JP5435805B2 - 多重ロータモータ - Google Patents

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Description

本発明は、多重ロータモータに関し、特に、ロータを支持する軸受を潤滑油によって潤滑するとともに、該軸受を潤滑した潤滑油を外部に排出する潤滑構造を備えた多重ロータモータに関する。
従来、電機子を有して回転磁界を形成するステータと、永久磁石を有するインナロータと、軟磁性体製の誘導磁極を有しインナロータ及びステータ間に配置されるアウタロータと、を備え、インナロータ及びアウタロータから別個に出力を取り出し可能とした多重ロータモータのロータ構造が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
図12は特許文献1に記載の多重ロータモータの縦断面図であり、多重ロータモータ100は、ケーシング101に固定されるステータ102と、インナロータ103と、ステータ102及びインナロータ103の間にそれぞれと所定のエアギャップを介して配設されるアウタロータ104と、を備える。ステータ102は、電磁鋼板が積層されたステータコア105にコイル106が巻回されてなり、ケーシング101に固定されている。
アウタロータ104は、弱磁性体で形成されたロータボディ110と、ロータボディ110に固定されるロータカバー111とで中空状に形成される支持体112と、ロータボディ110の外周面にスペーサ113を介して固定され、積層鋼板からなる左右一対の誘導磁極114とを備える。ロータボディ110、及びロータカバー111から軸方向に突出する第1、第2アウタロータシャフト115、117が、転がり軸受116、118でケーシング101に回転自在に支持されている。また、一方の第2アウタロータシャフト115は、ケーシング101の外部に延出する。
インナロータ103は、円筒状のロータボディ120と、ロータボディ120が固定されるインナロータシャフト121と、積層鋼板で構成されスペーサ123を狭持してロータボディ120の外周に嵌合する円環状のロータコア122と、を備える。インナロータシャフト121は、一端が第1アウタロータシャフト115に転がり軸受124で回転自在に支持され、他端がロータカバー111に転がり軸受125で回転自在に支持されて、第2アウタロータシャフト117およびケーシング101を貫通し、ケーシング101の外部に延出する。
インナロータシャフト121には、軸方向に貫通する軸方向穴126、及び軸方向穴126とインナロータシャフト121の外周面とを連通する径方向孔127からなる給油路128が設けられている。
特開2008−193823号公報
ところで、多重ロータモータのインナロータ又はアウタロータは、軸受部によって回転自在に支持されている。しかし、軸受部を潤滑する潤滑油が、インナロータとアウタロータとの間のエアギャップに浸入すると、浸入した潤滑油の粘性による回転抵抗が増大して動力損失が生じ、例えば、多重ロータモータが電気自動車やハイブリッド自動車などで使用される場合、燃費が悪化する虞がある。特許文献1に記載のロータ構造では、インナーロータシャフト121に形成された給油路128から吐出した潤滑油が、ロータボディ110及びロータカバー111に形成された貫通孔110a,111aから排出されるように形成されているが、インナロータ103とアウタロータ104との間のエアギャップに潤滑油が浸入するのをさらに抑制することが望まれており、モータ効率向上のためさらなる改善の余地があった。
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、インナロータとアウタロータとの間のエアギャップへの潤滑油の浸入を抑制し、動力損失が少なくモータ効率の高い多重ロータモータを提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、インナロータコア(例えば、後述の実施形態におけるインナロータコア22)、及び外周面(例えば、後述の実施形態における外周面28)に該インナロータコアが支持される支持部材(例えば、後述の実施形態における支持部材21)を有するインナロータ(例えば、後述の実施形態におけるインナロータ20)と、
