以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
図1は、本実施形態に係る電子部品連を示す平面図である。電子部品連100は、例えば、ロータリーヘッドタイプやロボットタイプといったワンバイワン方式の電子部品実装機に、チップ型電子部品1を搬送するためのものである。電子部品連100は、収納帯(電子部品連用収納帯)10と、収納帯10が備える収納穴13に収納された電子部品1と、を含む。収納帯10は、紙製の部材(テープ)であり、複数の送り孔11と、複数の収納穴13とを有している。収納帯10を紙製とすることにより、収納帯10の製造コストを低減することができる。
送り孔11は、自動搬送機で電子部品連100を搬送するための孔であり、収納帯10を貫通する底なしの孔である。収納穴13は、チップ型電子部品1を収納するための穴であり、収納帯10の厚さ方向の途中まで形成された底付の穴である。本実施形態において、収納帯10は、紙で製造される。収納穴13は、収納帯10をプレス成型することにより収納帯10に形成される。収納穴13は、収納帯10を打ち抜き成型し、一方の開口部に封止材を設けることによって形成してもよい。送り孔11は、収納帯10を打ち抜き成型することにより収納帯10に形成される。
収納穴13は、平面視が長方形の開口部を有する穴である。収納穴13は、開口部の短手方向が収納帯10の長手方向と平行になるように配置される。そして、複数の収納穴13は、収納帯10の長手方向に向かって等間隔で一列に配列される。送り孔11も、収納帯10の長手方向に向かって等間隔で一列に配列される。電子部品連100は、それぞれの収納穴13にチップ型電子部品1が収納された状態で、カバーテープ12が収納帯10の表面に貼り付けられて、リールに巻き付けられる。
チップ型電子部品1の実装時には、前記リールから電子部品連100が引き出されて、マウンタの位置まで搬送される。図1の矢印Mで示す方向が、搬送方向である。マウンタの位置において、カバーテープ12が収納帯10から剥がされて、収納穴13に収納されたチップ型電子部品1が露出するので、マウンタのノズルがチップ型電子部品1を吸着できるようになる。次に、図1に示す電子部品連100の収納穴13について説明する。
図2は、本実施形態に係る電子部品連が有する収納穴の斜視図である。収納穴13は、4つの内壁面13S、13S、13T、13Tと1つの底面13Bとで囲まれた空間13i、及び底面13Bと対向する開口部14を有する。開口部14から、図1に示すチップ型電子部品1が収納穴13へ出入りする。空間13iは、電子部品1を収納する。上述したように、開口部14は、平面視が長方形であり、長手方向(図2の矢印zで示す方向)及び短手方向(図3の矢印xで示す方向)がある。
収納穴13の長手側に存在する内壁面(長手側内壁面)が13S、短手側に存在する内壁面(短手側内壁面)が13Tである。長手側内壁面13S、13S同士は対向して配置され、また、短手側内壁面13T、13T同士は対向して配置される。一方の長手側内壁面13Sと両方の短手側内壁面13T、13Tとは互いに略直交し、他方の長手側内壁面13Sと両方の短手側内壁面13T、13Tとは互いに略直交する。本実施形態において、便宜上、短手方向xを幅方向、短手方向yを深さ方向という。収納穴13は、長手方向における寸法を長さ、幅方向における寸法を幅、深さ方向における寸法を深さという。次に、チップ型電子部品1について説明する。
図3は、チップ型電子部品の斜視図である。図4は、チップ型電子部品の平面図である。チップ型電子部品(以下、必要に応じて電子部品という)1は、4つの側面(側部)4と、これらにつながる略正方形の両端面を底面とする四角柱形状の部品である。端子電極2A、2Bは、それぞれ電子部品1の両端部に形成される。端子電極2A、2Bは、それぞれ端面電極2At、2Btと、側部電極2As、2Bsとを有する。端面電極2At、2Btは、電子部品1の両端面に形成されるので、その形状は略正方形である。なお、端面電極2At、2Btの形状は略正方形に限定されるものではなく、長方形、台形、平行四辺形その他の四角形であってもよい。電子部品1は、例えば、チップコンデンサ、チップインダクタ、チップ抵抗、フィルター、バリスタ、サーミスタ等であるが、これらに限定されるものではない。
