JP5431860B2 - 無段変速機油組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、無段変速機油組成物に関し、特には、金属ベルト式又は金属チェーン式等の無段変速機におけるベルトやチェーンとプーリー間の摩擦特性に優れ、かつスリップ制御式ロックアップクラッチ付トルクコンバーターにて発生するシャダーを防止し、それを維持する性能(シャダー防止耐久性)を有する無段変速機油組成物に関する。
金属ベルト式又は金属チェーン式の無段変速機はエンジンの燃焼効率の良い領域を選択的に使用できることから、省燃費性に優れた変速機として脚光を浴びており、特に、近年は金属ベルト式無段変速機を搭載する車種が増加している。このタイプの変速機は、金属ベルト又は金属チェーンと金属製プーリーとの間の摩擦によりトルクを伝達し、プーリーの半径比を連続的に変化させて無段階に変速を行う機構からなっている。したがって、金属ベルト式又は金属チェーン式の無段変速機に使用される潤滑油には、伝達トルク容量を向上させるために金属間での摩擦係数の高いものが求められている。
初期の無段変速機は動力断続に電磁式等のクラッチが搭載されていたが、円滑な発進・停止が可能となる、容易な坂道発進を可能とするクリープ現象が得られる、との理由から現在ではスリップ制御式ロックアップクラッチ付トルクコンバーターの搭載が主流となっている。ロックアップクラッチはトルクコンバーターで発生する粘性や滑りの伝達損失を、変速の必要の無い高速度領域で機械的に直結(ロックアップ)させて低減させ、燃費を向上させる機構である。この機構から更なる燃費改善をするため、より低速度領域から湿式クラッチを完全に直結させず、微小に滑らせてロックアップを行うスリップ制御式が開発された。しかし、このスリップ制御にて潤滑油の湿式クラッチ摩擦特性が悪いと、シャダーと呼ばれるスティックスリップ現象による異常振動や異音等が発生し、運転者にとって不快感を与える。従って、近年の無段変速機に使用される潤滑油には金属間摩擦係数に加え、湿式クラッチへの適合性、及びシャダー防止耐久性(シャダーを防止し、それを維持する性能)も要求される。
金属間摩擦係数を向上させるために、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を配合する方法が提案されていたが(非特許文献1)、ジアルキルジチオリン酸亜鉛は使用にともない消耗され、金属間摩擦係数が低下してしまう問題があった。またトルクコンバーターの搭載に伴い、ジアルキルジチオリン酸亜鉛の劣化成分が湿式クラッチ板の目詰まりを引き起し、その機能を損なわせるという問題があった。
このために、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含まない無段変速機油として、Caサリシレート、リン系摩耗防止剤、摩擦調整剤及び分散型粘度指数向上剤を配合するもの(特許文献1)、ポリイソブテニルサクシンイミド無灰分散剤、有機ホスフィット、カルシウム過塩基性フェナート清浄剤、サクシンイミド、エトキシル化アミンを含む摩擦改良剤及び長鎖カルボン酸の一級アミドを配合するもの(特許文献2)、特定の鉱油系潤滑油基油にリン系化合物及び無灰分散剤としてホウ素変性コハク酸イミドを配合するもの(特許文献3)、特定のリン系化合物及び無灰分散剤としてホウ素変性コハク酸イミドを配合するもの(特許文献4)、ホウ素含有コハク酸イミド系無灰分散剤を配合するもの(特許文献5)等が提案されている。
特開2000−355695号公報 特開2000−336386号公報 特開2000−109875号公報 特開2000−109872号公報 特開2000−109867号公報 馬渕 他 「ベルトCVTの伝達トルク向上に対するCVTF添加剤ZnDTPの効果(第1報)」(社)日本トライボロジー学会トライボロジー会議予稿集(東京1998−5) p.511
しかしながら、上記変速機油では、高出力のエンジン動力を伝達するための金属間摩擦係数が不足であり、さらなる改善が要望されている。加えて一般的に金属間摩擦係数とシャダー防止耐久性は相反する性能であることが知られており、ベルトやチェーンとプーリーとの間の摩擦特性を重視する無段変速機においては、変速機油のシャダー防止耐久性を犠牲にせざるを得ないというのが問題であった。
本発明は上記課題を解決するもので、本発明の目的は金属ベルトやチェーンとプーリー間の摩擦係数を著しく向上させ、かつクラッチ板の目詰まりを引き起こすことなく、シャダー防止耐久性を有した無段変速機油組成物を提供するものである。
