図1は、本発明の実施形態に係る転写装置1の概略構成を示す正面図である。
転写装置(ナノインプリント装置)1は、型(モールド)Mの面(たとえば平面状の下面)Maに形成されている微細な転写パターンを、被成型品(被成型素材)Wの面(たとえば平面状の上面)Waに、面Maを面Waに面接触させて押圧することにより転写する装置である。被成型品Wとしては、情報記録用ディスク(たとえば、DVD−ROM、ハードディスク用の記録媒体)や液晶表示装置のバックライトの導光板等を考えることができる。
転写は、たとえば前述した熱インプリント法でなされるものであり、転写装置1が、図2(a)〜(c)に示されている工程を担当するものである。熱インプリント法の場合、型Mは金属もしくは石英ガラス等で構成されており、被成型品Wは熱可塑性樹脂等で構成されている。
図2(a)において、型Mおよび被成型品Wをヒータ構成部材13によって加熱しておいて、図2(a)で示す矢印の方向に型Mを移動し、図2(b)に示すように型Mで被成型品Wを押圧する。この後、図2(b)で示す矢印の方向に型Mを移動して、型Mを被成型品Wから離すと、図2(c)に示すように被成型品Wに微細な転写パターンが転写される。
また、転写装置1は、ベースフレーム3を備えており、このベースフレーム3には、被成型品保持体5と型保持体7と筒状部材9と減圧手段11とが設けられている。
被成型品保持体5は、被成型品Wを保持するものである。被成型品Wは、矩形な平板状もしくは円形な平板状等の形状に形成されており、被成型品保持体5に保持された状態で、被成型品Wの厚さ方向の一方の面(図1の上面)Waに、型Mの微細な転写パターンが転写されるようになっている。また、被成型品保持体5は、平板状のヒータ構成部材13の上に平板状の被成型素材ベース15を積層して構成されており、被成型素材ベース15の平面状の面(図1で上側の面)が被成型品Wを保持する保持部17を構成している。そして、平面状の保持部17に被成型品Wの厚さ方向の他方の面(図1で下側の面)が接触して、被成型品Wが保持されるようになっている。なお、ヒータ構成部材(温度調整部材)13には、ペルチェ素子等の冷却装置も内蔵されている。
型保持体7は、型Mを保持するものであり、転写をするために被成型品保持体5に対して相対的に接近・離反する方向(図1の上下方向)で移動するようになっている。なお、以下、型保持体7が移動するものとして説明をするが、型保持体7に代えてまたは加えて、被成型品保持体5が図1の上下方向に移動する構成であってもよい。
型保持体7は、被成型品保持体5が被成型品Wを保持する側(図1の上方)で被成型品保持体5から離れて設けられている。また、型保持体7は、被成型品保持体5の側(図1の下側)で型Mを保持するようになっている。型Mは、たとえば、矩形な平板状もしくは円形な平板状等の形状に形成されており、厚さ方向の一方の面(図1では下側の面)Maに微細な転写パターンが形成されている。
また、型保持体7は、平板状のヒータ構成部材19の下に平板状の型ベース21を積層して構成されている。型ベース21は、平板状の上側型ベース21Aと平板状の下側型ベース21Bとを備えて構成されており、平面視において(図1の矢印AR1の方向から見た場合において)は、上側型ベース21Aが下側型ベース21Bよりも大きく、上側型ベース21Aの内側に下側型ベース21Bが位置している。なお、ヒータ構成部材19には、ペルチェ素子等の冷却装置も内蔵されている。
下側型ベース21Bの平面状の面(図1で下側の面)が型Mを保持する保持部23を構成している。そして、平面状の保持部23に型Mの厚さ方向の他方の面(図1で上側の面)が接触して、型Mが型保持体7で保持されるようになっている。
なお、平面視において、上側型ベース21A、被成型素材ベース15、ヒータ構成部材13とはたとえばお互いがほぼ重なっており、型保持体7で型Mを保持し被成型品保持体5で被成型品Wを保持した状態では、型Mと被成型品Wとがたとえばお互いにほぼ重なっている。
筒状部材9は、型保持体7で保持している型Mを囲むようにして、環状の一端部25が型保持体7(上側型ベース21Aの平面状の下面27)に一体的に設けられている。また、型保持体7が図1の下方に移動し型保持体7と被成型品保持体5との間の距離が所定の距離よりも小さくなったときに、被成型品保持体5で保持する被成型品Wを囲むようにして、筒状部材9の環状の他端部29が被成型品保持体5(保持部17)に接触するようになっている。なお、型保持体7と被成型品保持体5との間の距離が前記所定の距離であるときには、型保持体7で保持している型Mと、被成型品保持体5で保持している被成型品Wとはお互いに接触しておらず僅かに離れている(図3(a)参照)。
そして、筒状部材9の他端部29が被成型品保持体5に接触したときに、型保持体7(上側型ベース21A)と被成型品保持体5(被成型素材ベース15)と筒状部材9とが協働して、型保持体7が保持している型Mと被成型品保持体5が保持している被成型品Wとが内側に入る真空成型室(減圧成型室;気密を保つことができる空間)CHが形成されるようになっている(図3参照)。
なお、筒状部材9の他端部29が、被成型品保持体5に一体的に設けられており、筒状部材9の一端部25が、型保持体7の移動に伴い型保持体7に接触・離反する構成であってもよい。
また、筒状部材9は、一端部25と他端部29とをお互いに結ぶ方向(図1の上下方向;型保持体7の移動方向)で弾性を備えている。そして、筒状部材9の他端部29が被成型品保持体5への接触を開始したときから型保持体7が被成型品保持体5にさらに近づいた状態では、型保持体7と被成型品保持体5とが、筒状部材9によってお互いに離れる方向に付勢されている。なお、すでに理解されるように、筒状部材9は、シリンダ等のアクチュエータを用いることなく型保持体7の移動によって、真空成型室CHを形成するようになっている。
