JP5440378B2 - 布材 - Google Patents
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Description
本発明は、布材に関する。詳しくは、通電により発熱可能な導電線材を備える布材に関する。
従来、車両用シートの着座面を構成する布材に、通電により発熱可能な複数の導電線材が織り込まれた布帛(発熱シート)が用いられているものがある(特許文献1参照)。この布帛は、その両端に帯状の金属フィルムが接着されて一対の電極が形成されており、これら電極を通じて各導電線材が通電されて発熱するようになっている。これら電極(金属フィルム)は、布帛中に設けられた各導電線材に跨って設けられるように、それぞれ、布帛の一辺全域に亘って長尺状に形成されている。
上記各電極(金属フィルム)と各導電線材とを電気的に接続するためには、例えば、布材に導電性粉末を混ぜた導電性粉末分散液を含浸させて、布材中の各導電線材を実質的に布材の表面まで導通させた状態とすることにより、各導電線材と各電極(金属フィルム)とを電気的に良好に接続することができる。しかし、このような導電性粉末分散液の含浸を上記各電極(金属フィルム)と同じように、布帛の一辺全域に亘って施すと、含浸に伴う硬化により布材の柔軟性が損なわれてしまうため、好ましくない。本発明は、上記問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、布材に導電性粉末分散液を含浸させて各導電線材を布材の表面に設けられる電極(導電性を備える接続体)と電気的に接続させられるようにしても、導電性粉末分散液の含浸に伴う布材の硬化の影響を小さく抑えられるようにすることにある。
第1の発明は、通電により発熱可能な導電線材を備える布材である。導電線材は、布材の特定の面内方向に複数並んで設けられている。布材には、布材への導電性粉末を混ぜた導電性粉末分散液の含浸により、各導電線材を布材の表面と電気的に導通させる含浸部が形成されている。含浸部は、各導電線材の配置間に隙間が形成されるように各導電線材の並ぶ方向に断続的に複数並んで形成されて、各導電線材を布材の表面に接着される導電性を備える接続体と電気的に接続させる構成となっている。
この第1の発明によれば、含浸部が各導電線材の配置間に隙間が形成されるように布材に断続的に並んで形成されることにより、上記隙間の領域では布材には導電性粉末分散液の含浸に伴う硬化が起こらなくなる。したがって、布材に導電性粉末分散液を含浸させて各導電線材を布材の表面に設けられる導電性を備える接続体と電気的に接続させられるようにしても、導電性粉末分散液の含浸に伴う布材の硬化の影響を小さく抑えることができ、布材の柔軟性を損なわせにくくすることができる。
第2の発明は、上述した第1の発明において、布材が車両用シートの着座面を構成する表皮材として適用され、各導電線材が布材のシート前後方向に並んで配設され、各含浸部が布材のシート幅方向の端部に形成されている。
この第2の発明によれば、各含浸部が布材のシート幅方向の端部に形成されることにより、布材の一部に導電性粉末分散液の含浸に伴う硬化が生じても、この硬化する部位が車両用シートへの着座者に干渉しにくくなるため、車両用シートの着座感が阻害されないようにすることができる。
第3の発明は、上述した第1又は第2の発明において、接続体が布材と互いに熱溶着可能な同一素材から成る布帛に導電糸が織り込まれて形成されており、接続体の各含浸部の間の隙間に跨って設けられる部位が布材の表面に一体的に熱溶着されて設けられている。
この第3の発明によれば、布材と互いに熱溶着可能な同一素材から成る接続体を、各含浸部の間の隙間内において布材の表面に一体的に熱溶着させる構成とすることにより、接続体と導電性粉末分散液が含浸された含浸部との間で十分な接着強度が確保できなくても、互いに溶着されやすい同一素材の接続体と布材との接着によって接着強度を担保することができる。
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
始めに、実施例1の布材10の構成について、図1〜図4を用いて説明する。本実施例の布材10は、図1〜図2に示すように、車両用シート1のシートクッション2の着座面を構成する表皮材として構成されている。この布材10は、その内部に、通電により発熱可能な複数本の導電線材11が埋設されており、各導電線材11を通電させて発熱させることにより、ヒータとして機能させられるようになっている。
