JP5439405B2 - 走査電子顕微鏡 - Google Patents

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本発明は、テーブルや作業台に設置して使用される小型の走査電子顕微鏡に関するものである。
従来から高倍率が得られる走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)は、試料を集束された電子ビ−ムで走査し、それによって試料から出てきた電子を検出して、その検出された信号を用いて画像表示装置に試料の走査電子像を表示することができる。これら電子顕微鏡は、電子線を発生させるのに用いられる電子銃の性質から、数十キロボルトの高電圧が必要である。また、安定した電子線のため、電子顕微鏡内は、真空に保たれていなければならない。したがって、高電圧の発生装置や真空ポンプ,電子顕微鏡自体は耐圧構造でなければならないなど、装置が大がかりになりがちで専用の部屋が必要なこともある。このため、クリーンルームや測定室などに設置される大型のものが一般的であった。しかし、近年の小型化技術により、テーブルや作業台に設置して使用される程度に小型の電子顕微鏡装置が開発されている。このような小型の電子顕微鏡装置に対しては、当然小型の真空排気系が要求される。
特開2007−173149号公報(特許文献1)にはこのような小型の真空排気系の一例として、メインポンプに小型のターボ分子ポンプを採用した走査電子顕微鏡が開示されている。特許文献1に開示される電子顕微鏡においては、互いに真空排気圧力の異なる高真空用吸込口と低真空用吸込口および内部を予備排気するための排気口をメインポンプに設け、これらの高真空用吸込口および低真空用吸込口を高真空排気路または低真空排気路を介して鏡体または試料室に各々連通させることにより、高真空排気と低真空排気を同時に行うことができる真空排気系を実現している。このような高真空排気と低真空排気を同時に行うことができる真空排気系はスプリットフロー型と呼ばれ、電子銃室を高真空排気し、試料室を低真空排気する、低真空観察のみに対応した排気系構成となっている。
特開2007−173149号公報
特許文献1に記載の電子顕微鏡で採用される真空排気系は、1台のターボ分子ポンプの吸込口を低真空用吸込口と高真空用吸込口に分けて、これらを固定的に試料室と鏡体とに接続する方式であるため低真空観察のみに対応しており、高真空観察には対応できていない。
本発明は、低真空観察に加えて高真空観察も可能な走査型電子顕微鏡を実現することを目的とする。
メインポートとミドルポートの2つを備える真空排気ポンプを備える電子顕微鏡において、第1の配管で電子銃室とメインポートを接続し、試料室とミドルポートを第2の配管で接続し、上記第1の配管と第2の配管とを第3の配管で接続し、前記第1の配管と前記第3の配管との開閉および前記第2の配管と前記第3の配管との開閉を切り替えることにより、上記課題を解決する。
試料室の真空状態を少なくとも二段階に切り替え可能な卓上型顕微鏡を実現できる。
高真空雰囲気での観察は、特に加速電圧が低い場合に有効であり、低真空雰囲気では画像を形成する信号がロスしてしまうところを、高真空雰囲気とすると信号量のロスを著しく軽減でき、結果として、低加速観察でノイズの少ない良好な画像を観察できる。
低真空雰囲気での観察は、帯電しやすい試料の観察時に有効である。
実施例1の卓上型SEMの全体構成図。 実施例2の卓上型SEMの要部構成図。 走査電子顕微鏡の鏡体および試料室の模式図。 実施例1の卓上型SEMの操作画面の一例。 実施例3の卓上型SEMの要部説明図。 従来の卓上型SEMの全体構成図。
(比較例)
はじめに従来の卓上型走査電子顕微鏡における真空排気系について説明する。図6に示すように、本卓上型顕微鏡は、電子銃室1及び電子線302の通路を含む鏡筒3からなる鏡体4と試料室2を有している。真空排気には、高真空排気と低真空排気を同時に行うことができる所謂スプリットフロー型のターボ分子ポンプ5を用いており、鏡体4をターボ分子ポンプ5の高真空排気用のメインポート6と接続し、試料室2を同ターボ分子ポンプ5の低真空排気用のミドルポート7と配管を介して接続している。また、補助排気用としてバックポンプ8が用意され、配管を介してターボ分子ポンプ5の排気口9に接続される。鏡体4と試料室2は、対物絞り27により差動排気状態になっており、鏡体4側が高真空状態、試料室2側が低真空状態になっている。