図3、図4に示すように、電子部品1が有するそれぞれの側面4の端面電極2At、2Bt側には、それぞれ側部電極2As、2Bsが形成される。側部電極2Asは端面電極2Atと電気的に接続され、側部電極2Bsは端面電極2Btと電気的に接続される。そして、側部電極2As、2Bsは、電子部品1が搭載される基板の電極(基板側電極)とはんだや導電性ペースト等によって電気的に接続される。本実施形態において、側部電極2As、2Bsは、すべての側面4へ一体に形成されるが、すべての側面4のうち少なくとも一つに形成されていればよい。このように、電子部品1は、側面4に設けられた側部電極2As、2Bsによって基板電極と接合される、いわゆる表面実装型(SMD:Surface Mount Device)の電子部品である。
電子部品1は、平面視が略矩形の形状(それぞれの側面4の形状が略矩形)であり、長手方向(図3の矢印Zで示す方向)及び短手方向(図3の矢印X又はYで示す方向)がある。本実施形態において、便宜上、短手方向Xを幅方向、短手方向Yを高さ方向という。本実施形態においては、電子部品1の長手方向(図3の矢印Zで示す方向)における寸法を長さL、幅方向(図3の矢印Xで示す方向)における寸法を幅W、高さ方向(図3の矢印Yで示す方向)における寸法を高さTとする。電子部品1が収納穴13に収納されると、電子部品1の長手方向(Z方向)と幅方向(X方向)と高さ方向(Y方向)とは、それぞれ、図2に示す収納穴13の長手方向(z方向)と幅方向(x方向)と高さ方向(y方向)とに一致する。
電子部品1は、寸法がいわゆる0402以下である。ここで、本発明における電子部品1の寸法0402とは、図3に示す電子部品1の長さLが0.4mm、幅W及び高さTが0.2mmであることを意味する。なお、これらの寸法は公称値であり、実際は適切な公差が付される。
図5、図6は、電子部品連からマウンタのノズルで電子部品を取り出す過程を示す模式図である。図5は、マウンタのノズル(マウンタノズル)30が正常に電子部品1を吸着できた状態を示しており、図6は、マウンタノズル30が正常に電子部品1を吸着できなかった状態の一例を示している。マウンタノズル30は、真空チャックを有する吸着式の自動実装装置である。マウンタノズル30は、電子部品1を吸着して保持し、基板の表面に戴置する。マウンタノズル30が電子部品1を保持するにあたっては、収納帯10の収納穴13内に収納された電子部品1の上方にマウンタノズル30が移動してきて電子部品1を吸着する。
マウンタノズル30が正常に電子部品1を吸着できた場合、図5に示すように、電子部品1は、長手方向がマウンタノズル30の吸着面と平行になる正しい姿勢で吸着される。一方、マウンタノズル30が正常に電子部品1を吸着できない場合(吸着不良)は、例えば、図6に示すように、電子部品1の長手方向がマウンタノズル30の吸着面に対して角度を有する姿勢で吸着される。このような姿勢で吸着された電子部品1は、端子電極を基板上の対応する端子に戴置することが困難となり、リフローにおいて実装不良を引き起こすおそれがある。したがって、吸着不良の電子部品1は、マウンタで吸着不良として廃棄される。なお、吸着不良には、マウンタノズル30が電子部品1を吸着できない未吸着もある。
特に、電子部品1の寸法が0402以下になると、寸法が小さくなるため、収納穴13の形状の影響を非常に受けやすく、その結果として吸着不良が発生しやすい。寸法が0402の電子部品1に吸着不良が発生する原因としては、収納穴13から電子部品1が取り出される際に電子部品1が収納穴13に引っ掛かっていることが想定される。特に、本実施形態では、紙製の収納帯10を用い、かつ電子部品1の寸法が非常に小さいため、収納穴130の形状が安定しないことや収納穴13の内側へ紙の繊維が突出すること等に起因して、電子部品1が収納穴13に引っ掛かる現象が発生しやすくなると考えられる。
