JP5434004B2 - 電磁駆動型アクチュエータ及び電磁駆動型アクチュエータの製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、一方で、バルクの永久磁石を含んだデバイスを小型化するのが難しく、また、磁界発生部の製作にMEMS技術が適用されない為、個々のデバイス毎に組立てと調整とを行う必要がある。
また、非特許文献1でシリコンヒンジ(シリコントーションバーヒンジ)を用いるものにおいては、SOI(Silicon On Insulator)ウェーハが使用されている。SOIウェーハは、MEMS技術において一般的に用いられており、精密な加工を施す為に有効な材料であるが、高価である為、電磁駆動型アクチュエータの実用化の妨げとなる。
しかし、永久磁石の薄膜の磁気特性が不十分で、必要な可動子の変位が得られなかったり、永久磁石の薄膜を微細加工する為のMEMS技術が確立されていないなどの課題が多く、首尾一貫したMEMS技術で製作されるムービングマグネット型の電磁駆動型アクチュエータは、未だ実用化に至っていない状況にある。
また、非特許文献2においてもSOIウェーハが使用されているが、上述した通り、高価であり、電磁駆動型アクチュエータの実用化を妨げる一因となる。
「社団法人 日本応用磁気学会 第142回研究会資料」7〜12頁 「社団法人 電気学会 マグネティックス研究会資料,MAG-02-12(2002)」17〜21頁
また、従来技術によるMEMS技術を用いた電磁駆動型アクチュエータの製造においては、基板として高価なSOIウェーハが用いられている為、これも実用化の障害となっている。
第5発明では、可動子の大変位が可能な安価なムービングマグネット型の電磁駆動型アクチュエータの製造方法を提供することを目的とする。
また、SOIウェーハを使用しないので、上記の電磁駆動型アクチュエータを安価にして提供することができる。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る電磁駆動型アクチュエータの実施の形態1の構成を模式的に示す上面図(a)及び側縦断面図(b)である。
この電磁駆動型アクチュエータは、直方体形状の固定部2と、固定部2の上面部に連結され水平方向へ突き出した可撓性の片持ち式の梁(支持部)3と、梁3の先端部に連結され方形平板形状である可動子1と、可動子1の上面全体に形成された薄膜永久磁石4と、可動子1の下方に配置されたコイル5とを備えている。コイル5は、その端部形状が可動子1より大きい角筒形状に巻回されており、上から見た場合に、コイル5は、可動子1がその端部の中央部に位置するように配置されている。
固定部2及びコイル5は、図示しない回路基板等に固定され、コイル5は、回路基板等に設けられた制御回路により電流を流され、流れる電流に応じた磁界を薄膜永久磁石4の周囲に発生させる。可動子1は、コイル5が発生させた磁界と薄膜永久磁石4の静磁界との反発力又は吸引力に応じて変位する。
この薄膜永久磁石4は、例えば、真空蒸着、レーザアブレーション、スパッタ法等の物理的方法、又はメッキ等の化学的方法など、任意の方法で形成することができる。
しかし、可動子1と梁3をシリコンで構成する場合は、精密な加工面を確保する為、基板としてSOIウェーハを用いなければならず、デバイスの製造コストの上昇を招く。また、可動子1と梁3を金属又は酸化シリコンで構成する場合、薄膜永久磁石を形成する際に強い応力が発生して、高精度デバイスを得ることが困難になる。更に、これらの材料は、大きな変形を繰返し加えた場合の機械的強度の信頼性が劣っている。
更に好ましい実施の形態では、可動子1及び梁3が薄膜形成手段により薄膜構造材料で形成される。このような構成とすることで、可動子1及び梁3の形成に、フォトリソグラフィを含むMEMS技術を適用することが可能となり、低コストで精密な加工を施すことが可能になる。
図2は、本発明に係る電磁駆動型アクチュエータの実施の形態2の構成を模式的に示す上面図(a)及び側縦断面図(b)である。
この電磁駆動型アクチュエータは、可動子1aが、四角形の平板であり、その上面に薄膜永久磁石4が略全面に亘って形成されている。固定部2aは、可動子1aを囲繞する方形枠体である。4つの片持ち式の梁(支持部)3a,3b,3c,3dと4つのコイル5a,5b,5c,5dとを備えており、4つの梁3a,3b,3c,3dは、可動子1aの四隅を固定部2aにそれぞれ連結して支持している。尚、本実施の形態2では、薄膜永久磁石4は、可動子1aの上面に略全面に亘って形成されているが、可動子1aの下面又は両面に形成されていても良く、また、必ずしも略全面に形成されている必要はなく、部分的に形成されていても良い。
コイル5a,5b,5c,5dは、それぞれ角筒形状に巻回されており、可動子1aの下方で可動子1aの四隅にそれぞれ対向するように配設されている。
固定部2a及びコイル5a,5b,5c,5dは、図示しない回路基板等に固定され、コイル5a,5b,5c,5dは、回路基板等に設けられた制御回路によりそれぞれ個別に電流を流され、それぞれに流れる電流に応じた磁界を薄膜永久磁石4の周囲に発生させる。可動子1aは、コイル5a,5b,5c,5dがそれぞれ発生させた磁界と薄膜永久磁石4の静磁界との反発力及び吸引力に応じて、様々な方向に変位する。その他の構成及び動作については、上記実施の形態1で説明した内容と同様であるので、説明を省略する。