V1電磁弁10は試料交換を行う際に、装置内を大気開放するためのリークに用いられる。V2電磁弁11は、例えば電子線302の照射により帯電し易い試料を観察する場合、通常の真空度では帯電してしまい、画質が著しく低下してしまう際に、試料室内に微小なAirを流し、試料室内圧力を上昇させて、観察試料の帯電現象を軽減させるために用いられる。V2電磁弁11を開口させることで、その先に接続させているニードルバルブ12から微小な流量のAirが試料室内に流れることで実現できている。V3電磁弁13は装置の電源を切ったときなどに閉まるようになっており、ストップバルブの役割をしている。
(実施例1)
図1には、本実施例の卓上型走査電子顕微鏡の全体構成図を示す。図1に示す卓上型走査電子顕微鏡は、電子銃を内部に格納する電子銃室1、集束レンズや対物レンズなどを含むレンズ系を格納する鏡筒3,試料室2,主排気ポンプであるターボ分子ポンプ5、バックポンプであるロータリーポンプ(またはダイアフラムポンプ等),ターボ分子ポンプ5と電子銃室1,試料室2をつなぐ各種配管,各種配管に設けられたバルブ、これらバルブの開閉,電子銃あるいはレンズ系の動作あるいは真空ポンプの起動・停止を制御する制御用基板101などにより構成される。
はじめに、図3を用いて電子銃室1および鏡筒3内部の詳細について説明する。電子銃室1,試料室2および鏡筒3を含む装置内部を真空排気し、目標の真空圧力に到達したら電子源301に高圧を印加する。高圧に印加された電子源301から電子線302が放出される。放出された電子線302はウェネルト電極303の電位により、収束作用を受け、軌道を曲げられてウェネルト電極303とアノード電極304の間に第一のクロスオーバー305を作る。さらに、加速電圧により加速された電子線302はアノード電極304を通過し、第一のコンデンサレンズ306により収束作用を受け、第一のコンデンサレンズ306と第二のコンデンサレンズ307の間に第二のクロスオーバー308を作る。クロスオーバー308を通過した電子線302は、第二のコンデンサレンズ307により収束作用を受け、第二のコンデンサレンズ307と対物レンズ309の間に第三のクロスオーバー310を作る。対物絞り311は最終的に試料表面に到達する電子線の量を制限する部材で、第二のクロスオーバー308あるいは第三のクロスオーバー310の高さ方向位置を変えることにより、対物絞り311を通過する電子線量を調整する。対物絞り311を通過した電子線302は対物レンズ309により収束され、試料台312の表面に照射される。図示されてはいないが、本実施例の卓上型走査電子顕微鏡は鏡筒3内に電子線を走査偏向するための走査偏向器も備えている。また、以下の説明では、電子銃室1と鏡筒3をあわせて鏡体4と呼ぶ場合もある。
試料表面に照射された電子線302は試料表面で跳ね返ってくる反射電子および試料表面から飛び出てくる二次電子等を発生させる。これら反射電子および二次電子は試料室内に設置されている検出器に取り込まれ、増幅回路を経て、デジタル変換されてから何らかの画像表示手段に送り込まれ、画像表示手段上に表示される操作画面にて試料表面の画像として確認することができる。SEM画像の画質はその装置の振動,ノイズおよび試料室の真空度などの因子に影響を受ける。
以上の増幅回路,デジタル変換などの処理は制御用基板101で行われる。制御用基板101は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)102およびメモリ103を備えており、画像生成処理の他、鏡体4や真空ポンプの起動・停止、あるいは真空バルブの開閉といった各種の処理をフレキシブルに実行できる。制御用基板101は、信号線107を介してパーソナルコンピュータ104に接続され、かつ信号線108を介し電子銃室1および鏡筒3と接続されている。パーソナルコンピュータ104は操作画面への入力手段であるキーボードの他にディスプレイも備わっており、上記デジタル変換された反射電子信号および二次電子信号は、このディスプレイに表示される。
電子銃室1の側面には配管14が接続されており、ターボ分子ポンプ5のメインポート(主排気ポート)6に接続されている。配管14の途中からは配管16aが分岐しており、試料室2に接続されている。配管16aは試料室2の天井面に接続される。配管16aの途中からは、更に配管16bが分岐し、ターボ分子ポンプ5のミドルポート7に接続されている。メインポートはミドルポートよりも排気速度が大きく、排気能力が高い。バックポンプ8は配管30を介して排気口9に接続される。
