(第1の実施形態)
以下、本発明の液体噴射装置をインクジェット式プリンターに具体化した第1の実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は、図1に矢印で示す左右方向、上下方向(重力方向における上下方向)をそれぞれ示すものとする。また、「前後方向」をいう場合は、図1の紙面に直交する方向を示すものとする。
図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」という。)11は、ターゲットとしての用紙12を搬送するための搬送ユニット13と、用紙12に印刷を施すための記録ヘッドユニット15とを備えている。
搬送ユニット13は左右方向に長い矩形板状のプラテン17を備えている。プラテン17の右側には前後方向に延びる駆動ローラー18が駆動モーター19によって回転駆動可能に配置される一方、プラテン17の左側には前後方向に延びる従動ローラー20が回転可能に配置されている。さらに、プラテン17の下側には前後方向に延びるテンションローラー21が回転可能に配置されている。
駆動ローラー18、従動ローラー20、及びテンションローラー21には、プラテン17を囲むように、多数の貫通孔を有する無端状の搬送ベルト22が巻き回されている。この場合、テンションローラー21は、図示しないばね部材によって下側に向かって付勢されており、搬送ベルト22にテンションを付与することで該搬送ベルト22の弛みを抑制するようになっている。
そして、駆動ローラー18を前側から見て時計方向に回転駆動することで、搬送ベルト22が駆動ローラー18、テンションローラー21、及び従動ローラー20の外側を前側から見て時計方向に周回移動されるようになっている。また、用紙12は、プラテン17の上面と対向する位置にある場合、図示しない吸引手段によって搬送ベルト22越しにプラテン17側に吸引され、上流側である左側から下流側である右側に向かって搬送されるようになっている。
また、従動ローラー20の左斜め上側には、未印刷の複数の用紙12を1枚ずつ順次搬送ベルト22上に給紙するための上下1対の給紙ローラー23が設けられている。一方、駆動ローラー18の右斜め上側には、印刷後の用紙12を1枚ずつ搬送ベルト22上から排紙するための上下1対の排紙ローラー24が設けられている。
図1及び図2に示すように、記録ヘッドユニット15には、前後方向に延びる複数個(本実施形態では4個)の液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド26〜29が、左右方向に間隔を有して設けられている。なお、各記録ヘッド26〜29の下面となるノズル形成面26a〜29aには、多数のノズル30が前後方向に沿ったノズル列を形成するように、前後方向に所定間隔をおいて規則的に開口している。そして、このように構成された各ノズル30には、記録ヘッド26〜29毎に同じ種類のインク(液体)が供給され、ノズル30から噴射されるようになっている。
すなわち、図2に示すように、第1の記録ヘッド26には、ブラックのインクが収容された液体供給源としてのインクカートリッジ31から、液体供給流路としてのインク流路32を介してブラックインクを供給するインク供給装置33が接続されている。また、同様に第2〜第4の記録ヘッド27〜29には、シアン、マゼンタ、イエローの各色のインクをそれぞれ収容したインクカートリッジ31からインクを供給するインク供給装置33が接続されている。
但し、各インクカートリッジ31から各記録ヘッド26〜29へインクを供給するインク供給装置33の構成は同じであるため、図2には第1の記録ヘッド26にインクを供給する一つのインク供給装置33のみを第1の記録ヘッド26とインクカートリッジ31と共に図示している。そして、以下においては、この図2に示す第1の記録ヘッド26と第1の記録ヘッド26にインクを供給するインク供給装置33を例にして説明することにする。
図2に示すように、第1の記録ヘッド26内には、インク流路32の下流側と連通するリザーバ36がノズル列に沿って前後方向に延びるように形成されると共に、そのリザーバ36の延設方向の複数位置から各ノズル30と個別に対応する複数の分岐流路35が分岐形成されている。この分岐流路35は、ノズル30と連通するキャビティ37と、該キャビティ37とリザーバ36とを連通する連通流路38とにより構成されている。さらに、第1の記録ヘッド26内におけるキャビティ37に隣接する位置には、圧電素子(図示略)が配設されている。そして、この圧電素子が収縮及び伸張してキャビティ37の容積を変更することにより、ノズル30からインクが噴射されるようになっている。
また、図2,図3に示すように、リザーバ36の上方位置には、インクを非透過であると共に気体を透過可能な第1の透過壁39を介して、リザーバ36と隣接する第1の減圧室40が設けられている。なお、図2に示すように、リザーバ36の上壁内面は斜めに形成されて中央部分が両端部分に比べて上下方向に高さを有して形成されている。そして、この中央部分の壁面を構成する第1の透過壁39を介してリザーバ36と隣接するように第1の減圧室40は設けられている。したがって、リザーバ36内で気泡が生じた場合、その気泡は斜めの上壁内面に沿って中央部分に移動して第1の透過壁39付近に集まるようになっている。
さらに、インク流路32における記録ヘッド26への接続箇所の直前位置は脱気位置PDとされ、その脱気位置PDには、円盤状の第1のフィルター41がインク流路32を塞ぐように設けられている。なお、第1のフィルター41が設けられた部分のインク流路32の断面積は、インク流路32における他の部分の断面積よりも大きく、インクが第1のフィルター41を通過する際の流路抵抗が緩和されている。そして、インク流路32において、第1のフィルター41よりも上流側のフィルター室42と隣接する位置には、インクを非透過であると共に気体を透過可能な第2の透過壁43を介して第2の減圧室44が設けられている。
