JP5444509B2 - 薬液移注方法及び薬液移注装置 - Google Patents

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Description

本発明は、医療などの分野において、容器に充填されている注射薬などの薬液を、容器とシリンジとの間で移注する薬液移注方法及び薬液移注装置に関する。
病院などにおいて、注射薬などの薬液を入院患者などに処方するとき、数種類の薬液を異なった薬液容器から取り出して混合する場合がある。密閉された薬液容器からシリンジへ薬液を吸引するときには、強い力が必要となるため、ポンピング動作が行なわれることが多い。ポンピング動作とは、吸引する薬液の体積よりも少ない体積の空気層を予めシリンジ内に生じさせ、この状態から薬液の吸引を始めてシリンジのプランジャを複数回押し引きして、薬液容器内の薬液と空気とを徐々に置換する動作である。
このポンピング作業の負担を軽減するために、針の一部に溝を設けて、ポンピング動作を不要とする移注針が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の移注針では、この溝で空気を抜くことにより、薬液容器内を大気圧とほぼ等しくすることができる、としている。
図9は、従来の薬液混合装置に用いられる移注針1における一部断面図である。図9は、従来の移注針1をゴム栓8cから引き抜くときの、ゴム栓8cの厚さ方向に垂直な面から見た移注針1の一部断面図である。図9に示すように、従来の移注針1は、針2と針基部3とが一体となっている。そして、移注針1では、針2の外側に外筒4を嵌着させることで、針2と外筒4との間に溝4aを構成している。溝4aの一端の空気口5の近傍には、疎水性の合成樹脂により形成したフィルター6が取り付けられている。
このように構成された移注針1をシリンジ7に取り付け、薬液容器8より薬液9をシリンジ7内に吸引すると、薬液容器8内の薬液9が減った容積だけ、薬液容器8内の気体10が膨張して、薬液容器8内の気体10の圧力が下がる。その結果生じた薬液容器8内の気体10の圧力と大気圧との間の圧力差を無くすために、フィルター6と溝4aとを介して、外部の空気が、薬液容器8へ引き込まれる。その結果、移注針1の溝4aより泡状となった空気5aが薬液容器8内へ入り、薬液容器8内の気体10の圧力は大気圧とほぼ同じになる。特許文献1では、これにより、シリンジ7のポンピンク動作を不要とすることができ、薬液容器8内より薬液をシリンジ7内に吸引する際の作業の負担が、軽減されるとしている。
また、特許文献2には、薬液の移注前に、移注量に相当する量の清浄な空気をシリンジ内に吸引した後、吸引した清浄な空気を薬液容器内に注入して薬液容器内を陽圧にし、薬液容器内からシリンジ内への薬液の移注を容易にするものが開示されている。
実開平4−77946号公報 特表平04−505403号公報
しかしながら、発明者らは、このような移注針を用いた吸引及び吐出作業を多数回繰り返し実験する中で、薬液の移注量にバラツキが発生するという課題を見出した。
本発明は、この課題を解決するものであり、薬液の移注量に大きなバラツキが発生せず、薬液の移注を高精度に行なうことが可能な薬液移注方法及び薬液移注装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の1つの態様に係る薬液移注方法は、薬液移注装置を用いて容器からシリンジに薬液を移注させる薬液移注方法であって、前記容器の鉛直方向の下方に配置された前記シリンジを用い、前記薬液移注装置に保持された前記シリンジのプランジャを用いて前記シリンジの針内に存在する空気を外部の気体と一体で空引きすることで前記プランジャのガスケットと前記シリンジの内壁面との間に空気溜まりを形成し、前記ガスケットと前記シリンジの内壁面との間に空気溜まりが存在する状態で前記薬液移注装置に前記シリンジを保持した状態を維持しつつ前記シリンジの針を前記容器に穿刺した後、
前記プランジャを移動させることで、前記針を介して前記容器から前記シリンジに前記薬液を移注させるに際し、
前記空気溜まりの体積は、前記シリンジの容量が2.5mlの場合は0.1ml以上かつ0.5ml未満であり、前記シリンジの容量が20ml又は50mlの場合は0.5ml以上かつ2.0ml未満である。
また、上記目的を達成するために、本発明の別の態様に係る薬液移注装置は、薬液を内部に有する容器を保持する第1保持部と、前記容器の鉛直方向の下方に配置され、針の付いたシリンジを保持する第2保持部と、前記第1保持部を鉛直方向の上下に移動させる第1移動部と、前記第2保持部で保持された前記シリンジのプランジャを鉛直方向の上下に移動させる第2移動部と、前記第1移動部及び前記第2移動部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第2保持部に保持された前記シリンジのプランジャを用いて前記シリンジの針内に存在する空気を外部の気体と一体で空引きすることで前記プランジャのガスケットと前記シリンジの内壁面との間に空気溜まりを形成し、前記ガスケットと前記シリンジの内壁面との間に空気溜まりが存在する状態で前記第2保持部に前記シリンジを保持した状態を維持しつつ、前記第1保持部を鉛直方向の下向きに相対的に移動させることで前記針を前記容器に穿刺した後、前記プランジャを移動させて前記容器から前記シリンジに前記薬液を移注させる処理を行い、前記制御部により形成される前記空気溜まりの体積は、前記シリンジの容量が2.5mlシリンジの場合は0.1ml以上かつ0.5ml未満であり、前記シリンジの容量が20ml又は50mlの場合は0.5ml以上かつ2.0ml未満である。