前記インナロータコアの周囲に配置されるアウタロータコア(例えば、後述の実施形態におけるアウタロータコア43)、及び前記支持部材の少なくとも軸方向一方に設けられ、該アウタロータコアが支持される支持壁(例えば、後述の実施形態における支持壁41、42)を有するアウタロータ(例えば、後述の実施形態におけるアウタロータ40)と、
前記アウタロータと径方向隙間を介して対向配置されるステータ(例えば、後述の実施形態におけるステータ12)と、
前記インナロータ又は前記アウタロータを回転自在に支持する軸受部(例えば、後述の実施形態における転がり軸受19A、19B)と、
を有する多重ロータモータ(例えば、後述の実施形態における多重ロータモータ10)であって、
前記支持壁には、それぞれ軸方向に貫通する複数の貫通孔(例えば、後述の実施形態における貫通孔51、52)が周方向に離間して形成されており、
前記支持壁の軸方向内側には、前記隣接する貫通孔間に、径方向内向きの溝部(例えば、後述の実施形態における溝部56)が周方向に亘って形成されることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1の構成に加えて、前記溝部を構成する前記支持壁の軸方向外向き壁面(例えば、後述の実施形態における軸方向外向き壁面58)は、前記貫通孔の外径(例えば、後述の実施形態における外径D)より内径側に形成されることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2の構成に加えて、前記溝部より径方向外側の前記インナロータコアと対向する前記支持壁の軸方向内側面(例えば、後述の実施形態における軸方向内側面57)は、軸方向において前記インナロータとラップすることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1の構成に加えて、前記支持部材は、軸方向外側に向かって径方向外側に傾斜する傾斜面(例えば、後述の実施形態における傾斜面26b)を備えることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項4の構成に加えて、前記傾斜面は、前記溝部と軸方向においてラップすることを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項4又は請求項5の構成に加えて、前記支持部材は、前記傾斜面から径方向外方に延設される延出面(例えば、後述の実施形態における軸方向外端面30)を備えることを特徴とする。
請求項7に係る発明は、請求項1から請求項6のいずれかの構成に加えて、前記支持部材は、その軸方向外端面(例えば、後述の実施形態における軸方向外端面30)から径方向外方に突出し、前記溝部と軸方向においてラップする油切り部(例えば、後述の実施形態における油切り部61)を備えることを特徴とする。
請求項8に係る発明は、請求項1から請求項7のいずれかの構成に加えて、前記支持壁には、前記溝部と前記支持壁の外周面(例えば、後述の実施形態における外周面41a、42a)または外側面(例えば、後述の実施形態における外側面41b、42b)とを連通する排油孔(例えば、後述の実施形態における排油孔63)が形成されることを特徴とする。
請求項9に係る発明は、請求項1から請求項8のいずれかの構成に加えて、前記支持壁は、その外径側部分から軸方向内側に筒状に延出し、前記アウタロータコアが当接する軸方向当接面(例えば、後述の実施形態における軸方向当接面41c、42c)を有する筒状部分(例えば、後述の実施形態における筒状部分70,71)を有し、前記筒状部分には、前記アウタロータの内周側と外周側とを連通する排油路(例えば、後述の実施形態における排出溝65又は排出孔72)が形成されることを特徴とする。
請求項10に係る発明は、請求項9の構成に加えて、前記排油路は、前記筒状部分の軸方向当接面に形成される排出溝(例えば、後述の実施形態における排出溝65)であることを特徴とする。
請求項11に係る発明は、請求項9の構成に加えて、前記排油路は、前記インナロータコアと対向する前記支持壁の軸方向内側面と前記筒状部分との間の隅部と、前記支持壁の外周面とを連通する排出孔であることを特徴とする。
請求項12に係る発明は、請求項11の構成に加えて、前記筒状部分の内周面は、前記軸方向当接面から前記隅部に向かって径方向外側に傾斜することを特徴とする。