また、図2に示すように、インクカートリッジ31は、インクを収容した可撓性を有するインクパック46と、そのインクパック46が収容されるケース47とから構成されている。また、ケース47には、空気流路48を介して加圧ポンプ49が接続されていると共に、インクパック46には、インク流路32の上流端が接続されている。そして、加圧ポンプ49が空気流路48を介してケース47内に空気を供給することにより、インクパック46が押し潰されてインクパック46内のインクがインク流路32へ供給されるようになっている。
また、インク流路32における第1の位置としての調圧位置PTには、下流側の減圧に伴って上流側から下流側へのインクの通過を許容し、インク流路32内の圧力を調整する一方向弁51が設けられている。すなわち、一方向弁51は、インクカートリッジ31から加圧供給されたインクを一次貯留する貯留室52と、貯留室52よりも下流側に位置する圧力室53とを有している。貯留室52と圧力室53は、隔壁部54によって隔てられると共に、その隔壁部54には弁孔54aが貫通形成されている。そして、弁孔54aには、ばね55により閉弁方向に付勢されて隔壁部54に貯留室52側から当接する弁体56が配置され、その弁体56がばね55の付勢力に抗して開弁方向へ移動することにより、貯留室52と圧力室53が連通するようになっている。
すなわち、ノズル30からインクが噴射されてインクが消費されると、圧力室53内が減圧され、圧力室53と大気との差圧に基づきフィルム57が圧力室53側へ撓み変形する。そして、この撓み力がばね55の付勢力より大きくなると、弁体56が隔壁部54から離間する開弁位置に移動し、加圧された貯留室52内のインクが圧力室53側へ流入する。そして、圧力室53へインクが流入してその室圧が高まると、ばね55の付勢力が打ち勝って弁体56が再び隔壁部54と当接する閉弁位置に移動することになる。
このように、一方向弁51は、弁体56よりも下流側の減圧によって開弁するのに対し、上流側が加圧された場合には、弁体56が閉じる方向に力を受けるため、開弁せずに閉弁状態を維持する。また、下流側が加圧された場合も同様に、フィルム57が圧力室53の容積を増大させる方向へ撓み変形するため、弁体56は、フィルム57から開弁方向への力を受けずに閉弁状態を維持する。さらに、上流側のインクは、加圧ポンプ49によって加圧されているため、弁体56よりも上流側が減圧されることはない。すなわち、一方向弁51は、下流側が減圧されたときにだけ開く弁である。
なお、圧力室53の一部は、可撓性材料(例えば合成樹脂やゴム等)よりなるフィルム57により構成されており、例えばフィルム57とともに変位可能な図示しない片持ちの金属片(例えば櫛歯状金属片の一片)を弁体56の当接箇所に配置している。
また、調圧位置PTよりも下流側であって、記録ヘッド26よりも上流側、より詳しくは脱気位置PDよりも上流側となる第2の位置としての変圧位置PHには、接続口58が形成されている。なお、接続口58には、筒状の接続部材59が変圧位置PHでインク流路32から分岐するように接続されると共に、その接続部材59の先端にはポンプ及びチューブポンプとしてのメンテナンスポンプ61が接続されている。
図3に示すように、接続部材59には、基端側となる接続口58寄りの位置に、接続部材59の内部空間(接続流路)を塞ぐ第2のフィルター68と、接続口58を閉塞してインクの流動を制限可能な第1の開閉弁69とがそれぞれ設けられている。さらに、接続部材59において、第1の開閉弁69よりも先端側(メンテナンスポンプ61側)となる位置には、接続部材59内に吸引されたインクの有無を検出可能な検出手段としてのセンサー70が設けられている。
さらに、接続部材59は、センサー70よりもメンテナンスポンプ61側の分岐点Pbから分岐して第1の減圧室40に接続された分岐部71を有している。なお、分岐部71は、その途中からさらに分岐した分岐部71aが第2の減圧室44に接続されている。さらに、分岐部71において、分岐部71aが分岐した部分よりも分岐点Pb側の位置には、分岐部71の内部空間を閉塞可能な第2の開閉弁72が設けられている。なお、分岐部71は、少なくとも一部が分岐点Pbよりも重力方向の上方位置に位置するように形成されている(すなわち、図示は省略するが、分岐部71は、分岐点Pbにおいて接続部材59に接続される端部よりも開閉弁72側の流路部分の一部が、分岐点Pbよりも上方となる位置を経由するように形成されている)。そのため、インクが基端側から分岐点Pbを越えて先端側まで吸引された場合であっても、分岐部71を介した第1の減圧室40及び第2の減圧室44へのインクの浸入が抑制される。
そして、接続部材59は、接続口58側となる基端側の方がメンテナンスポンプ61側となる先端側よりも重力方向において下方に位置するように、接続口58から斜め上方に向けて斜状に延びるように設けられている。
また、メンテナンスポンプ61は、接続部材59内の圧力を変化させることにより接続口58からインクを吸引及び吐出することにより、記録ヘッド26内のインクを加圧可能なポンプである。すなわち、メンテナンスポンプ61とは別に加圧ポンプ49を設けているが、加圧ポンプ49による加圧は一方向弁51によりせき止められ、記録ヘッド26へ加圧力を伝達することはできない。そこで、記録ヘッド26のメンテナンスを行うためには、加圧ポンプ49とは別に記録ヘッド26内のインクを加圧可能なメンテナンスポンプ61が必要となる。
図3に示すように、メンテナンスポンプ61は、長さ方向の両端が開口して弾性を有する円筒状のチューブ62と、チューブ62を支持するポンプフレームとしての枠体63と、チューブ62を押圧可能な押圧機構64とを有している。
そして、チューブ62の基端側の端部は、接続部材59に接続される接続部62aとされていると共に、チューブ62の先端側の端部は、チューブ62の内部空間を大気に対して開放する開口部62bとされている。さらに、チューブ62の長さ方向において、接続部62aと開口部62bとの間となる位置は、中間部分62cとされている。