本発明は、主要量の潤滑油基油、(A)少なくとも1種の下記の一般式(1)で表されるリン系化合物を、該リン系化合物由来のリン量として組成物全量基準で0.005〜0.15質量%、及び(B)少なくとも1種のポリカルボキシレート化合物、好ましくは下記の一般式(2)で表されるポリカルボキシレート化合物を、組成物全量基準で0.1〜10.0質量%含有することを特徴とする無段変速機油組成物であり、更に(C)コハク酸イミド系分散剤を組成物全量基準で0.5〜10.0質量%、及び(D)アルカリ土類金属系清浄剤を組成物全量基準で0.05〜1.0質量%含有することが好ましい。
Figure 0005431860
(一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ個別に水素原子、又は炭素数が1〜30のヒドロカルビル基を示し、R5は炭素数が1〜30のヒドロカルビレン基を示し、X1及びX2はそれぞれ個別に酸素原子、又は硫黄原子を示し、nは1〜10の整数を表す。)
Figure 0005431860
(一般式(2)中、R6は炭素数が1〜30のヒドロカルビレン基を示し、Y1及びY2はそれぞれ個別に水素原子、又は炭素数が1〜30のヒドロカルビル基、又は−CH2−O−C(=O)−R7(ここで、R7は炭素数1〜26のヒドロカルビル基である)を示し、mは2〜30の整数を表す。)
本発明の無段変速機油組成物は、特定のリン系化合物とポリカルボキシレート化合物を特定量含有し、さらには、コハク酸イミド系分散剤及びアルカリ土類金属系清浄剤を特定量含有するため、金属ベルトやチェーンと プーリー間の摩擦係数を著しく向上させ、かつクラッチ板の目詰まりを引き起こすことなく、更にシャダー防止耐久性を有する等の格別の効果を奏する。
〔潤滑油基油〕
本発明に用いる潤滑油基油としては、通常の潤滑油の基油として用いられている鉱油系及び/又は合成油系を用いることができる。潤滑油基油は、組成物(すなわち無段変速機油組成物)全量基準で通常多くとも98質量%、好ましくは98〜62質量%が配合される。これら潤滑油基油の動粘度は、無段変速機の種類に合わせて適宜選定すればよい。また、潤滑油基油として、以下に説明する鉱油及び合成油をそれぞれ単独で用いてもよいし、両者を適宜な割合で混合した混合物のかたちで用いてもよいことは、断るまでもない。
潤滑油基油には、粘度指数向上剤を潤滑油基油に含有させてもよい。粘度指数向上剤としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの共重合体若しくはその水添物等のいわゆる非分散型粘度指数向上剤、又はさらに窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させた、いわゆる分散型粘度指数向上剤、さらには非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体及びその水素化物、ポリイソブチレン及びその水添物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体及びポリアルキルスチレン等、一般の潤滑油で粘度指数向上剤として使用されているものを用いることができる。これらの粘度指数向上剤の中から適宜選定した1種類あるいは2種類以上の化合物を、任意量、含有させることができるが、通常、その量は、組成物全量基準で1〜20質量%の範囲で選定することが好ましい。粘度指数向上剤を含めた潤滑油基油の100℃における動粘度は4〜10mm2/s、特には5〜9mm2/sが好ましく、また粘度指数は120以上、特には140以上が好ましい。
鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱瀝、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱蝋、接触脱蝋、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理等を適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系等の潤滑油基油や溶剤脱蝋で得たワックスを異性化、脱蝋して得られる潤滑油基油が使用できる。鉱油系基油の動粘度は、通常、100℃における動粘度が、好ましくは2〜7mm2/s、より好ましくは3〜5mm2/sの範囲から選定するとよい。粘度指数は80以上、特には100以上が好ましい。
