従来、特許文献1〜4記載の車両用シートスライド装置が知られている。特許文献1,2記載の車両用シートスライド装置は、車両のフロアに固定されるロアレールと、車両のシートに固定され、ロアレールに対し移動可能に支持されるアッパレールと、ロアレールとアッパレールとの相対移動をロックするロック機構とを備えている。ロアレールには、ロアレールの長手方向にアッパレールの移動範囲内で並設された複数のロック孔が形成され、アッパレールには、ロアレールに形成されたロック孔と同一ピッチでロック機構のロック部材のロック爪の数分並設された複数のロック孔が形成されている。
ロック機構は、アッパレールのロック孔近傍に設けられ、アッパレールのレール軸線回りに回動されるロック部材と、レール軸線方向にロック部材を支持する一対のブラケットと、ロック部材をロック方向に付勢するバネ(コイルバネ)と、ロック部材とブラケットとコイルバネとを連結するシャフトとを有している。ロック部材は、アッパレール及びロアレールのロック孔に係脱可能なロック爪と、ロックを解除する際に操作する操作レバーが係合される連動部と、ロック爪及び連動部が突設されている本体部とを有する。ロック部材の本体部は、側面視コの字の板状体であり、コの字の対向面にはシャフトを挿通するシャフト孔が穿孔されている。ブラケットは、側面視L字の板状体であり、一端部側にシャフトを挿通するシャフト孔が穿孔され、他端部側にアッパレールに取付けるための取付ピンを挿通するピン孔が穿孔されている。
このロック機構を組立ててアッパレールに組付ける場合、先ず、ロック部材の一対のシャフト孔間にコイルバネを配置し、ロック部材の両外側に一対のブラケットを配置し、ブラケットの一対のシャフト孔とロック部材の一対のシャフト孔とコイルバネの内周とを貫通するようにシャフトを挿入してロック機構として組立てる。そして、そのロック機構の一対のブラケットのピン孔をアッパレールに穿孔されている一対のピン孔と合わせ、両ピン孔を貫通するように取付ピンを挿入してかしめる。以上によりロック機構のアッパレールへの組付けが完了する。
特許文献3記載の車両用シートスライド装置も、特許文献1,2記載の車両用シートスライド装置と同様のロアレールと、アッパレールと、ロック機構とを備えているが、ロック部材とブラケットとは、シャフトにより回動自在に連結されておらず、ロック部材とブラケットとに夫々設けられた軸孔と回転軸とにより回動自在に連結されている。すなわち、ロック部材の本体部のコの字の対向面には軸孔が穿設され、一対のブラケットの一端部側にはロック部材の本体部の軸孔に嵌挿される回転軸が突設されている。
このロック機構を組立ててアッパレールに組付ける場合、先ず、ロック部材の一対の軸孔に外側から一対のブラケットの回転軸を嵌挿し、一対のブラケットの他端部同士を接合してロック機構として組立てる。一方、アッパレールのロック孔近傍にロック部材をロック方向に付勢するバネ(板バネ)を取付ける。そして、ロック部材が接合された一対のブラケットのピン孔をアッパレールに穿孔されている一対のピン孔と合わせ、両ピン孔を貫通するように取付ピンを挿入してかしめる。以上によりロック機構のアッパレールへの組付けが完了する。
特許文献4記載の車両用シートスライド装置も、特許文献3記載の車両用シートスライド装置と同様のロアレールと、アッパレールと、ロック機構とを備えているが、ブラケットは備えておらず、ロック部材は一対の支軸により回動自在に支承されている。すなわち、支軸は、円筒部材からなり、一端部には先端に向かって小径となるテーパ面が形成されている。アッパレールのロック孔近傍には、レール軸線方向に延在して形成され、ロック部材が配置される開口部が穿設されている。この開口部の両端には、支軸を支持する折り返し部が切欠き穴の両端部分を内側に折り返すことにより凹設されている。そして、この折り返し部のレール軸線方向の面には、支軸のテーパ面と係合する係合孔が穿設されている。
この例ではロック機構として一旦組立てる必要はなく、各構成部材をアッパレールに直接組付けることでロック機構として構成することができる。先ず、一対の支軸のテーパ面を開口部の両端の折り返し部の係合孔と係合させ、ロック部材を開口部に配置し、ロック部材の両端部を一対の支軸に溶接により接合する。そして、アッパレールのロック孔近傍にロック部材をロック方向に付勢するバネ(板バネ)を取付ける。以上によりロック機構の各構成部材のアッパレールへの組付けが完了する。