配管14と配管16aの分岐部(以下、分岐部15とする)、配管16aと配管16bの分岐部(以下、分岐部17)は、メインポート6から見ると、分岐部15が分岐部17よりも上流側に設けられる。また、ミドルポート7から見ると、分岐部15が分岐部17よりも下流側に設けられる。
図1に示される本実施例の真空排気系の場合、図に示した比較例の真空排気系に比べて、鏡体4とメインポート6とを結ぶ高真空排気系配管に試料室2を排気するための分岐部15が設けられ、更に上記試料室2の排気系配管にミドルポート7と接続するための分岐部17が設けられている点で相違する。分岐部15により鏡体4と試料室2を同時に高真空排気することが可能となり、分岐部17により試料室2を低真空排気することが可能になる。

試料室2の高真空状態と低真空状態とを切り替えるためには、メインポート6と試料室2を結ぶ排気経路およびミドルポート7と試料室2とを結ぶ排気経路に、何らかの流路切り替え手段を設ける。図1に示す例ではバルブ18とバルブ19を設けているが、高真空側のバルブ18は(電子銃室1とメインポート6の途中の)分岐部15と(試料室2までの配管途中の)分岐部17の間に設置し、低真空側のバルブ19は分岐部17とターボ分子ポンプ5のミドルポート7の間に設置する。
バルブ18とバルブ19は、バルブ開閉機構100によって開閉され、バルブ18が開くときはバルブ19を閉じ、バルブ19が開くときはバルブ18が閉じるようにする。これにより試料室2の真空度を切り替えられるようにする。
例えば、試料室2が高真空、即ちバルブ18が開いていてバルブ19が閉じた状態で画像を観察しているときに、試料室2を低真空にする場合は、バルブ18を閉じ、バルブ19を開くことで試料室2はターボ分子ポンプ5のミドルポート7と繋がり、低真空排気に切り替えることができる。
逆に、試料室2が低真空、即ちバルブ18が閉じていてバルブ19が開いている状態で画像を観察しているときに、試料室2を高真空にする場合は、いきなりバルブ切り替えを行うと試料室が低真空であるためバルブ18が開くことで電子銃の真空圧力が上がってしまい、電子源301の寿命等に大きく影響を与えてしまうことが懸念される。従って、この場合は画像観察を一旦中断し、電子源からの電子線放出をOFFしてから、バルブ切り替えを行う。鏡体4及び試料室2の真空が十分に安定してから再び電子線放出を開始し、画像観察を再開させる。
また、低真空観察時にV2電磁弁11を開口することで、ニードルバルブ12からの微小な流量のAirを試料室2内に導入し、試料室2内の圧力を上昇させることも可能となるため、全部で三段階の真空モードでの画像観察が可能になる。ここで注意すべきはV2電磁弁が開いているときにバルブ18を開いて高真空排気してもニードルバルブ12から絶え間なくAirが流入してくるため一向に高真空は得られない。従って、制御用基板101は、V2電磁弁11の開口時には高真空への切り替えができないようにする制御を行う。
上記の排気シーケンス制御、例えば、ターボ分子ポンプ5の起動・停止、V1電磁弁10〜V2電磁弁11の開閉および開閉のタイミングあるいはバルブ開閉機構100の駆動・停止は制御用基板101により実行される。このため、ターボ分子ポンプ5,V1電磁弁10〜V2電磁弁11およびバルブ開閉機構100は、各々信号線106,107,108で制御用基板101と接続されている。
上記のような排気系のシステムにより、SEM観察時の真空モードを少なくとも二段階に、すなわちSEM観察時の試料室2内の圧力を、ターボ分子ポンプ5のメインポート6の排気能力相当の高真空状態、ミドルポート7の排気能力相当の中真空状態に切り替えることが可能となる。更にニードルバルブ12を設ければ、試料室2内の真空度が中真空状態よりも低い低真空状態を含む三段階の真空モード切り替えが実現され、従来よりも幅広い画像観察が可能な卓上型走査電子顕微鏡を実現できる。
(実施例2)
実施例1ではバルブ切り替え機構でバルブ18及びバルブ19を切り替えることによりSEM観察時の真空モードを三段階に切り替え可能な卓上型走査電子顕微鏡の構成について説明したが、卓上型電子顕微鏡の場合、バルブ18及びバルブ19の開閉方式が問題になる。
