JP5444765B2 - 車両用シート - Google Patents
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Description
そして乗員のムチ打ちは、車両衝突時において乗員胸部に加速の力が加わり、頭部が前後動すること(シート後方への頸部過伸展、反動によるシート前側への頸部過屈曲)で発生することが知られている。
このため乗員のムチ打ちを防止するには、車両衝突時における乗員胸部の加速度上昇を抑制することが重要であると考えられている。
しかしパッド部材の撓みには限界があることから、撓みきったパッド部材がフレーム部材に当接して(いわゆる底付きして)、乗員胸部の加速度が急激に上昇することがあった。またパッド部材は、乗員の押圧によって潰れる(硬くなる)と、車両衝突時の衝撃を十分に吸収できないものであった。
しかしネット部材の伸縮力にも限界があり、伸びきったネット部材では乗員胸部の加速度上昇を十分に抑えきれなかった。
さらに米国高速道路安全保険会社機構(IIHS)の評価試験では、ムチ打ちの発生原因を考慮して、車両衝突時における乗員胸部の加速度(T1G)に関する項目がある。
本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両衝突時における乗員胸部の加速度上昇を好適に抑制することにある。
そして変形によって衝撃荷重を吸収可能な変形部材を、フレーム体と支持体のいずれか一方の部材に設けて隙間部に介装するとともに、車両衝突時の衝撃荷重を変形部材の変形により吸収する。さらに変形部材の変形によって、支持体のフレーム体側への移動を許容することで、乗員胸部の加速度上昇を抑制する構成とした。
本発明では、変形部材の段階的な変形によって、支持体とフレーム体の離間(両者の離間による反動)を阻止することで、シート前側への頸部屈曲(いわゆる跳ね返り)を防止又は低減することができる。
さらに第1発明の車両用シートでは、変形部材に、一方とは異なるフレーム体と支持体のいずれか他方の部材に向けて張り出す一対の基部を設けて、一対の基部の間に他方の部材を配置することにより、他方の部材の押圧による変形部材の段階的な変形に伴って、一対の基部を互いに離間する向きに離間変形させる構成とした。
本発明では、上述の組付け手段によって、フレーム体と支持体を組付けるとともに、変形部材を適切に配設することができる。
本実施例の車両用シート2は、図1を参照して、シートクッション4とシートバック6とヘッドレスト8を備える。ヘッドレスト8は、一対のステー部材9,9を介してシートバック6上部に配設される。またシートバック6は、着座部をなすネット部材7(クッション材の一例)を有しており、ネット部材7の伸縮により乗員胸部(図示省略)を支持可能である(各構成の詳細は後述する)。
そしてこの種のシート構成では、車両衝突時において、乗員のムチ打ち発生を防止又は低減することが強く望まれる。すなわち乗員のムチ打ちを防止するために、車両衝突時における乗員胸部の加速度上昇を抑制することが望まれる。
そこで本実施例では、後述するシートバック構成によって、乗員胸部の加速度上昇を好適に抑制することとした。
このサポート部材19は、ステー部材9を挿設する部材であり、フレーム体10に設けられている。また支持体20は、ネット部材7を支持する部材であり、組付け手段30と変形部材40を備える。以下、各構成について詳述する。
フレーム体10は、シートバック6の骨格をなす略矩形(正面視)の枠体である(図1を参照)。このフレーム体10は、上部骨格をなす上部フレーム12(パイプ状)と、側方骨格をなす一対の側部フレーム14,14(平板状)と、下部骨格をなす下部フレーム16(パイプ状)を備える。
一対の側部フレーム14,14は、各々、第一取付け部18を有する。第一取付け部18は、後述する支持体20を取付け可能な部位であり、本実施例では側部フレーム14(中央付近)に形成した上下一対の貫通孔Hである。
そして上部フレーム12は、車両用シート2の上部側をなす部材であり、後述のサポート部材19を備える。本実施例の上部フレーム12は、略逆U字状(正面視)のパイプ部材であり、その両端が各々シート下方に屈曲して側部フレーム14に接合される。
そしてサポート部材19は、ステー部材9を挿設可能な短筒状の部材(断面視で略矩形)であり、上部フレーム12に一対配設される(図1、図2を参照)。
