JP5427815B2 - マグネシウム合金及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、グネシウム合金及びその製造方法に関する。
マグネシウムは比重が1.7の金属で、商用金属材料の中で一番軽いだけでなく比強度及び比剛性が鉄やアルミニウムより優秀である。また、ダイカスト鋳造工法で製造する場合に優れた機械的特性を示すので、近年自動車部品の分野を中心として携帯用電子部品、航空機及びスポーツ用品などの多様な分野に使われている。マグネシウム合金を自動車部品に適用することで30%の軽量化をなすことができる。
近年、商用化されたダイカスト用マグネシウム合金の中で代表的なものはAZ91D、AM50、AM60などのMg−Al系合金である。これらは他のダイカスト用合金に比べて価格が安くて鋳造性が良く、特に常温で凝固するとき、β−Mg17Al12相を生成して高強度を示す。しかし、自動車及び航空機部品の場合、150℃〜200℃の高温環境で使われるが、β相の劣悪な熱安定性は合金のクリープ抵抗性を低下させる。その結果、高温環境で使われるこれらの製品に適用するのには適合しないという欠点がある。
90年代以後に高温用マグネシウム合金を開発して最適化しようとする努力が行われている。高温用マグネシウム合金は大別してダイカスト用マグネシウム合金と砂型鋳造用マグネシウム合金とに区別される。これは対象部品の使用温度差による合金の組成と製造方式の違いによるものである。高温用マグネシウム合金として適合するようにするために要求される特性はダイカストに適した鋳造性であり、耐腐食性と耐酸化性も要求される。また、スチール及びアルミニウムとの競争力を考慮すると、費用的な側面で高費用の添加元素を排除する合金の開発が要求される。
この要求条件を満たすために既存に開発された高温用マグネシウム合金を検討すれば、稀土類元素(RE)の添加割合が高い合金の場合、費用の面で欠点があり、アルカリ土類金属(Ca、Sr)を添加する場合、溶湯流動性の低下、熱間亀裂、金型粘着などの鋳造性が著しく悪くなる問題点を示している。
したがって、本発明の目的は、マグネシウム合金元素として広く知られたCaの酸化物形態、つまりCaOをマグネシウム溶湯に添加してCaOを還元させ、CaOから還元されたCaがMgまたはAlと反応して相を形成し、熱的に不安定なβ−Mg17Al12相の生成を抑制させることで、高温での強度向上及び変形抵抗性が向上した高温用マグネシウム系合金及びその製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、マグネシウム合金にアルカリ土類金属酸化物、つまりCaOを添加して、酸化物、介在物及び気孔の減少などの鋳物の内部健全性を向上させて軟性及び強度を同時に向上させることができる高温用マグネシウム系合金及びその製造方法を提供することである。
マグネシウム合金は一般的に使われる製品が使用環境温度によってそれぞれの合金の用途が決定され、通常90℃、120℃、150℃などに使用環境温が区分される。本発明のさらに他の目的は、90℃以上の温度だけでなく120℃及び175℃以上の高温でも使用可能な高温用マグネシウム合金を提供することである。
本発明が達成しようとする技術的課題は前述した技術的課題に制限されなく、前述しなかった他の技術的課題は下記の記載から本発明が属する技術分野で通常の知識を持った者に明らかに理解可能であろう。
前記課題を達成するための本発明のマグネシウム系合金を製造する方法は、マグネシウムまたはマグネシウム合金を液状に溶解する段階;前記マグネシウムまたはマグネシウム合金が溶解された溶湯の表面にCaOを0.5〜4.0wt%添加する段階;前記溶湯と添加された前記CaOの表面還元反応によって、マグネシウムまたはマグネシウム合金中にCaOを残留しないように消尽させる段階;及び前記表面反応によって生成されたCaを前記マグネシウムまたはマグネシウム合金中で少なくとも一部反応させて化合物を形成させる段階;を含む。
前記マグネシウムまたはマグネシウム合金が溶解された溶湯の表面に、最終Caの目標組成の重量の1.4倍のCaOを添加することができる。
前記添加されるCaOは1.0〜3.5wt%であってもよく、前記Caは0.8wt%〜2.4wt%であってもよい。
前記Mg合金の最終組成は、Al:6.0〜8.0wt%、Mn:0.1〜0.3wt%、Sr:0.2〜0.3wt%、Zn:0.04wt%未満、Sn:0.9wt%未満、及びMg残部であることができる。
前記形成される化合物は、MgCa、AlCa及び(Mg、Al)Caの中で少なくとも1種であることができる。
前記課題を達成するための本発明のマグネシウム系合金は、マグネシウムまたはマグネシウム合金の溶湯にCaOを0.5〜4.0wt%添加し、前記CaOの還元反応によって前記CaOが一部または全部消尽された結果として製造されたMg合金であり、前記マグネシウム系合金中のMg元素または合金をなす他の元素とCaが結合して形成された化合物を存在させる。
前記添加されるCaOは1.0〜3.5wt%であってもよく、前記生成されるCaの量は0.8wt%〜2.4wt%であってもよい。
前記Mg合金の最終組成は、Al:6.0〜8.0wt%、Mn:0.1〜0.3wt%、Sr:0.2〜0.3wt%、Zn:0.04wt%未満、Sn:0.9wt%未満、及びMg残部であることができる。