真空バルブの最も一般的な方式は電磁式または空圧式であるが、開閉方式を電磁式にすれば、バルブの動作時に鏡体近傍で磁場が発生することになる。従って電子線302への影響は免れず、真空モードの切り替え時に観察画像のシフトなどが発生する懸念がある。また、空圧式でバルブを動作させようとした場合、磁場の影響はなくなるが、コンプレッサーが必要になる。卓上型電子顕微鏡のコンセプトは、あくまで簡単に設置ができ、軽量,シンプル且つ低電力で動作できることなので、コンプレッサーの使用は装置のコンセプトからは好ましくない。
そこで本実施例では、より卓上型電子顕微鏡に適したバルブ方式を採用した機構を使用した卓上型走査電子顕微鏡の構成例について説明する。
図2には、本実施例の卓上型走査電子顕微鏡の構成図を示す。パーソナルコンピュータや筐体といった構成は、実施例1と共通なので、図2では図1と共通する構成は省略して示している。
本実施例では、バルブ18とバルブ19として弁体が弁軸周りに回転するいわゆるバタフライバルブに類似する構造のバルブを採用している。バルブ18とバルブ19は、環状の弁体A22および弁体B23の側面に真空シール部材が備えられ、かつ弁体A22および弁体B23が弁軸であるシャフトA20及びシャフトB21に固定された構造を有している。両シャフトには、例えば傘歯車が取り付けられ、シャフトの回転により、弁体A22及び弁体B23が連動して回転できるようにする。このとき、片方の弁体が配管を塞いでいるとき、もう片方のシール材は配管に対して開いた状態になるようにしておく。これにより、バルブ18とバルブ19を連動して切り替えることが可能となる。
シャフトA20及びシャフトB21を回転させるための駆動源としては、本実施例では真空ポンプにより形成される負圧と大気圧との圧力差を利用したバルブ開閉機構を採用する。図2の例では、円筒容器36の内部に配置されたピストン28と押しバネ29が対応する。円筒容器36は、円筒容器内部を真空排気するための真空排気ポート35と、容器内部を大気開放するための大気開放ポート34を備える。ピストン28の外周側側面には円筒容器36内部と外部との真空シールのため、真空シール部材37が形成されている。
駆動源の駆動力をシャフトA20及びシャフトB21に伝達する伝達機構としては、ピストン28の直線運動を回転運動に変換するピニオンギヤ24とラック25が対応する。弁体B23が取り付けられたシャフトB21の先端にピニオンギヤ24を取り付け、同ピニオンギヤとラック25を噛み合わせ、ラック25の動きによってシャフトB21が回転できるようにする。ラック25にはシャフトC26が接続されている。シャフトC26は更にピストン28に連結されており、ピストン28は円筒容器36の内壁を真空シール状態を維持しながらスライドできるようになっている。
大気開放ポート34が開放され、ピストン28の両側に圧力差が生じていない場合、ピストン28は、円筒容器36内のシャフトC26に取り付けられている押しバネ29により図2の紙面右方向に押されている。この際、弁体A22と弁体B23の配置関係は、弁体A22が配管16aを閉じ、弁体B23が配管16bに対して開いた状態になるよう設定されている。その結果として、弁体A22が配管を塞ぎ、弁体B23が配管に対して開いた状態を保つことになる。
一方、大気開放ポート34が閉止され、真空排気ポート35が開くと円筒容器36内部が真空排気される。円筒容器36内の圧力が一定以下になると、紙面右方向から大気圧がピストン28に及ぼす力が押しバネ29の弾性力を上回り、ピストン28は紙面左方向に押される。このピストンの直線運動がピニオンギヤ24によって回転運動に変換され、シャフトA20及びシャフトB21が回転する。これにより、弁体A22が配管16aに対して開き、弁体B23が配管16bを閉じる。
次に、真空モードの切り替えシーケンスについて説明する。本実施例の場合、真空排気ポート35は配管32によりバックポンプ8と接続されており、配管32の途中にはV4電磁弁31が設けられている。配管32は、バックポンプ8と排気口9を結ぶ配管30に接続されており、配管32と配管30の接続部の上流側(ターボ分子ポンプ5側)にはV3電磁弁13が設けられている。また、大気開放ポート34から伸びる配管にはV5電磁弁33が設けられている。また本実施例では、V1電磁弁10〜V3電磁弁13,ニードルバルブ12およびV4電磁弁31、V5電磁弁33は、信号線106ないし107で制御用基板101と接続されており、開閉タイミングは制御用基板101により自動制御される。