本発明の各態様により、薬液の移注量に大きなバラツキが発生せず、薬液の移注を高精度に行なうことが可能な薬液移注方法及び薬液移注装置を提供することができる。
本発明の特徴は、添付された図面についての実施形態に関連した次の記述から明らかになる。この図面においては、
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る薬液移注装置の概略構成図であり、 図1Bは、本発明の第1実施形態に係る薬液移注装置の制御部などの一例の概略ブロック図であり、 図2は、第1実施形態に係る薬液移注方法のフローチャートであり、 図3Aは、第1実施形態に係る薬液移注装置の一部断面図であり、 図3Bは、第1実施形態に係る薬液移注装置の一部断面図であり、 図3Cは、第1実施形態に係る薬液移注装置の一部断面図であり、 図3Dは、第1実施形態に係る薬液移注装置の一部断面図であり、 図3Eは、第1実施形態に係る薬液移注装置の一部断面図であり、 図3Fは、第1実施形態に係る薬液移注装置の一部断面図であり、 図3Gは、第1実施形態に係る薬液移注装置の一部断面図であり、 図3Hは、第1実施形態に係る薬液移注装置の一部断面図であり、 図3Iは、第1実施形態に係る薬液移注装置の一部断面図であり、 図3Jは、第1実施形態に係る薬液移注装置の一部断面図であり、 図4は、第1実施形態に係る薬液移注装置の一部断面図であり、 図5は、第1実施形態に係る薬液混合装置を示す側面図であり、 図6Aは、従来の薬液移注装置の一部断面図であり、 図6Bは、従来の薬液移注装置の一部断面図であり、 図6Cは、従来の薬液移注装置の一部断面図であり、 図7は、従来の薬液移注装置においてシリンジの内部で気泡が発生する状態を順に模式的に示す断面図であり、 図8は、本発明の第2実施形態に係る薬液移注装置の薬液移注針の一部断面図であり、 図9は、従来の移注針の一部断面図であり、 図10は、従来の移注針における課題を説明するための一部断面図である。
本発明の実施形態について説明する前に、発明者らが見出した従来の移注針の課題を説明する。図10は、従来の薬液移注針の課題を説明するための一部断面図である。なお、図10において、図9と同じ構成には同じ符号を付しており、説明を省略している。
発明者らは、移注針を用いて多数回繰り返し実験する中で、シリンジ7内に初めて薬液9を吸引する場合に、図10に示すように、薬液容器8内の薬液9と針2内の空気が、シリンジ7の先端の導入部7aで急激にぶつかり合っていることを見出した。薬液9と針2内の空気とが、このようにぶつかり合うと、気泡8fがシリンジ7内の底部付近に発生する場合がある。生じた気泡8fは、シリンジ7の内部の先端付近の壁面7bに付着して、シリンジ7における薬液9の計量の精度を低下させる場合がある。図11に示すような状態になると、液状の薬液9の内部に多数の気泡8fが含まれるため、シリンジ7の内部の薬液9の正確な体積が分からなくなる。したがって、従来の移注針では、気泡8fが大量に発生した場合、薬液9を精度良く移注できないという課題がある。
本発明は、以下に説明する実施形態により、この従来の移注針における課題を解決するものである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同じ構成要素には同じ符号を付しており、説明を省略する場合もある。また、図面は理解し易くするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示している。
(第1実施形態)
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る薬液移注装置20の一部の概略構成図である。図1Bは、本発明の第1実施形態に係る薬液移注装置の制御部などの一例の概略ブロック図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る薬液移注装置による薬液移注方法のフローチャートである。図3Aから図3Jは、容器及びシリンジの一部の側面図を用いて、第1実施形態における薬液移注方法を説明するための図である。
図1A及び図1Bに示すように、第1実施形態の薬液移注装置20は、第1保持部21と、第2保持部22と、第1移動部23と、第2移動部19と、制御部40とを備えている。薬液移注装置20は、薬液混合装置の一例として機能する。薬液混合装置とは、シリンジ26に対して薬液を移注した後に、移注した薬液をシリンジ26から輸液バイアルなどに注射して、薬液を混合する装置である。
第1保持部21は容器保持部の一例であり、第2保持部22はシリンジ保持部の一例である。第1移動部23は容器24を移動させる容器移動部の一例であり、第2移動部19はシリンジ26のプランジャ26bを移動させるプランジャ移動部の一例である。容器24は、例えばバイアル瓶や輸液バッグなどの薬液容器の一例である。ここで、第1保持部21は、容器24を保持する。第2保持部22は、第1保持部21の鉛直下部に配置され、針25の付いたシリンジ26を保持する。第1移動部23は、制御部40により制御され、第1保持部21を鉛直上下方向に移動させる。第2移動部19は、制御部40により制御され、シリンジ26のプランジャ26bを鉛直上下方向に移動させる。プランジャ26bを固定する可動板19kは、シリンジベース22aに移動可能な状態で取り付けられている。また、第2保持部22及びプランジャ26bの第2移動部19は、シリンジベース22aに固定されている。
