JP5446140B2 - 回転電機の回転子 - Google Patents

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Description

本発明は、複数に分かれている、異なる極対数の複数の回転子を一体に統合し、1つのモータの体格に構成した回転電機の回転子に関する。
従来、この種の技術としては、例えば以下に示す文献に記載されたものが知られている(特許文献1、2参照)。文献1には、それぞれの組が異なる磁極数で構成される複数の磁石の組に相当する複数の磁石磁束を例えば固定子側であるエアーギャップ側の表面に合算して発生される磁束発生部材を持つ回転子を備え、磁束発生部材を構成する複数の磁石の各組に、別個に作用する電流を含む複合電流を供給し、複合電流・2軸出力方式モータによる電流損失および小型化のメリットを享受しつつ、1軸のみの出力を可能にした同期電動機の技術が記載されている。
また、文献2には、それぞれの組が異なる磁極数で構成される複数の磁石の組に相当する複数の磁石磁束を合算して発生される磁束発生部材であって、複数の磁石の組に相当する磁石磁束の各々の間で、磁石の一部を相殺するように発生させ、磁束が相殺される箇所は、磁束が相殺されない箇所に比べて磁束量を少なくするように、複数の磁石の組を構成する磁石を配置するか、もしくは配置しないような磁束発生部材を持つ回転子を備えた同期電動機の回転子の技術が記載されている。
特開2007−339006 特開2007−174885
上記従来の技術では、同期電動機の回転子において、2つのモータの永久磁石をお互いに重ね合わせて配置しているが、永久磁石を重ねる合わせる際の配置は、重ね合わせる前の永久磁石の配置により一義的に決まっていた。
このため、電動機のトルクを向上させるという観点からは必ずしも好適とは言えず、磁石配置の最適化が要望されていた。
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、構成の小型化ならびにトルクの増大を両立させた回転電機の回転子を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の課題を解決する手段は、回転子に備えられた永久磁石磁束発生部材の幅は磁束の基本波1極あたりの長さよりも小さく、かつN極ならびにS極の前記永久磁石磁束発生部の中心は磁束の基本波1極あたりの長さの中心に対して互いに異なる方向にずれ、ずれのずれ量は、その最小が磁束の基本波1極あたりの長さ(Hm)の1/2に対して10%とし、その最大は、ずれ量0%の場合の永久磁石磁束発生部材あたりのトルクを1としたときトルク比1を超えた範囲にあることを特徴とする。
本発明によれば、トルクを向上させることができることに加えて、構成の小型化を図ることができる。
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の実施例を説明する。
図1は本発明の実施例1に係る回転電機の構成を示す断面図である。図1に示す実施例1の回転電機は、円筒状のステータ(固定子)11の内側に所定の隙間(エアーギャップ)12を介してロータ(回転子)13が同軸に回転可能に配置され、同期型電動機を構成している。
ステータ11は、18個の分割されたコア14から構成され、18個の分割されたコア14には、それぞれ巻線(コイル)15が集中的に巻かれている。この巻線15は、6個おきに配置されている3個が1セット(トータル6セット)となっており、直列あるいは並列に接続され、その一方が中性点として他の相の一方と接続され、他方は図示しないインバータの内部で、電源ラインのP側・N側にスイッチング素子を介して接続されている。このインバータは6相を制御する構成となっている。
なお、このステータ11は、分割されたコア14で記述されているが、分割されないコアでも同様の動作ができること、或いはスロットレス型モータでも本発明を適用することが可能である。また、巻線15は集中巻に限らず分布巻でも適用可能である。
ロータ13は、内側から順に電動機の負荷と連結されるシャフト16、ロータコア17ならびに永久磁石18が配置されている。永久磁石18(18N,18S)は、コアまたは空気19を介してN極の3つの永久磁石18NとS極の3つの永久磁石18Sがロータ13の最外殻の表層部の円周に沿ってロータ13内に配置されている。これらの永久磁石18は3極対(6極)と6極対(12極)の2種類の極対数を備える2組の磁石として機能する。
ここで、3極対、6極対の極対数とはロータ13が一周(0deg〜360deg)する間にロータ13の表面に現れる磁束のことである。この場合の2組の磁石は、概念的なものであり、部材が明確に分離されているものではなく、固定子の巻線に供給される複合電流を構成する1つの電流に対して、3極対の磁石のセットとして振る舞う磁石の組が1つあり、複合電流を構成するもう1つの電流に対して、6極対の磁石のセットとして振る舞う磁石の組が1つあることを意味するものであり、各永久磁石18が同時に双方の組の磁石として機能するものである。
図1において、磁束の基本波1極当たりの長さをHmで示し、永久磁石18または磁石磁束発生部の幅をLmで表し、軸方向の長さをZmで示している。図1に示すように、Hmの中心線とLmの中心線は異なっており、永久磁石18は等間隔には配置されていない。
