JP5434691B2 - 生体成分分離膜および生体成分分離膜の製造方法 - Google Patents
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Description
(ポリスルホンフィルム1の作製)
ポリスルホン(テイジンアモコ社製ユーデル(登録商標)P−3500)10重量部をN,N‘−ジメチルアセトアミド80重量部に加え、室温にて溶解し、製膜原液を得た。ホットプレートを用いて、表面温度が100度になるように加熱したガラス板上に、前記製膜原液を厚さ203μmになるようにキャストした。表面の温度は、接触式温度計により測定した。キャスト後、5分間ホットプレート上で放置し、溶媒を蒸発させた後、ガラス板ごと、水浴へ浸漬しポリスルホンフィルム1を得た。ここで、水浴に浸漬させるのは、ポリスルホンフィルムをガラス板からはがしやすくさせるためである。
(中空糸膜モジュール1の作製)
ポリスルホン(テイジンアモコ社製ユーデル(登録商標)P−3500)18重量部およびポリビニルピロリドン(BASF社製K30)9重量部をN,N‘−ジメチルアセトアミド72重量部および水1重量部の混合溶媒に加え、90℃で14時間加熱して溶解し、製膜原液を得た。この製膜原液を外径0.3mm、内径0.2mmのオリフィス型二重円筒型口金の外側の管より吐出した。芯液としてN,N‘−ジメチルアセトアミド58重量部および水42重量部からなる溶液を内側の管より吐出した。吐出された製膜原液は、乾式長350mmを通過した後、水100%の凝固浴に導かれ、中空糸が得られた。
(中空糸膜モジュール2の作成) iso(アイソタクティック)-ポリメチルメタクリレート5重量部およびsyn(シンジオタクティック)-ポリメチルメタクリレート20重量部をジメチルスルホキシド75重量部に加え、加熱溶解し、製膜原液を得た。この製膜原液をオリフィス型二重円筒型口金の外側の管より吐出し、空気中を200mm通過した後、水100%の凝固浴中に導き中空糸を得た。この際、内部注入気体として乾燥窒素を内側の管より吐出した。得られた中空糸の内径は0.2mm、膜厚は0.03mmであった。中空糸膜モジュール1と同様にして、得られた中空糸を10000本用いて、有効膜面積1.6m2の中空糸膜モジュール2を作成した。
2.測定方法
(1)可溶性親水性高分子量の測定
測定サンプルを乾燥して乾燥重量を測定した後、基材と親水性高分子の両方を溶解できる溶媒に溶解する。この溶液に、親水性高分子は溶解するが、基材は溶解しない溶媒を添加する。この操作により、基材および基材に固定化された親水性高分子は沈殿する。一方、可溶性親水性高分子は、溶解したままである。この上澄み液に含まれる親水性高分子の量を、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)によって定量することにより、測定サンプルの単位重量あたりに含まれる可溶性親水性高分子の重量が求められる。一方、測定サンプルを元素分析することにより、測定サンプルの単位重量あたりに含まれる全親水性高分子の重量が求められる。測定サンプルの単位重量あたりの可溶性親水性高分子の重量を測定サンプルの単位重量あたりの全親水性高分子の重量で割った値が、可溶性親水性高分子量である。
装置:Waters、GPC−244
カラム:TSKgelGMPWXL2本
溶媒:水系、0.1M塩化アンモニウム、0.1Nアンモニア、pH9.5
流速:1.0ml/min
温度:23℃
ろ液中に含まれるポリビニルピロリドンの量から測定サンプルの単位重量当たりに含まれる可溶性ポリビニルピロリドンの重量が求められた。それを元素分析から求めた測定サンプルの単位重量当たりに含まれる全ポリビニルピロリドンの重量で割った値が可溶性ポリビニルピロリドン量である。
(2)親水性高分子の溶出性試験
測定サンプルを浸漬している親水性高分子水溶液を取り除いた後、改質基材の表面部分の面積に対して、0.25ml/cm2量の水に、測定サンプルを37℃、4時間浸漬することによって、溶出した親水性高分子を定量する。
(3)紫外吸収値の最大増加値の測定
測定サンプルと接触している親水性高分子水溶液の放射線照射前後の、波長260nmから300nmの範囲の紫外吸収値を測定した。測定に供する水溶液約3mlを光路長1cmの石英セルに入れて、日立社製U−2000形分光光度計を用いて、室温にて測定した。放射線照射後の紫外吸収値から放射線照射前の紫外吸収値を引いて、紫外吸収値の増加値を求めた。波長260nmから300nmの範囲で最大の増加値を、紫外吸収値の最大増加値とした。
