JP5435867B2 - 最適化された大気汚染制御 - Google Patents

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Description

本発明は、工程(プロセス)制御に関するものである。より詳細には、大気汚染制御に用いられるような工程の向上した制御のための技法に関する。このような工程の例としては、湿式及び乾式排煙脱硫(WFGD/DFGD)、選択的接触還元(SCR)による酸化窒素除去、及び電気集塵(ESP)による粒子除去処理が含まれるが、これに限定されない。
湿式排煙脱硫
既に言及したように、論議の基をなす幾つかの大気汚染制御工程が存在するが、WFGD工程が特に注目されている。WFGD工程は、電力業界において排煙からSOを除去するために最も一般的に用いられる工程である。図1は、例えば石炭化石燃料の火力発電システムにより生成されるような汚染された排煙からSOを除去し、商業レベルの副産物、例えば最小の廃棄コストにより廃棄することができる特性を有するもの、もしくは商業用途において販売可能な特性を有するものなどを生成するための、湿式排煙脱硫(WFGD)サブシステムの概略を示すブロック線図である。
現在、米国で良く使われているWFGDの副産物は、住宅及びオフィスの建物に使用される人造壁板としての使用に適した比較的高品質(95%以上の純度)の商業レベルの石膏である。高品質(約92%)の商業レベルの石膏は、ヨーロッパ連合やアジアでも現在よく使われているWFGDの副産物であるが、一般的には、セメント及び肥料として使用するために生産される。一方、高品質の石膏市場が縮小する場合には、WFGDの副産物として生産される商業レベルの石膏の品質を最小のコストでの廃棄に必要な程度のより低い品質仕様を満たすまで低下させることも可能である。これに関して、例えば石膏の品質が住宅地の埋立や、電力発電に使われる石炭を掘り出した場所の埋め用として適している場合には、廃棄コストを最小化することができる。
図1に示すように、汚染されたSOが含まれた排煙112は、石炭火力発電システム110のボイラー又は節約装置(図示されない)から大気汚染制御システム(APC)120に排出される。一般に、APC120に流入する汚染された排煙112には、SOのみならず、NOx及び粒子状物質等の、所謂その他の汚染物質も含まれている。WFGDサブシステムにより処理される前に、APC120に流入する汚染された排煙112は、まず汚染された排煙112からNOx及び粒子状物質を取り除くために、他のAPCサブシステム122に送られる。例えば、汚染された排煙は、選択的接触還元(SCR)サブシステム(図示されない)を用いてNOxを除去し、電気集塵サブシステム(EPS)(図示されない)又はフィルター(図示されない)を用いて粒子状物質を除去するように処理することができる。
他のAPCサブシステム122から排出されたSO含有排煙114は、WFGDサブシステム130に送られる。SO含有排煙114は、吸収塔132により処理される。当業者に理解されるように、排煙114中のSOは酸濃度が高い。従って、吸収塔132は、SO含有の排煙114を、排煙114よりpHレベルの高い液状スラリー148と接触するように動作する。
従来のWFGDサブシステムの大半は、図1に示すような種類のWFGD処理装置を含んで構成されている。これには様々な理由がある。例えば、当該分野で理解されるように、噴霧吸収塔を有するWFGD処理装置は、WFGD工程に対してある一定の好適な工程特性を有している。しかし、所望の場合、他の吸収/酸化機器構成を有するWFGD処理装置を図1に示すようなものの代りに用いてもよく、その場合、類似の排煙脱硫機能が提供され、本発明に提示されるより進化した工程制御の向上により同様の効果を達成することができる。明確性及び簡潔性を図るために、本発明における議論は、図1に示すような一般的な噴霧塔を参照して行われるが、提示される概念は、他のWFGDの構成にも適用可能である。
逆流吸収塔132の処理においては、排煙114中のSOが炭酸カルシウムが豊富なスラリー(石灰石及び水)148と反応して亜硫酸カルシウムを形成するが、これは基本的に塩であり、これにより排煙114からSOを取り除く。SOが除去された排煙116は、吸収塔132から排出されて排気煙突117、もしくは下流処理機器(図示されない)に排出される。得られた変質スラリー144は、結晶化器134に導入され、ここで塩が結晶される。結晶化器134及び吸収器132は、通常、単一塔内にその間の何ら物理的分離を生じずに存在する一方、互いに異なる作用(気体状での吸収及び液体状での結晶化)が進行するが、この2つの作用は、同一の容器内で行われる。これから結晶化された塩を含む石膏スラリー146は、結晶化器134から脱水機136に送られる。さらに、石膏スラリー146と同一濃度の結晶化塩を含んでもよく、含まなくともよい再循環のスラリー148は、ポンプ133により結晶化器134から吸収塔132に戻され、吸収サイクルが継続して行われる。
送風機150は、周囲空気152を加圧して結晶化器134のための酸化空気154を生成する。酸化空気154は、結晶化器134内でスラリーと混合して亜硫酸カルシウムを酸化させ硫酸カルシウムにする。硫酸カルシウムの各分子は、水分子の2つと結合して通常、石膏160と呼ばれる化合物を形成する。このように、石膏160は、WFGD処理装置130から除去され、例えば建築レベルの人造壁板の製造業者に販売される。
脱水機136から回収された水167は、ミキサー/タンク140に導入され、ここで粉砕機170から送られた新たに粉砕された石灰石174と混合されて石灰石スラリーを生成する。一部の工程用水は石膏160及び廃棄水流169の両方で損失するため、清水の供給源164から清水162がさらに添加され、石灰石スラリーの密度を維持する。また、灰等の廃棄物は、WFGD処理装置130から廃棄水流169を介して除去される。この廃棄水は、例えば灰沈殿池に送られるか、あるいはまた別の方式で廃棄される。
要約すると、SO含有の排煙114内のSOは、吸収塔132のスラリー接触区域内でスラリー148により吸収された後、結晶化器134内で結晶化及び酸化され、脱水機136内で脱水されることにより、所望の工程副産物、この例では、商業レベルの石膏160を形成する。SO含有の排煙114は、数秒単位で吸収塔132を通過する。結晶化器134により変換されたスラリー144内での塩の完全な結晶化には8時間〜20時間以上が必要な場合もある。従って、結晶化器134は、記憶、結晶化の役割をするために大容量である。再循環スラリー148は、付加的なSOの回収のために吸収器の最上部に再びポンプ注入される。
このように、スラリー148は、吸収塔132の上部に供給される。前記塔132は、通常スラリー148を塔132内に供給するための複数の水位の噴霧ノズルを含む。吸収132は逆流構造で動作しており、スラリースプレーは、吸収内で下方に流れ、吸収塔の下部に供給された、上方に流れるSO含有の排煙114と接触するようになる。
石灰石供給源176から送られた新規の石灰石172は、まず粉砕機170(通常ボールミール)で粉砕された後、ミキサー14内で回収された水167及び清水/補充水162と混合されて石灰石スラリー141を形成する。ミキサー/タンク140への粉砕石灰石174及び水162の流れは、ミキサー/タンク140内に新規の石灰石スラリー141が十分に在庫として残るように調節される。新規の石灰石スラリー141の結晶化器134への流れは、スラリー148の適切なpHを維持するように調整され、これは次に排煙114から除去されるSOの量を調節する。WFGD処理は、通常排煙から92〜97%のSO除去率を示すが、当業者は、特定の技法を使用して有機酸をスラリーに添加することにより、SOの除去率が97%以上とすることが可能であることが理解できる。
上記のように、従来のWFGDサブシステムは、スラリーを再循環させる。通常一部の廃水及びその他の廃棄物が石膏生産中に生成されても、水は可能な範囲で再利用され、新規の石灰石スラリーを補充するのに使われるため、工程用水を処理するときに発生する廃棄物及びコストを最小化することができる。
石灰石は大半のところで容易に大量に入手可能であることから、石炭ガス脱硫処理における反応物として一般に使われている。しかし、他の反応物、例えば生石灰又はナトリウム化合物を石灰石の代りに使用してもよい。このような他の反応物は、通常、高価であるため現在の石灰石反応物と価格競争力がない。しかし、ミキサー140及び上流反応物の供給源に少しの変更を加えれば、既存の石灰石WFGDシステムが生石灰又はナトリウム化合物により動作させることができる。実際に、大半のWFGDシステムは、石灰バックアップシステムを有しており、石灰石の送達に問題が生じたり、そして/あるいは粉砕機170の保守整の延長の問題がある場合に動作する。
図2は、図1に示すようなWFGDサブシステムの一部をより詳細に示している。図示するように、脱水機136は、第1次脱水機136A及び第2次脱水機136Bの両方を含んでもよい。第1次脱水機136Aは、好ましくは、石膏及び水を分離させるハイドロサイクロンを含む。第2次脱水機136Bは、好ましくは、石膏を乾燥させるベルト乾燥機を含む。既に述べたように、排煙114は、通常、側面から吸収器132に流入し、吸収塔の上部内に噴霧された石灰石スラリーミストを通過して上方に流れる。吸収器から抜け出る前に、排煙は、吸収器132の最上部に位置するミスト分離器(ME)(図示されない)を通過し、ミスト分離器は、排煙の流れから流入した液体及び固形物を除去する。ミスト分離器を固形物なしに維持するために、ME洗浄水200がミスト分離器に適用される。理解されるように、ME洗浄水200は、清水の供給源164からの水を使用して吸収塔132内のMEを清浄に維持する。ME洗浄水200は、WFGDサブシステム130に供給される最も純粋な水である。
上記のように、石灰石スラリーミストは、吸収塔132を介して流れる排煙から高い割合のSO(例えば、92〜97%)を吸収する。SOを吸収した後、スラリー噴霧が結晶化器134に落下する。現実の実装形態では、吸収塔132及び結晶化器134がしばしば単一の一体構造で設置され、構造内において吸収塔が結晶化器のすぐ上に位置する。その場合には、スラリー噴霧が簡単に一体構造の基底に落下して結晶化される。
石灰石スラリーは、結晶化器134内でSOと反応して石膏(硫酸カルシウム二水和物)を生成する。既に言及したように、強制圧縮酸化空気154が酸化を促すために使われ、酸化は以下の反応により行われる。
SO+CaCO+1/2O+2HO→CaSO・2HO+CO (1)
酸化空気154は、送風機150により結晶化器134内に強制流入する。酸化空気は、亜硫酸カルシウムの硫酸カルシウムへの転換に必要な付加的酸素を提供する。
吸収塔132は、環境規制に基づいて要求される高い除去効率を達成するために必要な排煙と液状スラリーの密接な接触を実現するのに使われる。逆流開放噴霧吸収塔は、石灰石−石膏WFGD処理に特に好適な特性を提供する。これは本質的に確実な方法であり、他の塔方式のWFGD処理装置の構成要素に比べて閉塞の可能性が低く、圧力低下が少なく、資金及び運営コストのすべての面で有利である。
図2に示すように、水供給源164は、通常、十分な量の清水を保存するための水タンク164Aを有する。また、通常、吸収塔132に送られるME洗浄水200を加圧するための1つ以上のポンプ164B、及びミキサー140に送られる清水の流れ162を加圧するための1つ以上のポンプ164Cを有する。ミキサー140は、混合タンク140A、及び新規の石灰石スラリー141を結晶化器134に移動させるための少なくとも1つのスラリーポンプ140Bを有する。1つ以上の付加的な極めて大容量のスラリーポンプ133(図1参照)は、スラリー148を結晶化器134から吸収塔132の最上部にある複数のスプレーレベルに引き上げるために必要である。
以下に説明するように、通常、石灰石スラリー148は、吸収塔132の様々なレベルに位置する噴霧ノズル(図示せず)を介して吸収塔132に流入する。完全負荷の場合、大半のWFGDサブシステムは、1つ以上の予備スラリーポンプ133を用いて動作する。負荷が減少した場合には、しばしば減少した数のスラリーポンプ133により、所要のSO除去効率を達成することができる。これは、スラリーポンプ133のポンプ注入負荷を減少させ、顕著な経済的効果をもたらす。前記ポンプは、世界で最も大きなポンプのうちの1つであり、電力グリッド(寄生電力負荷)として直接販売できる電気で駆動される。
石膏160は、第1次脱水機136A内で、通常、ハイドロサイクロンにより石膏スラリー146中の液体から分離される。ハイドロサイクル、及び/又は第1次脱水機136Aの1つ以上のその他の構成要素の上層流は少量の固形物を含む。図2に示すように、この上層流のスラリー146Aは、結晶化器134に戻される。回収された水167は、ミキサー140に戻されて新規の石灰石スラリーを製造する。他の廃棄物168は、通常、第1次脱水機136Aから灰沈澱池210に導入される。下層流のスラリー202は、第2次脱水機136Bに導入されるが、前記脱水機は、ベルトフィルターの形態を有し、ここで、スラリーが乾燥されて石膏の副産物160が生成される。同様に、第2次脱水機136Bから回収された水167は、ミキサー/ポンプ167に戻される。図1に示すように、持っているものや、他の石膏サンプル(161)を一般的に数時間ごとに採集して分析し、石膏160の純度を測定する。石膏の純度の直接的なオンライン測定は不可能である。
図1に示すように、比例積分微分(PID)制御器180が通常、フィードフォワード制御器(FF)190とともにWFGDサブシステムの動作を制御するために用いられる。旧来よりPID制御器は、空気圧のアナログ制御機能を志向したものである。今日では、PID制御器は、数学的公式を使用してデジタル制御機能を志向したものになっている。FF190/PID制御器180の最終目標は、確立している連関に基づいてスラリーpHを制御することである。例えば、図1のバルブ199の調整と、結晶化器134から吸収塔132へ流れるスラリー148の測定されたpH値の間に構築された連結関係がある場合、バルブ199は、スラリー148のpHが設定点(SP)と呼ばれる所望の値186に相応するように制御される。
FF190/PID制御器180は、pH設定点に基づいてバルブ199を介して石灰石スラリー141のフローを調整し、pHセンサー182により測定されたスラリー148のpH値を高めたり低下させたりする。理解されるように、これは、それぞれの制御信号(181及び191)を送るFF/PID制御器により達成され、これは、フロー制御SP196により示されるバルブ調整命令を、好ましくは、バルブ199の一部であるフロー制御器に伝達する。フロー制御SP196に反応し、フロー制御器は次にバルブ199の調整を誘導し、ミキサー/タンク140から結晶化器134への石灰石スラリー141の流れを変更する。
この例では、FF制御器190及びPID制御器180の組合わせによるpH制御を示している。一部の設備は、FF制御器190を含まない場合もある。
この例において、PID制御器180は、pHセンサー182から受信した測定されたスラリーpH値183を、結晶化器134から吸収塔132へ流れるスラリー148の測定されたpH値183の間に構築された連結関係を示す石灰石フロー制御アルゴリズム従って処理してPID制御信号181を生成する。前記アルゴリズムは、通常PID制御器180に保存されるが、これは必須ではない。制御信号181は、例えばバルブ199のためのバルブ設定点(VSP)、又はバルブ199を抜け出る粉砕された石灰石スラリー141の流れのための測定値設定点(MVSP)を示すことができる。
該当分野で理解されるように、PID制御器180で使用されるアルゴリズムは、比例要素、積分要素及び微分要素を含む。PID制御器180は、まず、所望のSPと測定値との差を計算して誤差を求める。次に、PID制御器は、その誤差をアルゴリズムの比例要素に適用するが、これはそのPID制御器、又は複数のPID制御器がWFGDサブシステムに使用される場合には、それぞれのPID制御器のために調整可能な定数である。PID制御器は、通常、調整係数又は処理利得(process gain)を前記誤差と乗算し、バルブ199の調整のための比例関数を求める。
しかし、PID制御器180が調整係数又は処理利得に対する正確な値を持たない場合や、工程条件が変化する場合には、比例関数が不正確になる。この精度の低さのため、PID制御器180により生成されるVSP又はMVSPは、実際に所望のSPに相応する値を相殺するようになる。従って、PID制御器180は、積分要素を用いて経時的に蓄積された誤差を適用する。積分要素は時間係数である。ここで、再びPID制御器180は、調整係数又は処理利得を蓄積された誤差と乗算し、差減要素を除去する。
次に、微分要素を調整する。微分要素は加速係数であって、継続的に変化が起こる。実際に、微分要素は、WFGD工程制御に使われるPID制御器にはあまり適用されない。これは、微分要素の適用がこの種の制御応用分野では特別に有効ではないためである。従って、WFGDサブシステムに使用される大半の制御器は、実際にはPI制御器である。しかし、当業者は、必要な場合、PID制御器180を従来の方式で微分要素を適用するのに必要な論理として容易に設定できることが理解できる。
要約すると、3つの調整定数が存在するが、これは、工程値、例えば吸収塔132に流入する再循環スラリー148のpHを設定点、例えば新規の石灰石スラリー141の結晶化器134への流れで制御するために、通常のPID制御器により適用することができる。いずれの設定点が使われても、これは常に工程値の側面から構築され、所望の結果、例えば吸収塔132から排出された排煙116に残存するSOの値の側面から構築されない。言い換えれば、設定点は工程の側面から扱われており、制御された工程値は、PID制御器がその値を制御できるようにするために直接測定可能である必要がある。アルゴリズムの正確な形態は、装置の販売者ごとに異なるが、基本的なPID制御アルゴリズムは装置産業で75年以上過ぎても使用されている。
再び図1及び図2を参照すれば、PID制御器180及びFF制御器190から受信した命令を基にフロー制御器は信号を生成するが、これはバルブ199を開閉することにより粉砕された石灰石スラリー141の流れを増加又は減少させる。フロー制御器は、バルブ199がVSPと一致するように開いたり閉まるまで、又はバルブ199に流れる石灰石スラリー141量の測定値がMVSPと一致するまでバルブの調整を引き続き制御する。
上記のような例示的な従来のWFGD制御においては、スラリー148のpHが所望のpH設定点186に基づいて制御される。制御を行うために、PID180は、センサー182から工程値、つまりスラリー148のpHの測定値183を受信する。PID制御器180は、前記工程値を処理してバルブ199に対する命令181を生成し、ミキサー/タンク140からの結晶化器のスラリー144よりpHが高い新規の石灰石スラリー141の流れを調整し、これにより、スラリー148のpHを調整する。前記命令181によりバルブ199をさらに開く場合は、より多くの石灰石スラリー141がミキサー140から結晶化器134内に流れ、スラリー148のpHを増加させる。一方、命令181に従ってバルブ199を閉める場合は、ミキサー140から結晶化器134内への石灰石スラリー141の流れがより小さくなり、スラリー148のpHを低下させる。
さらに、WFGDサブシステムでは、安定した動作を保障するためにフィードフォワード装置190を用いてフィードフォワードループを導入してもよい。図1に示すように、吸収塔132に流入する排煙114中のSOの濃度値はセンサー188により測定され、フィードフォワード装置190に入力される。FF制御要素を含む複数のWFGDシステムは、流入する排煙SOの濃度189を電力発電システム110からの発電機負荷の計測と組み合わせて、単に濃度ではなく、むしろ流入SOの量を測定し、次いでこの流入SOの量をFF190に対する入力値として使用してもよい。フィードフォワード装置190は、時間遅延に伴う比例要素の役割をする。
このような例示的な実装形態において、フィードフォワード装置190は、センサー188から一連のSO測定値189を受信する。フィードフォワード装置190は、現在受信した濃度値を、直前に受信した濃度値と比較する。フィードフォワード装置190がSOの測定濃度に対して、例えば百万分の1000〜1200の変化が発生したと判断する場合には、階段関数を平滑化する論理として設定され、動作における急激な変化を避けるようになる。
フィードフォワードループは、正常な動作の安定性を飛躍的に向上させるが、その理由は、スラリー148のpH値と結晶化器134へ流れる石灰石スラリー141の量との関係が極めて非線形的であり、PID制御器180は、效果的な線形制御器であるためである。従って、フィードフォワードループなしでは、PID180が同一の調整定数として広範囲なpHに対する適切な制御を行うことは非常に難しい。
スラリー148のpHを制御することにより、PID制御器180は、SO含有の排煙114からSOの除去、及びWFGDサブシステムにより生成される石膏副産物160の量の両方に影響を及ぼす。新規の石灰石スラリー141の流れを増加させてスラリーのpHを増加させる場合、SO含有の排煙114から除去されるSOの量が増加する。一方、石灰石スラリー141の流れを増加させ、これによりスラリー148のpHを増加させる場合には、吸収以降のSO酸化が遅れ、そのため亜硫酸カルシウムの硫酸塩への変換も遅れるようになり、その結果、生産される石膏160の量が低下するようになる。
このため、SO含有の排煙114からSOを除去し、石膏副産物160の必要量を維持するなど、対峙する制御目的が存在する。すなわち、SO排出の要件と、石膏量の要件との間に対峙がある。
図3には、図1及び図2を参照して記載したWFGDサブシステムの他の側面について示されている。図示するように、SO含有の排煙114は、開口310を介して吸収塔132の基低部分に流入し、SO非含有排煙116は、開口312を介して吸収塔132の上部に流出する。このような通常の実装形態では、逆流吸収塔が複数のスラリースプレーレベルを有するものとして示される。このように、ME洗浄水200が吸収塔132に流入し、洗浄水の噴霧器(図示されない)により分散される。
さらに、多重吸収塔スラリーノズル(306A、306B及び306C)が示されており、これらはそれぞれスラリー噴霧器(308A、308B又は308C)を有するが、これはスラリーを排煙内に噴霧してSOを吸収する。スラリー148は、図1に示されるような結晶化器134から複数のポンプ(133A、133B及び133C)によりポンプ注入されるが、これらはそれぞれスラリーを互いに異なるレベルのスラリーノズル(306A、306B又は306C)のうちの1つにまでポンプ注入する。3つの互いに異なるレベルのスラリーノズル及び噴霧器を示しているが、ノズル及び噴霧器の個数は、各々の実装形態により変化する。
吸収132から出る排煙116の流速に対する吸収132に流入する液状スラリー148の流速の比率は、通常、L/Gで特徴付けられる。L/Gは、WFGDサブシステムの主要設計パラメータの1つである。
Gで示される排煙116(蒸気で飽和したもの)の流速は、WFGD処理装置130の上流にある電力発電システム110から出る流入排煙112の関数である。従って、Gは制御されず、制御することもできないが、WFGD処理中に指定されなければならない。このため、L/Gに影響を及ぼすためには「L」を調整する必要がある。動作中のスラリーポンプの個数、及びこれらスラリーポンプの配列(line-up)を調整する場合、Lで示されるWFGD吸収塔132に流れる液状スラリー148の流速が制御される。例えば、単に2つのポンプのみ動作する場合には、ポンプを上部の2つのスプレーレベルで動作させるのに対して、ポンプを最上部及び基底部のスプレーレベルで動作させることは、異なる「L」を生成することになる。
スラリーポンプ(133A、133B及び133C)の動作を制御することにより「L」を調整することができる。ポンプを個別にオン/オフすることにより吸収塔132に流れる液状スラリー148の流速、及び液状スラリー148が吸収塔に導入される有効の高さを調整することができる。スラリーが塔に導入される高さが高いほど、排煙との接触時間がより長くなり、より多くのSOが除去されるが、このような付加的なSOの除去は、スラリーをさらに高いスプレーレベルまでポンプ注入するための電力消費の増加が伴う。ポンプの個数が多くなるほど、そのような制御の粒度(granularity)が大きくなることが分かる。
極めて大きな部分を占める回転装置であるポンプ(133A〜133C)は、自動又は手動で開始又は停止することができる。米国では、しばしばこのようなポンプがサブシステムの操作者により手動で制御されることがある。ヨーロッパでは、ポンプ(133A〜133C)等の回転装置の開始又は停止を自動化するのが一般的である。
WFGD処理装置130に流入する排煙114の流速が電力発電システム110の動作における変化により変更される場合、WFGDサブシステムの操作者は、前記ポンプ(133A〜133C)のうちの1つ以上の動作を調整することができる。例えば、排煙の流速が設計負荷の50%に低下した場合、操作者又は制御システムにおける特殊論理は、1つ以上のスプレーレベルのノズルでスラリーをポンプ注入するポンプのうちの1つ以上を閉鎖してもよい。
図3には示されていないが、ポンプ及びスラリーノズルを有する余分のスプレーレベルが、もう1つのポンプ、又は第1のスプレーレベルに伴うその他のスラリーノズル及び/又はスラリー噴霧器の保守整備の間に使用されるように提供されることが分かる。このような余分のスプレーレベルは、吸収塔、及びそれに伴うサブシステムのコストを増加させる。このため、一部のWFGDの所有者は、余分のスプレーレベルを排除し、このような追加コストが生じないようにし、その代りにスラリーに有機酸を添加して吸収能を高め、これにより保守整備期間中に排煙からSOを除去するようにしている。しかし、このような添加剤は高価なため、それの使用は製造コストを増加させ、これは時間が経つにつれて資本コストの削減分を相殺することもあり得る。
前記式1に示すように、SOを吸収するためには、排煙中のSOとスラリー中の石灰石との間に化学的反応が要求される。吸収内の化学的反応の結果は亜硫酸カルシウムの生成である。結晶化器134内では、亜硫酸カルシウムが酸化して硫酸カルシウム(石膏)を形成する。このような化学的反応の間に酸素が消費される。十分な酸素を提供して反応速度を速めるため、圧縮空気154を結晶化器134内の液状スラリー内に送風する方法で付加的なOを添加する。
より詳細には、図1に示すように、周囲空気152が圧縮されて圧縮空気154を形成し、再循環スラリー148中の亜硫酸カルシウムを酸化させるために送風機150、例えば扇風機を使用して結晶化器134内に強制流入し、前記再循環スラリーは、結晶化器134から吸収器132に戻され、石膏スラリー146は、追加処理のために脱水システム136に送られる。酸化空気154の流れの調整を容易に行うために、送風機150は、速度又は負荷制御機構を有してもよい。
好ましくは、結晶化器134内のスラリーは過剰量の酸素を有する。しかし、スラリーにより吸収されたり、あるいは収容される酸素の量には上限がある。スラリー内のOレベルが低すぎる場合には、スラリー中のCaSOのCaSOに対する化学的酸化が停止する。これを石灰石の沈床という。石灰石の沈床が発生すれば、石灰石がスラリー溶液中に溶解することが止まり、SOの除去が著しく低下する。微量の一部のミネラルの存在も亜硫酸カルシウムの酸化及び/又は石灰石の溶解を遅らせ、石灰石の沈床を発生させる場合がある。