合成油系基油としては、例えば、ポリ−α−オレフィン(1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンオリゴマー等)及びその水素化物、イソブテンオリゴマー及びその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル、ポリオールエステル、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、並びにポリフェニルエーテル等が好適に使用できる。
〔リン系化合物〕
本発明の無段変速機油組成物は、下記一般式(1)に示したリン系化合物を少なくとも1種類含有する。該リン系化合物は現在潤滑油に主に摩耗防止剤として配合されるリン酸エステル化合物を同一分子内に複数個有する化合物である。一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4の官能基はヒドロカルビル基、又は水素原子である。ただし、R1、R2、R3及びR4が全て水素であることはない。ヒドロカルビル基としてはアルキル基、アリール基、アルキルアリール基等が例として挙げられ、炭素数は1〜30、好ましくは1〜20、特に好ましくは3〜9である。R1、R2、R3及びR4は同一であってもよいし、各々が異なっていてもよい。またR5はヒドロカルビレン基を示す。ヒドロカルビレン基としてはアルキレン基、アリーレン基、アルキルアリーレン基等が例として挙げられ、炭素数は1〜30、好ましくは1〜20、特に好ましくは3〜9である。X1及びX2は酸素原子、又は硫黄原子を示す。nは繰り返し数を表し、1〜10の整数、好ましくは1〜5の整数、特に好ましくは1〜3である。なお本発明においては、一般式(1)で表せるリン系化合物を少なくとも1種類含有していればよく、これ以外のリン系化合物、たとえば分子内に一つのリン元素を含むリン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、及びこれらのアミン塩等、または分子内に硫黄元素を含むチオリン酸エステル等の一般の潤滑油で摩耗防止剤として使用されているものを混合して用いることもできる。
Figure 0005431860
一般式(1)に示したリン系化合物は、
該リン化合物由来のリン元素重量として、組成物全量基準で0.005〜0.15質量%、特には0.005〜0.10質量%配合することが好ましい。また組成物全体のリン元素重量としては、組成物全量基準で0.01〜0.15質量%、特には0.01〜0.10質量%であることが好ましく、この範囲より少ないと金属間摩擦係数の向上作用が小さく、摩耗防止性も不十分である。一方、この範囲を超えると材料適合性が悪化する。
〔ポリカルボキシレート化合物〕
本発明は、ポリカルボキシレート化合物を少なくとも1種類含有する。本発明のポリカルボキシレート化合物は、高分子構成ユニット中にカルボキシル基及び/又はその塩を有する重量平均分子量が1000〜6000の高分子化合物で、多価アルコールと多価カルボン酸とをエステル化し、エステル化されずに残った官能基(カルボキシル基、水酸基)をモノアルコール、モノカルボン酸で全てエステル化し、官能基をヒドロカルビル基で封鎖して安定性を確保することが好ましい。さらには多価カルボン酸の全てのカルボキシル基を多価アルコールでエステル化した後、エステル化されずに残った多価アルコールのヒドロキシル基をモノカルボン酸でエステル化したものがより好ましい。
多価アルコールとしては特に、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのネオペンチルポリオールが好ましい例として挙げられる。多価カルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸などのジカルボン酸が好ましい。また、モノカルボン酸としては、n−ペンタン酸、i−ペンタン酸、n−ヘキサン酸、i−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、i−ヘプタン酸、2−エチルペンタン酸、n−オクタン酸、i−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、n−ノナン酸、i−ノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、n−デカン酸、i−デカン酸などが好ましい例として挙げられる。上記性状を有するポリカルボキシレート化合物の製造方法は特に限定するものではなく、どのような方法で調製しても構わないが、エステル化に際しては、原料の混合反応割合、反応順序やその他反応条件を適宜調整することによって、上記性状を有するポリカルボキシレート化合物を調製することができる。これらのうち、ペンタエリスリトールとアジピン酸、及びラウリン酸とのポリカルボキシレート化合物が特に好ましい。