前記形成される化合物は、MgCa、AlCa及び(Mg、Al)Caの中で少なくとも1種であることができる。
前記課題を達成するための本発明のマグネシウム系合金は、マグネシウムまたはマグネシウム合金の溶湯にCaOを0.5〜4.0wt%添加し、前記CaOの還元反応によって前記CaOが一部または全部消尽された結果として製造されたMg合金であり、前記マグネシウム系合金中のMg元素または合金をなす他の元素とCaが結合して形成された化合物を存在させる。
前記添加されるCaOは1.0〜3.5wt%であってもよく、前記生成されるCaの量は0.8wt%〜2.4wt%であってもよい。
前記Mg合金の最終組成は、Al:6.0〜8.0wt%、Mn:0.1〜0.3wt%、Sr:0.2〜0.3wt%、Zn:0.04wt%未満、Sn:0.9wt%未満、及びMg残部であることができる。
形成される前記化合物は、MgCa、AlCa及び(Mg、Al)Caの中で少なくとも1種であることができる。
前記課題を達成するための本発明のマグネシウム系合金は、マグネシウムまたはマグネシウム合金の溶湯にCaOを添加し、前記CaOの還元反応によって製造されたMg合金であり、Caを直接添加して製造された同一組成のMg合金に比べ、常温機械的物性の強度と伸び率が同時に増加する。
以上説明したように、本発明は、商用マグネシウム合金にCaOを添加すれば、マグネシウム合金の組職が微細化し、AlCa相などが形成される。そして、熱的に不安定なβ−Mg17Al12相の形成が抑制され、鋳造欠陷が大幅減少する。その結果、マグネシウム合金の高温での降伏強度、引張強度が増加し、既存のマグネシウム合金とは異なり、伸び率は高温で急激に増加することが抑制される。
また、高温での変形が抑制されて高温クリープ変形率が減少する。よって、高温クリープ抵抗性が増大する。
本発明によるマグネシウム系合金の製造方法を示すフローチャートである。 本発明においてマグネシウム溶湯に添加されたアルカリ土類金属酸化物(CaO)の解離を示すフローチャートである。 本発明においてマグネシウム溶湯上部層の撹拌によるアルカリ土類金属酸化物(CaO)解離を示す概略図である。 商用MRI153合金の微細組職写真である。 本発明においてCaOを用いて製造されたEco−MRI153合金(Eco−MRI153)の微細組職写真である。 本発明によるマグネシウム系合金の製造方法によって製造されたマグネシウム合金のTEM写真である。 本発明によるマグネシウム系合金の製造方法によって製造されたマグネシウム合金のTEM写真である。 本発明によるマグネシウム系合金の製造方法によって製造されたマグネシウム合金のTEM写真である。 本発明によるマグネシウム系合金の製造方法によって製造されたマグネシウム合金のTEM写真である。 本発明においてCaO含量を変えながら製造されたマグネシウム合金の降伏強度を150℃で測定したグラフである。 本発明においてCaO含量を変えながら製造されたマグネシウム合金の引張強度を150℃で測定したグラフである。 本発明においてCaO含量を変えながら製造されたマグネシウム合金の伸び率を150℃で測定したグラフである。 CaOを用いて製造したMRI153とMRI230(Eco−MRI153とEco−MRI230)と、Caを用いて製造したMRI153とMRI1230Mg合金の常温機械的特性を比較したグラフである。 CaOを用いて製造したMRI153とCaを用いて製造したMRI153の高温(150℃)での機械的特性を比較したグラフである。 本発明によってCaOを添加して組成を調整したMRI153(Eco−MRI153)と比較例によってCaを添加して組成を調整したMRI153の常温と高温での降伏強度を比較したグラフである。 本発明によってCaOを添加して組成を調整したMRI153(Eco−MRI153)と比較例によってCaを添加して組成を調整したMRI153の常温と高温での引張強度を比較したグラフである。 本発明によってCaOを添加して組成を調整したMRI153(Eco−MRI153)と比較例によってCaを添加して組成を調整したMRI153の常温と高温での伸び率を比較したグラフである。 本発明によってCaOを添加して組成を調整したMRI153(Eco−MRI153)と比較例によってCaを添加して組成を調整したMRI153のクリープ変形率(200hr、50Mpa及び150℃)を比較したグラフである。 本発明によってCaOを添加して組成を調整したMRI230(Eco−MRI230)と比較例によってCaを添加して組成を調整したMRI230のクリープ変形率(200hr、70Mpa及び175℃)を比較したグラフである。
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施例を詳細に説明する。図面において、同一構成要素はどの図でも同一符号で示す。また、本発明の要旨を不必要にあいまいにすることができる公知の機能及び構成についての詳細な説明は省略する。
本発明は、酸化カルシウムをマグネシウム溶湯に添加して新規の合金を製造する方法、及びその合金によって、前記カルシウムをマグネシウムに添加するときの問題点を解決し物性的限界を克服しようとする。
図1は本発明によるマグネシウム系合金の製造方法を示すフローチャートである。
