以下、本発明の一実施形態について図1〜図12に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係るエンジン1の吸排気システムの概略構成図である。
本実施形態のエンジン1は、車両駆動用のディーゼルエンジンを想定しており、車両外部から吸入した空気を気筒内に導く吸気通路2、および気筒内で発生した排気ガスを大気中に排出する排気通路3を備えている。
吸気通路2は、車両外部の空気をエンジン1側に導入する吸気管、吸気管からの空気をエンジン1の各気筒に分配するインテークマニホールド、およびインテークマニホールドから供給された空気を気筒に導く吸気ポートの各内部通路によって構成されている。
吸気管には、最上流部から順に、吸入した空気中に含まれる塵や埃などを除去するエアクリーナ21、吸気管を流れる空気の流量(吸気流量)を測定するエアフローメータ22、過給器(ターボチャージャ)のコンプレッサ23、当該コンプレッサ23にて圧縮されて高温高圧の空気を冷却するインタークーラ24、気筒内に吸引される吸気流量を調整するスロットルバルブ25等が設けられている。
また、インテークマニホールドには、エアフローメータ22等の流量センサの精度に悪影響を及ぼす吸気の脈動や吸気の干渉を抑制するためのサージタンク26が設けられている。
排気通路3は、気筒内から排気ガスを排気する排気ポート、各排気ポートから排出される排気ガスの集合管であるエキゾーストマニホールド、および過給器の排気タービン31を通過した排気ガスを大気に向けて放出する排気管の各内部通路によって構成されている。なお、過給器の排気タービン31は、エキゾーストマニホールドにおける排気出口と排気管との接合部付近に配置されている。
排気管には、排気ガス中に含まれるパティキュレート(PM)を捕集するDPF(Diesel Particulate Filter)32、DPF32の排気上流側および排気下流側を流れる排気ガスの排気温度を検出する排気温度センサ33、DPF32の排気上流側および排気下流側の圧力差を検出する差圧センサ(図示略)等が設けられている。
また、吸排気システムには、エンジン1の排気系から吸気系へと排気ガスの一部を還流させるEGR装置として、高圧EGRユニット4および低圧EGRユニット5が設けられている。
EGR装置を構成する高圧EGRユニット4は、排気通路3における高排気圧範囲(DPF32の上流側で、高い排気圧が発生する範囲)の排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路2における高吸気負圧発生範囲(スロットルバルブ25の下流側であって、高い負圧が発生する範囲)に還流させるものである。
高圧EGRユニット4は、排気通路3と吸気通路2とを接続する高圧EGR通路41を有する。本実施形態の高圧EGR通路41は、排気側が排気通路3における過給器の排気タービン31よりも上流側のエキゾーストマニホールドに接続され、吸気側が吸気通路3におけるインテークマニホールドのサージタンク26に接続されている。
高圧EGR通路41には、高圧EGR通路41の開度を調整することで、EGRガスの流量調整を行う高圧EGR調整弁42、EGRガスを冷却するための高圧EGRクーラ43、EGRガスを高圧EGRクーラ43を迂回させて吸入通路2に還流するためのバイパス通路44、吸入通路2に還流するEGRガスの流路を高圧EGRクーラ43およびバイパス通路44の何れか一方に切替える高圧EGR流路切替弁45等が設けられている。なお、高圧EGRクーラ43は、エンジン1を冷却するためのエンジン冷却水とEGRガスとを熱交換させて、EGRガスを冷却する気−液熱交換器である。
EGR装置を構成する低圧EGRユニット5は、排気通路3における低排気圧範囲(DPF32の下流側であって、高排気圧範囲よりも低い排気圧が発生する範囲)の排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路2における低吸気負圧発生範囲(スロットルバルブ25の吸気上流側であって、低い負圧が発生する範囲)に還流させるものである。なお、低圧EGRユニット5が、本発明のEGR装置に相当している。
低圧EGRユニット5は、排気通路3と吸気通路2とを接続する低圧EGR通路51を有する。本実施形態の低圧EGR通路51は、排気側が排気通路3におけるDPF32よりも下流側の排気管に接続され、吸気側が吸気通路2における過給器のコンプレッサ23よりも上流側に接続されている。
低圧EGR通路51には、低圧EGR通路51の開度を調整することで、EGRガスの流量調整を行なう低圧EGR調整弁52、EGRガスの冷却を行なう低圧EGRクーラ53等が設けられている。なお、低圧EGRクーラ53は、エンジン1を冷却するためのエンジン冷却水とEGRガスとを熱交換させて、EGRガスを冷却する気−液熱交換器である。
また、吸気通路2(吸気管)における低圧EGR通路51の合流部よりも上流側には、低圧EGR通路51の合流箇所に負圧を発生させるための吸気絞り弁54が設けられている。吸気絞り弁54は、吸気通路2を最大に絞った状態(最小開度θcl)で、完全に吸気通路2を閉鎖することなく、吸気通路2の一部(例えば、10%)を開放するように構成されている。なお、本実施形態の吸気絞り弁54が、本発明の絞り弁に相当している。
吸気絞り弁54は、低圧EGRユニット5にて少量のEGRガスをエンジン1の吸気系に還流させる場合、低圧EGR通路51に負圧が発生しないように、吸気絞り弁54の開度が最大開度となるように制御される。
一方、吸気絞り弁54は、低圧EGRユニット5にて多量のEGRガスをエンジン1の吸気系に還流させる場合、低圧EGR調整弁52の開度増大に連動して、低圧EGR通路51に負圧を発生させるべく、吸気絞り弁54の開度が最大開度となるように制御される。