本発明で用いることのできるポリカルボキシレート化合物は、より具体的には下記の一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 0005431860
一般式(2)中、R6の官能基はヒドロカルビレン基である。ヒドロカルビレン基としてはアルキレン基、アリーレン基、アルキルアリーレン基等が例として挙げられ、特にアルキレン基が好ましく、炭素数は1〜30、好ましくは2〜20、特に好ましくは2〜12である。またY1及びY2はそれぞれ個別に水素原子、又はヒドロカルビル基、又は−CH2−O−C(=O)−R7であり、R7はヒドロカルビル基である。Y1及びY2は同一であってもよいし、異なっていてもよいが、Y1及びY2が共に−CH2−O−C(=O)−R7であることが特に好ましい。ヒドロカルビル基としてはアルキル基、アリール基、アルキルアリール基等が例として挙げられ、Y1及び/又はY2がヒドロカルビル基の場合、Y1及び/又はY2の炭素数は1〜30、好ましくは5〜25、特に好ましくは10〜20である。Y1及び/又はY2が−CH2−O−C(=O)−R7の場合、R7も、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基等のヒドロカルビル基であるが、その炭素数は1〜26、好ましくは1〜21、特に好ましくは6〜16である。mは繰り返し数を表し、2〜30の整数、好ましくは2〜20、特に好ましくは2〜10の整数である。既に述べたように、一般式(2)において、表記の便宜上、末端基を封鎖した形で示していないが、エステル化されずに残った官能基(カルボキシル基、水酸基)はモノアルコール、モノカルボン酸で全てエステル化することが好ましい。従って、末端に残った官能基がカルボキシル基の場合は−OR、水酸基の場合は−C(=O)−R(但し、Rはヒドロカルビル基)で封鎖されていることになる。なお本発明においては、ポリカルボキシレート化合物を少なくとも1種類含有していればよく、これ以外の一般の潤滑油で摩擦調整剤として使用されているものを混合して用いることもできる。
ポリカルボキシレート化合物は、組成物全量基準で0.1〜10.0質量%、特には0.5〜5.0質量%配合することが好ましい。この範囲より少ないと十分なシャダー防止耐久性を得られなくなる。一方、この範囲を超えると金属間摩擦係数、及び貯蔵安定性が低下する。
〔コハク酸イミド系分散剤〕
本発明に用いるコハク酸イミド系分散剤は、コハク酸イミド化合物を主成分とするものであり、このようなコハク酸イミド化合物は、イミド化に際してポリアミンの一端に無水コハク酸が付加した下記一般式(3)のような、いわゆるモノタイプのコハク酸イミドと、ポリアミンの両端に無水コハク酸イミドが付加した下記一般式(4)のような、いわゆるビスタイプのコハク酸イミドがあり、更にそれぞれにホウ素を含有しているものがある。本発明においては、これらの中から選ばれる分散剤のうちいずれも使用可能で、ギヤ油、金属加工油、作動油、自動変速機油などの各種潤滑油に使用されている無灰分散剤として市販されているものから選定すればよく、それぞれ単独で使用することも2種以上を混合して使用することもできる。
Figure 0005431860
Figure 0005431860
なお、上記一般式(3)及び(4)中、R8、R9及びR10は、それぞれ個別にアルキル基又はアルケニル基を示し、aは1〜10、好ましくは2〜5の整数、bは1〜10、好ましくは2〜5の整数を示す。
上記コハク酸イミド系分散剤の含有量は、組成物全量基準で0.5〜10.0質量%、特には2.0〜8.0質量%が好ましい。この範囲より少ないと十分な金属間摩擦係数や劣化によって発生したスラッジの分散性が得られなくなる。一方、この範囲を超えても金属間摩擦係数は上昇せず、コスト増となる。
〔アルカリ土類金属系清浄剤〕
本発明に用いるアルカリ土類金属系清浄剤は、潤滑油劣化時の無段変速機におけるベルト又はチェーンとプーリー間の摩擦係数の滑り速度依存性を低減し、金属間摩擦特性を向上させることを可能する。このアルカリ土類金属系清浄剤は、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属を含有するスルフォネート、フェネート、サリシレートを用いる。またそれぞれに高い塩基価(BN)を有する、いわゆる過塩基性の金属系清浄剤、もある。本発明においては、これらの中から選ばれる1種又は2種以上のアルカリ土類金属系清浄剤等、一般の潤滑油で金属系清浄剤として使用されているものを用いることができる。