図1に示すように、本発明によるマグネシウム系合金の製造方法は、マグネシウム系溶湯形成段階(S1)、アルカリ土類金属酸化物(本発明においては、酸化カルシウム:CaO)添加段階(S2)、撹拌段階(S3)、アルカリ土類金属酸化物消尽段階(S4)、アルカリ土類金属(本発明においては、カルシウム:Ca)反応段階(S5)、鋳造段階(S6)、及び凝固段階(S7)を含む。前記アルカリ土類金属酸化物消尽段階(S4)と前記アルカリ土類金属反応段階(S5)は説明の便宜上別個の段階に分離したが、両工程(S4、S5)はほぼ同時に行われる。すなわち、段階(S4)でアルカリ土類金属が供給され始めれば、段階(S5)が行われ始める。
前記マグネシウム系溶湯形成段階(S1)においては、マグネシウムまたはマグネシウム合金をるつぼに入れ、保護ガス雰囲気で400〜800℃の温度を提供する。すると、前記るつぼ内のマグネシウム合金は溶解されてマグネシウム系溶湯を形成する。
マグネシウムまたはマグネシウム合金の溶解温度
本発明において、マグネシウムまたはマグネシウム合金の溶解のための温度は純粋マグネシウム金属がとける温度とマグネシウム合金がとける温度を意味する。合金の種類によって溶融温度には差があり得る。十分な反応のためには、マグネシウムまたはマグネシウム合金がまったく溶解された状態で酸化カルシウムが投入される。マグネシウムまたはマグネシウム合金の溶解温度は固相が充分にとけて完全な液状で存在する温度であれば十分である。ただ、本発明において、酸化カルシウムの添加によって溶湯の温度が低下する点を考慮し、充分な余裕を持つ温度範囲で溶湯を維持する作業が必要である。
ここで、温度が400℃未満であればマグネシウム合金溶湯が形成されにくく、温度が800℃を超えればマグネシウム系溶湯が発火する危険がある。そして、前記マグネシウムの場合はたいてい600℃以上で溶湯を形成するが、マグネシウム合金の場合は600℃以下400℃以上でも溶湯が形成できる。一般に、金属学によれば、合金化につれて溶融点が下がる場合が多い。
溶解温度をあまり高める場合には、液体金属の気化が発生し、マグネシウムの特性上易しく発火して溶湯量の損失をもたらすことができ、最終物性にも悪影響を及ぼすことができる。
前記マグネシウム系溶湯形成段階に用いられたマグネシウムは、純粋マグネシウム、マグネシウム合金及びその等価物の中で選ばれた1種であることができる。また、前記マグネシウム合金は、AZ91D、AM20、AM30、AM50、AM60、AZ31、AS41、AS31、AS21X、AE42、AE44、AX51、AX52、AJ50X、AJ52X、AJ62X、MRI153、MRI230、AM−HP2、マグネシウム−Al、マグネシウム−Al−Re、マグネシウム−Al−Sn、マグネシウム−Zn−Sn、マグネシウム−Si、マグネシウム−Zn−Y及びその等価物の中で選ばれた1種であることができるが、このようなマグネシウム合金に本発明を限定するものではない。通常に産業界で使われているどんなマグネシウム合金も使用が可能である。
前記アルカリ土類金属酸化物添加段階(S2)においては、前記マグネシウム溶湯に粉末状の酸化カルシウムを添加する。ここで、酸化カルシウムはマグネシウム合金との反応を促進させるために粉末状であることが好ましい。
酸化カルシウムの粉末状態
反応のために投入される酸化カルシウムはどんな形態で投入されてもかまわない。好ましくは、効率的な反応のために反応表面積を増大させるために粉末状の投入が好ましい。しかし、0.1μm未満とあまり微細な場合は、気化するマグネシウムや熱風によって飛散して炉に投入されにくくなる。そして、液状の溶融金属となかなか混じらなく、互いに凝集して塊になる。あまり粗大な場合には、前述したように表面積の増大の観点で好ましくない。理想的なパウダーの粒度は500μm以下にすることが好ましい。より好ましくは200μm以下であることが良い。
粉末状の飛散を防止するために、粉末状を凝集させたペレット状の酸化カルシウムを投入することも可能である。
投入されるアルカリ土類金属酸化物(酸化カルシウム)
溶湯に添加されるアルカリ土類金属酸化物として、本発明においては酸化カルシウム(CaO)が使われた。その他にも、SrO、BeOまたはMgO及びその等価物の中で選ばれた少なく1種であることができる。
前記アルカリ土類金属酸化物添加段階に用いられたアルカリ土類金属酸化物は一般に0.001〜30wt%が添加されることができる。
アルカリ土類金属酸化物の投入量は目的とする最終ターゲット合金組成によって決定される。すなわち、マグネシウム合金中に合金化させようとするCaの量によって逆計算してCaOの量を決定することができる。マグネシウム合金中にCaOから間接的に合金化するCaの量が21.4wt%(CaOの場合、30wt%)を超える場合にはマグネシウム合金の物性が元の物性から外れるため、前記投量を30.0wt%以下に調節することが好ましい。
本発明の高温用マグネシウム合金及びその製造方法のためのアルカリ土類金属酸化物の投入量は0.5〜4.0wt%である。アルカリ土類金属酸化物の投入量は4.0wt%以下であるとき、優れた高温機械的物性値を得ることができた。0.5wt%未満では前記物性値の改善効果が相対的に大きくなかった。前記組成は、より好ましくは1.0〜3.5wt%である。この際、優れた高温機械的物性値とは、相対的に高い高温降伏強度と高温引張強度、かつ相対的に低い高温伸び率と高温クリープ変形率を意味する。
本発明において、酸化カルシウム(CaO)の投入量は、還元されて生成されたカルシウムが最終Mg合金に0.8wt%〜2.4wt%含まれるように調節することがより好ましい。