スラリーに溶解するOの量は測定可能なパラメータでないため、通常のWFGDサブシステムでは適切な注意を払わなければ、スラリーのO欠乏が生じる可能性もある。これは特に夏によく発生するが、周囲空気温度が高いほど、周囲空気152の密度が低くなり、送風機150により結晶化器134内に最高の速度又は負荷で強制流入される酸化空気154の量が減少する。さらに、排煙から除去されるSOの量が著しく増加する場合には、相応する量の追加のOがSOの酸化に必要である。従って、WFGD処理装置へのSOの流れの増加に伴い、スラリーは事実上Oが欠乏する可能性がある。
設計の割合内で吸収されたSOを酸化するのに十分な圧縮空気154を注入する必要がある。送風機150の速度又は負荷が調整可能である場合は、送風機150をより低いSO負荷で、及び/又は周囲空気温度を冷却させる間に低下させることがエネルギーの節約のために好ましい。
送風機150が最大負荷に逹したり、あるいは調整不可能な送風機150のすべてのOが使用される場合には、SOを漸増させる酸化を生じさせることができない。負荷のピーク時、又はSO除去率を正確に追跡する送風機150の速度制御がない場合、結晶化器134内のO不足が発生する可能性がある。
しかし、スラリー中のOを測定することが不可能なため、スラリー中のOのレベルは、従来のWFGDサブシステムの動作に対する制約として使用されない。従って、結晶化器134内のスラリーにO欠乏が発生した場合、正確にモニタリングする方法がない。このため、せいぜい操作者は、石膏副産物160の品質が著しく低下したときにスラリーにO欠乏が発生したと推定し、スラリー内に強制流入するOと、酸化すべき吸収されたSOのバランスをとるために、送風機150の速度又は負荷を制御、そして/あるいはSOの吸収効率を低下させるための最善の判断を行うようにする。このように、従来のWFGDサブシステムでは、スラリー内に強制流入するOと、排煙から吸収される必要があるSOのバランスをとることが操作者の判断によって行われる。
要約すると、公共設備分野で使用される大型のWFGDサブシステムの一般的な制御は、通常、分散制御システム(DCS)内で行われ、一般的にオン/オフ制御論理及びFF/PIDフィードバック制御ループで構成される。制御されるパラメータは、スラリーのpHレベル、L/Gの割合及び強制流入する酸化空気の流れに限定されている。
pHは、SOの高い溶解度(つまりSO除去効率)、高品質(純度)石膏、及びスケールの沈積の防止を保障するためにある一定の範囲内に維持されなければならない。動作pHの範囲は、機器及び動作条件の関数である。pHは、新規の石灰石スラリー141の結晶化器134への流れを調整することにより制御される。石灰石スラリーのフロー調整は、センサーで検出されるスラリーの測定されたpHに基づいて行われる。1つの実装形態では、PID制御器及び場合により、DCSに含まれたFF制御器が石灰石スラリーのフロー制御器に従属接続されている。標準/デフォルトPIDアルゴリズムがpH制御応用分野で使用される。
液体に対するガスの割合(L/G)は、吸収塔132に流れる液状スラリー148に対する排煙フロー114の割合である。所与のサブシステム変数のセットに対して、液状スラリー148中のSOの溶解度を基準として所望のSO吸収を達成するための最低限のL/Gの割合が要求される。L/Gの割合は、排煙114の流れが変わるときや、スラリーポンプ133がオン/オフする際に通常発生する液状スラリー148の流れが変わるときに変化する。
亜硫酸カルシウムの酸化による硫酸カルシウム、つまり石膏の形成は、結晶化器134の反応タンク内の付加的酸素を用いた強制酸化により促進される。付加的酸素は、結晶化器134内のスラリー溶液内に空気を送風することにより導入される。酸化が不十分な場合には、亜硫酸塩−石灰石の沈床が発生し、石膏品質の低下、及びSO除去効率の低下の可能性、及び廃水の高い化学的酸素要求量(COD)をもたらす可能性がある。
一般的なWFGD工程の制御スキームは、統合された目的よりは個別の目的を有する標準制御ブロックで構成される。現在は、操作者がエンジニアリングスタッフと相談し、工程の制御を最適に行うために努力しなければならない。このような制御を行うために、操作者は以下のような様々な目標及び制約を考慮する必要がある。
WFGD動作コスト:電力プラントの最小化は、所有者に利益をもたらすためにのみ実施されるものである。従って、WFGDサブシステムを、工程、規制及び副産物の品質的制約、及び経営環境を考慮して最低の適正コストで動作させることが有益である。
SO除去効率の最大化:清浄空気規制は、SO除去の要件をなす。WFGDサブシステムは、工程、規制及び副産物の品質的制約及び経営環境の観点からSOを效率的に、かつ、適切に除去できるように動作させる必要がある。
石膏品質の規定を充足:副産物である石膏の販売は、WFGD動作コストを軽減し、所望の規定を充足する副産物の純度に大きく依存している。WFGDサブシステムは、工程、規制及び副産物の品質的制約及び経営環境の観点から石膏副産物を良好な品質で生産できるように動作させる必要がある。
石灰石の沈床の防止:燃料の硫含有量の負荷変動及び変化は、排煙114中のSOの偏位を起こす可能性がある。適切な補償の調整が行われない場合、スラリー内に高濃度の亜硫酸塩を発生させるおそれがあり、これは次に石灰石の沈床、吸収塔132のSO除去効率の低下、石膏品質の劣化、及び廃水の高い化学的酸素要求量(COD)をもたらす。WFGDサブシステムは、工程制約の観点から石灰石の沈床を防止できるように動作させる必要がある。
通常の動作の手順においては、WFGDサブシステムの操作者がWFGD工程に対する従来の動作手順及び知識に基づき、このような相反する目標及び制約のバランスをとることができるようにWFGD工程の設定点を決める。設定点には、通常、pH、スラリーポンプ133、及び酸化空気送風機150の動作状態が含まれる。WFGD工程には、複雑な相互作用及びダイナミックスが存在する。従って、操作者は、WFGDサブシステムがSO除去及び石膏純度に対する厳しい制約を充足/解消できるように控え目な動作パラメータを選択する。このような控え目な選択を行うことにより、操作者は、常に又はしばしば、最小コストでの動作を犠牲にしている。
例えば、図4は、SO除去効率及び石膏純度をpH関数として示したものである。pHが増加すれば、SO除去効率が向上するが、石膏純度は低下する。操作者は、SO除去効率及び石膏純度の両方の改善が目的であるため、操作者は、このような相反する目標における妥協点となるpHの設定点を決めなければならない。
また、大半の場合、操作者には、保障された石膏の純度レベル、例えば95%の純度を満足させるようにすることが要求される。図4に示すような関係の複雑性、石膏純度の直接的なオンライン測定の欠如、石膏結晶化の長期ダイナミックス、及び動作の無秩序な変化のため、操作者はしばしば、石膏純度のレベルがいかなる状況でも明示された制約より高くなるように保障できるpHの設定点を入力するように選択する。しかし、石膏純度を保障するために、操作者は、SO除去効率を犠牲にしている。例えば、図4のグラフのように、操作者は95%の石膏純度の制約に対し、さらに1%の備え分を保障するために、5.4pHを選択してもよい。しかし、このpH設定点を選択する場合、操作者は3%のSO除去効率を放棄することになる。
操作者は、SO負荷、つまり排煙114の流れが最高レベルから中間レベルに低下する場合、類似の犠牲を伴うことになる。このような転移中のいくつかの時点では、ポンプの連続動作が単に少しだけ高いSO除去効率を提供することもあるため、エネルギー節約のために1つ以上のスラリーポンプ133を停止することが効果的な場合がある。しかし、電力コストとSO除去効率の関係について大半の操作者があまり理解していないため、操作者は控え目なアクセス方法を選択する。このようなアクセス方法により、操作者は1つ以上のスラリーポンプ133を消すことがより効果的であるにもかかわらず、スラリーポンプ133の配列を調整しない場合もある。
また、複数の規制放出の許容値がモーメント放出の限界及び一部形態の連続平均放出の限界の両方を提供することは周知である。連続平均放出の限界とは、移動する又は経過する一定時間帯におけるモーメント放出値の平均である。前記時間帯は、1時間程度だけ短いか、1年程度だけ長い場合もある。一部の典型的な時間帯は、1時間、3時間、8時間、24時間、1ヶ月、及び1年である。動的な工程脱離を許容するために、モーメント放出の限界は通常、連続平均の限界よりさらに高い。しかし、モーメント放出限界での持続した動作は、連続平均限界の違反をもたらす。
従来、PID180は、比較的簡単なモーメント限界までの放出を制御する。そのために、工程に対する動作制約、つまり瞬時値を実際の規制放出限界内に設定して安全的な範囲を提供する。
一方、連続平均限界までの放出を制御することはより複雑である。連続平均のための時間帯は継続的に進む。従って、任意の所与の時点では幾つかの時間帯がアクティブであり、1つの時間帯が所与の時点から一定の時間後に跨っており、また他の時間帯が所与の時点から一定の時間前に跨っていることになる。
一般的に、操作者は、モーメント限界のために、単純にPID180に設定されている動作制約と実際の規制放出限界との間で十分な余裕を維持することにより、又は連続平均限界の観点から動作制約を設定するために操作者の判断を働かせることにより、連続平均限界の放出を調節する試みをする。この2つの場合において、連続平均放出の明らかな制御は行われておらず、結果的に、連続平均限界の遵守を保障するか、もしくはコストがかかる過度の遵守(over-compliance)を防止するための方法はない。
選択的接触還元システム
簡単に、他の大気汚染制御工程であるNOx除去用選択的接触還元(SCR)システムを見れば、類似の動作上の問題を確認することができる。SCR工程の概要を図20に示す。
以下の工程概要は、「酸化窒素放出の制御:選択的接触還元(SCR)(Control of Nitrogen Oxide Emissions:Selective Catalytic Reduction(SCR))、主題別報告書第9号、Clean Coal Technology、米国エネルギー省、1997」に開示されている。
工程の概要
一次的に、NO及びより少量のNOで構成されるNOxは、酸素の存在下で触媒上でNHとの反応により窒素に変換される。石炭内の硫黄の酸化によりボイラーで生成される少量のSOは、SCR触媒により酸化して三酸化硫黄(SO)にされる。また、副反応は、好ましくない副産物である硫酸アンモニウム(NHSO及び硫酸水素アンモニウムNHHSOを生成することがある。これらの副産物の形成を支配する複雑な関係があるが、これは工程条件の適切な制御により最小化することができる。
アンモニアスリップ
SCR反応器の下流の排煙中の未反応NHをNHスリップ(slip)という。下流装置の閉塞及び腐蝕を起こす可能性のある(NHSO及びNHHSOの形成を最小化するためには、NHスリップを5ppm未満、好ましくは2〜3ppmに維持することが必須である。これは、高い硫含量の石炭ではより大きな問題になるが、燃料の硫含量及びSCR反応器でのSOの酸化により、初期の高レベルのSOからもたらされる高レベルのSOにより発生する問題である。
作動温度
触媒コストは、SCR装置の資金コストの15〜20%を占めている。従って、空間速度を最大化にし、触媒の体積を最小化することができる程度の高温で動作することが必須である。同時に、SCR反応よりさらに温度敏感性であるSOのSOへの酸化率を最小化する必要がある。チタン及びバナジウム酸化物触媒を使用するSCR工程の最適な動作温度は、約343〜399℃(650〜750°F)である。大半の設備は、排煙温度の低い期間、例えば低負荷操作中に排煙を所望の温度で反応器に提供するために迂回の節約装置を使用する。
触媒
SCR触媒は、担持体(酸化チタン)及び活性成分(バナジウム及び一部の場合にタングステンの酸化物)の混合物であるセラミック材料からなっている。現在使用されるSCR触媒の2つの主な形状は、蜂巣状及び板状である。蜂巣状は、一般的に触媒が構造全体に混入されたり、あるいは(均質)基材上にコートされた押出セラミックである。板状は、支持体材料が一般的に触媒でコートされている。塵を含む排煙を処理する場合には、反応器は通常垂直で、排煙は下方に流れる。触媒は、通常一連の2〜4個のベッド又は層で配列されている。より良好な触媒の使用方法では、3層又は4層を使用することが良く、さらに1つの層を予備とするが、初期には設置されない。
触媒活性が低下する場合には、付加的触媒が反応器内の利用可能な空間に設置される。不活性化が続く場合には、触媒はローテーションにより最上部から始めて1度に1層ずつ交替される。このような方法は、触媒の使用における最大の効果をもたらす。触媒は、蒸気を洗浄剤として沈着物を除去するために周期的に煤の除去処理を行う。
化学反応
SCR工程の化学反応は、以下のとおりである:
4NO+4NH+O→4N+6H
2NO+4NH+O→3N+6H
副反応は、以下のとおりである:
SO+1/2 O→SO
2NH+SO+HO→(NHSO
NH+SO+HO→NHHSO
工程説明
図20に示すように、汚染された排煙112は、電力発電システム110から排出される。この排煙は、選択的接触還元(SCR)サブシステム2170に流入する前に、他の大気汚染制御(APC)サブシステム122により処理されてもよい。さらに、排煙は、SCRから排出された後、又は煙突117から排出される前に、他のAPCサブシステム(図示されず)により処理されてもよい。流入する排煙中のNOxは、1つ以上の分析器2003により測定される。NOxが含まれた排煙2008は、アンモニア(NH)注入グリッド2050を通過する。アンモニア2061は、アンモニア/希釈空気ミキサー2070により希釈空気2081と混合される。混合物2071は、注入グリッド2050により排煙内に投入される。希釈空気送風機2080は、周囲空気152をミキサー2070に供給し、アンモニア保存及び供給のサブシステム2060は、アンモニアをミキサー2070に供給する。Noxを含む排煙、アンモニア及び希釈空気2055は、SCR反応器2002内を通ってSCR触媒の上を通過する。SCR触媒は、NOxとアンモニアが窒素及び水に還元される反応を促進する。NOxが含まれていない排煙2008は、SCR反応器2002から排出され、潜在的に他のAPCサブシステム(図示されない)及び煙突117を通じてプラントから排出される。
SCR反応器2002から排出されるNOxが含まれていない排煙2008の流れ、又は煙突117には、付加的なNox分析器2004がある。測定されたNOx流出口値2111も、測定されたNOx流入口値2112と合計してNoxの除去効率2110を計算する。Noxの除去効率は、排煙から除去される流入NOxの割合で定義される。
計算されたNoxの除去効率2022は、アンモニア/希釈空気ミキサー2070及び最終的にはアンモニア注入グリッド2050に対するアンモニア流速設定点2021Aをリセットする調節制御システムに入力される。
SCR工程制御
通常のSCR制御システムは、図20に示されるような段階的制御システムに依存している。内部PID制御器ループ2010は、ミキサー2070内に流れるアンモニア流れ2014を制御するのに使われる。外部のPID制御器ループ2020は、NOx排出を制御するのに使われる。操作者は、NOx排出除去効率設定点2031を外部ループ2020に入力することを担当する。図21に示すように、セレクター2030は、操作者が入力する設定点2031に対する上限制約2032を設定するのに使われる。また、制御器が負荷転換を適切に行うことができるようにするため、負荷用フィードフォワード信号2221(図21には示されていない)がしばしば使用される。このような実装形態では、負荷センサー2009が電力発電システム110の測定された負荷2809を生成する。この測定された負荷2809は、信号2221を生成する制御器2220に送られる。信号2221は、アンモニア流れ設定点2021Aを合計して調整されたアンモニア流れの設定点2021Bを形成し、これは、PID制御器2010に送られる。PID2010は、設定点2021Bを測定されたアンモニア流れ2012と合計して、ミキサー2070に供給されるアンモニアの量を制御するアンモニア流れVP2011を形成する。
この制御器のメリットは、次のとおりである。
1.標準制御器:SCRの製造業者及び触媒販売者により明示される要件を実施するために使われる単純な標準制御器の設計である。
2.DCS基盤の制御器:構造は比較的単純で、装置のDCSで実行することができ、機器及び触媒操作の要件を施行する最も安価な制御仕様である。
SCR操作の問題点
以下のような多数の操作パラメータがSCR操作に影響を及ぼす。
・流入NOx負荷、
・NOx:アンモニアの局所的モル比、
・排煙温度、及び
・触媒品質、利用可能性及び活性。
図20の制御機器に関わる操作上の問題点には、以下のようなものがある。
1.アンモニアスリップの測定:アンモニアスリップを明示された制約内に維持することは、SCRの操作において非常に重要である。しかし、アンモニアスリップを計算しなかったり、あるいはオンライン測定を行わないこともしばしばである。アンモニアスリップの測定が利用可能であっても、制御ループに直接含まれない場合がある。このため、SCR操作に最も重要な変数の1つが測定されない。
SCR操作の目的は、最小のアンモニア「スリップ」と、所望のレベルのNOx除去率を得ることである。アンモニアスリップは、Noxの含まれていない排煙流れの中で未反応アンモニアの量により定義される。アンモニアスリップのうちアンモニアの実際の量に関わる経済的コストは少ないが、アンモニアスリップの否定的な影響は大きい。すなわち、
・アンモニアは、排煙中のSOと反応して塩を形成することができる。これは、空気予備加熱器の熱伝達の表面上に沈着する。この塩が空気予備加熱器による熱伝達を低下させるだけでなく、灰を付着させて熱伝達をさらに低下させる。一定時点で空気予備加熱器の熱伝達は、予備加熱器が掃除(洗浄)のために作業から除去される時点まで低下する。最小限に、空気予備加熱器の水洗は、装置速度を低下させる結果となる。
・アンモニアもまた、触媒に吸収される(触媒はアンモニアスポンジであってもよい)。排煙/NOx負荷の急激な減少は、異常に高い短期アンモニアスリップをもたらすことがある。これは、単に一時的な状態であり、通常の制御システムの範囲外である。特性上、一時的ではあるが、このスリップされたアンモニアは依然としてSOと結合し、塩が空気予備加熱器に沈着する。短期間ではあっても、動的な一時現象は、空気予備加熱器上に塩層を多く蓄積(及び飛散灰の付着を促進)する可能性がある。
・アンモニアは、大気汚染物質として定義される。アンモニアスリップが非常に少量であっても、アンモニアは臭いが非常に強いため、比較的微量でも地域社会で臭いの問題を発生させることがある。
・アンモニアは、飛散灰に吸収される。飛散灰中のアンモニア濃度が大きすぎる場合、飛散灰の廃棄にかかるコストが増加する。
2.NOx除去効率の設定点:アンモニアスリップの測定を行わない場合、NOx除去効率の設定点2031は、アンモニアスリップをスリップ制限よりはるかに下に維持するために、操作者/エンジニアリングスタッフによりしばしば控え目に設定される。NOxの設定点を控え目に選択することで、操作者/エンジニアらは、SCR全体の除去効率を低下させる。NOx除去効率のための控え目な設定点は、アンモニアスリップ制限を犯さないことを保障することはできるものの、システムがアンモニアスリップ制限いっぱいで動作する場合、可能な効率範囲よりも効率が低くなることもある。
3.SCRに対する温度効果:標準制御システムでは、SCR流入ガス温度を制御する試みが行われないことが明らかである。一般的に、気体の温度を保障する一部の方法は、施行される許容可能な限界内であり、温度が最小限度未満であればアンモニア注入を防止する。大半の場合、温度を実際に制御したり、あるいは最適化しようとする試みはない。また、温度を基にしたり、あるいは温度プロファイルを基にするNOx設定点の変更は行われない。
4.NOx及び速度プロファイル:ボイラー動作及び配管は、SCRの表面を通じたNOxの非均一分布に寄与する。最小のアンモニアスリップのために、NOx対アンモニアの割合を制御する必要があり、均一な混合がない場合、この制御は高いアンモニアスリップ部分を避けるための局所的なものでなければならない。残念ながら、NOx分布プロファイルは、配管だけの関数ではなく、ボイラー操作の関数でもある。従って、ボイラー操作の変更は、Noxの分布に影響を及ぼす。標準制御器は、SCRに対するNOx流入及び速度プロファイルが大半均一でなかったり、あるいは安定しないことを考慮しない。これは、他の区域の試薬量を適切に保障するために、配管断面の一部で試薬の過量注入をもたらす。その結果、所与のNOx除去効率に対してアンモニアスリップが増加するようになる。同様に、操作者/エンジニアスタッフは、しばしばNOx設定点を下げることにより分布異常に対応する。
NOx流入口及び流出口分析器(2003及び2004)は、単一分析器であってもよく、分析隊列の一部形態であってもよいことが理解できる。平均NOx濃度の他にも、複数の分析値がNOx分布/プロファイルに対する情報を提供する。付加的NOx分布情報のメリットを取るためには、アンモニア流れを局所的NOx濃度により近接させるように一致させるため注入グリッドの相異する領域中の総アンモニア流れを動的に分布させるには、複数のアンモニア流れ制御器2010及び少しの工夫が必要である。
5.動的制御:さらに標準制御器は、效果的な動的制御の提供に失敗する。すなわち、SCRに対する流入口の条件が変化してアンモニア注入速度の調整が必要な場合、NOx還元効率のフィードバック制御がこの工程変数における著しい逸脱を防止できる可能性は低い。速い負荷の一時的変化及び工程時間の遅延は、動的なイベントとして相当の工程逸脱を起こす場合がある。
6.触媒の衰退:触媒は時間が経つにつれて衰退し、SCRの除去効率を低下させ、アンモニアスリップを増加させる。制御システムは、NOx除去率を最大化するために、このような低下を考慮しなければならない。
7.連続平均排出:複数の規制排出許容値は、瞬間的、そして連続平均排出限界の一部形態の両方を提供する。動的工程の逸脱を許容するためには、モーメント排出限界が連続平均限界より高い。モーメント排出限界における持続した稼動は、連続平均限界の違反をもたらす。連続平均排出限界は、ある移動する、又は経過する時間帯に対するモーメント排出値の平均である。時間帯は、1時間程度短かったり、1年程度長くともよい。一部の典型的な時間帯は、1時間、3時間、24時間、1ヶ月及び1年である。連続平均の自動制御は、標準制御器内で考慮されない。大半のNOx排出許容値は、領域別の8時間連続平均の周囲空気NOx濃度限界で制限されている。
操作者は、通常、SCRに対する所望のNOx除去効率の設定点2031を設定し、飛散灰からの稀なサンプル情報を基にして少しの調整を行う。負荷の一時的変化におけるSCRの動的制御を改善したり、SCRの操作を最適化するための努力は少ない。最適なモーメント、及び可能であれば連続平均NOx除去効率を選択することもまたWFGDの最適操作に関わりのあるものと類似の営業、規制/クレジット、及び工程問題のため解決が難しい問題である。
その他のAPC工程は、以下のようなものと関連した問題点を有する。
・工程の動的操作の制御/最適化、
・副産物/共生成物の品質の制御、
・連続平均排出の制御、及び
・APC資産の最適化。
他の工程におけるこのような問題点は、WFGD及びSCRに対する上記で詳述したものと同様である。
本発明によれば、制御装置が汚染物質の排出を制御する工程(プロセス)を行う大気汚染制御(APC)システムの稼動を指示する。前記工程は、複数の工程パラメータ(MPP)を含む。MPPのうちの1つ以上は、制御可能な工程パラメータ(CTPP)であり、MPPのうちの1つは、前記システムにより排出される汚染物質(AOP)の量である。
入力装置が最適化目的を判別するように、例えば排出されたAOPを最小化したり、システムの挿入配列を最小化するように設定される。前記入力装置は、例えばユーザー入力装置であるキーボード又はマウス、もしくはその他の種の入力装置として通信ネットワークを介してポートに接続されるネットワークサーバであってもよい。
前記制御装置は制御演算装置を有し、これはパーソナルコンピュータ(PC)又はその他の種の電算装置の形態又は部分形態であってもよい。制御工程は、時々多変数工程制御器の一部として呼ばれることもある。前記制御装置は、MPPの現在値に基づいて、つまり現在MPPのうちの1つ以上を基にしてCTPのうちの少なくとも1つのための設定点を決める論理、例えばソフトウエア試験プログラミング又は他の種のプログラム論理、及び前記判別された最適化目的を有するように設定される。前記制御装置は、次いで前記CTPのために決定された設定点に従って1つのCTPPの制御を指示する。
本発明の特徴によれば、前記制御装置は、CTPP各々と排出されたAOPとの関係を示す神経回路網工程モデル又は非神経回路網工程モデルのうちの1つを含み、前記制御演算装置は、前記1つのモデルに基づいて設定点を決める。用いられるモデルは、第1原理モデル、ハイブリッドモデル又は回帰モデルを含んでもよい。
通常、前記工程は、排出されたAOPの実際値に対する目的又は限界を示す定義されたAOP値(AOPV)を有する。前記実際値は、測定されたものであるか、計算されたものであってもよいことが分かる。AOPVは、例えば排出されたAOPの実際値に対する規制制約、例えば排出されたAOPのモーメント又は平均値に対する限界、もしくはその他の種の目的又は限界であってもよい。AOPVが定義されれば、判別された最適化目的は、排出されたAOPをAOPV未満のレベルに維持することができる。もし最適化目的が、排出されたAOPをAOPV未満の明示された量に、あるいは明示された範囲内に維持することである場合には、制御演算装置はさらにAOPVに対する設定点を決めるようになる。すなわち、各々の設定点を決めるときに、MPPの現在値、判別された最適化目的及びAOPVが考慮される。
一部のAPC工程の実行により生産される副産物、例えば石膏を生成することが分かる。その場合に判別された最適化目的は、生産された副産物の品質を安定化したり、最大化したり、あるいは最小化することであってもよい。副産物が生産される場合、MPPのうちの1つは、生産された副産物の品質(QPBP)であってもよく、工程は、QPBPの実際の品質に対する限界を示す定義されたQPBP値(QPBPV)、例えば最小量の値を有してもよく、判別された最適化目的は、QPBPをQPBPVのレベルに、それ以上又は以下のレベルに維持することであってもよい。しかし、判別された最適化目的が、QPBPをQPBPVに対して一定のレベルに維持することであるか否かに関係なく、有利に前記制御演算装置は、QPBPVに基づいて設定点を決めるようになる。すなわち、QPBPを含むMPPの現在値、判別された最適化目的、及びQPBPVは各設定点を決めるときに考慮される。
