸部209、及び成形用軸部207は、主体金具31内に挿入された際に、その主体金具31の内周面となるべく小さい空隙となるように設定しておくのが、位置決め(センタだし)精度も向上し、パッキン41の成形精度も向上する。その空隙(隙間)が、直径で1mm以内となるようにしておくのが好ましい。
一方、本例では、圧縮空気供給装置300を備えているが、これは、上型200をなす基軸部209を包囲しかつ、上下にスライド可能の包囲部材303を備えている。すなわち、圧縮空気供給装置300は、平パッキン41のプレス工程において、主体金具31内に、成形用軸部207とガイド用軸部203とを挿入している際、その外周面と包囲部材303との間の空隙を通して、主体金具31内に圧縮空気を供給(送り込み)可能に形成されている。具体的には、この包囲部材303に設けられたガス流路(横穴)305に取付けられた配管307、バルブ(開閉弁)309及び図示しないコンプレッサ等から構成されている。すなわち、この包囲部材303において、上型パンチ200を包囲するように形成された縦穴311は、その基軸部209を上下にスライド可能に形成されていると共に、この縦穴311の内周面の一側(図示左)には上下に延びる凹溝313が形成されており、配管307内を外部(コンプレッサ)から送られた圧縮空気を、この凹溝313を通して包囲部材303の先端に供給(送り込み)可能に形成されている。そして、包囲部材303は、図示その先端側が先すぼまり状テーパ部をなしているが、図2の拡大図に示したように、そのテーパ部の先端面315と、内周面317との角には、その内周に沿って、断面矩形で先端側に向けて開放された環状溝319を有しており、圧送された圧縮空気は、この環状溝319から先端側(図2下向き)に吐き出されるように形成されている。なお、包囲部材303の先端の環状溝319における内周面と、テーパ部の先端面(先端向き面)315とのなす角には、その内周に沿って例えば45度で、先端側に向けて拡径するような拡径面取り部321を備えている。
このような包囲部材303を含む圧縮空気供給装置300は、上型パンチ200に沿って、別途、上下動可能に配置されており、この拡径面取り部321は、プレス過程で、下型100内に配置された主体金具31の後方のカシメ用筒部39の後端面とその外周面とのなす角に、その周方向に沿って当接し、図示しないコンプレッサから供給される圧縮空気が主体金具31内に効率的に供給されるようにされている。
すなわち、圧縮空気は、その開閉弁309を開閉制御することで、コンプレッサから、配管内307を経て開閉弁309を介し、包囲部材303の横穴305を通り、包囲部材303の縦穴311にいたり、押付け体200の成形用軸部207とガイド用軸部203との外周面と、縦穴311の内周面に形成された凹溝313に沿って先端に向けて圧送され、環状溝319に至り、先端に向けて主体金具31内に吐き出されるように構成されている。
しかして、本例製法においては、図2の左図に示したように、プレス装置を駆動し、上型200を上動して型開き状態としておき、その下で、図2の右図に示したように、下型100の縦穴103内に、その上端から主体金具31を挿入して、フランジ37の先端向き面を下型100の縦穴103の上端縁面105にて支持させる。次に、平パッキン41を主体金具31の後端側から内挿し、環状受け棚36に載置する。この平パッキン41は、その外径が主体金具31の円筒部の内周面32の径より若干小さく、その内径は環状受け棚36の内径と略同一に設定されている(図3参照)。これにより、図3に示したように、平パッキン41は、その先端向き面の外周縁が、環状受け棚36の外周縁寄り部位にて支持される。なお、パッキン41は、このようになるように、主体金具31内を下型100内に挿入、配置する前に、事前に挿入、配置しておいても良い。
次に、型閉じするため、図4−左図に示したように、例えば、本例では上型200と共に、圧縮空気供給装置300を含む包囲部材303を下動し、そのテーパ部の先端の拡径面取り部321が、下型100内に配置された主体金具31の後方のカシメ用筒部39の後端面とその外周面とのなす角に、周方向に沿って当接するようにし、主体金具31の後端(開口)を閉塞する。次に、図4−右図に示したように、上型200を所定ストローク押し下げ、その成形用軸部207における先端(ガイド用軸部203との境界部)の先端向き端面(環状のプレス成形面205)で、平パッキン41を圧縮する。この圧縮過程では、ガイド用軸部203はパッキン41の内側(孔)に入り込んだ状態(嵌合状態)となって、平パッキン41は、環状受け棚36と、成形用軸部207における先端のプレス成形面205とで圧縮され、所望とするテーパに塑性変形される(図4の右図の拡大図参照)。
かくして、この塑性変形後は、上型200すなわち、押付け体200を後退させること(上動させること)で、型開きし、その後、主体金具31内の環状受け棚36上において、所望とするテーパに塑性変形されたテーパパッキン41を有する主体金具31を、下型100から取り出すのである。ただし、本例では、図5に示したように、上型200の引き上げ開始と同時に、又は、その開始前に、包囲部材303の横穴305から主体金具31内に向けて、破線矢印で示したように圧縮空気を供給開始し、上型200の引き上げ終了まで、供給し続け、その後、その供給を停止する設定としている。これにより、仮に、成形後のテーパパッキン41の後端向き面が、成形用軸部207の先端であるプレス成形面205に食いついていたり、成形後のテーパパッキン41の内周面がガイド用軸部203の外周面に食いついていたりしても、テーパパッキン41が、上型200にくっついて、一緒に浮き上がるということが効果的に防止される。また、テーパパッキン41が、上型200にくっついて浮き上がるようなことがあるとしても、その過程で、同パッキン41は圧縮空気により環状受け棚36に向けて押さえつけられるため、それが傾いたり、不安定姿勢での載置となることも、さらには反転して裏向きとなるといった問題も回避されるという効果が得られる。