(4)表面親水性高分子量の測定
表面の親水性高分子量は、X線光電子分光法(ESCA)によって測定した。測定装置としてESCALAB220iXLを用い、サンプルを装置にセットして、X線の入射角に対する検出器の角度は90度にて測定を行った。サンプルがフィルムの場合は、キャスト時のガラス面を測定した。また、サンプルが中空糸膜の場合は、中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、中空糸膜の内表面を測定した。測定サンプルは、超純水でリンスした後、室温、0.5Torrにて10時間乾燥させた後、測定に供した。
表面ポリビニルピロリドン量(重量%)=a×100/(a×111+b×442)
(5)ポリエチレングリコールの固定化密度の測定
放射線照射後の中空糸を、基材表面積1m2あたり1lの37℃の蒸留水に1時間浸漬し、蒸留水中に溶出するポリエチレングリコール量が1mg以下になるまで蒸留水を交換しながら洗浄し、基材に固定化されていないポリエチレングリコールを取り除いた。洗浄した基材を50℃、0.5Torrにて10時間乾燥した。乾燥した基材10〜100mgを試験管に取り、無水酢酸とパラトルエンスルホン酸の混合溶液2mlを添加し、120度で約1時間アセチル化した。冷却後2mlの純水で器壁を洗い落とした後、20%炭酸水素ナトリウムで中和した。中和した溶液をトリクロロメタン5mlで抽出し、抽出物をガスクロマトグラフィー(以下GCと略す)で分析した。GC分析条件を以下に示す。予め作成した検量線を用いて、基材に固定化しているポリエチレングリコール量を求めた。
(GC分析条件)
装置:Shimazu GC-9A
カラム:Supelcowax-10 60m×0.75mmI.D.
キャリアーガス:ヘリウム
検出器:FID (H2 inlet:0.7kg/cm2, Air inlet:0.6kg/cm2, Temp.:200℃)
カラム温度:80℃ 5min hold-(20min)-200℃ 5min hold
インジェクター温度:200℃
(6)接触角の測定
協和界面化学社製の接触角計CA−Dを用いて測定した。測定は室温が25度に温調された部屋で行った。
(7)フィルムのウサギ血小板付着試験方法
測定するフィルムを18mmφのポリスチレン製の円筒管の底に平板状に設置し、該円筒管を生理食塩水で満たした。フィルム表面に汚れや傷、折り目などがあると、その部分に血小板が付着し、正しい評価ができないことがあるので注意を要する。3.2%クエン酸三ナトリウム2水和物水溶液と家兎新鮮血を1:9(容積比)で混合した血液を1000rpmで10分間遠心分離し、上清を取り出した(血漿1とする)。その後、上清を取り出したあとの血液を3000rpmで10分間再度遠心分離し、上清を取り出した(血漿2とする)。血漿1に血漿2を添加することで希釈(血漿2は血漿1に比べて血小板の濃度が低い)し、血小板数20×106個/mlの富血小板血漿(PRPと称する)を調製した。準備した円筒管の生理食塩水を捨てた後、PRPを1.0ml入れて37℃にて1時間振盪した。その後、測定フィルムを生理食塩水で3回洗浄し、3%グルタルアルデヒド水溶液で血液成分の固定を行い、蒸留水にて洗浄した後、減圧乾燥を5時間以上行った。
(8)フィルムのヒト血小板付着試験方法
18mmφのポリスチレン製の円形板に両面テープで貼り付け、測定するフィルムを固定した。フィルム表面に汚れや傷、折り目などがあると、その部分に血小板が付着し、正しい評価ができないことがあるので注意を要する。筒状に切ったFalcon(登録商標)チューブ(18mmφ、No.2051)に該円形板を、フィルムを貼り付けた面が、円筒内部にくるように取り付け、パラフィルムで隙間を埋めた。この円筒管内を生理食塩水で洗浄後、生理食塩水で満たした。人間の静脈血を採血後、直ちにヘパリンを50U/mlになるように添加した。前記円筒管内の生理食塩水を廃棄後、前記血液を、採血後10分以内に、円筒管内に1.0ml入れて、37℃にて1時間振盪させた。その後、測定フィルムを10mlの生理食塩水で洗浄し、2.5%グルタルアルデヒド生理食塩水で血液成分の固定を行い、20mlの蒸留水にて洗浄した。洗浄したフィルムを、常温0.5Torrにて10時間減圧乾燥した。その後、スパッタリングにより、Pt−Pdの薄膜をフィルム表面に形成させて、試料とした。フィールドエミッション型走査型電子顕微鏡(日立社製S800)にて、倍率1500倍で試料表面を観察し、1視野中(4.3×103μm2)の付着血小板数を数えた。フィルム中央付近で異なる10視野での付着血小板数の平均値を血小板付着数(個/4.3×103μm2)とした。