制御部40は、薬液移注装置20の種々の動作を制御する。具体的には、制御部40は、演算部40aと記憶部40bと判断部40cとを備えて、モータ23a,19m、第1移動部23と第2移動部19などの駆動装置をそれぞれ駆動制御する。記憶部40bには、容器24の識別データと、容器24毎の空引き量のデータと、ゴム栓30の位置のデータと、ゴム栓30の厚さのデータと、針25の先端の採液口25aの先端の位置のデータとが、データベースとして予め記憶されている。これらのデータは、ゴム栓30毎、又は針25毎、又は容器24毎に記憶されている。ここで、容器24毎の空引き量のデータとは、空引き動作時のプランジャ26bの下降量のデータである。なお、これらのデータの一部を記憶部40bに予め記憶せずに、カメラ100又はエンコーダ101などを使用して必要なデータを取得して、記憶部40bに記憶してもよい。また、記憶部40bを、処方箋などを記憶したデータベースと通信などにより接続することで、データベースの処方箋に記録された薬液の所定量を取得して記憶部40bに記憶させてもよい。演算部40aは、記憶部40bから必要なデータを取得すると共に、容器24のゴム栓30の位置情報及び針25の先端の採液口25aの先端の位置情報及びプランジャ26bの位置情報を基に、後述するそれぞれのステップにおいて演算を行い、ゴム栓30に対する採液口25aの相対的な位置を求めると共に、容器24及びプランジャ26bの移動量をそれぞれ求める。判断部40cは、演算部40aでの演算結果を基に、後述するそれぞれのステップでの動作の終了(完了)を確認及び判断して、モータ23a、19mなどの駆動装置に対して駆動停止信号を出力する。
容器24としては、例えば、バイアル瓶又は輸液バッグが用いられる。容器24は、その内部24aに、予め薬液が収納されている。第1実施形態では、容器24の一例として、図1Aに示すように、バイアル瓶を用いている。容器24の一例であるバイアル瓶は、ゴム栓30を鉛直方向の下側に配置した状態で、第1保持部21に保持されている。第1実施形態では、バイアル瓶のゴム栓30が鉛直方向の下側に配置された状態を、容器24(バイアル瓶)の倒立状態としている。ゴム栓30の材料としては、ブチル、塩素化ブチル、ブタジエン、又は、イソプレンが用いられる。
第1保持部21は、第1移動部23に固定されている。第1移動部23は、一例として、回転軸が正逆回転するモータ23aと、モータ23aの回転軸の正逆回転により正逆回転するボールネジ軸23bと、ボールネジ軸23bに係合された可動板23cとで構成されている。可動板23cは、第1保持部21に連結されると共に、第1保持部21と一緒に鉛直方向に上下移動する。モータ23aは、制御部40により駆動制御されて回転軸が正逆回転するものであり、第1移動部用駆動装置の一例として機能する。
プランジャ26bの先端にはガスケット31が固定されている。シリンジ26内に移注された薬液又はシリンジ26内に吸引された気体(例えば、空気)は、ガスケット31と接触する。以下の説明では、説明を簡略化するため、ガスケット31に言及せず、単に、プランジャ26bとして説明する。また、第1実施形態では、ガスケット31の表面を、プランジャ26bの上端面とする。
第1実施形態の薬液移注方法は、上述の構成要素を備えた薬液移注装置20を制御することで、容器24とシリンジ26との間で薬液を移注する方法である。
第1実施形態の薬液移注方法は、図2に示すように、データ取得ステップの一例であるステップS01と、空引きステップの一例であるステップS02と、針挿入ステップの一例であるステップS03と、一次押し引きステップの一例であるステップS04と、薬液移注ステップの一例であるステップS05と、陰圧調整ステップの一例であるステップS06と、引抜ステップの一例であるステップS07と、を行なうことで実施される。このうち、ステップS01〜ステップS03は、所定量の薬液27が、容器24の内部24aからシリンジ26の内部26aに移注される(移動する)前に行われる。
ステップS01では、制御部40が、容器24のゴム栓30の位置のデータ、ゴム栓30の厚さのデータ、及び、針25の先端の採液口25aの先端の位置のデータなどを、各種センサ及び記憶部40bから取得する。各種センサは、例えば、シリンジ26の正面又は側面に取り付けられたカメラ100、第1保持部21の第1移動部23の移動量を計測するエンコーダ101、又は、第2保持部22の第2移動部19の移動量を計測するエンコーダ102である。エンコーダ101、102は、移動量検出装置としての位置センサの一例である。ステップS01は、具体的には、このカメラ100又はエンコーダ101により取得された情報と記憶部40bに記憶された情報に基づいて、容器24のゴム栓30の位置と厚さとに対する針25の採液口25aの相対的な位置を検出する。
ステップS02は、針25を容器24に穿刺する前に、所定量の気体をシリンジ26の内部26aに空引きするステップである。具体的には、ステップS02では、針25が容器24に挿入されていない状態で第2移動部19のモータ19mを駆動させることで、シリンジ26のプランジャ26bを下降させて、シリンジ26の外部及び針25内から、所定量の気体をシリンジ26に吸引することで空引きを行う。第1実施形態では、この吸引により、シリンジ26内のプランジャ26bのガスケット31の表面31a(図4参照)とシリンジ26の先端26jの内壁面26h(図4参照)との間に、空気溜まりを構成する気体28が存在している。