減圧手段11は、真空ポンプ31を備えて構成されており、真空ポンプ31は、一部が上側型ベース21Aや被成型素材ベース15に設けられている経路(通路)33を介して、真空成型室CHにつながるようになっている。そして、真空成型室CHが形成され型Mによる被成型品Wへの転写をするときに、真空成型室CHを減圧手段11で大気圧よりも低い圧力まで減圧するようになっている。なお、転写が終了した後に、真空成型室CH内の空気等の気体の圧力を大気圧まで戻すためのリリーフバルブ35が、経路33の途中に設けられている。
また、転写装置1には、転写装置1の全体の動作を制御する制御装置37が設けられており、この制御装置37による制御の下、各ヒータ構成部材13,19の稼動・停止、型保持体7の移動位置決め、真空ポンプ31の稼動・停止、リリーフバルブ35の稼動・停止がなされるようになっている。
また、型保持体7は、たとえば、制御装置37で制御されるサーボモータ等のアクチュエータとボールねじとを用いて、移動位置決めされるようになっている。
筒状部材9はベローズ(たとえば円筒状のベローズ)39を備えて構成されており、ベローズ39の他端部側には、Oリング(たとえば耐熱性Oリング)41が設けられている。そして、型保持体7が被成型品保持体5の側に移動したときに、Oリング41が、被成型品保持体5(被成型素材ベース15の保持部17)と接触するように構成されている。
より詳しく説明すると、ベローズ39の他端部側(図1の下側)には、リング状の部材43が一体的に設けられており、Oリング41が、リング状の部材43の下面に設けられた環状の溝に入り込んで、リング状の部材43に支持されている。なお、Oリング41の一部は、リング状の部材43の下面から下方に突出している。
ベローズ39の一端部側(図1の上側)には、リング状の部材45が一体的に設けられており、このリング状の部材45は、Oリング(たとえば耐熱性Oリング)47をシール部材として型保持体7(上側型ベース21Aの下面27)に一体的に設けられている。
平面視において、たとえば、型保持体7、被成型品保持体5、ベローズ39、各リング状の部材43,45、各Oリング41,47の中心はお互いにほぼ一致している。また、型保持体7で保持されている型M、被成型品保持体5で保持されている被成型品Wは、ベローズ39、各リング状の部材43,45、各Oリング41,47の内側に存在している。
また、転写のために真空成型室CHが形成され減圧手段11によって真空成型室CHが減圧されベローズ39に負の推力(ベローズ39が縮もうとする力)が発生しても、前述したように、ベローズ39(筒状部材9)が被成型品保持体5と型保持体7とに挟まれて圧縮されているので、Oリング41が被成型品保持体5に接触し続けて真空成型室CHが維持されるように構成されている。
なお、図1で示すベローズ39の断面は、三角波状に形成されているが、必ずしもこのように形成されている必要はなく、円弧と直線が繰り返す形状(「U」字が繰り返す形状;図8参照)等の他の形状に形成されていてもよい。
また、転写装置1には、図6に示すように、型保持体7が型Mを真空吸着によって保持するための型用真空吸着手段49が設けられている。すなわち、型保持体7が真空吸着によって型Mを保持するように構成されている。型用真空吸着手段49は、制御装置37の制御の下で稼動・停止する真空ポンプ51を備えて構成されている。真空ポンプ51は、一部が上側型ベース21Aや下側型ベース21Bに設けられている経路53を介して、下側型ベース21Bの平面状の下面23とつながっている。そして、真空ポンプ51を稼動することによって、型保持体7による型Mの真空吸着がなされるようになっている。
また、型用真空吸着手段49による真空吸着を停止するためのリリーフバルブ55が、経路53の途中に設けられている。
さらに、転写装置1には、図6に示すように、被成型品保持体5が被成型品Wを真空吸着によって保持するための被成型品用真空吸着手段57が設けられている。すなわち、被成型品保持体5が真空吸着によって被成型品Wを保持するように構成されている。被成型品用真空吸着手段57は、制御装置37の制御の下で稼動・停止する真空ポンプ(型用真空吸着手段49の真空ポンプ)51を備えて構成されている。真空ポンプ51は、一部が被成型素材ベース15に設けられている経路53を介して、被成型素材ベース15の平面状の保持部17につながっている。そして、真空ポンプ51を稼動することによって、被成型品保持体5による被成型品Wの真空吸着がなされるようになっている。
なお、上記説明では、型用真空吸着手段49と被成型品用真空吸着手段57とが、真空ポンプ51と経路53とリリーフバルブ55とを兼用しているが、型用真空吸着手段49、被成型品用真空吸着手段57のそれぞれが、真空ポンプを備えた構成であってもよい。
ところで、型用真空吸着手段49によって型保持体7が型Mを保持しているときにおける型用真空吸着手段49の圧力が、減圧手段11による真空成型室CHの圧力よりも低くなっているものとする。
具体的には、「型Mの吸引圧力Pa<真空成型室の圧力(経路33の圧力)Pb」になっている。より精確には、型の質量を「m」、型Mと型保持体7の保持部23とがお互いに接触する面積を「a」とし、この面積aの全面の吸引圧力(経路53内の圧力)Paが作用するものとし、重力加速度を「g」とすると、「(Pb−Pa)×a>mg」の関係が成立するようになっている。
同様にして、被成型品用真空吸着手段57によって被成型品保持体5が被成型品Wを保持しているときにおける被成型品用真空吸着手段57の圧力が、減圧手段11による真空成型室CHの圧力よりも低くなっているものとする。