(9)中空糸膜のウサギ血小板付着試験方法
中空糸分離膜を30本束ね、中空糸中空部を閉塞しないようにエポキシ系ポッティング剤で両末端をガラス管モジュールケースに固定し、ミニモジュールを作成した。該ミニモジュールの直径は約7mm、長さは約10cmであった。該ミニモジュールの血液入口と透析液出口をシリコーンチューブで繋ぎ、血液出口から蒸留水100mlを10ml/minの流速で流し、中空糸およびモジュール内部を洗浄した。その後、生理食塩水を充填し、透析液入口、出口をキャップした。次に、血液入口から、0.59ml/minの流速で、2時間生理食塩水プライミングした後、3.2%クエン酸三ナトリウム2水和物水溶液と家兎新鮮血を1:9(容積比)で混合した血液7mlを0.59ml/minの流速で1時間灌流した。その後、生理食塩水で10mlシリンジにて洗浄し、3%グルタルアルデヒド水溶液を中空糸内部および透析液側の両方に充填し、一晩以上置き、グルタルアルデヒド固定を行った。その後、蒸留水にて、グルタルアルデヒドを洗浄し、ミニモジュールから中空糸膜を切り出して減圧乾燥を5時間以上行った。中空糸膜を走査型電子顕微鏡の試料台に両面テープで貼り付けた後、長手方向にスライスし、内表面を露出させた。その後、スパッタリングにより、Pt−Pdの薄膜を試料に形成させた。走査型電子顕微鏡(日立社製S800)にて、倍率3000倍で試料の内表面を観察し、1視野中(1.12×103μm2)の付着血小板数を数えた。異なる10視野での付着血小板数の平均値を1.12で割った値を血小板付着数(個/1.0×103μm2)とした。
(10)中空糸膜のヒト血小板付着試験方法
18mmφのポリスチレン製の円形板に両面テープを貼り付け、そこに中空糸膜を固定した。貼り付けた中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、中空糸膜の内表面を露出させた。中空糸内表面に汚れや傷、折り目などがあると、その部分に血小板が付着し、正しい評価ができないことがあるので注意を要する。筒状に切ったFalcon(登録商標)チューブ(18mmφ、No.2051)に該円形板を、中空糸膜を貼り付けた面が、円筒内部にくるように取り付け、パラフィルムで隙間を埋めた。この円筒管内を生理食塩水で洗浄後、生理食塩水で満たした。人間の静脈血を採血後、直ちにヘパリンを50U/mlになるように添加した。前記円筒管内の生理食塩水を廃棄後、前記血液を、採血後10分以内に、円筒管内に1.0ml入れて37℃にて1時間振盪させた。その後、中空糸膜を10mlの生理食塩水で洗浄し、2.5%グルタルアルデヒド生理食塩水で血液成分の固定を行い、20mlの蒸留水にて洗浄した。洗浄した中空糸膜を常温0.5Torrにて10時間減圧乾燥した。このフィルムを走査型電子顕微鏡の試料台に両面テープで貼り付けた。その後、スパッタリングにより、Pt−Pdの薄膜を中空糸膜表面に形成させて、試料とした。この中空糸膜の内表面をフィールドエミッション型走査型電子顕微鏡(日立社製S800)にて、倍率1500倍で試料の内表面を観察し、1視野中(4.3×103μm2)の付着血小板数を数えた。中空糸長手方向における中央付近で、異なる10視野での付着血小板数の平均値を血小板付着数(個/4.3×103μm2)とした。中空糸の長手方向における端の部分は、血液溜まりができやすいためである。
(11)人工腎臓用血液回路のヒト血小板付着試験方法
人工腎臓用血液回路を0.1g(メッシュ部分の場合は0.01g)程度の小片に細断した。細断した小片について、上記の(9)項と同様にして、ヒト血小板付着試験を行った。
(12)IL−6吸着試験
中空糸膜モジュール2に用いたのと同じ中空糸分離膜を30本束ね、中空糸中空部を閉塞しないようにエポキシ系ポッティング剤で両末端をガラス管モジュールケースに固定し、ミニモジュールを作成した。該ミニモジュールの直径は約7mm、長さは約10cmであった。該ミニモジュールの血液入口と透析液出口をシリコーンチューブで繋ぎ、血液出口から蒸留水100mlを10ml/minの流速で流し、中空糸およびモジュール内部を洗浄した。その後、PBS(日水製薬社製ダルベッコPBS(−))水溶液を充填し、透析液入口、出口をキャップした。