例えば、システムは、SO含有湿潤排煙を受容し、石灰石スラリーを適用して受容されたSO含有湿潤排煙からSOを除去することによりSOの排出を制御し、脱硫された排煙を排出する湿式排煙脱硫(WFGD)システムであってもよい。その場合、AOPは排出された脱硫排煙中のSOの量になり、MPPは通常適用された石灰石スラリーのpHに相応する第1パラメータ、及び石灰石の分布に相応する第2パラメータを含み、前記パラメータのうちの1つ又は両方はまたCTPPになることができる。当業者には公知であるが、石灰石スラリーのpHは、測定されたり計算されたpH値及び/又は適用されたスラリーの量に相応する値で表示されることができる。前記分布は、しばしばポンプ配列(pump line-up)で特徴付けられるものとして示され、一般的には、スラリーがポンプ注入される吸収機内のレベルに関するものである。
設定点は、例えば排出された排煙中のSOの量を最小化するために、このようなパラメータのうちの1つに対して、(i)そのパラメータの現在値、(ii)排出された脱硫排煙中のSOの量、及び(iii)判別された最適化目的に従って決定されてもよい。制御演算装置は、次いで判別された最適化目的のためのWFGDシステム稼動を最適化するために、そのパラメータのために決められた設定点に基づいて前記1つのパラメータの制御を指示する。前記言及された決められた設定点は、複数の決められた決設定点のうちの1つであり得ることを理解する必要がある。例えば、第1及び第2パラメータの両方のための設定点が決定されてもよく、1つ以上のパラメータの制御は、判別された最適化目的のためのWFGDシステム稼動を最適化するために決定された設定点に従って指示される。
一般的に、WFGDシステムは、受容されたSO含有湿潤排煙から除去されたSOを結晶化する酸化空気を適用することにより、受容されたSO含有湿潤排煙からSOの除去の副産物として石膏を生産する。従って、MPPは一般的に適用された酸化空気の量に相応する第3のパラメータをさらに含むが、これはまた別のCTPPであってもよい。その場合、このパラメータのための設定点は、又は代替的に、石膏副産物の品質を特定のレベルに、又は特定の範囲内に増加させるため、(i)その現在値、(ii)排出された脱硫排煙中のSOの量、及び(iii)判別された最適化目的に従って決定することができる。制御演算装置は、次いで前記判別された最適化目的のためのWFGDシステム稼動を最適化するために前記パラメータの制御を、その決定された設定点に従って指示することもできる。
一方、前記システムは、NOx含有排煙を受容し、アンモニア及び希釈空気を適用して受容されたNOx含有排煙からNOxを除去することによりNOxの排出を制御し、NOx排煙の排出を減少させる選択的接触還元(SCR)システムであってもよい。この場合、AOPは、排出された排煙中のNOxの量であり、MPPは適用されたアンモニアの量に相応するパラメータを含むようになる。このパラメータは、一般的にCTPPである。従って、制御演算装置は、このパラメータのための設定点を、(i)その現在値、(ii)排出された排煙中のNOxの量、及び(iii)判別された最適化目的に従って決定することができ、前記判別された最適化目的のためのSCRシステム稼動を最適化するために前記パラメータの制御を、前記決められた設定点に従って指示することができる。また、SCR工程のMPPは、通常、排出された排煙中のアンモニアの量を含み、これにより制御演算装置は、所望の場合、適用されたアンモニアの量に相応するパラメータのための設定点を、排出された排煙中のアンモニアの量の現在値に基づいて決めてもよいことが分かる。
証明されるように、WFGD及び類似のサブシステムの效率的かつ效果的な操作は、以前よりさらに複雑になった。また、このような複雑性は、付加的な競争圧力及び付加的な汚染物質規制とともにこれからも増加していくことが予想される。一般的な工程(プロセス)制御計画及び技法は、このような複雑性を取り扱うことができないため、前記のような操作の最適制御は不可能である。
サブシステムの有用な作動寿命の過程で動的に変化して来たビジネス環境において、任意の所与の時点におけるサブシステム操作の商業的価値を最大化することが好ましい。このような資産の最適化は、通常の工程制御戦略では考慮されない要因に基づいて行われる。例えば、規制クレジットを取引するためのマーケットが存在するビジネス環境では、率的なサブシステムの操作は、付加的な規制クレジットが生成され、サブシステムの価値を最大化して販売できるように、しかし、このようなクレジットを生成するのにかかる付加的な稼動コストは許容しないように指示することができる。
従って、SO吸収の最大化、稼動コストの最小化、及び副産物の品質規定の充足という単純な計画よりは、より複雑な計画を用いて、SO吸収が最大化したか、稼動コストが最小化したか、又は副産物の品質規定が満たされたかに関係なく、サブシステム操作を最適化することができる。また、サブシステムの制御を実質的に向上させるために、ツールのみを提供するのではなく、例えば向上したサブシステムの制御を完全自動化することができる。従って、操作を自動化し、操作パラメータ及び制約に対してのみ最適化するのではなく、ビジネス環境に対しても最適化することができる。生成された規制クレジットのマーケット価値がそのようなクレジットを発生させるためのサブシステムの付加的稼動コストより少ない場合には、サブシステムは、規制許容レベルに非常に近接するように、又は正確にそのレベルで動作するように自動的に制御されてもよい。しかし、発生した規制クレジットのマーケット価値がそのようなクレジットを発生させるためのサブシステムの付加的稼動コストよりも大きい場合には、そのような操作を調整して規制許容レベル以下で動作し、これにより規制クレジットを発生するように前記のような操作を調整するために自動的に制御されてもよい。実際に、自動化された制御は、サブシステムが限界ドルの価値以下、つまり排出クレジットの価値がそのようなクレジットを生成するための処理コストと等しくなる価値まで、可能な限り多くのSOを除去する動作を行うように指示することができる。
要約すると、WFGD及び類似のサブシステムの最適化された動作は、複雑な工程及び規制要素のみならず、複雑なビジネス要素、及びこのような様々な種類の要素中の動的変化についても考慮する必要がある。最適化は、例えば複数のWFGD処理装置のうちの1つがオフラインになる局所的ビジネス要素、及び/又は例えば他のWFGD処理装置が前記オフラインになる領域内で作動する領域的ビジネス要素、又はさらに全般的なビジネス要素を考慮することが必要である。例えば、長期及び短期SO規制クレジットの広範囲で動的に変化するマーケット価格もまた操作を最適化するときに考慮する必要がある場合もある。
従って、制御は、好ましくはSO除去を最小化したり、規制許容値に符合したり、又は最大のSO除去率に符合するように操作を調整できなければならない。このような調整を果たす能力は、サブシステムの所有者に対して、規制クレジットでの動的変化のメリットを取り、1つのサブシステムを使用してまた他のサブシステムによる許容外範囲の操作から脱離させるクレジットを発生させたり、また他のサブシステム所有者の、そのサブシステムの許容外範囲の操作から脱離させる規制クレジットを購買することのメリットを取るようにする。また、前記制御は、好ましくは、追加的規制クレジットの発生がもはや有益ではなくなった場合には、すぐに操作を再び調整できなければならない。すなわち、制御システムは、機器、工程、規制及びビジネス制約の支配下にあるAPC資産の稼動を持続的に最適化する必要がある。
石膏副産物の所要の純度を超過しなければならない動機がないため、制御は好ましくは、石膏副産物の品質を石膏品質の仕様又は他の販売制約と一致させる操作の最適化を容易にしなければならない。最適化された制御は、所望のSO吸収レベル、及び石膏生産の要件の観点からOレベルを調整する作用を予想して指示することにより、石灰石の沈床の防止を容易にしなければならない。
上記のように、排出を連続平均値で制御することは複雑な問題である。これは、少なくとも部分的には、連続平均の時間帯が常に前に移動し、任意の所与の時点では複数個の時間帯がアクティブになるからである。一般的に、アクティブな時間帯は、所与の時点から過去の時間にわたり、その他のアクティブな時間帯は、所与の時点から未来の時点にわたる。
連続平均排出の管理は、連続平均の時間帯の間のすべての排出の統合を要求する。従って、排出を連続平均目標に対して最適化することは、実際過去排出及び予想される未来排出又は稼動計画をアクティブな時間帯すべてに対して考慮するモーメント排出目標が選択されなければならないことを要求する。
例えば、4時間の連続平均の最適化は、複数の時間帯の検査を必要とするが、その第1は、過去に3時間59分前に開始して現在時点で終了し、その最後は、現在時点で開始し、未来の4時間後に終了する。各時間帯の1分解像度としては、このような比較的短い4時間連続平均の最適化が479時間帯の制約を満たすモーメント目標を選択することを含む。
単一の統合時間帯のために連続平均排出目標を決めることは、まず統合された時間帯における過去排出の合計を計算した後、例えば前記単一統合時間帯の間に平均排出をもたらす、前記単一統合時間帯の残りに対する未来排出速度が連続平均限界であるか、その未満になると予測することを含む。未来排出は現在時点で開始する。しかし、正確にするためには、未来排出はさらに単一統合時間帯の残りの時間の間の稼動からの排出の予測を含まなければならない。
時間帯が長くなるほど、未来排出を予測することはさらに難しくなる。例えば、次の数時間における稼動からの排出は、相当正確に予測することができるが、次の11ヶ月間における稼動からの排出は予測することがさらに難しくなる。その理由は、季節的変動及び計画された稼動停止等の要因が考慮されなければならないためである。さらに、計画されない稼動停止又はサブシステムにかかる用量限界に対する安全マージンを付加する必要がある場合もある。
従って、WFGD工程を最適化するためには、例えば工程を操作制約内に維持しながら、稼動コストを最小化し、かつ、SO除去率を最大化するためには、WFGD工程に対する最適な設定点を自動的に決めなければならない。
次の本発明の実施形態では、モデルベースの多変数予測制御(MPC)アプローチを用いてWFGD工程の最適な制御を提供する。一般に、MPC技術は、工程の多重入力、多重出力の動的制御を提供する。当業者に理解されるように、MPC技術は、1970年代の後半に開発された。前記分野の技術的進歩は今日まで続いている。MPCは、複数のモデルベースの制御技法又は方法を含む。このような方法は、制御エンジニアが複雑で相互作用的な動的工程を、従来のPIDタイプのフィードバック制御システムに対して可能なよりも一段と效果的に取り扱うことができるようにする。
MPC技法は、線形及び非線形工程の両方を制御することができる。すべてのMPCシステムは、明らかに未来に対する工程の動きを予測するために動的モデルを用いる。これにより、特定制御作用が目的関数の最小化のために計算される。最終的に、各時間増分で区間が未来に向けて1回増分だけ移動する移動区間(receding horizon)が実行される。また、各増分では、その段階で計算される順序の制御作用に相応する第1制御信号の適用が行われる。一般化予測制御(GPC)、動的マトリックス制御(DMC)及びペガサスパワーパーフェクタ(Pegasus' Power Perfector(登録商標))等の、制御エンジニアが入手できる複数の商用プログラムがある。Comancho及びBordonsは、モデル予測制御(ロンドンスプリンガ発行、1999)でMPCの主題に対する立派な概観を提供する一方、Lennart Ljundのシステム識別、ユーザーのための理論(Prentice-Hall出版社、第2版、1999)は、MPCを実際に実施する必要のある工程の動的モデリングに関する最高の著書である。
MPC技術は大半、DCSにより実施される基本的な土台になる調整管理(regulatory control)を代替するよりは、操作者により普通行われる稼動の実行を監督する方式で使用される。MPC技術は、工程に対して最適な設定点を提供するために、数学的技法を用いて競争的な目標及び工程制約のバランスを自動的にとることができる。
一般的にMPCは、次のような特徴を有する。
動的モデル:予測のための動的モデル、例えば非線形動的モデル。このモデルは、工程のパラメトリック及び段階的試験を用いて簡単に展開される。動的モデルの高品質が優れた最適化及び制御実行のためのカギになる。
動的判断:工程ダイナミックス、又は工程が経時的にどのように変化するかはプラントの段階的試験を用いて判断される。このような段階的試験を基にして、最適化−基盤アルゴリズムを使用してプラントのダイナミックスを判断する。
定常状態の最適化:定常状態の最適化により工程のための最適な作動起点を検出する。
動的制御:動的制御器を使用して定常状態の解決策を起点とする最適な制御手段を計算する。制御手段は、最適化により計算される。前記最適化は、1セットの制約の支配を受けるユーザー明示のコスト関数を最小化するために使われる。コスト関数は、工程の動的モデルを用いて計算される。前記モデル、コスト関数及び制約を基にして、工程の最適な制御手段が計算できる。
動的フィードバック:MPC制御器は、動的フィードバックを用いてモデルをアップデートする。フィードバックを用いることで、干渉効果、モデル不一致及びセンサーノイズが著しく低減することができる。
発展した調整の特徴:MPC制御器は、完璧なセットの調整能力を提供する。操作変数に対しては、ユーザーが所望する値及び係数、移動ペナルティー係数、下限値及び上限値、制約変化率、及び上限及び下限の遵守制約(hard constraint)を設定することができる。また、ユーザーは、定常状態の最適化の出力値を用いて操作変数の所望値を設定することができる。制御変数に対しては、ユーザーが所望値及び係数、誤差加重、限界、優先化された遵守及び軌跡集中制約(trajectory funnel constraint)を設定することができる。
シミュレーション環境:オフラインのシミュレーション環境が制御器の初期試験及び調整のために提供される。シミュレーション環境は、モデル不一致及び干渉拒否能力の捜査を可能にする。
オンラインシステム:MPC制御アルゴリズムは、好ましくは、標準商用オペレーティングシステム上で実行できる標準化ソフトウエアのサーバーで行われる。前記サーバーは、標準化インタフェースを介してDCSに接続する。エンジニア及び操作者は、グラフィックユーザーインタフェース(GUI)を使用してMPCアルゴリズムの出力値の予測を有利に行うことができる。
堅固な誤差の取り扱い:ユーザーは、MPCアルゴリズムが入力値及び出力値における誤差にどのように対応すべきかを明示する。制御器は、主要変数に誤差が発生した場合、動作が止められたり、過去の最新の良好な値が非重要変数として使用されることがある。誤差を適切に取り扱うことにより、制御器の実時間動作が最大化できる。
仮想オンライン分析器:工程変数の直接的な測定が利用できない場合には、環境がソフトウエア基盤の仮想オンライン分析器(VOA)を行うためのインフラを提供する。このようなMPCツールを使用して、所望の工程変数のモデルが、適切な場合、実験室データを含むプラントの履歴データを用いて展開することができる。前記モデルは、次いでリアルタイムの工程変数として供給され、リアルタイムで測定されない工程変数を予測することができる。このような予測は、モデル予測制御装置に使用されてもよい。
WFGD工程の最適化
以下で説明するように、本発明によれば、SO除去効率を向上させることができる。すなわち、要求されたり望まれる制約、例えば石膏純度制約、モーメント排出限界及び連続排出限界を満たすとともに、装置からのSO除去率を最大化及び/又は最適化することができる。また、稼動コストも代替的に最小化及び最適化することができる。例えば、WFGDに対する排煙負荷が減少する場合、スラリーポンプを自動的にオフさせることができる。さらに、酸化空気流れ及びSO除去率も、代替的に石灰石の沈床条件を防止するために動的に調整されてもよい。本発明に示されるMPC制御装置を用いて、WFGD工程が制約にさらに近接するように管理することが可能であり、一般的に制御されるWFGD工程に比べて向上した性能を達成することができる。
図5A及び図5Bでは、WFGDの制約ボックスを500及び550で示す。図示するように、工程及び装置制約(505〜520)を判断し、複数の独立的な変数(MV)と判断された制約間の工程基盤の定常状態の関係、つまり独立的/制御された変数を用いることにより、前記制約をMVに関して共通の「空間」に位置させることができる。この空間はn次元の空間であり、ここでnは問題内の自由度の個数又は操作されたMVの個数と同じである。しかし、例示の目的として2つの自由度、つまり2つのMVがあると仮定する場合には、システム制約及び関係を2次元(X−Y)プロットを用いて表すことができる。
好ましくは、前記工程及び装置制約は、実行可能な稼動525の領域で示された、空ではない解決空間の境界を形成する。この空間内の任意の解決策は、WFGDサブシステム上の制約を満足することになる。
すべてのWFGDサブシステムは、ある程度の可変性を示す。図5Aを参照すれば、典型的な通常の運営計画は、正常のWFGDサブシステムの可変性を実行可能な解決空間525の安全域530内に安全に位置させることであって、これは一般的に安全な操作を保障する。操作を安全域530内に維持することは、操作を実行不可能/好ましくない稼動区域から離して、つまり実行可能な領域525の外側の区域から離して維持することである。通常、分布制御システム(DCS)のアラームは、作動者に当該問題を知らせるために測定可能な制約の限界又はその近傍に設定する。
実行可能な空間525内のいずれの地点も制約(505〜520)を満足させることは事実であるが、実行可能な空間525内の互いに相異する地点が、同一の稼動コスト、SO吸収効率又は石膏副産物の生産能力を有するものではない。利益、SO吸収効率又は石膏副産物の生産/品質の最大化、又はコストを最小化のためには、実行可能な空間525内の稼動のため経済的に最適な地点を判別することが必要である。
本発明によれば、工程変数、及びこれら変数の値を維持したり変更させるコスト又は利益は、例えば利益を示す目的関数を生成するのに使用されてもよいが、この目的関数は、一部の場合にはマイナスコストとして認められてもよい。図5Bに示すように、線形の2次、又は非線形プログラミング解決技法を用いれば、以下にさらに記載されるような最適な実行可能な解決点555、例えば実行可能な稼動525の区域内の最小コスト又は最大利益の解決点を判別することができる。制約及び/又はコストはいつでも変わることができるため、リアルタイムで、例えばMPC制御装置が実行される度に、最適な実行可能な解決点555を再度判別することが好ましい。
従って、本発明は、安全域530内の通常の稼動地点から最適な稼動地点555に、及びコストの制約に変化が発生する場合には最適な稼動地点555からまた他の最適な稼動地点に工程操作の自動目標の再設定を容易にする。一旦最適な地点が決まれば、工程を最適な稼動地点に移動させるMV値に必要な変更を計算する。これらの新しいMV値が目標値になる。目標値は、定常状態値であり、工程ダイナミックスを考慮しない。しかし、工程を安全に移動させるためには、工程ダイナミックスを制御し、かつ管理する必要があり、これは次のテーマになる。
工程を以前の稼動地点から新しい最適な稼動地点に移動させるためには、予測工程モデル、フィードバック及び高頻度の実行が行われる。MPC技法を用いて、動的経路又は制御変数(CV)の軌跡を予測する。この予測を使用し、操作されたMV調整値を現時点のみならず未来、例えば短期的未来に対しても管理することで、CVの動的経路を管理することができる。CVに対する新しい目標値は計算することができる。これにより、所望の計画対象期間における動的誤差も、CVに対する予測された経路と新しいCV目標値との差として計算することができる。再度、最適化理論を用いて誤差を最小化する最適経路が計算できる。実際にエンジニアは、好ましくは、一部のCVが他のものよりさらに厳しく制御されるように誤差に加重値を与えることができる。また、予測工程のモデルは、1つの稼動地点から次の地点への経路又は軌跡の制御を可能にし、これにより新しい最適稼動地点に移動する間の動的問題を避けることができる。
要約すると、本発明は、所望の結果はほぼいずれでも得ることができるように工程を最適化する必要があり、実行可能な稼動区域525内のほぼいずれの地点でも稼動が行われるようにする。すなわち、目的が最低可能な排出、副産物の最高品質又は最大量、最低の稼動コストなど、どのような結果をもたらすものであっても、工程を最適化することができる。
最適に稼動地点555に密接に接近するために、MPCは好ましくは、小さな偏差が制約違反を起こさないように工程可変性を低下させる。例えば、予測工程モデル、フィードバック、及び高頻度の実行の使用を通じて、MPCは制御された工程の工程可変性を著しく低下させることができる。
定常状態及び動的モデル
上述したように、MPC制御装置のために定常状態及び動的モデルが使用される。以下ではこれらのモデルについてより詳細に説明する。
定常状態モデル:特定セットの入力値のための工程の定常状態は、関連する工程値のセットにより説明されるものであって、入力値の以前値は、状態にそれ以上影響を及ぼさないようにすべての入力値が長期間一定に維持される場合に工程が達成する状態である。WFGDに関しては、工程装置の結晶化器内での大容量、そして比較的遅い反応により定常状態まで行く時間が通常48時間程度である。定常状態モデルは、工程入力値のセットに対する定常状態に関わる工程値を予測するときに使われる。
第1原理の定常状態のモデル:定常状態モデルを展開するための1つのアプローチは、工程のエンジニアリング知識を基にして誘導される一連の等式を利用するのである。この等式は、工程入力値と出力値との既知の根本的な関係を示すことができる。既知の物理的、化学的、電気的及びエンジニアリング等式を用いてこの一連の等式を誘導することができる。このモデルは、既知の原理を基にしているため第1原理モデルと呼ぶ。
大半の工程は、本来第1原理技法及びモデルを使用して考案されている。このモデルは一般に、図5Aを参照して上述したような安全域内の安全な稼動を提供するのに十分な精度がある。しかし、非常に正確な第1原理基本モデルを提供することは、しばしば時間が長くかかり、コストが多くかかる。また、知られていない影響が第1原理モデルの精度に相当な影響を与える。従って、非常に正確な定常状態モデルを展開するために、代替としてのアプローチがしばしば使用されている。
経験的モデル:経験的モデルは、工程で収集された実際データを基にする。経験的モデルは、モデル入力値と出力値との関係を決めるために、データ回帰法を用いて展開される。しばしばデータは、個別入力値が出力値に対するそれの影響を記録するために移動される一連のプラント試験で収集される。このようなプラント試験は、経験的モデルのために十分なデータを収集するために、数日又は数週間がかかることもある。
線形経験的モデル:線形経験的モデルは、線又は高次元では面を一定セットの入力及び出力データに適合させることにより生成される。このようなモデルを適合させるためのアルゴリズムは容易に入手可能であり、例えばエクセル(Excel)は、線を経験的データセットに適合させるための回帰法アルゴリズムを提供する。
神経回路網モデル:神経回路網モデルは、また他の形態の経験的モデルである。神経回路網は、線より複雑な曲線が経験的データセットに適合するようにする。神経回路網モデルに対する構造及び訓練アルゴリズムに対する生物学的アイディアを基にする。神経回路網は、ニューロンの基本的機能性をモデルとするノードで構成される。前記ノードは、脳内のニューロン間の基本的相互作用をモデルとする加重値により連結される。前記加重値は、脳内の学習能力を真似た訓練アルゴリズムを使用して設定される。神経回路網基盤モデルを用いる場合、線形経験的モデルを使用して達成できるものよりはるかに豊富で複雑なモデルを展開することができる。入力値(X)と出力値(Y)との工程関係は、神経回路網モデルを用いて表すことができる。ここでの神経回路網又は神経回路網モデルに関する記載は、神経回路網基盤の工程モデルとして理解されなければならない。
ハイブリッドモデル:ハイブリッドモデルは、第1原理又は公知の関係及び経験的関係からの要素の組合わせを含む。例えば、XとY間の関係の形態は知られてもよい(第1原理要素)。前記関係又は等式は、いくつの定数を含む。これら定数の一部は、第1原理知識を用いて求めることができる。その他の定数は、第1原理から求めることが非常に難しいか、コストが多くかかる。しかし、X及びYに対する実際の工程データ及び第1原理知識を用いて未知定数のための値を求める回帰法問題を構築するのは比較的簡単で安価である。これら未知定数は、ハイブリッドモデルで経験的/回帰要素を示す。回帰法は、経験的モデルより規模がはるかに小さく、ハイブリッドモデルの経験的性質ははるかに少ないが、その理由は、前記モデル形態及び定数の一部が物理的関係を支配する第1原理を基にして固定されているためである。
動的モデル:動的モデルは、出力値に対する入力値の経時的変化の効果を示す。定常状態のモデルは、単に工程の最終休止状態を予測するために使われる一方、動的モデルは、1つの定常状態からまた他の定常状態に移動する経路を予測するときに使われる。動的モデルは、第1原理知識、経験的データ又はこの2つの組合わせにより展開されてもよい。しかし、大半の場合、モデルは工程の状態に影響を及ぼす重要変数の一連の段階的試験から収集された経験的データにより展開される。
ペガサスパワーパーフェクトモデル:大半のMPC制御器は、線形経験的モデルの使用を許容するのみである。すなわち、前記モデルは、線形経験的定常状態モデル及び線形経験的動的モデルで構成される。ペガサスパワーパーフェクト(登録商標)は、線形、非線形、経験的及び第1原理モデルが組合わせされて制御器で使用される最終モデルを生成するようにし、従ってMPCを行うときに好ましく使われる。ペガサスパワーパーフェクトのための最終モデルを生成するために、異なる種類のモデルを組み合わせる1つのアルゴリズムが米国特許第5,933,345号に開示されている。
WFGDのサブシステム構造
図6は、モデル予測制御が伴うWFGDのサブシステム構造の機能的ブロック線図である。制御器610は、WFGD工程620の操作されたMV615、例えばpH及び酸化空気のためのリアルタイム設定点を計算するのに必要な論理を組み込んでいる。制御器610は、このような計算を、MVの状態、干渉変数(DV)及び制御された変数(CV)のような観察された工程変数(OPV)に基づく。また、通常1つ以上の調整パラメータを有する基準値(RV)640のセットも、操作されたMV615の設定点を計算するときに使われる。
好ましくは、仮想のオンライン分析器(VOA)である推定器630は、推定された工程変数(EPV)635を生成するのに必要な論理を含んでいる。EPVは、通常、正確に測定できない工程変数である。
推定器630は、前記論理を実行し、OPVの現在及び過去値を基にするWFGD工程のEPVの稼動状態をリアルタイムで推定する。OPVは、DCS工程測定値及び/又は実験室の測定値の両方を含むことができることが分かる。例えば、言及されたように、石膏の純度は、実験室の測定値に基づいて測定されてもよい。推定器630は、様々な種類のWFGDの工程問題に対するアラームを好適に提供する。
制御器610及び推定器630の論理はソフトウエアにより、もしくは他の方式で実行することができる。当業者に公知であるが、必要な場合には、制御器及び推定器が単一コンピューター工程内で容易に実行することが可能である。