請求項1の発明によれば、軸受部から支持部材と支持壁との間に流入する潤滑油は、支持壁の径方向内向きの溝部によって回収され、貫通孔から支持壁の外方に効率よく排出することができ、インナロータとアウタロータとの間のエアギャップへの潤滑油の浸入が抑制される。これにより、該エアギャップに浸入した潤滑油の粘性による動力損失が低減され、多重ロータモータの効率が向上する。
請求項2の発明によれば、溝部によって回収される潤滑油が、確実に貫通孔から外部に排出されて、エアギャップへの浸入が抑制される。
請求項3の発明によれば、インナロータの支持部材に沿って径方向外方に誘導され、支持部材から遠心力によって径方向に飛散してアウタロータの支持壁に付着した潤滑油を、溝部から外部へ確実に排出することができ、エアギャップへの浸入を抑制することができる。
請求項4の発明によれば、支持部材に付着した潤滑油を、傾斜面で軸方向外側且つ径方向外側に誘導して、効率よく外部へ排油することができる。
請求項5の発明によれば、遠心力によって傾斜面から径方向に飛散する潤滑油を、傾斜面と軸方向でラップする溝部で確実に捕捉することができる。
請求項6の発明によれば、傾斜面に沿って飛散した潤滑油が、支持壁の隣接する貫通孔間の軸方向内側面に当たって軸方向内側に跳ね返った場合でも、該潤滑油を支持部材の延出面に当接させることができ、エアギャップへの潤滑油の浸入を抑制することができる。
請求項7の発明によれば、傾斜面に沿って流れる潤滑油は、遠心力によって油切り部で径方向外方に飛ばされて振り切られ、油切り部とラップする溝部で確実に捕捉される。
請求項8の発明によれば、溝部で回収された潤滑油が、貫通孔から排油されずに溝部に溜まっても、遠心力によって排油孔から確実に支持壁の外部に排油することができる。特に、排油孔が、溝部と支持壁の外周面とを連通して設けられる場合は、排油孔から排出される潤滑油によって、ステータを冷却することが可能となる。
請求項9〜11の発明によれば、潤滑油が、溝部で回収しきれずに支持壁の内側に流入しても、遠心力により支持壁の内壁面に沿って径方向外方に誘導され、排油路から確実に排油することができ、インナロータとアウタロータ間のエアキャップへの浸入が抑制される。
請求項12の発明によれば、溝部で回収しきれずに支持壁の内側に流入した潤滑油は、遠心力により隅部に誘導され、該隅部と前記支持壁の外周面とを連通する排出孔から確実に排油することができ、インナロータとアウタロータ間のエアキャップへの潤滑油の浸入が抑制される。
本発明の第1実施形態に係る多重ロータモータの外観斜視図である。 図1に示す多重ロータモータの縦断面図である。 図2の要部拡大図である。 図3の要部拡大図である。 図1に示すアウタロータの支持壁の斜視図である。 本発明の第2実施形態に係る多重ロータモータの縦断面図である。 本発明の第3実施形態に係る多重ロータモータの縦断面図である。 第3実施形態の変形例に係る多重ロータモータの要部拡大断面図である。 本発明の変形例に係る多重ロータモータの要部拡大図である。 本発明の他の変形例に係る多重ロータモータの要部拡大図である。 本発明の更に他の変形例に係る多重ロータモータの要部拡大図である。 従来の多重ロータモータの縦断面図である。
以下、本発明の各実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
(第1実施形態)
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態に係る多重ロータモータ10は、モータハウジング11に内嵌固定されるステータ12と、インナロータ軸14と一体回転可能に連結されるインナロータ20と、アウタロータ軸13と一体回転可能に連結されるアウタロータ40と、を備えており、これらステータ12、インナロータ20、及びアウタロータ40は、モータハウジング11に収納される。
ステータ12は、円環状のステータコア15のスロット15aに複数のコイル16が巻回されて構成されており、ステータコア15が、モータハウジング11にボルト17よって固定されている。