(13)酸化LDL吸着除去試験方法
(a)抗酸化LDL抗体の作製
板部らが作製したものを用いた(H.Itabe et al.,J.Biol.Chem.269:15274、1994)。すなわち、ヒト粥状硬化病巣ホモジェネートをマウスに注射して免疫し、そのマウスの脾臓からハイブリドーマを作製し、硫酸銅処理LDLと反応するものを選別して、抗酸化LDL抗体を得た。得られた抗酸化LDL抗体の抗体クラスは、マウスIgMで、未処理LDL、アセチルLDL、マロンジアルデヒドLDLとは反応しない。一方、該抗酸化LDL抗体は、フォスファチジルコリンのアルデヒド誘導体やヒドロペルオキシドを含めていくつかのフォスファチジルコリン過酸化反応生成物と反応する。該抗酸化LDL抗体を150mMのNaClを含む10mMほう酸緩衝液(pH8.5)に溶解したものを用いた(蛋白質濃度0.60mg/ml)。
(b)酸化LDLの調製
市販のLDL(フナコシ製)を脱塩した後、0.2mg/mlとなるようにリン酸緩衝液(以下、PBSと略記)で希釈した。その後、0.5mM硫酸銅水溶液を2wt%添加し、37℃で5時間反応させた。得られた溶液に、25mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を1wt%、10wt%アジ化ナトリウムを0.02wt%となるように添加したものを酸化LDL標品とした。
(c)酸化LDL濃度の測定
前記抗酸化LDL抗体をPBSで5μg/mlに希釈し、96穴のプレートに100μl/ウェルずつ分注した。室温で2時間震盪した後、4℃にて一晩以上放置し、抗体を壁に吸着させた。
(d)酸化LDL吸着除去率の測定
健常者血漿(日本人、30歳、LDL(βリポ蛋白)濃度275mg/dl,HDL−コレステロール濃度70mg/dl)に、上記酸化LDLを濃度2μg/mlとなるように添加した。
酸化LDL吸着除去率(%)=100×(灌流前の濃度−灌流後の濃度)/灌流前の濃度
(参考例1)
基材として、前記のポリスルホンフィルム1を用いた。親水性高分子としてポリビニルピロリドン(BASF社製K90)0.1重量%および抗酸化剤としてエタノール0.5重量%含む水溶液に基材を浸漬し、γ線照射した。γ線吸収線量は27kGyであった。該フィルムを純水でリンスした後、80℃の純水中で60分間撹拌し、純水を入れ替え再び80℃で60分間撹拌した後、さらに純水を入れ替え80℃で60分間撹拌し、吸着しているポリビニルピロリドンを取り除いた。該フィルムの表面ポリビニルピロリドン量の測定、表面の接触角の測定、血小板付着試験および可溶性親水性高分子量の測定をそれぞれ行った。その結果、表1に示された通り、可溶性親水性高分子量が少なく、親水性が高く、血小板数が少ない、血液適合性の高いポリスルホンフィルムが得られたことがわかった。
(比較例1)
前記のポリスルホンフィルム1を、純水中でγ線照射した。γ線吸収線量は28kGyであった。該フィルムを純水でリンスし、80℃の純水中で60分間撹拌し、純水を入れ替え再び80℃で60分間撹拌した後、さらに純水を入れ替え80℃で60分間撹拌した。該フィルムの表面ポリビニルピロリドン量の測定、表面の接触角の測定、血小板付着試験および可溶性親水性高分子量の測定をそれぞれ行った。その結果、表1に示された通り、参考例1と比較して血小板付着数が多く血液適合性の低いポリスルホンフィルムが得られたことがわかった。
(比較例2)
前記のポリスルホンフィルム1を、親水性高分子としてポリビニルピロリドン(BASF社製K90)0.1重量%、抗酸化剤としてエタノール0.5重量%を含む水溶液中で3日間室温にて放置した。その後、該フィルムを純水でリンスし、80℃の純水中で60分間撹拌し、純水を入れ替え再び80℃で60分間撹拌した後、さらに純水を入れ替え80℃で60分間撹拌した。該フィルムの表面ポリビニルピロリドン量の測定、表面の接触角の測定、血小板付着試験および可溶性親水性高分子量の測定をそれぞれ行った。その結果、表1に示された通り、参考例1と比較して接触角が大きく親水性が低く、血小板付着数が多い血液適合性の低いポリスルホンフィルムが得られたことがわかった。
(比較例3)
前記のポリスルホンフィルム1にγ線を照射しないで、該フィルムを純水でリンスし、80℃の純水中で60分間撹拌し、純水を入れ替え再び80℃で60分間撹拌した後、さらに純水を入れ替え80℃で60分間撹拌した。該フィルムの表面ポリビニルピロリドン量の測定、表面の接触角の測定、血小板付着試験および可溶性親水性高分子量の測定をそれぞれ行った。その結果、表1に示された通り、参考例1と比較して接触角が大きく親水性が低く、血小板付着数が多い血液適合性の低いポリスルホンフィルムが得られたことがわかった。