モデル予測制御の制御装置(MPCC)
図6の制御器610は、好ましくは、モデル予測制御装置(MPCC)を用いて実行される。MPCCは、WFGD工程のリアルタイムの多重入力、多重出力の動的制御を行う。MPCCは、観察されて推定されたPV(625及び635)を基にするMVセットに対する設定点を計算する。WFGD MPCCは、以下により測定されるそのような値のうち、任意値、もしくは任意値又はすべての値の組合わせを使用することができる。
・pHプローブ
・スラリー密度センサー
・温度センサー
・酸化還元可能性(ORP)センサー
・吸収レベルセンサー
・SO流入口及び流出口/連通センサー
・流入口排煙速度センサー
・吸収の化学(Cl、Mg、Fl)の実験室分析
・石膏純度の実験室分析
・石灰石粉砕物及び純度の実験室分析
さらに、WFGD MPCCは、下記のものを制御するために計算された設定点のうちの任意のもの、もしくは、任意のもの又はすべての設定点の組合わせを使用することができる。
・石灰石供給器
・石灰石粉砕機
・石灰石スラリーの流れ
・化学的添加剤/反応物供給器/バルブ
・酸化空気フロー制御バルブ又はダンパー又は送風機
・pHバルブ又は設定点
・再循環ポンプ
・補充用の水添加及び除去バルブ/ポンプ
・吸収器の化学(Cl、Mg、Fl)
従って、WFGD MPCCは、下記のCVのうちの任意のもの、もしくは任意のもの又はすべてのCVの組合わせを制御することができる。
・SO除去効率
・石膏純度
・pH
・スラリーの密度
・吸収のレベル
・石灰石粉砕物及び石膏
・稼動コスト
MPCアプローチは、WFGD工程のすべての様相を1つの統一された制御器で最適に計算する柔軟性を提供する。WFGDを動作することによる第1の問題は、下記の相反する目標のバランスをとることにより稼動利益を最大化し、操作損失を最小化することである。
・SO除去率を、所望の制約限界、例えば許容値限界又は適切な場合SO除去クレジットを最大化する限界に対して適切な割合で維持する。
・石膏純度を、所望の制約限界、例えば石膏純度も仕入管理限界に対して適切な値で維持する。
・稼動コストを、所望の制約限界、例えば最小電力消費コストに対して適切なレベルで維持する。
図7は、図6を参照して説明したものと類似の制御器及び推定器の両方を含む例示的MPCC700を示す。後に説明するが、MPCC700は、上述の相反する目標のバランスをとることができる。好適な実装形態では、MPCC700にペガサスパワーパーフェクト(登録商標)MPC論理及び神経基盤回路網モデルが含まれているが、その他の論理及び非神経基盤モデルが上記のように所望の場合に代わりに用いられてもよく、これは当業者であれば理解することができる。
図7に示すように、MPCC700は、複数のI/Oポート715、及びディスク記憶装置710とともに処理装置705を含む。前記ディスク記憶装置710は、任意の適当な種類又は種類のうちの1つ以上の装置であってもよく、電子的、磁気的、光学的又は一部その他の形態又は形態の記憶媒体を活用してもよい。比較的少ない数のI/Oポートが示されているが、前記処理装置は、特定の実装形態に適するように多い又は少ないI/Oポートを含んでもよい。また、DCSからの工程データ及びDCSに戻される設定点は、標準コンピューター間の通信プロトコルを用いて単一メッセージとしてともにパッケージされて伝送できる。ここで、土台になるデータ通信機能性は、MPCCの動作に必須である一方、実施の詳細事項は、当業者によく知られており、本発明において提起される制御問題とは関係がない。処理装置705は、ディスク記憶装置710と通信し、通信リンク712を介してデータを保存し検索する。
また、MPCC700は、ユーザーの入力値、例えば操作者の入力値を受けるための1つ以上の入力装置を含む。図7に示すように、キーボード720及びマウス725は、通信リンク(722及び727)及びI/Oポート715を介して処理装置705への命令又はデータの手動入力を容易にする。さらに、MPCC700は、ユーザーに対して情報を表示するためのディスプレイ730を有する。処理装置705は、通信リンク733を介してユーザーに表示される情報をディスプレイ730と通信する。ユーザー入力値の通信を容易にすることに加えて、I/Oポート715はさらに、通信リンク(732及び734)を介する処理装置705への非ユーザー入力値の通信、及び通信リンク(734及び736)を介する処理装置705からの命令、例えば生成された制御命令の通信を容易にする。
処理装置、論理及び動的モデル
図8に示すように、処理装置705は、演算装置810、記憶装置820、及び図7の通信リンク(732〜736)を介するI/O信号805の収容及び伝送を容易にするためのインタフェース830を有する。記憶装置820は、任意のランダムアクセスメモリー(RAM)の一種である。インタフェース830は、キーボード720及び/又はマウス725を通じた演算装置810とユーザーとの相互作用のみならず、演算装置810と以下に説明するようなその他の装置との相互作用を容易にする。
図8のように、ディスク記憶装置710は、推定論理840、予測論理850、制御発生器論理860、動的制御モデル870、及び動的推定モデル880を保存する。記憶された論理は、以下に説明されるように、操作を最適化するようにWFGDサブシステムを制御する記憶されたモデルにより実行される。さらに、ディスク記憶装置710は、受容されたり計算されたデータを保存するためのデータ記憶装置885、及びSO排出履歴を保管するためのデータベース890を有する。
上記のような3つの目標のバランスをとるために、MPCC700により使用される入力値及び出力値の制御マトリックスのリストを以下の表1に示す。
Figure 0005435867
本発明による実装形態では、MPCC700は、SO除去率、石膏純度及び稼動コストで構成されたCVを制御するときに使用される。pHレベル、酸化空気の送風機にかかる負荷及び再循環ポンプにかかる負荷で構成されたMVの設定点を操作してCVを制御する。さらに、MPCC700は、複数のDVを考慮する。
MPCC700は、一連の制約を観察しながら、CVに関わる前記3つの相反する目標のバランスをとらなければならない。前記相反する目標は、MPCC論理にコードされた非線形プログラミングの最適化技法を用いて最小化された1つの目的関数で公式化される。例えば、キーボード720又はマウス725を使用して前記目標の各々に対して加重係数を入力することにより、WFGDサブシステムの操作者又はその他のユーザーは、特定の状況による前記目標の各々の相対的重要性を明示することができる。
例えば、特定の状況では、SO除去率が石膏純度及び稼動コストに比べてより重く加重される場合もあれば、稼動コストが石膏純度に比べてより重く加重される場合もある。また他の状況では、稼動コストが石膏純度及びSO除去率より重く加重される場合もあり、石膏純度がSO除去率より重く加重される場合もある。また他の状況では、石膏純度がSO除去率及び稼動コストより重く加重される場合もある。任意な数の加重の組合わせが明示されてもよい。
MPCC700は、適用可能なセットの制約、例えば図5Bに示すような制約(505〜520)を依然観察しながら、前記明示された加重値を基にして、サブシステムが最適地点で、例えば図5Bの最適地点555で動作するようにWFGDサブシステムの作動を制御する。
この特定例において、制約は以下の表2に示されている。これらの制約は、典型的に、上記のCV及びMVに関わる種類である。
Figure 0005435867
動的制御モデル
上述したように、MPCC700は、表1の制御マトリックスに示される入力−出力構造を有する動的制御モデル870を必要とする。このような動的モデルを展開するためには、第1原理モデル及び/又はWFGD工程のプラント試験を基にした経験的モデルを展開する。第1原理モデル及び/又は経験的モデルは、上記の技法を用いて展開することができる。
このような例示的WFGDサブシステムの場合、好ましくは、SO除去率及び石膏純度に対するWFGD工程の定常状態モデル(第1原理又は経験的)を展開する。第1原理アプローチを用いて、WFGD工程入力値と出力値との既知の基本関係を基にして定常状態モデルを展開する。神経回路網アプローチを用いて、様々な操作状態で実際の工程から経験的データを収集することにより、定常状態のSO除去率及び石膏純度のモデルを展開する。工程の非線形性を捉えることができる神経回路網基盤モデルは、この経験的データにより訓練される。さらに言えば、神経回路網基盤モデルが特定の実装形態では好ましい場合もあるが、そのようなモデルの使用は必須ではない。むしろ、非神経回路網基盤モデルを必要な場合には使用してもよく、さらに、特定の実装形態ではかえって好ましい場合もある。
また、稼動コストに対する定常状態のモデルを第1原理により展開する。簡単に、コスト係数を用いて総コストモデルを展開する。取り上げている例示的実装形態では、石灰石等の各種原料のコスト及び電力コストにそれぞれの使用量を乗算して総コストモデルを展開する。収入モデルは、SO除去クレジット価格をSO除去トン数に乗算し、石膏の価格を石膏トン数に乗算して求める。稼動利益(又は損失)は、収入からコストを差し引くことにより求めることができる。ポンプ駆動機(固定に対する可変速度)により、ポンプ配列の最適化は、二元のオフ/オン決定を含むことができる。これは、異なるポンプ配列の仕様を完全に評価するために、2次最適化段階を必要とする場合もある。
正確な定常状態モデルを展開することができ、定常状態の最適化基盤の解決策として適していても、そのようなモデルは工程ダイナミックスを含まないため、MPCC700での使用に適していない。従って、実際の動的工程データを収集するために、段階的試験をWFGDサブシステムが行う。その後、段階的試験反応データを用いて、前記WFGDサブシステムに対する経験的動的制御モデル870を展開し、前記データは、図8に示すようなディスク記憶装置710上の演算装置810に保存する。
動的推定モデル及び仮想のオンライン分析器
図6は、MPCC700に含まれているような推定器がWFGD工程の全体的な進歩された制御にどのように使用されるかを示す。MPCC700では、推定器が、好ましくは、仮想オンライン分析器(VOA)である。図9は、MPCC700に含まれている推定器をより詳細に示している。
図9に示すように、観察されたMV及びDVは、演算装置810で推定論理840を実行するときに使用される、WFGDサブシステムのための経験的動的推定モデル880に入力される。これに対して、演算装置810は、動的推定モデル880により推定論理840を実行する。この場合、推定論理840はCV、例えばSO除去効率、石膏純度及び稼動コストの現在値を計算する。
表3は、動的推定モデル880に対する構造を示す。MPCC700で使われる制御マトリックス及び動的推定モデル880は、同様の構造を有していることに注目する必要がある。
Figure 0005435867
推定論理840の実行の出力は、SO除去及び石膏純度に対して開放ループ値である。VOAに対する動的推定モデル880は、動的制御モデルを展開するための、上記の同一のアプローチを用いて展開する。動的推定モデル880及び動的制御モデル870が本質的に同一であっても、モデルは非常に異なる目的のために使用されることを注目する必要がある。動的推定モデル880は、演算装置810により、工程変数(PV)、例えば推定されたCV940の現在値の正確な予測を行うために推定論理840を実行するときに適用される。動的制御モデル870は、演算装置810により、図6に示すような操作されたMV設定点615を最適に計算するための予測論理850を実行するときに適用される。
図9に示すように、フィードバックループ930は、推定ブロック920から提供されるが、これは推定論理840の実行の結果として演算装置810により生成される推定されたCVを示す。従って、CVの最良の推定値は、フィードバックループ930を介して動的推定モデル880にフィードーバックされる。推定器の以前の反復から出たCVの最良の推定値は、現在の反復に対して動的推定モデル880にバイアスを与えるための開始時点として使用される。
確認ブロック910は、演算装置810により、例えばセンサー測定及び実験式の分析から、動的推定モデル880により推定論理840の実行の結果により観察されたCV950、及び観察されたMV及びDV960値の確認を示す。ブロック910で表示される確認は、さらに潜在的石灰石の沈床条件の判断に使用される。例えば、観察されたMVがpHセンサーの1つにより測定されたpH値の場合、動的推定モデル880により推定されたpH値を基にして測定されたpHの確認910は、前記pHセンサーが故障していることを示すことができる。観察されたSO除去、石膏純度又はpHに誤りがあると判断される場合には、演算装置810が推定920で前記値を使用しない。むしろ、代替値、好ましくは、動的推定モデルを基にした推定から得られた出力値をその代わり使用するようになる。また、アラームがDCSに送られることもある。
前記推定920を計算するために、演算装置810は、動的推定モデル880を基にした推定論理840の実行結果を、観察されて確認されたCVと組み合わせる。Kalmanフィルターアプローチは、推定結果を観察されて確認されたデータと組み合わせるときに好適に使用される。この場合、流入口及び流出口のSOセンサーから計算された、確認されたSO除去率は、生成された除去率値と組合わせられて、実際のSO除去の推定値を生成する。SOセンサーの精度により、推定論理840は好ましくは、生成された値に比べて観察されたデータのフィルターされたバージョンに向けて加重されたバイアスをかける。
石膏純度は、最大数時間ごとにのみ測定される。また、演算装置810は、石膏純度の新しい観測結果を生成された推定された石膏純度値と組み合わせるようになる。石膏サンプルの測定期間の間、演算装置810は、動的推定モデル880により、観察されたMV及びMV960の変化を基にした石膏純度のアップデートされた推定を開放ループで行う。従って、演算装置810は、さらに石膏純度に対するリアルタイム推定を行う。
最終的に、演算装置810は、推定論理840を動的推定モデル880により行い、WFGDの稼動コストを計算する。コストに対する直接的なオンライン測定は行われないため、演算装置810は、稼動コストのリアルタイム推定を行う必要がある。
排出管理
上記のように、米国で許可される稼動許容値は、一般にモーメント排出及び連続平均排出の両方に対して限界を設定する。WFGDサブシステムの制御において、MPCC700により有益に提起される連続平均排出の問題には2種類がある。その第1種類の問題は、連続平均の時間帯がMPCC700の演算装置810により実行される予測論理850の計画対象期間(time−horizon)より短いか等しい場合に発生する問題である。第2種類の問題は、連続平均の時間帯が予測論理850の計画対象期間より長い場合に発生する問題である。
単一段階のMPCC構造
第1種類の問題、つまり短い時間帯の問題は、MPCC700の正常構造を適用して、MPCC700により実行される制御において排出連続平均を付加的CVとして統合することにより解決される。より詳細には、予測論理850及び制御発生器論理860が定常状態の条件を、経済的な制約としてよりも許容値の限界以下で維持されるべき工程制約として取り扱うようにし、さらに、許容値の限界以下で適用可能な時間帯の連続平均の現在値及び未来値を維持する動的制御経路を実行するようにする。このような方法で、MPCC700に排出連続平均のための調整構成が提供される。
干渉変数への考慮
また、適用可能な区間内で排出に影響を及ぼす計画された稼動イベント、例えば負荷変化等の要因に対するDVは予測論理850で考慮され、これによりMPCC700では、WFGD工程の制御が考慮される。実際に、ディスク記憶装置710にデータ885の一部として記憶される実際のDVは、WFGDサブシステムの種類により変わるようになり、特定の稼動方針、例えば基礎負荷に対する変動などが前記サブシステムのために導入される。しばしばDVは、操作者によるキーボード720及びマウス725を通じて入力された入力値により、又は制御発生器論理860自体により、又は外部計画システム(図示されない)によりインタフェース830を通じて調整することが可能である。
しかし、DVは、通常、操作者又は他のユーザーにより簡単に調整できるような形態ではない。よって、好ましくは、操作者又は他のユーザーがDVを設定し維持することを助けるため、稼動計画インタフェースツールが予測論理850の一部として提供される。
図11A及び図11Bは、計画された稼動停止を入力するために、ディスプレイ730に表示されたインタフェースを示す。図11Aに示すように、操作者又は他のユーザーに投影された電力発電システムの稼動係数及びWFGDサブシステムの稼動係数を表示するスクリーン1100が設けられている。また、ユーザーが1回以上、新たに計画された稼動停止を入力し、検討又は変更のために以前に入力された計画された稼動停止を表示するためのボタンが設けられている。
前記ユーザーが計画された稼動停止を入力するようにするボタンをマウス725で選択すると、ユーザーは、図11Bに示すようなスクリーン1110を通じて見ることができる。これによりユーザーは、示されたような新たに計画された稼動停止に関する様々な詳細事項をキーボード720で入力することができる。提供された稼動停止ボタンをクリックすることにより、新たに計画された稼動停止がDVとして添加され、予測論理850により考慮される。このようなインタフェースを行う論理は、未来の稼動計画がMPCC処理装置705に伝達されるように適切なDVを設定する。
実際のDVがいずれであっても、計画された稼動イベントの影響を予測論理850に挿入するためのDVの機能は同一であり、前記予測論理は、次いでMPCC演算装置810により実行されて連続平均排出CVの未来の動的及び定常状態の条件を予測できるようになる。従って、MPCC700は、予測論理850を実行して予測された排出連続平均を計算する。予測された排出連続平均は、次いで制御発生器論理860に対する入力値として使われ、前記制御発生器論理は、MPCC演算装置810により制御計画において計画された稼動イベントを考慮するように実行される。このような方式で、MPCC700には計画された稼動イベントの観点から排出連続平均のための調整構成が提供され、これにより、計画された稼動イベントにもかかわらず連続平均排出の許容値限界内でWFGDの操作を制御する能力が提供される。
2段階MPCC構造
第2種類の問題、すなわち長い時間帯の問題は、2段階のMPCCアプローチを用いて好適に解決することができる。このアプローチでは、MPCC700が複数の、好ましくは2つの段階的制御器処理装置を有する。
図10を参照すれば、第1段階の制御器処理装置(CPU)705Aは、短期又は短い時間帯の問題を、単一段階構造を参照して上記のような方式で解決するために動作する。図10に示すように、CPU705Aは演算装置810Aを有する。演算装置810Aは、ディスク記憶装置710Aに記憶された予測論理850Aを実行し、適用可能な計画対象期間の短い期間と等しい時間帯内で動的連続平均排出を管理する。前記短い期間又は適用可能な制御期間の連続平均排出目標値を示すCVは、CPU705Aの記憶装置710A内データ885Aの一部として記憶されている。
また、CPU705Aは、図8に示される前記記憶装置820及びインタフェース830と類似の記憶装置820A及びインタフェース830Aを有する。前記インタフェース830Aは、MPCC700のI/O信号の下位グループ、つまりI/O信号805Aを受信する。さらに、ディスク記憶装置710Aは、推定論理840A及び動的推定モデル880A、制御発生器論理860A及び動的制御モデル870A、及びSO排出履歴データベース890Aを保存するが、これらはすべて前記図8を参照して説明したとおりである。また、CPU705Aは、通常、演算装置クロック(processor clock)であるタイマー1010を有する。タイマー1010の機能は、後に詳細に説明する。
第2段階のCPU705Bは、長期又は長い時間帯の問題を解決するために動作する。図10に示すように、CPU705Bは演算装置810Bを有する。演算装置810Bはまた、予測論理850Bを実行して動的連続平均排出を管理する。しかし、予測論理850Bは、連続平均排出制約の未来時間帯全体の観点から動的連続平均排出を管理し、第1段階のCPU705Aのための最適短期又は適用可能な計画対象期間、連続平均排出の目標値、つまり最高限界を決めるように行われる。従って、CPU705Bは、長期連続平均排出の最適化の役割をし、未来時間帯全体における排出連続平均の制御のために適用可能な計画対象期間における排出連続平均を予測する。
長期の計画対象期間の連続平均排出制約を示すCVは、ディスク記憶装置710Bからデータ885Bの一部として記憶される。また、CPU705Bは、上記の憶装置820及びインタフェース830と類似の記憶装置820B及びインタフェース830Bを有する。このインタフェース830Bは、MPCC700のI/O信号の下位グループ、つまりI/O信号805Bを受信する。
図10の2段階の構造が複数のCPUを含むが、多段階予測論理は、必要な場合、別の方式で行われてもよい。例えば、図10では、MPCC700の第1段階がCPU705Aで表示され、MPCC700の第2段階はCPU705Bで表示される。しかし、単一CPU、例えば図8のCPU705が、予測論理850A及び予測論理850B両方を実行することにより、長期又は長い時間帯の問題を解決するために予測された最適な長期連続平均排出の観点から最適短期又は適用可能な計画対象期間の連続平均排出目標値を求め、求められた目標値の観点から短期又は適用可能な期間の連続平均排出を最適化するように用いられてもよい。
このように、CPU705Bは、制御対象区間(control horizon)と呼ばれる場合があり、連続平均の時間帯に相応する長期計画対象期間に注目する。有利なことに、CPU705Bは、連続平均排出の未来時間帯全体の観点から動的連続平均排出を管理し、最適な短期連続平均排出限界を決める。CPU705Bは、比較的短い期間における稼動計画に対する変化を捉えるのに十分なぐらい速い頻度で行う。
CPU705Bは、CPU705AによりCVとして認識される短期又は適用可能な期間の連続平均排出の目標値を、MVとして用い、長期排出連続平均をCVとして認識する。従って、長期排出連続平均は、ディスク記憶装置710B内にデータ885Bの一部として記憶される。予測論理850Bは、定常状態条件を、経済的な制約としてよりも許容値限界以下に維持されるべき工程制約として扱い、前記許容値限界以下で適用可能な時間帯内の連続平均の現在及び未来値を維持させる動的制御経路をさらに実行するようになる。このような方式で、MPCC700に排出連続平均のための調整構成が提供される。
また、適用可能な区間内で排出に影響を及ぼす計画された稼動イベント、例えば負荷変化等の要因に対するDVが予測論理850Bで考慮され、従ってMPCC700では、WFGD工程の制御が考慮される。このように、実際、ディスク記憶装置710Bにデータ885Bの一部として記憶される実際のDVは、WFGDサブシステムの種類及びサブシステムのために導入した特定の稼動方針により変わり、操作者により、又は制御発生器論理860Bを実行するCPU705Bにより、又は外部計画システム(図示されない)により、インタフェース830Bを通じて調整できる。しかし、上記のように、DVは、通常、操作者又は他のユーザーにより簡単に調整できる形態ではなく、従って、好ましくは、操作者又は他のユーザーがDVを設定し維持するようにすることを助けるため、稼動計画インタフェースツールが予測論理850A及び/又は850Bの一部として提供される。
しかし、ここでもまた、実際のDVがいずれであっても、計画された稼動イベントの影響を予測論理850Bに挿入するためのDVの機能は同一であり、前記予測論理は、次いでMPCC演算装置810Bにより実行され、長期連続平均排出CVの未来の動的及び定常状態の条件を予測できるようになる。
従って、CPU705Bは、予測論理850Bを実行し、制御計画内の計画された稼動イベントの観点から最適な短期又は適用可能な期間の連続平均排出限界を決める。最適な短期又は適用可能な期間の連続平均排出限界は、通信リンク1000を介してCPU705Aに伝送される。このような方式で、MPCC700に計画された稼動イベントの観点から排出連続平均を最適化するための調整構成が提供され、これにより、計画された稼動イベントにもかかわらず連続平均排出許容値限界内でWFGDの操作の制御を最適化する能力が提供される。
図12は、多段階MPCC構造の拡張図を示す。図示するように、操作者又は他のユーザーは、通信リンク(1225及び1215)を介して工程履歴データベース1210及びMPCC700の両方と通信するために遠隔制御端末機1220を活用する。MPCC700は、図10のCPU705A及びCPU705Bを含み、これらは通信リンク1000を介して互いに接続されている。WFGD工程に関わるデータは、通信リンク1230を介して工程履歴データベース1210に伝送されるが、前記データベースは、このデータを工程履歴データとして保存する。後に詳細に説明するが、必要な記憶されたデータは、データベース1210から通信リンク1215を介して検索され、CPU705Bにより処理される。WFGD工程に関わる必要なデータも通信リンク1235を介して伝送され、CPU705Aにより処理される。
上記のように、CPU705Aは、通信リンク1000を介してCPU705Bから現在の所望の長期連続平均目標値に相応するCV稼動目標値を受ける。伝達された連続平均目標値は、予測論理850Bを実行するCPU705Bにより発生された長期連続平均のために最適化された目標値である。CPU705AとCPU705Bとの通信は、MPC制御装置とリアルタイム最適化間の通信と同様の方式で行われる。
CPU705A及びCPU705Bは、CPU705BがCPU705Aに長期連続平均のために最適化された目標値を送ることを中止する場合、CPU705Aが長期連続平均制約のための知能的で控え目な稼動計画に代替又は転換を保障する信号変更(handshaking)プロトコルを有することが有利である。予測論理850Aは、そのようなプロトコルを構築することにより、必要な信号変更及び転換を保障するツールを含んでもよい。しかし、もし予測論理850Aがそのようなツールを含まない場合は、DCSの典型的な特徴及び機能性は、所要の信号変更及び転換を行うように当業者によく知られている方式で導入してもよい。
重要な事項は、CPU705Aが一貫して時間に合った、つまり新規の古くない、長期連続平均目標値を使用することを保障することである。CPU705Bが予測論理850Bを実行する度に、新鮮で新しい長期連続平均目標値を計算するようになる。CPU705Aは、CPU705Bから通信リンク1000を介して新しい目標値を受ける。新しい目標値の受容を基にして、CPU705Aは予測論理850Aを実行してタイマー1010をリセットする。CPU705AがCPU705Bから通信リンク1000を介して時間に合うように新しい目標値を受けることに失敗した場合には、タイマー1010の期限が満了又は満期になる。タイマー1010の満期により、CPU705Aは、予測論理により現在の長期連続平均目標値が古いものと判断し、CPU705Bから新規の新しい長期連続平均目標値を受けるまで安全な稼動計画に切り替わる。
