以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の一実施形態に係る分析装置は、例えば、図1に示すようなハードウェア構成を有する。図1は、本発明の一実施形態に係る分析装置のハードウェア構成を示す図である。
図1において、分析装置100は、コンピュータによって制御される端末であって、CPU(Central Processing Unit)51と、メモリユニット52と、表示ユニット53と、出力ユニット54と、入力ユニット55と、通信ユニット56と、記憶装置57と、記憶媒体59へのアクセスを行なうためのドライバ58と、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDXRF)を行う蛍光X線測定器62と接続するためのインターフェイス(I/F)61とで構成され、システムバスBに接続される。
CPU51は、メモリユニット52に格納されたプログラムに従って分析装置100を制御する。メモリユニット52は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read-Only Memory)等にて構成され、CPU51にて実行されるプログラム、CPU51での処理に必要なデータ、CPU51での処理にて得られたデータ等を格納する。また、メモリユニット52の一部の領域が、CPU51での処理に利用されるワークエリアとして割り付けられている。
表示ユニット53は、CPU51の制御のもとに必要な各種情報を表示する。出力ユニット54は、プリンタ等を有し、分析担当者等のユーザからの指示に応じて各種情報を出力するために用いられる。入力ユニット55は、マウス、キーボード等を有し、ユーザが分析装置100が処理を行なうための必要な各種情報を入力するために用いられる。通信ユニット56は、分析装置100が例えばインターネット、LAN(Local Area Network)等を介して分析装置100と接続する場合に、分析装置100との間の通信制御をするための装置である。記憶装置57は、例えば、ハードディスクユニットにて構成され、各種処理を実行するプログラム等のデータを格納する。
インターフェイス61に接続される蛍光X線測定器62は、CPU51の制御のもとに、エネルギー分散型蛍光X線分析法(EDXRF)によって金属製又は非金属製部品及び材料中の指定元素(例えば、有害とされる元素)の定量測定を行う。金属製又は非金属製部品及び材料に一次X線を照射することによって得られる蛍光X線スペクトルをCPU51へ提供する。
分析装置100によって行われる処理を実現するプログラムは、例えば、CD−ROM(Compact Disc Read-Only Memory)等の記憶媒体59によって分析装置100に提供される。即ち、プログラムが保存された記憶媒体59がドライバ58にセットされると、ドライバ58が記憶媒体59からプログラムを読み出し、その読み出されたプログラムがシステムバスBを介して記憶装置57にインストールされる。そして、プログラムが起動されると、記憶装置57にインストールされたプログラムに従ってCPU51がその処理を開始する。尚、プログラムを格納する媒体としてCD−ROMに限定するものではなく、コンピュータが読み取り可能な媒体であればよい。本発明に係る処理を実現するプログラムは、通信ユニット56によってネットワークを介してダウンロードし、記憶装置57にインストールするようにしても良い。
次に、RoHS規制対象のCd、Pb、Hg、Cr6+に関する分析及び有害である程度にまで含有されているか否かを判定する処理フローについて説明する。
図2は、蛍光X線分析法による素材判定処理を説明するためのフローチャート図である。図2において、作業者は、本発明に係るプログラムを実行し、購入品等の分析対象となる物品、物品の一部、又は購入素材等を特定するサンプリング処理を行う(ステップS11)。このサンプリング処理では、例えば、物品の一部を分析する場合、購入品を解体等して分析すべき対象物を試料として特定し蛍光X線測定器62にセットする。次に、表示ユニット53に蛍光X線測定器62に備えられたCCDカメラから表示ユニット53に映し出される試料の設定状態を確認しながら、試料面積が十分であるか否かを判定しつつ試料のセッティングを行う(ステップS12)。試料面積の判定処理については、図3で後述される。
作業者は、セッティングを確定すると、マウス等の入力ユニット55を操作することによって、蛍光X線測定器62によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)を用いた定量分析を実行する(ステップS13)。作業者は、本発明に係るプログラムを実行することによって提供される定量分析を行うための画面を表示ユニット53に表示させ、画面の表示に従って定量分析の実行を指示する。CPU51からの指示に従って、蛍光X線測定器62が指示された分析条件に基づいて一次X線を照射することによって定量分析を実行する。
ここでの測定条件は、例えば、管電流を自動、管電圧を50kV、一次フィルタなし、測定時間を60sec(LiveTime)として、蛍光X線測定器62に蛍光X線測定を行わせる。
CPU51は、インターフェイス61を介して蛍光X線測定器62から分析結果として蛍光X線スペクトルを取得して、妨害ピーク成分の除去及び微小ピークの有無判定を実行し、蛍光X線スペクトルのピークを決定する。妨害ピーク成分の除去方法及び微小ピークの有無判定方法については、後述される。ピークを決定後、含有される元素を決定し、定量化する。その結果を定量分析結果とする。
その定量分析結果から試料が金属材料であるか否かを判定する、つまり、各元素のkレシオの合計が0.65より大きいか否かを判定する(ステップS14)。0.65以下の場合は非金属系材料であると判断し、非金属系材料の素材判定を行う。非金属系材料とは、例えば、樹脂、紙、ガラス、セラミックス、油脂等である。
一方、ステップS14での判断処理にて各元素のkレシオの合計が0.65より大きいと判断した場合は、金属材料であると判断し、ステップS15へ進む。ステップS15にて、塗装膜の有無を判断する。つまり、蛍光X線測定器62から取得した蛍光X線スペクトルを用いて、赤外線領域の電磁波の吸収量から表面に有機物が存在するか否かを調べ、所定の吸収量がある場合は、塗装膜があると判断する。CPU51は、表示ユニット53に塗装膜があること、塗装膜を除去すること等を示すメッセージを表示させる。
塗装膜について、有害物質を含んでいるか否かを判定するため、塗装材の分析・判定処理を実行する。一方、塗装膜を除去して基材部を露出させるため、ステップS20へ進む。ステップS20では、表示ユニット53に表示されたメッセージに従って、作業者によって塗装膜が除去され、その後、有害物質を含んでいるか否かを判定するため、金属基材の分析・判定処理へ進む。この金属基材の分析・判定処理については、図10で後述される。
ステップS15での判断処理にて塗装膜が無いと判断した場合、めっき膜の有無判定処理及び/又はクロメート処理の有無判定処理を行う。
先ず、めっき膜の有無判定処理について説明する。はんだ材の判定処理を実行する(ステップS18)。つまり、Snが検出され、かつ、金属表面が銀色であるか否かを判断する。Snの検出方法として、例えば、FP法の定量結果がSn>50wt%の場合、Pbを追加指定しSnとPbのみで定量する。金色・銀色判定処理については、図5で後述される。
Snが検出され、かつ、金属表面が銀色である場合、はんだ材であると判断し、有害物質を含んでいるか否かを判定するため、はんだ材の分析・判定処理へ進む。一方、Snが検出され、かつ、金属表面が銀色でない場合、めっき膜の有無を判定する(ステップS19)。FP法の定量結果に基づいて、Znが50wt%より大で検出、Niが50wt%より大で検出、Cdを検出、Crが20wt%より大で検出、AuやAg等の貴金属の検出のうち、少なくとも1項目以上について該当した場合、めっき膜有りと判断し、CPU51は、表示ユニット53にめっき膜があること、めっき膜を剥離すること等を示すメッセージを表示させる。
基材部とめっき膜について、有害物質を含んでいるか否かを判定するため、めっき膜については、めっき膜の分析・判定処理へと進み、基材部については、表示ユニット53に表示されたメッセージに従って、作業者によってめっき膜を剥離され基材が露出された後(ステップS20)、金属基材の分析・判定処理へと進む。金属基材の分析・判定処理については、図10で後述され、めっき膜の分析・判定処理については、図9で後述される。
ステップS19にて、めっき膜無しと判断した場合、つまり、上記検出条件において1項も該当しなかった場合、有害物質を含んでいるか否かを判定するため、金属基材の分析・判定処理へと進む。
クロメート処理の有無判定処理について説明する。ステップS15での判断処理にて塗装膜が無いと判断した場合、Cr検出用に感度を上げた測定で、Crの有無を確認する(ステップS16)。ここでの測定条件は、例えば、管電圧を40kV、一次フィルタをCr、測定時間を240sec(LiveTime)と設定される。
FP法の定量結果に基づいて、Znが50wt%より大で検出、Niが50wt%より大で検出かつCrを含有(NiとCrの共存)、Alが50wt%より大で検出かつCrを含有(AlとCrの共存)、Mgが50wt%より大で検出かつCrを含有(MgとCrの共存)のうち、少なくとも1項目以上について該当するか否かを判断する(ステップS18−3)。上記検出条件のうち少なくとも1項目以上について該当した場合、クロメート処理有りと判断し、CPU51は、表示ユニット53にクロメート処理が施されていること、詳細な分析結果を要する場合には六価クロム溶出試験を分析専門機関へ依頼するよう示唆する旨を示すメッセージを表示させる。この場合、作業者は、必要に応じて分析専門機関へ依頼手続きを行なうこととなる。