なお、型保持体7が真空吸着によって型Mを保持し、被成型品保持体5が真空吸着によって被成型品Wを保持し、真空成型室CHが形成されて減圧手段11による減圧がなされる場合であって、転写に長時間を要する等の理由で真空成型室CH内の圧力が減圧手段11による圧力Pbよりも低くなるおそれがある場合には、図6に示すように、フィルター59を設け、チェック弁61とで圧力調整手段を構成し、真空成型室CH内の圧力がPbよりも下がらないようにすることが望ましい。
また、転写装置1に増圧手段63を設けてもよい。増圧手段63は、たとえば、空気圧縮ポンプ(図示せず)を備えて構成されており、転写後に被成型品Wから型Mを離すべく型保持体7を被成型品保持体5から離れる方向(図1、図7の上方向)に移動するときに、真空成型室CHの圧力を増すようになっている。なお、増圧手段63として、真空成型室CHの圧力を大気圧に戻すものを採用してもよい。
次に、転写装置1の動作を説明する。
初期状態として、図1に示すように、型Mが型保持体7に真空吸着で保持され、被成型品Wが被成型品保持体5に真空吸着で保持されているものとする。
この状態で、たとえば、転写装置1のスタートのスイッチ(図示せず)が押されると、制御装置37の制御の下、型保持体7が下降し、Oリング41が被成型素材ベース15の平面17に接触し始め、さらに型保持体7が所定の僅かな距離だけ下降し被成型品保持体5に近づく(図3(a)、図7(a)参照)。
このさらに近づけた状態では、Oリング41とベローズ39とが僅かに弾性変形し、型保持体7と被成型品保持体5と筒状部材9とで真空成型室CHが形成されるが、型Mと被成型品Wとはお互いが僅かに離れている。
続いて、各ヒータ構成部材13,19で型Mと被成型品Wとを加熱し、減圧手段11で真空成型室CHの減圧を行い(図3(a)、図7(a)参照)、型保持体7を下降し被成型品保持体5にさらに近づけて、型Mで被成型品Wを押圧し、微細な転写パターンの転写を行う(図3(b)、図7(b)参照)。なお、型Mと被成型品Wとの加熱を、前記初期状態で行なっておいてもよい。
この転写後に、各ヒータ構成部材13,19で型Mと被成型品Wとを冷却し、型Mと被成型品Wとを、型用真空吸着手段49、被成型品用真空吸着手段57で真空吸着したまま、真空成型室CHの圧力を大気圧(必ずしも大気圧でなくてもよく、転写をするときの圧力Pbより高ければ大気圧より低い圧力であってもよいし、さらには、前述したように、増圧手段で大気圧よりも高い圧力に加圧してもよい。)にし(図7(c)参照)、型保持体7を図7(c)の矢印の方向に移動して被成型品保持体5から離し、被成型品用真空吸着手段57で被成型品Wの真空吸着を停止して、転写がなされた被成型品Wを被成型品保持体5から取り外し、転写がなされていない次の被成型品Wと交換して次の被成型品を被成型品用真空吸着手段57で真空吸着し、前記初期状態に戻る。
転写装置1によれば、型保持体7の移動により、型保持体7と被成型品保持体5と筒状部材9とで真空成型室CHが形成されるので、真空成型室CHを形成するために別途アクチュエータを設ける必要が無く、簡素な構成で真空成型室CHを形成し転写を行うことができる。そして、転写の際に被成型品Wに気泡が発生する等の不具合いの発生を防止することができる。
また、型保持体7と被成型品保持体5と筒状部材9とで真空成型室CHが形成されるので、転写の際に型Mや被成型品Wを内部に入れることができる必要最小限の小さな真空成型室CHを容易に形成することができ、真空成型室CHを構成する部材の無駄や真空成型室CHの減圧に要するエネルギーの無駄を極力無くすことができる。
また、転写装置1によれば、減圧手段11によって真空成型室CHが減圧された場合であっても、Oリング41が被成型品保持体5に接触し続けて真空成型室CHが維持されるので、転写の際に被成型品Wに気泡が発生する等の不具合いの発生を確実に防止することができる。
すなわち、型保持体7と被成型品保持体5とがお互いに近づきOリング41が被成型品保持体5に接触し始めたときには、ベローズ39とOリング41とは弾性変形をしていない。このように弾性変形していない状態において、減圧手段11で真空成型室CHの減圧を行うと、大気圧によってベローズ39に発生する負の推力でベローズ39が縮み、Oリング41が被成型品保持体5から離れて真空成型室CHの維持ができなくなってしまうおそれがある。
しかし、型Mが被成型品Wに接触して転写を行うときやこの直前の状態では、Oリング41が被成型品保持体5に接触し始めたときに比べて、型保持体7が被成型品保持体5にさらに近づいており、ベローズ39とOリング41とが、型保持体7と被成型品保持体5とに挟まれて弾性変形してOリング41がつぶれベローズ39に圧縮応力が発生している。
このように圧縮応力が発生していることにより、減圧手段11で真空成型室CHの減圧を行ってベローズ39に負の推力が発生しても、Oリング41が被成型品保持体5から離れることはなく接触し続け、真空成型室CHを維持することができ転写のときに減圧をすることができるようになっている。
また、転写装置1によれば、型用真空吸着手段49によって型保持体7が型Mを保持するように構成されているので、型Mの交換を容易に行うことができ、型用真空吸着手段49によって型保持体7が型Mを保持しているときの圧力が、減圧手段11による真空成型室CHの圧力よりも低いので、転写のときに真空成型室CHを減圧しても型Mが型保持体7から離れることが無い。
同様にして、被成型品用真空吸着手段57によって被成型品保持体5が被成型品Wを保持するように構成されているので、被成型品Wの交換を容易に行うことができ、被成型品用真空吸着手段57によって被成型品保持体5が被成型品Wを保持しているときの圧力が、減圧手段11による真空成型室CHの圧力よりも低いので、転写のときに真空成型室CHを減圧しても被成型品Wが被成型品保持体5から離れることが無い。
また、転写装置1によれば、転写後に被成型品Wから型Mを離すべく型保持体7を被成型品保持体5から離れる方向に移動するときに、真空成型室CHの圧力を大気圧に戻すので、転写のときよりも大きな力で型保持体7が型Mを保持することができ、離型の際に型Mを型保持体7から離す力がかかっても、型Mが型保持体7から離れることを防止することができ、また、被成型品Wが被成型品保持体5から離れることを防止することができる。