上記導電線材11は、図2に示すように、それぞれ、布材10の内部において、シート幅方向LRに向かって真っ直ぐに延びるように配設されており、このような導電線材11が布材10の内部にシート前後方向FRに複数本並べられて設けられている。これら導電線材11は、炭素繊維のフィラメント(導電糸)を複数本束状に撚り合わせて構成したものである。なお、導電線材11は、この他にも、金属製又は合金製の導電糸やメッキ線材から成るものであってもよく、これら線材を複数本束状に撚り合わせて構成したものであってもよい。
布材10は、ポリエチレンテレフタレート(PET)の仮撚加工糸を織って構成したもの(布帛)である。なお、布材10は、この他にも、各種の絶縁繊維から成る線材によって作製される織物、編物、不織布又は組紐(組物)によって構成したものであってもよい。上記絶縁繊維としては、植物系又は動物系の天然繊維、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる化学繊維、或いはこれらの混紡繊維から成るものが挙げられる。
上記導電線材11は、布材10を織り込んで作製する際に、布材10の線材が織り込まれる所定間隔毎に打ち込まれることで、布材10の内部に埋設されている。なお、導電線材11は、布材10の裏面に貼り付けられて設けられるものであってもよい。上記布材10の裏面には、パッド材2P(図3参照)及び図示しない裏基布が設けられている。上記布材10は、各導電線材11に電気的につなげられた通電手段12によって、各導電線材11を通電させて発熱させることによりヒータとして機能するのであるが、このとき、各導電線材11と通電手段12とを互いの接続抵抗がより小さくなるように電気的につなげることが望まれる。
以下、上記各導電線材11と通電手段12とを互いに接続抵抗が小さくなるように電気的につなげる構成について詳しく説明する。ここで、図2〜図3に示すように、布材10のシート幅方向LRの両端部には、導電性粉末を混ぜた導電性粉末分散液の含浸により、布材10中の各導電線材11を布材10の表面に電気的に導通させる含浸部10Aが形成されている。これら含浸部10Aは、図3に示すように、各導電線材11の配置間にそれぞれ隙間10Bが形成されるように各導電線材11の並ぶ方向に断続的に複数並んで形成されている。
ここで、上記布材10に導電性粉末を混ぜた導電性粉末分散液を含浸させて含浸部10Aを形成する方法について説明する。本実施例の導電性粉末は、平均粒径が0.1〜20μmの炭素粉末、金属粉末、導電性金属酸化物粉末及び金属で被覆された無機粉末からなる群より選ばれた1種又は2種以上の粉末が好ましい。導電性粉末の平均粒径を上記範囲にしたのは、下限値未満の粉末は製造が困難で取扱いにくく、また上限値を超える粉末は繊維同士の間に導入することが困難で繊維に付着しにくいためである。炭素粉末としては、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック系の粉末、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等のカーボンファイバを粉砕した粉末、天然グラファイト、人工グラファイト等のグラファイト系の粉末が例示される。また金属粉末としては、Ni、Au、Ag、Cu、Fe等の粉末が例示される。また導電性金属酸化物粉末としては、ZnO、SnO2等が例示され、更に金属が被覆された無機粉末としては、雲母、アルミナ、ガラス等の無機粉末にAg、Ni等の金属をコーティング又はめっきした粉末が例示される。
次に、水100重量%に対して導電性粉末を1〜50重量%分散させて導電性粉末分散液を調製する。導電性粉末の含有量は所望の体積電気抵抗率を得るために決められる一方、布材10の形態又は組織に依存して決められる。粗い組織の場合には含有量を多くし、緻密な組織の場合には含有量を少なくする。導電性粉末が下限値未満では所望の体積電気抵抗率が得られず、上限値を超えると導電性粉末が布材10を構成する繊維同士の間及び/又は糸同士の間以外に付着するため、布材10から導電性粉末が落下しやすくなる。水に直接導電性粉末を分散させずに、導電性粉末を予め分散剤、沈殿防止剤、増粘剤とともに水に混合してインクの形態にしておき、水にこのインクを添加混合して導電性粉末分散液を調製してもよい。