ここで、本実施形態の低圧EGR調整弁52および吸気絞り弁54の概略構成について図2に基づいて説明する。図2は、本実施形態に係る低圧EGR調整弁52と吸気絞り弁54の概略図である。
低圧EGR調整弁52は、回転変位によって低圧EGR通路51の開度調整(開口面積の調整)を行なうもので、吸気絞り弁54も、回転変位によって吸気通路2の開度調整を行なうものである。そして、低圧EGR調整弁52に固定されたシャフト52aと、吸気絞り弁54に固定されたシャフト54aとは、互いに平行に伸びて配置されるものである。なお、EGR調整弁6のシャフト52aおよび吸気絞り弁54のシャフト54aそれぞれは、各通路2、51の壁面に軸受部を介して回転自在に支持されている。
低圧EGR調整弁52には、シャフト52aの一方の端部に低圧EGR調整弁52の開度を検出するための低圧EGR開度センサ(EGR開度検出手段)52bが設けられている。この低圧EGR開度センサ52bは、ホールIC等の磁気センサで構成され、当該磁気センサに与えられる磁束変化により低圧EGR調整弁52のシャフト52aの回転角度を非接触で検出するものである。なお、低圧EGR開度センサ52bの出力結果は、後述する制御装置(ECU)100に出力される。
また、低圧EGR調整弁52には、シャフト52aにおける低圧EGR開度センサ52bとは異なる側のシャフト52aの端部に、低圧EGR調整弁52のリターンスプリング(第1のリターンスプリング)52cが配置されている。なお、以下、低圧EGR調整弁52のリターンスプリング52cをEGR用スプリングと略称する。
このEGR用スプリング52cは、低圧EGR調整弁52のシャフト52aの端部に低圧EGR調整弁52を閉弁側へ戻す方向の付勢力を付与するコイルバネであり、当該コイルバネの復元力によって低圧EGR調整弁52を閉弁側へ戻すものである。なお、説明の便宜上、図2ではEGR用スプリング52cを模式的に図示している。
吸気絞り弁54には、シャフト54aの一端部に、吸気絞り弁54のリターンスプリング(第2のリターンスプリング)54bが配置されている。なお、以下、吸気絞り弁54のリターンスプリング54bを絞り用スプリングと略称する。)
この絞り用スプリング54bは、吸気絞り弁54のシャフト54aの一端部に吸気絞り弁54を開弁側へ戻す方向の付勢力を付与するコイルバネであり、当該コイルバネの復元力(戻り力)によって吸気絞り弁54を開弁側へ戻すものである。なお、説明の便宜上、図2では絞り用スプリング54bを模式的に図示している。
ここで、本実施形態の低圧EGRユニット5は、低圧EGR調整弁52を駆動する1つの電動アクチュエータ55と、電動アクチュエータ55の駆動力を吸気絞り弁54の駆動に利用するためのリンク機構56(動力伝達手段)を有し、リンク機構56を介して伝達された電動アクチュエータ55の駆動力にて吸気絞り弁54を駆動する構成としている。
電動アクチュエータ55は、低圧EGR通路51の外側の通路壁面に固定配置され、低圧EGR調整弁52のシャフト52aを回転駆動するとともに、リンク機構56を介して吸気絞り弁54のシャフト54aを回転駆動するように設けられている。
この電動アクチュエータ55は、通電により回転出力を発生する電動モータ55aと、この電動モータ55aの回転出力を減速して低圧EGR調整弁52のシャフト52aに伝達するための減速機構55bとを組み合わせたものである。なお、電動モータ55aとしては、通電量に応じて回転角度制御が可能なDCモータを用いることができる。
リンク機構56は、電動アクチュエータ55の駆動力を吸気絞り弁54に伝達し、吸気絞り弁54を駆動するものであり、低圧EGR調整弁52の開度が所定の基準開度θA以上である場合に、電動アクチュエータ55の駆動力を吸気絞り弁54に伝達するように構成されている。
リンク機構56は、低圧EGR調整弁52のシャフト52aと一体に回転するカムプレート57と、吸気絞り弁54のシャフト54aと一体に回転する従動アーム58とを備える。
カムプレート57は、耐摩耗性に優れた材料(例えば、ナイロン系樹脂など)により成形されたもので、低圧EGR調整弁52のシャフト52aに対して直角に固定されている。
従動アーム58は、耐摩耗性に優れた材料(例えば、ナイロン系樹脂など)により成形されたもので、従動アーム58の回動端側がカムプレート57に対して所定の隙間を隔てて重なるように、吸気絞り弁54のシャフト54aに対して直角に固定されている。
カムプレート57には、その回転中心(シャフト52a)から離れた位置にカム溝57aが設けられ、従動アーム58には、その回転中心(シャフト54a)から離れた位置にカム溝57aに嵌まり合う従動ピン58aが設けられている。
従動ピン58aに対して駆動力を付与するカム溝57aの形状(カムプロフィール)は、カムプレート57の回転中心と同一中心の円弧状のアイドル溝部Xと、アイドル溝部Xに対して所定の角度で変化する作動溝部Yとを組み合わせた形状となっている。なお、作動溝部Yは、図2に示すように、アイドル溝部Xよりも直線に近い弧溝としている。
アイドル溝部Xは、低圧EGR調整弁52の開度θが低圧EGR通路51を最大に絞る最小開度θ0(θ=0°)から所定の基準開度θAに至る第1開度範囲(θ0≦θ<θAとなる角度範囲)において、吸気絞り弁54の開度を最大開度(全開90°)に保つように設けられている。
一方、作動溝部Yは、低圧EGR調整弁52の開度が所定の基準開度θAから最大開度θmax(θ=90°)に至る第2開度範囲(θA≦θ≦θmaxとなる角度範囲)において、基準開度θAから最大開度θmaxに変化するに従い、従動アーム58を回動させて、吸気絞り弁54の開度を最大開度(全開90°)から吸気通路2を閉じる方向に回動させるように設けられている。
図1に戻り、本実施形態の電気制御部について説明する。本実施形態の制御装置(ECU)100は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。この制御装置100は、ROMに記憶された制御プログラムと、種々のセンサ信号(乗員の操作信号、各種検出センサ信号等)とに基づいて、エンジン1の燃焼噴射量等の各種運転制御や高圧EGRユニット4および低圧EGRユニット5の運転制御を行うものである。