これらの金属系清浄剤は、組成物全量基準で0.05〜1.0質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%の範囲で配合することにより摩擦係数の著しい向上を図ることができる。この範囲で配合してあれば、潤滑油劣化時でも金属間摩擦係数の向上作用を維持でき、潤滑油の酸化安定性を損なうことはない。
〔ジアルキルジチオリン酸亜鉛〕
本発明においては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を実質的に配合しないものである。なお、ここで、実質的に含有しないとは、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を全く含有しないか、又は含有しても、潤滑油劣化時にクラッチ板の目詰まりを引き起こし、その機能を損なわせることがない量以下、具体的には組成物全量基準で亜鉛元素量として0.001質量%以下であることを意味しているが、全く含有しないことがより好ましい。
〔他の添加剤〕
本発明の無段変速機油組成物には、上記添加剤以外に、更に酸化防止剤、流動点降下剤等を配合することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系化合物やアミン系化合物等、潤滑油に一般的に使用されているものであれば特に使用することに支障はない。具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のアルキルフェノール類、メチレン−4,4−ビスフェノール(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)等のビスフェノール類、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン類、ジアルキルジフェニルアミン類、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)脂肪酸(例えば、プロピオン酸等)と1価又は多価アルコール、例えばメタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等とのエステル等が好適である。これらの酸化防止剤の中から適宜選定した1種類又は2種類以上の化合物を、含有させることができるが、通常その量は組成物全量基準で0.1〜2質量%の範囲で選定とすることが好ましい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例に制限されるものではない。
〔無段変速機油組成物の調製〕
下記の潤滑油基油及び添加剤を用いて、実施例1、2及び比較例1〜6の無段変速機油組成物を、表1の上部に示す配合割合(添加量は組成物全量基準での質量%)でそれぞれ混合して調製した。
また、参考例1〜3として市販の無段変速機油(市販品1〜3)も調達し、その性能を、実施例及び比較例と同様に後述の試験を行い、評価した。
〔潤滑油基油〕
O−1;水素化精製基油(100℃の動粘度:4.3mm2/s、粘度指数:124)
〔添加剤〕
(i)一般式(1)に示したリン系化合物
P−1;テトラフェニル(m−フェニレン)ビスホスフェート
(一般式(1)において、R1=R2=R3=R4=フェニル基,R5=フェニレン基,X1=X2=O,n=1の化合物)
(ii)本発明品以外のリン系化合物
P−2;トリクレジルホスフェート
(iii)コハク酸イミド系分散剤
I−1;ホウ素非含有コハク酸イミド(モノタイプ)
(iv)アルカリ土類金属系清浄剤
C−1;過塩基性Caスルフォネート(TBN:300)
(v)一般式(2)に示した摩擦調整剤
F−1;一般式(2)において、R6=n−ブチレン基,Y1=Y2=−CH2−O−C(=O)−R7,R7=n−ドデシル基,m=6,分子量:約4000の化合物
(vi)本発明品以外の摩擦調整剤
F−2;ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル
F−3;オレイン酸
F−4;グリセロールモノオレエート
(vii)その他の添加剤
酸化防止剤、腐食防止剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤からなる群のうち1種又は2種以上選択して組み合わせたもので、全実施例及び比較例にて共通の組成である。
〔評価〕