なお、上記説明では、型Mや被成型品Wを真空吸着で保持していたが、真空吸着に代えて、ボルト等の締結具を用いて型Mや被成型品Wを保持する構成であってもよい。
また、上記説明では、熱インプリント法で転写をする転写装置1を例に掲げて説明したが、UVインプリント法で転写をする転写装置1a(図4参照)の場合であっても同様に考えることができる。
図4は、UVインプリント法で転写をする転写装置1aの概略構成を示す図である。
転写装置1aは、UV(紫外線)発生装置67を用いて型Mの微細な転写パターンを被成型品W転写する点が、熱インプリント法で転写をする転写装置1とは異なり、その他の点は、転写装置1とほぼ同様に構成されておりほぼ同様の効果を奏する。
転写装置1aでは、UV発生装置67と型保持体7aの中央に紫外線が透過する型ベース69とバックアップガラス65とが設けられている。また、モールド(型)Mは、紫外線を透過する石英ガラス等で構成されている。転写がされる前の被成型品Wは、シリコン等で構成された基材W1の上に硬化前の紫外線硬化樹脂W2の薄膜を設けた構成である。
ここで、UVインプリント法による転写について図5を用いて説明する。
図5(a)で示す矢印の方向に型Mを移動し、図5(b)に示すように、型Mで被成型品Wを小さい力で押圧し、紫外線を照射し、UV硬化樹脂(紫外線硬化樹脂)W2を硬化させる。この後、図5(b)で示す矢印の方向に型Mを移動して、型Mを被成型品Wから離すと、図5(c)に示すように、被成型品W(紫外線硬化樹脂W2)に微細な転写パターンが転写される。ここまでが、転写装置1aを使用してなされる転写である。
上記転写後、図5(c)に示す状態において、硬化した紫外線硬化樹脂W2をマスキング部材にし、エッチングによって基材W1に微細な転写パターンを形成し、この後、硬化した紫外線硬化樹脂W2をたとえば溶剤で取り除けば、図5(d)に示すように、基材W1への微細な転写パターンの転写が完了する。
次に、筒状部材9等の変形例について説明する。
図8〜図11は、筒状部材9等の変形例について説明する図である。
図1に示すベローズ39は、この外径や内径が一定であるが、図8に示すように、下に向かうにしたがって、ベローズ39aの径が徐々に大きくなるようにしてもよい。これにより、真空成型室CHを減圧した場合であっても、ベローズ39aに発生する負の推力を相殺して無くすか、もしくは減少させるか、もしくは正の推力にすることができ、Oリング41が被成型品保持体5から離れるおそれを一層確実に防止することができる。
さらには、Oリング41が大きくなるので、型Mを用いた複数回の転写を被成型品Wにたとえばつなげて行い、型Mに形成されている微細な転写パターン形成領域よりも広い領域(被成型品Wの領域)に、微細な転写パターンを転写することができる。この場合、被成型品保持体5が、図8の紙面に直交する方向や左右方向に、型保持体7に対して相対的に移動位置決め自在になっているものとする。
また、図9に示すように、リング状の部材43やOリング41の径を大きくした場合であっても、図8に示す場合と同様に考えることができる。
また、図10に示すように、ベローズ39に代えて、円筒状の金属の部材(剛性が高く実質的に剛体とみなされる部材)71を採用してもよい。このようにすれば、真空成型室CHの減圧によって筒状部材9に発生する負の推力の発生を防止することができる。この場合、真空成型室CHが形成されるときにOリング41のみが弾性変形するので、線径の大きなOリング41等を用いることが望ましい。
さらに、図11に示すように、円筒状の第1の部材73と、円筒状の第2の部材75とを係合させて、全体として円筒状のテレスコカバーを構成し、このテレスコカバーを、筒状部材9(ベローズ39)の代わりに使用してもよい。
フランジ部81が型保持体7に一体的に設けられている第1の部材73の外径は、第2の部材75の内径よりもごく僅かに小さくなっており、第1の部材73の外径側面に第2の部材75の内径側面が係合し、第1の部材73に対して第2の部材75がこれらの軸方向(図11の上下方向)に移動することによって、第1の部材73と第2の部材75とで構成された筒状部材9の長さが変化するようになっている。
なお、第1の部材73と第2の部材75との係合部には、Oリング77等のシール部材が設けられており、第1の部材73と第2の部材75との係合部からのエアー漏れが無いようになっている。また、第1の部材73と第2の部材75とはバネ等の弾性体(図示せず)によって、筒状部材9の長さが長くなるように付勢されていると共に、筒状部材9の長さが一定の長さを超えないようなストッパー部79が設けられているものとする。
なお、上記説明した転写装置は、型に形成されている微細な転写パターンを、被成型品に転写する転写装置において、前記転写をするときに、真空成型室形成部材(たとえば、筒状部材)と前記型を保持している型保持体と前記被成型品を保持している被成型品保持体とで、前記型と前記被成型品とが内側に入るような小さな必要最小限の大きさの真空成型室を形成し、前記真空成型室の圧力を減圧するように構成されている転写装置の例である。
ところで、上述した各転写装置1,1aにおいて、筒状部材9(ベローズ39)を縮めるためのアクチュエータ85を設けてもよい。
図12は、アクチュエータ85を設けた転写装置1bの概略構成を示す図である。
なお、図12に示す転写装置1bで、上述した各転写装置1,1aと同一の符号を付してあるものは、各転写装置1,1aのものと同様に構成されているものとする。また、転写装置1bは、熱インプリント法で転写を行うものであるが、UVインプリント法で転写を行う転写装置であっても同様に考えることができる。