また、枠体63は、リング状の板部材の一部が切り欠かれた切り欠き部63aと、切り欠き部63aから突出したチューブ62の先端部分を支持する先端支持部63bと、断面C字状をなしてチューブ62の中間部分62cを支持する中間支持部63cとを有している。
なお、枠体63の先端支持部63bは、チューブ62の先端部分を挿通状態で支持するように筒状に形成されている。また、枠体63における中間支持部63cは、先端支持部63bと接続部材59とを連結する板状体であって、チューブ62を円弧状に湾曲させた状態で外周側から支持するように断面円弧状に曲げ形成されている。すなわち、チューブ62の中間部分62cは、断面円弧状に湾曲した中間支持部63cの内側の面である支持面63dに長さ方向に沿って支持されている。
なお、チューブ62は、先端側の開口部62bが接続口58よりも重力方向において上方位置に位置するように設けられている。また、中間部分62cの内部空間の容積は、接続部材59における第1の開閉弁69とセンサー70との間の内部空間の容積よりも大きくなっている。
また、図3,図4に示すように、枠体63の中間支持部63cにより円弧状に湾曲した状態で支持されたチューブ62の中間部分62cの内側(内周側)位置には押圧機構64が配置されている。この押圧機構64は、支持面63dの円弧中心となる軸線としての駆動軸75を中心に回転可能な回転板76と、回転板76の径方向外側に突出する舌片部76aの先端部に回転可能に設けられた押圧部材としての押圧ローラー77とを備えている。なお、押圧ローラー77は、回転軸78を中心に回転可能に設けられている。そして、押圧ローラー77は、その回転時にチューブ62の中間部分62cを内周側から枠体63の中間支持部63c側に向かって押圧するように構成されている。すなわち、押圧ローラー77は、中間支持部63cの支持面63dとの間でチューブ62を挟圧して押し潰すように配置されている。
そのため、チューブ62の中間部分62c内は、押圧ローラー77及び枠体63の中間支持部63cによって押し潰された位置である押圧点62dを境として、接続部材59側の内部空間が、接続部材59の内部空間(接続流路)と共にインク室79とされている。また、押圧点62dよりも開口部62b側となる先端側の内部空間が気体室80とされている。
また、図3に示すように、押圧ローラー77の円運動軌跡上には、押圧ローラー77が切り欠き部63aに対する非閉塞区間としての非挟持領域Aと、押圧ローラー77が中間支持部63cに対する閉塞区間としての挟持領域Bが1つずつ設けられている。
すなわち、押圧ローラー77が切り欠き部63aに対することで非挟持領域Aに位置すると、チューブ62の挟持状態が解除され、インク室79と気体室80とが連通するようになっている(図8参照)。すなわち、非挟持領域Aは、押圧ローラー77が中間支持部63cと非対向となる位置であって、チューブ62の中間部分62cを中間支持部63cとの間に挟持不能な位置である。
また、挟持領域Bは、押圧ローラー77がチューブ62の中間部分62cを介して中間支持部63cと対向する位置であって、中間部分62cを中間支持部63c側に押し付けて挟持可能な位置である。そして、本実施形態では、非挟持領域Aよりも挟持領域Bの方が駆動軸75を中心とする周方向での領域長が長くなっている。
さて、押圧モーター81(図2参照)の正転駆動に伴って駆動軸75が正回転すると、押圧ローラー77は、回転板76と共に図3において白抜き矢印で示す方向(反時計回り方向であって、以下「正方向」という。)に円運動するようになっている。すなわち、押圧ローラー77が、チューブ62を押し潰した状態を維持したまま開口部62bに近づく方向に円運動すると、図4に示すように、インク室79の容積が増大すると共に、気体室80の容積が減少する方向へ押圧点62dが移動する。
そのため、第1の開閉弁69が開弁した状態で押圧ローラー77が正方向に円運動すると、容積が増大するインク室79内には、インク流路32からインクが吸引される。すなわち、押圧モーター81を正転駆動するとメンテナンスポンプ61は吸引駆動(インク室79内を減圧する減圧動作)する。なお、このとき容積が減少する気体室80は、開口部62bから空気が吐出されて大気圧状態となっている。
また、押圧モーター81の逆転駆動に伴って駆動軸75が逆回転すると、押圧ローラー77は、回転板76と共に時計回り方向(図5に白抜き矢印で示す方向であって、以下「逆方向」という。)に円運動するようになっている。すなわち、押圧ローラー77が、チューブ62を押し潰した状態を維持したまま接続部62aに近づく方向に円運動すると、インク室79の容積が減少すると共に、気体室80の容積が増大する方向へ押圧点62dが移動する。
そのため、第1の開閉弁69が開弁した状態で押圧ローラー77が逆方向に円運動すると、容積が減少するインク室79内のインクは、インク流路32へ吐出される。すなわち、押圧モーター81を逆転駆動するとメンテナンスポンプ61は吐出駆動(インク室79内を加圧する加圧動作)する。なお、このとき容積が増大する気体室80は、開口部62bから空気が吸引されて大気圧状態となっている。
さらに、図2に示すように、プリンター11には、プリンター11の稼働状態を統括制御する制御手段としての制御部82が設けられている。そして、制御部82は、各記録ヘッド26〜29に設けられた圧電素子(図示略)、加圧ポンプ49、メンテナンスポンプ61、押圧モーター81を駆動制御して印刷及びクリーニング処理を行うようになっている。なお、メンテナンスポンプ61の制御とは、図4に示すように、センサー70の検出結果に基づく第1,第2の開閉弁69,72の開閉制御である。