一方、上記検出条件において1項も該当しなかった場合、CPU51は、表示ユニット53にクロメート処理が施されていない旨を示すメッセージを表示させ、蛍光X線分析法による素材判定処理を終了する。
ステップS14において、非金属系材料と判断した場合、Cr検出用に感度を上げた測定で、Crの有無を確認する(ステップS16−5)。ここでの測定条件は、上述したステップS16と同様である。Crが含有されているか否かを判断する(ステップS17−5)。Cr無しと判断した場合、CPU51は、クロム非含有の非金属材料であること等を示すメッセージを表示ユニットに表示させ、蛍光X線分析法による素材判定処理を終了する。
一方、ステップS17−5での判断において、Cr有りと判断した場合、FP法の定量結果に基づいて、Ba、Sr、Zn、又はPbが含有されているか否かを判断する(ステップS18−5)。つまり、CrとBa、Sr、Zn、又はPbとが共存しているか否かを確認する。本発明において、Cr有り、且つ、Ba、Sr、Zn、及びPbの少なくとも1元素が含有されている場合、六価クロムの含有可能性が高いと見なす。Ba、Sr、Zn、及びPbの元素は、発明者らによる調査及び分析によって見出されたものである。詳細は後述される。
ステップS18−5での判断において、Ba、Sr、Zn、又はPbが含有されていることが確認されなかった場合、CPU51は、クロム含有の非金属材料であるが、六価クロムは非含有である等のメッセージを表示ユニットに表示させる。この場合、含有されるクロムは三価クロムの可能性があるが有害物質の対象が六価クロムであるため、有害物質を含有していないこととなる。
ステップS18−5での判断において、Ba、Sr、Zn、又はPbが含有されていることが確認された場合、CPU51は、六価クロム含有の可能性が高いこと、必要であれば六価クロム含有の確認をするために溶出試験を依頼すること等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させる。
このように、本発明に係る分析装置は、作業者に専門的な知識を要求することなく、試料の素材(製品のどの部位)を特定し、有害物質の含有可能性を検証することができる。
上述が蛍光X線分析法による素材判定処理の概要であるが、以下に各分析・判定処理について詳述する。
図3は、図2のステップS12にて行われる試料面積の判定処理を説明するためのフローチャート図である。図3において、CCDカメラ等による光学像又は透過X線の照射によって得られた透過X線像等の情報から試料面積を求める(ステップS121)。試料面積と一次X線照射面積とを比較し(ステップS122)、試料面積が一次X線照射面積以上であるか否かを判断する(ステップS123)。試料面積が一次X線照射面積以上でない場合、CPU51は、試料を置き直してください等のメッセージを表示ユニット53に表示し(ステップS124)、ステップS12へ戻りサンプルセッティングを作業者によって再度行なわせ、上記同様の処理を繰り返す。一方、試料面積が一次X線照射面積より大きい場合、図2のステップS13へ進み、試料面積の判定処理を終了する。
なお、ステップS124では、メッセージを表示後、サンプルセッティングを再度行うことなく図2のステップS13へ進むようにしても良い。例えば、メッセージ表示画面にて、作業者に再セッティングを行うか、そのまま処理を続行するかの選択を可能とすれば良い。
ステップS13にて行われる妨害ピーク成分の除去方法について詳述する。
妨害ピーク成分の除去方法では、例えば、蛍光X線スペクトル中の主成分のサムピークや回折線などの妨害ピークを同時に加えて、検出元素のピーク分離し、除去することができる。
(1)サムピークの除去
予め、各元素のサムピークの計数量依存性を調べてデータベース化しておき、測定スペクトルから得た主成分のピークのエネルギー値とX線強度と計数量とから、サムピークのエネルギー値とX線強度とを算出し、ピーク分離成分に加えて差し引くことによってサムピークを除去する。
(2)回折線の除去
測定スペクトルから得た主成分の情報から物質(金属材料)の種類を推定し、予め組み込んである物質ごとの結晶構造および格子面の種類と面間隔のデータベースを用い、ブラッグの式
nλ=2d・sinθ
(λ : X線の波長[Å]、d : 格子面間隔[Å]、θ : X線の回折角)
及び E=h・λ
(E: X線のエネルギー[keV])
から導かれる次式、
E[keV]=12.399 / 2d・sinθ
を用いて、回折線の出現するエネルギー値算出し、検出元素のX線シリーズの強度比を考慮した上で、未同定ピークが回折線であるかを判定し、回折線である場合は、ピーク分離成分に加えて差し引くことによって回折線を除去する。
回折線であることを確認する方法として、ピークの半値幅が、任意の元素(望ましくは主成分の元素)の蛍光X線ピークの1.2倍以上ある場合、回折線であると判定する。鋼材を例にとると、Fe−Kα線[6.4keV]の半値幅は0.15keVであり、4.28keV付近に存在する未同定ピークの半値幅は0.22keVで、Fe−Kα線の約1.4倍あり、本ピークは回折線と同定される。
また、ステップS13にて行われる微小ピークの有無判定方法について詳述する。
任意の微量成分元素の有無を判定する方法として、濃度に換算した標準偏差σおよびピーク形状の両方を用い、定量結果≧3σとピーク形状のポアソン分布への相関係数|r|>0.2とを同時に満たすときに、検出有りと判定する。
(1)濃度に換算した標準偏差σで判定
測定スペクトルから得られる任意の元素のピークは、標準偏差σを用い、検出限界=σ、定量下限=3σと定義することが出来る。このとき、各々の規制元素の濃度の閾値と比べて、充分小さい、望ましくは1/10程度の定量下限(3σ)が得られるような、測定条件(主に測定時間)を定めておき、定量結果≧3σであった場合に、検出と判定する。
(2)ピーク形状で判定
定量結果が、2σ以上のとき、ピークが実際に存在するか否かを、ピーク形状で判定するために、各元素のピークごとに予めエネルギー範囲を設定し、バックグランドを差し引いた各元素の蛍光X線スペクトルの、ポアソン分布へのフィッティング度を相関係数rを用いて調べ、|r|>0.2のときピーク有り、即ち、検出と判定する。この時、必要に応じて、スムージングをかけたスペクトルを用いてもよい。
また、バックグランドを求める方法としては、予めデータベースに蓄積した類似物質のスペクトルをデジタル的に同一測定条件のS/Nに変換したものを用いる。各種バックグランド除去方法を使用しても良い。またスペクトルは、必要に応じて、スムージングをかけて用いてもよい。その場合、測定スペクトル、バックグランド用スペクトルには、同一条件でスムージングをかけるものとする。
図4は、図2のステップS14にて行われる金属材料の判定処理を説明するための図である。図4(A)において、ステップS13にて試料から得られた蛍光X線スペクトルから、同一の条件で測定した各元素の標準試料の濃度100%の強度で割った値(kレシオ又はk値)の合計が0.65よりも大きい場合、kレシオの合計を求め、0.65よりも値が大きい場合は金属材料、0.65以下の時は非金属材料とするフローに従い判定した結果を示している。判定結果は、試料1から試料3が金属材料であり、試料4及び試料5が非金属材料であったことを示している。
試料2及び試料5について具体的な計算例が、図4(B)に示される。試料毎に各検出元素のkレシオを合計した値がkレシオ合計に示される。
図5は、図2のステップS15にて行われる塗装膜の有無判断処理を説明するためのフローチャート図である。図5において、波長0.75μmから1mm(赤外線)の電磁波を照射し、反射率の波長依存性を調べる(ステップS151)。所定電磁波を照射する機能を蛍光X線測定器62に組み込んでおくことによって、CPU51からの照射条件に従って電磁波を照射させるようにすることによって、自動化することが可能となる。
そして、CPU51は、電磁波の照射結果に基づいて、反射率が50%の波長帯の有無を判断することによって、塗装膜の有無判定を行う(ステップS152)。反射率が50%の波長帯が有る場合、塗装膜があること、塗装膜を除去すること等を示すメッセージが表示ユニット53に表示され、作業者によって塗装膜を除去する作業(図2のステップS20)へと進む。一方、反射率が50%の波長帯が無い場合、金属系材料の素材判定処理へと進む。
図6は、図2のステップS18にて行われる金属表面の金色・銀色判定処理を説明するためのフローチャート図である。図6において、波長435から500nm(青)と波長605から780(赤)の電磁波の反射率を調べる(ステップS181)。所定電磁波を照射する機能を蛍光X線測定器62に組み込んでおくことによって、CPU51からの照射条件に従って電磁波を照射させるようにすることによって、自動化することが可能となる。
そして、CPU51は、電磁波の照射結果に基づいて、赤の反射率を青の反射率で割ることによって赤の反射率が青の反射率に対する比を計算する(ステップS182)。計算した結果、赤の反射率が青の反射率に対する比が1.5以上であるか否かを判断する(ステップS183)。比が1.5以上である場合、銀色であると判定し(ステップS184)、金属表面の金色・銀色判定処理を終了する。一方、比が1.5未満である場合、金色であると判定し(ステップS185)、金属表面の金色・銀色判定処理を終了する。
図2のステップS19によってめっき膜有りと判断した場合に行われる検出元素がめっき膜成分か基材成分かの判定方法について説明する。検出元素がめっき膜成分か基材成分かの判定する方法として、例えば、一次X線を発生させるための管電圧を、15kV、30kV、50kVと変えて測定して得たスペクトルのFP法の定量結果を比較する。この比較結果に基づいて、管電圧が低い時に濃度が高い元素は、より表面に存在していると判定する。例として、Niめっき/Fe構造の試料を測定した結果を図7に示す。