アクチュエータ85は、たとえば、空気圧シリンダ(単動空気圧シリンダ)87で構成されている。
転写装置1bでは、筒状部材9の一端部(上端部)が型保持体7に一体的に設けられている。そして、型保持体7と被成型品保持体5との間の距離が所定の距離(図3(a)や図13(a)に示すように筒状部材9の下端部が被成型品保持体5に接触し始めたときの距離)よりも大きくなっている状態(図12に示す状態;転写をする前の初期状態)で、空気圧シリンダ87で筒状部材9(ベローズ39)を最も縮めると、図12の上下方向で、筒状部材9の他端部29が、型保持体7に保持されている型Mとほぼ同じところに位置するようになっている(図13(c)参照)。
より具体的には、単動空気圧シリンダ87で筒状部材9(ベローズ39)を最も縮めると、リング状の部材43等が上昇し、型保持体7に保持されている型Mの下面Ma(上面でもよい)と、筒状部材9のOリング41の下端部との高さが、お互いにほぼ等しくなる。なお、単動空気圧シリンダ87で筒状部材9を最も縮めたときに、筒状部材9のOリング41の下端部が型保持体7に保持されている型Mより上方に存在するようにしてもよい。
一方、単動空気圧シリンダ87で筒状部材9を縮める操作をしていない場合には、上下方向で、筒状部材9の他端部29が、図12に示すように、型保持体7に保持されている型Mよりも被成型品保持体5側(下側)に位置している。
より具体的には、単動空気圧シリンダ87で筒状部材9を縮める操作をしていないときには、筒状部材9のOリング41の下端部が、型保持体7に保持されている型Mの下面Maよりも下方に位置している。そして、このまま型保持体7を下降させると、すでに理解されるように、型保持体7に保持されている型Mが被成型品保持体5に保持されている被成型品Wに接触する前に、筒状部材9のOリング41の下端部が被成型品保持体5の上面17に接触して真空成型室CHが形成されるようになっている(図13(a)参照)。
単動空気圧シリンダ87は、片ロッド形の単動空気圧シリンダであり、ピストンロッド89とは反対側に圧縮コイルバネ91が設けられている。そして、ピストンロッド89が下方に延出するようにして、単動空気圧シリンダ87のシリンダ本体93が型保持体7に一体的に設けられている。ピストンロッド89の下端部は、連結部材95を介してリング状の部材43の外周に一体的に設けられている。なお、ピストンロッド89や連結部材95は、被成型品保持体5や被成型品Wとの干渉を避けるために、リング状の部材43の下面よりも上方に位置している。
単動空気圧シリンダ87のシリンダ室(下方のシリンダ室;ピストンロッド89が存在しているシリンダ室)は、経路97によって方向制御弁(電磁弁;ソレノシドバルブ)99につながっている。そして、電磁弁99のソレノイドSolbがオフの場合、単動空気圧シリンダ87の圧縮コイルバネ91の付勢力により、図12に示すようにピストン101やピストンロッド89が最も下方に位置し、ピストンロッド89がシリンダ本体93から最も下方に突出し、単動空気圧シリンダ87による筒状部材9(ベローズ39)を縮める操作がされないようになっている。なお、型Mから被成型品Wへの転写は、電磁弁99のソレノイドSolbをオフさせた状態でされるようになっている。
一方、電磁弁99のソレノイドSolbがオンした場合、経路97を通って空気圧源103から単動空気圧シリンダ87のシリンダ室に圧縮空気が供給され、単動空気圧シリンダ87の圧縮コイルバネ91の付勢力に打ち勝ってピストン101やピストンロッド89が最も上方に位置し(図13(c)参照)、ピストンロッド89が上方に移動してシリンダ本体93内に最も入り込み、単動空気圧シリンダ87による筒状部材9(ベローズ39)を縮める操作がされるようになっている。
なお、電磁弁99のソレノイドSolbがオフになっており図12に示すようにピストンロッド89が最も下方に位置している状態(ピストンロッド89の最延出状態)では、長さが「L1」になっているベローズ39には、なんら応力が発生していない。一方、電磁弁Solbがオンして圧縮されることによって、もしくは、転写をすべく型保持体7と被成型品保持体5とで挟まれて圧縮されることによって、ベローズ39の長さが「L1」よりも小さくなったときに、ベローズ39に圧縮応力(正の推力;ベローズ39が伸びようとする力)が発生することになる。
また、単動空気圧シリンダ87は、筒状部材9(ベローズ39)に対して2つ以上の複数設けられており、たとえば、リング状の部材43の外周を等分配する位置に設けられている。
ところで、上記説明では、ピストンロッド89の最延出状態で長さが「L1」になっているベローズ39には、なんら応力が発生していないこととしているが、ピストンロッド89の最延出状態において、ベローズ39に引っ張り応力(負の推力;ベローズ39が縮もうとする力)が発生している構成であってもよいし、ベローズ39に圧縮応力(正の推力;ベローズ39が伸びようとする力)が発生している構成であってもよい。
次に、転写装置1bの動作について説明する。転写装置1bは、各転写装置1,1aとほぼ同様に動作する。
まず、初期状態として、図12に示すように、単動空気圧シリンダ87による筒状部材9を縮める操作がされておらず、型Mが型保持体7に真空吸着で保持され、被成型品Wが被成型品保持体5に真空吸着で保持されているものとする。
この初期状態で、転写装置1bのスタートのスイッチ(図示せず)が押されると、制御装置37の制御の下、型保持体7が下降し、Oリング41が被成型素材ベース15の平面17に接触し始め、さらに型保持体7が所定の僅かな距離だけ下降し被成型品保持体5に近づく(図13(a)参照)。
このさらに近づけた状態では、Oリング41とベローズ39とが僅かに弾性変形し、型保持体7と被成型品保持体5と筒状部材9とで真空成型室CHが形成されるが、型Mと被成型品Wとはお互いが僅かに離れている。