初期状態として、試料室2内が中真空状態あるいはニードルバルブ12が開いてAirが流入している低真空状態にある場合を考える。このとき、バルブ18が閉止状態、バルブ19が開放状態にあるので円筒容器36内は大気圧状態であり、V4電磁弁31は閉じていて、V5電磁弁33は開いている。真空動作中であるので、V1電磁弁10は閉止、中真空状態であればV2電磁弁11は閉止され、低真空状態であればV2電磁弁11は開いている状態である。
低真空あるいは中真空の状態から高真空の状態に移行させる手順として、制御用基板101は、一旦画像観察を中断し、電子源のエミッションをOFFにする制御を実行する。理由は実施例1で説明した通りである。
次に、V2電磁弁11を閉止し、その後V4電磁弁31を開き、V5電磁弁33を閉じ、更にV3電磁弁13を閉じるシーケンスを実行する。この処理によりバックポンプ8により円筒容器36内が真空排気され、ピストン28が大気圧により押されて徐々に図2の紙面左側へ移動する。V3電磁弁13の閉止処理は、円筒容器36内の空気が排気口9からターボ分子ポンプ5に逆流することを防止するための処理であり、V5電磁弁33の閉止後、一時的に実行される処理である。制御用基板101は、円筒容器36内の真空が安定するころを見計らって再びV3電磁弁13を開く。以上のように、本実施例のV3電磁弁13はメインポンプへの逆流防止弁として動作する。
ピストン28が左側へシフトすることで、シャフトC26,ラック25も左側へシフトし、ピニオンギヤ24を回転させる。ピニオンギヤ24の回転によりシャフトA20及びシャフトB21が回転し、弁体A22が配管16aに対して開き、弁体B23は配管16bを塞ぐ。これにより、試料室2がターボ分子ポンプ5のメインポート6に連絡され、試料室を高真空排気することが可能となる。
高真空の状態から中真空の状態に移行させる際には、制御用基板101は、V4電磁弁31を閉じ、V5電磁弁33を開くシーケンスを実行する。この処理により、円筒容器36内に大気が導入され、押しバネ29の復元力によりピストン28が元の位置に戻る。その結果、弁体A22が配管16aを閉止し、弁体B23が配管16bに対して開いた状態になり、試料室2はターボ分子ポンプ5のミドルポート7と連絡されて、中真空排気に切り替わる。更に試料室2内の真空度を落とすには、V2電磁弁11を空けてニードルバルブ12からAirを試料室2内に導入する。
観察時の真空モード切り替えの容易のため、パーソナルコンピュータ104のディスプレイ上に図4に示すような操作画面を表示させる。図4に示す操作画面400には観察条件ボタン401が表示されており、マウス105でこのボタンをクリックするとプルダウンメニュー402がポップアップ表示される。プルダウンメニュー402には観察条件の一つとして真空モードを設定する真空モードボタン403が含まれており、このボタンを更にクリックすると複数の真空モードが表示されたプルダウンメニュー404がポップアップ表示される。図中、例えば真空モードAは高真空状態、真空モードBは中真空状態、真空モードCは低真空状態に対応する。装置ユーザは、表示された真空モードから所望のボタンを選んでチェックマークを入れ、これにより真空モードの切り替え設定操作が完了する。制御用基板101は、設定された真空モードに従って、真空モードの切り替えシーケンスを実行する。
このように、バックポンプ8による真空排気を利用してバルブを開閉させることで、電磁式バルブ,空圧バルブを用いることなく真空モード切り替えが可能となり、卓上型顕微鏡のコンセプトに合致したよりシンプルな装置を実現することを可能とできる。
(実施例3)
本実施例では、図1に示した卓上型電子顕微鏡において、配管の配置を変えた変形例について説明する。
図5には、本実施例の卓上型走査電子顕微鏡の構成例を示す。図2と同様、図5では図1との共通部分は省略して示す。図5に示す構成では、試料室2の側面に配管39を接続し、バルブ19を介してミドルポート7と接続している。図1においては配管16aを試料室2の天井面に設けたが、本実施例では、分岐部15から延びる配管38は配管39の途上に接続している。バルブ18は配管38と配管39の接続部近傍に設けられる。
このような配管の配置でも実施例1と同様の真空排気経路の切り替えが可能であるが、図5に示す装置の場合、配管39を試料室2の横から伸ばす配置上、実施例1あるいは2に比べて装置を覆う筐体の設置面積が大きくなる傾向がある。従って、卓上型の装置としては、図5に示す構成よりも図1あるいは図2に示す構成の方が優れている。