制御装置100における各EGRユニット4、5の運転制御では、エンジン1の暖機状態(例えば、エンジン冷却水の温度)に基づいて高圧EGRクーラ切替弁45を切替える切替制御や、エンジン回転数とエンジン負荷(エンジントルク)に応じて高圧EGR調整弁42、低圧EGR調整弁52、および吸気絞り弁54の開度制御等を行う。
次に、本実施形態の低圧EGRユニット5の作動について図3〜図5に基づいて説明する。図3は、低圧EGR調整弁52と吸気絞り弁54の作動を説明する作動説明図であり、図4は低圧EGR調整弁52の開度(横軸)と吸気絞り弁54の開度(縦軸)との関係を説明する説明図であり、図5は低圧EGR調整弁52の開度(横軸)に応じたEGR流量と吸気流量との関係を説明する説明図である。なお、説明の便宜のため、図3では、低圧EGR調整弁52の開度および吸気絞り弁54の開度を示すだけで、各種構成を示す符号を省略している。
低圧EGRユニット5にて少量のEGRガスをエンジン1の吸気系に還流させる場合には、低圧EGR調整弁52の開度θを最小開度θ0から基準開度θAまでの第1開度範囲(θ0≦θ<θA)で制御する。なお、図3(a)は、低圧EGR調整弁52の開度θがθ0(θ=0°)付近(低圧EGR調整弁52が全閉位置)における作動状態を示している。
低圧EGR調整弁52の開度θを第1開度範囲(θ0≦θ<θA)で制御する場合は、電動アクチュエータ55の駆動力がリンク機構56を介して吸気絞り弁54に伝達されないので、図4に示すように、吸気絞り弁54の開度が最大開度(全開90°)に維持される。
このため、吸気通路2には、吸気絞り弁54による負圧が発生せず、低圧EGR調整弁52の開度に応じて少量のEGRガスがエンジン1の吸気系に還流することとなる。なお、図5に示すように、低圧EGR調整弁52の開度θを第1開度範囲で制御する場合には、吸気流量が一定の状態で、低圧EGR調整弁52の開度θの増大に応じてEGR流量が増大する。
また、低圧EGRユニット1にて多量のEGRガスをエンジン1の吸気系に還流させる場合には、低圧EGR調整弁52の開度θを基準開度θAから最大開度θmaxまでの第2開度範囲で制御する。なお、図3(b)に低圧EGR調整弁52の開度θが所定の基準開度θA付近(吸気絞り弁54が絞りを開始する位置)における作動状態を示し、図3(c)は低圧EGR調整弁52の開度θがθmax(θ=90°)付近(低圧EGR調整弁52が全開位置)における作動状態を示している。
低圧EGR調整弁52の開度θを第2開度範囲(θA≦θ≦θmax)で制御する場合は、電動アクチュエータ55の駆動力がリンク機構56を介して吸気絞り弁54に伝達されるので、図4に示すように、低圧EGR調整弁52の開度θの増大に応じて、吸気絞り弁54が吸気通路4を閉じる方向、すなわち吸気絞り弁54の開度が小さくなるように制御される。
このため、吸気通路3には、吸気絞り弁54による負圧が発生し、低圧EGR調整弁52の開度に応じて多量のEGRガスがエンジン1の吸気系に還流することとなる。なお、図5に示すように、低圧EGR調整弁52の開度θを第2開度範囲で制御する場合には、低圧EGR調整弁52の開度θの増大に応じて、吸気流量が減少し、EGR流量が増大する。
ここで、低圧EGR調整弁52の開度θと低圧EGR調整弁52のシャフト52aに作用するリターンスプリング(EGR用スプリング52cおよび絞り用スプリング54b)の戻り力(復元力)との関係を図6に基づいて説明する。なお、図6における横軸は、低圧EGR調整弁52の開度θを示し、縦軸は、低圧EGR調整弁52のシャフト52aに作用するリターンスプリングの戻り力(復元力)の大きさを示している。
図6に示すように、低圧EGR調整弁52の開度θが第1開度範囲(θ0≦θ<θA)では、電動アクチュエータ55の駆動力がリンク機構56を介して吸気絞り弁54に伝達されないので、低圧EGR調整弁52には絞り用スプリング54bの戻り力が作用せず、EGRスプリング52cの戻り力のみが作用する。
一方、低圧EGR調整弁52の開度θが第2開度範囲(θA≦θ≦θmax)では、電動アクチュエータ55の駆動力がリンク機構56を介して吸気絞り弁54に伝達されるので、低圧EGR調整弁52にはEGR用スプリング52cの戻り力に加えて、絞り用スプリング54bの戻り力が作用する。
ここで、低圧EGR調整弁52および吸気絞り弁54におけるリターンスプリング(EGR用スプリング52cおよび絞り用スプリング54b)の一方または両方が折損等により故障すると、エンジン1の燃焼状態が不安定となり、NOx低減機能の低下等を招く虞がある。このため、本実施形態の制御装置100では、EGR用スプリング52cおよび絞り用スプリング54bの故障を検出するための故障検出処理を行うように構成されている。なお、本実施形態の制御装置100が本発明の故障検出手段に相当している。
以下、本実施形態の制御装置100にて行う故障検出処理について図7〜図12に基づいて説明する。ここで、図7は、故障検出処理のメインジョブを示すフローチャートである。
図7に示すように、故障検出処理では、先ず、イグニッションスイッチ(IGSW)がオフであるか否かを判定する(S10)。この結果、IGSWがオフでない(オンである)と判定された場合(S10:NO)には、IGSWがオフになるまでS10の判定処理を繰り返し、IGSWがオフであると判定された場合(S10:YES)には、さらに、エンジン停止中であるか否かを判定する(S20)。このエンジン停止中か否かの判定は、エンジン回転数がゼロとなった際にオンされるエンジン停止フラグに基づいて判定することができる。なお、エンジン1の停止前に、低圧EGR調整弁52を駆動する電動アクチュエータ55等への通電が停止されるので、低圧EGR調整弁52の開度は、EGR用スプリング52cの戻り力(復元力)によって最小開度θ0となる。