また導電性粉末の布材10への固着力を増加させるために、分散液に水溶性バインダ又は水系バインダを含有させることが好ましい。例えば、バインダは、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ケラチン、キトサン、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂エマルション、アクリル系樹脂エマルション、グリオキザール系樹脂エマルション、エポキシ系樹脂エマルション、酢酸ビニル系樹脂エマルション、シリコーンアクリルポリマーエマルション、変性エチレン酢酸ビニル共重合体系エマルション、ポリオレフィン系樹脂エマルション、ポリエステル系樹脂エマルション、ウレタン系樹脂エマルション及び水溶性ウレタンから選ばれた1種又は2種以上の物質である。
図4に示すように、上記各含浸部10Aが形成された布材10のシート幅方向LRの両端部の表面上には、上記各含浸部10Aに跨るようにシート前後方向FRに長尺状に延びる導電性を備える帯状の接続体12Aが設けられて、各接続体12Aが各側の含浸部10Aとこれらの間の隙間10Bに露呈する布材10の表面とに跨ってそれぞれ熱溶着により一体的に接着されて、各含浸部10Aと電気的に接続されている。ここで、各接続体12Aは、布材10と同じ、ポリエチレンテレフタレート(PET)の仮撚加工糸を織って構成したもの(布帛)に、導電糸を複数本打ち込んで構成したものとなっている。なお、接続体12Aは、この他にも、各種の絶縁繊維から成る線材によって作製される織物、編物、不織布又は組紐(組物)によって構成したものに対し、導電糸を複数本打ち込んで構成したものであってもよい。
上記各接続体12Aは、詳しくは、各含浸部10Aの表面と各含浸部10Aの間の隙間10Bに露呈する布材10の表面とにそれぞれ面接触するように設けられて、各種の加熱手段によりこれら各面に溶着されることにより、各導電糸を各含浸部10Aにそれぞれ接触させた状態となって各含浸部10Aに一体的に接着されると共に、各含浸部10Aの間の隙間10Bに露呈する布材10の表面にもそれぞれ一体的に面接着されている。より詳しくは、各接続体12Aは、そのシート幅方向LRの寸法(横幅)が、各含浸部10Aの横幅よりも長尺に形成されており、各含浸部10Aよりもシート幅方向LRの内方側に張り出した状態に設けられて、この張り出した部位も布材10の表面に一体的に面接触した状態に溶着されている。これにより、各接続体12Aが各含浸部10Aに電気的に接続された状態として、布材10に対してより強固に接着された状態となっている。なお、接続体12Aを上記各含浸部10Aの表面と各含浸部10Aの間の隙間10Bに露呈する布材10の表面とに面接着させる手段としては、上記溶着の他、縫合や接着剤を用いた接着などの各種の接着手段を用いることができる。
図2に示すように、上記各接続体12Aには、それぞれ、電源ケーブル12Bが電気的に接続された状態となって設けられている。これら電源ケーブル12Bは、それぞれ、図示しない直流電源の正極又は負極と電気的に接続されており、この接続により、各導電線材11が、上記直流電源に対して並列に並ぶ並列回路を構成するように電気的に接続された状態となっている。これにより、各導電線材11を、比較的低い電圧によって通電させて発熱させられるようになっている。
このように、本実施例の布材10によれば、含浸部10Aが各導電線材11の配置間に隙間10Bが形成されるように布材10に断続的に並んで形成されることにより、上記隙間10Bの領域では布材10には導電性粉末分散液の含浸に伴う硬化が起こらなくなる。したがって、布材10に導電性粉末分散液を含浸させて各導電線材11を布材10の表面に設けられる導電性を備える接続体12Aと電気的に接続させられるようにしても、導電性粉末分散液の含浸に伴う布材10の硬化の影響を小さく抑えることができ、布材10の柔軟性を損なわせにくくすることができる。また、各含浸部10Aが布材10のシート幅方向LRの端部に形成されることにより、布材10の一部に導電性粉末分散液の含浸に伴う硬化が生じても、この硬化する部位が車両用シート1への着座者に干渉しにくくなるため、車両用シート1の着座感が阻害されないようにすることができる。また、布材10と互いに熱溶着可能な同一素材から成る接続体12Aを、各含浸部10Aの間の隙間10B内において布材10の表面に一体的に熱溶着させる構成とすることにより、接続体12Aと導電性粉末分散液が含浸された含浸部10Aとの間で十分な接着強度が確保できなくても、互いに溶着されやすい同一素材の接続体12Aと布材10との接着によって接着強度を担保することができる。