親水性高分子としてポリビニルピロリドン(BASF社製K90)0.1重量%、抗酸化剤としてエタノール0.5重量%を含む水溶液を、前記の中空糸膜モジュール1の血液側および透析液側に、それぞれ1000ml通液し、モジュール内を該水溶液で充填した。この後、該モジュールにγ線照射した。γ線吸収線量は29kGyであった。該モジュールについて、ポリビニルピロリドンの溶出性試験を行った結果、ポリビニルピロリドンの溶出量は0.15mg/m2であった。また、該モジュールの中空糸を切り出し、表面ポリビニルピロリドン量、可溶性親水性高分子量および血小板付着数を評価した。その結果、表2に示された通りであった。
(参考例3)
親水性高分子としてポリビニルピロリドン(BASF社製K90)0.1重量%、抗酸化剤としてピロ亜硫酸ナトリウム500ppmを含む水溶液を、前記の中空糸膜モジュール1の血液側および透析液側に、それぞれ1000ml通液し、モジュール内を該水溶液で充填した。この後、該モジュールにγ線照射した。γ線吸収線量は29kGyであった。該モジュールの中空糸を切り出し、表面ポリビニルピロリドン量、可溶性親水性高分子量および血小板付着数を評価した。その結果、表2に示された通りであった。
(比較例4)
純水を、前記の中空糸膜モジュール1の血液側および透析液側にそれぞれ1000ml通液し、モジュール内を純水で充填した。この後、該モジュールにγ線照射した。γ線吸収線量は28kGyであった。該モジュールの中空糸を切り出し、表面ポリビニルピロリドン量、可溶性親水性高分子量および血小板付着数を評価した。その結果、表2に示された通り、参考例2,3と比較して血小板付着数が多かった。また、該モジュールの血液側充填液の、γ線照射による波長260nmから300nmの範囲における紫外吸収値の最大増加値を測定した。さらに、中空糸膜モジュール1と同じ中空糸膜を用いてミニモジュールを作成し、酸化LDL吸着実験に供した。結果は表3に示したように、カチオン性親水性高分子を固定化した中空糸膜に比べて、酸化LDL吸着除去率は低かった。
(比較例5)
親水性高分子としてポリビニルピロリドン(BASF社製K90)0.1重量%を含む水溶液を、前記の中空糸膜モジュール1の血液側および透析液側に、それぞれ1000ml通液し、モジュール内を該水溶液で充填した。この後、該モジュールにγ線照射した。γ線吸収線量は29kGyであった。該モジュールの中空糸を切り出し、表面ポリビニルピロリドン量、可溶性親水性高分子量および血小板付着数を評価した。その結果、表2に示された通り、参考例2,3と比較して血小板付着数が多かった。
(比較例6)
抗酸化剤としてエタノール0.5重量%を含む水溶液を、前記の中空糸膜モジュール1の血液側および透析液側に、それぞれ1000ml通液し、モジュール内を該水溶液で充填した。この後、該モジュールにγ線照射した。γ線吸収線量は29kGyであった。該モジュールの中空糸を切り出し、表面ポリビニルピロリドン量、可溶性親水性高分子量および血小板付着数を評価した。その結果、表2に示された通り、参考例2,3と比較して血小板付着数が多かった。
(比較例7)
抗酸化剤として500ppmのピロ亜硫酸ナトリウムを含む水溶液を、前記の中空糸膜モジュール1の血液側および透析液側に、それぞれ1000ml通液し、モジュール内を該水溶液で充填した。この後、該モジュールにγ線照射した。γ線吸収線量は29kGyであった。該モジュールの中空糸を切り出し、表面ポリビニルピロリドン量、可溶性親水性高分子量および血小板付着数を評価した。その結果、表2に示された通り、参考例2,3と比較して血小板付着数が多かった。
(比較例8)
親水性高分子としてポリビニルピロリドン(BASF社製K90)0.1重量%、抗酸化剤としてエタノール0.5重量%を含む水溶液を、前記の中空糸膜モジュール1の血液側および透析液側に、それぞれ1000ml通液し、モジュール内を該水溶液で充填した。充填後3日間室温で放置した後、該モジュールについて、ポリビニルピロリドンの溶出性試験を行った。その結果、ポリビニルピロリドンの溶出量が0.68mg/m2であり、参考例2と比較してポリビニルピロリドンの溶出量が多かった。該モジュールの中空糸を切り出し、表面ポリビニルピロリドン量、可溶性親水性高分子量および血小板付着数を評価した。その結果、表2に示された通りであった。すなわち、γ線照射を行っていないので、血小板付着数は低かったが、ポリビニルピロリドンのグラフト化や、架橋が起きていないため、ポリビニルピロリドンの溶出量が多かったと考えられる。