かくして、図6に示したように、上型200を後退させ終わった後、圧縮空気の供給停止と同時に、又は停止後、包囲部材303を含む圧縮空気供給装置300を所定ストローク上動して型開きを終了した後、図6中、拡大図に示したように、環状受け棚36上においてテーパ状に塑性変形させられたパッキン41を有する主体金具31を、下型100から取り出すのである。
以後は、図7の左図に示したように、この状態の主体金具31内に、従来と同様に、中心電極5等を内蔵した絶縁体21を含む組立体を、その先端から内挿する。そして、カシメ用筒部39の内側に図示しないシール材等を装填した後、図7の右図に示したように、主体金具31の後端のカシメ用筒部39を内側に折り曲げると共に、先端側に圧縮してカシメを行い、主体金具内に絶縁体を固定し、接地電極51を所定形状に折り曲げて中心電極5との火花ギャップを形成することで、スパークプラグ(完成品)が得られる。
上記したよう本例では、主体金具31内に配置したパッキン41をテーパ状に成形するにあたり、従来のように、絶縁体21を内挿し、この絶縁体21を介してパイプ状の押圧ジグ60で圧縮するのではなく、上型パンチ(押付け体)200を挿入し、そのプレス成形面205にて平座金形状のパッキン41をプレスすることによってテーパ形状のパッキン41に変形するものである。よって、従来のような筒状体(円筒体)からなる押圧ジグ60とは異なり、その先端を薄くする必要もなく、中実材(丸棒)からなる上型パンチ等の押付け体200を用いることができるため、その寿命の延長を図ることができる。したがって、従来のように押圧ジグの交換回数が増大することもないので、製造効率の低下を招くこともないし、絶縁体を介してプレスするものでないから、絶縁体にクラックが発生することも防止できるから、スパークプラグの製造歩留まりの低下を防止できる。かくては近時のように、スパークプラグの小径化が強く要請されているとしても、その組立て上の問題もなく、その製造ができるため、これまでより小径の主体金具となるようなスパークプラグであってもその製造に問題なく対応できる。
本発明に係るスパークプラグの製造方法は、上記した内容のものに限定されるものではなく、適宜に、変更して具体化できる。例えば、上記例では、パッキン41の内側(孔)に入り込む突出部(ガイド用軸部)があるものとしたため、プレス前に平パッキンが正しく環状受け棚に着座していないとしても、その突出部であるガイド用軸部がガイドをなすことから、プレス成形を安定して行うことができる。また、パッキンはプレスされて変形する際、上記もしたように、外周側に拡がる(外径が大きくなるように変形する)と共に、内周側に拡がる(内径が小さくなるように変形する)ことがある。このため、プレス後、このように内径が小さくなるように変形しても、ガイド用軸部とパッキンの内径との間に、隙間が保持されるように、ガイド用軸部の外径を設定するのが好ましい。このようにしておけば、押付け体をプレス後に戻すときでも、その隙間がある分、パッキンがジグにつられて一緒に持ち上がることなどの問題を解消できる。
したがって、突出部(又はガイド用軸部)は、少なくとも、微小隙間でも確実な隙間嵌め状態が得られるように、その外径を設定すべきであり、したがって、細い方が良いが、あまり細いと、プレス工程におけるパッキンの姿勢が不安定となることもある。このため、その姿勢の安定化のため、具体的には、パッキン内径が、5mm程度であることからして、突出部(又はガイド用軸部)の外径は、3〜4.5mm程度の外径、すなわち、パッキン内径に対し、60%〜90%の大きさとするのが好ましい。なお、上記もしたが、主体金具内に挿入され、プレス成形面より後方に位置する成形用軸部の外周面と、主体金具の内周面との空隙は、上記もしたようになるべく小さい方が位置決め(センタだし)精度も向上し、パッキンの成形精度も向上する。この空隙は、直径で1mm以内となるようにするのが好ましい。
さらに、上記例のように圧縮空気などの流体を流し込む場合には、上記もしたように、プレス成形後、押付け体を後退させるときでも、パッキンが一緒に持ち上がることを防止できる。すなわち、テーパ状にプレス成形後のパッキンは、テーパをなすプレス成形面に密着したり、食い付きを起こしやすく、したがって、後退させる押付け体と一緒に持ち上がりがちとなりやすく、しかも、その過程で、パッキンの外周縁の一部が主体金具の内周面に接触したりしやすい。そして、このようなときはパッキンは、不安定な傾斜姿勢で落下し、その反動で反転して裏向きとなって環状受け棚に着座することがある。これを防止するためにも、本発明では、上記したように、圧縮空気を流し込むのが好ましいが、その流し込みは、このような持ち上がり等が防止できる間、行われていれば良いが、平パッキンの挿入後から押付け体の引き上げ終了までのプレス過程の全体で行っても良い。なお、上記例では、圧縮空気としたが、それ以外のガス或いは、流体(例えば、油)を流し込むこととしてもよい。