そこで次に、以上のように構成されたプリンター11における作用について、以下説明する。なお、メンテナンスポンプ61は、プリンター11にインクカートリッジ31が装着された後に初期充填が実行され、記録ヘッド26及びインク流路32内にはインクが充填されているものとする。さらに、図面では、第1,第2の開閉弁69,72の開弁状態の弁を白抜きで示すと共に、閉弁状態の弁を黒塗りで示している。
さて、印刷が実行されずにノズル30からインクが噴射されない期間が長くなると、ノズル30からインクが蒸発してインクが増粘したり、メニスカスの位置が上昇したりしてしまうことがある。なお、メニスカスの位置の上昇は、インクの蒸発だけでなくプリンター11が衝撃を受けた場合や、用紙12の端がノズル30に接触した場合など他の場面でも生じることがある。
そこで、制御部82は、例えばユーザーからクリーニング処理の実行指令を図示しない操作部から受信した場合や、前回のクリーニング処理から所定時間が経ったと判断した場合には、クリーニング処理を実行する。
なお、図3に示すように、クリーニング処理の実行にあたり、メンテナンスポンプ61は、インクをセンサー70まで吸引した状態で第1の開閉弁69が開弁されていると共に、第2の開閉弁72が閉弁されているものとする。また、押圧ローラー77は、挟持領域Bの基端側の端となる吸引開始位置P1に位置しているものとする。
さて、この状態から制御部82は、押圧モーター81を正転駆動して押圧ローラー77を反時計回り方向に円運動させる。すると、図4に示すように、容積が増大して減圧するインク室79には、接続口58からインクが吸引されるものの、分岐部71内へのインクの浸入は既述したように分岐部71の一部が分岐点Pbよりも上方に位置するため抑制される。
さらに、図5に示すように、押圧ローラー77が挟持領域Bの先端側の端となる吸引終了位置P2まで移動すると、制御部82は、押圧モーター81を逆転駆動して押圧ローラー77を逆方向に円運動させることにより、吸引開始位置P1まで移動させる(図3参照)。すると、第1の開閉弁69が開弁されているため、容積が減少するインク室79内のインクは、接続口58からインク流路32へ吐出される。
また、このときインクは第2のフィルター68を通過して吐出される。そのため、インク室79内においてインクが脱気されて該インクに気泡が生じた場合であっても、気泡が第2のフィルター68によって分離されることによりインク流路32への気泡の吐出が抑制されている。
ところで、インク流路32において、変圧位置PHよりも上流側に設けられた一方向弁51は、下流側から減圧された際に開弁するのに対し、下流側から加圧された際には閉弁状態を維持する。そのため、メンテナンスポンプ61からインクが吐出されると、一方向弁51は閉弁しているため、インクは調圧位置PTよりも下流側となる記録ヘッド26側へ供給されることにより、ノズル30からインクが排出されて記録ヘッド26の加圧クリーニングが実行される。
また、本実施形態では、インク流路32とメンテナンスポンプ61とが接続部材59を介して接続されている。そして、メンテナンスポンプ61は、インクがセンサー70まで吸引された状態で吸引駆動し、その後、吐出駆動するようになっている。すなわち、メンテナンスポンプ61が吸引駆動(減圧動作)した後における吐出駆動(加圧動作)の終了時に、接続部材59内のインクは、第1の開閉弁69よりもメンテナンスポンプ61側に液面が位置し、インク室79内の気体がインク流路32へ吐出されるのが抑制されている。そのため、加圧クリーニングの実行後、すなわちメンテナンスポンプ61の吐出駆動後においても接続部材59内にはインクが残存し、接続部材59内のインクは気体が溶け込みやすい状態となっている。
そのため、こうしたインクへの気体の溶け込みを抑制するべく、加圧クリーニング実行後には、インク室79内を減圧する減圧処理が必要となる。具体的には、図3に示す状態から、制御部82は、第1の開閉弁69を閉弁すると共に、第2の開閉弁72を開弁し、押圧モーター81を正転駆動して押圧ローラー77を正方向に円運動させる。つまり、インクの液面を第1の開閉弁69よりもメンテナンスポンプ61側に位置させた状態で、メンテナンスポンプ61の吸引駆動(減圧動作)を開始させる。
すると、図6に示すように、第1の開閉弁69は閉弁されてインク流路32からのインクの流入が制限されているため、押圧ローラー77の正方向への移動により容積が増大するインク室79内は減圧される。なお、このとき第2の開閉弁72は開弁されて第1,第2の減圧室40,44が分岐部71,71aを介してインク室79と連通しているため、第1,第2の減圧室40,44内も減圧される。一方、押圧ローラー77の正方向への移動により容積が減少する気体室80は、開口部62bから空気が吐出されて大気圧状態に保たれる。
そして、図7に示すように、押圧ローラー77が吸引終了位置P2まで移動すると、制御部82は、第1の開閉弁69の閉弁状態を維持したまま、第2の開閉弁72を閉弁する。その後、押圧モーター81をさらに正転駆動して押圧ローラー77を正方向へ回転移動させることにより、押圧ローラー77を非挟持領域Aへ位置させる(図8参照)。
すなわち、図8に示すように、押圧ローラー77が非挟持領域Aに位置すると、減圧されたインク室79と気体室80とが連通し、開口部62bから空気が吸引されてインク室79が一次的に大気圧状態となる。一方、第1,第2の減圧室40,44は、第2の開閉弁72が閉弁されているため、減圧状態に維持される。
続いて、制御部82は、押圧モーター81を正転駆動して押圧ローラー77を正方向に円運動させると共に、押圧ローラー77が挟持領域Bに位置する状態で第2の開閉弁72を開弁する(図9参照)。その後、制御部82は、押圧ローラー77が吸引終了位置P2に位置するタイミングで押圧モーター81の駆動を停止する(図10参照)。
すなわち、第1,第2の減圧室40,44は減圧された状態にあるため、第2の開閉弁72が開弁されてインク室79と第1,第2の減圧室40,44が連通すると、インク室79内は減圧される。そのため、第1,第2の減圧室40,44が大気圧状態となっている状態から押圧ローラー77を1周させた場合と比べてインク室79内を減圧することができる。