ステップS03は、ゴム栓30に対して針25を穿刺させることで、針25を容器24に挿入するステップである。ここで、針25がゴム栓30を穿刺する動作は、第1移動部23のモータ23aを駆動させることで容器24を下降させて、針25の採液口25aが容器24内に挿入されるステップである。なお、第1実施形態では、容器24を下降させてシリンジ26の針25を容器24のゴム栓30に穿刺したが、シリンジ26を上昇させて針25を容器24のゴム栓30に挿入しても良い。すなわち、容器24と針25とを相対的に動かして、針25を容器24のゴム栓30に穿刺すれば良い。
ステップS04は、シリンジ26のプランジャ26bを押し引きすることにより、容器24とシリンジ26との間で、薬液27又は気体28を移注させるステップである。シリンジ26から容器24への所定量の気体28の吐出、又は、容器24からシリンジ26への薬液27の吸引は、従来と同様の動作であるので、詳細な説明を省略する。ここで、所定量の気体28の吐出又は薬液27の吸引を行うステップは、第2移動部19のモータ19mを正逆駆動させて、シリンジ26のプランジャ26bを昇降させることにより行う。
なお、ステップS04において、プランジャ26bを引くときの速度を、プランジャ26bを押すときの速度よりも低くすることで、ステップS04における押し引き動作における気泡の発生確率を低減させて、移注動作の精度を高くすることができる。発明者らの実験によれば、プランジャ26bを引く速度(薬液の吸込速度)を1m/s以下とし、プランジャ26bを押す速度(薬液の吐出速度)を5m/s以上とすることで、移注動作の精度を高くすることができた。
ステップS05は、所定量の薬液27を、容器24からシリンジ26の内部26aに移注するステップである。ここで、所定量の薬液27を移注するステップは、第2移動部19のモータ19mを駆動させて、シリンジ26のプランジャ26bを下降させることにより行う。
ステップS06は、シリンジ26内の薬液27の一部を容器24に戻すことにより、容器24内の気体28の圧力を陰圧に調整するステップである。薬液27の一部を容器24に戻すステップは、第2移動部19のモータ19mを駆動させて、シリンジ26のプランジャ26bを上昇させて、シリンジ26内の薬液27の一部を容器24に吐出することにより行う。
ステップS07は、容器24のゴム栓30からシリンジ26の針25を引き抜くステップである。ここで、針25を引き抜く動作は、第1移動部23のモータ23aを駆動させることで容器24を矢印24cの方向に上昇させて、容器24から離れる方向に針25を相対的に移動させることにより行う。
第1実施形態では、図2のステップS03の前にステップS02を行うことで、針25の内部に予め存在する空気(図示せず)をシリンジ26の内部26aに空引きすることで、針25の内部及びシリンジ26の口部26x近傍で、針25の内部の気体と空引きした気体とを一塊の気体として扱うことを可能とするものである。ここで、シリンジ26の口部26xは、シリンジ26の先端26j付近であり、針25とシリンジ26の内部26aとをつなぐ部分である。
すなわち、第1実施形態では、ステップS02の空引き動作を行うことで、針25内の気体とシリンジ26の外部の気体とを一体として吸引している。その結果、シリンジ26内において空気と薬液27とが不規則に混ざり合う可能性が低減し、シリンジ26内に移注された薬液27内における小さな気泡の発生を抑制できる。これにより、小さな気泡の発生を抑制した状態で薬液27の移注が可能となり、気泡による移注精度の劣化の可能性が低減し、高精度な薬液27の移注が可能となる。なお、第1実施形態では、薬液の移注を例に説明しているが、薬液の移注による薬液の混合が薬液の移注の一例であることは言うまでもない。
第1実施形態は、このように空引きを行なうことにより、薬液27をシリンジ26に吸引し始めるときに、気泡の発生を抑制することが可能なものである。具体的には、空引きを行うことにより、針25の内部に残っている気体28と薬液27とが、シリンジ26の内壁面26hとプランジャ26のガスケット31とに囲まれた狭い空間内において急激に混合されることによる気泡の発生を、抑制することができる。このようにして気泡の発生を抑制させることができれば、シリンジ26の内部には気泡がほとんど存在しないことになり、薬液27の移注を精度良く行うことができる。例えば、20mlシリンジにおいて、図2のステップS02の空引き処理を行わなかった場合の移注量のバラツキが0.107mlであったのに対して、図2のステップS02の空引き処理を行った場合(第1実施形態の場合)の移注量のバラツキは0.025mlであった。また、発明者らの実験により、移注の精度に影響する気泡としては、直径が50μm以上かつ3mm以下のもので、特に直径の小さい気泡がシリンジ26の壁面に付着し、壁面から剥がれにくいことが分かっている。第1実施形態では、特に、この大きさの気泡の発生の抑制に有効であると考えられる。
次に、第1実施形態の薬液移注装置20の基本的な動作について説明する。ここでは、図1Aに示すように、鉛直方向の上部に容器24が配置され、容器24の軸芯沿いの鉛直方向の下部にシリンジ26が配置されている薬液移注装置20を一例として説明する。
シリンジ26は、針25の針先をほぼ鉛直方向の上方に向けた状態で、第2保持部22に保持されている。シリンジ26のプランジャ26bは、第2移動部19により、矢印26dの方向(鉛直方向)に沿って上下に自在に移動する。第2移動部19は、一例として、回転軸が正逆回転するモータ19mと、モータ19mの回転軸の正逆回転により正逆回転するボールネジ軸19pと、プランジャ26bと一緒に鉛直方向に上下移動する可動板19kとで構成されている。モータ19mは、第2移動部用駆動装置の一例として機能し、制御部40により駆動制御されて回転軸が正逆回転する。可動板19kは、プランジャ26bに連結されると共に、ボールネジ軸19pに係合されている。制御部40の制御によるモータ19mの駆動により、矢印26dの方向に沿ってプランジャ26bが上下移動して、シリンジ26の内部26aと容器24の内部との間で、薬液27又は気体の移注を行うことができる。