S20の判定処理の結果、エンジン停止中でない(エンジン作動中)と判定された場合(S20:NO)には、S10の処理に戻り、エンジン停止中であると判定された場合(S20:YES)には、EGR用スプリング52cの故障判定処理を行う(S30)。
EGR用スプリング52cの故障判定処理(S30)については、図8(a)、図8(b)、および図9に基づいて説明する。図8(a)は、EGR用スプリング52cの故障判定処理の前半を示すフローチャートであり、図8(b)は、EGR用スプリング52cの故障判定処理の後半を示すフローチャートであり、図9は、EGR用スプリング52cの故障判定を示すタイミングチャートである。
図8(a)に示すように、EGR用スプリング52cの故障判定処理(S30)では、先ず、EGR用スプリング52cの故障判定処理が未完了であるか否かを判定する(S302)。この判定処理は、エンジン1の停止中にEGR用スプリング52cの故障判定処理が繰り返し行われることを禁止するための処理である。なお、EGR用スプリング52cの故障判定処理が未完了であるか否かの判定は、故障判定処理の完了時にオンされるEGR故障判定完了フラグ(XDIAGEGR)を参照して行う。なお、EGR故障判定完了フラグ(XDIAGEGR)は後述するS328の判定処理にてオンされる。
S302の判定処理の結果、EGR用スプリング52cの故障判定処理が完了している(XDIAGEGRがオン)と判定された場合(S302:NO)には、EGR用スプリング52cの故障判定処理を終了する(図8(b)参照)。
一方、S302の判定処理の結果、故障判定処理が未完了と判定された場合(S302:YES)には、計時手段であるタイマのカウンタをリセットする(S304)。そして、低圧EGR調整弁52の第1目標開度θtrg1を算出する(S306)。この第1目標開度θtrg1は、EGR用スプリング52cの弾性係数や電動アクチュエータ55の出力トルク等に基づいて第1開度範囲(θ0<θ<θA)内に設定される。なお、故障検出処理における第1開度範囲には、低圧EGR調整弁52の最小開度θ0を除外している。
ここで、低圧EGR調整弁52の開度が第1開度範囲(θ0<θ<θA)であれば、図6に示すように、低圧EGR調整弁52のシャフト52aにはEGR用スプリング52cの戻り力(復元力)のみが作用するので、絞り用スプリング54bの故障の有無に関わらずEGR用スプリング52cの故障を検出可能となる。
次に、低圧EGR調整弁52の開度θが第1目標開度θtrg1となるようにフィードバック制御を行う(S308)。フィードバック制御の開始後、低圧EGR調整弁52の実開度θactをEGR開度センサ52bにて検出し、当該実開度θactと第1目標開度θtrg1との開度偏差θdel(=θtrg1−θact)を算出する(S310)。
そして、S310にて算出した開度偏差θdelの絶対値が予め設定された基準偏差θdeloよりも小さいか否か(|θdel|<θdelo?)を判定する(S312)。なお、基準偏差θdeloは、低圧EGR調整弁52の実開度θactが少なくとも基準開度θAを超えないように設定されている。
この判定処理にて、開度偏差θdelの絶対値が基準偏差θdeloより小さくない(開度偏差θdelの絶対値が基準偏差θdelo以上)と判定された場合(S312:NO)には、S308に戻りフィードバック制御を継続する。
一方、S312の判定処理にて、開度偏差θdelが基準偏差θdeloより小さいと判定された場合(S312:YES)には、低圧EGR調整弁52の開度を所定時間保持し(S314)、所定時間保持した後に電動アクチュエータ55への通電を停止する(S316)。
図8(b)に進み、電動アクチュエータ55の通電停止後における低圧EGR調整弁52の実開度θactをEGR開度センサ52bにて検出し、EGR開度センサ52bの検出値である実開度θactが第1閾値開度θth1以下であるか否か(θact≦θth1?)を判定する(S318)。なお、第1閾値開度θth1は、図6に示すように、第1目標開度θtrg1よりも小さい開度(例えば、最小開度θ0付近の開度)に設定されている。
S318の判定処理の結果、低圧EGR調整弁52の実開度θactが、第1閾値開度θth1以下であると判定された場合(S318:YES)には、後述するEGR閾値時間Tegrmx以内(第1基準時間以内)に、低圧EGR調整弁52の開度が第1閾値開度θth1以内に収束していることとなる。この場合、EGR用スプリング52cが正常であると判断できるので、EGR用スプリング52cの故障の有無を示すEGR故障判定フラグ(XDGEGRSP)をオフ(正常)に設定する(S320)。
一方、S318の判定処理の結果、低圧EGR調整弁52の実開度θactが第1閾値開度θth1以下でない(実開度θactが第1閾値開度θth1より大きい)と判定された場合(S318:NO)には、タイマのカウンタが所定のEGR閾値時間Tegrmxより大きいか否かを判定する(S322)。換言すれば、電動アクチュエータ55への通電停止からの経過時間がEGR閾値時間Tegrmxを経過したか否かを判定する。
ここで、EGR閾値時間Tegrmxには、EGR用スプリング52cが正常である場合において、低圧EGR調整弁52の開度が第1閾値開度θth1から最小開度θ0となるまでに必要となる時間より長い時間が設定されている。なお、EGR閾値時間Tegrmxが本発明の第1基準時間に相当している。
S322の判定処理の結果、タイマのカウンタがEGR閾値時間Tegrmx以内と判定された場合(S322:NO)には、タイマのカウンタをカウントアップして(S324)、S318の判定処理に戻る。