図7は、Niめっき/Fe構造の試料を測定した結果を示す図である。図7において、より低い管電圧を用いたとき、めっき膜の主成分であるNiの濃度が相対的に増えていることが分かる。従って、このような結果を取得したCPU51は、Niがめっき膜成分であると判断する。
図2のステップS20によって作業者がめっき膜を剥離し基材を出した後に、めっき膜が完全に除去されたか否かの判定方法について説明する。CPU51は、研磨前後でFP法定量分析を実施して取得した定量結果を比較し、めっき膜成分の割合が減少している場合はめっき膜がまだ残っていると判定し、作業者に再度研磨をするようメッセージを表示ユニット53に表示することによって促す。このような処理を繰り返した後、CPU51は、研磨前後で検出元素の定量値が一定になったと判断した場合、めっき膜完全に除去されたと判定し、作業者による研磨を終了させるメッセージを表示ユニット53に表示させる。自動研磨装置を組み込んで、作業を自動化するようにしても良い。
図2のステップS19によってめっき膜有りと判断した場合に行われるめっき膜中に含まれる微量元素の定量分析方法について説明する。CPU51は、めっき膜の主成分の元素の強度合計を基準にして膜中に含まれる微量成分元素の強度を算出し、その算出結果から作成した検量線を用いて定量する。このような処理によって、めっき膜中に微量に含まれる規制対象元素を定量することができる。例えばNiPめっき膜中のCd又はPbの定量する際、Ni−Kピーク強度でノーマライズしたCd又はPb強度の検量線を作成し定量することにより、厚さの異なるNiPめっき膜中のCd又はPbを正確に定量することが可能となる。検量線を作成する際の、Cd及びPbなど微量元素のピーク強度やNi−Kピーク強度は、測定スペクトルから取得する。
図8は、図2の金属基材の分析・判定処理を説明するためのフローチャート図である。図8において、ステップS13にて得られた定量結果に基づいて、CPU51は、Mg、Al、Cu、Fe、CuZnのいずれか1元素に主成分が該当するか否かを判断する(ステップS801)。Mg、Al、Cu、Fe、Cu+Znのいずれも主成分でない場合、CPU51は、表示ユニット53に有害物質が含有されていない等を示すメッセージを表示させ(ステップS802)、この金属基材の分析・判定処理を終了する。
一方、Mg、Al、Cu、Fe、CuZnのいずれか1元素に主成分が該当する場合、CPU51は、Cdの有無判定処理及び/又はPbの有無判定処理を実行する。
Cdの検量線のピークとCuZn(黄銅)の検量線のピークとが重なる場合があるため、Cdの有無判定処理を実行する。CPU51は、Cdフィルタ検量線法でCdを定量する(ステップS811)。その定量結果に基づいて、Cdが標準偏差に基づく3σ以上かつピーク有りか否かを判断する(ステップS812)。Cdが3σ未満であるか又はピーク無しの場合、Cdは検出限界未満であると判断し、CPU51は、Cdは検出限界未満である等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させる(ステップS813)。一方、Cdが3σ以上かつピーク有りの場合、Cdが検出されたと判断し、CPU51は、有害物質としてのCdが検出された等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させる(ステップS814)。
CPU51は、主成分がMg(Mg合金)である場合、Pbを追加指定したFP法でPbを定量する(ステップS821)。その定量結果に基づいて、Pbが標準偏差に基づく3σ以上かつピーク有りか否かを判断する(ステップS822)。Pbが3σ未満であるか又はピーク無しの場合、Pbは検出限界未満であると判断し、CPU51は、Pbは検出限界未満である等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させる(ステップS823)。一方、Pbが3σ以上かつピーク有りの場合、Pbが検出されたと判断し、CPU51は、有害物質としてのPbが検出された等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させる(ステップS824)。
CPU51は、主成分がAl(Al合金)である場合、Pb及びBiを追加指定したFP法でPbを定量する(ステップS831)。その定量結果に基づいて、Pbが標準偏差に基づく3σ以上かつピーク有りか否かを判断する(ステップS832)。Pbが3σ未満であるか又はピーク無しの場合、Pbは検出限界未満であると判断し、CPU51は、Pbは検出限界未満である等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させる(ステップS833)。一方、Pbが3σ以上かつピーク有りの場合、Pbが検出されたと判断し、CPU51は、有害物質としてのPbが検出された等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させる(ステップS834)。
CPU51は、主成分がCu(Cu合金)である場合、Pbを追加指定したFP法でPbを定量する(ステップS841)。その定量結果に基づいて、Pbが標準偏差に基づく3σ以上かつピーク有りか否かを判断する(ステップS842)。Pbが3σ未満であるか又はピーク無しの場合、Pbは検出限界未満であると判断し、CPU51は、Pbは検出限界未満である等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させる(ステップS843)。一方、Pbが3σ以上かつピーク有りの場合、Pbが検出されたと判断し、CPU51は、有害物質としてのPbが検出された等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させる(ステップS844)。
CPU51は、主成分がFe(Fe合金)である場合、Pbの検量線のピークとFeの検量線のピークとが夫々重なる場合があるため、Pb用フィルタ検量線法でPbを定量する(ステップS851)。その定量結果に基づいて、Pbが標準偏差に基づく3σ以上かつピーク有りか否かを判断する(ステップS852)。Pbが3σ未満であるか又はピーク無しの場合、Pbは検出限界未満であると判断し、CPU51は、Pbは検出限界未満である等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させる(ステップS853)。一方、Pbが3σ以上かつピーク有りの場合、Pbが検出されたと判断し、CPU51は、有害物質としてのPbが検出された等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させる(ステップS854)。
図9は、図2のめっき膜の分析・判定処理を説明するためのフローチャート図である。図9において、CPU51は、定量結果に基づいて、NiとPの共存、Znが50wt%より大で検出、Cdの検出のうち、少なくとも1項目以上について該当するか否かを判断する(ステップS901)。上記検出条件のいずれにも該当しない場合、CPU51は、有害物質は含まれていないと判定し、表示ユニット53に有害物質が含まれていない等を示すメッセージを表示させ(ステップS902)、めっき膜の分析・判定処理を終了する。
ステップS901での上記検出条件のうち該当した項目がNiとPの共存である場合、CPU51は、無電解NiPめっき膜であると判定し、Cd用フィルタ検量線法でCdを定量する(ステップS911)。その定量結果に基づいて、Cdが標準偏差に基づく3σ以上かつピーク有りか否かを判断する(ステップS912)。Cdが3σ以上かつピーク有りの場合、Cdが検出されたと判断し、CPU51は、更に、基材にCdが含有されているか否かを判断する(ステップS913)。基材に含まれていない場合、CPU51は、めっき膜に有害物質としてCdを検出した等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させ(ステップS914)、めっき膜の分析・判定処理を終了する。一方、基材にCdが含有されている場合、CPU51は、NiPめっき膜のみ溶解し、Cd確認分析が必要である等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させ(ステップS915)、めっき膜の分析・判定処理を終了する。
ステップS912において、Cdが3σ未満であるか又はピーク無しの場合、Cdは検出限界未満であると判断し、CPU51は、更に、Pb用フィルタ検量線法でPbを定量する(ステップS916)。その定量結果に基づいて、Pbが標準偏差に基づく3σ以上かつピーク有りか否かを判断する(ステップS917)。Pbが3σ以上かつピーク有りの場合、Pbが検出されたと判断し、CPU51は、更に、基材にPbが含有されているか否かを判断する(ステップS918)。基材に含まれていない場合、CPU51は、めっき膜に有害物質としてPbを検出した等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させ(ステップS919)、めっき膜の分析・判定処理を終了する。一方、基材にPbが含有されている場合、CPU51は、NiPめっき膜のみ溶解し、Pb確認分析が必要である等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させ(ステップS920)、めっき膜の分析・判定処理を終了する。
ステップS917において、Pbが3σ未満であるか又はピーク無しの場合、Pbは検出限界未満であると判断し、CPU51は、Cd及びPbが検出限界未満である等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させ(ステップS921)、めっき膜の分析・判定処理を終了する。