続いて、各ヒータ構成部材13,19で型Mと被成型品Wとを加熱し、減圧手段11で真空成型室CHの減圧を行い、型保持体7を下降し被成型品保持体5にさらに近づけて、型Mで被成型品Wを押圧し、微細な転写パターンの転写を行う(図13(b)。
この転写後に、各ヒータ構成部材13,19で型Mと被成型品Wとを冷却し、型Mと被成型品Wとを、型用真空吸着手段49、被成型品用真空吸着手段57で真空吸着したまま、真空成型室CHの圧力を大気圧にし、型保持体7を移動して被成型品保持体5から離し、被成型品用真空吸着手段57で被成型品Wの真空吸着を停止して、転写がなされた被成型品Wを被成型品保持体5から取り外し、転写がなされていない次の被成型品Wと交換して次の被成型品を被成型品用真空吸着手段57で真空吸着し、前記初期状態に戻る。
なお、転写装置1bで、型Mの交換等をする場合には、図13(c)で示すように、単動空気圧シリンダ87で筒状部材9を縮め、型Mを交換等した後に、単動空気圧シリンダ87で筒状部材9を縮める操作を止めて、図12に示す状態にする。
転写装置1bによれば、単動空気圧シリンダ87で、図13(c)で示すように筒状部材9を縮めることができるので、様々な厚さの型Mや様々な厚さの被成型品Wに対応すべく筒状部材9を長くしても、型Mの交換や型Mの観察、点検を容易に行うことができる。
すなわち、図12において、型Mや被成型品Wの厚さとして様々な種類のものを設置した場合、ベローズ39の長さL1を長くする必要がある。つまり、型Mや被成型品Wの厚さ(図12の上下方向の寸法)が図12に示すものよりも厚くなったときにベローズ39の長さL1が図12に示すように短いままだと、型保持体7を下降して転写をする際、真空成型室CHが形成される前に型Mと被成型品Wとがお互いに接触するおそれがある。そこで、このおそれを回避するためにベローズ39の長さL1を長くする必要がある。しかし、ベローズ39の長さL1を長くすると型Mの下面Maと筒状部材9の下端部29との間の距離L2が大きくなり、型Mが筒状部材9の奥に引っ込んだ状態になり、型Mの交換等がしづらくなる。そこで、単動空気圧シリンダ87で筒状部材9の下端29を上方向に付勢してベローズ39を圧縮し、距離L2がたとえばほぼ「0」になるようにしている。これにより、ベローズ39の長さL1を長くしても、型Mの交換等がしやすくなる。
また、転写装置1bによれば、空気圧シリンダ87を用いて筒状部材9の下端部29を支持しているので、転写の際における筒状部材9の伸縮が、簡素な構成でなされるようになっている。
すなわち、転写をすべく図12に示す状態から型保持体7を下降すると、まず筒状部材9の下端部29が、被成型品保持体5に接触し真空成型室CHが形成される。この後、型Mを被成型品Wに接触させるべく、型保持体7をさらに下降させると、ベローズ39が縮むと共に、単動空気圧シリンダ87のシリンダ本体93がピストンロッド89を内部に収容する方向(下方)に移動する。この移動のときに、単動空気圧シリンダ87の圧縮コイルバネ91が適宜圧縮されるので、単動空気圧シリンダ87に邪魔されることなく、転写の際における筒状部材9の伸縮が簡素な構成でなされるようになっている。
また、ピストンロッド89の先端部(下端部)が、筒状部材9の下端部29に一体的に設けられているので、筒状部材9を安定した状態で支持することができ、筒状部材9のふらつきを防止することができる。すなわち、単動空気圧シリンダ87が筒状部材9をガイドするガイド部材としての機能を果たし、筒状部材9の下側の部位が、水平方向にふらつくことを防止することができる。
また、図12に示す状態で、引っ張り応力もしくは圧縮応力がベローズ39に発生している構成であれば、リング状の部材43には、ベローズ39によって上方向もしくは下方向の力が加えられていると共に、ベローズ39が加えている方向とは逆向きの力が単動空気圧シリンダ87のピストンロッド89によって加えられている。したがって、リング状の部材43が、ベローズ39と単動空気圧シリンダ87のピストンロッド89とで力学的に挟まれていることになり、リング状部材43の水平方向のふらつきや、揺動を防止することができる。
また、形成された真空成型室CHが減圧されてベローズ39に負の推力が発生しても、単動空気圧シリンダ87のピストンロッド89が下向きの力をリング状の部材43に付与しているので、筒状部材9の下端が被成型品保持体5から離れ真空成型室CHの維持ができなくなる事態を回避することができる。
さらに、図12に示す状態(電磁弁99のソレノイドSolbがオフしている状態)で、ベローズ39に圧縮応力が発生している構成であれば、形成された真空成型室CHが減圧されてベローズ39に負の推力が発生しても、真空成型室CHの維持が一層されやすくなる。
ところで、図12に示す転写装置1bでは、ピストンロッド89とは反対側に圧縮コイルバネ91が設けられている単動空気圧シリンダ87を採用しているが、図14に示す転写装置1cのように、ピストンロッド89側に圧縮コイルバネ91が設けられている単動空気圧シリンダ87aを採用してもよい。
さらに、図15に示す転写装置1dのように、復動空気圧シリンダ87bを採用してもよい。転写装置1dでは、復動空気圧シリンダ87bのピストンロッド89側(下側)のシリンダ室が経路105を介して5ポート電磁弁109につながっており、復動空気圧シリンダ87bのヘッド側(上側)のシリンダ室が経路107を介して電磁弁109につながっている。
そして、電磁弁109のソレノイドSolbがオフの場合には、空気圧源103から圧縮空気が経路107を通って復動空気圧シリンダ87bのヘッド側(上側)のシリンダ室に供給され、ピストン101やピストンロッド89が最も下方に位置しピストンロッド89がシリンダ本体93から最も下方に突出し、復動空気圧シリンダ87bによる筒状部材9(ベローズ39)を縮める操作がされないようになっている。