なお、第1実施形態では、第1保持部21を鉛直方向の上部に配置し、第2保持部22を鉛直方向の下部に配置しているため、容器24を倒立状態で保持したときに、容器24内においてゴム栓30に隣接した領域に薬液27が移動する。そのため、シリンジ26の針25から薬液27を容易に吸引できる。
ここで、ステップS03の針挿入動作において、針25がゴム栓30に穿刺されて完全に貫通したか否かの確認は、具体的には、以下のように行う。第1実施形態では、針25がゴム栓30を完全に貫通した状態とは、針25の採液口25aが容器24内に挿入された状態である。そのため、演算部40aにおいて、記憶部40bに記憶されたデータに基づいて容器24の位置及びゴム栓30の位置及び厚さに対する移動前の採液口25aの相対的な位置を算出すると共に、第1移動部23のエンコーダ101の検出動作による容器24の移動量を算出することで、容器24及びゴム栓30の位置に対する移動後の採液口25aの相対的な位置を求める。そして、演算部40aで求められた容器24及びゴム栓30の位置に対する採液口25aの位置を基に、制御部40の判断部40cで、針25がゴム栓30を完全に貫通したか否かを、確認及び判断する。ここで、針25がゴム栓30を完全に貫通していると判断部40cで判断する場合、判断部40cから駆動停止信号を第1移動部23のモータ23aに出力してモータ23aの駆動を停止させて、針25の先端の採液口25aが容器24内に挿入された状態に保持する。一方、針25がゴム栓30を完全に貫通していないと判断部40cで判断する場合、針25がゴム栓30を完全に貫通するまで、モータ23aを駆動させ続ける。
ステップS04の押し引き動作においては、カメラ100の撮像動作により、シリンジ26内の薬液27の液面の位置を検出すると共に、エンコーダ102の移動量を算出し、シリンジ26内の薬液の量と気体の量の増減を演算することで、移注量を求める。例えば、シリンジ26内の気体28の容器24内への移動を確認する場合、シリンジ26内の薬液27の液面の位置の変化に基づいて、所定量の気体(空気溜まりを構成する気体28)を全て容器24に吐出したか否かを、判断部40cで確認及び判断する。ここで、所定量の気体を全て容器24に吐出したと判断部40cで判断する場合、駆動停止信号を第2移動部19のモータ19mに出力してモータ19mの駆動を停止させる。一方、所定量の気体が容器24に吐出されていないと判断部40cで判断する場合、その移動量だけプランジャ26bが上昇するまで、モータ19mを駆動させ続ける。
次に、図3Aから図3J、図4を用いて、第1実施形態の薬液移注方法の一連の動作を説明する。図3Aから図3Jは、本発明の第1実施形態に係る薬液移注装置20の一部断面図であって、容器24及びシリンジ26の位置関係を示す図である。図3Aから図3J、図4において、容器24の内部24aの針25の位置、薬液27の量、及び、気泡の位置、及び、大きさ等を分かり易くするために、容器24の一部を、断面図で示している。図4は、薬液27の移注時において、シリンジ26の先端の内壁面26hが薬液27で濡れず、結果として、気泡の付着が防止できている状態を説明する図である。濡れた面は、気泡が付着しやすいと共に取れにくいため、シリンジ26の内壁面26hを濡らさずに薬液の移注が可能な第1実施形態は、高い精度を維持することができる。図4の(a)は薬液移注動作の開始直後の状態(図3Dの状態の直前の状態)を示し、図4の(b)は図3Dの状態を示し、図4の(c)は図3Eの状態を示し、図4の(d)は図3Fの直前の状態を示し、図4の(e)は図3Fの状態を示す。
まず、図3Aは、所定量の薬液27を容器24からシリンジ26の内部26aに移動させる前で、かつ、例えば、シリンジ26をシリンジ26の滅菌パックから取り出した直後の初期状態を示している。この初期状態では、図3Aに示すように、プランジャ26bがシリンジ26の先端26j近くに位置している。この初期状態は、シリンジ26の先端26jの内壁面26hとプランジャ26bの先端のガスケット31とが直接接触していない状態であるが、シリンジ26の先端の内壁面26hとプランジャ26bの先端のガスケット31との隙間は、可能な限り小さくなっている。この初期状態では、シリンジ26内の気体28は、シリンジ26の目盛りでは、ほぼゼロである。
第1実施形態では、このような初期状態において、図3Bに示すように、空引きを行う(図2のステップS02参照)。空引きを行う量としては、具体的には、例えば、容量2.5mlのシリンジにおいては、0.1ml以上かつ0.5ml未満の量の空気を空引きする。また、容量20mlのシリンジ又は容量50mlのシリンジにおいては、0.5ml以上かつ2.0ml未満の量の空気を空引きする。ここでの空引き量は、針25の径及び長さには依存しない。ここで、空引きの最大量を設定している理由は、空引き量が多いと、気泡の発生は抑制できるが、移注に時間がかかって作業性が悪くなるためである。空引きの最小量を設定しているのは、空引き量が小さ過ぎると、シリンジ26の先端26jの内壁面26hが移注された薬液27で濡れてしまうためである。また、空引き動作のときのプランジャ26bの移動距離の一例としては、5mm以上である。これは、プランジャ26bの移動距離が5mmより小さいと、ガスケット31とシリンジ26の内壁面26hとの距離が小さ過ぎて、移注された薬液27がガスケット31に当たって飛び散って、内壁面26hに付着する可能性があるためである。プランジャ26bの移動距離が5mm以上の場合には、ガスケット31とシリンジ26の内壁面26hとの距離が十分に離れているため、移注された薬液27がプランジャ26bの先端に当たって飛び散って内壁面26hに付着する可能性が軽減される。