インナロータ20は、インナロータコア22と、外周面にインナロータコア22が支持される支持部材21と、を備える。支持部材21は、小径円筒状のインナロータ軸14と、大径円筒状のロータコア支持部25と、インナロータ軸14とロータコア支持部25とを連結するように径方向に延びる円盤状の連結部24と、を備えている。インナロータ軸14は、軸方向一方側(図2において右方向)に延設されている。また、インナロータ軸14の軸方向中間部には、径方向に貫通する径方向穴14aが形成されている。
インナロータコア22は、電磁鋼板を積層することで構成され、複数の不図示の永久磁石が埋め込まれている。インナロータコア22は、ロータコア支持部25の外周面28に、リング29と共に圧入・固定されて、ロータコア支持部25の軸方向端部に形成されたフランジ27とリング29との間で軸方向に位置決めされる。
支持部材21は、インナロータ軸14の外周面と、後述するアウタロータ40の支持壁41の小径環状部45との間に配置された転がり軸受19A、及び、インナロータ軸14の内周面と、後述するアウタロータ40の支持壁42の小径環状部46から軸方向に延設される円環部46aの外周面との間に配置された転がり軸受19Bによって支持される。これにより、インナロータ20は、一対の転がり軸受19A、19Bによって、アウタロータ40に対して回転自在に支持される。
また、図3に示すように、ロータコア支持部25の内周面は、連結部24から軸方向両側に延び、軸方向外側に向かって径方向外側に傾斜する傾斜面26a、26bを有する。各傾斜面26aは、軸方向外側に向かって径方向外側に僅かに傾斜しており、各傾斜面26bは、傾斜面26aと比較して軸方向外側に向かって径方向外側に大きく傾斜して、傾斜面26aの軸方向外側端から軸方向外側に形成される。但し、傾斜面26a,26bの形状は任意であり、例えば、連結部24から軸方向両側にそれぞれ延びる単一の傾斜面であってもよい。また、フランジ27の軸方向外端面30は、傾斜面26bの軸方向外側端から径方向外方に延びて延出面を構成する。なお、リング29の軸方向外端面29aも、傾斜面26bから径方向外方に延設される延出面を構成する。
また、図3〜図5に示すように、アウタロータ40は、インナロータコア22の周囲に配置されるアウタロータコア43と、支持部材21の軸方向両側に設けられ、アウタロータコア43が支持される円盤状の一対の支持壁41、42と、を備える。アウタロータコア43は、軟磁性体の誘導磁極からなり、一対の支持壁41、42間において、ピン44aを用いて位置合わせされ、複数のスタッドボルト44b及びナット44cで一体に固定される。これにより、アウタロータコア43は、ステータ12(ステータコア15)の内周面及びインナロータ20(インナロータコア22)の外周面との間に、それぞれ所定のエアギャップ(径方向隙間)を介して配設される。
一対の支持壁41、42は、それぞれ小径環状部45、46、大径環状部47、48、及びこれら環状部45,47,46,48間を連結して周方向に所定の間隔で形成される複数のリブ部49、50を備え、略円盤状に形成される。複数のリブ部49、50同士間には、それぞれの支持壁41、42の内外側面を軸方向に貫通する複数の貫通孔51、52が、周方向に離間して形成されている。また、一対の支持壁41,42は、これら小径環状部45、46、大径環状部47、48、及び複数のリブ部49、50からなる円盤状部の外周側部分、具体的に、大径環状部47,48の外周側部分から軸方向内側に筒状に延出し、アウタロータコア43が当接する軸方向当接面41c,42cを有する筒状部分70,71をそれぞれ有する。
一対の支持壁41、42は、小径環状部45、46から軸方向に延びる中空の円環部53、54の外周面とモータハウジング11の内周面との間に配置される各転がり軸受18A、18Bによって、モータハウジング11に対して回転自在に支持されている。これにより、アウタロータ40は、一対の転がり軸受18A、18Bによってモータハウジング11に対して回転自在に支持されている。
中空の円環部53を含む支持壁41の内側には、インナロータ軸15に連結される支持部材21のインナロータ軸14が配置されている。また、支持壁42の小径環状部46は、アウタロータ軸13に外嵌固定されており、アウタロータ40はアウタロータ軸13と一体で回転する。
アウタロータ軸13とインナロータ軸14とは、互いに同芯に配置されている。アウタロータ軸13には、軸芯を通る軸方向穴13a、及び径方向に貫通して、軸方向穴13aとアウタロータ軸13の外周面とを連通する径方向孔13bが設けられている。