図7は、収納穴をその長手方向と直交する平面で切った状態を示す断面図である。図8は、収納穴の開口部の平面図である。図9は、図7のa−a矢視図である。図9は、収納穴13の深さ方向における中央部付近の断面を示している。収納穴13の開口部14は、図8に示すように、形状が略長方形で、寸法は設計値と略同等になる。一方、収納穴13の内壁面は、図9に示すように、毛羽やバリの影響によって、開口部14の形状と比較して長方形から外れた形状であり、寸法は開口部14よりも小さくなる。本実施形態においては、紙製の収納帯10を用い、プレス成型によって収納穴13を形成する。このため、プレス成型時に収納帯10が変形することによって、収納穴13はその内側へ変形し、また、収納穴13の内側へ紙の繊維が突出することによって、収納穴13の開口部14と内部とで寸法及び形状が異なってしまう。これが原因で、電子部品1が収納穴13に引っ掛かり、吸着不良を引き起こして、実装性能(例えば、電子部品1を基板に実装する際の生産性や成功率)の低下を招くことがある。
一方、電子部品1が紙の繊維(毛羽やバリ)に引っ掛からないように収納穴13の寸法を大きくすると、収納穴13の中で電子部品1が偏ってしまい、マウンタノズル30の中心位置と電子部品1の中心位置とがずれやすくなるため、電子部品1の端部を吸着してしまう立ち吸着不良を引き起こすおそれがある。また、収納穴13が大きすぎる場合、電子部品連を運送する際等に発生する振動によって収納穴13の内部で電子部品1が転がってしまうことや、収納穴13を封止しているカバーテープ12を剥離する際に発生する振動によって、電子部品1が収納穴13から飛び出してしまい、吸着不良を引き起こすおそれも大きくなる。
収納穴13の寸法及び形状は、収納帯10の表面、すなわち、収納穴13の開口部14で規定するのが一般的である。しかし、上述したように、収納穴13の内壁は、開口部14よりも寸法が小さくなるため、開口部14の寸法を基準として収納穴13と電子部品1とのクリアランスを規定しても、収納穴13の内部に電子部品1が引っ掛かる現象を十分に抑制できない。そこで、本実施形態では、収納穴13の開口部14ではなく、収納穴13の内壁の寸法を用いて収納穴13と電子部品1とのクリアランスを規定して、収納穴13に毛羽やバリがある場合でも、電子部品1を安定して収納し、かつ吸着できるようにするようにした。
図10は、電子部品の寸法と、収納穴の寸法とを示す説明図である。図11、図12は、収納穴の深さを規定する際の位置を示す説明図である。図13は、電子部品が収納穴に収納された状態におけるクリアランスの説明図である。図14は、電子部品が収納穴に収納された状態におけるクリアランスの説明図である。図10に示すように、電子部品1は、端子電極2A、2Bの幅Wtの方が、両方の端子電極2A、2Bの間における側面4の幅Wsよりも大きくなる。電子部品1の長さLは、電子部品1の両方の端面間における距離である。
収納穴13は、開口部の長さをB、幅をAとする。また、収納穴13の内部において、最も短い長さをB1、電子部品1の両方の端子電極2A、2Bのうちいずれか一方と対向する部分での最も短い幅をA1、電子部品1の側面4と対向する部分の幅をA2とする。収納穴13の長手側内壁面13Sが、電子部品1の一方の端子電極2Aと対向する部分は、一方の短手側内壁面13TからB1/3までの領域であり、電子部品1の他方の端子電極2Bと対向する部分は、他方の短手側内壁面13TからB1/3までの領域である。収納穴13の内壁面が、電子部品の側面4と対向する部分は、一方の短手側内壁面13TからB1/3離れた位置からB1/3までの領域である。