本実施例では、上部フレーム12(後側)に、シート幅方向に並列する一対の凹部12r,12rを設ける。これら一対の凹部12r,12rに、各々、サポート部材19を配設する。このとき図5を参照して、サポート部材19を、上部フレーム12からシート上方に突出させる(突出寸法P1)。そしてサポート部材19にホルダ部材9a(筒状)を挿入したのち、ホルダ部材9aの孔部にステー部材9を挿設することで、車両用シート2にヘッドレスト8を配設することができる。
なお後述するように、支持体20のフレーム体10への移動によって、このサポート部材19が支持体側に向かって相対移動する(図7を参照)。
支持体20は、ネット部材7を支持可能な略矩形(正面視)の枠体である(図1、図2を参照)。この支持体20は、上述のフレーム体10よりも若干大きい枠構造(上体部22、一対の側体部24,24、下体部26)と、後述の組付け手段30及び変形部材40を有する。支持体20の材質は特に限定しないが、例えばポリプロピレン等の樹脂にて形成することができる。
そして一対の側体部24,24は、各々、第二取付け部28を有する。本実施例の第二取付け部28は、側体部24(中央付近)に形成した上下一対の平板部材である。そして第二取付け部28は、その先端側に貫通孔Hを有して、側体部24からシート後側(フレーム体10を臨む側)に張り出す。
ここでネット部材7は、例えば網目状のファブリック製であり、支持体20の枠構造内(中空状)に取付けることができる(図1を参照)。
ネット部材7の取付け方法は特に限定しない。例えば支持体20(樹脂製)を成形する際に、支持枠の成形型にネット部材7を予め張設する。そして成形型内に溶融樹脂を流し込むことで、支持体20を成形すると同時に、枠構造内にネット部材7を取付けることができる(特許文献2を参照)。このときネット部材7の縁部(網目)に、支持体20の樹脂が侵入固化することで、支持体20にネット部材7を一体的に取付けることができる。
そして組付け手段30は、支持体20の上部側をフレーム体10に組付けるための部材である(図1、図2、図4を参照)。この組付け手段30は、上体部22に設けた略矩形(上方視)の部材であり、上部フレーム12に係合可能な係合部32を有する。
係合部32は、図6を参照して、組付け手段30の後側からシート下方に延設する部位であり、複数の切込みが等間隔に形成されている(櫛形状である)。
そして本実施例では、組付け手段30を上体部22(後側)の中央に配設して、シート後方に張り出させる。そして後述するように、上部フレーム12に係合部32を係合することで、フレーム体10に支持体20を組付ける。このとき組付け手段30の突出寸法P2を適宜調節するなどして、フレーム体10と支持体20の間に隙間部D(隙間寸法D1)を形成することができる(図6を参照)。
変形部材40は、略U字状(上方視)の部材であり、上体部22に配設される(図1、図2を参照)。この変形部材40は、変形により衝撃荷重を吸収可能な部材であり、本実施例では、撓み変形可能な材質(樹脂やエラストマ等)にて形成することができる。
そして本実施例では、図5を参照して、一対の変形部材40,40を上体部22(後側)に配設して、シート後方に張り出させる。これら一対の変形部材40,40は、サポート部材19の配設位置に対応して、シート幅方向に並列配置する。
一対の基部(42a,42b)は、共に略長方形状の平板部材(側面視)であり、上体部22(後側)に配設される。
ヒンジ部44は、各基部の外面(支持体寄り)に形成されたシート上下に延びる溝部位である。このヒンジ部44によって、後述する一対の基部(42a,42b)の拡開変形を助長することができる(基部の離間変形のきっかけとなる)。
ストッパ部46は、各基部の内壁(フレーム体寄り)から突出する突出部位である。このストッパ部46によって、サポート部材19の後方側を支持することができる。
そして変形部材40の隙間にサポート部材19を挿入したのち、ストッパ部46とサポート部材19を係合することで、サポート部材19の抜外れを防止又は低減することができる。
各リブの厚み寸法は、基部(平板状)よりも薄く設定することが好ましい。このときリブの厚み寸法を適宜設定して、乗員が着座する際の衝撃荷重では変形しないが、車両衝突時の衝撃荷重(衝突荷重)によって変形するように調整する。
そして後述するサポート部材19の侵入(押圧)によって、複数組の変形部(48a〜48d)が段階的に屈曲変形することにより、各リブ間の隙間が拡張して支持体20のフレーム体10への移動を許容することができる。