通常使用されている永久磁石を用いたモータにおいては、磁極の中心と、磁石幅または磁石磁束発生部幅の中心が同一であり、可能な限り高調波磁束を発生させない構成となっている。一方、磁極の中心と、磁石幅または図2に対して次式(1)で定義される磁石磁束発生部の中心を意図的にずらし、かつN極とS極とは互いに異なる方向にずれており、ステータ11のコイル15に通電する電流を基本波電流に2次高調波電流を重畳した複合電流で構成することで、2次高調波の磁束を含有させることが可能となり、トルクを向上することが可能となる。図2(b)に示す磁束密度分布では、発生する磁束は基本波と二次高調波となる。
Figure 0005446140
ここで、xはロータ13の表面に沿った回転方向座標を表し、Bm(x)は位置xでの磁束密度を表している。
磁束の基本波1極当たりの長さの中心に対する磁石磁束発生部の中心のずれに対するトルクの計算例を図3に示す。図3において、同図(b)に示すように、Hmの一端からHmの中心までの距離をKとし、Hmの一端から磁石磁束発生部の中心までの距離をKmとし、LmはHmの40%程度とすると、ずれ量(K−Km)/K[%]は、同図(a)に示すようになる。図3(a)において、それぞれの中心が一致している場合のトルクを1とすると、トルクはずれ量がほぼ30%程度で最大となる。これは永久磁石をずらしたことで2次高調波磁束を大きくすることができるためである。
図4はHmに対するLmを10%〜50%、70%、80%とそれぞれ固定したときのずれ量とトルクの関係を示している。Lmが小さくなるとトルク値そのものは小さくなるが、トルク比極大値も大きくなる。一般にLmはおよそ40%程度以上とする場合が多いので、ずれ量を最低10%以上確保すれば、ずれていない一般的なモータに対してトルクを向上することができる。
すなわち、永久磁石の中心MmとHm/2の差をδとし、次式(2)で表されるずれ量の最小値を10%程度とする一方、最大値はずれ量0%時の磁石当たりのトルクを1としたときトルク比1を超え範囲で設定する。
(数2)
δ/(Hm/2) …(2)
図5は磁石幅または磁石磁束発生部の幅比(Lm/Hm)[%]をパラメータとした場合の最適なずれ量の関係を示す。図5の曲線上に沿って永久磁石をずらして配置することで最大のトルクを発生させることができる。
このように、上記実施例1にあっては、磁束の基本波に対する磁極中心と磁石磁束発生部の中心を一致させない(不一致とする)ようにしたことで、磁束密度分布において磁束の基本波とその他の高調波が発生し、ステータのコイルに通電する電流を基本波と高調波の複合電流とすることでトルクを発生させることができ、従来に比べて単位磁石量あたりのトルクが増加して磁石量を低減することが可能となる。
また、上記実施例1において、ロータ13に配設される永久磁石18を、同一極を形成するも異なる特性を有する磁石で構成することで、例えば高い磁束密度が要求される場所では残留磁束密度の高い磁石を用いる一方、耐熱性が優先して要求される場所では保持力の高い磁石を用いることで、通常BH積が高く、かつ耐熱性の高い磁石を用いる電動車両用モータにおいては、そのコストを低減することができる。
高い磁束密度が要求される部位では残留磁束密度の高い磁石を使用する代わりに、比較的残留磁束密度が低くてもその表面積を増やすように永久磁石をV字形に配置することで、容易に磁束密度を増大させることができる。
磁極の中心と磁石磁束幅の中心とのずれ量の最小値を10%程度とし、最大値がずれ量0%時の磁石当たりのトルクを1としたときトルク比1を超えない範囲とすることで、永久磁石を用いた従来の同期電動機に比べてトルクを向上させることが可能となる。
磁極の中心と磁石磁束幅の中心とのずれ量と磁石磁束発生部の幅比との最適な関係を、予め実験やシミュレーション等により算出し、算出した特性に基づいて磁石量または磁石磁束発生部幅に対するずれ量を設定することで、最適なずれ量を設定することが可能となり、最適なずれ量が設定されることで最大のトルクを得ることができる。
図6は本発明の実施例2に係る回転電機の構成を示す断面図である。図6に示す実施例2の回転電機の特徴とするところは、先の図1に示す実施例1の構成に比べて、実施例1で採用した永久磁石18に代えて、長方形状の永久磁石20(20N、20S)における一方の面をロータ13の最外周からエアーギャップ12側に露出させてロータ13に配置したことにあり、他は先の実施例1と同様である。
このような配置構成を採用することで、製造を容易化することが可能となる。
図7は本発明の実施例3に係る回転電機の構成を示す断面図である。図7に示す実施例3の回転電機の特徴とするところは、先の図6に示す実施例2の構成に比べて、長方形状の永久磁石20(20N,20S)をロータ13のコア内部に埋め込んで配置することで永久磁石20をロータコアを構成する磁性材料で覆い、かつ各永久磁石20の両側にフラックスバリア21を設けたことにあり、他は先の実施例2と同様である。
このような配置構成を採用することで、回転強度を向上させることができる。さらに、永久磁石20の間がロータ13のコア部となっているので、ステータ11の巻線15に基本波電流ならびに2次高調波電流を流すことで、永久磁石20間を占めているロータ13のコア部でリアクタンストルクを得ることが可能となり、永久磁石20によるトルクと合わせることでトルクを増大させることができる。