図11、図12に示すように、収納穴13の深さKは、収納帯10の表面10pから収納穴13の底面13Bまでの距離である。収納穴13の深さKは、収納穴13の底面13Bの中心で規定する。底面13Bの中心とは、収納穴13の底面13Bにおける幅の中心、かつ底面13Bにおける長さの中心である。すなわち、底面13Bの中心は、収納穴13の底面13Bにおける幅の二分線と、底面13Bにおける長さの二分線との交点である。実際上は、収納穴13の底面13Bの中心を、開口部14の中心として取り扱ってもよい。開口部14の中心は、収納穴13の開口部14における幅Aの中心、かつ開口部14における長さBの中心である。すなわち、開口部14の中心は、収納穴13の開口部14における幅Aの二分線と、開口部14における長さBの二分線との交点である。開口部14は、寸法及び形状が略設計値になっているので、中心を特定しやすくなる。
図13に示すように、幅方向における電子部品1と収納穴13(より具体的には、電子部品1の幅方向において電子部品1と対向する内壁、すなわち、長手側内壁面13S)とのクリアランス(幅方向クリアランス)Acは、幅方向において収納穴13と電子部品1との間隔が最も小さくなる部分である。図10に示すように、電子部品1は、端子電極2A、2Bの幅Wtの方が側面4の幅Wsよりも大きい。このため、通常は、収納穴13の長手側内壁面13Sと、電子部品1の端子電極2A、2B(より具体的には、側部電極2As、2Bs、図3及び図4参照)のいずれか一方とが対向する部分において、収納穴13と電子部品1との間隔が最も小さくなる。
このように、本実施形態では、収納穴13と電子部品1との間隔が最も小さくなると考えられる、収納穴13の長手側内壁面13Sと電子部品1の端子電極2A、2Bとの間で幅方向クリアランスAcを規定する。これにより、電子部品1と収納穴13との干渉が最も発生しやすいと予測される部分で必要なクリアランスを確保できるので、電子部品1の正しい姿勢を保持した状態で電子部品1を収納穴13から取り出すことができる。その結果、吸着不良を低減できるので、実装性能が向上する。
本実施形態においては、収納穴13の幅A1と、電子部品1の端子電極2A(又は2B)の幅Wtとの差(=A1−Wt)が、電子部品1の幅方向における、電子部品1と収納穴13との幅方向クリアランスAcとなる。収納穴13の幅A1は、収納穴13の長手側内壁面13Sと、電子部品1の端子電極2A(又は2B)とが対向する部分における、対向する長手側内壁面13Sの最も小さい間隔である。図13に示すように、長手側内壁面13Sは、収納穴13の深さ方向における中央位置が収納穴13の内側に向かって突出しているので、この部分において幅A1を規定する。したがって、幅方向クリアランスAcも、収納穴13の深さ方向における中央位置で規定する。幅方向クリアランスAcが負の値をとるとき、Wt>A1となる。この場合、電子部品1が有する端子電極2A(又は2B)の幅Wtの方が、収納穴13の幅A1よりも大きくなる。
深さ方向における収納穴13と電子部品1とのクリアランス(深さ方向クリアランス)Kcは、収納穴13の深さKと電子部品1の高さTとの差(=K−T)である。上述したように、電子部品1は、端子電極2A、2Bの幅Wtの方が側面4の幅Wsよりも大きい。このため、電子部品1の高さTは、端子電極2A(又は2B)の高さで規定する。深さ方向クリアランスKcが負の値をとるとき、T>Kとなる。この場合、電子部品1の高さTの方が、収納穴13の深さKよりも大きくなる。すなわち、電子部品1の一部は、収納穴13から突出する。
図14に示すように、長手方向における収納穴13と電子部品1とのクリアランス(長手方向クリアランス)Bcは、長手方向において電子部品1と収納穴13との間隔が最も小さくなる部分である。長手方向クリアランスBcは、収納穴13の最も短い長さB1(対向する短手側内壁面13Tの最も小さい間隔)と、電子部品1の長さLとの差(=B1−L)である。図14に示すように、短手側内壁面13Tは、収納穴13の深さ方向における中央位置が収納穴13の内側に向かって突出しているので、この部分が収納穴13の最も短い長さB1となる。したがって、収納穴13の深さ方向における中央位置で長さB1を規定する。長手方向クリアランスBcも、収納穴13の深さ方向における中央位置で規定する。長手方向クリアランスBcが負の値をとるとき、L>B1となる。この場合、電子部品1が有する端子電極2A(又は2B)の長さLの方が、収納穴13の長さB1よりも大きくなる。