ASTM D2174に記載のブロックオンリング試験機(LFW−1)を用いて、無段変速機油の摩擦係数(μ60)を測定した。測定結果を表1に示す。試験条件は、以下の通りである。この試験における摩擦係数が大きいものほど、無段変速機において伝達効率が高く、無段変速機油として優れている。
試験条件:
リング:Falex S-10 Test Ring (SAE4620 Steel)
ブロック:Falex H-60 Test Block (SAE01 Steel)
温度:80℃
荷重:445N
滑り速度:0.33m/s
試験時間:60分間
摩擦係数:開始から60分後(試験終了直前)に測定
摩耗痕幅:試験終了後にブロックの摩耗痕幅を測定
自動変速機油の規格であるJASO M349:2001に記載の低速滑り試験機(LVFA)を用いて、無段変速機油のシャダー防止耐久性を測定した。測定結果を表1に示す。試験はJASO M349:2001に準拠してシャダー防止寿命を測定し、標準油のシャダー防止寿命との比率で示した。このシャダー防止寿命比の数値が大きいほど無段変速機においてシャダーを防止する期間が長く、無段変速機油として優れており、1以上(標準油以上のシャダー防止寿命)であることが好ましい。
Figure 0005431860
これらの結果から明らかなように、一般式(1)に示したリン系化合物を含有しない比較例1は60分後の摩擦係数(μ60)が0.138であるのに対し、該リン系化合物を含有する比較例2は、μ60が0.153と明らかに高いことが分かる。また、該リン系化合物と他のリン化合物を併用した比較例3は更に優れたμ60を示している。しかし、比較例2、及び比較例3は摩擦調整剤を含有していないため、シャダー防止寿命を有さない。
シャダー防止耐久性を付与させるためには摩擦調整剤の配合が必須であるが、本発明で用いるもの以外の摩擦調整剤を配合した場合、比較例4のように摩擦調整剤としての効果が全く見られないか、比較例5、6のようにシャダー防止耐久性が付与されても著しくμ60を低下させてしまう。
一方、参考例1〜3として示したのは市販されている無段変速機油である。参考例1は現在の市販油の中でも高いμ60を有するが、比較例2、3に比べるとμ60は低く、また亜鉛が配合されており、シャダー防止寿命を有さない。これに対し参考例1及び2はシャダー防止耐久性を付与させたものであるが、μ60は比較例6にも及ばない。
これらに対し、本発明品である一般式(1)と一般式(2)の化合物を両方含む実施例1、2の無段変速機油は、比較例2と比べるとμ60は低いものの、参考例1よりも高いμ60を有し、かつ十分なシャダー防止耐久性も有していることが分かる。言い換えると、シャダー防止耐久性を有する無段変速機油の中で、本発明である実施例1及び2の無段変速機油は、格段に優れた摩擦係数(μ60)を有している。

Claims (3)

  1. 主要量の潤滑油基油、
    (A)少なくとも1種の下記の一般式(1)で表されるリン系化合物を、該リン系化合物由来のリン量として組成物全量基準で0.005〜0.15質量%、及び
    (B)少なくとも1種のポリカルボキシレート化合物を組成物全量基準で0.1〜10.0質量%
    含有することを特徴とする無段変速機油組成物。
    Figure 0005431860

    (一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ個別に水素原子、又は炭素数が1〜30のヒドロカルビル基を示し、R5は炭素数が1〜30のヒドロカルビレン基を示し、X1及びX2はそれぞれ個別に酸素原子、又は硫黄原子を示し、nは1〜10の整数を表す。)
  2. 上記(B)成分のポリカルボキシレート化合物が下記の一般式(2)で表される化合物でなることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機油組成物。
    Figure 0005431860

    (一般式(2)中、R6は炭素数が1〜30のヒドロカルビレン基を示し、Y1及びY2はそれぞれ個別に水素原子、又は炭素数が1〜30のヒドロカルビル基、又は−CH2−O−C(=O)−R7(ここで、R7は炭素数1〜26のヒドロカルビル基である)を示し、mは2〜30の整数を表す。)
  3. 更に、
    (C)コハク酸イミド系分散剤を組成物全量基準で0.5〜10.0質量%、及び
    (D)アルカリ土類金属系清浄剤を組成物全量基準で0.05〜1.0質量%
    含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の無段変速機油組成物。
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