前記撹拌段階(S3)においては、前記マグネシウム溶湯を、添加される酸化カルシウムの0.1wt%当たり1秒〜60分間撹拌する。
ここで、撹拌時間が0.1wt%当たり1秒未満であればマグネシウム溶湯に酸化カルシウムが充分に混じらなく、撹拌時間が0.1wt%当たり60分を超えればマグネシウム溶湯の撹拌時間が不必要に長くなることができる。一般に、撹拌時間は溶湯のサイズと投入される酸化カルシウムの量による。
酸化物粉末の投入において、所要量を一時に投入する方法も使うことができるが、反応を促進させ粉末の凝集可能性を低めるという側面では、一次投入の後に時間差を置いて再び投入するかあるいは適正量に分けて順次投入することも好ましい。
撹拌方法及び条件
本発明のマグネシウムまたはマグネシウム合金と酸化カルシウムとの効率的な反応のために撹拌が好ましい。一般に、撹拌の形態は、溶湯を収容している炉の周りに電磁場を印加することができる装置を備えることで電磁場を発生させて溶湯の対流を誘導することができる。また、外部から溶湯に人為的な撹拌(機械的な撹拌)を加えることができる。機械的な撹拌の場合、投入される酸化カルシウム粉末が凝集しないように適切に撹拌することもできる。本発明において、撹拌の究極の目的は溶湯と投入される粉末との還元反応を適切に誘導することにある。
撹拌のための時間は溶湯の温度と投入される粉末の状態(予熱状態など)などによって差があり得る。好ましくは、溶湯の表面で粉末が見えないまで撹拌することを原則とする。その理由は、粉末は比重が溶湯より低いので正常状態では溶湯上で流動することになり、溶湯上で粉末が見えないときは十分に反応されたと間接的に決定することができるからである。ここで、十分な反応とは酸化カルシウムが溶湯と実質的に全部反応して消尽された状態を意味する。
たとえ酸化カルシウム粉末が溶湯上で確認されないとしても溶湯中に存在する可能性も排除することができないため、撹拌時間の後に維持時間を置いて未だ浮上しなかった粉末の存在を確認し、未だ反応しなかった粉末の反応を終える時間を付与する維持時間が必要なこともある。
撹拌の時期
撹拌の時期は酸化物粉末の投入と同時に行うことが有効である。また、酸化物が溶湯から熱を受けて一定温度以上に到逹した後、撹拌を始めて、反応を促進させることもできる。溶湯の表面で投入された酸化物の粉末が感知されないまで撹拌を続ける。酸化カルシウムが反応によって全部消尽された後に撹拌を完了する。
表面反応
一般に、溶湯にアルカリ土類金属の中でCaとSrを直接添加する場合には、比重差によって低比重のマグネシウム溶湯中に沈みながら反応が起こる。したがって、Caの溶解に役立てるために、単に溶湯を掻きまぜることで合金化がなされる。
一方、溶湯に酸化カルシウムを投入する場合には、比重差によって溶湯中に沈まないで溶湯の表面に浮遊することになる。
通常の金属合金化の場合には、溶湯と合金元素金属を対流(convection)または撹拌(stirring)させて積極的な反応を誘導することで、溶湯内で反応が起こるようにすることが一般的である。しかし、本発明の場合には、積極的な反応を誘導した場合には溶湯中に投入される酸化物が十分に反応しなくて最終の材料に残留して物性値を低下させるか欠陷の原因として作用した。すなわち、溶湯の表面でなくて溶湯中の反応を誘導する場合、溶湯の表面での反応よりは酸化カルシウムが最終溶湯中に残留する場合が相対的に多かった。
したがって、本発明においては、酸化物が溶湯中で反応するよりは溶湯の表面で反応するように反応環境を造成することが重要である。そのようにするためには、溶湯の表面で浮遊する酸化物を強制に溶湯中に掻きまぜないようにすることが重要である。酸化カルシウムを大気に露出される溶湯の表面で均一に拡散するように広げることが重要である。より好ましくは、酸化物を供給するとき、溶湯の表面全体を酸化物で塗布する方式で供給することが重要である。
撹拌を行わないよりは行うことが反応を促進させ、溶湯の内部よりは外部表面(上層部表面)で撹拌を行うことが反応をより促進させた。すなわち、溶湯は外部表面(上層部表面)で大気に露出された酸化物粉末との反応を一層促進させた。真空または雰囲気ガスの下では結果が良くはなかった。十分な反応のためには、上層部の撹拌を行って表面反応を誘導することが必要である。ここで、十分な反応とは投入されるアルカリ土類金属酸化物が溶湯とすべて反応して溶湯中に実質的に残留しない反応を意味する。本発明において、このような表面反応を誘導する撹拌を表面撹拌と言う。すなわち、Mg溶湯の表面に添加されたCaOの還元反応(表面還元反応)によって生成されたCaはMgまたはMg合金の合金化元素として作用する。
下記の表1はAM60Bマグネシウム合金の溶湯に70μmの粒度を有する5、10、15wt%の酸化カルシウムをそれぞれ添加してから撹拌する方法によるマグネシウム合金内の酸化カルシウムの残量を測定した。撹拌の方法としては、溶湯の上層部撹拌、溶湯の内部撹拌、そして残りの一つは撹拌を行わなかった。この際、上層部の撹拌は溶湯の表面から溶湯の全深さの10%前後の上層部で行った。撹拌条件を変えることで、撹拌の上層部のみを撹拌する場合が撹拌しなかった場合及び内部撹拌を行った場合に比べて、酸化カルシウムの残量は5、10、15wt%酸化カルシウムを添加するとき最終残留量がそれぞれ0.001、0.002、0.005wt%で、最少量で残留することを確認することができた。すなわち、CaOをMg溶湯の表面で反応させるために溶湯の上層部を撹拌した場合、添加されたCaOは大部分がCaに分離されることが分かる。すなわち、商用AM60Bの合金にさらにCaOを添加して還元反応を誘導することで合金中にCaを添加した。