或いは、ステップS901での上記検出条件のうち該当した項目がZnが50wt%より大で検出である場合、CPU51は、Znめっき膜であると判定し、Cd用フィルタ検量線法でCdを定量する(ステップS931)。その定量結果に基づいて、Cdが標準偏差に基づく3σ以上かつピーク有りか否かを判断する(ステップS932)。Cdが3σ以上かつピーク有りの場合、Cdが検出されたと判断し、CPU51は、めっき膜に有害物質としてCdを検出した等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させ(ステップS934)、めっき膜の分析・判定処理を終了する。
ステップS932において、Cdが3σ未満であるか又はピーク無しの場合、Cdは検出限界未満であると判断し、CPU51は、更に、Pb用フィルタ検量線法でPbを定量する(ステップS936)。その定量結果に基づいて、Pbが標準偏差に基づく3σ以上かつピーク有りか否かを判断する(ステップS937)。Pbが3σ以上かつピーク有りの場合、Pbが検出されたと判断し、CPU51は、更に、基材にPbが含有されているか否かを判断する(ステップS938)。基材に含まれていない場合、CPU51は、めっき膜に有害物質としてPbを検出した等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させ(ステップS939)、めっき膜の分析・判定処理を終了する。一方、基材にPbが含有されている場合、CPU51は、Znめっき膜のみ溶解し、Pb確認分析が必要である等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させ(ステップS940)、めっき膜の分析・判定処理を終了する。
ステップS937において、Pbが3σ未満であるか又はピーク無しの場合、Pbは検出限界未満であると判断し、CPU51は、Cd及びPbが検出限界未満である等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させ(ステップS941)、めっき膜の分析・判定処理を終了する。
上記検出条件のうち該当した項目がCdの検出である場合、CPU51は、Cdめっき或いはAgCdOめっきであると判定し、有害物質としてCdが検出された等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させて(ステップS951)、めっき膜の分析・判定処理を終了する。
図9において、同一有害元素が基材にもめっき膜にも含まれる場合の判定方法について説明する。CPU51は、同一試料の基材とめっき膜の測定ファイル名をつける際、同じ試料であることを特定する数字または記号等の名称をつけ、加えて部位を特定する名称をつける。例えば、基材
123S、めっき 123P等とする。同じ試料であることを特定する数字または記号のついた測定ファイルの定量結果を比較し、両方に有害であるとして指定された元素(有害元素)が含まれている場合は、化学分析を必要となるため、その旨を示すメッセージを表示ユニットに表示させる。
図10は、図2のはんだ材の分析・判定処理を説明するためのフローチャート図である。図10において、CPU51は、Sn及びPbを指定してFP法でPbを定量する(ステップS1101)。その定量結果に基づいて、Pbが標準偏差に基づく3σ以上かつピーク有りか否かを判断する(ステップS1102)。Pbが3σ未満であるか又はピーク無しの場合、Pbは検出限界未満であると判断し、CPU51は、Pbは検出限界未満である等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させ(ステップS1103)、はんだ材の分析・判定処理を終了する。
一方、Pbが3σ以上かつピーク有りの場合、Pbが検出されたと判断し、CPU51は、有害物質としてのPbが検出された等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させる(ステップ一方、Pbが3σ以上かつピーク有りの場合、Pbが検出されたと判断し、CPU51は、有害物質としてのPbが検出された等を示すメッセージを表示ユニット53に表示させ(ステップS1104)、はんだ材の分析・判定処理を終了する。
図11は、サンプルセッティングの例を示す図である。図11(A)には、BGAはんだボールの設定状態が表示ユニット53に映し出されている様子を示している。図11(B)には、LSIリードの設定状態が表示ユニット53に映し出されている様子を示している。図11(C)には、コンデンサの設定状態が表示ユニット53に映し出されている様子を示している。図11(D)には、実装はんだの設定状態が表示ユニット53に映し出されている様子を示している。
図11(A)から図11(D)において、作業者は、表示ユニット53に映し出される試料の設定状態を確認しながら、X線照射領域内(図中、楕円線で示される範囲)で、電極部分の割合が最大となるようにセットする。試料内部に電極がある場合、作業者は、分解せずに、X線照射領域内で試料内部の電極部分の割合が最大となるようにセットする。
次に、上述したフローチャートに従って金属系材料の素材判定処理がなされた場合の判定結果の例を説明する。
図12は、図4(A)に示される試料1の素材判定処理の結果例を示す図である。図12において、試料1には、NiPめっき膜が施されていると判定することが出来る。
次に、めっき膜を除去し、基材の分析を行なった結果例について説明する。図13は、NiPめっき膜除去後の素材判定処理の結果例を示す図である。図13において、試料1には、Fe材にNiPめっき膜が施されたものであることがわかる。
以下に非金属系材料の素材判定処理について詳述する。
本発明において、発明者らは、樹脂中に六価クロムが存在する要因は顔料であることを特定し、市販されている顔料を独自に調査及び分析し、顔料として六価クロムに特化した共存元素を抽出した。その共存元素の検出により、六価クロムの存在を判定する。
ここで、判定に用いている六価クロムに特化した共存元素とは、一般に広く用いられているCrを含む顔料の組成を調査し、Crの形態が六価をとる場合に共存し、蛍光X線で分析可能な元素をさす。顔料は、一般的に用いられている、「クロム酸鉛(黄鉛、赤口黄鉛、クロムグリーン、クロムバーミリオン)」、「クロム酸バリウム」、「クロム酸ストロンチウム」、「クロム酸亜鉛」のみが、六価クロムの形態を有し、それ以外の顔料においては、三価クロムの形態を有することが調査済みである。図14にその調査結果が示される。図14に示される調査結果より、発明者らは、Crの形態が六価をとる場合に共存する元素がZn、Sr、Ba、そしてPbの4元素であることを突き止めた。
そこで、蛍光X線分析において、Crを検出するためのフィルタを用いた検量線法によるCrの定量を行うと同時に、フィルタなしのFP法でも分析し、PbのLα線(10.55keV),Lβ線(12.612keV)、BaのLα線(4.465keV),Lβ線(4.827keV)、SrのKα線(14.140keV),Kβ線(15.830keV)、ZnのKα線(8.630keV),Kβ線(9.570keV)を有無を検出し、これらのいずれかの元素がCrと共に検出された場合には、自動的に「六価クロム含有」と表示することができる。
また、Crが検出されなければ、「六価クロム非含有」、Crが検出されるが、上記共存元素が存在しない場合には、「三価クロム含有」と表示させることも可能である。
CPU51が上記処理を制御するために、例えば、図15に示されるようなテーブルが所定記憶領域に格納されている。また、そのようなテーブルは、プログラムコードによって実現することが可能である。
本発明に係る分析装置を用いずに非金属系材料の素材分析処理を行った場合と、本発明に係る分析装置を用いて非金属系材料の素材分析処理を行った場合との比較を以下に示す。
図16及び図17は、本発明に係る分析装置を用いずに非金属系材料の素材分析処理を行い、六価クロム含有顔料の蛍光X線分析を行った場合の結果例である。従来は、このように、Crの検出の有無および濃度のみを表示し、結果として得ることができる。しかし、本発明に係る分析装置を用いた場合は、測定対象元素として、Cr,Zn,Sr,Ba,Pbを固定し、得られた検出結果から、1行目のCrが検出され、かつ、2行目以降の各元素が「検出無し・n.d.」にならない場合は、図18に示すように、「六価クロム含有判定品」の表示が示される。
また、実際に着色されているケーブルを蛍光X線分析した場合の結果を図19に示す。上段は、CrおよびPbが検出されており、「六価クロム含有判定品」が表示されている。また、下段は、Pbが検出されているがCrの検出がないため、「六価クロム非含有判定品」が表示されている。
このように、本発明に係る分析装置を用いて非金属系材料の素材分析処理を行った場合、作業者は、蛍光X線分析結果を検証することなく、「六価クロム含有判定品」又は「六価クロム非含有判定品」の表示によって容易に有害物質が含有されているか否かを知ることができる。
また、図2のステップS13にて得られる非金属系材料の定量結果について説明する。例えば、試料が樹脂である場合、作業者でも非金属系材料であることが判定できるため、予め、非金属系材料のXRF−FP法定量分析を実行するように分析装置100に設定するようにしても良い。或いは、ステップS14にて非金属系材料であると判定した際に、自動的に非金属系材料のXRF−FP法定量分析を実行するように構成しても良い。或いは、ステップS13でのXRF−FP法定量分析にて、六価クロムを特定するためのCrとCrと共存するZn、Sr、Ba、Pbの4元素を予め指定しておいても良い。