好ましくは、最小のタイマー設定がコンピューター負荷/スケジューリングの問題を受容するために、CPU705Bの実行頻度より少し長い。複数のリアルタイム最適化のスケジュールに入っていない動作のため、従来は、通信タイマーを制御器の定常状態に対して半分〜2倍の時間で設定するのが一般的である。しかし、CPU705Bによる予測論理の実行がスケジュールに入れば、タイマー1010を設定するための推奨指示事項は、定常状態最適化のリンクのスケジュールではなく、例えばCPU705B上で動作する制御器の実行頻度の2倍プラス約3〜5分以下である必要がある。
CPU705Aが現在の長期連続平均目標値が古いものと判断して捨てる場合には、長期連続平均制約がリセットされなければならない。CPU705Bが新規の新しい長期連続平均目標値を提供しなければ、CPU705Aは、長期指示事項又は目標値を有していない。従って、その場合にCPU705Aは、工程稼動の安全マージンを増加させる。
例えば、連続平均期間が比較的短く、例えば4〜8時間であり、サブシステムが基本の負荷条件で動作する場合には、CPU705Aは、予測論理850Aにより古い連続平均除去目標値を3〜5重量%程度増加させてもよい。このような増加は、上記のような状況下で持続する稼動に対して十分な安全マージンを構築しなければならない。このような増加を行うのに必要な操作者の入力は、予測論理に対して単一の数値、例えば3重量%を入力すればよい。
一方、連続平均期間が比較的長く、例えば24時間以上であり、及び/又はサブシステムが一定しない負荷で動作する場合には、CPU705Aは、予測論理850Aに従って控え目な目標値に再び変更してもよい。これを行う1つの方法は、CPU705Aが連続平均時間帯の期間全体において、計画されたサブシステムの負荷以上で仮定された一定の(constant)稼動を行うことである。CPU705Aは、次いでそのような一定の稼動を基にして、一定の排出目標値を計算し、現場管理により決定され得る小さな安全マージン又は安全要因を追加することである。CPU705Aにおいてこの解決策を行うためには、予測論理850Aが言及された機能を含まなければならない。しかし、必要な場合、この控え目な目標値を設定する機能がCPU705AではなくDCSで行える場合には、第1段階のCPU705Aで前記控え目な目標値を2次CVとして行い、短期連続平均目標値1000が古くなった場合に、このCVのみを可能にしてもよい。
従って、連続平均期間が比較的短くとも長くとも、及び/又はサブシステムが一定の負荷で動作しても、一定しない負荷で動作しても、予測論理850Aは、転換限界値を含めて操作者の行動を必要としないことが好ましい。しかし、他の技法を、CPU705Bが新規の新しい長期連続平均目標値を提供しない期間では、その技法が連続平均制約に対して安全な/控え目な稼動を設定する場合には、転換限界を設定するように使用してもよい。
実際のSO排出は、CPU705Bが正常に動作することや、新規の新しい長期連続平均目標値をCPU705Aに提供することに関係なく、工程履歴データベース1210からMPCC700により追跡されることに注目しなければならない。従って、記憶された排出は、CPU705Bが動作しないか、あるいはCPU705Aと正常に通信を行わない場合でさえも、発生するSO排出を追跡し、考慮するようにCPU705Bにより使用される。しかし、CPU705Bが再び動作し、正常に通信を行うようになった後は、予測論理850Bにより連続平均排出を再度最適化し、CPU705Aにより使用される現在の連続平均排出目標値を増加させたり減少させ、稼動停止中に発生した実際の排出に対して調整し、通信リンク1000を介してCPU705Aに新規の新しい長期連続平均目標値を提供する。
オンライン実行
図13は、WFGD工程620に対してMPCC1300とDCS1320のインタフェースに関する機能的ブロック線図を示す。MPCC1300は、図6の制御器610と類似の制御器1305、及び図6の推定器630と類似の推定器1310の両方を有する。MPCC1300は、必要な場合、図7及び8に示すMPCCであってもよい。また、MPCC1300は、多段階構造、例えば図10及び図12に示すようなものを用いて環境設定されることも可能である。
図示するように、制御器1305及び推定器1310は、図8のインタフェース830の一部であり得るデータインタフェース1315を介してDCS1320に接続される。このような好適な実装形態では、データインターフェース1315がペガサス(登録商標)データインターフェース(PDI)ソフトウエアモジュールを用いて行われる。しかし、これは必須ではなく、データインターフェース1315は、一部の他のインタフェース論理を用いて実行されてもよい。データインターフェース1315は、操作されたMVのための設定点を送ってPVを読み取る。前記設定点は、図8のI/O信号805として送られてもよい。
この好適な実装形態では、制御器1305がペガサス(登録商標)パワーパーフェクト(PPP)を用いて実行され、前記ペガサスパワーパーフェクトは、データサーバー成分、制御器成分及びグラフィックユーザーインタフェース(GUI)成分の3つのソフトウエア試験成分で構成される。データサーバー成分は、PDIと通信し、制御適用に関わる局所的データを収集するのに使われる。制御器成分は、予測論理850を実行し、動的制御モデル870の観点からモデル予測制御アルゴリズムの計算を行う。GUI成分は、例えばディスプレイ730に、このような計算の結果を表示し、制御器を調整するためのインタフェースを提供する。ここでも同様に、ペガサスパワーパーフェクトの使用は、必須ではなく、他の制御器論理を用いて制御器1305が実行されてもよい。
この好適な実装形態では、推定器1310は、ペガサス(登録商標)の実行時間適用エンジン(RAE)のソフトウエアモジュールを用いて実行される。RAEは、PDI及びPPPと直接通信する。RAEは、VOAをホストするためのコスト效率の良い環境を作る複数の特徴を提供するものと認識される。エラー確認論理のための機能、ハートビートモニタリング、通信及びコンピューター演算処理監視能力、及びアラーム機能のすべてがRAEで有利に行われる。しかし、言及したように、ペガサス(登録商標)の実行時間適用エンジンは必須ではなく、推定器1310は、他の推定器論理を用いて実施されてもよい。また、当業者に理解されるように、必要な場合は、WFGD620のためのDCSで機能的に等しいVOAを実施することも可能である。
制御器1305、推定器1310及びPDI1315は、好ましくはイーサネット(Ethernet)接続を用いて、WFGD工程620のためのDCS1320を含む制御ネットワークに接続された1つの演算装置、例えば図8の演算装置810又は図10の演算装置810Aで実行される。現在、演算装置オペレーティングシステムは、Microsoft Windows(登録商標)基盤が一般的であるが、これは必須ではない。また、前記演算装置は、例えば図7に示すように、高出力ワークステーションコンピューターアセンブリー又はその他の種類のコンピューターの一部であってもよい。いずれの場合も、前記演算装置、及びそれに備えられる記憶装置は、本発明に記載されたような進んだWFGD制御を行うときに必要な論理を実行するのに十分な演算能力及び記憶能力を持たなければならない。
DCS変更
図13を参照して説明したとおり、予測論理850を実行する制御器演算装置は、インタフェース1315を介してWFGD工程620に対するDCS1320に接続する。制御器1305及びDCS1320の適切な接続を容易にするために、通常のDCSは変更を要する。従って、DCS1320は当分野でよく知られている方式で、以下のような特徴を含むように変更された一般的なDCSであることが好ましい。
DCS1320は、操作者又は他のユーザーがDCSインタフェース画面から下記の機能を行うことができるようにするため、一般的にソフトウエアを利用するのに必要な論理が導入、つまりプログラム化されている。
・PPPのCONTROL MODE(制御モード)を自動と手動で切り替える。
・CONTROLLER STATUS(制御器状態)を観察する。
・WATCHDOG TIMER(監視タイマー)(HEARTBEAT(ハートビート))の状態を観察する。
・STATUS(状態)、MIN(最小)、MAX(最大)、CURRENT VALUE(現在値)に対するMVの寄与を観察する。
・各MVをENABLE(動作)させたり、各MVをオフする。
・MIN(最小)、MAX(最大)及びCURRENT(現在)値に対するCVの寄与を観察する。
・石膏純度、吸収器化学及び石灰石の特徴に対する実験室の数値を入力する。
この機能に対するユーザーのアクセスのための補助として、DCS1320は図14A及び14Bに示すように、2つの新しい画面を表示するようにする。図14Aでは、画面1400は、操作者又は他のユーザーがMPCC制御をモニタリングするときに使用され、図14Bの画面1450は、操作者又は他のユーザーが実験室の及び/又は他の値を適切に入力するときに使用されている。
そして本発明を理解するのに便宜上不要な複雑性を避けるために、稼動コスト等の項目は、以下の記載の目的のために制御マトリックスから除外した。しかし、稼動コストは容易に、かつ多数の場合に、好ましく制御マトリックス内に含まれてもよいことが理解されるであろう。また、便宜のために、そして論議を単純化するために、再循環ポンプは、MVよりもDVとして扱われる。ここで、当業者は、多数の場合において、再循環ポンプをMVとして扱うことが好ましいことが理解できる。最終的に、以下の記載において、WFGDサブシステムが2つの吸収塔及び2つの備えられるMPCC(WFGDサブシステムで各吸収器に対して1つのMPCC)を有するものと仮定する。
高度制御DCS画面
以下、図14Aを参照すれば、図示するように、画面1400は、自動又は手動モードの操作者/ユーザーが選択したタグであるCONTROLLER MODE(制御器モード)を含む。AUTO(自動)モードでは、予測論理850、例えばペガサス(登録商標)パワーパーフェクトを行う制御器1305がMVの動向を計算し、このような動向をDCS1320で行う制御信号を指示するために制御発生器論理860を実行する。予測論理850を実行する制御器1305は、変数が動作しない限り、つまりAUTO(自動)で表示されない限り、MV動向を計算しない。
予測論理850、例えばペガサス(登録商標)パワーパーフェクトを行う制御器1305は、通信インタフェース1315とDCS1320の保存性をモニタする監視タイマー又はハートビート機能を含む。回線インターフェース機構1315が動作しない場合には、アラーム表示器(図示されない)が画面に現れる。予測論理850を行う制御器1305は、アラーム状態を認識し、そのアラーム状態を基にしてすべての動作中である、つまりアクティブな選択項目を低いレベルのDCS構成に切り替え始める。
また、画面1400は、PERFECTOR STATUS(パーフェクト状態)を含むが、これは予測論理850が制御器1305により成功裡に実行されたか否かを表示する。制御器1305が動作を続けるためには、GOOD(良い)状態(図示しているように)が要求される。予測論理850を実行する制御器1305は、BAD(悪い)状態を認識し、BAD状態を認識することにより、すべてのアクティブ接続を切断し、切り替えを行う。つまり、制御をDCS1320に戻す。
図示するように、MVは以下の情報名で表示される。
ENABLED:このフィールドは、操作者又は他のユーザーが各MVを動作させたり、停止させるように、予測論理850を実行する制御器1305に入力することにより設定することができる。MVを動作停止させることは、MVをオフ状態に調整することに相応している。
SP−予測論理850の設定点を示す。
MODE:予測論理850が適用可能なMVをon、on Hold、又は完全offのうちのいずれかで認識するかを示す。
MIN LMT:予測論理850により使用されるMVに対する最小限界を表示する。この値は、操作者又は他のユーザーにより変更できないようにすることが好ましい。
MAX LMT:予測論理850により使用される、MVに対する最大限界を表示する。同様に、この値は変更されないようにすることが好ましい。
PV:予測論理850により認識されるような各MVの最新の値又は現在値を示す。
画面1400は、以下のようなMV状態フィールドの表示器の詳細事項をさらに含む。
予測論理850を実行する制御器1305は、特定MVのMODEがONの場合にのみ、前記MVを調整する。このようにするためには、4つの条件を充足しなければならない。まず、操作者又は他のユーザーがイネーブルボックスを選択する。DCS1320は自動モードである必要がある。切り替えの条件は、予測論理850を実行する制御器1305により計算されるため、false(嘘)でなければならない。最後に、Hold(維持)の条件も、予測論理850を実行する制御器1305により計算されるため、false(嘘)でなければならない。
予測論理850を実行する制御器1305は、もし制御器1305が、前記特定MVを調整できないようにする条件が存在する場合には、HoldのMVモード状態を変更し表示することになる。制御器1305は、Hold状態にある場合は、予測論理850に相応して、Hold状態を解除することができるまで現在の値MVを維持することになる。MV状態をHoldに維持しておくには、4つの条件を充足しなければならない。まず、操作者あるいは他のユーザーがイネーブルボックスを選択してなければならない。予測論理850を実行する制御器1305によって計算される場合にDSC1320が自動モードでなければならない。最後に、Hold(維持)の条件も、予測論理850を実行する制御器1305によって計算されるため、true(真実)でなければならない。
予測論理850を実行する制御器1305は、MVモード状態をオフに変更し、もし制御器1305が以下の条件のうち任意のものを基にして前記特定MVを調整できないようにする条件が存在する場合には、on(オン)とoff(オフ)モード状態を表示する。まず、操作者又は他のユーザーが制御モードに対するenable(動作)ボックスを選択して除去する。DCSモードは、自動モードではなく、手動モードである。いかなる切り替え条件であっても、予測論理850を実行する制御器1305により計算されるため、true(真実)である。
予測論理850を実行する制御器1305は、推定器1310の実行失敗及び所定の過去期間、例えば最後の12時間の間に実験室数値の入力失敗を含む、様々な切り替え条件を認識する。予測論理850を実行する制御器1305が前記切り替え条件のうちのいずれかをtrue(真実)と判断する場合、前記制御器は、MVの制御をDCS1320に戻すことになる。
図14Aにも示すように、CVは以下の情報見出しで表示される。
PV:制御器1305が受信するCVの最新の感知値を示す。
LAB:制御器1305が受信するサンプルの時点とともに最新の実験室の試験数値を示す。
ESTIMATE:動的推定モデルを基にして推定論理840を実行する推定器1310により生成される現在又は最新のCVの推定を示す。
MIN:CVに対する最小限界を示す。
MAX:CVに対する最大限界を示す。
また、画面1400は、操作の一部の所定の過去期間における、例えば操作過去24時間のCVの推定された値に対する傾向プロットを示す。
実験室サンプルの入力形態
以下、図14Bを参照すれば、見本の実験室サンプル入力形態のDCS画面1450が操作者又は他のユーザーに表示される。この画面は、前記図8を参照して説明したように、図13の推定器1310により推定論理840及び動的推定モデル880により処理される実験室サンプルの試験数値を操作者又は他のユーザーが入力するときに使われる。
図14Bに示すように、推定器1310により生成された関連のタイムスタンプとともに下記値が入力される。
装置1の実験室サンプルの数値:
・石膏純度
・塩化物
・マグネシウム
・フッ化物
装置2の実験室サンプルの数値:
・石膏純度
・塩化物
・マグネシウム
・フッ化物
装置1及び装置2の組合せでの実験室サンプルの数値:
・石膏純度
・石灰石純度
・石灰石粉砕物
操作者又は他のユーザーは、例えば図7に示すキーボード720を用いて、関連のサンプル時点とともに実験室の試験数値を入力する。この値を入力した後には、操作者は、例えば図7に示すマウス725を使ってアップデートボタンをアクティブにする。アップデートボタンをアクティブにすると、推定器1310に対して推定論理840の次回実行中にこれらのパラメータに対する値をアップデートするようになる。必要な場合、代替的にこのような実験室試験数値は、MPCC処理装置のインタフェース、例えば図8に示すインタフェース830を介してデジタル化された形態に、適用可能な実験室からMPCC1300で自動供給することも可能である。また、MPCC論理は、適用可能な実験室又は実験室からデジタル化された形態の試験数値を受容することに対応して、アップデートボタンで表示されるアップデート機能を自動でアクティブになるように簡単に導入、例えばプログラム化してもよい。
WFGD工程の適切な制御を保障するため、石膏純度に対する実験室試験の数値は、8〜12時間ごとにアップデートされなければならない。従って、MPCC1300は、純度がその期間中にアップデートされない場合には、制御を切り替えてアラームを発するのに必要な論理で設定、例えばプログラム化されることが好ましい。
また、吸収器化学数値及び石灰石の特徴数値は、少なくとも週に1回はアップデートされなければならない。同様に、この数値が正しくアップデートされない場合には、MPCC1300はアラームを発するように設定されることが好ましい。
確認論理は、推定器1310により実行される推定論理840に、操作者の入力値を確認するために含まれる。この値が不正確に入力される場合には、推定器1310は推定論理840により以前の値に復帰し、以前の値が図14Bに続けて表示されるようになり、動的推定モデルはアップデートされない。
全体のWFGD操作の制御
以下、上記の種類のうち任意のMPCCによる、WFGDサブシステムの全体操作の制御を図15A、15B、16、17、18及び図19を参照して説明する。
図15Aは、図1を参照して説明したものと類似の電力発電システム(PGS)110及び大気汚染制御(APC)システム120を示しているが、ここで、同じ参照番号はシステムの同一要素を示し、そのうちの一部は重複を避けるために省略した。
図示するように、WFGDサブシステム130’は、多変数制御を含むが、これは、上記のMPCC(700又は1300)と類似のMPCC1500により行われ、必要な場合には、図10〜12を参照して説明した種の多段階構造を取り入れたものであってもよい。
SOを含む排煙114は、他のAPCサブシステム122から吸収塔132に誘導される。周囲空気152が送風機150により圧縮され、圧縮された酸化空気154’として結晶化器134に送られる。センサー1518は、周囲条件1520の測定値を検出する。測定された周囲条件1520は、例えば温度、湿度及び気圧計の圧力を含む。送風機150は、現在の送風機の負荷数値1502を供給し、受信した送風機負荷SP1503を基にして現在の送風機負荷を変更することができる送風機負荷制御1501を含む。
また、図示するように、石灰石スラリー148’がスラリーポンプ133により結晶化器134から吸収塔132にポンプ注入される。スラリーポンプ133のそれぞれは、ポンプ状態制御1511及びポンプ負荷制御1514を含む。ポンプ状態制御1511は、例えばポンプのオン/オフ状態を表す現在のポンプ状態数値1512を供給でき、受信したポンプ状態SP1513を基にしてポンプの現在状態を変化させることができる。ポンプ負荷制御1514は、現在のポンプ負荷数値1515を供給し、ポンプ負荷SP1516を基にした現在のポンプ負荷を変化させることができる。ミキサー/タンク140から結晶化器134への新規の石灰石スラリー141’の流れは、スラリー流れSP196’を基にしたフロー制御バルブ199により制御される。スラリー流れSP196’は、後に説明されるようなpHSP186’を基にして定められたPID制御信号181’に従って行われる。結晶化器134へ流れる新規のスラリー141’は、WFGD工程で使われるスラリーのpHを調整し、これにより吸収塔132に流入するSO含有排煙114からSOの除去を制御する役割をする。
上記のように、SO含有排煙114は、吸収塔132の基低に入る。SOは、吸収塔132で排煙114から除去される。好ましくは、SO非含有清浄排煙116’は、吸収塔132から、例えば煙突117に送られる。SO分析器1504は、吸収塔132の流出口に位置するものと示されているが、煙突117に位置したり、吸収塔132の下流のまた別の位置に位置してもよく、流出口SO1505の測定値を検出する。
サブシステム130’の制御側では、WFGD工程のための多変数工程制御器、つまり図15Bに示すMPCC1500が様々な入力値を受ける。MPCC1500への入力値には、測定されたスラリーpH183、測定された流入口SO189、送風機負荷数値1502、測定された流出口SO1505、実験室で試験された石膏純度値1506、測定されたPGS負荷1509、スラリーポンプ状態数値1512、スラリーポンプ負荷数値1515、及び測定された周囲条件数値1520が含まれる。後に説明されるが、このような工程パラメータ入力値は、非工程入力値1550及び制約入力値1555、及び計算された推定されたパラメータ入力値1560を含むその他の入力値とともに、MPCC1500により制御されたパラメータ設定点(SP)1530を生成するのに使用される。
稼動中には、WFGD吸収塔132に、又はその上流に位置するSO分析器188は、排煙114中の流入口SOの測定値を検出する。流入口SOの測定された値189は、フィードフォワード装置190及びMPCC1500に供給される。電力発電システム(PGS)110の負荷は、またPGS負荷センサー1508により検出され、測定されたPGS負荷1509としてMPCC1500に供給される。付加的に、SO分析器1504は、吸収塔132を抜け出る排煙中の流出口SOの測定値を検出する。流出口SOの測定された値1505もまたMPCC1500に供給される。
石膏品質の推定
以下、図19を参照すれば、MPCC1500へのパラメータ入力は、吸収塔132内の進行中の状態を反映するパラメータを含む。このようなパラメータは、MPCC1500により石膏に対する動的推定モデルを構築し、アップデートするために使用されてもよい。石膏に対する動的推定モデルは、例えば動的推定モデル880の一部を形成することができる。
石膏純度にオンラインで直接測定することができる実用的な方法がないため、動的石膏推定モデルが、MPCC1500の推定器1500Bにより実行される推定論理、例えば推定論理840とともに、計算された石膏純度1932として示される石膏品質の推定値を計算するときに使用されてもよい。推定器1500Bは、好ましくは、仮想のオンライン分析器(VOA)である。制御器1500A及び推定器1500Bが単一装置内に収納されているが、必要な場合には、制御器1500A及び推定器1500B装置の必要な通信が可能になるように適宜接続さえ行えば、制御器1500A及び推定器1500Bが別々に収納され、個別の構成要素として構成してもよい。
また、石膏品質1932の計算された推定値は、MPCC1500に入力される、石膏純度値1506で示される石膏品質の実験室測定を基にする推定論理による調整を反映することができる。
推定された石膏品質1932は、次いで推定器1500BによりMPCC1500の制御器1500Aに伝送される。制御器1500Aは、推定された石膏品質1932を用いて動的制御モデル、例えば動的制御モデル870をアップデートする。予測論理、例えば予測論理850は、制御器1500Aにより、動的制御モデル870に従って、調整された推定された石膏品質1932と、所望の石膏の品質を示す石膏品質的制約とを比較するように実行される。所望の石膏品質は、通常、石膏販売契約の詳細事項により成立される。このように、石膏品質的制約は、MPCC1500に石膏品質要件1924として入力され、データ885として記憶される。
予測論理を実行する制御器1500Aは、前記比較結果に基づいてWFGDサブシステム130’の稼動に調整が必要か否かを判断する。必要な場合には、推定された石膏品質1932と石膏品質的制約1924との差異は、制御器1500Aにより実行される予測論理により、石膏160’の品質を石膏品質的制約1924範囲に向上させるため、WFGDサブシステム稼動で行われる必要な調整を決めるときに使われる。
石膏品質要件遵守の維持
石膏160’の品質を石膏品質的制約1924と一致させるため、予測論理により定められるようなWFGD稼動に対する必要な調整が制御発生器論理、例えば制御発生器論理860に供給されるが、前記論理もまた制御器1500Aにより実行される。制御器1500Aは、制御発生器論理を実行し、石膏160’の品質で要求される増加又は減少に相応する制御信号を生成する。
このような制御信号は、例えば図15Aに示す1つ以上のバルブ199、スラリーポンプ133及び送風機150の動作に対して調整を行い、WFGDサブシステム工程パラメータ、例えば図15AのpHセンサー182により検出される測定されたスラリーpH値183で表示された、結晶化器134から吸収塔132へ流れるスラリー148’の測定されたpH値が、例えば所望のpH値である所望の設定点(SP)に相応するようにする。このようなスラリー148’のpH値183の調整は、次いでWFGDサブシステム130’により実際生産される石膏副産物160’の品質に変化をもたらし、所望の石膏品質1924にうまく対応することができるように、推定器1500Bにより計算される推定された石膏品質1932に変化をもたらすようになる。
次に、図16は、清水供給源164、ミキサー/タンク140及び脱水機136の構造及び動作を詳細に示す。図示するように、清水供給源164は、水タンク164Aを有するが、これよりME洗浄水200がポンプ164Bにより吸収塔132にポンプ注入され、清水供給源162がポンプ164Cにより混合タンク140Aにポンプ注入される。
脱水機136の作動及び制御は、MPCC1500の付加により変化しない。
粉砕機170及びミキサー/タンク140を含む石灰石スラリー製造区域の動作及び制御は、MPCC1500の付加により変化しない。
次に、図15A、15B及び図16を参照すれば、制御器1500Aは、例えば制御発生器論理を実行し、石灰石スラリー141’の結晶化器134への流れに対する変更を指示することも可能である。結晶化器134へ流れるスラリー141’の体積は、バルブ199の開閉により制御される。バルブ199の開閉は、PID180により制御される。バルブ199の動作を制御するPID180の動作は、入力されたスラリーpH設定点に基づいて行われる。
従って、スラリー141’の結晶化器134への流れを適切に制御するため、制御器1500Aは、石膏160’の品質を石膏品質的制約1924と一致させるためのスラリーpH設定点を決める。図15A及び図16に示すように、pHSP186’で表示される定められたスラリーpH設定点はPID180に伝送される。PID180は、次いでスラリー流れ141’が受容されたpHSP186’と一致するように変更させるため、バルブ199の動作を制御する。