しかし、上記特許文献1,2記載のロック機構の構成部材の部品点数は、ロック部材、一対のブラケット、コイルバネ、シャフト、一対の取付ピンの計7点、また、上記特許文献3記載のロック機構の構成部材の部品点数は、ロック部材、一対のブラケット、板バネ、一対の取付ピンの計6点と何れも多く、重量増大やコスト高を招いている。一方、上記特許文献4記載のロック機構の構成部材の部品点数は、ロック部材、一対の支軸、板バネの計4点と少ないため、重量やコストを低く抑えることができる。しかし、アッパレールには、支軸を支持する折り返し部を凹設し、さらに支軸のテーパ面と係合する係合孔を穿設しなければならない。このように折り返し部及び係合孔を設けるための加工が余分に必要になってくるため、加工工数が増大して大幅なコスト高を招いている。
また、上記特許文献1,2記載のロック機構を組立ててアッパレールに組付ける場合、ロック部材にコイルバネを配置する工程、ロック部材にブラケットを配置する工程、ロック部材等にシャフトを組付ける工程、ロック機構をアッパレールに組付ける工程の計4工程となる。また、上記特許文献3記載のロック機構を組立ててアッパレールに組付ける場合、ロック部材とブラケットとの組付け工程、一対のブラケットの接合工程、板バネをアッパレールに取付ける工程、ロック機構をアッパレールに組付ける工程の計4工程となる。また、上記特許文献4記載のロック機構をアッパレールに組付ける場合、支軸をアッパレールに取付ける工程、ロック部材をアッパレールに配置する工程、ロック部材を支軸に取付ける工程、板バネをアッパレールに取付ける工程の計4工程となる。特に、上記特許文献1〜3記載の各ロック機構においてはロック部材がスムーズに回動可能なように多数の構成部材に対し高精度に位置決め保持して組付けを行う必要があるため、煩雑な作業が連続して非常に手間が掛かっている。このように各ロック機構とも組付工数が多く、大幅なコスト高を招いている。
本発明は係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、第1レールと第2レールとの相対移動をロックする機構の構成部材の部品点数が少数で、かつ構成部材の構造が簡易な車両用スライド装置を提供するものである。
上記の課題を解決するために、請求項1に係る車両用スライド装置の特徴は、第1レールと、該第1レールに対してレール軸線方向に相対的に移動可能に支持される第2レールと、前記第1レール及び前記第2レールの一方のレールに前記レール軸線方向に延在して形成された開口部に配置され、前記レール軸線方向に延在する回転軸線回りに回動可能に前記一方のレールに支承され、前記第1レール及び前記第2レールに形成されたロック部と係合して前記第1レールと前記第2レールとの相対移動をロックするロック部材と、前記開口部内に前記回転軸線上に配置され、前記一方のレールの前記開口部の前記レール軸線方向両側縁部分が変形されることにより前記一方のレールに支持され、前記ロック部材の両側縁部と係合して前記ロック部材を回動可能に支承する球状の支承部材と、を備えることである。
請求項2に係る車両用スライド装置の特徴は、請求項1において、前記一方のレールは、水平に延びる水平壁部とその水平壁部の側端縁から垂直に延びる垂直壁部とを有するとともに、前記水平壁部と前記垂直壁部との角部における前記開口部の前記レール軸線方向両側縁部からレール軸線方向外側に所定距離隔てた位置に、前記レール軸線方向と直交する方向に延在する切込み部を有し、且つ前記角部における前記切込み部と前記開口部との間の部位に前記支承部材を支持する支持部を有することである。
請求項3に係る車両用スライド装置の特徴は、請求項1又は2において、前記一方のレールは、水平に延びる水平壁部とその水平壁部の側端縁から垂直に延びる垂直壁部とを有するとともに、前記水平壁部と前記垂直壁部との角部における少なくとも前記開口部の前記レール軸線方向両側縁部に、前記レール軸線方向と直交する方向での断面形状が前記支承部材よりも小径で半円周よりも大きな円弧形状をなして前記支承部材を支持する支持部を有することである。
請求項4に係る車両用スライド装置の特徴は、請求項3において、前記支承部材は、前記支持部における円弧形状部位の曲率半径が縮径するように変形されることにより前記支持部に支持されることである。