幅方向クリアランスAcは、0.005mm以上0.030mm以下が好ましく、深さ方向クリアランスKcは、−0.010mm以上0.030以下あることが好ましい。また、長手方向クリアランスBcを0.005mm以上0.030mm以下とすることがさらに好ましい。この範囲であれば、寸法が0402の電子部品1を収納穴13に収納し、マウンタで吸着させた場合、吸着不良の発生数が低下して吸着率が十分に向上するので、その結果として実装性能が向上する。
[評価例]
複数の寸法の電子部品1と複数の寸法の収納穴13との組み合わせで、吸着率を評価した。作製した電子部品1は、寸法が0402のチップコンデンサである。評価においては、幅(高さ)が0.210mm、0.215mm、0.225mmのチップコンデンサと、幅(短手方向の寸法)が0.250mm、0.230mm、0.225mm、0.215mm、深さが0.260mm、0.240mm、0.230mm、0.220mm、0.215mmの収納穴13を組み合わせて、幅方向クリアランスAcが−0.010mmから0.040mm、深さ方向クリアランスKcが−0.010mmから0.050mmの電子部品連100を試作した。電子部品連100の収納穴13へ電子部品1が収納された状態を確認した後、マウンタで電子部品1を実際に吸着させて吸着率を評価した。
吸着タクトは0.066秒/個である。吸着高さは、収納帯10の表面10pから0.2mm離れた位置とした。収納状態は、目視検査によって異常の有無を確認し、異常がない場合を合格、異常があった場合を不合格とした。また、マウンタの出力データから得られた吸着率が99・95%を超えるものを合格とした。吸着率は、所定個数(本評価例では8000個)の電子部品1を吸着しようとした場合において、吸着不良が発生せずに正しい姿勢で電子部品1を吸着した回数の割合(%)である。吸着不良は、マウンタのノズルが電子部品1を吸着した際の状態を撮像し、得られた画像から、吸着不良の種類(未吸着、立ち吸着、吸着位置ずれ)を特定するとともに、吸着不良の回数を計数した。吸着不良の回数をNe、吸着しようとした電子部品1の個数をNとすると、吸着率は、(N−Ne)/N×100(%)で求めることができる。幅方向クリアランスAcの評価結果を表1に、深さ方向クリアランスKcの評価結果を表2に示す。
図15は、幅方向クリアランスと深さ方向クリアランスとの評価結果を示す図である。図15の黒丸近傍に記載された数値は、吸着率である(以下、同様の記載でも同じ)。幅方向クリアランスAcが0.005mmを下回る場合(図15のR1で示す領域)、収納穴13で毛羽やバリに電子部品1が引っ掛かった結果、吸着不良、立ち吸着が多発し、吸着率が99.95%以下に低下した。幅方向クリアランスAcが0.030mmを上回る場合(図15のR3で示す領域)、吸着位置ズレ、立ち吸着が多発し、吸着率が99.95%以下に低下した。
深さ方向クリアランスKcが0.005mm以下の場合、収納穴13に収納されている電子部品1が斜めの状態で収納穴13に留まっていた。このように、深さ方向クリアランスKcが0.005mmを下回る場合(図15のR1の一部、及びR2で示す領域)、電子部品1を収納穴13へ収納する際に不良が発生した。吸着率自体は99.95%を超えているため、合格である。深さ方向クリアランスKcが0.030mmを超える場合(図15のR4で示す領域)、未吸着が多発し、吸着率は99.95%以下に低下した。上記結果から、幅方向クリアランスAcが0.005mm以上0.030mm以下、かつ深さ方向クリアランスKcが−0.010mm以上0.030mm以下である収納穴13であれば、吸着不良の発生を抑制することができる。また、深さ方向クリアランスKcを0.005mm以上0.030mm以下とすれば、さらに吸着不良の発生を抑制することができるので、好ましい。