ノニオン性親水性高分子としてポリビニルピロリドン(BASF社製K90)0.1重量%、カチオン性親水性高分子としてポリエチレンイミン(BASF社製、重量平均分子量100万)0.1重量%を含む水溶液を、前記中空糸膜モジュール1の血液側および透析液側に、それぞれ1000ml通液し、モジュール内を該水溶液で充填した。この後、該モジュールにγ線照射した。γ線吸収線量は27kGyであった。該モジュールの血液側充填液の、γ線照射による波長260nmから300nmの範囲における紫外吸収値の最大増加値を測定した。該モジュールの中空糸を切り出し、血小板付着数を評価した。さらに、中空糸膜モジュール1と同じ中空糸膜を用いてミニモジュールを作成し、酸化LDL吸着実験に供した。その結果、表3に示された通りであった。その結果を表3に示した。
(参考例4)
カチオン性親水性高分子としてポリエチレンイミン(BASF社製、重量平均分子量100万)0.1重量%、抗酸化剤としてエタノールを含む水溶液を、前記中空糸膜モジュール1の血液側および透析液側に、それぞれ1000ml通液し、モジュール内を該水溶液で充填した。この後、該モジュールにγ線照射した。γ線吸収線量は29kGyであった。該モジュールの血液側充填液の、γ線照射による波長260nmから300nmの範囲における紫外吸収値の最大増加値を測定した。その結果、表3に示したように、比較例9に比べて紫外吸収値の最大増加値が低く抑えられていることがわかった。該モジュールの中空糸を切り出し、血小板付着数を評価した。さらに、中空糸膜モジュール1と同じ中空糸膜を用いてミニモジュールを作成し、酸化LDL吸着実験に供した。結果を表3に示した。
(比較例9)
カチオン性親水性高分子としてポリエチレンイミン(BASF社製、重量平均分子量100万)0.1重量%を含む水溶液を、前記中空糸膜モジュール1の血液側および透析液側に、それぞれ1000ml通液し、モジュール内を該水溶液で充填した。この後、該モジュールにγ線照射した。γ線吸収線量は28kGyであった。該モジュールの血液側充填液の、γ線照射による波長260nmから300nmの範囲における紫外吸収値の最大増加値を測定した。該モジュールの中空糸を切り出し、血小板付着数を評価した。さらに、中空糸膜モジュール1と同じ中空糸膜を用いてミニモジュールを作成し、酸化LDL吸着実験に供した。その結果、表3に示された通り、実施例1と比較して血小板付着数が多かった。
前記の中空糸膜モジュール2の血液側および透析液側に、それぞれ40℃の超純水5000mlを通液して洗浄した。その後、親水性高分子としてポリエチレングリコール(日本油脂社製マクロゴール(登録商標)6000)0.075重量%を含む水溶液を、血液側および透析液側にそれぞれ1000ml通液し、モジュール内を該水溶液で充填した。この後、該モジュールをγ線照射した。γ線吸収線量は28kGyであった。該モジュールについて、ポリエチレングリコール固定化密度測定、血小板付着試験およびIL−6吸着試験を行った。その結果、表4に示された通りであった。
(参考例6)
前記の中空糸膜モジュール2の血液側および透析液側に、それぞれ40℃の超純水5000mlを通液して洗浄した。その後、親水性高分子としてポリエチレングリコール(日本油脂製マクロゴール(登録商標)6000)0.100重量%を含む水溶液を、該モジュールの血液側および透析液側にそれぞれ1000ml通液し、モジュール内を該水溶液で充填した。この後、該モジュールをγ線照射した。γ線吸収線量は28kGyであった。該モジュールについて、ポリエチレングリコール固定化密度測定、血小板付着試験およびIL−6吸着試験を行った。その結果、表4に示された通りであった。
(参考例7)
前記の中空糸膜モジュール2の血液側および透析液側に、それぞれ40℃の超純水5000mlを通液して洗浄した。その後、親水性高分子としてポリビニルピロリドン(ISP社製K90)0.100重量%を含む水溶液を、該モジュールの血液側および透析液側にそれぞれ1000ml通液し、モジュール内を該水溶液で充填した。この後、該モジュールをγ線照射した。γ線吸収線量は28kGyであった。該モジュールについて、血小板付着試験およびIL−6吸着試験を行った。その結果、表4に示された通り、であった。
(比較例10)