請求項5に係る車両用スライド装置の特徴は、請求項2又は3において、前記支承部材は、前記支持部を前記開口部側に傾倒するように変形されることにより前記支持部に支持されることである。
請求項6に係る車両用スライド装置の特徴は、請求項1乃至5の何れかにおいて、前記第1レールは、車両のフロアに固定されるロアレールであり、前記第2レールは、前記車両のシートに固定されるアッパレールであり、前記ロック部材は、前記アッパレールに設けられた前記開口部に配置されることである。
請求項1に係る車両用スライド装置によれば、第1レールと第2レールとの相対移動をロックするロック機構の構成部材を、ロック部材及び支承部材で構成している。よって、本発明のロック機構の構成部材の部品点数は従来のロック機構の構成部材の部品点数よりも減少しており、重量やコストを大幅に低減することができる。さらに、レールに形成した開口部のレール軸線方向両側縁部分を変形させることにより、支承部材をロック部材と共にレールに組付けている。よって、レールにおける各構成部材の組付部分は簡易な構造になると共に、少数の構成部材を高精度に位置決め保持して組付けを行う作業は非常に簡易になり、加工工数及び組付工数を大幅に低減してコストを低く抑えることができる。
請求項2に係る車両用スライド装置によれば、一方のレールの水平壁部と垂直壁部との角部における切込み部と開口部との間の部位に支承部材を支持する支持部を有しているので、切込み部が有るときの支持部を変形させる際に加える荷重は、切込み部が無いときの支持部を変形させる際に加える荷重よりも小さくなり、切込み部が有るときの支持部の変形作業の方が容易となる。
請求項3に係る車両用スライド装置によれば、支承部材を支承する支持部の断面形状が、支承部材の直径よりも小さい内径で半円周よりも大きい円弧の形状に形成されているので、支承部材を支持したときに支承部材の中心を回動軸線と一致させて位置決めすることができ、支承部材を確実に支持することができると共に、支承部材により支持されたロック部材をスムーズに回動させることができる。
請求項4に係る車両用スライド装置によれば、支持部における円弧形状部位の曲率半径を縮径することにより支承部材をロック部材側に近付けてガタを無くすことができる。また、支持部の変形は縮径作業のみでよいので支承部材を簡易かつ確実に支持することができる。
請求項5に係る車両用スライド装置によれば、支持部を開口部側に傾倒させることにより支承部材をロック部材側に近付けてガタを無くすことができる。また、支持部の変形は傾倒作業のみでよいので、支承部材を簡易かつ確実に支持することができる。
請求項6に係る車両用スライド装置によれば、軽量かつ低コストで組立が容易な車両用シートスライド装置を実現することができる。
本発明に係る車両用スライド装置の実施の形態を図面に基づいて以下に説明する。尚以下の説明における「前後方向」は車両の前後方向を基準とする。図1,2に示されるように、本実施形態の車両用スライド装置は、シート10を車両に対して前後方向に移動させるシートスライド装置1であり、概略左右対称形状に作製され、シート10のシートクッション11の両側下部に取付けられる。各シートスライド装置1は、車両のフロア20上に固定されるロアレール30(本発明の「第1レール」又は「第2レール」に相当する)と、シート10側に固定されロアレール30に対してレール軸方向に相対的に移動可能に支持されるアッパレール40(本発明の「第2レール」又は「第1レール」に相当する)とを有している。
さらに、詳細は後述するが、左右のシートスライド装置1のアッパレール40には、ロアレール30とアッパレール40との相対移動をロックするロック部材51、一対の支承部材52及びロックバネ53を有するロック機構50が配置されている。このロック機構50によるロックは、シート10とフロア20の間から前方に突出した1つの操作レバー60で解除可能となっている。尚以下では、特に記さない限り、一方側のみのシートスライド装置1でその構造及び作動の説明をする。
図3,5に示されるように、ロアレール30は、車両のフロア20に対し水平な基底部31と、基底部31の両端から湾曲して上方に伸びる外側の第1側部32a及び内側の第1側部32bと、両第1側部32a,32bの上端から一旦内方に湾曲して再び上方に伸びる外側の第2側部33a及び内側の第2側部33bと、両第2側部33a,33bの上端から内方向に折り返して下方に伸びる外側の第3側部34a及び内側の第3側部34bとを有している。