筒状部材9(ベローズ39)を縮める操作がされていない状態で、転写をすべく型保持体7を被成型品保持体5に近づけると、ベローズ39が圧縮されてピストンロッド89が上昇し、上方のシリンダ室(経路107)内の空気圧が上昇し、型保持体7を被成型品保持体5に近づける際の抵抗になるので、これを防止すべく、経路107にリリーフ弁111を設けてある。
一方、電磁弁109のソレノイドSolbがオンした場合、空気圧源103から圧縮空気が経路105を通って復動空気圧シリンダ87bのピストンロッド89側(下側)のシリンダ室に供給され、ピストン101やピストンロッド89が最も上方に位置し、復動空気圧シリンダ87bによる筒状部材9(ベローズ39)を縮める操作がされるようになっている。
また、図16に示す転写装置1eのように、筒状部材9や空気圧シリンダ87を、型保持体7ではなく被成型品保持体5に設けた構成であってもよい。
すなわち、筒状部材9の一端部(下端部)を、被成型品保持体5に一体的に設け、型保持体7と被成型品保持体5との間の距離が所定の距離よりも大きくなっている状態(図16に示す状態;転写をする前の初期状態)で、空気圧シリンダ87で筒状部材9を最も縮めたときに、高さ方向で、筒状部材9の他端部(上端部)が、被成型品保持体5に保持されている被成型品Wとほぼ同じところに位置するように構成してもよい。
次に、上述した各転写装置の減圧手段11、型用真空吸着手段49、被成型品用真空吸着手段57、増圧手段63について詳しく説明する。
図17〜図21は、減圧手段11、型用真空吸着手段49、被成型品用真空吸着手段57、増圧手段63の具体的構成を示す図である。
まず、図17に示す構成のものについて説明する。型用真空吸着手段49は、真空ポンプ(たとえば、油回転ポンプ)115を用いて真空吸着をするように構成されている。真空ポンプ115と、型保持体7における型Mの吸着面とは、経路113によってつながっている。参照符号117は、型Mを吸着するために設けられた環状の溝である。経路113の途中には、3ポート電磁弁(真空用ノンリーク弁)119が設けられており、3ポート電磁弁119よりも型保持体7側に位置している経路113には、経路113の圧力(真空度)を検出するための圧力センサ121が設けられている。なお、真空ポンプ115の真空到達度は0.67Pa(絶対圧)である。したがって、真空ポンプ115を稼動して型保持体7で型Mを保持したときには、経路113内の圧力が、0.67Paの近くまで減圧されるようになっている。
被成型品用真空吸着手段57は、真空ポンプ(たとえば、油回転ポンプ)125を用いて真空吸着をするように構成されている。真空ポンプ125と、被成型品保持体5における被成型品Wの吸着面とは、経路123によってつながっている。参照符号127は、被成型品Wを吸着するために設けられた環状の溝である。経路123の途中には、3ポート電磁弁(真空用ノンリーク弁)129が設けられており、3ポート電磁弁129よりも被成型品保持体5側に位置している経路123には、経路123の圧力(真空度)を検出するための圧力センサ131が設けられている。また、3ポート電磁弁129と真空ポンプ125との間に位置している経路123には、真空レギュレータ133が設けられている。真空ポンプ125の真空到達度は0.67Pa(絶対圧)であり、真空レギュレータ133は700Pa(絶対圧)に設定されている。したがって、真空ポンプ125を稼動して被成型品保持体5で被成型品Wを保持したときには、真空レギュレータ133よりも被成型品保持体5側(真空レギュレータ133よりも右側)の経路123内の圧力が、700Paの近くまで減圧されるようになっている。
減圧手段11は、真空ポンプ125を用いて減圧をするように構成されている。3ポート電磁弁129よりも被成型品保持体5側に位置している経路123と、被成型品保持体5との間には経路135が設けられている。なお、被成型品保持体5に設けられている経路135の一方の端部は、真空成型室CHにつながるようになっている。
経路135の途中には、2ポート電磁弁(真空用ノンリーク弁)137が設けられており、2ポート電磁弁137よりも被成型品保持体5側に位置している経路135には、経路135の圧力(真空度)を検出するための圧力センサ139が設けられている。
増圧手段63は、真空成型室CHの圧力を大気圧に戻すものであり、経路141と2ポート電磁弁145を備えて構成されている。経路141の一端部は真空成型室CHにつながるようになっており、経路141の他端部は大気につながっている。経路141の途中には、経路141の一端部から他端部に向かって順に、絞り弁147、電磁弁145、クリーンガスフィルタ143が設けられている。
次に、転写装置1等によって転写をするときにおける、減圧手段11、型用真空吸着手段49、被成型品用真空吸着手段57、増圧手段63の動作を説明する。
まず初期状態として、各真空ポンプ115,125が稼動しており、各電磁弁119,129のソレノイドSolbがオンしており、型Mや被成型品Wの真空吸着がされているものとする。なお、この初期状態では、各電磁弁137,145のソレノイドSolbはオフになっている。
上記初期状態から、転写をすべく型保持体7を下降して真空成型室CHが形成されたときに、電磁弁137のソレノシドSolbをオンし、真空成型室CHを減圧する。なお、この減圧による真空成型室CHの真空到達度は、700Paであり、型Mの真空吸着における真空到達度は、0.67Paであるので、真空成型室CHを減圧しても型Mが落下することは無い。
転写が終了した後、電磁弁137のソレノイドSolbをオフし、電磁弁145のソレノイドSolbをオンし、真空成型室CHを大気圧に戻し、型保持体7を上昇する。