前記の中空糸膜モジュール2の血液側および透析液側に、それぞれ40℃の超純水5000mlを通液して洗浄した。その後、親水性高分子としてポリエチレングリコール(日本油脂製マクロゴール(登録商標)6000)0.010重量%を含む水溶液を、該モジュールの血液側および透析液側にそれぞれ1000ml通液し、モジュール内を該水溶液で充填した。この後、該モジュールをγ線照射した。γ線吸収線量は28kGyであった。該モジュールについて、ポリエチレングリコール固定化密度測定、血小板付着試験およびIL−6吸着試験を行った。その結果、表4に示された通りであった。
(比較例11)
前記の中空糸膜モジュール2の血液側および透析液側に、それぞれ40℃の超純水5000mlを通液して洗浄した。その後、親水性高分子としてポリエチレングリコール(ナカライテスク製ポリエチレングリコール#200)0.100重量%を含む水溶液を、該モジュールの血液側および透析液側にそれぞれ1000ml通液し、モジュール内を該水溶液で充填した。この後、該モジュールをγ線照射した。γ線吸収線量は28kGyであった。該モジュールについて、ポリエチレングリコール固定化密度測定、血小板付着試験およびIL−6吸着試験を行った。その結果、表4に示された通りであった。
(比較例12)
前記の中空糸膜モジュール2の血液側および透析液側に、それぞれ40℃の超純水5000mlを通液して洗浄した。その後、親水性高分子としてポリエチレングリコール(SCIENTIFIC POLYMERS PRODUCTS, INC.製、 Mw900,000)0.100重量%を含む水溶液を、該モジュールの血液側および透析液側にそれぞれ1000ml通液し、モジュール内を該水溶液で充填した。この後、該モジュールをγ線照射した。γ線吸収線量は28kGyであった。該モジュールについて、ポリエチレングリコール固定化密度測定、血小板付着試験およびIL−6吸着試験を行った。その結果、表4に示された通りであった。
(比較例13)
前記の中空糸膜モジュール2の血液側および透析液側に、それぞれ40℃の超純水5000mlを通液して洗浄した。その後、モジュール内を超純水で充填し、該モジュールをγ線照射した。γ線吸収線量は28kGyであった。該モジュールについて、血小板付着試験およびIL−6吸着試験を行った。その結果、表4に示された通りであった。
市販の人工腎臓用血液回路(東レメディカル株式会社:「人工腎臓血液回路H−102−KTS」)の人工腎臓モジュール血液側コネクター部分を細断して、小片1gを測定サンプルとした。親水性高分子としてポリビニルピロリドン(ISP社製K90)0.100重量%、抗酸化剤としてエタノール0.100重量%を含む水溶液60mlに測定サンプルを浸漬し、γ線照射した。血小板付着試験を行った結果、表5に示すとおりであった。
(参考例9)
市販の人工腎臓用血液回路(東レメディカル株式会社:「人工腎臓血液回路H−102−KTS」)の血液チューブ部分を細断して、小片1gを測定サンプルとした。親水性高分子としてポリビニルピロリドン(ISP社製K90)0.100重量%、抗酸化剤としてエタノール0.100重量%を含む水溶液60mlに測定サンプルを浸漬し、γ線照射した。血小板付着試験を行った結果、表5に示すとおりであった。
(参考例10)
市販の人工腎臓用血液回路(東レメディカル株式会社発売「人工腎臓血液回路H−102−KTS」)の血液チャンバー部分を細断して、小片1gを測定サンプルとした。親水性高分子としてポリビニルピロリドン(ISP社製K90)0.100重量%、抗酸化剤としてエタノール0.100重量%を含む水溶液60mlに測定サンプルを浸漬し、γ線照射した。血小板付着試験を行った結果、表5に示すとおりであった。
(参考例11)
市販の人工腎臓用血液回路(東レメディカル株式会社:「人工腎臓血液回路H−102−KTS」)のメッシュ部分を細断して、小片1gを測定サンプルとした。親水性高分子としてポリビニルピロリドン(ISP社製K90)0.100重量%、抗酸化剤としてエタノール0.100重量%を含む水溶液60mlに測定サンプルを浸漬し、γ線照射した。血小板付着試験を行った結果、表5に示すとおりであった。
(比較例14)
市販の人工腎臓用血液回路(東レメディカル株式会社:「人工腎臓血液回路H−102−KTS」)の人工腎臓モジュール血液側コネクター部分を細断して、血小板付着試験を行った結果、表5に示すとおりであった。
(比較例15)