図3,4に示されるように、ロアレール30の第3側部34a,34bには、後述するロック部材51のロック爪54aが係合する複数のロック孔35(本発明の「ロック部」に相当する)が形成されている。このロック孔35は、レール軸線方向に一定ピッチでアッパレール40の前後の最大移動範囲に相当する長さで設けられている。
図3,5に示されるように、アッパレール40は、車両のフロア20に対し下方に伸びる外側の垂下部41a及び該垂下部41aよりも長さが短い内側の第1垂下部41bと、第1垂下部41bの下端から水平内方に伸びる基板部42b(本発明の「水平壁部」に相当する)と、基板部42bの内方向の一端から略4分の3円周の円弧状に突出する円筒部42c(本発明の「角部」に相当する)と、円筒部42cの一端から下方に伸びる第2垂下部43b(本発明の「垂直壁部」に相当する)と、垂下部41a及び第2垂下部43bの下端から斜め上外方に伸びる外側の傾斜部44a及び内側の傾斜部44bと、両傾斜部44a,44bの外方向の一端から一旦内方に湾曲して上方に伸びる外側の起立部45a及び内側の起立部45bとを有している。
図3,4に示されるように、アッパレール40の長手方向中央部には、ロック部材51及び支承部材52が配置される開口部46が形成されている。開口部46は、円筒部42c並びに該円筒部42cから基板部42bの一部及び第2垂下部43bの一部にかけて、レール軸線方向に延在するように形成されている。詳細は後述するが、支承部材52は開口部46のレール軸線方向両側縁部分(支持部)48に支持され、ロック部材51は支承部材52によりレール軸線方向に延在する回動軸線L回りに回動自在に支承される。
本例では、開口部46のレール軸線方向両側縁部からレール軸線方向外側に例えば数mmの所定距離隔てた位置に、レール軸線方向と直行する方向に延在する切込み部47が形成されている。この切込み部47は、開口部46のレール軸線方向と直行する方向の幅と略同一の長さで形成されている。これにより、開口部46が形成されるレール部分は切込み部47よりも外側のレール部分と切込み部47よりも内側のレール部分とに分離されるので、該内側のレール部分のみが支承部材52が支持される支持部48となる。
また、開口部46両側の基板部42bには、ロック部材50をロック方向に付勢するロックバネ53が固定及び係止される固定爪42ba及び係止爪42bbが切り起こし形成されている。さらに、開口部46近傍の第2垂下部43b及び起立部45bには、後述するロック部材50のロック爪54aが係合する複数のロック孔49(本発明の「ロック部」に相当する)が形成されている。このロック孔49は、レール軸線方向にロアレール30のロック孔35と同一ピッチでロック部材50のロック爪54aの数分設けられている。
図5に示されるように、ロアレール30及びアッパレール40は、ロアレール30の第1側部32a,32b及び第2側部33a,33bと第3側部34a、34bとの間に、アッパレール40の起立部45a、45bが前方から挿入され、さらにロアレール30の第1側部32a,32bの上下端に形成される各湾曲部の内側と、アッパレール40の傾斜部44a,44bの外側及び起立部45a,45bの下端に形成される湾曲部の外側とで挟むようにボールベアリング2が取付けられている。
この構造によって、アッパレール40が受ける上方からの荷重は、ボールベアリング2を介してロアレール30によって受けられている。このため、アッパレール40はロアレール30に対してボールベアリング2のボール2aの転がりで支持され、滑らかな前後移動が得られる構成となっている。そして、アッパレール40の傾斜部44a,44b及び起立部45a,45bの下端に形成される湾曲部を両外側に位置する対のボールベアリング2で左右から挟み、且つ傾斜部44a,44b及び起立部45a,45bの下端に形成される湾曲部を各ボールベアリング2のホルダ2bに支持されているボール2aで上下から挟むようにして、アッパレール40をロアレール30に対して上下、左右ともにガタが無いように支持している。