図8は本発明の実施例4に係る回転電機の構成を示す断面図である。図8に示す実施例4の回転電機の特徴とするところは、先の図7に示す実施例3の構成に比べて、各磁極を構成する長方形状の永久磁石20(20N,20S)をV字形状にロータ13のコア内部に埋め込んで配置し、かつ各永久磁石20の両側にフラックスバリア21を設けたことにあり、他は先の実施例3と同様である。
このような配置構成を採用することで、先の実施例3で得られる効果に加えて、先の図7の構成に比べて磁石の表面積を広くとれることで磁石磁束を大きくすることが可能となり、これによりトルクを増大させることができる。
図9は本発明の実施例4に係る回転電機の構成を示す断面図である。図9に示す実施例5の回転電機の特徴とするところは、各磁極がV字形状に配置された永久磁石が先の実施例1と同様の方式で8極対(16極)と16極対(32極)の2種類の極対数を備える2組の磁石として機能し、ロータ13の1極対(N極とS極)当たりのステータ11のティースを3とし(1極当たりのティースは1.5)、1極対に対応する3つのティースをU相ティース22U、V相ティース22V、W相ティース22Wとし、各相の巻線15をU相巻線15U、V相巻線15V、W相巻線15Wとして全体で8相駆動方式を採用したことにある。
このような構成を採用することで、先の実施例1〜4に比べてトルクを向上させることができることに加えて、3相のインバータで駆動制御することが可能となる。
本発明の実施例1に係る回転電機の構成を示す断面図である。 磁束密度の中心と磁極の中心との関係を示す図である。 ずれ量とトルクとの関係を示す図である。 永久磁石磁束発生部の幅比とトルクとの関係を示す図である。 永久磁石磁束発生部の幅比と最適なずれ量との関係を示す図である。 本発明の実施例2に係る回転電機の構成を示す断面図である。 本発明の実施例3に係る回転電機の構成を示す断面図である。 本発明の実施例4に係る回転電機の構成を示す断面図である。 本発明の実施例5に係る回転電機の構成を示す断面図である。
符号の説明
11…ステータ
12…エアーギャップ
13…ロータ
14…コア
15…巻線
15U…U相巻線
15V…V相巻線
15W…W相巻線
16…シャフト
17…ロータコア
18,18N,18S,20…永久磁石
19…コアまたは空気
21…フラックスバリア
22U…U相ティース
22V…V相ティース
22W…W相ティース

Claims (8)

  1. 異なる複数の磁極数に相当する磁石磁束を合算して発生させる永久磁石磁束発生部材を有し、前記永久磁石磁束発生部材の幅(Lm)は磁束の基本波1極あたりの長さ(Hm)よりも小さく、かつN極ならびにS極の前記永久磁石磁束発生部材の中心は磁束の基本波1極あたりの長さ(Hm)の中心に対してずれ、N極側とS極側とは互いに異なる方向にずれ
    前記ずれのずれ量は、その最小が磁束の基本波1極あたりの長さ(Hm)の1/2に対して10%とし、その最大は、ずれ量0%の場合の前記永久磁石磁束発生部材あたりのトルクを1としたときトルク比1を超えた範囲にある
    ことを特徴とする回転電機の回転子。
  2. 前記永久磁石磁束発生部材は、同一極を形成するも、異なる磁力特性を有している
    ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機の回転子。
  3. 前記永久磁石磁束発生部材は、局部的に磁束密度が高い
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の回転電機の回転子。
  4. 記ずれ量は、前記永久磁石磁束発生部材の幅に対して所定の特性を有してい
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転電機の回転子。
  5. 前記永久磁石磁束発生部材は、長方形状に形成され、その一部表面が前記回転子と固定子との間に介在する空間に露出されて回転子に配置されている
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転電機の回転子。
  6. 前記永久磁石磁束発生部材は、長方形状に形成され、前記回転子に埋め込まれ、かつ前記永久磁石磁束発生部材が磁性材料で覆われている
    ことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の回転電機の回転子。
  7. 前記永久磁石磁束発生部材は、長方形状に形成され、前記回転子にV字形状に埋め込まれて配置されている
    ことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の回転電機の回転子。
  8. 磁束の基本波1極あたりの固定子のティース数を1.5とした
    ことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の回転電機の回転子。
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