酸化カルシウムの酸素成分は前記溶湯の上部層の撹拌によって実質的に溶湯表面上に除去される。前記撹拌は前記溶湯表面から溶湯の全深さの20%前後の上層部でなされることが良い。20%以上の深さでは本発明において好ましい例示として提示した表面反応が起こりにくい。より好ましくは、前記溶湯表面から溶湯の全深さの10%前後の上層部で撹拌がなされることが良い。これは、実質的に浮遊する酸化カルシウムを実際に溶湯の深さの10%上位層に位置するように誘導することで溶湯の撹乱を最小化することができた。
前記アルカリ土類金属酸化物の消尽段階(S4)においては、前記溶湯と前記添加された酸化カルシウムの反応によって、酸化カルシウムがマグネシウム合金中にごく一部が残留するかあるいは実質的に残留しないように消尽される。本発明において投入される酸化カルシウムは十分な反応によって全部消尽されることが好ましい。しかし、一部反応されずに合金内に残っている場合であっても物性に大きな影響を及ぼさない場合にも有効である。
ここで、酸化カルシウムを消尽させるというのは、アルカリ土類金属酸化物から酸素成分を除去することである。前記酸素成分は酸素(O)ガスの形態で除去されるか、あるいは溶湯中のマグネシウムまたはその合金成分との結合によってドロス(dross)やスラッジ形態で除去できる。そして、前記酸素成分は溶湯上部層の撹拌によって実質的に溶湯表面上に除去される。
図3は本発明においてマグネシウム溶湯の上部層の撹拌による酸化カルシウムの解離を例示する断面図である。
前記アルカリ土類金属反応段階(S5)においては、前記酸化カルシウムの消尽結果として生成されたカルシウムをマグネシウム合金中にごく一部残留するかあるいは実質的に残留しないように反応させることになる。ここで、消尽結果として生成されたカルシウムは前記マグネシウム合金中のマグネシウム、アルミニウム、及び前記溶湯中のその他の合金元素(成分)の中で少なくとも1種と化合物を形成して実質的に残留しないようにするものである。ここで、化合物とは金属と金属が結合してなった金属間化合物を示す。
結局、添加された酸化カルシウムは溶湯であるマグネシウム合金との反応によって酸素成分の少なくとも一部あるいは実質的に全部が除去され、生成されたカルシウムはマグネシウム合金中のマグネシウム、アルミニウム、及び前記溶湯中のその他の合金元素の中で少なくとも1種と化合物を形成することによりマグネシウム合金中にごく一部が残留するかあるいは実質的に残留しなくなる。
前記アルカリ土類金属酸化物の消尽段階(S5)では、溶湯の表面でアルカリ土類金属酸化物が還元反応するとき、火花が発生する。このような火花は還元反応が完了したかを確認する指標として用いることができる。火花が発生する間に出湯を行って反応を終結させれば、添加されたアルカリ土類金属酸化物が全部消尽されない場合が発生することになる。すなわち、出湯は還元反応の間接測定手段である火花が終了した後に実施する。
これまで説明した過程は図1及び図2に示されている。図2は本発明においてマグネシウム溶湯に添加されて使われる酸化カルシウムの解離を示すフローチャートである。
一方、鋳造段階(S6)においては、前記マグネシウム溶湯を常温または予熱状態の鋳型に入れて鋳造する。ここで、前記鋳型は、金型、セラミック型、グラファイト型及びその等価物の中で選ばれたいずれか1種を用いることができる。また、鋳造方式は、重力鋳造、連続鋳造またはその等価の方式が可能である。
前記凝固段階(S7)においては、前記鋳型を常温に冷却させた後、鋳型からマグネシウム合金(例えば、マグネシウム合金インゴット)を取り出す。
前記のような製造方法によって製造されたマグネシウム系合金は硬度(HRF)が40〜80であることがある。しかし、このような硬度値は加工方法及び熱処理などによって多様に変わるので、このような硬度値に本発明によるマグネシウム系合金を限定するものではない。
純粋なマグネシウム溶湯の場合には、溶湯中のマグネシウム成分はアルカリ土類金属と反応してマグネシウム(アルカリ土類金属)化合物を形成する。本発明においては、アルカリ土類金属酸化物がCaOの場合であり、MgCaが形成される。そして、CaOをなしていた酸素はOになって溶湯の外に排出されるか、あるいはMgと結合してMgOになり、ドロスの形態で排出される。(下記の反応式1参照)
反応式1
純粋Mg+CaO→Mg(マトリックス)+MgCa
・・・[O発生+MgOドロス発生]
マグネシウム合金溶湯の場合には、溶湯中のマグネシウム成分はアルカリ土類金属と反応してマグネシウム(アルカリ土類金属)化合物またはアルミニウム(アルカリ土類金属)化合物を形成する。また、マグネシウムまたはアルミニウムとともにマグネシウム合金元素がアルカリ土類金属と化合物を形成する。本発明においては、アルカリ土類金属酸化物がCaOの場合は、MgCa、AlCa、または(Mg、Al、その他の合金元素)Caが形成される。そして、CaOをなしていた酸素は純粋マグネシウムの場合と同様にOになって溶湯の外に排出されるか、あるいはMgと結合してMgOになり、ドロスの形態で排出される。(下記の反応式2参照)
反応式2
Mg合金+CaO→Mg合金(マトリックス)+
{MgCa+AlCa+(Mg、Al、その他の合金元素)Ca}
・・・[O発生+MgOドロス発生]