図20は、非金属系材料のXRF−FP法による定量結果例を示す図である。図20(A)では、Pb共存による六価クロム含有判定品の定量結果が示されている。図20(B)では、共存元素検出なしによる六価クロム非含有判定品の定量結果が示されている。図20(A)と図20(B)とに示される定量結果を比較すると明らかなように、六価クロムが含有されている場合、共存指定元素であるZn、Sr、Ba、Pbの質量%が「nd(未検出)」でなく数値が示されているのが判る。
このように、非金属系材料のXRF−FP法による定量結果を示す際に、作業者がCrとZn、Sr、Ba、Pbの4元素について指定することなく、これら5元素の定量結果が表示される。
以上、本発明によれば、蛍光X線分析結果のみから、六価クロム存在の検証が可能であるため、有害物質を検証するために比較試料として有害物質を使用するといった環境に影響を与えるような化学分析を行わなくても良い。更に、化学分析を行える専門家および専門機関でなくても有害物質の検証を容易に行うことができる。
以下に、微小な電子部品の特定部位及びプリント板ユニットの各部位に含まれる鉛について、禁止用途及び除外用途別の含有判定評価を可能とし、はんだ材中の鉛、RoHS規制対象等の鉛の有無を非破壊で迅速に判定する方法について説明する。
図21は、鉛はんだを含有する部位を画像表示するマッピング測定処理について説明するフローチャートである。図21において、作業者は、プリント板ユニットを試料として蛍光X線測定器62の試料ステージ上に配置し、表示ユニット53に表示される蛍光X線測定器62のCCDカメラによって映し出される全体像を見ながら、設定されたプリント板ユニット上の部品(電子部品)のうち最も高さがあると思われる部品の高さを基準位置として設定し、また、例えば、表示ユニット53に表示される全体像上でマウス等を用いて領域を指定するとによって測定エリアを指定する(ステップS2001)。
この際、鉛はんだを検出するために、指定元素として少なくともPb及びSnが測定条件に含まれる。或いは、作業者は、予め設定されている鉛はんだ用の測定条件をCPU51の制御によって表示ユニット53に表示されるメニュー等から指定するのみでよい。
CPU51は、蛍光X線測定器62に測定条件に従って、X線プローブで励起した蛍光X線によりX線測定を行わせ(ステップS2002)、蛍光X線測定器62から蛍光X線スペクトルを測定結果として取得する(ステップS2003)。予めフォーカス位置と高さの関係が調べてあるオートフォーカス機能を有するCCDカメラを蛍光X線測定器62に備えるようにすることによって、CPU51は、一次X線を照射する毎に一次X線の試料上の照射位置をフォーカスさせて計測した一次X線発生器と試料までの測定高さの値を蛍光X線スペクトルと共に取得するようにする。CPU51は、測定位置と取得した測定高さの値とによって示される情報を測定高さの2次元情報70としてメモリユニット52又は記憶装置57に出力する。また、CPU51は、取得した蛍光X線スペクトルとからPb及びSnのX線強度を示す情報を夫々、メモリユニット52又は記憶装置57のPb用マッピング像領域71及びSn用マッピング像領域72に出力する。
そして、CPU51は、測定位置を移動させX線測定を繰り返す(ステップS2004)。すなわち、CPU51は、ステップS2001で設定した測定エリアの最終の測定位置までX線測定を終了したか否かを判断し、終了していない場合、測定位置を次の測定位置まで移動してステップS2002へ戻り、上記処理を繰り返す。
終了している場合、CPU51は、測定高さの2次元情報70とステップS2001で設定した高さの基準値に基づいて、各測定位置の部品が実装されることによる試料の高さの違いによる検出結果で示されるX線強度のばらつきを補正する(ステップS2005)。補正したPbのX線強度及びSnのX線強度は、夫々Pb用マッピング像領域71及びSn用マッピング像領域72に格納される。
また、CPU51は、Pb用マッピング像領域71及びSn用マッピング像領域72からPbのX線強度及びSnのX線強度を取り出して、夫々が各所定X線強度以上である場合に含有されていると判断し、測定位置に対応させてPb及びSn毎にその含有の有無を示す情報をメモリユニット52又は記憶装置57にPb検出位置情報81とSn検出位置情報82として生成する(ステップS2006)。
次に、CPU51は、検出器が一次X線ビームの光軸に対して傾きを持つために生じる欠像部分を特定してPb検出位置情報81とSn検出位置情報82とを補正する(ステップS2007)。
CPU51は、補正されたPb検出位置情報81とSn検出位置情報82とを用いて、鉛はんだが含有されると判断されることを示す情報を鉛はんだ検出位置情報83として生成し(ステップS2008)、その鉛はんだ検出位置情報83に基づいて画像を生成して、鉛はんだの分布を示す画面として表示ユニット53に表示させる(ステップS2009)。
このようなマッピング測定処理において、ステップS2007での欠像部分の補正処理を省略してもよい。より詳細に検証する場合にオプションとして実行するようにしても良い。
この場合、作業者の指示に応じて、Pb検出位置情報81に基づいて画像を生成して、Pbの分布を示す画面を表示ユニット53に表示させることも可能である。同様にして、Sn検出位置情報82に基づいて画像を生成して、Snの分布を示す画面を表示ユニット53に表示させることもできる。
このように、鉛はんだを特定するための各元素Pb及びSnの測定位置と検出した際のX線強度に基づく含有可能性とをマッピングさせて、2つ以上の元素Pb及びSnについてマッピングした結果を合成することによって鉛はんだの含有可能性を測定位置と対応させて画像表示することができる。
図22は、図21のステップS2003にて各元素のX線強度を取り出す方法を説明するための図である。図22において、CPU51は、蛍光X線測定器62から図22(A)に示すようなX線スペクトルを測定結果として取得する。測定結果として受信したX線スペクトルは、0から40keVのエネルギー範囲で取り込まれる。そして、図22(B)に示すように、CPU51は、10.30から10.70keVのエネルギー範囲の積分強度を求めて、Pb−LαのX線強度をピーク強度として取り込み、測定位置と対応させてそのX線強度をPb用マッピング像領域71に格納する。
また、図22(C)に示すように、CPU51は、3.30keVのエネルギー範囲の積分強度を求めて、Sn−LαのX線強度をピーク強度として取り込み、測定位置と対応させてそのX線強度をSn用マッピング像領域72に格納する。
次に、X線強度の補正処理について図23及び図24にて説明する。図23は、図21に示すステップS2005でのX線強度の補正処理を説明するためのフローチャート図である。図24は、基準位置を決定する方法を説明する図である。
先ず、図24(A)に示されるように、蛍光X線測定器62は、図21のステップS2001にて、プリント板ユニット62dに実装された部品のうち最も高い部品62eを用いて、基準位置が設定される。例えば、一次X線発生器62aの照射口から部品62eの距離h0が、一次X線発生器62aに隣接して備えられたCCDカメラ62cのフォーカスによって求められる。また、検出器62bは、一次X線発生器62aから所定位置離れて設置されているため、距離h0を用いて検出器62bと部品62aとの基準距離L0を算出することができる。
図23において、CPU51は、測定位置を順次ずらしながら測定高さの2次元情報70から測定高さの値hi(i=1,2,3・・・)を読み出し(ステップS2021)、読み出した測定高さの値hiから測定位置毎の試料と検出器62bとの距離Li(i=1,2,3・・・)を算出する(ステップS2022)。
CPU51は、試料の各測定位置での各元素のX線強度Ii(i=1,2,3・・・)と検出器62bとの距離Liとに基づいて、所定関係式を用いて、基準位置でのX線強度I0を算出し、X線強度を補正する(ステップS2023)。ここで、所定関係式とは、例えば、
I0:基準位置で測定されたX線強度
Ii:各測定位置で測定されたX線強度
L0:検出器から基準位置までの基準距離
Li:検出器から各測定位置までの距離
である。
この関係式(1)では、基準位置を高さゼロとし、その基準位置でのX線強度を100%とし、測定して得られたX線強度を逆二乗の法則を用いて算出するものである。
CPU51は、ステップS2023での処理を測定位置を順次ずらしながらPb用マッピング像領域71からPbのX線強度Iiを読み出して、読み出したPbのX線強度IiとステップS2022で算出した距離Liと基準距離L0とを関係式(1)に代入して、基準位置に換算した場合のPbのX線強度I0を補正値として算出する。そして、算出された補正値をPb用マッピング像領域71へ書き込むことによって、測定エリア全体において補正されたPbのX線強度が格納される。同様に、SnのX線強度についてもSn用マッピング像領域72を用いて補正したSnのX線強度がSn用マッピング像領域72へ格納される。
各元素についてそのX線強度の補正がなされ夫々の記憶領域へ格納されると、CPU51は、X線強度の補正処理を終了する。
このようなX線強度の補正処理によって、例えば、測定エリアを上から見た様子を示す図24(B)のように、プリント板ユニット62に異なる部品62eと62dが実装されていて部品62eと62dとの高さが異なる場合、横から見た様子を示す図24(C)のように、最も高い部品62eの高さを基準位置とした場合、測定エリアにおいて、部品62e、部品62f、そしてプリント板ユニット62dの側面毎に一次X線を照射した際の一次X線発生器62と測定位置との距離がh0、h1、h2と変化するのに伴なって、検出器62bと測定位置との距離がL0、L1、L2と変化することが判る。
このように距離に変化があったとしても、関係式(1)を用いることによって、基準位置でのX線強度へと変換することが可能であるため、より正確に元素の含有可能性を判断することができる。