図3Cは、シリンジ26の内部26aに空引きした気体を入れたまま(すなわち、空気溜まりとしての気体28をシリンジ26内に維持したまま)、容器24を下降させて、ゴム栓30を介して容器24に針25を穿刺した状態を示している(図2のステップS03参照)。
図3D及び図4の(b)は、図3Cの状態からシリンジ26のプランジャ26bを矢印26eの方向に押し下げて、容器24の内部の薬液27をシリンジ26に吸引している状態を示している。ここで、第1実施形態では、吸引動作の開始直後において、図4の(a)〜(b)及び図3Dに示すように、シリンジ26内に気体28を予め入れて一塊の空気溜まりを形成しておくことで、針25の内部に存在する空気(図示せず)が小さな気泡になることを抑制している。
さらに、図3D及び図4の(b)に示すように、図4の(a)の状態からシリンジ26のプランジャ26bを矢印の鉛直方向の下向きに押し下げて、容器24の内部の薬液27をシリンジ26に吸引する。
図3E及び図4の(c)は、プランジャ26bの押し下げ動作を停止して、薬液27が、ガスケット31上に溜まると共に、溜まった薬液27の上に空気溜まりとしての気体28が残った状態を示している。
その後、プランジャ26bを矢印26fの方向に押し上げて、図3F〜図3G及び図4の(d)〜(e)に示すように、シリンジ26内に残った所定量の気体(空気溜まりとしての気体28)を、容器24に空気の塊26yとして吐出する。図3D〜図3Gに示す操作が、図2に示すステップS04である。
ステップS04によってシリンジ26内の気体28を容器24内に空気の塊26yとして押し出した後に、図3Hに示すように、プランジャ26bを矢印26eの方向に引いて、容器24の薬液27を所定量だけシリンジ26内に移動させる(図2のステップS05参照)。このステップS05を行うときに、容器24内の気体36の体積は、シリンジ26内に移注された(移動した)薬液27の体積分だけ増加する。これにより、体積が増加した容器24内の気体36の圧力は、大気圧より減少し、陰圧となる。
そこで、第1実施形態では、図3Iに示すように、容器24内の圧力が、針25の先端から薬液27が漏れる現象(以下、スピル)が起こらない程度の陰圧を保持するように、調整している。具体的には、第1実施形態では、シリンジ26のプランジャ26bを上昇させることにより、シリンジ26の内部26aの薬液27の一部を容器24に戻している(図2のステップS06参照)。これにより、容器24内の気体36の圧力は、最適な陰圧に調整される。
その後、図3Jに示すように容器24を相対的に上昇させて、容器24のゴム栓30から、シリンジ26の先端に付いた針25を引き抜く(図2のステップS07参照)。
図5は、本発明の第1実施形態に係る薬液移注装置20の一例として、移注モジュールを複数個備えて構成された薬液混合装置32を示す側面図である。
図5に示すように、薬液混合装置32は、円筒形の外壁32aに囲まれた薬液混合エリア32bの中に円筒形状の第3保持部33を有している。薬液混合エリア32bは、装置の外部への薬液27の漏れを確実に防止するための作業空間を形成する領域である。この円筒形状の第3保持部33は、中心軸32cに沿って上下方向に分割された第2保持部22と第1保持部21とで構成される。
薬液混合装置32は、第3保持部33以外に、第1移動部23と、第2移動部19と、制御部40を備えて構成される。
制御部40は、シリンジ26と容器24との組み合わせ(以下、混合セット)を、円柱状の支持部35の軸回りに、複数の位置に位置制御する。複数の位置としては、少なくとも、設置位置と薬液移注位置とがある。ここで、設置位置は、薬液混合装置32にシリンジ26及び容器24を設置するための位置であり、薬液移注位置は、前述のステップS01〜S07の薬液移注方法を実施するための位置である。
第2保持部22及び第1保持部21は、それぞれ複数のホルダー34a,34bを含んで構成されている。また、第2保持部22及び第1保持部21は、それぞれ独立に支持部35の中心軸32cの周りに制御部40の制御の下に回動自在に回転可能であり、相対的に回転させることで、選択されたシリンジ26と選択された容器24とを切替えて、上下方向に整列させることができる。
また、図5に示す薬液混合装置32の第2保持部22は、複数のホルダー34a,34bそれぞれにおいて、形状に関わらず複数種類のシリンジ26を保持できる。シリンジ26は、吸引する薬液27の種類により、例えば、「容量2.5ml」、「容量20ml」、「容量50ml」などのように、形状が異なるものがある。第1実施形態32では、複数種類の形状のシリンジ26に対応した専用の治具を準備しており、複数種類の形状のシリンジ26の外筒を確実に固定して保持可能である。さらに、第1実施形態では、第2移動部10においても、異なる形状のプランジャ26bに対応した専用の治具を準備している。
なお、薬液混合装置32では、1つの位置(薬液移注位置)で薬液移注方法を実施するものに限らず、ステップ毎に異なる位置で、それぞれのステップを行うようにしてもよい。例えば、混合セットを設置位置に配置した後、ステップS02を行う空引き位置、ステップS03を行う針挿入位置、ステップS04を行う一次押し引き位置、ステップS05を行う薬液移注位置、ステップS06を行う陰圧調整位置、ステップS07を行う引抜位置を、それぞれ別の位置で行っても良い。この場合には、それぞれの位置に第1移動部23又は第2移動部19などが適宜必要となる。なお、これに限らず、1つの位置で2つ又は3つのステップを行うようにしてもよいことは言うまでも無い。