以上説明したように、本発明は従来のマグネシウム合金の生産方法に比べ、より経済的にマグネシウム合金を製造する工法である。アルカリ土類金属(例えば、Ca)は相対的にアルカリ土類金属酸化物(例えば、CaO)に比べ高価の合金元素で、マグネシウム合金の値段を上昇させる要因として作用する。また、アルカリ土類金属酸化物をアルカリ土類金属の代わりにマグネシウムまたはマグネシウム合金に添加するので相対的に合金化することが容易である。一方、アルカリ土類金属(例えば、Ca)を直接添加しないで、化学的に安定したアルカリ土類金属酸化物(例えば、CaO)を添加することで同一またはそれ以上の合金化効果が発生させることができる。すなわち、Mg溶湯に添加されたCaOの還元反応によって生成されたCaはMgまたはMg合金の合金化元素として作用する。
また、アルカリ土類金属をマグネシウムまたはマグネシウム合金に直接投入する場合、マグネシウム合金においてアルカリ土類金属の固溶化が一定量発生するが、本発明の技術を活用した場合には、アルカリ土類金属酸化物(CaO)を添加するときに固溶される程度がアルカリ土類金属(Ca)を直接添加する場合に比べて固溶がないかあるいはごく少ない。Caを直接添加する場合に比べ、CaOによって間接添加する場合、AlCa相を含んで金属間化合物が一層容易に生成されることが確認された。したがって、マグネシウム合金の物性を向上させるためには一定比率以上のアルカリ土類金属の添加が必要であるが、アルカリ土類金属酸化物を添加してマグネシウム合金を製造する場合には、アルカリ土類金属の相当量が直接マグネシウムまたはAlの金属間化合物(例えば、MgCaまたはAlCa)を形成することにより、Caを直接投入した場合より物性が向上することが分かる。AlCaなどの他の金属間化合物の形成は、結晶粒界に約95%以上、かつ残りの約5%未満は結晶粒内に形成されることが確認された。
図4Aは商用MRI153合金の微細組職写真、図4Bは本発明によって製造されたEco−MRI153合金の微細組職写真である。ここで、Eco−MRI153合金は、商用MRI153合金組成と同一のCaの含量のために、CaOの代わりに添加し、還元反応によって合金中に該当のCa含量を合金化したMg合金を示す。本発明において、‘CaOの添加’の意味は添加後に還元反応過程を経ることを意味する。
高温用製品のためのマグネシウム系合金の一実施例のために、マグネシウムまたはマグネシウム合金の溶湯にCaOを添加し、還元反応によって合金中に最終Caを0.98wt%生成させた。その他の合金の組成は、Al:7.95wt%、Mn:0.20wt%、Sr:0.27wt%、Zn:0.01wt%未満、Sn:0.01wt%未満に調整して、商用合金のMRI153と同一合金組成を製造した。
ここで、商用合金のMRI153の組成は、Al:7.95wt%、Ca:0.98wt%、Mn:0.20wt%、Sr:0.27wt%、Zn:0.01wt%未満、Sn:0.01wt%未満のMg合金である。比較例は、直接Caを添加してMRI153合金組成を製造した。
図4A及び図4Bを比較すると、CaOの添加で製造されたMRI153(Eco−MRI153)が、Caを直接添加して製造した商用MRI153合金の組職より微細化するとともに鋳造欠陷もほぼないことが分かる。
さらに他の実施例のために、マグネシウムまたはマ グネシウム合金の溶湯にCaOを添加し、還元反応によって合金中に最終Caを2.25wt%生成させた。その他の合金の組成は、Al:6.45wt%、Mn:0.27wt%、Sr:0.25wt%、Zn:0.01wt%未満、Sn:0.84wt%未満に調整して商用合金のMRI230合金と同一の合金組成を製造した。
ここで、商用合金のMRI230合金の組成は、Al:6.45wt%、Ca:2.25wt%、Mn:0.27wt%、Sr:0.25wt%、Zn:0.01wt%未満、Sn:0.84wt%未満、及びMg残部である。比較例として、直接Caを添加してMRI230合金組成を製造した。
製造した2種のMRI230合金(Eco−MRI230と商用MRI230)においても、前記実施例と同様に、Eco−MRI230が商用MRI230の組職より微細で鋳造欠陷がほぼないことを確認することができた。
本発明のMg合金の最終組成は、商用MRI153とMRI230のそれぞれの合金成分の上限と下限を含む範囲で調節することもできる。一例として、Alの場合、前記下限と上限である6.45と7.95wt%を含む6.0〜8.0wt%内で実施可能である。すなわち、Al:6.0〜8.0wt%、Ca:0.8〜2.4wt%、Mn:0.1〜0.3wt%、Sr:0.2〜0.3wt%、Zn:0.04wt%未満、Sn:0.9wt%未満の範囲で実施可能である。このような実施例のために、本発明においてCaOの添加量は、還元されたカルシウムが最終Mg合金の0.8wt%〜2.4wt%含まれるように調節して添加する。すなわち、Ca量の1.4倍である1.12〜3.36wt%にCaOの投入量を調節することができる。
投入されるCaOの全量は、投入されるすべてのCaOがCaに還元されるという仮定の下で最終Caの目標組成の重量の1.4倍を投入すれば良い。ここで、CaOを用いて合金化するCaの目標量のために、溶湯に投入されるCaOの量は最終Caの目標組成の重量の1.4倍〜1.7倍のCaOを添加する。溶湯と反応せずに溶湯表面のドロスと混合することができる量を考慮して、投入されるCaOの量は1.4倍〜1.7倍前後で投入可能である。