そして、第1,第2の減圧室40,44が減圧状態となることにより、リザーバ36及びフィルター室42において生じた気泡はそれぞれ第1,第2の透過壁39,43を透過して回収される。また、インク室79内も減圧状態とされているため、インク室79内のインクに溶け込んだ気体が脱気されやすくなる。
なお、押圧ローラー77は、次回のクリーニング処理が実行されるまで吸引終了位置P2に位置し、インク室79及び第1,第2の減圧室40,44内は減圧状態に維持されている。
上記第1の実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第1の開閉弁69を開弁した状態でメンテナンスポンプ61が吸引駆動すると、接続部材59及び接続口58を介してインク流路32からインクが吸引される。そして、第1の開閉弁69を開弁した状態でメンテナンスポンプ61が吐出駆動すると、接続部材59及び接続口58を介してインク流路32の変圧位置PHへインクが吐出される。なお、インク流路32の変圧位置PHよりも上流側の調圧位置PTには、インクの下流側から上流側への通過を制限する一方向弁51が設けられている。そのため、インク流路32における調圧位置PTに吐出されたインクは、記録ヘッド26〜29側へ供給されて記録ヘッド26〜29がクリーニングされる。さらに、第1の開閉弁69が閉弁した状態でメンテナンスポンプ61が吸引駆動すると、インク流路32からのインクの流入が制限されているため、チューブ62のインク室79内は減圧される。そして、接続部材59内はメンテナンスポンプ61が駆動停止しても減圧状態が維持される。そのため、例えばインク室79内のインクが空気と接した状態でポンプの駆動が停止した場合であっても、空気の圧力が低いため、圧力の高い空気と接している場合と比べてインクへの空気の溶け込みが抑制される。また、第1の開閉弁69が開弁した状態でメンテナンスポンプ61が吐出駆動すると、インクの流動が許容されているため、空気の溶け込みが抑制されたインクがインク流路32へ吐出される。したがって、インクへの空気の溶け込みを抑制すると共に、そのインクを記録ヘッド26〜29へ供給することができる。
(2)メンテナンスポンプ61が吸引駆動後に吐出駆動した場合にも、接続部材59内ではインクの液面が第1の開閉弁69よりもメンテナンスポンプ61側に位置するため、インクと空気とが直接接している場合であっても、第1の開閉弁69を越えて空気がインク流路32へ吐出されてしまうのを抑制することができる。
(3)押圧ローラー77の移動に伴ってインクを加圧することができるため、例えば、チューブ62内の気体を圧縮すると共に圧縮した気体の圧力をインクに付与してインクを加圧する場合と比べてインクへの気体の溶け込みを抑制することができる。
(4)押圧ローラー77の円運動軌跡上に挟持領域Bと非挟持領域Aとが位置しているため、押圧ローラー77は、円運動に伴って挟持領域Bと非挟持領域Aとに位置することができる。また、押圧ローラー77が非挟持領域Aに位置した場合には、チューブ62の閉塞が解除されてインク室79及び気体室80が連通する。したがって、非挟持領域Aからの押圧ローラー77の移動量によってチューブ62のインク室79の圧力を容易に調整することができる。
(5)接続部材59における第1の開閉弁69よりも接続口58側に第2のフィルター68を設けることにより、第2のフィルター68を通過したインクをインク流路32へ吐出することができる。すなわち、減圧されたインク室79内のインクが脱気されて気泡が生じた場合であっても、メンテナンスポンプ61が吐出駆動する際に第2のフィルター68によって気泡が分離されるため、気泡がインク流路32へ吐出されてしまう虞を低減することができる。
(6)例えば、リザーバ36内において気泡が発生した場合であっても、第1の透過壁39を介して第1の減圧室40側へ気体が移動するため、リザーバ36内に生じた気泡を減少させることができる。さらに、記録ヘッド26〜29へインクを供給するメンテナンスポンプ61を用いて第1の減圧室40を減圧することにより、第1の減圧室40を減圧するためのポンプを個別に設ける必要がなく、プリンター11を小型化することができる。
(7)インクが第1のフィルター41を通過する際に分離された気泡が、第2の透過壁43を介して第2の減圧室44へ移動するため、インク流路32内において生じた気泡を減少させることができる。さらに、記録ヘッド26〜29へインクを供給するメンテナンスポンプ61を用いて第2の減圧室44を減圧することにより、第2の減圧室44の減圧のためにポンプを個別に設ける必要がなく、プリンター11を小型化することができる。
(8)枠体63が剛性を有すると共に、中間部分62cを押圧ローラー77によって押し潰す構成としたため、例えば、ダイアフラムなどの可撓性部材を空気圧で変位させるダイアフラムポンプに比べてガスバリア性を向上させることができる。
(9)制御部82の制御に応じて第1の開閉弁69が開閉されると共に、メンテナンスポンプ61が吸引駆動及び吐出駆動される。そのため、インクへの空気の溶け込みを抑制した状態でメンテナンスポンプ61を容易に停止させることができる。
(10)接続部材59において、分岐部71は、センサー70よりも先端側から分岐し、インクの液面がセンサー70付近(すなわち、第1開閉弁69と分岐点Pbの間)に位置した状態で第1の開閉弁69を閉弁すると共に第2の開閉弁72を開弁してメンテナンスポンプ61を吸引駆動した。そのため、例えば、分岐点Pbよりもメンテナンスポンプ61側にインクの液面が位置している場合にメンテナンスポンプ61が吸引駆動した場合には、分岐部71内の気体が気泡としてインク中溶け込みやすくなってしまう。その点、本実施形態では、インクの液面が分岐点Pbよりも第1の開閉弁69側に位置して分岐点Pbに空気が存在している状態でインク室79内を減圧することができるため、分岐点Pbにおいてインク室79内の気体を直接吸引することができる。したがって、インクへの気体の溶け込みを更に一層抑制することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図11〜図14に従って説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態とは先端側が閉塞したチューブを用いると共に、押圧ローラー77の回転方向を一方向とした点でのみ相違している。そして、その他の構成は共通しているため、同様の構成部分については同一符号を付すことにして、その詳細な重複説明を省略する。