一方、S322の判定処理の結果、タイマのカウンタがEGR閾値時間Tegrmxより長いと判定された場合(S322:YES)には、電動アクチュエータ55の通電停止からEGR閾値時間Tegrmxを経過しても実開度θactが第1閾値開度θth1より大きいこととなる。この場合、EGR用スプリング52cが故障していると判断できるので、EGR故障判定フラグ(XDGEGRSP)をオン(故障)に設定する(S326)。
そして、S320の処理又はS326の処理にて、EGR故障判定フラグ(XDGEGRSP)が設定されると、EGR用スプリング52cの故障判定の完了を示すEGR故障判定完了フラグ(XDIAGEGR)をオン(完了)に設定して(S328)、EGR用スプリング52cの故障判定処理(S30)を終了する。
ここで、上述したEGR用スプリング52cの故障判定時の作動を図9に示すタイミングチャートを用いて説明する。なお、図9中の太実線が、EGR用スプリング52cが故障している場合の作動を示し、図9中の一点鎖線が、EGR用スプリング52cが正常である場合の作動を示している。
先ず、IGSWがオフされ(時間t1)、所定時間経過後にエンジン1が停止するとエンジン停止フラグがオンされる(時間t2)。エンジン停止フラグのオンに伴い、図8(a)におけるS308の処理によって、低圧EGR調整弁52の開度θが第1目標開度θtrg1(θ0<θtrg1<θA)となるように電動アクチュエータ55のモータ電流が制御(フィードバック制御)される。
そして、低圧EGR調整弁52の開度θと第1目標開度θtrg1の開度偏差θdelが所定の基準偏差θdelo内に収束した後、所定時間(時間t3〜時間t4)経過後に、図8(a)のS316の処理によって、電動アクチュエータ55への通電が停止される(電動アクチュエータ55へのモータ電流の供給が停止される)。なお、電動アクチュエータ55への通電停止からの経過時間は、タイマのカウンタにてカウントされる。
ここで、EGR用スプリング52cが正常であれば、電動アクチュエータ55への通電が停止されると、EGR用スプリング52cの戻り力(復元力)によって低圧EGR調整弁52の開度θが小さくなる。そして、低圧EGR調整弁52の開度θは、EGR閾値時間Tegrmx(時間t4〜時間t6)以内に、最小開度θ0付近に設定された第1閾値開度θth1以内の開度に収束する(図9の低圧EGR調整弁52の開度を示す一点鎖線参照)。
低圧EGR調整弁52の開度がEGR閾値時間Tegrmx以内に第1閾値開度θth1以内の開度に収束する場合には、EGR用スプリング52cが正常な状態であると判断できるので、EGR故障判定フラグ(XDGEGRSP)がオフ(正常)のまま、EGR故障判定完了フラグ(XDIAGEGR)がオン(完了)される(時間t5)。その後、電動アクチュエータ55への通電により低圧EGR調整弁52の開度が最小開度θ0となるようにフィードバック制御が行われる。
一方、EGR用スプリング52cが折損等によって故障している場合には、EGR用スプリング52cの戻り力が低圧EGR調整弁52のシャフト52aに作用せず、低圧EGR調整弁52の開度θが電動アクチュエータ55への通電停止前と同様の開度を維持し続ける(図9の低圧EGR調整弁52の開度を示す太実線参照)。この場合、電動アクチュエータ55への通電が停止されてからの経過時間が第1閾値時間Tth1を越えても、低圧EGR調整弁52の開度が第1閾値開度θth1に収束しない(図9の低圧EGR調整弁52の開度を示す太実線参照)。
低圧EGR調整弁52の開度がEGR閾値時間Tegrmx以内に第1閾値開度θth1以内の開度に収束しない場合には、EGR用スプリング52cが折損等によって故障している状態であると判断できるので、EGR故障判定フラグ(XDGEGRSP)がオン(故障)されると共に、EGR故障検出完了フラグ(XDIAGEGR)がオン(完了)される(時間t6)。その後、電動アクチュエータ55への通電により低圧EGR調整弁52の開度が最小開度θ0となるようにフィードバック制御が行われる。
このように、本実施形態のEGR用スプリング52cの故障判定処理では、絞り用スプリング54bの故障の有無に関わらず、電動アクチュエータ55の通電を停止してから第1閾値開度θth1となるまでの所要時間に基づいて、EGR用スプリング52cが故障しているか否かを判定することができる。
次に、EGR用スプリング52cの故障判定処理後に行われる絞り用スプリング54bの故障判定処理(S40)について、図10(a)、図10(b)、および図11、図12に基づいて説明する。図10(a)は、絞り用スプリング54bの故障判定処理の前半を示すフローチャートであり、図10(b)は、絞り用スプリング54bの故障判定処理の後半を示すフローチャートである。また、図11は、EGR用スプリング52cが正常である場合における絞り用スプリング54bの故障判定時の作動を示すタイミングチャートであり、図12は、EGR用スプリング52cが故障している場合における絞り用スプリング54bの故障判定時の作動を示すタイミングチャートである。
図10(a)に示すように、絞り用スプリング54bの故障判定処理(S40)では、先ず、絞り用スプリング54bの故障判定処理が未完了であるか否かを判定する(S402)。この判定処理は、エンジン停止中に絞り用スプリング54bの故障判定処理が繰り返し行われることを禁止するための処理である。なお、絞り用スプリング54bの故障判定処理が未完了であるか否かの判定は、絞り用スプリング54bの故障判定処理の完了時にオンされる絞り絞り故障判定完了フラグ(XDIAGTH)を参照して行う。なお、絞り故障判定完了フラグは後述するS434の判定処理にてオンされる。
S402の判定処理にて、絞り用スプリング54bの故障判定処理が完了している(故障判定処理が未完了でない)と判定された場合(S402:NO)には、絞り用スプリング54bの故障判定処理を終了する(図10(b)参照)。