ここで、一方の支持壁42では、小径環状部46と大径環状部48とを連結するリブ部50の軸方向内側面50aは、径方向内側部分では、小径環状部46の軸方向内側面46aから連続して径方向外側に向かって軸方向外側に傾斜して形成されており、径方向外側部分では、径方向に沿って形成されている。また、他方の支持壁41においては、リブ部49の軸方向内側面49aは径方向に沿って形成されており、小径環状部45の軸方向内側面45aが径方向外側に向かって軸方向外側に傾斜する傾斜面を有している。
また、図4にも拡大して示すように、支持壁42の軸方向内側、具体的に、大径環状部48におけるリブ部50との連結部分から軸方向内側に延出した延出部55の内周面には、径方向内向きの溝部56が、隣接する貫通孔52間に、周方向に亘って形成されている。この溝部56は、リブ部49,50の軸方向内側面49a、50a、延出部55の内周面から径方向内側に延出するつば部分55aによって構成される軸方向外向き壁面58、及びこれら軸方向内側面49a、50aと軸方向外向き壁面58との間の一様内径の内周面とによって形成されている。なお、この溝部56を構成する一様内径の内周面と軸方向外向き壁面58は、各リブ部50が位置する周方向部分にのみ形成されてもよいが、本実施形態では、つば部分55aを環状に形成することで全周に亘って形成されている。溝部56を構成する軸方向外向き壁面58は、貫通孔52の外径Dより内径側に形成されており、本実施形態では、溝部56の最深部(一様内径の内周面)が貫通孔52の外径Dと一様径に設定されている。
溝部56より径方向外側のインナロータコア22と対向する支持壁42の軸方向内側面、即ち、大径環状部48の軸方向内側面57は、軸方向においてインナロータ20と距離X1だけラップしている。また、インナロータ20の延出面であるロータコア支持部25の軸方向端面30及び傾斜面26bの一部は、溝部56と軸方向において距離X2だけラップしている。
なお、他方の支持壁41においても、支持壁42と同様に、大径環状部47におけるリブ部49との連結部分から軸方向内側に延出した延出部55の内周面で、隣接する貫通孔52間に、径方向内向きの溝部56が周方向に亘って形成されている。この場合も、大径環状部48の軸方向内側面57は、軸方向においてインナロータ20やリング29とラップしており、特に、ロータコア支持部25に設けられた傾斜面26bの一部が、溝部56と軸方向においてラップするように構成されている。
このように構成された多重ロータモータ10では、図3に示すように、不図示の潤滑油供給装置からアウタロータ軸13の軸方向穴13a、径方向孔13b、及びインナロータ軸14の径方向孔14aに供給された潤滑油が、転がり軸受19A、19Bを潤滑する。その後、遠心力によって支持部材21と各支持壁41,42との間で矢印に示すように径方向外方に流れ、一対の支持壁41、42の複数の貫通孔51、52から排出される。
このとき、支持壁41、42のリブ部49、50の軸方向内側面49a、50aに付着する潤滑油は、遠心力によって軸方向内側面49a、50aに沿って径方向外方に誘導された後、溝部56で回収され、溝部56内を周方向に流れて貫通孔51、52から外部に排出される。
また、支持部材21に付着する潤滑油は、連結部24、及びロータコア支持部25の傾斜面26a、26bに沿って誘導され、ロータコア支持部25の軸方向外端面30から遠心力によって径方向外方に飛散する。軸方向外端面30は、溝部56と軸方向において距離X2だけラップしているので、飛散する潤滑油は、確実に溝部56で捕捉されて貫通孔51、52から外部に排出される。また、支持部材21の傾斜面26bに沿って飛散した潤滑油が、支持壁42のリブ部50の軸方向内側面50aに当たって軸方向内側に跳ね返った場合でも、潤滑油を支持部材21の軸方向外端面30に当てることができ、同様に溝部56に捕捉されるので、エアギャップへの潤滑油の浸入を抑制することができる。なお、ロータコア支持部25の支持壁41側には、フランジ27が設けられていないが、リング29の軸方向端面29aがフランジ27の軸方向外端面30と同様に作用して、支持壁41のリブ部49の軸方向内側面49aに当たって軸方向内側に跳ね返った潤滑油と当たり、径方向外側に位置する溝部56に捕捉させることができる。