このような構成により、薬液混合装置32は、複数種類の容器24及び複数種類のシリンジ26を用いて複数種類の薬液27を混合する場合でも、効率良く安全に薬液27を混合できる。
ここで、第1実施形態の薬液移注装置20及び薬液混合装置32の効果を確認するために、図6Aから図8Bを用いて、従来の薬液混合について説明する。図6Aから図8Bは、従来の薬液移注方法を説明するための図である。特に、図7は、シリンジ26の先端の内壁面26hが薬液27で部分的に濡れてしまい、濡れた面に気泡が付着してしまう状態を説明する図である。図7の(a)は図6Aの状態を示し、図7の(b)は図6Bの状態を示し、図7の(e)は図6Cの状態を示す。理解しやすくするため、ここでは、第1実施形態の薬液移注装置のシリンジ26と容器24とを使用して、従来の薬液移注方法を行う場合について説明する。
従来の薬液移注方法では、第1実施形態のように空引き(図2のステップS02)は行わない。空引きを行わないで(すなわち、ステップS02無しで)、図6Aに示す初期状態から図6Bに示すように、針25を容器24に挿入した後(ステップS03)、図6C及び図7の(a)〜(e)に示すようにプランジャ26bを矢印26eの方向に押し下げて、薬液27を容器24からシリンジ26内に吸引する(ステップS04)。従来の薬液移注装置では、このときに、図6Cに示す気泡29が発生することがある。
すなわち、図7の(a)において、プランジャ26bを鉛直方向の下向きに押し下げて、容器24から薬液27をシリンジ26の内部26aに吸引を開始する。すると、シリンジ26内に吸引された薬液27は、ガスケット31とシリンジ26の内壁面26hとの間には隙間がほとんど無いため、ガスケット31にぶつかった薬液27の逃げ道が存在せず、複雑な流れになってしまい、小さな気泡が発生しやすくなる。この状態で吸引を続けると、図7の(b)に示すように、薬液27がガスケット31にぶつかって飛び散った際に小さな気泡29が発生することになる。
次いで、図7の(c)〜(e)に示すように、プランジャ26bを鉛直方向の下向きにさらに押し下げると、シリンジ26内が薬液27で満たされるが、薬液27内には、図7の(a)及び(b)でシリンジ26の内壁面26hに付着した気泡29が残ってしまうことが多い。さらに、内壁面26hが濡れた状態で気泡29が付着すると、この気泡29は剥離しにくくなり、シリンジ26を振動させても剥離しないことがある。
それに対し、前述のように、第1実施形態によれば、薬液27内に小さな気泡(従来の小さな気泡29)が発生することを抑制し、移注量のバラツキが軽減されて、薬液27の移注及び混合を精度良く行なうことができる。移注量のバラツキ軽減の一例としては、容量20mlのシリンジにおいて、第1実施形態を適用しない場合には3σで0.107mlの誤差があるのに対して、第1実施形態を適用する場合には3σで0.025mlの誤差となり、バラツキが77%も軽減させることができる。また、容量50mlのシリンジにおいて、第1実施形態を適用しない場合には3σで0.095mlの誤差があるのに対して、第1実施形態を適用する場合には3σで0.035mlの誤差となり、バラツキが63%も軽減させることができる。
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態に係る薬液移注方法に用いる移注針51の断面図である。第2実施形態の薬液移注方法は、前述の第1実施形態の針25の代わりに、図8に示す移注針51を用いる点で第1実施形態と異なり、それ以外は第1実施形態と同じであるため、同じ部分の説明は省略する。
第2実施形態で用いる針は、図16に示すように、筒状の針基52と、第1針53と、第2針54と、を備えた移注針51である。ここで、針基52は、シリンジ26の筒先に装着される。第1針53は、内部に通気路55を有する。第2針54は、第1針53より長く第1針53と平行に配置されている。また、第1針53は、通気路55の一端である第1通気口56を、他端である第2通気口57よりも第2針54の先端側に設けている。第2針54は、通液路58の一端を針基52の内側に接続すると共に、他端を第2針54の通液口59としている。また、第2針54は、通液口59を有する先端部54aと、針基52に接続する基部54bと、を有している。
このように構成される移注針51を用いて、第2針54の通液口59から、容器24内の薬液27を吸引する場合を考える。薬液27は、第2針54の通液口59から吸引されて、第2針54の内部と針基52とを通ってシリンジ26の内部26aに移注される。すると、容器24の内部の薬液27が減って容器24の内部24aの気体36の体積が増加するため、容器24内の気体36の圧力が減少し、気体36の圧力が大気圧よりも低くなる。ここで、第2実施形態では、移注針51を使用しているので、気体36の圧力が大気圧よりも低いと、容器24の外部の大気が、第1針53の第2通気口57から第1通気口56を介して容器24の中に入り、容器24の内部24aと大気圧との圧力差が少なくなる。第2実施形態の薬液移注方法は、この移注針51を用いるので、薬液27を吸引してから所定量を吸引し終わるまでの間に、大きな力が必要ではなく、かつ、ポンピング動作も必要ではない。また、第2実施形態の薬液移注方法では、前述の第1実施形態と同様に、容器24からシリンジ26に薬液27を移注する前に図2のステップS02の空引き動作を行うので、気泡29の発生を抑制でき、精度良く、かつ、効率良く薬液の移注及び混合を行うことができる。