続いて、実施例2の布材10の構成について、図5を用いて説明する。なお、本実施例では、実施例1で示した布材10と実質的に構成が同じとなる箇所については、それらに同一の符号を付して説明を省略し、構成が異なる箇所について異なる符号を付して詳細に説明することとする。
本実施例の布材10は、そのシート幅方向LRの両端部に形成されたシート前後方向FRに並ぶ複数の含浸部10A同士が、布材10の表面に導電性粉末分散液が含浸されて形成された各繋ぎ部12Cによって、互いに電気的に接続された構成となっている。ここで、繋ぎ部12Cが本発明の接続体に相当する。そして、シート前端側に形成された左右両側の各含浸部10Aには、電源ケーブル12Bが電気的に接続されており、上記各繋ぎ部12Cを通じて各側の含浸部10Aが各側の電源ケーブル12Bに対して電気的に接続された構成となっている。詳しくは、上記各繋ぎ部12Cは、各側の含浸部10Aのシート幅方向LRの外側の縁部同士を繋ぐ細長状の形に形成されており、これらのシート幅方向LRの内方側の部位に、各含浸部10Aの間に空けられる隙間10Bが確保されている。
このように、各含浸部10A同士を電気的に接続する繋ぎ部12Cを、各含浸部10Aのシート幅方向LRの外側の縁部同士を繋ぐ細長状の形に形成したことにより、布材10に導電性粉末分散液の含浸層がシート前後方向FRの広い領域に亘って連続的に形成される構成となっても、各含浸部10Aの間に隙間10Bが設定されるため、導電性粉末分散液の含浸に伴う布材10の硬化の影響を小さく抑えることができ、布材10の柔軟性を損なわせにくくすることができる。
以上、本発明の実施形態を二つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。上記各実施例では、布材10を車両用シート1のシートクッション2の表皮材として用いたものを例示したが、シートバック3やヘッドレストやオットマン等の着座者が接触する部位の表皮材を構成するものとして用いてもよい。また、本発明の布材は、車両用シートの表皮材への適用に限定されず、使用者に温熱感を与えるために使用される種々の布材に適用することができるものである。また、布材に設けられる導電線材の本数は、使用目的に応じて適宜設定されるものであり、特に限定されない。また、上記各実施例では、含浸部10Aが導電線材11一本一本に対して個別に形成されたものを例示したが、一部が複数の導電線材に跨ってこれらをひとまとめに布材の表面と電気的に導通させるように形成されたものであってもよい。
1 車両用シート
2 シートクッション
2P パッド材
3 シートバック
10 布材
10A 含浸部
10B 隙間
11 導電線材
12 通電手段
12A 接続体
12B 電源ケーブル
12C 繋ぎ部(接続体)
LR シート幅方向
FR シート前後方向
2 シートクッション
2P パッド材
3 シートバック
10 布材
10A 含浸部
10B 隙間
11 導電線材
12 通電手段
12A 接続体
12B 電源ケーブル
12C 繋ぎ部(接続体)
LR シート幅方向
FR シート前後方向
Claims (3)
- 通電により発熱可能な導電線材を備える布材であって、
前記導電線材は前記布材の特定の面内方向に複数並んで設けられ、前記布材には該布材への導電性粉末を混ぜた導電性粉末分散液の含浸により前記各導電線材を前記布材の表面と電気的に導通させる含浸部が形成されており、該含浸部は前記各導電線材の配置間に隙間が形成されるように前記各導電線材の並ぶ方向に断続的に複数並んで形成されて前記各導電線材を前記布材の表面に接着される導電性を備える接続体と電気的に接続させる構成となっていることを特徴とする布材。 - 請求項1に記載の布材であって、
前記布材が車両用シートの着座面を構成する表皮材として適用され、前記各導電線材が前記布材のシート前後方向に並んで配設され、前記各含浸部が前記布材のシート幅方向の端部に形成されていることを特徴とする布材。 - 請求項1又は請求項2に記載の布材であって、
前記接続体が前記布材と互いに熱溶着可能な同一素材から成る布帛に導電糸が織り込まれて形成されており、前記接続体の前記各含浸部の間の隙間に跨って設けられる部位が前記布材の表面に一体的に熱溶着されて設けられていることを特徴とする布材。
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