更に、フランジ27の軸方向外端面30は、支持壁42の軸方向内側面57より距離X1だけ軸方向外方に位置しているので、軸方向外端面30から径方向に飛散した潤滑油が軸方向内側面57とインナロータコア22との隙間に浸入することが抑制される。これにより、インナロータ20とアウタロータ40間のエアギャップへの潤滑油の浸入が抑制され、インナロータ20とアウタロータ40との間のエアギャップに浸入した潤滑油の粘性による動力損失を低減させて、多重ロータモータ10の効率が向上する。
以上説明したように、本実施形態に係る多重ロータモータ10によれば、インナロータコア22が支持部材21で支持されるインナロータ20、アウタロータコア43が支持部材21の軸方向側方に配置される支持壁41、42で支持されるアウタロータ40、及びステータ12を有する多重ロータモータ10において、支持壁41、42には、それぞれ軸方向に貫通する複数の貫通孔51、52が周方向に離間して形成されており、支持壁41、42の軸方向内側には、隣接する貫通孔51、52同士の間に、径方向内向きの溝部56が周方向に亘って形成される。これにより、転がり軸受19A、19Bから支持部材21と支持壁41、42との間に流入する潤滑油は、支持壁41、42の径方向内向きの溝部56によって回収され、貫通孔51、52から支持壁41、42の外方に効率よく排油することができ、インナロータ20とアウタロータ40間のエアギャップへの潤滑油の浸入が抑制される。従って、該エアギャップに浸入した潤滑油の粘度による動力損失が低減して、多重ロータモータ10の効率が向上する。
また、本実施形態に係る多重ロータモータ10によれば、溝部56を構成する支持壁41、42の軸方向外向き壁面58は、貫通孔51、52の外径Dより内径側に形成されるので、溝部56によって回収される潤滑油が、確実に貫通孔52から外部に排油されて、エアギャップへの浸入が抑制される。
更に、本実施形態に係る多重ロータモータ10によれば、溝部56より径方向外側のインナロータコア22と対向する支持壁41、42の軸方向内側面57は、軸方向においてインナロータ20とラップするので、インナロータ20の支持部材21に沿って径方向外方に誘導され、遠心力によって飛散する潤滑油を、インナロータ20とラップする溝部56によって確実に捕捉することができ、エアギャップへの浸入を抑制することができる。
また、本実施形態に係る多重ロータモータ10によれば、支持部材21は、軸方向外側に向かって径方向外側に傾斜する傾斜面26bを備えるので、支持部材21に付着した潤滑油を、傾斜面26bで軸方向外側に誘導して溝部56に導き、効率よく排油することができる。
更に、本実施形態に係る多重ロータモータ10によれば、傾斜面26bは、溝部56と軸方向においてラップするので、遠心力によって傾斜面26bから飛散する潤滑油を、確実に溝部56で捕捉することができる。
また、本実施形態に係る多重ロータモータ10によれば、支持部材21は、傾斜面26bから径方向外方に延設される軸方向外端面30を備えるので、支持部材21の傾斜面26bに沿って飛散した潤滑油が、支持壁42のリブ部50の軸方向内側面50aに当たって軸方向内側に跳ね返った場合でも、潤滑油を支持部材21の軸方向外端面30に当てることができ、溝部56に捕捉させて、エアギャップへの潤滑油の浸入を抑制することができる。
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係る多重ロータモータを示す断面図である。なお、第1実施形態と同一又は同等部分については、同一又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
この実施形態では、支持部材21は、傾斜面26bの軸方向外端面30から径方向外方に突出するフランジ27の径方向外方に、油切り部61を備えている。油切り部61は、フランジ27の軸方向外端面30と外周面との間の角部62が、鋭角に形成され、溝部56と軸方向においてラップしている。これにより、フランジ27に付着した潤滑油を油切り部61の角部62から溝部56で効率よく捕捉することができ、潤滑油がフランジ27の外周面の軸方向内側へ流れ込もうとするのを防止することができる。