各元素のマッピング測定を合成して鉛はんだの分布を示す画像を生成する方法を図25、図26、及び図27で説明する。図25は、図21のステップS2006からS2008にて行われる各元素のマッピング測定を合成する方法を説明するための図である。図25において、図21のステップS2006において、PbのX線強度が所定X線強度以上である場合にPbが含有されている可能性があると判断し、例えば、Pb検出位置情報81のような測定位置に対応させてPb含有の有無を“0”又は“1”で示す。
例えば、測定エリアの物理的な連続する8箇所の測定位置をPb検出位置情報81が格納される記憶領域のアドレスにマッピングさせて、各測定位置におけるPb含有の有無をビットに対応させてビット値で示すようにすればよい。
同様に、図21のステップS2006において、SnのX線強度が所定X線強度以上である場合にSnが含有されている可能性があると判断し、例えば、Sn検出位置情報81のような測定位置に対応させてSn含有の有無を“0”又は“1”で示す。
図21のステップS2007において、例えば、CPU51は、測定高さの2次元情報70又はCCDカメラ62cで撮影された光学像とX線強度の値を示すPb用マッピング像領域71とを比較することによって欠像部分を検出し、試料ステージを180度回転させてその欠像部分に関する領域を部分的に測定し、Pb含有可能性を判断したPb欠像部検出位置情報81bを用いて、Pb検出位置情報81内の欠像部分に相当するビット値を書き換えて補正したPb検出位置情報81を取得する。Pb検出位置情報81の補正は、例えば、Pb欠像部検出位置情報81bとPb検出位置情報81内の欠像部分に相当するビット値とを論理積演算すればよい。
この場合、欠像部分は、複数あっても良い。複数ある場合、Pb欠像部検出位置情報81bが複数生成され、複数のPb欠像部検出位置情報81bによって、Pb検出位置情報81が補正される。
同様に、CPU51は、測定高さの2次元情報70又はCCDカメラ62cで撮影された光学像とX線強度の値を示すSn用マッピング像領域72とを比較することによって欠像部分を検出し、試料ステージを180度回転させてその欠像部分に関する領域を部分的に測定し、Sn含有可能性を判断したSn欠像部検出位置情報82bを用いて、Sn検出位置情報82内の欠像部分に相当するビット値を書き換えて補正したSn検出位置情報82を取得する。Sn検出位置情報82の補正は、例えば、Sn欠像部検出位置情報82bとSn検出位置情報82内の欠像部分に相当するビット値とを論理積演算すればよい。
この場合、欠像部分は、複数あっても良い。複数ある場合、Sn欠像部検出位置情報82bが複数生成され、複数のSn欠像部検出位置情報82bによって、Sn検出位置情報82が補正される。
更に、CPU51は、欠像部分が補正されたPb検出位置情報81とSn検出位置情報82との論理積演算を実行して、鉛はんだ検出位置情報83を生成する。
このように生成された鉛はんだ検出位置情報83に基づいて、鉛はんだ分布を示す画像が生成され表示ユニット53に表示される。また、必要に応じて、欠像部分が補正されたPb検出位置情報81に基づいて、Pbの分布を示す画像を生成し表示ユニット53に表示しても良い。同様に、欠像部分が補正されたSn検出位置情報82に基づいて、Snの分布を示す画像を生成し表示ユニット53に表示しても良い。
上述において、ビット値で含有有無を示す方法を説明したが、測定位置毎に1バイトを対応させて、所定X線強度以上である場合にその値を設定、或いは、輝度の程度を示す所定レベルに対応させてレベル値を設定するようにしても良い。この場合、上記論理積演算の代わりにいずれか大きい方の値をとるようにすれば良い。
このような各元素のマッピング測定を合成して鉛はんだの分布を示す画像を生成する方法に基づいて処理された画像の例について図26から図27で説明する。図26は、CCDカメラによって撮影されたプリント板ユニットの光学像を示す図である。図27は、分布状況を示す図である。
図26に示されるような光学像を示すプリント板ユニットは、例えば、図27(A)に示すようなSnの分布が明るい色(白色又は黄色など)で示され、図27(B)に示すようなPbの分布が明るい色(白色又は黄色など)で示される。そして、このようなPbの分布とSnの分布とを合成して、図27(C)に示すようなPbとSnとが共存する場所を示す鉛はんだの分布が明るい色(白色又は黄色など)で示される。
このようにして、特定の元素の含有有無だけでは判り難かった有害物質の含有可能性が視覚的に容易に把握することができるようになる。
次に、図21のステップS2007での欠像部分の補正処理について図28から図33で説明する。図28は、図21のステップS2007での欠像部分の補正処理を説明するためのフローチャートである。
図28において、CPU51は、測定高さの2次元情報70又はX線強度を示すマッピング像と光学像との比較から、実装部品の立体角によって陰になっている位置を抽出する(ステップS2041)。
図29に示すように、検出器62bが向けられている方向の部品62eの側面の側で陰になる部分が発生すると考えられる。測定高さの2次元情報70を用いる場合、基準位置までの高さh0からプリント板ユニット62dまでの高さh2までの高さを示す測定位置を2次元情報70から特定し、形状を予測することによって、検出器62bが向けられている方向における部品の側面のプリント板ユニット62dにおいて陰になる部分62gを抽出する。一方、X線強度を示すマッピング像と光学像との比較を行う場合、Pb用マッピング像領域71に示されるX線強度と光学像とを比較して、上記同様に、検出器62bが向けられている方向にて陰になる部分62gの位置を抽出する。
CPU51は、欠像の生じている部品の位置と大きさとを特定し、部分的な測定エリアを設定し(ステップS2042)、試料ステージを検出器62bに対して、180度回転し、特定した部品のみ、つまり、ステップS2042にて設定した部分的な測定エリアのみを蛍光X線測定器62によって再測定する(ステップS2043)。
そして、図21にて説明したステップS2006での処理と同様に、CPU51は、再測定したX線スペクトルから所定X線強度以上となる場合に含有していると判断し、Pb及びSnの含有有無を示す部分的な測定エリアにおけるPb欠像部検出位置情報81b及びSn欠像部検出位置情報82bを生成し(ステップS2044)、Pb検出位置情報81とSn検出位置情報82とを補正する(ステップS2045)。
このような欠像部分の補正方法に基づいて処理された画像の例について図30から図33で示す。図30から図32では、欠像部分の補正方法を説明し易くするため、図26に示すプリント板ユニットとは異なるプリント板ユニットで説明するが、マッピング測定処理は連続して実行されるものであるので、本来は、同一のプリント板ユニットとなる。ここでは、X線強度を示すマッピング像と光学像との比較から陰になっている位置を抽出するものとする。
図30は、プリント板ユニットの光学像及びSnの分布を示す図である。CPU51は、図30(A)に示されるプリント板ユニットの光学像と図30(B)に示されるSnの分布を示すマッピング像とを比較して、部品を特定する。特定する際には、部品の形状に関するデータベースを参照して行う。この場合、中央下に映し出される略正方形の集積回路を欠像のある部品と特定し、部分的に測定エリアが設定される。
例えば、設定された部分的な測定エリアでの光学像は、図31(A)に示されるようであって、図30(B)に示されるSnの分布を示すマッピング像内におけるその光学像に対応する部分的な測定エリアでのSnの分布を示すマッピング像は、図31(B)に示すような画像部分である。この部分的な測定エリアを検出器62bに対して180度回転させたSnの分布を示すマッピング像が図31(C)に示される。
CPU51は、図31(B)と図31(C)に示されるマッピング像を合成して、プリント板ユニット全体のマッピング像を作成する。このような合成後のマッピング像は、図32に示されるような画像となる。図30(B)に示されるマッピング像と比較すると、図32に示されるマッピング象は、集積回路の底辺部分の配線箇所でSnの分布がより明瞭に表示されていることが分かる。
このように、180度回転したプリント板ユニット全体を測定することなく、陰を形成すると予測される部品の形状を認識することによって、その箇所のみを再度測定すればよいため、効率的にかつより明瞭なマッピング像を作成することが可能となる。
欠像部分の補正方法の一例として、上述にて部品の形状に関するデータベースを参照して部品を特定することを述べたが、このようなデータベースをマッピング測定処理の初期段階で使用することによって、プリント板ユニットの蛍光X線測定によって生成されるデータ量を削減すると共に、蛍光X線測定に要する時間を短縮する方法が考えられる。
次に、このようなデータベースを用いたマッピング測定処理について説明する。図33は、マッピング測定処理の他の例を説明するためのフローチャートである。図33において、作業者は、プリント板ユニットの表面を外観観測し、また、表示ユニット53に表示される光学像を確認しながら、先ず、マッピングすべき全体エリアを指定し、その後、実際に蛍光X線測定を実行する部品が実装される部分的測定エリア等を大まかに指定する(ステップS2101a)。
或いは、作業者は、表示ユニット53に表示されるX線透過像画像を参照し、画面上でマッピングすべき全体エリアを指定する(ステップS2101b)。CPU51は、指定された全体エリア内から金属部分を認識し、蛍光X線測定を実行する部分的測定エリアを設定する。
マッピングすべき全体エリアを指定しておくことによって、実際に蛍光X線測定を実行する各エリアを相対位置で認識することができる。
CPU51は、画像認識機能を用いて部分的測定エリア内の部品部分を抽出して(ステップS2102)、部品データベース90を参照することによって各部品の名称及び形状を判定する(ステップS2103)。部品データベース90には、部品毎の名称及び形状、形状毎の測定ポイント等が示されている。