図16は、電子部品の頂部の状態を示す模式図である。図17は、幅方向クリアランスと深さ方向クリアランスとの評価結果を示す図である。この評価においては、電子部品1の角部における丸みの影響を評価した。電子部品1の角部とは、図16に示すように、電子部品1の一つの側部電極2As(又は2Bs)と、一つの端面電極2At(又は2Bt)とが接続する部分である。角部における丸みは、角部のr(半径)で評価する。側面4及び端面電極2At(又は2Bt)と直交する面で電子部品1を切った場合の断面において、角部に内接する円の半径をrとする。
収納穴13へ収納される、寸法が0402の電子部品1は、角部のrが0.025mm、0.020mm、0.017mmのチップコンデンサである。このような電子部品1を収納穴13に収納した電子部品連100を試作し、電子部品1の角部の丸みが吸着率へ与える影響を評価した。この評価においては、幅方向クリアランスAcが−0.010mmから0.040mm、深さ方向クリアランスKcが−0.010mmから0.050mmの電子部品連100が試作された。
図17の黒丸は、rの平均値が0.0243mmの電子部品の評価結果であり、黒四角は、rの平均値が0.0206mmの電子部品の評価結果であり、黒三角は、rの平均値が0.0174mmの電子部品の評価結果である。rの平均値は、10個の電子部品の平均値である。なお、1個の電子部品について角部は8個存在するが、そのうち4個の角部のrを求めた。したがって、rの平均値は、40個の角部のrを平均した値である。角部は、超深度測定器を用いて50倍の倍率で観測され、rが測定された。図17から、幅方向クリアランスAcが0.005mm以上0.030mm以下、深さ方向クリアランスKcが0.005mm以上0.030mm以下である収納穴13であれば、そこに収納されている電子部品1の角部のrが大きくても吸着率は低下しないことが分かる。
図18、図19は、電子部品を、その長手方向と直交する平面で切った場合における断面形状を示す断面図である。図20は、幅方向クリアランスと深さ方向クリアランスとの評価結果を示す図である。図18に示す電子部品1aは、長手方向と直交する平面で切った場合における断面形状が平行四辺形のチップコンデンサである。図19に示す電子部品1bは、長手方向と直交する平面で切った場合における断面形状が台形のチップコイルである。このような電子部品1a、1bを用いて電子部品連100を作製し、電子部品の断面形状が吸着率へ与える影響を評価した。
変形量は、断面形状が正方形である場合(一辺の長さがWt)を基準として、この基準からのズレ量Wta、Wtbを変形量とした。電子部品1a(断面が平行四辺形形状)は、変形量Waが0.004mm、0.006mm、0.010mmのものを作製した。電子部品1b(断面が台形形状)は、変形量Wbが0.008mmのものを作製した。これらの電子部品1a、1bを用いて、幅方向クリアランスAcが−0.010mmから0.040mm、深さ方向クリアランスKcが−0.010mmから0.050mmの電子部品連100が試作された。幅方向クリアランスAcは、A1−(Wt+Wta)又はA1−(Wt+Wtb)である。
図20の黒丸は、断面形状が正方形の電子部品の評価結果である(吸着率99.96%、100%)。黒四角は、断面形状が平行四辺形の電子部品1aの評価結果(吸着率99.975%)であり、黒三角は、断面形状が台形の電子部品1bの評価結果(吸着率99.98%)である。図17から、幅方向クリアランスAcが0.005mm以上0.030mm以下、深さ方向クリアランスKcが0.005mm以上0.030mm以下である収納穴13であれば、そこに収納されている電子部品の断面形状が正方形でなくても吸着率は低下しないことが分かる。
(第1変形例)
図21は、収納穴の平面図である。図22は、収納穴に電子部品を収納した状態を示す平面図である。これらの図を用いて、本実施形態の第1変形例を説明する。本実施形態に係る電子部品連100を構成する収納帯10(図1参照)が有する収納穴13は、4つの内壁面、すなわち、一対の長手側内壁面13S、13S及び一対の短手側内壁面13T、13Tを有する。そして、4つの内壁面は、図21に示すように、収納穴13の深さ方向と直交し、かつそれぞれの前記内壁面に沿った方向における中央部が、収納穴13の内側に向かって突出している。