なお、第2実施形態では、移注量に関わらず、空引き動作であるステップS02での空引き量を一定に設定することができる。一方、前述の第1実施形態では、ポンピング動作を用いて薬液27を移動させる場合、移注量に応じてステップS02での空引き量を変更させる必要がある。ただし、ポンピング動作を必要としない少量の移注に関しては、第2実施形態と同様である。ここで言う少量の移注とは、例えば、2ml以下の移注を指す。
また、第1及び第2実施形態では、第1保持部21を第1移動部23で移動させる場合について説明したが、第1保持部21を固定した状態で第2保持部22を第1移動部23で移動させても、相対的に同じ動きとすることができる。
なお、上記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
本発明に係る薬液移注方法及び薬液移注装置によれば、薬液を精度良く移注できるので、例えば、病院などにおける薬液移注に有用である。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形又は修正は明白である。そのような変形又は修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。

Claims (10)

  1. 薬液移注装置を用いて容器からシリンジに薬液を移注させる薬液移注方法であって、
    前記容器の鉛直方向の下方に配置された前記シリンジを用い、前記薬液移注装置に保持された前記シリンジのプランジャを用いて前記シリンジの針内に存在する空気を外部の気体と一体で空引きすることで前記プランジャのガスケットと前記シリンジの内壁面との間に空気溜まりを形成し、前記ガスケットと前記シリンジの内壁面との間に空気溜まりが存在する状態で前記薬液移注装置に前記シリンジを保持した状態を維持しつつ前記シリンジの針を前記容器に穿刺した後、
    前記プランジャを移動させることで、前記針を介して前記容器から前記シリンジに前記薬液を移注させるに際し、
    前記空気溜まりの体積は、前記シリンジの容量が2.5mlの場合は0.1ml以上かつ0.5ml未満であり、前記シリンジの容量が20ml又は50mlの場合は0.5ml以上かつ2.0ml未満である、
    薬液移注方法。
  2. 前記ガスケットと前記シリンジの内壁面との間に前記空気溜まりが存在する状態では、前記ガスケットと前記シリンジの内壁面との間に5mm以上の隙間が形成されている、
    請求項1に記載の薬液移注方法。
  3. 前記容器から前記シリンジに前記薬液を移注させるとき、前記ガスケットにぶつかって飛び散った前記薬液が前記シリンジの先端の内壁面に飛散しないように、前記プランジャを移動させる、
    請求項1又は2に記載の薬液移注方法。
  4. 前記針を前記容器に穿刺する前に、前記シリンジの前記プランジャを移動させることで、前記シリンジの外部の気体及び前記針の内部の気体を前記シリンジ内に吸引して前記空気溜まりを形成する、
    請求項1又は2に記載の薬液移注方法。
  5. 前記容器から前記シリンジに前記薬液を移注するときに、前記プランジャの移動速度を1m/s以下とする、
    請求項1又は2に記載の薬液移注方法。
  6. 前記薬液の移注が終わって前記容器から前記針を引き抜く前に、前記シリンジ内の前記空気溜まりを前記容器に移動させる、
    請求項1又は2に記載の薬液移注方法。
  7. 前記薬液の移注が終わって前記容器から前記針を引く抜く前に、前記シリンジから前記容器に薬液を移動させることで、前記容器内の陰圧を調整する、
    請求項1又は2に記載の薬液移注方法。
  8. 薬液を内部に有する容器を保持する第1保持部と、
    前記容器の鉛直方向の下方に配置され、針の付いたシリンジを保持する第2保持部と、
    前記第1保持部を鉛直方向の上下に移動させる第1移動部と、
    前記第2保持部で保持された前記シリンジのプランジャを鉛直方向の上下に移動させる第2移動部と、
    前記第1移動部及び前記第2移動部を制御する制御部と、を備え、
    前記制御部は、前記第2保持部に保持された前記シリンジのプランジャを用いて前記シリンジの針内に存在する空気を外部の気体と一体で空引きすることで前記プランジャのガスケットと前記シリンジの内壁面との間に空気溜まりを形成し、前記ガスケットと前記シリンジの内壁面との間に空気溜まりが存在する状態で前記第2保持部に前記シリンジを保持した状態を維持しつつ、前記第1保持部を鉛直方向の下向きに相対的に移動させることで前記針を前記容器に穿刺した後、前記プランジャを移動させて前記容器から前記シリンジに前記薬液を移注させる処理を行い
    前記制御部により形成される前記空気溜まりの体積は、前記シリンジの容量が2.5mlシリンジの場合は0.1ml以上かつ0.5ml未満であり、前記シリンジの容量が20ml又は50mlの場合は0.5ml以上かつ2.0ml未満である、
    薬液移注装置。
  9. 前記制御部は、前記針を前記容器に穿刺するとき、前記ガスケットと前記シリンジの内壁面との間に5mm以上の隙間を形成する、
    請求項8に記載の薬液移注装置。
  10. 前記第1保持部及び前記第2保持部はそれぞれ複数の前記容器及び前記シリンジを保持し、これら複数の前記容器及び前記シリンジを切替えて薬液を移注する、
    請求項8又は9に記載の薬液移注装置。
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