CPU51は、部品名称に基づいて分解要否テーブル92を参照して、分解することなく分析可能な部品であるか否かを判断する(ステップS2104)。分解する必要等がある場合、CPU51はステップS2105へ進む。
CPU51は、部品形状に応じた測定法を表示し(ステップS2105)、作業者は、その指示に従って所定の処理を行う(ステップS2106)。例えば、作業者は、部品をプリント板ユニットから剥がす等の作業を行い、測定エリアを指定する。CPU51は、作業者による作業終了の入力又は蛍光X線測定の開示の指示に応じてステップS2108へ進む。
一方、ステップS2104において、分解不要である場合、CPU51は、特定した部品の形状に応じた測定エリアを設定し、分解要否テーブル92を参照することによって検出すべき元素を設定し(ステップS2107)、蛍光X線測定を開示する(ステップS2108)。CPU51からの指示に応じて、蛍光X線測定器62が設定された部品形状に応じた測定エリア内において蛍光X線測定を実行する。
この場合、部品形状に応じた測定エリアとは、部品データベース90を参照することによって決定され、蛍光X線測定器62によって測定される測定エリアは、部品全体ではなく、形状の対象性に応じて等分されるエリアのみとなる。例えば、部品の形状が略正方形であれば、部品を対照的に4等分した場合の所定位置側の4分の1部分のエリアが測定エリアとなる。略長方形であれば、2等分した場合の所定位置側の2分の1部分のエリアが測定エリアとなる。この場合、検出器62bの傾きを考慮して、陰が発生し難い位置を選択するようにする。
CPU51は、蛍光X線測定器62から測定結果を取り込んで(ステップS2109)、元素毎のマッピング像領域を展開する。この場合、元素毎のマッピング像領域は、一つ以上の部品毎のマッピング像領域で構成され、この部品毎のマッピング像領域は、ステップS2101a又はS2101bにて設定された全体エリアに対する相対アドレスに対応させて展開される。従って、全体エリアに相当するマッピング像領域を必要としないため、作業領域を削減(圧縮)することができる。また、部品毎の測定高さの2次元情報が全体エリアに対する相対アドレスに対応させて展開される。この場合も、全体エリアに相当する測定高さの2次元情報を必要としないため、作業領域を削減(圧縮)することができる。
CPU51は、各部品の部品形状に応じた測定エリアを全て測定終了したか否かを判断し、測定終了していない場合、測定位置を移動して、蛍光X線測定器62に蛍光X線測定を行わせる(ステップS2110)。
一方、全ての部品に対して測定終了した場合、CPU51は、部品毎の測定高さの2次元情報に基づいて、元素毎のマッピング像領域に示されるX線強度を補正する(ステップS2111)。そして、CPU51は、所定のX線強度以上であるか否かを各元素に判断して指定の元素の含有可能性を判断する(ステップS2112)。
CPU51は、部品毎の共存元素の組み合わせに基づいて、検出位置情報を合成する(ステップS2113)。例えば、2つの元素の検出位置情報を論理演算する。
次に、CPU51は、欠像部分の補正処理を行うのではなく、部品の形状の対象性に基づく検出位置情報を展開する(ステップS2114)。つまり、部品の形状が略正方形であれば所定位置側の4分の1部分のエリア内に対応する検出位置情報を部品の配置状態に合わせて4倍に展開する。また、部品の形状が略長方形であれば所定位置側の2分の1部分のエリア内に対応する検出位置情報を部品の配置状態に合わせて2倍に展開する。
このようなステップS2114での処理によって、部品の蛍光X線測定を数分の1の処理時間で実現させることができる。
全体エリアに対する相対アドレスに基づいて、有害物質の含有可能性を示す部品毎の検出位置情報を全体エリア内に配置させ1つの合成して検出位置情報を生成し、その合成された1つの検出位置情報に基づいてマッピング像を生成し、そのマッピング像を示す画像を表示ユニット53に表示させる(ステップS2115)。この場合、作業者に指示に応じて、選択的に元素毎、部品毎にマッピング像を表示させるようにしても良い。
更に、CPU51は、分解要否テーブル92を参照して、部品毎の部品名称に基づいて表示情報を取得し、判定結果として表示ユニット53に表示させ(ステップS2116)、マッピング測定処理を終了する。
図34は、部品データベースの例を示す図である。図34において、部品データベース90は、部品の種類、部品形状、対称性、測定エリアの指定、測定エリアの割合等の項目を有する。例えば、部品の種類「QFP」は、部品形状が正方形のチップであって、4回対称を示す対称性を有し、対称中心を軸として例えば左上4分の1の部分が測定エリアとして指定され、指定された4分の1のデータを収集して対称中心を軸として回転させながら4倍して表示するよう測定エリアの割合が指定されている。
また、部品の種類「BGA」は、QFPと同様に、部品形状が正方形のチップであって、4回対称を示す対称性を有し、対称中心を軸として4分の1の部分が測定エリアとして指定されるが、測定する際には、プリント板から剥がし裏面に対して指定された4分の1のデータを収集して対称中心を軸として回転させながら4倍して表示するよう測定エリアの割合が指定されている。
更に、スイッチングダイオード、チップ抵抗等は、部品形状が略長方形でやや複雑な形状をしており、線対称を示す対称性を有し、中心軸に対して例えば左側2分の1の部分が測定エリアとして指定され、指定された2分の1のデータを収集して中心軸に対して対称的に2倍して表示するよう測定エリアの割合が指定されている。
図35は、分解要否テーブルの例を示す図である。図35において、分解要否テーブル92は、実装される部品を大きく分解不要と要分解とに分類し、夫々に部品及び部位、有害元素(材料)、共存元素及び判定結果等の項目を有する。
例えば、分解不要である実装はんだの場合、検出対象となる有害元素としてPb(はんだ材)が指定され、検出された際には、更に、鉛(Pb)と錫(Sn)とが重なって検出される部分があった場合、「RoHS規制対象の共晶はんだ(Pb/Snはんだ)が使用されています」と表示ユニット53に表示することが指定されている。
また、要分解であるコイル/トランスの巻線の固定部の場合、検出対象となる有害元素としてPb(はんだ材)が指定され、検出された際には、「有害元素Pbが含有されています」と表示ユニット53に表示することが指定されている。
図35に示される分解要否テーブル92は、発明者らの独自の調査により、部品の特定部位に特定の有害物質Pb、Cd、Crが含まれる可能性があることを見出しテーブルにしたものである。
このような調査に基づくテーブルを用いてCPU51による処理を行わせることによって、作業者に有害物質及び部品に関する特定の知識を必要とせずに、有害物質の含有可能性を示すことができる。
本実施例において、有害元素とは、所定値以上となると人体又は環境等に有害であると見なされる元素、又は、元素同士の結合によって有害物質を構成する元素を示す。このような元素が、蛍光X線測定器62によって測定される際に検出すべき元素として自動的に指定される。また、単に元素を指定するのみでなく、検出目的となる物質(素材)の蛍光X線測定による蛍光X線スペクトルの特性を考慮した処理を実行し、指定元素の検出精度を向上させている。
以上の説明に関し、更に以下の項を開示する。
(付記1)
蛍光X線測定装置と接続可能であって、前記蛍光X線測定装置による蛍光X線分析法基づく定量測定を用いて部品又は材料中の指定元素の検出を支援する分析装置において、
前記分析装置での処理を制御する制御手段と、
前記制御手段から指示される測定条件に従って前記蛍光X線測定装置に型蛍光X線分析法による定量測定を実行させた結果を取得する測定結果取得手段とを有し、
前記制御手段は、更に、
前記部品又は材料の素材を判定する素材判定手段と、
前記素材判定手段の結果に基づいて、前記素材の蛍光X線スペクトルに基づいて特定される測定条件に従って前記蛍光X線測定装置に定量測定を実行させ、その定量測定結果に基づいて、前記指定元素を含む物質の有無を判定する物質含有判定手段とを有することを特徴とした分析装置。
(付記2)
前記蛍光X線測定装置にセットされる前記部品又は材料の面積が該部品又は材料に照射する一次X線の照射面積以上となるように該部品又は材料のセッティング状態を表示ユニットに表示させるセッティング状態表示手段を有することを特徴とする付記1記載の分析装置。
(付記3)
前記セッティング状態表示手段は、光学像又は透過X線像を表示ユニットに表示させることを特徴とする付記2記載の分析装置。
(付記4)
前記素材判定手段は、
前記部品又は材料から検出された各元素のkレシオの合計値が所定値より大であるか否かを判断することによって、該部品又は材料が金属系材料の素材であるか非金属系材料の素材であるかを判定する金属非金属判定手段を有することを特徴とする付記1乃至3のいずれか一項記載の分析装置。
(付記5)
前記制御手段は、
蛍光X線スペクトル中の主成分の妨害ピークとなる元素を指定して前記蛍光X線測定手段に定量測定を実行させ、検出元素のピークを分離して除去する妨害ピーク除去手段を有することを特徴とする付記1記載の分析装置。
(付記6)
前記制御手段は、
元素毎のサムピークの計数量依存性を示すデータベースを用いて、測定スペクトルから得た主成分のピークのエネルギー値とX線強度と計数量とから、サムピークのエネルギー値とX線強度とを算出し、ピーク分離成分に加えて差し引くことによってサムピークを除去することを特徴とする付記5記載の分析装置。
(付記7)
前記制御手段は、
測定スペクトルから得た主成分の情報から部品又は材料の種類を推定し、予め組み込んである物質ごとの結晶構造および格子面の種類と面間隔とを示すデータベースを用い、回折線の出現するエネルギー値をブラッグの式より算出し、検出元素のX線シリーズの強度比を考慮した上で、未同定ピークが回折線であるかを判定し、回折線である場合は、ピーク分離成分に加えて差し引くことによって回折線を除去することを特徴とする付記5記載の分析装置。