より具体的には、対向して配置される一対の長手側内壁面13S、13Sは、収納穴13の長手方向における中央部が収納穴13の内側に向かって突出する。これによって、それぞれの長手側内壁面13S、13Sは、それぞれ長手側頂部13St、13Stを有する。また、対向して配置される一対の短手側内壁面13T、13Tは、収納穴13の幅方向における中央部が収納穴13の内側に向かって突出する。これによって、それぞれの短手側内壁面13T、13Tは、それぞれ短手側頂部13Tt、13Ttを有する。収納穴13の長手方向における中央部は、収納穴13の開口部14における長さB1(図10参照)がB1/2となる位置を中心とした±0.1×B1の範囲である。収納穴13の幅方向における中央部は、収納穴13の開口部14における幅A1(図10参照)がA1/2となる位置を中心とした±0.1×A1の範囲である(以下同様)。
このような構造により、図22に示すように、収納穴13は、端子電極2A、2Bの位置から電子部品1の長手方向中央の、端子電極2A、2Bよりも幅が狭い側面4に向かって、幅が狭くなる。そして、一対の長手側内壁面13S、13Sがそれぞれ有する長手側頂部13St、13Stが、電子部品1の一対の端子電極2A、2Bの間に配置される。このような構造により、電子部品1の一方の端子電極2Aは、平面視において、一方の短手側内壁面13T側に存在し、かつ収納穴13の長手方向に対して異なる方向に傾斜する長手側内壁面13S、13Sの一部で挟持される。同様に、電子部品1の他方の端子電極2Bは、他方の短手側内壁面13T側に存在し、かつ平面視において、収納穴13の長手方向に対して異なる方向に傾斜する長手側内壁面13S、13Sの一部で挟持される。その結果、一対の長手側内壁面13S、13Sの4箇所で電子部品1の動きを規制することができるので、収納穴13内における電子部品1の動きを効果的に抑制できる。これによって、吸着時による電子部品1の位置ずれを抑制できる。
また、収納穴13内に存在する電子部品1のそれぞれの端子電極2A、2Bには、それぞれ短手側頂部13Tt、13Ttが接する。これによって、端子電極2A、2Bに対して短手側内壁面13T、13Tが接する面積を小さくできるので、吸着時に収納穴13から電子部品1が取り出されるときの摩擦抵抗を低減できる。その結果、電子部品1を収納穴13から取り出す際には、電子部品1の姿勢変化を最小限に抑えることができるので、より確実に吸着不良を低減できる。
0.863<A1/Aとすることにより、収納穴13内において、電子部品1が、その長手方向と平行な軸周りに回転することを抑制できる。また、A1/A<0.977とすることにより、電子部品1と収納穴13との接触を抑制して、毛羽やバリに電子部品1が引っ掛かるおそれを低減できる。これによって、電子部品1を収納穴13から取り出しやすくなるとともに、電子部品1を収納穴13から取り出す際における電子部品1の姿勢変化を抑制できる。その結果、0.863<A1/A<0.977とすることによって、吸着率の低下を抑制して、実装性能を向上させることができる。
(第2変形例)
図23は、収納穴を、その長手方向と直交する平面で切った場合における断面形状を示す断面図である。図24は、収納穴を、その短手方向と直交する平面で切った場合における断面形状を示す断面図である。図25、図26は、収納穴に電子部品を収納した状態を示す断面図である。これらの図を用いて、本実施形態の第2変形例を説明する。図23、図24に示すように、4つの内壁面は、収納穴13の深さ方向における中央部が、収納穴13の内側に向かって突出している。