市販の人工腎臓用血液回路(東レメディカル株式会社:「人工腎臓血液回路H−102−KTS」)の血液チューブ部分を細断して、血小板付着試験を行った結果、表5に示すとおりであった。
(比較例16)
市販の人工腎臓用血液回路(東レメディカル株式会社:「人工腎臓血液回路H−102−KTS」)の血液チャンバー部分を細断して、血小板付着試験を行った結果、表5に示すとおり血小板付着数は7.0(個/4.3×103μm2)であった。
(比較例17)
市販の人工腎臓用血液回路(東レメディカル株式会社:「人工腎臓血液回路H−102−KTS」)のメッシュ部分を細断して、血小板付着試験を行った結果、表5に示すとおりであった。
市販のガラス状炭素板(東洋炭素株式会社製)を基材として用いた。親水性高分子としてポリビニルピロリドン(BASF社製K90)0.01重量%および抗酸化剤としてエタノール0.1重量%を含む水溶液に基材を浸漬し、γ線照射した。γ線吸収線量は27kGyであった。該フィルムを純水でリンスした後、80℃の純水中で60分間撹拌し、純水を入れ替え再び80℃で60分間撹拌した。その後、さらに純水を入れ替え80℃で60分間撹拌し、吸着しているポリビニルピロリドンを取り除いた。該フィルムの表面の接触角を測定した。その結果、接触角は39度であり、未処理の場合の98度に対して大幅に親水性化されていることがわかった。
(参考例13)
市販のガラス状炭素板(東洋炭素株式会社製)を基材として用いた。親水性高分子としてポリビニルピロリドン(BASF社製K90)0.01重量%を含む水溶液に基材を浸漬し、γ線照射した。γ線吸収線量は27kGyであった。該フィルムを純水でリンスした後、80℃の純水中で60分間撹拌し、純水を入れ替え再び80℃で60分間撹拌した。その後、さらに純水を入れ替え80℃で60分間撹拌し、吸着しているポリビニルピロリドンを取り除いた。該フィルムの表面の接触角を測定した。その結果、接触角は52度であり、未処理の場合の98度に対して大幅に親水性化されていることがわかった。
(比較例18)
参考例12のガラス状炭素板を、純水中でγ線照射した。γ線吸収線量は28kGyであった。該フィルムを純水でリンスし、80℃の純水中で60分間撹拌し、純水を入れ替え再び80℃で60分間撹拌した。その後、さらに純水を入れ替え80℃で60分間撹拌した。該フィルムの表面の接触角は98度であり未処理の場合の98度と同じであることがわかった。
(参考例14)
市販のカーボンシート(東レ株式会社製)を基材として用いた。親水性高分子としてポリビニルピロリドン(BASF社製K90)0.1重量%および抗酸化剤としてエタノール0.1重量%含む水溶液に基材を浸漬し、γ線照射した。γ線吸収線量は27kGyであった。該フィルムを純水でリンスした後、80℃の純水中で60分間撹拌し、純水を入れ替え再び80℃で60分間撹拌した。その後、さらに純水を入れ替え80℃で60分間撹拌し、吸着しているポリビニルピロリドンを取り除いた。該フィルムの表面の接触角を測定した。その結果、接触角は30度であり、未処理の場合の131度に対して大幅に親水性化されていることがわかった。
Claims (6)
- カチオン性親水性高分子またはアニオン性親水性高分子、および、ポリビニルピロリドンまたはポリアルキレングリコールを含み、可溶性親水性高分子量が15重量%以下であり、かつ、ヒト血小板付着量が10個/4.3×103μm2以下である生体成分分離膜。
- 基材が疎水性高分子からなり、前記疎水性高分子がポリスルホン系ポリマーまたはポリメタクリル酸メチルである請求の範囲1項記載の生体成分分離膜。
- 中空糸膜型である請求の範囲1項記載の生体成分分離膜。
- ポリスルホン系ポリマーおよびポリビニルピロリドンを有する分離膜に、カチオン性親水性高分子またはアニオン性親水性高分子、並びに抗酸化剤を含む水溶液を、膜を通して濾過しながら充填し、前記水溶液の接触下、放射線照射して滅菌する生体成分分離膜の製造方法。
- 分離膜に、カチオン性親水性高分子またはアニオン性親水性高分子、および、ポリビニルピロリドンまたはポリアルキレングリコール、並びに抗酸化剤を含む水溶液を、膜を通して濾過しながら充填し、前記水溶液の接触下、放射線照射して滅菌する生体成分分離膜の製造方法。
- 前記抗酸化剤がアルコールであり、前記水溶液が前記アルコールを0.1重量%以上0.5重量%以下含む請求の範囲4項または5項に記載の生体成分分離膜の製造方法。
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