バルブ199の動作を制御するため、PID180は、受容されたスラリーpHSP186’及びpHセンサー182により測定されたスラリー141’の受容されたpH値183に基づいてPID制御信号181’を発生する。PID制御信号181’は、FF装置190により発生するフィードフォワード(FF)制御信号191と合わせられる。該当分野で理解されるように、前記FF制御信号191は、吸収塔132の上流に位置するSO分析器188から受けた、測定された排煙114の流入口SO189を基にして発生する。PID制御信号181’及び(FF)制御信号191は、合計ブロック192で合わせられるが、前記合計ブロックは、通常、バルブ199と通信するDCS出力ブロック内に内蔵されて含まれる。合計ブロック192を抜け出る合わせられた制御信号は、スラリー流れ設定点196’として表示される。
スラリー流れ設定点196’は、バルブ199に伝送される。一般的に、バルブ199は、前記バルブを介してスラリー141’の流れを変更するように、受信したスラリー流れ設定点196’を基にしてバルブ199の実際の開閉を指示する他のPID(図示されない)を含む。いずれの場合にも、受信したスラリー流れ設定点196’を基にして、バルブ199は、スラリー141’の体積、よって結晶化器134に流れるスラリー240’の体積を増加させたり減少させるために開閉され、前記結晶化器に流れるスラリーは、次いで結晶化器134内のスラリーのpH及びWFGDサブシステム130’により生産される石膏160’の品質を変更する。
何時MPCC1500がPID180でpH設定点をリセット/アップデートするか、PID180がバルブ199で石灰石スラリー流れ設定点をリセット/アップデートするか、そしてそれを行うべきか否かを決定するときに考慮されなければならない要因は、公知の技法を用いて、適用可能なようにMPCC1500及び/又はPID180内にプログラム化されてもよい。当業者に理解されるように、PID180の性能及びpHセンサー182の精度等の要因が一般的にそのような決定において考慮される。
制御器1500Aは、pHセンサー182から受けてスラリーpH183で表示される、結晶化器134から吸収塔132へ流れるスラリー148’の測定されたpH値を、動的制御モデル870内の石膏品質制御アルゴリズム又はルックアップテーブルにより処理することにより、pHSP186’を発生させる。前記アルゴリズム又はルックアップテーブルは、石膏160’の品質と測定したpH値183との確立した連係を示している。PID180は、制御器1500Aから受信したpH186’と、pHセンサー182から受信しルックアップテーブルの石灰石アルゴリズムに従ってスラリーpH183で示されるスラリー148’の測定したpH値との差を処理して、制御信号181’を生成する。前記アルゴリズム又はルックアップテーブルは、ミキサー/タンク140に流れるスラリー141’の体積内の変化量と、結晶化器134から吸収塔132に流れるスラリー148’の測定されたpH値183の変化量との間に成立した連係を示す。恐らく図16に示すような実施形態では、粉砕機170から混合タンク140Aに流れる粉砕された石灰石174の量が個別の制御器(図示されない)により管理されているが、有益である場合には、これはMPCC1500により制御されてもよいことに注目する必要がある。さらに、図示されていないが、MPCC1500は、必要な場合には、混合タンク140A内で添加剤をスラリーに分配することも制御することができる。従って、MPCC1500の制御器1500Aから受けたpHSP186’を基にして、PID180はバルブ199を開閉させる信号を発生し、これにより新規の石灰石スラリーの結晶化器134への流れを増加又は減少させる。前記PIDは、バルブ199を介して流れる石灰石スラリー141’の体積が石灰石スラリー流れ設定点196’で表示されるMVSPと一致するまでバルブ調整の制御を継続する。好ましくは、前記一致がバルブ199の一部として含まれたPID(図示されない)により行われることが理解されるであろう。しかし、代替的には、前記一致は、バルブから測定されて再伝送される流れ体積のデータに基づきPID180により行われてもよい。
SO 除去要件遵守の維持
スラリー148’のpHを制御することにより、MPCC1500は、WFGDサブシステムにより生産される石膏副産物160’の品質とともにSO含有排煙114からSOの除去を制御することができる。新規の石灰石スラリー141’のバルブ199を介した流れを増加させてスラリー148’のpHを増加させる場合、SO含有排煙114から吸収塔132により除去されるSOの量が増加するようになる。一方、石灰石スラリー141’のバルブ199を介した流れを減少させる場合、スラリー148’のpHが低下する。また、結晶化器134に流れる吸収されたSO(これは亜硫酸カルシウムの形態)の量を減少させる場合、より高い割合の亜硫酸カルシウムが結晶化器134内で酸化して硫酸カルシウムにされ、石膏品質をより向上させる。
従って、2つの第1の制御目的の間に緊迫した対立が存在するが、その第1の目的は、SO含有排煙114からSOを除去することであり、第2の目的は、所要の品質を有する石膏副産物160’を生産することである。すなわち、SO排出要件を満たすことと石膏品質仕様との間に制御矛盾が存在する場合がある。
次に、図17は、スラリーポンプ133及び吸収塔132の構造及び動作を詳細に示す。図示するように、スラリーポンプ133は、この実施形態でスラリーポンプ(133A、133B及び133C)で示される複数の別個のポンプを含み、スラリー148’を結晶化器134から吸収塔132にポンプ注入する。前記の図3を参照して説明したように、ポンプ(133A〜133C)のそれぞれは、スラリーを複数のレベルの吸収塔スラリーのレベルノズル(306A、306B及び306C)のうちの異なる1つに誘導する。スラリーレベル(306A〜306C)のそれぞれは、スラリーを様々なレベルのスラリー噴霧器(308A、308B及び308C)のうちの異なる1つに誘導する。スラリー噴霧器(308A〜308C)はスラリー、この場合には、スラリー148’をガス流入開口310から吸収塔132に入るSO含有排煙114内に噴霧してSOを吸収するようにする。清浄排煙116’は、次いで吸収塔132から吸収器流出開口132から排出される。また、上記のように、ME噴霧洗浄水200が吸収塔132に誘導される。3つの異なるレベルのスラリーノズル及び噴霧器、及び3つの異なるポンプが示されているが、ノズルと噴霧器のレベルの個数及びポンプの個数は、いずれも特定の実装形態により変更可能であることが分かる。
図15Aに示すように、ポンプ状態数値1512は、例えばオン/オフスイッチのようなポンプ状態制御1511から、そしてポンプ負荷数値1515は、例えばモーターのようなポンプ負荷制御1514から、動的制御モデルへの入力のためにMPCC1500にそれぞれフィードバックされる。また、図示するように、ポンプ状態設定点1513、例えばスイッチオン又はオフの指示は、ポンプ状態制御1511に、そしてポンプ負荷設定点1516はポンプ負荷制御1514に、MPCC1500によってそれぞれ供給されて、例えばオン又はオフやポンプ(133A〜133C)のそれぞれの負荷のような状態を制御し、これにより、スラリー148’をいずれのレベルのノズルにポンプ注入するか、そして各レベルのノズルにポンプ注入するスラリー148’の量を制御する。大半の現在のWFGD適用分野では、スラリーポンプ133が可変性負荷能力を含まないため(単にオン/オフされる)、ポンプ負荷設定点1516及び負荷制御1514がMPCC1500による使用又は調整のために利用することができない。
図17に示すような実装形態のように、ポンプ状態制御1511は、各ポンプに対する個別のポンプ状態制御を含み、参照番号1511A、1511B及び1511Cで表示される。同様に、ポンプ負荷制御1514は、各ポンプに対する個別のポンプ状態制御を含み、参照番号1514A、1514B及び1514Cで表示される。個別のポンプ状態数値(1512A、1512B及び1512C)は、それぞれポンプ状態制御(1511A、1511B及び1511C)からMPCC1500に供給され、前記スラリーポンプの現在状態を示す。類似のように、個別のポンプ負荷数値(1515A、1515B及び1515C)は、それぞれポンプ負荷制御(1514A、1514B及び1514C)からMPCC1500に供給され、前記スラリーポンプの現在状態を示す。ポンプ状態数値(1512A、1512B及び1512C)を基にして、MPCC1500は予測論理850を実行してポンプ(133A、133B及び133C)のそれぞれの現在状態を判断し、これにより任意の所与の時点でポンプ配列と呼ばれるものを決める。
上記のように、吸収塔132に入る排煙114の流速に対する吸収塔132に入る液状スラリー148’の流速比率は、通常L/Gで特徴付けられる。L/Gは、WFGDサブシステムにおける主要設計パラメータのうちの1つである。Gで表示される排煙114の流速がWFGD処理装置130’の上流で、通常、電力発電システム110の操作により設定されるため、これは制御されず、制御することもできない。しかし、Lで表示される液状スラリー148’の流速は、Gの値を基にしてMPCC1500により制御できる。
そのための1つの方法は、スラリーポンプ(133A、133B及び133C)の動作を制御することである。個別のポンプは、ポンプ状態設定点(1513A、1513B及び1513C)をポンプ133Aのポンプ状態制御1511A、ポンプ133Bの1511B及びポンプ133Cの1511Cにそれぞれ発行することにより、MPCC1500によって制御され、所望のポンプ配列及びこれによりスラリー148’が吸収塔132に入るレベルが得られる。WFGDサブシステムで利用可能な場合には、MPCC1500は、ポンプ負荷制御設定点(1516A、1516B及び1516C)をポンプ133Aのポンプ負荷制御1514A、ポンプ133Bの1514B及びポンプ133Cの1514Cにそれぞれ与え、それぞれの活性ノズルレベルから吸収塔132に入るスラリー148’の流れの所望の体積を得ることも可能である。従って、MPCC1500は、スラリー148’をいずれのレベルのノズル(306A〜306C)にポンプ注入するか、また各レベルのノズルにポンプ注入するスラリー148’の量を制御することにより、液状スラリー148’の吸収塔132への流速Lを制御する。ポンプ及びノズルのレベルの個数が多いほど、このような制御の粒度(granularity)が大きくなることが分かる。
スラリー148’をより高いレベルのノズル、例えばノズル306Aにポンプ注入する場合、スラリー噴霧器308Aから噴霧されるスラリーは、SO含有排煙114と相対的に長期間接触するようになる。これは、より低いスプレーレベルで吸収器に入って来るスラリーに比べて相対的により多い量のSOが排煙114からスラリーにより吸収されるようにする。一方、スラリーをより低いレベルのノズル、例えばノズル306Cにポンプ注入する場合には、スラリー噴霧器308Cから噴霧されるスラリー148’は、SO含有排煙114と相対的により短い接触期間を有するようになる。これは、相対的に少量のSOが排煙114からスラリーにより吸収されるようにする。従って、スラリーがポンプ注入されるノズルのレベルにより、同一量及び組成のスラリー148’を有しても、より多いかより少ない量のSOが排煙114から除去されるようになる。
しかし、液状スラリー148’をより高いレベルのノズル、例えばノズル306Aにポンプ注入することは、比較的より多い電力を必要とし、このため液状スラリー148’をより低いレベル、例えばノズル306C等のノズルにポンプ注入するのに必要なものよりも大きな稼動コストを必要とする。従って、より多い量の液状スラリーをより高いレベルのノズルにポンプ注入して吸収を増加させ、これにより排煙114から硫黄を除去することで、WFGDサブシステムの稼動コストが増加する。
ポンプ(133A〜133C)は極めて大きな回転装置である。このようなポンプは、MPCC1500によりポンプ状態SPを発することにより自動で又はサブシステム操作者又は他のユーザーによる手動で開始及び停止できる。吸収塔132に入る排煙114の流速が、電力発電システム110の操作における変化により変更された場合には、動的制御モデル870により予測論理850を実行し制御発生器論理860を実行するMPCC1500は、スラリーポンプ(133A〜133C)の1つ以上の動作を調整するようになる。例えば、排煙流速が設計負荷の50%に低下する場合、MPCCは、1つ以上のスプレーレベルの吸収塔ノズルにスラリー148’を現在ポンプ注入しているポンプのうちの1つ以上を停止すなわちオフするために1つ以上のポンプ状態SPを発し、及び/又は1つ以上のスプレーレベルの吸収塔ノズルにスラリーを現在ポンプ注入しているポンプのうちの1つ以上のポンプ負荷を減少させるために1つ以上のポンプ負荷制御SPを発することができる。
さらに、有機酸などの分配器(図示されない)がミキサー/ポンプ140の一部として、又は有機酸を工程に直接供給する個別のサブシステムとして含まれている場合は、MPCC1500は、同様に又は代替的に、スラリーに分配される有機酸又はその他の類似の添加剤の量を減少させて、排煙からSOを吸収そして除去するスラリーの能力を低下させるために、制御SP信号(図示されない)を発することもできる。このような添加剤は高価であるため、その使用は少なくとも米国内では比較的制限されている。さらに言えば、SO除去と稼動コストとの間には矛盾がある。添加剤は高価であるが、添加剤は、石膏純度に少ない影響を与えるかあるいは何ら影響を与えずに、SO除去率を顕著に向上させることができる。従って、WFGDサブシステムが添加剤注入サブシステムを含む場合には、MPCC1500が機器、工程及び規制制約限度内で可能な限り最低の稼動コストでWFGD工程を動作させるように、他のWFGD工程変数に合わせて添加剤の注入を制御するようにすることが良い。このような添加剤のコストをMPCC1500に入力することで、このコスト要因は動的制御モデルに含まれ、WFGD工程の制御を指示する際に実行される予測論理により考慮することができる。
石灰石の沈床の防止
上記のように、吸収されたSOを酸化させて石膏を形成させるためには、吸収塔132内でSOとスラリー中の石灰石との間で化学反応が必要である。この化学反応中に、酸素が消費されて硫酸カルシウムが形成される。吸収塔132に入る排煙114はOが不足しているため、通常、付加的Oが、吸収塔132に流れる液状スラリー内に添加される。
次に、図18を参照すれば、扇風機として特徴付けられる送風機150が周囲空気152を圧縮する。得られた圧縮された酸化空気154’は、前記図17を参照して言及したように、結晶化器134に送られ、結晶化器134内で吸収器132にポンプ注入されるスラリーに適用される。結晶化器134内でスラリーに圧縮酸化空気154’を添加すると、結晶化器134から吸収器132に流れる再循環スラリー148’は酸素含量を増大させ、これは酸化反応、そして硫酸カルシウムの形成を容易にする。
好ましくは、スラリー148’には過剰量の酸素が存在するが、スラリーにより吸収されたり保持できる酸素量には上限値があることが分かる。酸化反応を容易にするためには、スラリー中のOを過剰量用いてWFGDを動作させることが好ましい。
また、スラリー内のO濃度が低すぎると、排煙114中のSOとスラリー148’中の石灰石との化学反応が遅れ、結局中止されてしまう。このような現象を石灰石の沈床(limestone blinding)と言う。
結晶化器134内で再循環可能なスラリーに溶解されるOの量は、測定可能なパラメータではない。よって、動的推定モデル880は、好ましくは、溶解されたスラリーOのモデルを含む。推定論理、例えば動的推定モデル880によりMPCC1500の推定器1500Bにより実行される推定論理840は、結晶化器134内で再循環可能なスラリーに溶解されたOの推定値を計算する。計算された推定値は、MPCC1500の制御器1500Aに伝送され、ここで計算された推定値が動的制御モデル、例えば動的制御モデル870をアップデートするのに適用される。制御器1500Aは、次いで推定された溶解されたスラリーO数値を、MPCC1500に入力されている溶解されたスラリーO数値制約と比較する予測論理850を実行する。溶解されたスラリーO数値制約は、図15Bに示す制約1555のうちの1つであり、図19に、溶解されたスラリーO要件1926としてより詳細に示されている。
比較結果に基づき、依然として予測論理を実行する制御器1500Aは、吸収塔132にポンプ注入されるスラリー148’がOが欠乏しないように保障するため、WFGDサブシステム130’の操作に対してどのような調整が必要であるかを判断する。スラリー148’が十分な量の溶解されたOを有することを保障することは、SO排出及び石膏副産物の品質が引き続き所要の排出及び品質的制約を満たすことを保障するのにも役に立つということが分かる。
図15A及び18に示すように、送風機150は、送風機の速度制御機構とも呼ばれることがある、結晶化器134への酸化空気の流れを調整できる負荷制御機構1501を含む。前記負荷制御機構1501は、送風機150の負荷、及びこれにより結晶化器134に入る圧縮された酸化空気154’の量を調整するのに用いられ、このことにより、比較結果の観点からWFGDサブシステム130’の操作に対する任意の必要な調整を容易にする。好ましくは、負荷制御機構1501の動作は、制御器1500Aにより直接制御される。しかし、必要な場合、負荷制御機構1501は、制御器1500Aからの出力値を基にしてサブシステム操作者により手動で制御されることも可能で、操作者が負荷制御機構の適切な手動制御を行うように指示する。いずれの場合にも、比較の結果に従って制御器1500Aは、動的制御モデル870により予測論理850を実行し、結晶化器134に入る圧縮酸化空気154’の量に対する調整が、吸収塔132にポンプ注入されるスラリー148’のOが欠乏しないように保障する必要があるか否かを判断し、保障する必要がある場合には、調整の量を判断する。制御器1500Aは、次いで負荷制御機構1501からMPCC1500により受信される送風機負荷数値1502を考慮して制御発生器論理860を実行し、結晶化器134に入る圧縮酸化空気154’の量を、吸収塔132にポンプ注入されるスラリー148’がO欠乏しないように保障する量に調整するために、送風機150の負荷を変更するように負荷制御機構1501を指示するための制御信号を発生する。
既に言及したように、O欠乏は、熱気が送風機150により結晶化器134内に強制流入できる圧縮酸化空気154’の量を減少させる夏に特に問題になる。制御器1500Aにより実行される予測論理850は、例えば送風機負荷数値1502としてMPCC1500に入力される送風機150の速度又は負荷が、結晶化器134に入る圧縮酸化空気154’の体積を所定量だけ増加させるように調整する必要があるか否かを判断することができる。制御器1500Aにより実行される制御発生器論理は、次いで圧縮酸化空気154’の体積の所望の増加をもたらす送風機負荷SP1503を判断する。好ましくは、送風機負荷SP1503がMPCC1500から負荷制御機構1501に伝送されるが、前記機構は、送風機負荷SP1503に相応する送風機150に対する負荷の増加を指示することにより、石灰石の沈床を防止し、SO排出及び石膏副産物の品質が適用可能な制約内にあることを保障する。
送風機150の速度又は負荷を増加させる場合、当然送風機の電力消費も増加し、これによりWFGDサブシステム130’の稼動コストも増加する。このようなコストの増加はまた、好ましくは、WFGDサブシステム130’の操作を制御しながらMPCC1500によりモニターされ、このことで送風機150が本当に必要量の圧縮酸化空気154’を結晶化器134内に送るように制御するための経済的動機を提供する。
図19に示すように、単位電力コスト1906で示される現在コスト/電力単位は、好ましくは図15Bに示す非工程入力値1550のうちの1つとしてMPCC1500に入力され、動的制御モデル870に含まれる。この情報を利用して、MPCC1500の制御器1500Aは、結晶化器134への圧縮酸化空気154’の流れの調整を基にした稼動コストの変化を計算し、サブシステム操作者又は他のユーザーに表示することができる。
従って、送風機150用量が過剰になった場合には、制御器1500Aは、通常、沈床を防止するための十分さを保障するように、結晶化器134への圧縮酸化空気154’の流れを制御するようになる。しかし、送風機150が全荷重(full load)で動作し、結晶化器134に流れる圧縮酸化空気154’の量が依然として沈床の防止に不十分な場合、つまり吸収塔132で吸収されるSOすべての酸化のために空気(酸素)の添加が必要な場合には、制御器1500Aは代替的な制御計画を行う必要がある。これに関して、まずSOがスラリー内に吸収されると、酸化して石膏にされなければならない。しかし、余分のSOを酸化させるための付加的酸素がない場合は、SOを吸収しないことが一番良いが、その理由は、吸収されたSOが酸化されない場合、結果的に石灰石の沈床が発生するためである。
このような環境で、沈床が発生しないことを保障するため、制御器1500AがWFGDサブシステム130’の操作を制御するのに実行され得るもう1つの選択仕様を有する。より詳細には、動的制御モデル870及び制御発生器論理860により予測論理850を実行する制御器1500Aは、PID180を制御し、結晶化器134に流れるスラリー141’のpHレベルを調整し、これにより吸収塔132にポンプ注入されるスラリー148’のpHレベルを制御する。吸収塔132にポンプ注入されるスラリー148’のpHレベルの低下を指示することにより、付加的な余分のSO吸収が減少するようになり、沈床を防止することができる。
制御器1500Aにより実施され得るもう1つの代替的な計画は、図15Bに示す制約1555の外部で操作することである。特に、制御器1500Aは、結晶化器134内スラリー148’中のさほど多くはないSOが酸化される制御計画を実施してもよい。これにより、結晶化器134内で必要なO量が減少する。しかし、このような作用は、代りにWFGDサブシステム130’により生産される石膏副産物160’の純度を低下させる。この計画を採用する場合、制御器1500AがWFGDサブシステム130’の操作を制御するにおいて、1つ以上の制約1555を無視する。好ましくは、制御器は、図19の流出口SO許容値要件1922として示される、清浄排煙116’中のSOに対する厳しい排出制約を維持し、無効にし、図19の石膏純度の要件1924として示される石膏副産物160’の明示された純度を效果的に下げる。
従って、一旦最大送風機用量の限界に到逹した場合には、制御器1500Aは、吸収塔132に入るスラリー148’のpHを増加させ、これによりSO吸収を排出限界、つまり流出口SO許容値要件1922に減少させるように、WFGDサブシステム130’の操作を制御することができる。しかし、SO吸収の任意の追加的減少は、流出口SO許容値要件1922を犯すようになり、送風機の用量が、除去されるべき吸収されたSOのすべてを酸化させるのに必要な量の空気(酸素)を提供するのに不十分な場合には、物理的機器、例えば送風機150及び/又は結晶化器134の規模が縮小され、SO除去要件及び石膏順純度の両方を満たすことは不可能である。MPCC1500は、必要な付加的酸素を生成できないため、代替的な計画を考慮しなければならない。このような代替的な計画においては、制御器1500Aは、SO除去率の現行のレベルを維持するように、つまり流出口SO許容値要件1922を満足し、緩和された石膏純度制約を満たす、つまり流入口の石膏純度要件1924以下の石膏純度要件を満たす石膏を生産するようにWFGDサブシステム130’の操作を制御する。有利なことに、制御器1500Aは、低下された石膏純度の要件と所望の石膏純度の要件1924との差を最小化する。また他の代替は、制御器1500Aが上記すべての事項を行うハイブリッド計画によりWFGDサブシステム130’の操作を制御することである。このような代替的制御計画は、MPCC1500に標準調整パラメータを設定することにより実施できる。
MPCCの動作
上記のように、MPCC1500は、分布制御システム(DCS)内での設備応用のために大規模のWFGDサブシステムを制御することができる。MPCC1500により制御できるパラメータは、ほぼ無制限であるが、好ましくは、(1)吸収塔132に入るスラリー148’のpH、(2)液状スラリー148’を吸収塔132の異なるレベルに伝達するスラリーポンプ配列、及び(3)結晶化器134に入る圧縮酸化空気154’の量のうちの少なくとも1つ以上を含む。周知のように、WFGD工程の制御を指示するためにMPCC1500により利用される基本的工程関係を含むのは、動的制御モデル870である。従って、動的制御モデル870で構築された関係は、MPCC1500において一次的に重要である。これに対して、動的制御モデル870は、様々なパラメータ、例えばpH及び酸化空気レベルを様々な制約、例えば石膏純度及びSO除去レベルと関連づけ、このような関係は、以下に説明されるWFGDサブシステム130’の動的かつ柔軟な制御を可能にする。
図19は、MPCC1500の制御器1500Aにより入力されて使われる好適なパラメータ及び制約をより詳細に示す。以下に説明されるが、制御器1500Aは動的制御モデル870により、そして入力されたパラメータ及び制約に基づいて予測論理850を実行し、WFGD工程の未来状態を予測してWFGD工程を最適化するようにWFGDサブシステム130’の制御を指示する。次いで、制御器1500Aは、予測論理からの制御指示に従って制御発生器論理860を実行し、WFGDサブシステム130’の特定要素を制御する制御信号を発行する。
前記図15Bを参照して説明したように、入力されたパラメータは、測定された工程パラメータ1525、非工程パラメータ1550、WFGD工程制約1555、及び動的推定モデル880に従って推定論理840を実行するMPCC推定器1500Bにより計算された推定されたパラメータ1560を含む。
図19に示す好適な実装形態では、測定された工程パラメータ1525は、周囲条件1520、測定された電力発電システム(PGS)の負荷1509、測定された流入口SO189、送風機負荷数値1502、測定されたスラリーpH183、測定された流出口SO1505、実験室で測定された石膏純度1506、スラリーポンプ状態数値1512及びスラリーポンプ負荷数値1515を含む。WFGD工程制約1555は、流出口SO許容値要件1922、石膏純度要件1924、溶解されたスラリーO要件1926及びスラリーpH要件1928を含む。非工程入力値1550は、調整係数1902、現在のSOクレジット価格1904、現在の単位電力コスト1906、現在の有機酸コスト1908、現在の石膏販売価格1910及び未来の稼動計画1950を含む。推定器1500Bにより計算された推定パラメータ1560は、計算された石膏純度1932、計算された溶解されたスラリーO1934及び計算されたスラリーpH1936を含む。非工程パラメータ入力値、例えば現在の単位電力コスト1906を含むことにより、MPCC1500は、工程の現在状態のみを基にするだけでなく、工程外部要素の状態も基にしてWFGDサブシステム130’の制御を指示することができる。
付加的SO 吸収用量の利用可能性の判断
図17を参照して説明したように、MPCC1500は、ポンプ(133A〜133C)の状態及び負荷を制御することができ、これによりスラリー148’の流れを吸収塔132の様々なレベルに制御することができる。また、MPCC1500は、現在ポンプ配列及び現在ポンプ負荷数値(1515A〜1515C)を基にしてポンプ(133A〜133C)の現在電力消費を計算することができ、付加的に計算された電力消費及び現在単位電力コスト1906を基にしてポンプに対する現在稼動コストを計算することも可能である。