すなわち、図11に示すように、ポンプ及びチューブポンプとしてのメンテナンスポンプ84のチューブ85は、内部空間が連通するように基端側(チューブ85の長さ方向における一端側)の接続部85aが接続部材59に接続されている。また、チューブ85は、先端側(チューブ85の長さ方向における他端側)は閉塞して閉塞部85bとされていると共に、中間部分85cが中間支持部63cに支持されている。
さらに、押圧ローラー77は、押圧モーター81の駆動に伴って、挟持領域B(図3参照)に位置してチューブ85を押圧した状態のまま、チューブ85の長さ方向において閉塞部85bに近づく一方向(白抜き矢印で示す反時計回り方向)に円運動する。
すなわち、例えば、第1の開閉弁69が開弁した状態で挟持領域Bに位置する押圧ローラー77を反時計回り方向に円運動させると、容積が増大するインク室79内には、インク流路32からインクが吸引される。すなわち、メンテナンスポンプ84は、押圧モーター81の駆動に伴って押圧ローラー77を挟持領域Bにおいて反時計回り方向に移動させることにより、吸引駆動(インク室79内を減圧する減圧動作)する。
また、押圧ローラー77が挟持領域Bを反時計回り方向に移動する際には、気体室80の容積は減少するため、気体室80内の気体は圧縮される。そのため、押圧ローラー77がさらに反時計回り方向に回転して非挟持領域Aへ移動すると、気体室80とインク室79とが連通し、気体室80において圧縮された空気の圧力がインク室79に作用して接続口58からインクが吐出される。したがって、メンテナンスポンプ84は、押圧ローラー77を白抜き矢印で示す反時計回り方向に回転させ、挟持領域Bから非挟持領域Aへ移動させることにより、吐出駆動(インク室79内を加圧する加圧動作)する。
次に、以上のように構成されたメンテナンスポンプ84でクリーニングを行う場合の作用について、以下説明する。
なお、図11に示すように、待機状態のメンテナンスポンプ84は、インクの液面がセンサー70付近に位置した状態で第1の開閉弁69が閉弁されているのに対し、第2の開閉弁72は開弁されている。さらに、押圧ローラー77が吸引終了位置P2に位置して、インク室79内は減圧されているのに対し、気体室80内の気体が圧縮されているものとする。
さて、図11に示す状態から、まず制御部82は、図12に示すように、第2の開閉弁72を閉弁した後、第1の開閉弁69を開弁する。すると、減圧されたインク室79内に接続口58を介してインク流路32からインクが吸引される。その後、制御部82は、押圧モーター81を駆動して押圧ローラー77を白抜き矢印で示す反時計回り方向に円運動させて非挟持領域Aに位置させる。
すると、図13に示すように、気体室80とインク室79とが連通するため、気体室80内において圧縮されていた気体の圧力がインク室79内のインクに作用し、インクは接続口58からインク流路32へ勢いよく吐出される。
さらに、制御部82は、押圧ローラー77が非挟持領域Aに移動してから、吐出するインク量に応じた開弁時間が経過すると、第1の開閉弁69を閉弁させる。すなわち、例えば、噴射不良のノズル30が多く、強クリーニングが実行された場合には、吐出されるインク量が多い。そのため、吐出するインクの量が少ない弱クリーニングが実行された場合よりも開弁時間は長くなる。また、チューブ85は、開閉弁69付近の断面積が長さ方向の他の部分の断面積よりも小さいため、インクが吐出する際の流速が制限され、吐出するインク量の調整が容易になっている。
その後、制御部82は、さらに押圧モーター81を正転駆動して押圧ローラー77を白抜き矢印で示す方向(反時計回り方向)に円運動させると共に、押圧ローラー77が挟持領域Bに位置した状態で第2の開閉弁72を開弁する(図14参照)。そして、さらに制御部82は、押圧ローラー77が吸引終了位置P2(図11参照)に位置するように押圧モーター81の駆動を停止する。すると、図11に示すように、容積が増大するインク室79及びインク室79と連通する第1,第2の減圧室40,44は減圧されると共に、容積が減少する気体室80内の気体は加圧される。そして、押圧ローラー77は、次回のクリーニング処理が実行されるまで吸引終了位置P2に位置し、インク室79及び第1,第2の減圧室40,44内は減圧状態に維持される。
上記第2の実施形態によれば、第1の実施形態における(1)〜(10)の効果に加えて、さらに以下のような効果を得ることができる。
(11)押圧ローラー77を一方向に円運動させることにより、メンテナンスポンプ84の吸引駆動と吐出駆動とが可能となる。すなわち、押圧ローラー77を挟持領域Bに位置させてチューブ85を押し潰した状態のまま閉塞部85bに近づく一方向に円運動させると、チューブ85における押圧ローラー77に押し潰された位置よりも接続口58側のインク室79では、その容積が増大して減圧される。そのため、第1の開閉弁69が開弁されている場合には、接続口58からインクが吸引され、メンテナンスポンプ84は吸引駆動する。また、このとき押圧ローラー77に押し潰された位置よりも閉塞部85b側の気体室80は、容積が減少して気体室80内の空気が圧縮される。そして、押圧ローラー77がさらに閉塞部85bに近づく一方向に円運動することにより非挟持領域Aに変位すると、閉塞部85b側の気体室80で圧縮されていた空気の圧力によってインクが接続口58側に押し戻されて吐出されるため、メンテナンスポンプ84は吐出駆動する。したがって、押圧ローラー77を一方向に円運動させて吸引駆動と吐出駆動を行うことができるため、押圧ローラー77を両方向に円運動させることにより吸引駆動と吐出駆動を行う場合と比べてメンテナンスポンプ84の構成を簡素化することができる。