一方、S402の判定処理にて、絞り用スプリング54bの故障判定処理が未完了と判定された場合(S402:YES)には、タイマのカウンタをリセットする(S404)。そして、低圧EGR調整弁52の第2目標開度θtrg2を算出する(S406)。この第2目標開度θtrg2は、EGR用スプリング52cおよび絞り用スプリング54bの弾性係数や電動アクチュエータ55の出力トルク等に基づいて第2開度範囲(θA<θ<θmax)内に設定される。なお、故障検出処理における第2開度範囲には、低圧EGR調整弁52の基準開度θAを除外している。
ここで、低圧EGR調整弁52の開度θが第2開度範囲(θA<θ<θmax)であれば、図6に示すように、低圧EGR調整弁52のシャフト52aにはEGR用スプリング52cの戻り力(復元力)に加えて絞り用スプリング54bの戻り力(復元力)が作用する。
次に、低圧EGR調整弁52の開度θが第2目標開度θtrg2となるようにフィードバック制御を行う(S408)。フィードバック制御の開始後、低圧EGR調整弁52の実開度θactをEGR開度センサ52bにて検出し、当該実開度θactと第2目標開度θtrg2との開度偏差θdel(=θtrg2−θact)を算出する(S410)。
そして、S410にて算出した開度偏差θdelの絶対値が予め設定された基準偏差θdeloよりも小さいか否か(|θdel|<θdelo?)を判定する(S412)。なお、基準偏差θdeloは、低圧EGR調整弁52の実開度θactが少なくとも基準開度θAを下回らないように設定される。
この判定処理にて、開度偏差θdelの絶対値が基準偏差θdeloより小さくない(開度偏差θdelの絶対値が基準偏差θdelo以上)と判定された場合(S412:NO)には、S408に戻りフィードバック制御を継続する。
一方、S412の判定処理にて、開度偏差θdelが基準偏差θdeloより小さいと判定された場合(S412:YES)には、低圧EGR調整弁52の開度を所定時間保持し(S414)、所定時間保持した後に電動アクチュエータ55への通電を停止する(S416)。
図10(b)に進み、EGR故障判定フラグ(XDGEGRSP)がオフに設定されているか否か、すなわち、EGR用スプリング52cが正常と判定されているか否かを判定する(S418)。
ここで、EGR用スプリング52cが故障している場合と、故障していない場合(正常である場合)とでは、低圧EGR調整弁52のシャフト52aに作用する戻り力が異なる。つまり、EGR用スプリング52cが故障している場合、低圧EGR調整弁52のシャフト52aには、絞り用スプリング52cの戻り力(復元力)のみが作用するが、故障していない場合、低圧EGR調整弁52のシャフト52aには、EGR用スプリング52cおよび絞り用スプリング54bそれぞれの戻り力(復元力)が作用する。
このため、EGR用スプリング52cが故障していない場合には、EGR用スプリング52cが故障している場合に比べて、電動アクチュエータ55への通電を停止してから正常時の開度に復帰するまでの所要時間が長くなる。
そこで、S418の判定処理の結果、EGR故障判定フラグがオフに設定されていると判定された場合(S418:YES)には、タイマのカウンタの絞り閾値時間Tthmxに第1絞り閾値時間Tthmx1を設定し(S420)、EGR故障判定フラグがオンに設定されていると判定された場合(S418:NO)には、絞り閾値時間Tthmxに第1絞り閾値時間Tthmx1よりも長い時間が設定された第2絞り閾値時間Tthmx2を設定する(S422)。
ここで、第1絞り閾値時間Tthmx1には、EGR用スプリング52cおよび絞り用スプリング54bそれぞれが正常である場合において、低圧EGR調整弁52の開度が第2閾値開度θth2から最小開度θ0となるまでに必要となる時間の最大時間が設定されている。また、第2絞り閾値時間Tthmx2には、EGR用スプリング52cが故障し、絞り用スプリング54bが正常である場合において、低圧EGR調整弁52の開度が第2閾値開度θth2から最小開度θ0となるまでに必要となる時間よりも長い時間が設定されている。
なお、本実施形態の絞り閾値時間Tthmxが本発明の第2基準時間に相当している。そして、第1絞り閾値時間Tthmx1が本発明の通常基準時間に相当し、第2絞り閾値時間Thmx2が本発明の延長基準時間に相当している。また、S418、S420、およびS422における処理は、制御装置100にて行われる処理であるため、本実施形態の制御装置100が本発明の第2基準時間設定手段を構成している。
次に、電動アクチュエータ55の通電停止後における低圧EGR調整弁52の実開度θactをEGR開度センサ52bにて検出し、EGR開度センサ52bの検出値である実開度θactが第2閾値開度θth2以下であるか否か(θact≦θth2?)を判定する(S424)。なお、第2閾値開度θth2は、図6に示すように、基準開度θAより大きく、かつ、第2目標開度θtrg2よりも小さい開度(例えば、基準開度θA付近の開度)に設定されている。
S424の判定処理の結果、低圧EGR調整弁52の実開度θactが第2閾値開度θth2以下であると判定された場合(S424:YES)には、絞り閾値時間Tthmx以内(第2基準時間以内)に、低圧EGR調整弁52の開度が第1閾値開度θth1以内になる。この場合、絞り用スプリング54bが正常であると判断できるので、絞り用スプリング54bの故障の有無を示す絞り故障判定フラグ(XDGTHSP)をオフ(正常)に設定する(S426)。
一方、S424の判定処理の結果、低圧EGR調整弁52の実開度θactが第2閾値開度θth2以下でない(実開度θactが第2閾値開度θth2より大きい)と判定された場合(S424:NO)には、タイマのカウンタがS420又はS422のいずれかで設定された絞り閾値時間Tthmxより大きいか否かを判定する(S428)。換言すれば、電動アクチュエータ55への通電停止からの経過時間が絞り閾値時間Tthmxを経過したか否かを判定する。