さらに変形後の変形部(48a〜48d)にサポート部材19が挟持される。そして変形部の元に戻ろうとする力によってサポート部材19が押さえ付けられることから、変形部材40からのサポート部材19の抜外れが防止又は低減される。
図1を参照して、フレーム体10の着座側に支持体20を配置して、第二取付け部28と第一取付け部18を対面配置する。そして第一取付け部18と第二取付け部28を締結具(ボルト等)にて締結して、フレーム体10に支持体20(中央部分)を取付ける。なお支持体20の枠構造の寸法はフレーム体10よりも若干大きい。このためフレーム体10に支持体20を取付けると、上部フレーム12から上体部22が突出して、サポート部材19(突出部分)と対面する(図2を参照)。
そして上述の取付け作業に前後して、一対の変形部材40,40に、各々サポート部材19を挿入しつつ、上体部22に設けた組付け手段30を上部フレーム12に係合する(図3〜図6を参照)。このとき組付け手段30によって隙間部Dを形成することにより、変形部材40の適切な配置スペースを確保しつつ、フレーム体10と支持体20を組付けることができる。
図1を参照して、車両衝突時においては、まずネット部材7の伸縮によって乗員を支持する。ネット部材7は、乗員の押圧によってつぶれることがないため、乗員がシートに強く押付けられたとしても好適なクッション性が維持される。
そして図7を参照して、ネット部材7が伸びきったのち、衝突荷重による乗員の押圧によって、支持体20がフレーム体10に押付けられる(支持体20がフレーム体側に移動する)。このときサポート部材19が支持体側に相対移動して、第一変形部48aを押圧する。このサポート部材19の押圧により、第一変形部48aが屈曲変形するとともに、一対の基部(42a,42b)が互いに離れる方向に離間変形する。この変形部材40の変形によって衝突荷重を吸収しつつ、支持体20のフレーム体10への移動を許容することができる。
ここで衝突荷重(衝突荷重によるサポート部材19の押圧)が大きいときは、サポート部材19の更なる相対移動により、残りの変形部(48b、48c、48d)が段階的に変形する。これら複数組の変形部の段階変形によって、支持体20のフレーム体10への更なる移動を許容することができる。
また変形部材40によって衝突荷重が吸収されるため、車両衝突時においてフレーム体10にかかる負荷を好適に軽減することができる。
そして本実施例では、変形後の変形部(48a〜48d)がサポート部材19を押さえ付けることで、変形部材40からのサポート部材19の抜外れが防止又は低減される。このようにサポート部材19の抜外れを防止等して、支持体20とフレーム体10の離間(両者の離間による反動)を阻止することにより、シート前側への頸部屈曲(跳ね返り)を防止又は低減することができる。
本実施例の車両用シートは、実施例1の車両用シート2とほぼ同一の基本構成を備えるため、共通の構造等は対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施例の変形部材40aは、図8を参照して、略Y字状(上方視)の部材であり、一対の基部(第一基部43a,第二基部43b)と、ヒンジ部44と、ストッパ部46を有する。
これら第一基部43aと第二基部43bは、その途中で互いに離間する方向に屈曲する平板部材である。より詳しくは、フレーム体10側における基部間の隙間寸法(D2)が、サポート部材19の幅寸法(W1)と略同一又は広く設定される。また支持体20側における基部間の隙間寸法(D3)が、サポート部材19の幅寸法よりも狭く設定される。
このように本実施例においては、比較的シンプルな構成(変形部を省略した構成)により、車両衝突時における乗員胸部の加速度上昇を好適に抑制することができる。
本実施例の車両用シートは、実施例1の車両用シート2とほぼ同一の基本構成を備えるため、共通の構造等は対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施例の変形部材40bは、図9を参照して、一対の基部(42a,42b)と、弾性部材49と、ストッパ部46aを有する。一対の基部(42a,42b)の隙間間隔は、サポート部材19の幅寸法よりも狭くされている(幅狭である)。またストッパ部46aは、サポート部材19を臨む位置に突出する突出部位である。
そして弾性部材49は、衝突荷重により弾縮変形可能な部材であり、本実施例のようにゴム弾性を備える部材(ゴムやエラストマ)のほか、バネ弾性を備える部材にて構成することができる。
そして車両衝突時においては、サポート部材19の押圧により、弾性部材49の弾縮変形によって衝突荷重を吸収しつつ、支持体20のフレーム体10への移動を許容することができる。