より具体的には、対向して配置される一対の長手側内壁面13S、13Sは、図23に示すように、収納穴13の深さ方向における中央部が収納穴13の内側に向かって突出する。これによって、それぞれの長手側内壁面13S、13Sは、それぞれ長手側頂部13Sta、13Staを有する。また、対向して配置される一対の短手側内壁面13T、13Tは、図24に示すように、収納穴13の深さ方向における中央部が収納穴13の内側に向かって突出する。これによって、それぞれの短手側内壁面13T、13Tは、それぞれ短手側頂部13Tta、13Ttaを有する。収納穴13の深さ方向における中央部は、収納穴13の深さ長さK(図13参照)がK/2となる位置を中心とした±0.1×Kの範囲である。
このような構造により、図25、図26に示すように、収納穴13の内部に配置された電子部品1は、長手側内壁面13S、13Sがそれぞれ有する長手側頂部13Sta、13Staと、短手側内壁面13T、13Tがそれぞれ有する短手側頂部13Tta、13Ttaとで支持される。これによって、端子電極2A、2Bに、長手側内壁面13S、13S、及び短手側内壁面13T、13Tが接する面積を小さくできるので、吸着時に収納穴13から電子部品1が取り出されるときの摩擦抵抗を低減できる。その結果、より姿勢変化を最小限に抑えた状態で、確実に電子部品1を収納穴13から取り出すことができるので、電子部品1の吸着不良を低減できる。
(第3変形例)
本実施形態の第3変形例を説明する。また、図23に示すように、収納穴13が有する底面13Bは、収納穴13の幅方向(一方の長手側内壁面13Sから他方の長手側内壁面13Sに向かう方向)における中央部が、収納穴13の内側に向かって突出する。このような構造により、図23に示すように、底面13Bは、底面側頂部13Btを有する。図25に示すように、収納穴13の内部に配置された電子部品1は、底面13Bが有する底面側頂部13Btで支持される。これによって、電子部品1と底面13Bとが接する面積を小さくできるので、底面13Bの表面に現れる紙の毛羽やバリが電子部品1に接触するおそれを低減できる。その結果、より確実に姿勢変化を抑えることができるので、電子部品1を収納穴13から取り出す際には、電子部品1の吸着不良を低減できる。上述した第1変形例から第3変形例は、それぞれ単独で用いてもよいし、少なくとも二つを組み合わせてもよい。
以上、本実施形態では、紙製の収納帯を用いた電子部品連において、電子部品の幅方向における、電子部品と収納穴とのクリアランスを0.005mm以上0.030mm以下とし、収納穴の深さ方向における、電子部品と収納穴とのクリアランスを0.005mm以上0.030mm以下とする。このとき、両方のクリアランスは、収納穴の深さ方向における中心部分で規定する。紙製の収納帯が有する収納穴は、開口部と内部とで寸法及び形状が異なり、また、内部には紙の繊維に起因する毛羽やバリ等が存在する。電子部品と収納穴とのクリアランスを上記のように規定することにより、収納穴の寸法及び形状が開口部と内部とで異なることによる影響と、紙の繊維による影響とを考慮できる。これによって、紙製の収納帯に0402以下の電子部品を収納して搬送する場合であっても、電子部品を正しい姿勢で収納穴へ確実に収納するとともに、収納穴から確実に取り出すことができる。その結果、寸法が0402の電子部品を収納穴に収納し、マウンタで吸着させた場合には、吸着不良の発生数が低下して吸着率が十分に向上するので、実装性能が向上する。
本実施形態では、寸法が0402の電子部品1を収納帯10の収納穴13に収納して搬送する例を説明するが、電子部品1の寸法はこれに限定されるものではない。本実施形態に開示する手段は、寸法が0402以下の電子部品に対して好適である。現在、0402よりも小さい寸法の電子部品は検討されている段階であるが、将来0402よりも小さい寸法の電子部品が登場した場合、本実施形態に開示する手段により、電子部品を正しい姿勢で収納穴へ確実に収納するとともに、収納穴から確実に取り出すことができる。本実施形態で開示した手段は、少なくとも、図3に示す電子部品1の長さLが0.2mm、幅W及び高さTが0.1mmのものに対して有効である。さらには、本実施形態で開示した手段は、長さLが0.1mm、幅W及び高さTが0.05mmのものに対しても有効であると予測される。なお、これらの寸法は公称値であり、実際は適切な公差が付される。