(9)メンテナンスポンプ84は、吐出駆動に伴ってインクを勢いよく吐出することができるため、少ないインクの量で加圧クリーニングを行うことができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図15〜図20に従って説明する。なお、第3の実施形態は、第2の実施形態とは接続部材59に中間開口部を形成すると共に、一方向に円運動する押圧ローラー77の移動方向を変更した点でのみ相違している。そして、その他の構成は共通しているため、同様の構成部分については同一符号を付すことにして、その詳細な重複説明を省略する。
すなわち、図15に示すように、接続部材59のセンサー70よりもメンテナンスポンプ84側には、重力方向の上方に向かって延びる筒部90が形成されている。そして、筒部90には、接続部材59の内部空間を大気に対して開放する中間開口部90aが形成されていると共に、中間開口部90aを閉塞可能な大気開放弁91が設けられている。
さらに、押圧ローラー77は、押圧モーター81の駆動に伴って、中間部分85cを押圧した状態のまま、チューブ85の長さ方向において閉塞部85bから離れる一方向(図15に白抜き矢印で示す時計回り方向)に円運動する。
そのため、例えば、第1の開閉弁69が開弁した状態で挟持領域Bに位置する押圧ローラー77を白抜き矢印で示す時計回り方向に回転移動させると、容積が減少するインク室79のインクは、接続口58からインク流路32へ吐出される。すなわち、メンテナンスポンプ84は、押圧モーター81を駆動して押圧ローラー77を挟持領域Bにおいて移動させることにより、吐出駆動(インク室79内を加圧する加圧動作)する(図18参照)。
また、押圧ローラー77が挟持領域Bを移動する際には、容積が増大する気体室80内は減圧される。そのため、押圧ローラー77がさらに白抜き矢印で示す時計回り方向に回転して非挟持領域Aへ移動すると、気体室80とインク室79とが連通し、接続口58からインクが吸引される。したがって、メンテナンスポンプ84は、押圧ローラー77を白抜き矢印で示す時計回り方向に回転させ、挟持領域Bから非挟持領域Aへ移動させることにより、吸引駆動(インク室79内を減圧する減圧動作)する(図17参照)。
次に、以上のように構成されたメンテナンスポンプ84でクリーニングを行う場合の作用について、以下説明する。
なお、図15に示すように、メンテナンスポンプ84は、センサー70までインクが吸引された状態で第1,第2の開閉弁69,72が閉弁されているのに対し、大気開放弁91は開弁され、押圧ローラー77は吸引終了位置P2に位置しているものとする。
さて、クリーニングを行う場合には、まず制御部82は、図15に示すように、押圧モーター81を駆動して押圧ローラー77を白抜き矢印で示す時計回り方向に円運動させる。すると、容積が減少するインク室79では、中間開口部90aから空気が吐出されて大気圧状態とされる。一方、気体室80は、容積が増大して減圧される。
さらに、図16に示すように、押圧ローラー77が吸引開始位置P1まで移動すると、制御部82は、大気開放弁91を閉弁した後、第1の開閉弁69を開弁する。そして、制御部82が押圧モーター81をさらに駆動し、図17に示すように、押圧ローラー77を非挟持領域Aへ移動させると、インク室79と気体室80とが連通する。したがって、気体室80内の減圧がインク室79内に伝達されてインク流路32からインクが吸引される。
そして、図18に示すように、押圧ローラー77がさらに円運動すると、該押圧ローラー77は、挟持領域Bに移動し、チューブ85を押し潰しながら移動する。すると、インク室79の容積が減少するため、接続口58からインク流路32へインクが吐出される。一方、容積が増大する気体室80は減圧される。
その後、図19に示すように、押圧ローラー77が吸引開始位置P1まで移動すると、制御部82は、第1の開閉弁69を閉弁し、その後、図20に示すように、さらに押圧ローラー77を非挟持領域Aへ移動させる。すると、インク室79と気体室80とが連通し、気体室80内の減圧がインク室79内に伝達されてインク室79内が減圧されるものの、第1の開閉弁69が閉弁されてインクの流入が制限されているため、インク室79内は減圧状態に維持される。
また、図20に示すように、制御部82は、大気開放弁91を閉弁した後、第2の開閉弁72を開弁する。すると、減圧されたインク室79と第1,第2の減圧室40,44とが分岐部71,71aを介して連通することにより、第1,第2の減圧室40,44内も減圧される。したがって、リザーバ36及びフィルター室42において生じた気泡が第1,第2の透過壁39,43を透過して第1,第2の減圧室40,44に回収される。
なお、押圧ローラー77は、次回のクリーニング処理が実行されるまで吸引終了位置P2に位置し、インク室79及び第1,第2の減圧室40,44内は減圧状態に維持される。
上記第3の実施形態によれば、第1,第2の実施形態における(1)〜(9)の効果に加えて、さらに以下のような効果を得ることができる。
(10)リザーバ36もしくはフィルター室42内において生じた気泡が第1,第2の減圧室40,44に回収されると、第1,第2の減圧室40,44及び該第1,第2の減圧室40,44と連通するインク室79内の圧力が上昇する。しかし、大気開放弁91を開弁することによってインク室79を大気開放することができるため、インク室79及び第1,第2の減圧室40,44を減圧した際の圧力の変動を抑制することができる。