さらにサポート部材19が、ストッパ部46aを乗り越えて(段階的に)支持体側に相対移動する。そして一対のストッパ部46a,46aがサポート部材19後側を押さえ付けることで、変形部材40からのサポート部材19の抜外れが防止又は低減される。このようにサポート部材19の抜外れを防止等して、支持体20とフレーム体10の離間(両者の離間による反動)を阻止することにより、シート前側への頸部屈曲(跳ね返り)を防止又は低減することができる。
本実施例の車両用シートは、実施例1の車両用シート2とほぼ同一の基本構成を備えるため、共通の構造等は対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施例の変形部材40cは、図10及び図11を参照して、サポート部材19を嵌装可能な略矩形の枠状である。この変形部材40cは、一対の基部(42a,42b)と、変形部(48a〜48d)と、組付け部34(組付け手段の他例)を有する。組付け部34は、一対の基部(42a,42b)の後側に橋渡し状に配設された平板部分である。
そして本実施例では、比較的シンプルな組付け部34(変形部材と一体の組付け手段)によって、フレーム体10と支持体20の間に隙間部を形成しつつ、両部材を組付けることができる。また組付け部34によって、サポート部材19の抜外れを防止又は低減することができる。
(1)本実施形態では、サポート部材19を変形部材40に挿入する構成を説明した。変形部材40は、車両用シート2の上部側の各種構成を挿入することができ、例えば上部フレーム12を挿入することができる。
(3)また本実施形態では、クッション材の一例としてネット部材7を例示した。このほかにパッド材(ウレタンパッドなどの多孔性の樹脂部材)などのクッション性を備える各種部材をクッション材として使用することができる。
また変形部材40に複数の変形部(48a〜48d)を設けた。変形部の数は適宜変更可能であり、変形部材に単数の変形部を設けることもできる。また変形部の形状も特に限定しない。変形部は、屈曲変形する構成のほか、折損する構成とすることができる。
(6)また実施例3では、変形部材40bからストッパ部46aを省略することができる。また実施例1と同様に、変形部材40bにストッパ部46を設けて、サポート部材19の後方を支持することができる。この構成においても、車両衝突時において、弾性部材49の弾縮変形によって衝突荷重を吸収しつつ、支持体20のフレーム体10への移動を許容することができる。
(7)なお本実施形態では、実施例1〜実施例4に特有の構成を設けた。これら特有の構成は、各実施例に適宜適用することができる。
4 シートクッション
6 シートバック
7 ネット部材
8 ヘッドレスト
9 ステー部材
10 フレーム体
18 第一取付け部
19 サポート部材
20 支持体
28 第二取付け部
30 組付け手段
32 係合部
34 組付け部
40 変形部材
42a,42b 基部
44 ヒンジ部
46 ストッパ部
48a〜48d 変形部
49 弾性部材
D 隙間部
Claims (2)
- シート骨格をなすフレーム体と、乗員の胸部を支持可能なクッション材とを有する車両用シートにおいて、
前記車両用シートが、クッション材を支持する支持体を有して、前記フレーム体と前記支持体を、それらの上部側に隙間部を形成しつつ互いに組付け可能であるとともに、
変形によって衝撃荷重を吸収可能な変形部材を、前記フレーム体と前記支持体のいずれか一方の部材に設けて前記隙間部に介装するとともに、車両衝突時の衝撃荷重を前記変形部材の変形により吸収しつつ、前記支持体の前記フレーム体側への移動を許容する構成として、
前記変形部材が、前記支持体と前記フレーム体の離間を阻止しつつ、段階的に変形可能であるとともに、
前記変形部材に、前記一方とは異なる前記フレーム体と前記支持体のいずれか他方の部材に向けて張り出す一対の基部を設けて、前記一対の基部の間に前記他方の部材を配置することにより、前記他方の部材の押圧による前記変形部材の段階的な変形に伴って、前記一対の基部を互いに離間する向きに離間変形させる構成とした請求項1に記載の車両用シート。 - 前記フレーム体と前記支持体の少なくとも一方に設けた組付け手段によって、前記隙間部の隙間寸法を確保しつつ、前記フレーム体と前記支持体を組付ける構成とした請求項1に記載の車両用シート。
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