図5A〜図5Dは本発明によるマグネシウム系合金の製造方法によってAZ61マグネシウム合金に1.8wt%CaOを添加して製造されたマグネシウム合金のTEM写真の成分分析を示す。図5Aはマグネシウム、図5Bはアルミニウム、図5Cはカルシウムの成分が検出されることを示す。同図から、アルミニウムとカルシウムが同一相で検出されることが分かる。これは、マグネシウム溶湯に添加されたCaOからCaが分離されて溶湯中のアルミニウムと結合して化合物を形成したことを意味する。
下記の表2は前記相の組成に対する定量的な量である。AlとCaによって化合物が形成され、その相の定量的な成分分析によってAlCa相が形成されたことが分かる。AlCa相の形成による粒界強化と熱的に不安定なβ−Mg17Al12相の形成の抑制によってマグネシウム合金の高温特性が向上する。このような理由は、CaOの添加によって均一に分布して相形性されるAlCaまたはその他の相形性物(MgCa及び(Mg、Al、その他の合金元素)Ca)であると判断される。
図6はマグネシウム合金に酸化カルシウムを添加したときの降伏強度(TYS)を示したグラフである。この際、実験条件は、150℃で引張試片を30分間維して後、1mm/minで引張試験を実施した。
実施例においては、AM60Bマグネシウム合金に酸化カルシウムを0.5wt%〜3.8wt%の範囲で添加して実験した。実験のために、商用AM60Bの合金にさらにCaOを添加して還元反応を誘導することで合金中にCaを添加した。
マグネシウム合金に酸化カルシウム0.9wt%を添加する場合、降伏強度がおよそ140〜145[MPa]であり、マグネシウム合金に酸化カルシウム1.4wt%を添加する場合、降伏強度がおよそ150[MPa]程度であり、マグネシウム合金に酸化カルシウム3.5wt%を添加する場合、降伏強度がおよそ150[MPa]程度であった。
このような酸化カルシウムのwt%による降伏強度は下記の表3のとおりである。
表3において、0.5〜0.9wt%は90℃の高温で使用可能な程度の降伏強度を示し、それ以上の含量では150℃以上で適切な高温特性を示す。すなわち、マグネシウム合金に酸化カルシウム1.0〜3.5wt%程度を添加したとき、降伏強度が相対的に高温で一層優れることが分かる。
図7はマグネシウム合金に酸化カルシウムを添加したときの引張強度(UTS)を示したグラフである。この際、実験条件は、150℃で引張試片を30分間維持した後、1mm/minで引張試験を実施した。
実施例においては、AM60Bマグネシウム合金に酸化カルシウムを0.5wt%〜3.8wt%の範囲で添加して実験した。実験のために、商用AM60Bの合金にさらにCaOを添加して還元反応を誘導することで合金中にCaを添加した。
マグネシウム合金に酸化カルシウム0.9wt%を添加する場合、引張強度がおよそ225[MPa]程度であり、マグネシウム合金に酸化カルシウム1.4wt%を添加する場合、引張強度がおよそ239[MPa]程度であり、マグネシウム合金に酸化カルシウム3.5wt%を添加する場合、引張強度がおよそ232[MPa]程度であった。
このような酸化カルシウムのwt%による引張強度は下記の表4のとおりである。
表4において、0.5〜0.9wt%では90℃高温で使用可能な程度の引張強度を示し、それ以上の含量では150℃以上で適合した高温特性を示す。すなわち、マグネシウム合金に酸化カルシウム1.0〜3.5wt%程度を添加したとき、引張強度が相対的に高温で一層優れることが分かる。
図8はマグネシウム合金に酸化カルシウムを添加したときの伸び率(elongation)を示したグラフである。この際、実験条件は、150℃で引張試片を30分間維持した後、1mm/minで引張試験を実施した。
実施例においては、AM60Bマグネシウム合金に酸化カルシウムを0.5wt%〜3.8wt%の範囲で添加して実験した。実験のために、商用AM60Bの合金にさらにCaOを添加して還元反応を誘導することで合金中にCaを添加した。
図8に示すように、マグネシウム合金に酸化カルシウム0.9wt%を添加する場合、伸び率がおよそ13〜14[%]程度であり、マグネシウム合金に酸化カルシウム1.4wt%を添加する場合、伸び率がおよそ14〜15[%]であり、マグネシウム合金に酸化カルシウム3.5wt%を添加する場合、伸び率がおよそ14[%]程度であった。
このような酸化カルシウムのwt%による伸び率は下記の表5のとおりである。
図9はCaOを用いて製造したEco−MRI153とEco−MRI230組成のMg合金と、Caを用いて製造したMRI153とMRI1230の組成のMg合金の常温機械的特性を比較したグラフである。
図9に示すように、常温においても本発明による高温用マグネシウム系合金(Eco−MRI153とEco−MRI1230)がMRI153とMRI230合金に比べて降伏強度(YS)、引張強度(UTS)及び伸び率に優れることが分かる。すなわち、Eco−MRI153とEco−MRI230がCaを用いて製造したMRI153とMRI1230合金より常温機械的物性に一層優れた。
図10はCaOを用いて製造したEco−MRI153合金とCaを用いて製造したMRI153合金の高温機械的特性を比較したグラフである。