(付記8)
前記制御手段は、
回折線であることを確認する方法として、ピークの半値幅が、主成分の元素の蛍光X線ピークの1.2倍以上ある場合、回折線であると判定することを特徴とする付記7記載の分析装置。
(付記9)
前記制御手段は、
任意の微量成分元素の有無を判定する方法として、濃度に換算した標準偏差σおよびピーク形状の両方を用い、定量結果≧3σとピーク形状のポアソン分布への相関係数|r|>0.2とを同時に満たすときに、検出有りと判定することを特徴とする付記1記載の分析装置。
(付記10)
前記素材判定手段は、
ファンダメンタルパラメーター法で定量した結果、Zn>50wt%、Ni>50wt%、Cr>20wt%の場合、Cd又はAu及びAgが検出された場合、Snを検出しかつ銀色である場合のいずれかの時、前記部品又は材料の表面にめっき膜が付いていると判定することによってめっき膜の有無を判定するめっき膜有無判定手段を有することを特徴とする付記1記載の分析装置。
(付記11)
前記素材判定手段は、
ファンダメンタルパラメーター法で定量した結果、Mg、Al、Cu、CuとZn、Fe、のいずれかが主成分である場合、有害元素を含む可能性のある金属基材と判定することによって金属基材を判定する金属基材判定手段を有することを特徴とする付記1記載の分析装置。
(付記12)
前記素材判定手段は、
ファンダメンタルパラメーター法で定量した結果、Sn>50wt%の場合、Pbを追加指定しSnとPbのみで定量することによってはんだ材を判定するはんだ材判定手段を有することを特徴とする付記1記載の分析装置。
(付記13)
前記物質含有判定手段は、
NiとPが共存する場合、ファンダメンタルパラメーター法で定量した結果、Zn>50wt%の場合、Cdを検出した場合のいずれかの時、有害元素を含むめっき膜が付いている可能性があると判定するめっき膜有害元素判定手段を有することを特徴とする付記1記載の分析装置。
(付記14)
めっき膜の主成分元素の強度合計を基準にして算出した、膜中に含まれる微量成分元素の強度から作成した検量線を用いて定量分析を行なうことを特徴とする
付記13記載の分析装置。
(付記15)
NiPめっき膜中のCd又はPbの定量分析をする際、蛍光X線スペクトルのNiピーク強度を基準にすることを特徴とする付記14記載の分析装置。
(付記16)
Znめっき膜中のCd又はPbの定量分析をする際、蛍光X線スペクトルのZnピーク強度を基準にすることを特徴とする付記14記載の分析装置。
(付記17)
前記物質含有判定手段は、
ファンダメンタルパラメーター法で定量した結果、Zn>50wt%場合、微量のCrが検出し且つNi>50wt%又はAl>50wt%又はMg>50wt%の場合に、クロメート処理がなされている可能性のある金属材料と判定することを特徴とする付記1記載の分析装置。
(付記18)
管電圧35〜45kVを用い、4.5keVから6.5keVのCr−K線エネルギー付近の一次X線スペクトル強度をカットするような一次フィルタを通して得た一次X線を用い、200から600secで測定することによって微量のCrの有無を確認することを特徴とする付記17記載の分析装置。
(付記19)
前記素材判定手段は、
前記部品又は材料から検出された各元素のkレシオの合計値が所定値より大であるか否かを判断することによって、該部品又は材料が金属系材料の素材であるか非金属系材料の素材であるかを判定する金属非金属判定手段を有し、
前記物質含有判定手段は、
前記金属非金属判定手段によって非金属であると判定された場合、前記部品又は材料に対してCrの有無を判定するための所定の測定条件に従って、前記蛍光X線測定装置に定量測定を実行させ、その定量結果に基づいて、Crの有無を判定するCr有無判定手段と、
前記第一の判定手段によってCrが含有されると判定した場合であって、Ba、Zn、Sr、Pbの4元素のいずれも共存しない場合は、六価クロムが非含有であると判定する六価クロム非含有判定手段とを有することを特徴とする付記1記載の分析装置。
(付記20)
前記制御手段は、Ba、Zn、Sr、Pbの4元素を指定した所定の測定条件に従って、前記蛍光X線測定装置に定量測定を実行させる定量測定手段を有し、
前記物質含有判定手段は、
前記定量測定手段による定量結果に基づいて、Ba、Zn、Sr、Pbの4元素いずれもCrと共存しない場合、六価クロムが非含有であると判定する六価クロム非含有判定手段とを有することを特徴とする付記4記載の分析装置。
(付記21)
蛍光X線測定装置による蛍光X線分析法による定量測定を用いて部品又は材料中の指定元素の検出を支援する分析方法において、コンピュータが、
前記コンピュータでの処理を制御する制御手順と、
前記制御手順によって指示される測定条件に従って記蛍光X線測定装置に前記蛍光X線分析法による定量測定を蛍光X線測定器に実行させた結果を取得する測定結果取得手順とを実行し、
前記制御手順は、更に、
前記部品又は材料の素材を判定する素材判定手順と、
前記素材判定手順の結果に基づいて、前記素材の蛍光X線スペクトルに基づいて特定される測定条件に従って前記蛍光X線測定装置に定量測定を実行させ、その定量測定結果に基づいて、前記指定元素を含む物質の有無を判定する物質含有判定手順とを有することを特徴とした分析方法。
(付記22)
エネルギー分散型蛍光X線分析法による定量測定を用いて部品又は材料中の有害元素の検出を支援する分析方法での処理をコンピュータに行なわせるコンピュータ実行可能なプログラムにおいて、該コンピュータに、
前記コンピュータでの処理を制御する制御手順と、
前記制御手順によって指示される測定条件に従って前記エネルギー分散型蛍光X線分析法による定量測定を蛍光X線測定器に実行させ、その結果を取得する蛍光X線測定手順とを実行し、
前記制御手順は、更に、
前記部品又は材料の素材を判定する素材判定手順と、
前記素材判定手順の結果に基づいて、前記素材の蛍光X線スペクトルに基づいて特定される測定条件に従って前記蛍光X線測定手順に定量測定を実行させ、その定量測定結果に基づいて、前記有害物質の含有の有無を判定する有害物質含有判定手順とを実行させることを特徴とするコンピュータ実行可能なプログラム。
(付記23)
エネルギー分散型蛍光X線分析法による定量測定を用いて部品又は材料中の有害元素の検出を支援する分析装置において、
前記分析装置での処理を制御する制御手段と、
前記制御手段から指示される測定条件に従って前記エネルギー分散型蛍光X線分析法による定量測定を実行し、その結果を前記制御手段へ通知する蛍光X線測定手段とを有し、
前記制御手段は、更に、
前記部品又は材料の素材を判定する素材判定手段と、
前記素材判定手段の結果に基づいて、前記素材の蛍光X線スペクトルに基づいて特定される測定条件に従って前記蛍光X線測定手段に定量測定を実行させ、その定量測定結果に基づいて、前記有害物質の含有の有無を判定する有害物質含有判定手段とを有することを特徴とした分析装置。
(付記24)
前記指定元素は、有害元素であることを特徴とする請求項1乃至23のいずれか一項記載の分析装置。
(付記25)
蛍光X線測定装置を用いて部品又は材料中の有害元素の含有可能性を検査する検査方法において、
前記分析装置での処理を制御する制御手順と、
前記蛍光X線測定装置の一次X線発生器と設定された前記部品又は材料上の照射位置との距離に関する距離情報と、前記制御手順による指示に応じて行われた前記蛍光X線測定装置による測定結果とを取得する測定結果取得手順と、
前記制御手順は、更に、
前記有害元素毎に、前記測定結果によって示されるX線強度を前記蛍光X線測定装置によって測定された測定エリアにおける位置情報に対応させたマッピングデータを生成するマッピングデータ生成手順と、
検出されたX線強度と前記距離との関係に基づいて、前記距離情報を用いて前記有害元素毎のマッピングデータによって示されるX線強度を補正するX線強度補正手順と、
前記有害元素毎のマッピングデータに基づいて、所定X線強度以上を示す前記照射位置にて該有害元素の含有可能性有りと判断した結果を、該有害元素を検出したことを示す検出位置情報として生成する検出位置情報生成手順と、
前記検出位置情報手順にて生成された前記有害元素毎の前記検出位置情報を2つ以上の有害元素について合成することによって特定の有害物質が含有される可能性を示す画像データを生成して表示ユニットに表示させる表示手順とを有することを特徴とした検査方法。
(付記26)
前記制御手順は、
前記蛍光X線測定装置に設定された前記部品又は材料を該蛍光X線測定装置の検出器に対して所定角度で回転させて、該蛍光X線測定装置によって再度測定を行わせる再測定手順を有し、
前記再測定手順は、
前記再測定手順による測定時の前記一次X線発生器と設定された前記部品又は材料上の照射位置との距離に関する距離情報と、測定結果とを前記測定結果取得手順によって取得すると、前記マッピングデータ生成手順と、前記X線補正手順と、前記検出位置情報生成手順とを実行することによって生成された検出位置情報と、前記所定角度で回転させる前に生成された検出位置情報とを合成することを特徴とした付記25記載の検査方法。
(付記27)
前記制御手順は、前記部品又は材料とその形状の対称性を用いて等分される1部分とを対応させて管理するデータベースを参照することによって、測定エリアを設定する測定エリア設定手順を有し、
前記マッピングデータ生成手順は、前記測定エリア設定手順によって設定された前記測定エリアにおける前記マッピングデータを生成し、
前記表示手順は、前記1部分に相当する前記画像データを、前記形状の対称性に従って画像データを等倍することによって合成し、該形状に応じた画像データを生成することを特徴とする付記25記載の検査方法。
本発明は、具体的に開示された実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。