MPCC1500は、好ましくは、ポンプ(133A〜133C)の利用可能な付加的用量を判断するため、現在ポンプ状態数値(1512A〜1512C)及び現在ポンプ負荷数値(1515A〜1515C)を基にして動的制御モデル870により予測論理850を実行するように構成される。MPCC1500は、利用可能な付加的ポンプ用量の判断された量を基にしてポンプの動作を調整することにより、例えばポンプ配列を変えるようにポンプを調整したり、ポンプへの電力を増加させることで、除去できるSOの付加的量を判断する。
除去に利用可能なSO の付加的量の判断
上記のように、センサー188により検出された測定された流入口SO組成189に加えて、電力発電システム(PGS)110の負荷1509は、好ましくは、負荷センサー1508により検出され、また測定されたパラメータとしてMPCC1500に入力される。PGS負荷1509は、例えば消費する石炭のBTUの測定値、又は電力発電システム110により発電する電力量を示すことができる。しかし、PGS負荷1509はさらに、他のパラメータ測定が流入口排煙負荷に合理的に相応する場合、例えば石炭燃焼電力発電システム又は工程の一部パラメータがWFGDサブシステム130’に送られる流入口排煙の量に合理的に相応する場合には、電力発電システム110又は関連の電力発電工程の他のパラメータを示すことも可能である。
MPCC1500は、好ましくは、PGS負荷1509に相応する吸収塔132における流入口排煙負荷、つまり流入口排煙114の体積又は質量を判断するため、動的制御モデル870により予測論理850を実行するように構成される。MPCC1500は、例えばPGS負荷1509を基にして吸収塔132における流入口排煙負荷を計算することができる。代替として、PGS負荷1509は自体で流入口排煙負荷の役割をすることもでき、この場合には計算が不要である。いずれの場合にも、MPCC1500は、その後測定された流入口SO組成189、流入口排煙負荷、及び測定された流出口SO1505を基にして排煙114からの除去に利用可能なSOの付加的量を判断することになる。
流入口排煙負荷は、必要な場合には、直接測定されMPCC1500に入力できることが理解できる。すなわち、吸収塔132に送られる流入口排煙114の体積又は質量の実際測定値は、場合により吸収塔132の上流及び他のAPCサブシステム122の下流に位置するセンサー(図示されない)により感知され、MPCC1500に供給することができる。このような場合、MPCC1500がPGS負荷1509に相応する流入口排煙負荷を判断する必要がないこともある。
モーメント及び連続平均SO 除去制約
図12を参照して説明したように、工程履歴データベース1210は、例えば図8を参照して説明したように、SO排出履歴データベース890を含む。工程履歴データベース1210は、MPCC1500に相互接続されている。MPCC1500は、例えば図8に示す種類であってもよく、あるいは多段階種類の制御器、例えば図10に示すような2段階の制御器であってもよい。
SO排出履歴データベース890は、最後の連続平均期間におけるSO出力を示すデータを保存するが、SOの組成だけでなく排出されたSOのパウンドに関するデータを保存する。従って、SO2分析器1504から測定された流出口SO1505の入力により現在SO排出量を示す情報にアクセスすること以外にも、MPCC1500は、工程履歴データベース1210に相互接続することによって、SO排出履歴データベース890により最後の連続平均時間帯におけるSO出力、つまり測定された流出口SOを示す履歴情報にアクセスすることができる。現在SO排出量は、単一数値に相応するのに対し、最後の連続平均時間帯におけるSO排出量は、適用可能な期間におけるSO出力の動的移動に相応することが分かる。
付加的SO 酸化用量の利用可能性の判断
図19で説明したように、MPCC1500への入力値は、(1)流出口SO1505、(2)結晶化器134に入る酸化空気の量に相応する、測定された送風機負荷1502、(3)スラリーポンプ状態数値1512すなわちポンプ配列、及び吸収塔132に流れる石灰石スラリーの量に相応するスラリーポンプ負荷数値1515、(4)吸収塔132に流れるスラリーの測定されたpH183の測定された数値である。さらに、MPCC1500への入力値は、(1)石膏副産物160’の純度1924、(2)十分な酸化を保障し、石灰石の沈床防止に必要な、スラリーに溶解されたOの量に相応する、結晶化器134内のスラリーに溶解されたO1926、及び(3)WFGDサブシステム130’を抜け出る排煙116’中の流出口SO1922に対する限界要件である。今日では、流出口SO許容値の要件1922が通常のモーメントSO排出量及び連続平均SO排出量の両方に対する制約を含む。また、MPCC1500への入力値は、(1)単位電力のコスト1906、例えば電気一単位のコスト、及び(2)前記規制クレジットが販売される値段を示す、SOクレジット価格1904の現在及び/又は予想数値を含む非工程入力値である。また、MPCC1500は、(1)石膏副産物160’の現在純度1932、(2)結晶化器134内のスラリーに溶解されたO1934、及び(3)吸収塔132に流れるスラリーのpH1936の推定値を計算する。
動的制御論理により予測論理を実行するMPCC1500は、このようなパラメータを演算して吸収塔132内でスラリーにより反応するSOの量を判断する。この判断に基づき、MPCC1500は、硫酸カルシウムを形成するための亜硫酸カルシウムの酸化反応のために結晶化器134内のスラリーに利用可能に残存する溶解されないOの量を判断する。
付加的な利用可能な用量を適用することに関する判断
MPCC1500が、付加的SOを吸収して酸化させるときに付加的用量が利用可能であり、除去に利用可能な付加的SOがあると判断した場合には、MPCC1500は、好ましくは、排煙114から付加的な利用可能なSOを除去する稼動を調整するためにWFGDサブシステム130’を制御するか否かを判断するために、動的制御モデル870により予測論理850を実行するように構成される。これを決定するために、MPCC1500は、例えばそのようなSOクレジットの生成及び販売がWFGDサブシステム130’稼動の収益性を増加させるか否かを判断するが、その理由は、付加的SOを適用可能な政府の規制当局により許可された稼動許容値で要求される基準を超過して、つまり流出口SO許容値要件1922で要求されることを超過して除去し、これにより得られる規制クレジットを販売するように稼動を変更することがより利益になるためである。
特に、動的制御モデル870により予測論理850を実行するMPCC1500は、SOの除去を増加させるためにWFGDサブシステム130’の稼動で必要な変化を判断するようになる。この判断に基づき、MPCC1500は、これにより得られる付加的規制クレジットの数を判断する。決められた稼動変化及び現在又は予想される電気コスト、例えば単位電力コスト1906を基にして、MPCC1500は、結果的に必要と判断されたWFGDサブシステム130’の稼動における変化により要求される付加的電気コストを付加的に判断するようになる。このような後者の判断及び現在又は予想されるそのようなクレジットの価値、例えばSOクレジット価格1904を基にして、MPCC1500は、付加的規制クレジットを生成するコストがそのようなクレジットを販売できる価値より大きいか否かをさらに判断するようになる。
ここで、クレジット価格がより低い場合は、付加的クレジットの生成及び販売が有利でない場合もある。むしろ、政府の規制当局により許可された適用可能な稼動許容値を満たすのに必要な最低レベルでSOを除去する方が、コストを最小化することができ、これにより、WFGDサブシステム130’稼動の収益性を最大化することになるが、その理由は、政府の規制当局により許可された適用可能な稼動許容値の流出口SO許容値要件1922を最小限に満たすのに必要なSOの量のみを除去する方がより利益になるためである。たとえ、WFGDサブシステム130’の現在の操作においてクレジットが既に生成されている場合は、MPCC1500は、SO除去を低下させ、これにより追加的SOクレジットの生成を中止して電気コストを削減させ、その結果、稼動の収益性が増加するように、WFGDサブシステム130’の稼動に変更を指示することも可能である。
稼動順位の設定
図19に示されているように、MPCC1500は、好ましくは、調整係数1902を非工程入力1550の他の部類として受信するように構成される。動的制御モデル870及び調整係数1902に従って予測論理850を実行するMPCC1500は、例えば制御変数それぞれに対する加重値を用いて制御変数に対する優先順位を設定することができる。
この場合、好ましくは、制約1555は、適切な場合、各々の制約されたパラメータの限界に対して要求される範囲を決めるようになる。これにより、例えば流出口SO許容値要件1922、石膏純度要件1924、溶解されたO要件1926及びスラリーpH要件1928は、それぞれ上限値及び下限値を有するようになり、MPCC1500は、調整係数1902に基づいた範囲内でWFGDサブシステム130’の稼動を維持するようになる。
未来WFGD工程の評価
予測論理850を実行するMPCC1500は、上記で説明したように、動的工程モデル870に従い、最初に、現在の工程稼動状態を評価することが好ましい。しかし、評価はそこで終わる必要はない。MPCC1500は、動的工程モデル870に従い予測論理850を実行するように構成し、WFGDサブシステム130’の稼動に変更を加えない場合に、工程稼動がいずれに移動するのかを評価する。
より詳細には、MPCC1500は、動的制御モデル870及び工程履歴データベース1210内で記憶された履歴工程データ内の関係を基にして工程稼動の未来状態を評価する。前記履歴工程データは、ある所定期間におけるSO履歴データベース内のデータのみならず、WFGD工程内で以前に発生したのを示す他のデータを含む。この評価の一部として、MPCC1500は、WFGDサブシステム130’が動作している現在の経路を判断し、これにより稼動に変化が生じない場合は、WFGD工程に関わる様々なパラメータの未来数値を判断する。
当業者には理解されているが、MPCC1500は、好ましくは前記言及したものと類似の方式で、付加的SO吸収用量の利用可能性、除去に利用可能なSOの付加的量、付加的SO酸化用量の利用可能性、及び決められた未来パラメータ数値に基づいて付加的利用可能な用量を適用するかを判断する。
WFGDサブシステム稼動のための稼動計画の実施
MPCC1500は、土台となる工程モデル及びその工程モデルの工程制御関係に影響を与えずに複数の稼動計画を実行するプラットフォームとして使用されてもよい。MPCC1500は、稼動目標を定める目的関数を使用する。前記目的関数は、工程モデルの関係では工程に関する情報を含むが、調整係数又は加重値をも含む。工程モデルを通じた目的関数で表される工程関係は固定されている。調整係数は、制御装置の各実行前に調整されてもよい。工程の限界又は制約に支配される制御装置アルゴリズムは、前記目的関数の最適値を決めるために目的関数の数値を最大化したり、最小化することができる。工程数値のための最適稼動目標は、制御装置において、目的関数に対する最適解決策から利用可能である。目的関数で調整係数又は加重値を調整すれば、目的関数の数値が変わり、そのため最適解決策が変わる。目的関数調整定数を設定する適切な基準又は計画を適用することにより、MPCC1500を用いて様々な稼動計画を実行することが可能である。より一般的に使用される稼動計画の一部は、以下のようなものを含んでもよい。
・資産最適化(利益最大化/コスト最小化)
・汚染物質除去の最大化
・制御問題で操作された変数の移動を最小化
WFGDサブシステム稼動の最適化
所望の稼動基準及び適切に調整された目的関数及び調整係数1902を基にして、MPCC1500はまずWFGDサブシステム130’のための長期稼動目標を確立するため、適切な入力又は計算されたパラメータに基づき、動的工程モデル870により予測論理850を実行する。MPCC1500は、次いで操作された変数及び制御された変数の両方に対し、工程変数の現在状態からこのような工程変数のために確立されたそれぞれの長期稼動目標に達する最適過程、例えば最適軌跡及び経路に対する詳細計画を確立するようになる。
MPCC1500は、次いで確立された長期稼動目標及び最適過程詳細計画に従ってWFGDサブシステム130’の稼動を変更するように制御指示を発する。最終的に、制御発生器論理860を実行するMPCC1500は、前記制御指示に従ってWFGDサブシステム130’に制御信号を発生して通信する。
従って、MPCC1500は、所望の目標定常状態を決めるため、動的制御モデル870及び現在の測定されたパラメータ及び計算されたパラメータデータに従って、選択された目的関数、例えば現在の電気コスト又は規制クレジット価格を基にして選択された目的関数に基づくWFGDサブシステム130’の稼動の第1の最適化を行う。MPCC1500は、次いで工程変数を現在状態から所望の目標定常状態まで移動させる動的経路を決めるため、動的制御モデル870及び工程履歴データに従ってWFGDサブシステム130’の稼動の第2の最適化を行う。有利なことに、MPCC1500により実行される予測論理は、動的経路に沿って各地点で各工程変数の所望の目標状態と各工程変数の実際の現在状態との誤差又は脱離を最小化しながら、工程変数を各工程変数の所望の目標状態に迅速かつ現実的に移動させるため、MPCC1500によるWFGDサブシステム130’の稼動の制御を容易にする経路を決める。
従って、MPCC1500は、工程変数が現在時点Tにおける現在状態からTssにおける目標定常状態まで移動する期間中に、現在時点(T)のみならずすべての他の時点に対しても制御問題を解決する。これは、工程変数の移動が現在状態から目標定常状態までの全体経路を横切る間にずっと最適化されるようにする。これは、通常のWFGD制御器、例えば背景技術で言及したPIDを用いた工程パラメータの移動に比べて、付加的な安定性を提供する。
WFGDサブシステムの最適化された制御は、工程関係が動的制御モデル870で実現されるため、そして目的関数又は非工程入力値、例えば経済的入力値又は変数の調整を変更するのが前記関係に影響を与えないため可能である。従って、一旦動的制御モデルが確認されたら、MPCC1500が、異なる非工程条件を含んで異なる条件で工程レベルの追加的考慮なしで、WFGDサブシステム130’そしてWFGD工程を制御する方式を操作したり、変更することが可能である。
再び図15A及び図19を参照すれば、WFGDサブシステム130’の制御の例は、SO2クレジットを最大化する目的関数に関して、そしてWFGDサブシステム稼動の収益性を最大化したり、損失を最小化する目的関数に関して記載される。当業者は、その他の稼動シナリオのための調整係数を生成することにより、WFGDサブシステムの他の制御可能なパラメータを最適化、最大化又は最小化することが可能であることが理解できる。
SO2クレジットの最大化
SOクレジットを最大化するために、MPCC1500は、調整定数がSOクレジットを最大化するように設定された目的関数を有する動的制御モデル870に従って予測論理850を実行する。WFGD工程の観点から、SOクレジットを最大化するためには、SOの回収を最大化する必要があることが分かる。
目的関数に入力される調整定数は、目的関数が、互いに相対的なSO出力に対して操作された変数変化の効果のバランスをとるようにする。
最適化の最終結果は、MPCC1500が以下のものを増加させることになる。
・スラリーpH設定点186’の増加によるSO除去、及び
・回収される付加的SOに対して補償するために送風機酸化空気154’を増量。
・以下に対する制約の支配:
・石膏純度制約1924に対する低い限界。これは、通常石膏純度の要件1924内で石膏純度の最低許容可能な限界を少し超過する安全マージンを提供する数値であることが分かる。
・所要の酸化空気154’に対する低い限界、及び
・酸化空気送風機150の最大用量。
また、MPCC1500がポンプ133配列を調整するように許容される場合、MPCC1500はポンプ133配列及び負荷に対する制約の支配を受けるスラリー循環及び有効スラリーの高さを最大化するようになる。
このような稼動シナリオにおいて、MPCC1500は、SOクレジットを発生させるために、SO除去率を増加させるためすべてを集中する。MPCC1500は、石膏純度1924及び酸化空気の要件等の工程制約を尊重する。しかし、このシナリオは、電力のコスト/価値に対するSOクレジットの価値のバランスをとるようにすることはない。このシナリオは、SOクレジットの価値が電力のコスト/価値を著しく超過する場合に適している。
収益性の最大化又は損失の最小化
MPCC1500における目的関数は、収益性を最大化したり損失を最小化するように設定される。このような稼動シナリオは、資産の最適化のシナリオとも呼ばれる。また、このシナリオは、電力、SOクレジット、石灰石、石膏、及び有機酸等の任意の添加剤に対する正確な最新のコスト/価値情報を必要とする。
制御器モデルで変数各々に関わるコスト/価値係数が目的関数に入力される。次いで、MPCC1500の目的関数は、コストを最小化したり/利益を最大化するように指示される。利益がネガティブコストとして定義される場合、コスト/利益は、最小化させる目的関数に対して連続関数になる。
このようなシナリオにおいて、目的関数が、付加的SOクレジットを発生させることによる限界価値(marginal value)が前記クレジットを発生させる限界コスト(marginal cost)と等しくなる時点での最小コスト稼動を判別する。前記目的関数は、制約のある最適化であるため、最小化されたコスト解決策は、以下に対する制約の支配を受けることが分かる:
・最小SO除去率(排出許容値/目標値遵守のため)、
・最小石膏純度、
・最小酸化空気要件、
・最大送風機負荷、
・ポンプ配列及び負荷限界、
・添加剤限界。
このような稼動シナリオは、電気価値/コスト及びSOクレジットの価値/コストの両方において変化に敏感である。最大の利益のためには、このようなコスト係数は、リアルタイムでアップデートされなければならない。
例えば、コスト係数が各制御器1500Aの実行前にアップデートされると仮定する場合、電気消費が昼間に増加するため、発電される電力の現在価値もまた増加する。本設備において、付加的電力を前記現在価値で販売するのが可能であり、SOクレジットの価値が現在時点として本質的に固定されていると仮定する場合は、もし最小SO除去率を依然として維持しながらポンプ133及び送風機150からグリッド(grid)に電力を移送させる方法があれば、付加的電力をグリッドに移送させる相当の経済的動機が発生する。MPCC1500の目的関数中の電力に関わるコスト/価値係数は、前記の現時点の価格が変わることにより変わり、前記目的関数は、稼動制約は満たすとともに、電力を少なく使用する新しい解決策に到逹することができる。
一方、SOクレジットの現時点の価格が増加し、付加的SOクレジットのための市場が存在し、電力のコスト/価値が比較的一定である場合には、MPCC1500の目的関数は、稼動制約に支配されるSO除去率を増加させることにより、このような変化に反応するようになる。
例示的2つのシナリオにおいて、MPCC1500は、すべての稼動制約を観察した後、MPCC1500の目的関数は、SOクレジットの限界価値がクレジットを発生させるのに必要な限界コストと同等になる最適稼動地点を検出するようになる。
実行不可能な稼動
時々、WFGDサブシステムに対して、実行可能な解決策のない制約1555及び稼動条件、つまり測定された条件1525及び推定された条件1560のセットが与えられる場合がある。すなわち、図5A及び図5Bに示すような実行可能な稼動の区域525が空いている空間である。このような事が発生する場合には、いずれの解決策もシステムに対する制約1555すべてを満たすことができない。このような状況を「実行不可能な稼動」として定義することができるが、その理由は、システムに対する制約を満たすことが実行不可能なためである。
実行不可能な稼動は、WFGDの能力外の稼動、WFGD又はWFGDの上流における間違った工程の結果である場合もある。また、WFGD及びMPCC1500システムに対する厳しすぎる、不適切な、及び/又は不正確な制約1555の結果である場合もある。
実行不可能な稼動の期間中には、MPCC1500の目的関数が加重された誤差を最小化する目的に集中する。各工程制約1555が目的関数に表れる。加重項目が各誤差、又は制御された/目標された工程数値による制約限界の違反事項に適用される。制御器1500Aが動作する間、目的関数が実行不可能な稼動期間中により重要な制約を尊重するために、最低加重制約に対して放棄するように、実行エンジニアら(implementation engineer)が誤差加重項目に対して適切な値を選択する。
例えば、WFGDサブシステム130’では、流出口SO1505に関わる規制許容値限界及び石膏純度1506に関わる販売仕様がある。SO排出許容値の違反は、罰金及びその他の相当な結果をもたらす。石膏純度販売仕様の違反は、石膏製品の等級下向又は再混合である。製品の等級下向は、好適な選択ではないが、排出許容値の違反よりは発電ステーションの稼動可能性には影響を少なく与える。従って、調整係数は、SO排出限界に対する制約が石膏純度に対する制約よりさらに大きな重要性、さらに大きな加重値を持つように設定される。従って、実行不可能な稼動期間中には、このような調整係数において、MPCC1500の目的関数は、優先的にSO排出量をSO排出限界以下に維持し、石膏純度制約を違反するようにする。すなわち、MPCC1500は、石膏純度制約の違反を最小化するが、さらに重要な排出限界を維持するために、実行不可能性をその変数に適用させる。
制御決定について稼動者に通知
また、好ましくは、MPCC1500は、特定MPCC1500の決定事項に対して稼動者に通知するように設定される。ここでも同様に、予測論理850、動的制御モデル870又はその他のプログラムを使ってMPCC1500がそのような通知を行うように設定することができる。例えば、MPCCは、稼動者又は他のユーザーがMPCC1500の特定の決定事項、例えばSOクレジットの価値が高くて特定の時点では石膏品質の維持が低い優先順位に置かれるという決定事項などについて分かるように、アラームを発したり、文字や画像ディスプレイで表示するように指示する機能を有することができる。
WFGD要約
要約すれば、上記で詳述したように、WFGD工程のための最適化基盤制御について説明した。この制御は、工程フィードバックを用いてアップデートされる多重入力、多重出力モデルの最適化に基づいて、WFGD工程に対する設定点のリアルタイム操作を容易にする。前記最適化は、工程のための複数の目的及び制約を考慮してもよい。このような制御がない場合、操作者は、WFGDに対する設定点を決めなければならない。工程の複雑性のため、操作者は、複数の制約と目的とのバランスをとるために、しばしば準最適設定点を選択する。準最適設定点/稼動は、除去効率の損失、稼動コストの上昇及び品質的制約への違反の可能性をもたらす。
石膏純度に対する仮想のオンライン分析についても説明した。前記分析は、測定された工程変数、実験室分析及び石膏純度に対する動的推定モデルを用いてWFGD工程により生産される石膏副産物の純度のオンライン推定値を計算する。WFGD工程により生産される石膏純度に対するオンラインセンサーが従来より利用不可能であるため、従来からオフライン実験室分析が石膏純度を判断するのに使われる。しかし、石膏純度はたまに試験され、純度は通常、石膏仕様で設定された制約の上位に維持されなければならないため、工程操作者はしばしば石膏純度が要求される制約よりはるかに上位として算出されるようにする、WFGD工程に対する設定点を使用する。その代りにSO除去効率が犠牲にされたり、WFGDサブシステムによる不要な電力消費をもたらす。石膏純度をオンラインで推定することにより、WFGD工程に対する設定点は、石膏純度が純度制約に近接するのを保障するように制御でき、これによりSO除去効率の増加が促進される。
また、前記で説明したように、石膏純度の仮想オンライン分析は、制御ループで行われ、モデル予測制御(MPC)が利用される場合にも、又はPID制御が利用される場合にも、推定値がフィードバック制御に含まれるようにする。フィードバックを制御ループに提供することにより、SO除去効率は、純度が適用可能な純度制約により近接した石膏を生産するように稼動されるときに増加できる。
付加的に前記で説明されたのが稼動コストに対する仮想オンライン分析である。開示したように、前記分析は、WFGD工程データを含めて現在の市場価値データを利用してWFGD工程の稼動コストをオンラインで計算する。一般的に操作者は、WFGD工程の現在稼動コストを考慮しない。しかし、このようなコストをオンラインで計算することにより、操作者は、稼動コストに対する工程変更、例えば設定点の変更の効果を追跡できる能力を持つことになる。
また、MPCが利用される場合、又はPIDが利用される場合にも、稼動コストの仮想オンライン分析を制御ループで行い、推定値がフィードバック制御に含まれるようにすることが開示された。このフィードバック制御は、このようにすることにより稼動コストを最小化するように実行できる。
また、最大SO除去効率、最小稼動コスト及び/又は制約より上位の所望の石膏純度のために、WFGD工程の稼動を最適化するようにMPC制御を適用する技法について説明した。このような制御は、前記で言及したように、フィードバックループ内で石膏純度及び/又は稼動コストの仮想分析のメリットを取ることができ、例えばSO除去効率及び/又はWFGD工程に対する稼動コストの自動最適化が可能である。
また、前記で必要なパラメータ及び選択的なパラメータについて説明した。開示されたパラメータを用いて、当業者は、適用可能なWFGD工程の適切なモデルを展開するためによく知られている技法を日常的な方式で適用することができ、前記モデルは、次いでWFGD工程の稼動を最適化するため、例えばWFGD工程を制御するMPCC1550により用いられてもよい。モデルは、石膏純度、SO除去効率及び/又は稼動コストのみならず、様々なその他の要素について展開することができる。WFGD工程を最適化するために、通常のMPC又はその他の論理が、本願発明に記載された原理、システム及び工程により構築されたWFGD工程モデルに従って実行できる。従って、例えば、単一の入力/単一の出力構造に限定され、工程モデルよりは工程フィードバックに厳格に依存するPIDを使用する通常のWFGD工程制御の限界が克服できる。モデルをフィードバックループに含ませることにより、WFGD工程制御は、例えば以前よりも可変性が低くなり、稼動を制約により近いところに維持するように、一段と向上できる。
WFGD工程のための神経回路網基盤モデルの適用についてWFGD工程の工程制御及び仮想オンラインと関連づけて説明した。前記で説明したように、WFGD工程の入力に対する出力関係は、非線形関係を表すため、非線形モデルを使用することが有利であるが、これはそのようなモデルが工程の非線形性を最もよく表すためである。また、WFGD工程からの経験的データを用いて誘導されたその他のモデルの構築についても説明した。