S428の判定処理の結果、タイマのカウンタが絞り閾値時間Tthmx以内と判定された場合(S428:NO)には、タイマのカウンタをカウントアップして(S430)、S428の判定処理に戻る。
一方、S428の判定処理の結果、タイマのカウンタが絞り閾値時間Tthmxより長いと判定された場合(S428:YES)には、電動アクチュエータ55の通電停止から絞り閾値時間Tthmxを経過しても実開度θactが第1閾値開度θth1より大きいこととなる。この場合、絞り用スプリング54bが故障していると判断できるので、絞り用スプリング54bの故障の有無を示す絞り故障判定フラグ(XDGTHSP)をオン(故障)に設定する(S432)。
そして、S426の処理又はS432の処理にて、絞り故障判定フラグ(XDGTHSP)が設定されると、絞り用スプリング54bの故障判定の完了を示す絞り故障判定完了フラグ(XDIAGTH)をオン(完了)に設定して(S434)、絞り用スプリング54bの故障検出処理を終了する。
ここで、上述した絞り用スプリング54bの故障判定時の作動を図11、図12に示すタイミングチャートを用いて説明する。なお、図11、図12中の太実線が、絞り用スプリング54bが故障している場合の作動を示し、図11、図12中の一点鎖線が、絞り用スプリング54bが正常である場合の作動を示している。
先ず、EGR用スプリング52cの故障判定処理(S30)にてEGR用スプリング52cが故障していないと判定された場合における絞り用スプリング54bの故障判定について図11に基づいて説明する。
EGR用スプリング52cの故障判定処理(S30)の終了後(低圧EGR調整弁52の開度θが最小開度θ0にフィードバック制御がされた後)、図10(a)におけるS408の処理によって、低圧EGR調整弁52の開度θが第2目標開度θtrg2(θA<θtrg2<θmax)となるように電動アクチュエータ55のモータ電流が制御(フィードバック制御)される(時間t7)。
そして、低圧EGR調整弁52の開度θと第2目標開度θtrg2の開度偏差θdelが所定の基準偏差θdelo内に収束した後、所定時間(時間t8〜時間t9)経過後に、図10(a)のS416の処理によって、電動アクチュエータ55への通電が停止される(電動アクチュエータ55へのモータ電流の供給が停止される)。なお、電動アクチュエータ55への通電停止からの経過時間は、タイマのカウンタにてカウントされる。
ここで、絞り用スプリング54bが正常である場合には、電動アクチュエータ55への通電が停止されると、EGR用スプリング52cおよび絞り用スプリング54bそれぞれの戻り力(復元力)によって低圧EGR調整弁52の開度θが小さくなるように作用する。そして、低圧EGR調整弁52の開度θは、絞り閾値時間Tthmx(第1絞り閾値時間Tthmx1)以内に、基準開度θA付近に設定された第2閾値開度θth2以内の開度に収束する(図11の低圧EGR調整弁52の開度を示す一点鎖線参照)。
低圧EGR調整弁52の開度が、第1絞り閾値時間Tthmx1(時間t9〜t11)以内に第2閾値開度θth2以内の開度になる場合には、絞り用スプリング54bが正常な状態であると判断できるので、絞り故障判定フラグ(XDGEGRSP)がオフ(正常)のまま、絞り故障検出完了フラグ(XDIAGEGR)がオン(完了)される(時間t10)。その後、電動アクチュエータ55への通電により低圧EGR調整弁52の開度が最小開度θ0となるようにフィードバック制御が行われる。
一方、絞り用スプリング54bが折損等によって故障している場合には、EGR用スプリング52cの戻り力が低圧EGR調整弁52のシャフト52aに作用するものの、絞り用スプリング54bの戻り力が低圧EGR調整弁52のシャフト52aに作用しない。このため、低圧EGR調整弁52の開度θが第2閾値開度θth2以内の開度になるまでの所要時間が長くなるので、低圧EGR調整弁52の開度が第1絞り閾値時間Tthmx1(時間t9〜t11)以内に第2閾値開度θth2以内の開度に収束しない(図11の低圧EGR調整弁52の開度を示す一点鎖線参照)。
低圧EGR調整弁52の開度が第1絞り閾値時間Tthmx1以内に第2閾値開度θth2以内の開度に収束しない場合には、絞り用スプリング54bに折損等の故障が生じている状態であると判断できるので、絞り故障判定フラグ(XDGTHSP)がオン(故障)されると共に、故障検出完了フラグ(XDIAGTH)がオン(完了)される(時間t11)。その後、電動アクチュエータ55への通電により低圧EGR調整弁52の開度が最小開度θ0となるようにフィードバック制御が行われる。
次に、絞り用スプリングの故障判定処理(S30)にてEGR用スプリング52cが故障であると判定された場合における絞り用スプリング54bの故障判定について図12に基づいて説明する。なお、絞り用スプリング54bの故障判定における時間t7〜時間t8までの作動については、EGR用スプリング52cの故障の有無に関わらず、同一の作動となるため、時間t7〜時間t8までの作動の説明を省略する。
低圧EGR調整弁52の開度θと第2目標開度θtrg2の開度偏差θdelが所定の基準偏差θdelo内に収束した後、所定時間(時間t8〜時間t9)経過後に、電動アクチュエータ55への通電が停止される。
ここで、絞り用スプリング54bが正常である場合には、電動アクチュエータ55への通電が停止されると、絞り用スプリング54bの戻り力(復元力)によって低圧EGR調整弁52の開度θが小さくなるように作用する。この場合、低圧EGR調整弁52の開度θは、第2絞り閾値時間Tthmx2(時間t9〜t13)以内に基準開度θA付近に設定された第2閾値開度θth2以内の開度になる(図12の低圧EGR調整弁52の開度を示す一点鎖線参照)。