図2,3に示されるように、ロック機構50は、アッパレール40の開口部46に配置されるロック部材51と、開口部46にてロック部材51を回動軸線L回りに回動可能に支承する一対の球状の支承部材52と、ロック部材51をロック方向に付勢するロックバネ53とを有している。ロック部材51は、アッパレール40及びロアレール30のロック孔49,35に係脱可能なロック爪部54と、ロックを解除する際に操作する操作レバー60が係合される連動部55と、ロック爪部54及び連動部55が突出して形成されている本体部56とを有する。このロック部材51は、板材を折り曲げ加工することにより製作される。
本体部56は、水平に延在する板状の基部56bと、基部56bのレール軸線方向面端で上方に突出する被支承部56cとを備えている。両被支承部56cには、支承部材52と摺接する孔56aが穿設されている。この孔56aは、支承部材52の直径よりも小さい直径で形成されており、球状の支承部材52の一部が嵌り込むようになっている。ロック爪部54は、本体部56の後縁下方に形成され、下端水平部にはロック爪54aが形成されている。このロック爪54aは、アッパレール40のロック孔49と同一ピッチで同一数形成されている。連動部55は、本体部56の前縁に形成されている。この連動部55は、先端上面に操作レバー60の後端が係合され、中央下面にロックバネ53の一端が係止される。
支承部材52は、剛球からなり、支持部48における円筒部42cの内周(以下、単に「支持部48の内周」という)とロック部材51の孔56aとの間に配置される。支持部48における円筒部42cの断面形状は、支承部材52の直径よりも小さい内径で半円周よりも大きい円弧の形状に形成されている。そして、詳細は後述するが、支承部材52は、支持部48の円筒部42cが変形されることによりアッパレール40に支持され、ロック部材51の孔56aと係合してロック部材51を回動軸線L回りで回動可能に支承する。
ロックバネ53は、バネ鋼の線材でなり、コの字状の固定部53aと係止部53bとがL字状のばね部53cによってレール軸線方向と平行直線回りにねじれた状態で連結された形状に形成されている。ロックバネ53は係止部53bがロック部材51の連動部55の逆L字の角部に係止され、固定部53aがアッパレール40の固定爪42baに固定され、L字状のばね部53cの角部が係止爪42bbに係止されている。これにより、このロックバネ53は、ロック部材51のロック爪54aがアッパレール40及びロアレール30のロック孔49,35に係入される方向にロック部材51を付勢する。
以上のような構成の車両用スライド装置のロック機構50をアッパレール40に組み付ける第1及び第2の組付方法について図を参照して説明する。第1の組付方法は、先ず、図6に示されるように、一対の支承部材52を支持部48の内周に嵌め込む。そして、ロック部材51のロック爪54aがアッパレール40の内部からロック孔49を向くようにして、ロック部材51のロック爪54a側を開口部46からアッパレール40の内部に挿入し、ロック部材51の孔56aが支承部材52と向き合うように位置決めする。
ここで、図6(B)に示されるように、支持部48の内周に嵌め込まれた支承部材52間の距離をα1、ロック部材51の一対の孔56a間の距離(本体部56の被支承部56cの幅)をβ1とすると、距離α1が距離β1よりも僅かに大きくなるように開口部46、ロック部材51及び支承部材52を形成している。よって、ロック部材51を支持部48の内周に嵌め込まれている支承部材52間にスムーズに配置することができ、ロック部材51の孔56aと支承部材52との位置決めを容易に行うことができる。
次に、図7に示されるように、支持部48における円筒部42cを絞ることにより変形させる。すなわち、図7(B)〜(D)に示されるように、円筒部42cの直径φd1をφd2(<φd1)となるように縮径する。本例では開口部46が形成されるレール部分は切込み部47よりも外側のレール部分と切込み部47よりも内側のレール部分とに分離されるので、該内側のレール部分のみが支承部材52を支持する支持部48となる。よって、切込み部47が有るときの支持部48を変形させる際に加える荷重は、切込み部47が無いときのレール軸方向両側縁部分を変形させる際に加える荷重よりも小さくなり、切込み部47が有るときの支持部48の変形作業の方が容易となる。これにより、一対の支承部材52は回動軸線L上を開口部46の内側に向かって押動されるので、支承部材52とロック部材51の孔56aと支持部48の内周との間に生じていたガタを詰めることができる。また、支持部48の変形は縮径作業のみでよいので支承部材52を簡易かつ確実に支持することができる。