WFGD工程の制御及び仮想分析のための、第1原理及び経験的工程データの両方を考慮する組合せモデルの適用についても詳細に説明した。WFGD工程の一部要素はよく理解され、第1原理モデルを利用してモデル化できる一方、他の要素はあまり理解されず、これにより経験的工程履歴データを利用して最も便利にモデル化することができる。第1原理及び経験的工程データの組合わせを利用して、工程のすべての要素に対して段階試験を経る必要なく、正確なモデルが速かに展開できる。
前記でWFGD工程で使われるセンサー測定値を確認する技法についても説明した。確認されない測定値を代替することにより、WFGD工程の不正確なセンサー測定値による不適切な制御を避けることができる。良好でない測定値を確認して取り替えることにより、WFGD工程は、正確な工程数値を基にして連続的に稼動できる。
また、連続排出の制御について詳細に説明した。従って、この開示内容の観点から、WFGD工程は、工程に対する1つ以上の複数の連続排出の平均が適切に維持されるように制御できる。工程の制御のために、MPCが単一制御装置又は複数の多段階制御装置を用いて実施されてもよい。前記技法を利用して、WFGD工程は、例えば複数の連続平均が同時に考慮されて維持され、同時に稼動コストが最小化されるように制御できる。
SCRサブシステム構造
本発明のその他の環境及び実施形態に対する有用性を立証するため、MPCCのSCRへの適用に対するハイライトを記載する。SCRのための主要制御目的は、以下のようなものを含む。
・NOx除去:規制の遵守又は資産最適化のために目標される、
・アンモニアスリップの制御、及び
・最小コスト稼動:SCR触媒の管理及びアンモニア使用。
もう一度、WFGDに対して言及されたのと類似の測定及び制御方法論を利用してもよい。
測定:言及されたように、アンモニアスリップは頻繁には測定されない重要な制御パラメータである。アンモニアスリップの直接的な測定がない場合、流入口及び流出口Noxの測定値(2112及び2111)及びSCR2012へのアンモニア流れからアンモニアスリップを計算することができる。この計算の精度には疑わしいものがあるが、その理由は、計算が正確で反復可能な測定値を要求し、大きい数字間の小さな差異を評価することを含むためである。アンモニアスリップの直接的な測定なしに、信頼度がさらに高いアンモニアスリップ推定値を生成するため、アンモニアスリップの直接的な計算の他に仮想オンライン分析器技法が用いられる。
VOAにおける第1段階は、触媒能力(反応係数)及びSCR触媒全体に対する空間速度相関関係変化量(SVCV)を推定する。これらは、流入口排煙流れ、温度、触媒の総作動時間及び流入口NOx及び流出口NOxの量を利用して計算される。触媒能力及びSVCVの両方の計算は、一定数のサンプルにおいて時間平均を出す。触媒能力は徐々に変化し、前記能力を計算するのに多くのデータポイントが使われるが、SVCVはさらに頻繁に変化し、比較的少ないデータポイントがSVCVの計算に使われる。触媒能力(反応係数)、空間速度相関関係変化量(SVCV)及び流入口NOxが与えられれば、図9に示すような技法を利用してアンモニアスリップの推定値が計算できる。
アンモニアスリップハードウェアセンサーが利用可能である場合には、自動でVOAにバイアス(bias)を与えるために、そのようなセンサーから工程モデルへのフィードバックループが使われるようになる。VOAは、ハードウェアセンサーの通常ノイズの多い出力信号を著しく減少させるために使われる。
最後に、SCRの稼動コストに対して仮想オンライン分析器を使用してもよいことが分かる。前のセクションで開示されたように、稼動コストに対するモデルは第1原理により展開される。稼動コストは、仮想オンライン分析器を用いてオンラインで計算することができる。同様に、図9に示す技法がVOAに用いられる。
制御:制御目的を果たすために、MPCCがSCR制御問題に適用される。図8と類似している図22は、SCR MPCC2500のためのMPCC構造を示している。図8と類似していることから、図22に関する詳細な説明は省略し、MPCC2500は、前記図8の説明を参照すれば理解できる。図23Aは、SCRサブシステム2170’に対するMPCC2500の適用を示している。SCRサブシステム2170’の規制制約計画において最も大きな変更は、それぞれ図20に示されるNOx除去PID制御器2020及び負荷フィードフォーワード制御器2220の機能がMPCC2500で代替されることである。MPCC2500は、アンモニア流れ制御器(PID)2010などによる使用のためアンモニア流れSP2021A’を直接計算する。
MPCC2500は、NOx除去効率及びアンモニアスリップを制御するために、1つ又は複数のアンモニア流れを調整することができる。NOx除去効率及びアンモニアプロファイル情報を構築するのに十分な、流入口及び流出口NOx分析器(2003及び2004)の測定値及びアンモニア分析器2610からのアンモニアスリップ測定値2611があれば、MPCC2500は、全体又は平均NOx除去効率及びアンモニアスリップもプロファイル数値を制御するようになる。NOx除去効率及びアンモニアスリッププロファイルにおいて複数の数値の調和した制御は、可変性を平均工程数値程度に著しく低下させる。可変性が低いほどシステム内では、ホットストップ(hot stop)が減少する。このプロファイル制御は、少なくとも一部の形態のプロファイル測定及び制御、1つを超えるNOx流入口、NOx流出口、アンモニアスリップ測定値及び1つを超える動的に調整可能なアンモニア流れを必要とする。必要な入力値(測定値)及び制御要領(アンモニア流れ)なしでは、MPCC2500は、プロファイル制御を行うことができず、得られる利益を捕捉することができないことを認めなければならない。
MPCC2500の観点から、プロファイル制御に関わる付加的パラメータは、制御装置の大きさを増加させるが、全体的な制御方法論、計画及び目的は変わらない。従って、今後の論議は、プロファイル制御のないSCRサブシステムの制御についての考慮になる。
図23Bは、MPCC2500の全体図を示す。
SCRサブシステム稼動の最適化
まず、SCRサブシステム2170’のための長期稼動目標を確立するため、所望の稼動基準及び適切に調整された目的関数及び調整係数2902を基にして、MPCC2500は、適切な入力又は計算されたパラメータを基にして動的制御モデル2870により予測論理2850を実行する。MPCC2500は、操作された変数及び制御された変数の両方に対する工程変数の現在状態からこれら工程変数のために確立されたそれぞれの長期稼動目標に達する最適過程、例えば最適軌跡及び経路に対する詳細計画を確立する。MPCC2500は、確立された長期稼動目標及び最適過程詳細計画によりSCRサブシステム2170’の稼動を変更するように制御指示を出す。最終的に、制御発生器論理2860を実行するMPCC2500は、前記制御指示を基にしてSCRサブシステム2170’に制御信号を発して通信を行う。
従って、MPCC2500は、所望の目標定常状態を決めるため、動的制御モデル及び現在測定されたパラメータ及び計算されたパラメータデータにより、選択された目的関数、例えば現在電気コスト又は規制クレジット価格を基にして選択されたものに従って、SCRサブシステム2170’稼動の第1の最適化を行う。MPCC2500は、次に、工程変数を現在状態から所望の目標定常状態まで移動させる動的経路を決めるため、動的制御モデル及び工程履歴データによりSCRサブシステム2170’稼動の第2の最適化を行う。有利なことに、MPCC2500により実行される予測論理は、動的経路に沿って各地点で各工程変数の所望の目標状態と各工程変数の実際現在状態との誤差又は脱離を最小化しながら、工程変数を各工程変数の所望の目標状態に迅速かつ現実的に移動させるため、MPCC2500によるSCRサブシステム2170’の稼動の制御を容易にする経路を決める。
従って、MPCC2500は、工程変数が現在時点Tにおける現在状態からTssにおける目標定常状態まで移動する期間中に、現在時点(T)のみならずすべての他の時点に対しても制御問題を解決する。これは、工程変数の移動が現在状態から目標定常状態までの全体経路にわたって最適化されるようにする。これは、通常のSCR制御器、例えば上記のPIDを利用した工程パラメータの移動に比べて、付加的な安定性を提供する。
SCRサブシステムの最適化された制御は、工程関係が動的制御モデル2870で実現されるため、そして目的関数又は非工程入力値、例えば経済的入力値又は変数の調整を変更することが前記関係に影響を及ぼさないために可能である。従って、一旦動的制御モデルが確認されたら、MPCC2500が、異なる非工程条件を含んで異なる条件で工程レベルの追加的考慮なしに、SCRサブシステム2170’そしてSCR工程を制御する方式を操作したり変更することが可能である。
再び図23A及び23Bを参照すれば、SCRサブシステム2170’の制御の例は、NOxクレジットを最大化する目的関数について、そしてSCRサブシステム稼動の収益性を最大化したり、損失を最小化する目的関数について記載されている。当業者は、その他の稼動シナリオのための調整係数を生成することにより、SCRサブシステムの他の制御可能なパラメータを最適化、最大化又は最小化することが可能であることが理解できる。
NOxクレジットの最大化
NOxクレジットを最大化するため、MPCC2500は、調整定数がNOxクレジットを最大化するように設定された目的関数を有する動的制御モデル2870に従って予測論理2850を実行する。SCR工程の観点から、NOxクレジットを最大化することは、NOxの回収を最大化する必要があることが分かる。
目的関数に入力される調整定数は、目的関数が、Nox排出量に対して操作された変数の変化の効果のバランスをとるようにする。
最適化の最終結果は、MPCC2500が以下のものを増加させるようになる。
・アンモニア流れの設定点などを増加させることによるNOx除去率、
これは以下に対する制約の支配を受ける:
・最大アンモニアスリップ。
このような稼動シナリオ705において、MPCC2500は、NOxクレジットを発生させるためにNOx除去率を増加させることにすべてを集中する。MPCC2500は、アンモニアスリップに対する工程制約を尊重する。しかし、このシナリオは、アンモニア又はアンモニアスリップのコスト/価値に対するNOxクレジットの価値のバランスをとるようにすることはない。このシナリオは、NOxクレジットの価値がアンモニア及びアンモニアスリップのコスト/価値を著しく超過する場合に適している。
収益性の最大化又は損失の最小化
MPCC2500における目的関数は、収益性を最大化したり損失を最小化するように設定できる。このような稼動シナリオは、資産最適化シナリオと呼ばれることもある。また、このシナリオは、電力、NOxクレジット、アンモニア、及び下流機器に対するアンモニアスリップの効果に対する正確な最新のコスト/価値情報を必要とする。
制御器モデルで変数に関わるコスト/価値係数が目的関数に入力される。次いで、MPCC2500の目的関数は、コストを最小化したり/利益を最大化するように指示される。利益がネガティブコストとして定義される場合には、コスト/利益は最小化させる目的関数に対して連続関数になる。
このようなシナリオにおいては、目的関数が、付加的NOxクレジットを発生させることによる限界価値が前記クレジットを発生させる限界コストと等しくなる時点での最小コスト稼動を判断するようになる。前記目的関数は、制約のある最適化であるため、最小化されたコスト解決策は、以下に対する制約の支配を受けることに注目する必要がある。
・最小NOx除去率(排出許容値/目標値遵守ため)、
・最小アンモニアスリップ、
・最小アンモニア使用。
この稼動シナリオは、前記価値/コスト及びNOxクレジットの価値/コストの両方において変化に敏感である。最大利益のためには、このようなコスト係数はリアルタイムでアップデートされなければならない。
例えば、コスト係数が各制御装置の実行以前にアップデートされると仮定する場合、電気消費が昼間増加することにより、発電する電力の現時点価格もまた増加する。この設備で付加的電力を前記現在価値で販売することが可能で、NOxクレジットの価値が現在時点で本質的に固定されていると仮定する場合、アンモニアスリップを最小化する相当な動機が発生するが、その理由は、これは空気予熱器をより清潔に維持することができ、より效率的な電力発電を可能にするためである。MPCC2500の目的関数中の電力に関わるコスト/価値係数は、電気の現時点価格が変わることにより変化し、前記目的関数は、稼動制約を満たすとともに、電力は少なく使用する新しい解決策を得ることができるようになる
一方、NOxクレジットの現時点価格が増加し、付加的NOxクレジットのための市場が存在し、電力のコスト/価値が比較的一定な場合には、MPCC2500の目的関数は、稼動制約に支配されるNOx除去率を増加させることにより、そのような変化に対応するようになる。
例示的2つのシナリオにおいて、MPCC2500はすべての稼動制約を観察した後、MPCC2500の目的関数は、NOxクレジットの限界価値がクレジットを発生させるのに必要な限界コストと等しくなる最適稼動地点を検出することになる。
要約
以上、本発明を1つ以上の好適な実施形態により説明したが、当業者は、これに限定されないことが理解できる。上記の発明の様々な特徴及び様相は、個別に又は組合わせられて用いることができる。また、本発明が特定環境において、そして特定目的のための実装形態、例えば選択的接触還元(SCR)の簡単な概要とともに湿式排煙脱硫(WFGD)について説明したが、当業者はその有用性がこれに限定されず、本発明は任意の環境及び実装形態で有益に活用できることが理解できる。従って、請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に属するものである。
通常の湿式排煙脱硫(WFGD)サブシステムの概略を示したブロック線図である。 図1のWFGDサブシステムのある一定の側面をより詳細に示した図である。 図1のWFGDサブシステムの他の側面をより詳細に示した図である。 SO除去効率に対するpHの関数としての石膏純度を示すグラフである。 安全域(comfort zone)内のWFGD工程実施に対するWFGD制約ボックス(constraint box)を示す図である。 本発明により最適化されたWFGD工程実施に対する図5AのWFGD制約ボックスを示す図である。 本発明によるMPC制御構造の機能的ブロック線図である。 図6の構造内で好適に使用できるMPC制御装置及び推定器(estimator)の構成要素を示す図である。 本発明による図7のMPC制御装置の演算装置及び記憶ディスクをより詳細に示す図である。 図8のMPC制御装置に導入された推定器の機能的ブロック線図である。 本発明による多段階のMPCC構造を示す図である。 本発明による多段階のMPC制御装置によりユーザーに表示されるインタフェース画面を示す図である。 本発明による計画された運転停止の再調査、変更及び/又は追加のための多段階MPCにより表示されるまた他のインタフェース画面を示す図である。 本発明による図10の多段階のMPCC構造の拡張図である。 本発明による推定器が導入されたMPCCのWFGD工程のためのDCSとのインタフェースの機能的ブロック線図である。 本発明によるMPCC制御をモニタリングするためのDCS画面を示す図である。 本発明による実験値及び/又はその他の値を入力するためのまた他のDCS画面を示す図である。 本発明によるサブシステムの全体動作がMPCCにより制御されるWFGDサブシステムを示す図である。 本発明による図15AのWFGDサブシステムを制御するMPCCを示す図である。 本発明による図15AのWFGDサブシステムの特定の側面において、図2に示したものと対応する側面を詳細に示す図である。 本発明による図15AのWFGDサブシステムの他の側面において、図3に示すものと対応する側面を詳細に示す図である。 本発明による図15AのWFGDサブシステムのまた他の側面を詳細に示す図である。 本発明による図15BのMPCCの側面を詳細に示す図である。 一般的な選択的接触還元(SCR)装置の概略を示すブロック線図である。 SCRサブシステムのための通常の工程制御計画を示す図である。 本発明によるMPC制御装置の演算装置及び記憶ディスクを詳細に示す図である。 本発明による、サブシステムの全体動作がMPCCにより制御されるSCRサブシステムを示す図である。 本発明による図23AのMPCCのまた他の側面を詳細に示す図である。

Claims (20)

  1. 汚染物質の排出を制御する工程を行う大気汚染制御(APC)システムの稼動を指示するための制御装置において、前記工程は、複数の工程パラメータ(MPP)を含み、前記MPPのうちの1つ以上は、制御可能な工程パラメータ(CTPP)であり、前記MPPのうちの1つは、前記APCシステムにより排出される汚染物質の量(AOP)であり、
    前記制御装置は、
    最適化目的を判別するための入力装置と、
    前記MPPの現在値及び前記判別された最適化目的に従って、前記1つ以上のCTPPのうちの少なくとも1つのための設定点を決め、前記少なくとも1つのCTPPのために決められた前記設定点に基づいて該CTPPのうちの1つの制御を指示する論理を有する制御演算装置と、
    を備えており、
    前記工程は、前記排出されたAOPの実際値(AV)に対する目的又は限界を示す定義されたAOP値(AOPV)を有し、
    前記APCシステムによる工程の実行は副産物を生産し、
    前記MPPのうちの1つは、前記生産された副産物の品質(QPBP)であり、
    前記工程は、前記QPBPの実際の品質に対する目的又は限界を示す定義されたQPBP値(QPBPV)を有し、
    前記判別された最適化目的は、前記排出されたAOPを最小化すること、前記排出されたAOPを前記AOPV未満のレベルに維持すること、前記QPBPを前記QPBPV以上のレベルに維持すること、を含む、制御装置。
  2. 前記制御演算装置は、前記AOPVを基にして前記少なくとも1つのCTPPのための設定点を決める追加的論理を有する、請求項1に記載の制御装置。
  3. 前記判別された最適化目的は、前記生産された副産物の品質を所望の値に制御すること、前記生産された副産物の品質を最大化すること、を含む、請求項1に記載の制御装置。
  4. 前記制御演算装置は、前記QPBPVを基にして前記少なくとも1つのCTPPの各々のための設定点を決める追加的論理を有する、請求項1に記載の制御装置。
  5. 前記制御装置は、前記CTPP各々と前記排出されたAOPとの関係を示す神経回路網工程モデル及び非神経回路網工程モデルのうちの1つをさらに備え、
    前記制御演算装置は、前記1つのモデルに基づき前記少なくとも1つのCTPPの各々のための設定点を決める追加的論理を有する、請求項1に記載の制御装置。
  6. 前記1つのモデルは、第1原理モデル、ハイブリッドモデル及び回帰モデルのうちの1つを含む、請求項5に記載の制御装置。
  7. 前記APCシステムは、SO含有湿潤排煙を受容し、石灰石スラリーを適用して受容された前記SO含有湿潤排煙からSOを除去することにより、SOの排出を制御し、脱硫された排煙を排出する湿式排煙脱硫(WFGD)システムであり、
    前記少なくとも1つのCTPPは、前記適用された石灰石スラリーのpHに相応する第1パラメータ、及び前記適用された石灰石スラリーの分布に相応する第2パラメータのうちの1つ以上を含み、
    前記AOPは、前記排出された脱硫排煙中のSOの量であり、
    前記制御演算装置は、前記第1及び前記第2パラメータのうちの1つのための設定点を、(i)該パラメータの現在値、(ii)前記排出された脱硫排煙中のSOの量、及び(iii)前記判別された最適化目的に従って決定し、前記判別された最適化目的のために前記WFGDシステムの稼動を最適化するように該パラメータのために決められた設定点に基づいて、前記1つのパラメータの制御を指示する、請求項1に記載の制御装置。
  8. 前記WFGDシステムは、酸化空気を適用して前記受容された前記SO含有湿潤排煙から除去されたSOを結晶化することにより、前記受容されたSO含有湿潤排煙からSOの除去の副産物として石膏を生産し、
    前記少なくとも1つのCTPPは、前記第1パラメータ、前記第2パラメータ、及び前記適用された酸化空気の量に相応する第3パラメータのうちの1つ以上を含み、
    前記制御演算装置は、前記第1、第2及び第3パラメータのうちの1つのための設定点を、(i)該パラメータの現在値、(ii)前記排出された脱硫排煙中のSOの量、及び(iii)前記判別された最適化目的に従って決め、また、前記判別された最適化目的のために前記WFGDシステムの稼動を最適化するように該パラメータのために決められた前記設定点に基づいて、前記1つのパラメータの制御を指示する、請求項7に記載の制御装置。
  9. 前記判別された最適化目的が、前記排出されたAOPを最小化すること、または、前記排出されたAOPを前記AOPV未満のレベルに維持すること、である場合、
    前記APCシステムは、NOx含有排煙を受容し、アンモニア及び希釈空気を適用して前記NOx含有排煙からNOxを除去することにより、NOxの排出を制御し、NOxを低減した排煙を排出させる選択性接触還元(SCR)システムであり、
    前記少なくとも1つのCTPPは、前記適用されたアンモニアの量に相応するパラメータを含み、
    前記AOPは、前記排出された排煙中のNOxの量であり、
    前記制御演算装置は、前記パラメータのための設定点を、(i)前記パラメータの現在値、(ii)前記排出された排煙中のNOxの量、及び(iii)前記判別された最適化目的に従って決定し、前記判別された最適化目的のために前記SCRシステムの稼動を最適化するように決められた前記設定点に基づいて、前記パラメータの制御を指示すること特徴とする、請求項1に記載の制御装置。
  10. 前記MPPは、前記排出された排煙中のアンモニアの量を含み、
    前記制御演算装置は、前記排出された排煙値中のアンモニアの量の現在値にさらに基づいて前記パラメータのための設定点を決める、請求項9に記載の制御装置。
  11. 汚染物質の排出を制御する大気汚染制御(APC)工程を行う方法において、前記工程は、複数の工程パラメータ(MPP)を含み、前記MPPのうちの1つ以上は、制御可能な工程パラメータ(CTPP)であり、前記MPPのうちの1つは、前記工程で排出される汚染物質の量(AOP)であり、
    前記方法は、
    最適化目的を判別する段階と、
    前記MPPの現在値及び前記判別された最適化目的に従って前記1つ以上のCTPPのうちの少なくとも1つのための設定点を決める段階と、
    前記少なくとも1つのCTPPのために決められた前記設定点に基づいて該CTPPのうちの1つ以上の制御を指示する段階と、
    を備えており、
    前記工程は、前記排出されたAOPの現在値(AV)に対する目的又は限界を示す定義されたAOP値(AOPV)を有し、
    前記工程の実行は副産物を生産し、
    前記MPPのうちの1つは、前記生産された副産物の品質(QPBP)であり、
    前記工程は、前記QPBPの実際の品質に対する目的又は限界を示す定義されたQPBP値(QPBPV)を有し、
    前記判別された最適化目的は、前記排出されたAOPを最小化すること、前記排出されたAOPをAOPV未満のレベルに維持すること、前記QPBPを前記QPBPV以上のレベルに維持すること、を含む、方法。
  12. 前記CTPP各々のための設定点は、前記AOPVにさらに基づいて決められる、請求項11記載の方法。
  13. 前記判別された最適化目的は、前記生産された副産物の品質を所望の値に制御すること、前記生産された副産物の品質を最大化すること、を含む、請求項11に記載の方法。
  14. 前記制御演算装置は、前記QPBPVに基づいて前記CTPP各々のための前記設定点を決める追加的論理を有する、請求項11に記載の方法。
  15. 前記少なくとも1つCTPPのための前記設定点は、前記CTPP各々と前記排出されたAOPとの関係を示す神経回路網工程モデル及び非神経回路網工程モデルのうちの1つに基づいて決められる、請求項11に記載の方法。
  16. 前記1つのモデルは、第1原理モデル、ハイブリッドモデル及び回帰モデルのうちの1つを含む、請求項15項に記載の方法。
  17. 前記工程は、石灰石スラリーを適用してSO含有湿潤排煙からSOを除去することにより、SOの排出を制御し、脱硫された排煙を排出する湿式排煙脱硫(WFGD)工程であり、
    前記少なくとも1つのCTPPは、前記適用された石灰石スラリーのpHに相応する第1パラメータ、及び前記適用された石灰石スラリーの分布に相応する第2パラメータのうちの1つ以上を含み、
    前記AOPは、前記排出された脱硫排煙中のSOの量であり、
    前記第1及び第2パラメータのうちの1つのための設定点は、(i)該パラメータの現在値及び前記排出された脱硫排煙中のSOの量、及び(ii)前記判別された最適化目的に従って決定され、
    前記1つのパラメータの制御は、前記判別された最適化目的のために前記WFGD工程を最適化するように該パラメータのために決められた設定点に基づいて指示される、請求項11に記載の方法。
  18. 前記WFGD工程は、酸化空気を適用して前記SO含有湿潤排煙から除去されたSOを結晶化することにより、前記SO含有湿潤排煙からSOの除去の副産物として石膏を生産し、
    前記少なくとも1つのCTPPは、前記適用された石灰石スラリーのpHに相応する第1パラメータ、前記適用された石灰石スラリーの分布に相応する第2パラメータ、及び適用された酸化空気の量に相応する第3パラメータのうちの1つ以上を含み、
    前記第1、第2及び第3パラメータのうちの1つのための設定点は、(i)該パラメータの現在値及び前記排出された脱硫排煙中のSOの量、及び(ii)前記判別された最適化目的に従って決定され、
    前記1つのパラメータの制御は、前記判別された最適化目的のために前記WFGD工程を最適化するように該パラメータのために決められた前記設定点に基づいて指示される、請求項17に記載の方法。
  19. 前記判別された最適化目的が、前記排出されたAOPを最小化すること、または、前記排出されたAOPを前記AOPV未満のレベルに維持すること、である場合、
    前記工程は、アンモニア及び希釈空気を適用してNOx含有排煙からNOxを除去することにより、NOxの排出を制御し、NOxを低減した排煙を排出させる選択的接触還元(SCR)工程であり、
    前記少なくとも1つのCTPPは、前記適用されたアンモニアの量に相応するパラメータを含み、
    前記AOPは、前記排出された排煙中のNOxの量であり、
    前記パラメータのための設定点は、(i)前記パラメータの現在値及び前記排出された排煙中のNOxの量、及び(ii)前記判別された最適化目的に従って決定され、
    前記パラメータの制御は、前記判別された最適化目的のために前記SCR工程を最適化するように決められた前記設定点に基づいて指示される、請求項11に記載の方法。
  20. 前記MPPは、前記排出された排煙中のアンモニアの量を含み、
    前記パラメータのための設定点は、前記排出された排煙値中のアンモニアの量の現在値にさらに基づいて決められる、請求項19に記載の方法。
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