また、支持壁41、42には、溝部56と支持壁41、42の外周面41a、42aとを連通させる排油孔63が円周方向に亘って複数形成されている。これにより、貫通孔51、52から外部に排出されずに溝部56に残る潤滑油は、遠心力によって排油孔63からアウタロータ40の径方向外方に排出することができ、また、排出された潤滑油は、ステータ12のコイル16を冷却することができる。なお、排油孔63は、図6の一点鎖線で示すように、溝部56と支持壁41、42の外側面41b、42bとを連通するように形成されてもよい。また、排油孔63は、リブ部49,50の周方向位相と対応する溝部56の位置に加えて、貫通孔51,52の周方向位相と対応する位置にも形成されてもよい。
その他の構成及び作用は、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
(第3実施形態)
図7は、本発明の第3実施形態に係る多重ロータモータを示す断面図である。なお、第1実施形態と同一又は同等部分については、同一又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
この実施形態では、支持壁41、42は、筒状部分70,71のアウタロータコア43が当接する軸方向当接面41c,42cに、アウタロータ40の内周側と外周側とを連通する排油路としての排出溝65が形成されている。これにより、溝部56で回収しきれずに、或いは、溝部56から外部に排出できず、支持壁41、42の大径環状部48の軸方向内側面57とインナロータコア22との隙間に浸入する潤滑油を、遠心力によって排出溝65からアウタロータ40の径方向外方に排出し、インナロータ20とアウタロータ40間のエアギャップへの潤滑油の浸入を抑制することができる。
その他の構成及び作用は、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
なお、支持壁41、42の大径環状部48の軸方向内側面57とインナロータコア22との隙間に浸入した潤滑油をアウタロータ40の径方向外方に排出すべく、アウタロータ40の内周側と外周側とを連通する排油路は、上記排出溝65に限定されるものでない。例えば、図8に示すように、排油路は、インナロータコア22と対向する支持壁42の軸方向内側面57と筒状部分71との間の隅部73と、支持壁42の外周面とを連通する排出孔72によって構成されてもよい。
また、図8においては、筒状部分71の内周面71aが、軸方向当接面42cから隅部73に向かって径方向外側に傾斜するように構成されている。これにより、支持壁41、42の大径環状部48の軸方向内側面57とインナロータコア22との隙間に浸入して、筒状部分71の内周面71aに付着した潤滑油は、遠心力により隅部73に誘導され、該隅部73と支持壁42の外周面とを連通する排出孔72から確実に排油することができ、インナロータとアウタロータ間のエアキャップへの潤滑油の浸入がより確実に抑制される。なお、図8は、支持壁42側のみを示すが、支持壁41側にも排出孔72や、筒状部分70の内周面が傾斜して形成されてもよい。
また、支持壁41,42の筒状部分70,71に、アウタロータ40の内周側と外周側とを連通する排油路が形成される構成は、径方向内向きの溝部56を有しない場合においても、支持壁41、42の大径環状部48の軸方向内側面57とインナロータコア22との隙間に浸入した潤滑油をアウタロータ40の径方向外方に排出して、インナロータ20とアウタロータ40間のエアキャップへの潤滑油の浸入を抑制することができる。
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。また、上記実施形態は、実施可能な範囲において、それぞれの特徴を組み合わせることができる。
本発明の径方向内向きの溝部56は、支持壁41,42の軸方向内側で、隣接する貫通孔51,52間に、周方向に亘って形成され、潤滑油を捕捉できるものであれば、任意の形状に設計される。即ち、図3に示す溝部56の形状の他、例えば、図9に示すように、溝部56の軸方向外向き壁面58が軸方向内側面57まで延びるように構成されてもよい。また、溝部56は、一様内径の内周面を有さず、図10に示すように、軸方向外向き壁面58を湾曲して構成するものであってもよいし、図11に示すように、軸方向外向き壁面58をリブ部49,59の軸方向内側面49a,50aと、大径環状部47,48の軸方向内側面57との間で直線状に構成してもよい。なお、図11に示すように、貫通孔51,52の内周面は、直線状の軸方向外向き壁面58に沿って傾斜して形成されてもよい。