この電磁駆動型アクチュエータの製造方法では、先ず、単結晶シリコンウェーハ11(図4)の両面に、減圧化学気相成長法(LPCVD)によりシリコン窒化膜12を厚さ3μm堆積させる(P1)。
次に、永久磁石薄膜を、メタルマスクで可動子以外の部分を覆った状態で、ターゲットとなる物質をスパッタリングすることにより、可動子に形成する(P9)。ここでは、Nd2 Fe14BとTaとを交互に堆積させた多層構造を有する永久磁石薄膜を厚さ3μm形成する。
次に、フォトリソグラフィ、エッチング及び蒸着等のMEMS技術により、薄膜平面コイルを作製し(P15)、作製した薄膜平面コイル、固定部、可動子及び梁を一体化し(P17)、ムービングマグネット型の電磁駆動型アクチュエータを完成させる。
(比較例1)
比較例1では、先ず、表面シリコン層の厚さが5μmのSOI(Silicon On Insulator)基板を用意し、湿潤酸素中で1000℃に加熱し、基板の両面にシリコン酸化膜を形成した。次に、SOI側の表面に貫通加工される部分が開口するように、フォトリソグラフィにより図5に示すレジストパターンを形成した。裏面を保護膜で覆った後、この基板を、115℃に加熱した水酸化カリウムの30%水溶液に浸し、SOI層の開口部のシリコンを異方性エッチングにより除去した。
薄膜永久磁石は、メタルマスクで可動子以外の部分を覆った状態で、ターゲットとなる物質をスパッタリングすることにより形成した。本比較例1では、Nd2 Fe14BとTaとを交互に堆積させた多層構造を有する薄膜永久磁石を、図3で説明した電磁駆動型アクチュエータの製造方法と同じ条件で厚さ3μm形成した。
しかし、アクチュエータの耐久性を確認する為、コイルに最大0.5Aの正弦波電流を与えたところ、約700回の上下の揺動を繰返した後、梁の部分が損傷した。
比較例2では、単結晶シリコンウェーハの両面に、減圧化学気相成長法(LPCVD)によりシリコン酸化膜を厚さ3μm堆積させた。以下、図3で説明した電磁駆動型アクチュエータの製造方法と同様の工程に従って、シリコン酸化膜からなる可動子及び梁の一体構造を形成した。得られた構造体は、シリコン酸化膜の内部に残留した応力により、取除いたシリコンウェーハ部分に対して大きく凸状に湾曲したものであった。この湾曲が発生した為、メタルマスクと構造体との位置合せができず、メタルマスク法により永久磁石薄膜を可動子部分へ選択的に形成することができなかった。
2,2a,2b 固定部
3,3a,3b,3c,3d,3e 梁(支持部)
4 薄膜永久磁石
5,5a,5b,5c,5d コイル
11 単結晶シリコンウェーハ
12 シリコン窒化膜
13 銅のスパッタ膜
14 フォトレジスト
Claims (5)
- 固定部と、可動子と、該可動子を固定部に連結して支持する1又は複数の可撓性の支持部と、前記可動子に形成された永久磁石と、該永久磁石の周囲に磁界を発生させるコイルとを備え、該コイルが発生させた磁界により前記可動子を変位させる電磁駆動型アクチュエータにおいて、
前記可動子及び支持部は、シリコン窒化膜により一体形成されており、前記永久磁石は、RE2 Fe14BとMとを交互に堆積させた多層膜構造を有する膜状の永久磁石であることを特徴とする電磁駆動型アクチュエータ。
但し、
REは希土類金属元素の何れか1つ、
MはTa,Ti,Nb,Zr及びMoの内の少なくとも1つ。 - 前記コイルを複数備え、複数の該コイルが発生させた各磁界に応じて前記可動子を多自由度で変位させるように構成してある請求項1記載の電磁駆動型アクチュエータ。
- 前記可動子は、四角形の平板状をなし、前記永久磁石が片面又は両面の一部若しくは全部に形成されており、前記固定部は、前記可動子を囲繞する枠状をなしており、前記支持部及びコイルをそれぞれ4つ備え、4つの支持部は、前記可動子の四隅を前記固定部にそれぞれ連結して支持し、4つのコイルは、前記可動子の四隅にそれぞれ対向するように配設されている請求項2記載の電磁駆動型アクチュエータ。
- 前記コイルは、膜状の平面コイルで形成してある請求項1乃至3の何れか1つに記載の電磁駆動型アクチュエータ。
- 請求項1に記載された電磁駆動型アクチュエータの製造方法であって、
半導体基板の両面にシリコン窒化膜を堆積させる工程と、該工程で堆積させた一方のシリコン窒化膜の表面に可動子及び支持部を形成する為のレジストパターンを、他方のシリコン窒化膜の表面に固定部を形成する為のレジストパターンをそれぞれ形成する工程と、該工程でレジストパターンを形成した部分以外のシリコン窒化膜を除去する工程と、前記固定部をなす部分以外の半導体基板を貫通加工により除去する工程と、前記可動子部分のシリコン窒化膜にRE2 Fe14BとMとを交互に堆積させて多層膜構造を有する膜状の永久磁石を形成する工程と、前記可動子部分を両面側又は片面側から非磁性部材で拘束する状態で、前記永久磁石に一方向の磁界を加えて着磁させる工程とを備えることを特徴とする電磁駆動型アクチュエータの製造方法。
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