次に、図18に示す構成のものについて説明する。図18に示すものは、型用真空吸着手段49、被成型品用真空吸着手段57に、チャック保持機能(真空吸着保持機能)を付加した点が、図17に示す構成のものと異なり、その他の点は、図17に示すものと同様に構成されている。
すなわち、図18に示す型用真空吸着手段49では、経路149を介して3ポート電磁弁119に2ポート電磁弁151を接続してある点が図17に示すものとは異なっている。また、図18に示す被成型品用真空吸着手段57では、経路153を介して3ポート電磁弁129に2ポート電磁弁155を接続してある点が図17に示すものとは異なっている。
次に、図18に示す減圧手段11、型用真空吸着手段49、被成型品用真空吸着手段57、増圧手段63の動作を説明する。
まず初期状態として、各真空ポンプ115,125が稼動しており、各電磁弁119,129のソレノイドSolbがオンしており、型Mや被成型品Wの真空吸着がされているものとする。なお、この初期状態では、各電磁弁137,145,151,155のソレノイドSolbはオフになっている。
上記初期状態から、転写をすべく型保持体7を下降して真空成型室CHが形成されたときに、電磁弁137のソレノシドSolbをオンし、真空成型室CHを減圧し、型保持体7をさらに下降する。
そして、型Mが被成型品Wに接触したときに、各電磁弁119,129のソレノイドSolbをオフすると、チャック保持機能が働き、各経路113,123が各電磁弁119、129で各真空ポンプ115,125から遮断されたにもかかわらず、型Mが型保持体7に保持され続け、被成型品Wが被成型品保持体5に保持され続ける。
転写が終了した後、電磁弁137のソレノイドSolbをオフし、電磁弁145のソレノイドSolbをオンし、真空成型室CHを大気圧に戻し、型保持体7を上昇し、電磁弁155のソレノイドSolbをオンし、被成型品Wの保持を解除する。なお、型Mを交換する必要がある場合には、電磁弁151のソレノイドSolbをオンし、型Mの保持を解除する。
次に、図19に示す構成のものについて説明する。図19に示すものは、電磁弁を集約した点が、図18に示すものと異なり、その他の点は、図18に示すものと同様に構成されている。
すなわち、図18に示す各電磁弁119,151をまとめて1つの電磁弁(3ポート3ポジションソレノイドバルブ)157とし、図18に示す各電磁弁129,155をまとめて1つの電磁弁(3ポート3ポジションソレノイドバルブ)159としている。
次に、図20に示す構成のものについて説明する。図20に示すものは、真空成型室CHの真空度の設定に自由度を持たせた点が図19に示すものと異なり、その他の点は、図19に示すものと同様に構成されている。
すなわち、図20に示すものは、経路135の途中(電磁弁137と被成型品保持体5との間に位置している経路)と、真空ポンプ(たとえば真空ポンプ115,125と同様な真空ポンプ)163との間に経路161を設けてある。経路161の途中には、2ポート電磁弁165を設け、ポンプ163と電磁弁165との間に真空レギュレータ167を設けてある。
次に、図20に示す減圧手段11、型用真空吸着手段49、被成型品用真空吸着手段57、増圧手段63の動作を説明する。
まず初期状態として、各真空ポンプ115,125,163が稼動しており、各電磁弁157,159のソレノイドSolbがオンしており、型Mや被成型品Wの真空吸着がされているものとする。なお、この初期状態では、各電磁弁137,145,165のソレノイドSolbはオフになっている。また、真空レギュレータ133の設定圧は700Paになっており、真空レギュレータ167の設定圧は500Paになっているものとする。
上記初期状態から、転写をすべく型保持体7を下降して真空成型室CHが形成されたときに、電磁弁137もしくは電磁弁165のソレノイドSolbをオンし、真空成型室CHを減圧し、型保持体7をさらに下降させる。電磁弁137もしくは電磁弁165のソレノイドSolbをオンすることにより、真空成型室CHの真空度を2段階で設定することができる。
そして、型Mが被成型品Wに接触したときに、各電磁弁157,159のソレノイドSolbをオフすると、各電磁弁157,159のスプールが図20に示すように中立位置に位置してチャック保持機能が働き、各経路113,123が各電磁弁157、159で各真空ポンプ115,125から遮断されたにもかかわらず、型Mが型保持体7に保持され続け、被成型品Wが被成型品保持体5に保持され続ける。
転写が終了した後、電磁弁137もしくは電磁弁165のソレノイドSolbをオフし、電磁弁145のソレノイドSolbをオンし、真空成型室CHを大気圧に戻し、型保持体7を上昇し、電磁弁159のソレノイドSolaをオンし、被成型品Wの保持を解除する。なお、型Mを交換する必要がある場合には、電磁弁157のソレノイドSolaをオンし、型Mの保持を解除する。
次に、図21に示す構成のものについて説明する。図21に示すものは、高真空L型バルブ169,171,173を用いた点が図20に示すものと異なり、その他の点は、図20に示すものと同様に構成されている。
より詳しく説明すると、経路113の途中には、高真空L型バルブ169が設けられており、経路123の途中には、高真空L型バルブ171が設けられており、経路161の途中には、高真空L型バルブ173が設けられている。
また、経路123の途中には、真空レギュレータ133が設けられており、経路161の途中には、真空レギュレータ167が設けられている。なお、真空レギュレータ133は、高真空L型バルブ171と、経路123と経路135とが合流する箇所との間に設けられている。真空レギュレータ167は、高真空L型バルブ173と、経路161が経路135から分離する箇所との間に設けられている。
また、経路113の途中には、型Mの真空吸着を開放するための2ポート電磁弁175が設けられており、経路123の途中には、被成型品Wの真空吸着を開放するための2ポート電磁弁177が設けられている。