10 多重ロータモータ
12 ステータ
19 転がり軸受(軸受部)
20 インナロータ
21 支持部材
22 インナロータコア
26a,26b 傾斜面
27 フランジ(延出部)
28 外周面
30 軸方向外端面(延出面)
40 アウタロータ
41、42 支持壁
41a、42a 外周面
41b、42b 外側面
41c、42c 軸方向当接面
43 アウタロータコア
51、52 貫通孔
56 溝部
57 支持壁の軸方向内側面
58 溝部の軸方向外向き壁面
61 油切り部
63 排油孔
65 排油溝(排油路)
D 貫通孔の外径

Claims (12)

  1. インナロータコア、及び外周面に該インナロータコアが支持される支持部材を有するインナロータと、
    前記インナロータコアの周囲に配置されるアウタロータコア、及び前記支持部材の少なくとも軸方向一方に設けられ、該アウタロータコアが支持される支持壁を有するアウタロータと、
    前記アウタロータと径方向隙間を介して対向配置されるステータと、
    前記インナロータ又は前記アウタロータを回転自在に支持する軸受部と、
    を有する多重ロータモータであって、
    前記支持壁には、それぞれ軸方向に貫通する複数の貫通孔が周方向に離間して形成されており、
    前記支持壁の軸方向内側には、隣接する前記貫通孔間に、径方向内向きの溝部が周方向に亘って形成されることを特徴とする多重ロータモータ。
  2. 前記溝部を構成する前記支持壁の軸方向外向き壁面は、前記貫通孔の外径より内径側に形成されることを特徴とする請求項1に記載の多重ロータモータ。
  3. 前記溝部より径方向外側の前記インナロータコアと対向する前記支持壁の軸方向内側面は、軸方向において前記インナロータとラップすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多重ロータモータ。
  4. 前記支持部材は、軸方向外側に向かって径方向外側に傾斜する傾斜面を備えることを特徴とする請求項1に記載の多重ロータモータ。
  5. 前記傾斜面は、前記溝部と軸方向においてラップすることを特徴とする請求項4に記載の多重ロータモータ。
  6. 前記支持部材は、前記傾斜面から径方向外方に延設される延出面を備えることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の多重ロータモータ。
  7. 前記支持部材は、その軸方向外端面から径方向外方に突出し、前記溝部と軸方向においてラップする油切り部を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の多重ロータモータ。
  8. 前記支持壁には、前記溝部と前記支持壁の外周面または外側面とを連通する排油孔が形成されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の多重ロータモータ。
  9. 前記支持壁は、その外径側部分から軸方向内側に筒状に延出し、前記アウタロータコアが当接する軸方向当接面を有する筒状部分を有し、前記筒状部分には、前記アウタロータの内周側と外周側とを連通する排油路が形成されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の多重ロータモータ。
  10. 前記排油路は、前記筒状部分の軸方向当接面に形成される排出溝であることを特徴とする請求項9に記載の多重ロータモータ。
  11. 前記排油路は、前記インナロータコアと対向する前記支持壁の軸方向内側面と前記筒状部分との間の隅部と、前記支持壁の外周面とを連通する排出孔であることを特徴とする請求項9に記載の多重ロータモータ。
  12. 前記筒状部分の内周面は、前記軸方向当接面から前記隅部に向かって径方向外側に傾斜することを特徴とする請求項11に記載の多重ロータモータ。
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