低圧EGR調整弁52の開度が第2絞り閾値時間Tthmx2以内に第2閾値開度θth2以内の開度になる場合には、絞り用スプリング54bが正常な状態であると判断できるので、故障判定フラグ(XDGEGRSP)がオフ(正常)のまま、故障検出完了フラグ(XDIAGTH)がオン(完了)される(時間t12)。その後、電動アクチュエータ55への通電により低圧EGR調整弁52の開度が最小開度θ0となるようにフィードバック制御が行われる。
一方、絞り用スプリング54bが折損等によって故障している場合には、EGR用スプリング52cおよび絞り用スプリング54bそれぞれの戻り力が低圧EGR調整弁52のシャフト52aに作用しない。このため、低圧EGR調整弁52の開度θが第2絞り閾値時間Tthmx2(時間t8〜t13)以内に第2閾値開度θth2以内の開度にならない(図12の低圧EGR調整弁52の開度を示す太実線参照)。
低圧EGR調整弁52の開度が第2絞り閾値時間Tthmx2以内に第2閾値開度θth2以内の開度に収束しない場合には、絞り用スプリング54bに折損等の故障が生じている状態であると判断できるので、絞り故障判定フラグ(XDGTHSP)がオン(故障)されると共に、絞り故障検出完了フラグ(XDIAGTH)がオン(完了)される(時間t13)。その後、電動アクチュエータ55への通電により低圧EGR調整弁52の開度が最小開度θ0となるようにフィードバック制御が行われる。
このように、本実施形態の絞り用スプリング54bの故障判定処理では、電動アクチュエータ55の通電を停止してから第2閾値開度θth2となるまでの所要時間に基づいて、絞り用スプリング54bが故障しているか否かを判定することができる。
なお、低圧EGR調整弁52の故障検出処理において、EGR用スプリング52cの故障判定処理にてEGR用スプリング52cが故障していると判定された場合や絞り用スプリング54bの故障判定処理にて絞り用スプリング54bが故障していると判定された場合には、車両の計器盤に設けられた警告灯を点灯する等の異常発生を報知する。
以上説明した本実施形態の故障検出処理では、EGR用スプリング52cの故障判定処理において、低圧EGR調整弁52の開度を基準開度θAよりも小さい開度とした後に、電動アクチュエータ55への通電を停止してから第1閾値開度θth1となるまでの所要時間に基づいて、EGR用スプリング52cが故障しているか否かを判定することで、絞り用スプリング54bの故障の有無に関わらず、EGR用スプリング52cの故障を特定することができる。
そして、絞り用スプリング54bの故障判定処理において、低圧EGR調整弁52の開度を基準開度θAよりも大きい開度とした後に、電動アクチュエータ55への通電を停止してから第2閾値開度θth2となるまでの所要時間に基づいて、絞り用スプリング54bが故障しているか否かを判定することで、絞り用スプリング54bの故障を特定することができる。
従って、本実施形態の故障検出処理によれば、EGR用スプリング52cおよび絞り用スプリング54bの一方が故障している場合であっても、EGR用スプリング52cおよび絞り用スプリング54bの何れが故障しているのかを特定することができる。
また、絞り用スプリング54bの故障判定処理において、EGR用スプリング52cが故障している場合には、故障していない場合に比べて、電動アクチュエータ55の通電を停止から第2閾値開度θth2となるまでの所要時間を長くしている。これにより、EGR用スプリング52cが故障している場合であっても、絞り用スプリング54bの故障判定を行うことができる。すなわち、EGR用スプリング52cおよび絞り用スプリング54bの両方が故障していることを検出することが可能となる。このため、故障検出処理(EGR用スプリング52cの故障判定処理および絞り用スプリング54bの故障判定処理)をより適切に行うことができる。
さらに、本実施形態では、低圧EGR調整弁52の開度を検出する低圧EGR開度センサ52bによって吸気絞り弁54の絞り用スプリング54bの故障判定を行なうことができるので、吸気絞り弁54の開度を検出する専用の開度センサを不要にでき、低圧EGRユニット5のコストを低く抑えることができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
(1)上記実施形態では、低圧EGRユニット5においてEGR流量を増大させるための絞り弁として吸気絞り弁54を用いる構成を例示したが、絞り弁としては、例えば、排気通路3における排気通路3と低圧EGR通路51との合流部より排気下流側の開度を可変可能な排気絞り弁を用いる構成としてもよい。なお、排気絞り弁は、EGR流量の増加を行なう際に排気通路3を絞るための絞り弁である。
(2)上記実施形態では、EGR用スプリング52cの故障判定処理の結果に基づいて、絞り用スプリング54bの故障判定時の絞り閾値時間に第1絞り閾値時間および第2絞り閾値時間のいずれかを設定するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、EGR用スプリング52cの故障と絞り用スプリング54bの故障とが同時に発生する確率が非常に低いと判断できる場合には、絞り用スプリング54bの故障判定時の絞り閾値時間として第1絞り閾値時間を予め設定する構成としてもよい。なお、この場合には、絞り用スプリング54bの故障判定処理を行った後にEGR用スプリング52cの故障判定処理を行ってもよい。
(3)上記実施形態では、動力伝達機構として、カム溝57aが設けられたカムプレート57と、従動ピン58aが設けられた従動アーム58とを有するリンク機構を用いた例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、カム山が設けられたカムプレートと従動アームとを有するリンク機構にて動力伝達機構を構成してもよい。
(4)上記実施形態では、ディーゼルエンジンの吸排気システムに本発明を適用する例を説明したが、ディーゼルエンジンに限らず、ガソリンエンジン等の吸排気システムに本発明を適用してもよい。