0 筐体
1 電子銃室
2 試料室
3 鏡筒
4 鏡体
5 ターボ分子ポンプ
6 メインポート
7 ミドルポート、
8 バックポンプ
9 排気口
10 V1電磁弁
11 V2電磁弁
12 ニードルバルブ
13 V3電磁弁
14,16,30,32 配管
15,17 分岐部
18,19 バルブ
20 シャフトA
21 シャフトB
22 弁体A
23 弁体B
24 ピニオンギヤ
25 ラック
26 シャフトC
27,311 対物絞り
28 ピストン
29 押しバネ
31 V4電磁弁
33 V5電磁弁
34 大気開放ポート
35 真空排気ポート
36 円筒容器
37 真空シール部材
100 バルブ開閉機構
101 制御用基板
102 FPGA
103 メモリ
104 パーソナルコンピュータ
105 マウス
106,107 信号線
301 電子源
302 電子線
303 ウェネルト電極
304 アノード電極
305,308,310 クロスオーバー
306,307 コンデンサレンズ
309 対物レンズ
312 試料台
313 試料

Claims (9)

  1. 一次電子線を発生する電子銃を格納する電子銃室と当該一次電子線を観察対象物に導くレンズ系とを含んで構成される鏡体と、前記観察対象物を格納する試料室とを備える走査電子顕微鏡において、
    第1の吸気口、当該第1の吸気口よりも排気速度の小さな第2の吸気口および排気口とを有する真空ポンプと、
    前記電子銃室と前記第1の吸気口とを接続する第1の配管と、
    前記試料室と前記第2の吸気口とを接続する第2の配管と、
    前記第1の配管と第2の配管とを結ぶ第3の配管と、
    前記第1の配管と前記第3の配管との導通の開閉および前記第2の配管と前記第3の配管との導通の開閉を連動して切り替えることにより、前記試料室内の真空度を切り替え可能なことを特徴とする走査電子顕微鏡。
  2. 請求項1に記載の走査電子顕微鏡において、
    前記第1の配管と前記第3の配管との導通を開閉する第1のバルブと、
    前記第2の配管と前記第3の配管との導通を開閉する第2のバルブとを備えることを特徴とする走査電子顕微鏡。
  3. 請求項2に記載の走査電子顕微鏡において、
    前記第1のバルブの開閉および第2のバルブの開閉を連動して切り替えるバルブ開閉機構を備えた走査電子顕微鏡。
  4. 請求項3に記載の走査電子顕微鏡において、
    前記バルブ開閉機構が、真空と大気圧の圧力差を使用するものであることを特徴とする走査電子顕微鏡。
  5. 請求項に記載の走査電子顕微鏡において、
    前記第1のバルブの開閉および第2のバルブの開閉を連動して切り替えるバルブ開閉機構を備え、
    当該バルブ開閉機構は、
    内部が真空排気可能で一方が開口をなす円筒容器と、
    当該円筒容器内に押しバネにより支持される、真空シール部材を備えたピストンと、
    当該円筒容器内の圧力と大気圧との圧力差により生じる前記ピストンの直線運動を回転運動に変換するピニオンギヤと、
    当該ピニオンギヤの回転運動を前記第1のバルブおよび第2のバルブの弁軸に伝達する傘歯車とを備えたことを特徴とする走査電子顕微鏡。
  6. 請求項5に記載の走査電子顕微鏡において、
    前記円筒容器は、当該円筒容器内部を大気開放するための大気開放用ポートと、当該円筒容器内部を真空排気するための真空排気用ポートを備えたことを特徴とする走査電子顕微鏡。
  7. 請求項に記載の走査電子顕微鏡において、
    前記真空ポンプの排気口に第4の配管を介して接続されるバックポンプを備え、
    前記真空排気用ポートが第5の配管を介して前記第4の配管に接続されることを特徴とする走査電子顕微鏡。
  8. 請求項7に記載の走査電子顕微鏡において、
    前記第4の配管と第5の配管の接続部よりも前記真空ポンプ側に設けられた、前記真空ポンプの排気口からの逆流防止弁を備えたことを特徴とする走査電子顕微鏡。
  9. 請求項1に記載の走査電子顕微鏡において、
    前記試料室内の真空度の切り替えシーケンスを実行するコンピュータを備えたことを特徴とする走査電子顕微鏡。
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