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記各実施形態において、第1,第2の減圧室40,44及び第1,第2の透過壁39,43を設けない構成としてもよい。なお、減圧室40,44を設けない場合には、分岐部71を設けない構成としてもよい。また、どちらか一方のみ設ける構成としてもよい。さらに、各減圧室40,44ごとにメンテナンスポンプ61,84を設けてもよい。
・上記各実施形態において、分岐点Pbにおいて分岐された分岐部71を、異なるインクを供給するインク供給装置33のインク流路32に接続してもよい。そして、各分岐部に開閉弁を設けることにより、1つのメンテナンスポンプ61によって、複数種類のインクの脱気を行うことができる。また、分岐部を、各インクに対応するように各記録ヘッド26〜29に設けられたリザーバと隣接する第1の減圧室40及び、各インクに対応するインク流路と隣接する第2の減圧室44に接続してもよい。
・上記各実施形態において、第2のフィルター68を設けない構成としてもよい。例えば、接続部材59を長くすることにより、気泡がインク流路32へ吐出されるのを抑制するようにしてもよい。
・上記第1の実施形態において、メンテナンスポンプ61は、ピストンをシリンダー内において往復移動させることにより吸引駆動及び吐出駆動するピストンポンプを用いてもよい。なお、ピストンポンプは、シリンダーとピストンとによって囲み形成されたインク室の容積を増大させる方向にピストンを移動させることで吐出駆動すると共に、インク室の容積を減少させる方向にピストンを移動させることで吸引駆動する。
・上記第1,第2の実施形態において、第3の実施形態のようにチューブ62,85に大気開放弁を備えた中間開口部を形成してもよい。この場合には、大気開放弁の開弁制御によってインクに付与する加圧力を調整することができる。
・上記第1の実施形態において、非挟持領域Aを設けない構成としてもよい。すなわち、チューブ62が少なくとも1回転した状態で設けられると共に、押圧ローラー77は、円運動軌跡においてどの位置に位置した場合でも中間部分62cを閉塞するようにしてもよい。そして、この場合には、押圧ローラー77を1周以上円運動させることにより、吸引駆動もしくは吐出駆動させるようにしてもよい。
・上記各実施形態において、チューブ62,85をインク流路32に接続し、チューブ62,85の基端側の接続部62a,85aをインク流路32の接続口58に接続してもよい。また、チューブ62,85の先端側の端部を別部材に接続し、該別部材に開口部もしくは閉塞部を形成してもよい。
・上記各実施形態において、開口部62b,閉塞部85bは、チューブ62,85の中間部分62c,85cよりもチューブ62,85の長さ方向における先端側に形成されていれば、端部でなくてもよい。
・上記第1,第3の実施形態において、メンテナンスポンプ61,84は吐出駆動をせずに吸引駆動を連続して行うことができる。そのため、加圧ポンプ49及び空気流路48を設けない構成とし、メンテナンスポンプ61,84によってインクカートリッジ31からインクを吸引するようにしてもよい。
・上記第3の実施形態において、メンテナンスポンプ84が吸引駆動する際に、制御部82は、センサー70がインクを検出すると、大気開放弁91を開弁してインクの吸引を制限するようにしてもよい。
・上記各実施形態において、センサー70を設けない構成とし、例えば押圧ローラー77の移動範囲を制限することによって、開口部62b及び中間開口部90aからのインクの漏れを抑制するようにしてもよい。
・上記各実施形態において、開口部62b及び閉塞部85bは、接続口58よりも重力方向の下方に位置させるようにしてもよい。すなわち、例えばチューブ62,85の太さやインクの粘度、表面張力の大きさによって、気体を先端側に留めておくようにしてもよい。
・上記各実施形態において、例えば押圧ローラー77に無端状のチェーンやベルトを固定し、該チェーンやベルトを周回運動させることにより、押圧ローラー77を周回運動もしくは往復運動させるようにしてもよい。すなわち、押圧ローラー77は、円運動させる必要はなく、移動に伴ってチューブ62の押圧点62dを移動させることができれば、移動軌跡を任意に設定する事ができる。したがって、チューブ62は、例えば押圧ローラー77の移動軌跡の少なくとも一部に沿って配置されていればよく、例えば直線状に設けてもよい。
・上記各実施形態において、枠体63の中間支持部63cを備えず、例えば1対のローラーによって挟持するようにしてもよい。
・上記各実施形態において、接続部材59は、インク流路32を構成する部材と一体形成し、接続流路をインク流路32から分岐させるようにしてもよい。
・上記各実施形態において、メンテナンスポンプ61,84をリザーバ36に接続し、リザーバ36内のインクを吸引及び吐出するようにしてもよい。すなわち、メンテナンスポンプ61がリザーバ36に接続する場合には、リザーバ36がインクをノズル30へ供給する液体供給流路として機能する。
・上記各実施形態において、押圧ローラー77を、駆動軸75を中心とする径方向にも移動可能とし、チューブ62,85の内部空間を閉塞可能な閉塞区間と、閉塞区間よりも駆動軸75側となる非閉塞区間との間を変位させてもよい。
・上記各実施形態において、制御部82を設けない構成とし、第1,第2の開閉弁69,72、大気開放弁91、及びメンテナンスポンプ61,84の駆動制御を、ユーザーが手動で行うようにしてもよい。
・上記各実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
次に、上記各実施形態から把握できる技術的思想について以下に追記する。
前記開閉弁と前記ポンプとを制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜請求項8に記載の液体噴射装置。
この構成によれば、制御手段の制御に応じて開閉弁が開閉されると共に、ポンプが吸引駆動及び吐出駆動される。そのため、液体への気体の溶け込みを抑制した状態でポンプを容易に停止させることができる。