最後に、ロックバネ53の係止部53bをロック部材51の連動部55の逆L字の角部に係止し、固定部53aをアッパレール40の固定爪42baに固定し、L字状のばね部53cの角部を係止爪42bbに係止する。以上により、ロック部材51を開口部46において一対の支承部材52間に回動自在に支承することができる。また、支持部48における円筒部42cの断面形状が、支承部材52の直径よりも小さい内径で半円周よりも大きい円弧の形状に形成されているので、支承部材52を支承したときに支承部材52の中心を回動軸線Lと一致させて位置決めすることができ、支承部材52を確実に支持することができると共に、支承部材52により支承されたロック部材51をスムーズに回動させることができる。
第2の組付方法は、先ず、図8に示されるように、一対の支承部材52をロック部材51の孔56aに嵌め込む。そして、ロック部材51のロック爪54aがアッパレール40の内部からロック孔49を向くようにして、ロック部材51のロック爪54a側を開口部46からアッパレール40の内部に挿入し、ロック部材51の孔56aに嵌め込まれた支承部材52が支持部48の内周と向き合うように位置決めする。
ここで、図8(B)に示されるように、支持部48の内周間の距離をα2、ロック部材51の一対の孔56aに一対の支承部材52を嵌め込んだときの支承部材52間の距離をβ2とすると、距離α2が距離β2よりも僅かに大きくなるように開口部46、ロック部材51及び支承部材52を形成している。よって、支承部材52が嵌め込まれたロック部材51を支持部48の内周間にスムーズに配置することができ、支承部材52と支持部48の内周との位置決めを容易に行うことができる。
次に、図9に示されるように、支持部48を開口部46側に傾倒するように変形させる。すなわち、切込み部47がV字状に拡がるように支持部48の根元を中心に支持部48を開口部46側に傾倒させる。これにより、図9(B)に示されるように、支持部48の内周は一対の支承部材52に向かって移動するので、支承部材52とロック部材51の孔56aと支持部48における円筒部42cの内周との間に生じていたガタを詰めることができる。また、支持部48の変形は傾倒作業のみでよいので、支承部材52を簡易かつ確実に支持することができる。
最後に、ロックバネ53の係止部53bをロック部材51の連動部55の逆L字の角部に係止し、固定部53aをアッパレール40の固定爪42baに固定し、L字状のばね部53cの角部を係止爪42bbに係止する。以上により、ロック部材51を開口部46において一対の支承部材52間に回動自在に支承することができる。また、支持部48における円筒部42cの断面形状が、支承部材52の直径よりも小さい内径で半円周よりも大きい円弧の形状に形成されているので、支承部材52を支承したときに支承部材52の中心を回動軸線Lと一致させて位置決めすることができ、支承部材52を確実に支持することができると共に、支承部材52により支承されたロック部材51をスムーズに回動させることができる。
以上のように本実施形態の車両用シートスライド装置によれば、ロック機構50の構成部材の部品点数は、ロック部材51、一対の支承部材52及びバネ53の計4点であり、従来のロック機構(特許文献1〜3記載)の構成部材の部品点数よりも減少しており、重量やコストを大幅に低減することができる。さらに、ロック部材51及び支承部材52のアッパレール40への組付けは、支持部48を変形させるのみであるため支持部48は簡易な構造になると共に、少数の構成部材51〜53を高精度に位置決め保持して組付けを行う作業は非常に簡易になり、加工工数及び組付工数を大幅に低減してコストを低く抑えることができる。
なお、上述の実施形態では、切込み部47を形成して支持部48における円弧形状部位の曲率半径を縮径して変形させるようにしたが、切込み部47を形成しなくても支持部48における円弧形状部位の曲率半径を縮径して変形させることは可能である。また、円筒部42cはアッパレール40の全長に亘って形成したが、支持部48のみを円筒部42cに形成してもよい。また、シートスライド装置1を例に説明したが、可動体を位置調整して固定する車両用のスライド装置であれば本発明を適用可能である。