図10に示すように、高温(150℃)においても、本発明によるマグネシウム系合金(Eco−MRI153)がMRI153合金に比べて降伏強度と引張強度に優れることが分かる。高温伸び率の場合は、本発明のEco−MRI153がMRI153より低かった。本発明によるマグネシウム系合金は高温で伸び率の変化量が小さくて温度変化にも安定した機械的特性を示すことが分かる。すなわち、CaOを用いて製造した本発明によるマグネシウム系合金が高温でも降伏強度及び引張強度だけでなく伸び率にも優れた。
図11はCaOを添加してCaの組成を間接的に調整したEco−MRI153とCaを直接添加して組成を調整したMRI153の常温と高温での降伏強度を比較したグラフである。Eco−MRI153の場合、MRI153に比べて高温降伏強度が8%程度増加することが分かる。
図12はCaOを添加してCaの組成を間接的に調整したEco−MRI153とCaを添加して組成を調整したMRI153の常温と高温での引張強度を比較したグラフである。常温及び高温(150℃)でCaOを添加して製造したEco−MRI153がCaを直接添加して製造した同一組成のMRI153より降伏強度と引張強度が高いことが分かる。Eco−MRI153の場合、MRI153に比べて高温引張強度が8%程度増加することが分かる。特に、図11から、高温降伏強度の場合、本発明のCaOで組成を調整したEco−MRI153が著しく向上することを確認することができる。
図13はCaOを添加してCaの組成を間接的に調整したEco−MRI153とCaを添加して組成を調整したMRI153の常温と高温での伸び率を比較したグラフである。
常温での伸び率は、CaOを添加して製造したEco−MRI153の伸び率がCaを直接添加して製造した同一組成のMRI153より高かった。一方、高温では、CaOを添加して製造したEco−MRI153の伸び率がCaを直接添加した場合より低かった。Eco−MRI153の場合、MRI153に比べて、高温伸び率が42%程度減少することが分かる。特に、150℃の高温伸び率は、CaOを添加して組成を調整したEco−MRI153が著しく低かった。すなわち、CaOを添加して製造したMRI153は、Caを直接添加して製造したMRI153に比べ、温度による伸び率の変化が小さかった。
図14は、本発明によってCaOを添加してCaの組成を間接的に調整したEco−MRI153と比較例によってCaを添加して組成を調整したMRI153のクリープ変形率(200hr、50Mpa、及び150℃)を比較したグラフである。Caを添加して製造した商用MRI153合金よりはCaOを添加して製造したEco−MRI153合金がクリープ抵抗性に優れた。すなわち、クリープ変形率(伸び率)において、Eco−MRI153の合金がより低かった。
図15は本発明によってCaOを添加してCaの組成を間接的に調整したEco−MRI153と比較例によってCaを添加して組成を調整したMRI153のクリープ変形率(200hr、70Mpa、及び175℃)を比較したグラフである。
Caを添加して製造した商用MRI153合金よりは、CaOを添加して製造したEco−MRI153合金が高温でのクリープ抵抗性に優れた。すなわち、クリープ変形率において、Eco−MRI153の合金がより低かった。
以上説明したように、本発明は、商用マグネシウム合金にCaOを添加すれば、結果としてCaを間接的に合金化することが可能であり、これによりマグネシウム合金の高温機械的物性値が向上する結果をもたらした。CaOの添加によって製造されたマグネシウム合金の組職は相対的に微細化し、MgCa、AlCaまたは(Mg、Al)Ca相が均一に形成される。そして、熱的に不安定なβ−Mg17Al12相の形成が抑制され、鋳造欠陷が大幅減少する。その結果、マグネシウム合金の高温での降伏強度、引張強度が増加し、延伸率の場合、既存のマグネシウム合金とは異なり、高温での急激な伸び率の増加が抑制される。すなわち、高温伸び率及び高温クリープ変形率が減少し、よって高温クリープ強度が増大する。
以上本発明を好適な実施例に基づいて説明したが、本発明が属する技術分野で通常の知識を持った者であれば本発明の本質的な技術範囲内で前記本発明の詳細な説明とは異なる形態の実施例を具現することができるであろう。ここで、本発明の本質的な技術範囲は特許請求範囲によって決められ、それと同等な範囲内のすべての相違点は本発明に含まれるものに解釈されなければならない。
本発明は、高温用マグネシウム合金及びその製造方法に適用可能である。

Claims (15)

  1. マグネシウム系合金を製造する方法において、
    マグネシウムまたはマグネシウム合金を液状に溶解する段階;
    前記マグネシウムまたはマグネシウム合金が溶解された溶湯の表面にCaOを0.5〜4.0wt%添加する段階;
    前記溶湯と添加された前記CaOの表面還元反応によって、マグネシウムまたはマグネシウム合金中にCaOを残留しないように消尽させる段階;及び
    前記表面反応によって生成されたCaを前記マグネシウムまたはマグネシウム合金中で少なくとも一部反応させて化合物を形成させる段階;
    を含むことを特徴とする、マグネシウム系合金の製造方法。
  2. 前記マグネシウムまたはマグネシウム合金が溶解された溶湯の表面に、最終Caの目標組成の重量の1.4倍のCaOを添加することを特徴とする、請求項1に記載のマグネシウム系合金の製造方法。
  3. 前記添加されるCaOは1.0〜3.5wt%であることを特徴とする、請求項1に記載のマグネシウム系合金の製造方法。
  4. 前記Caは0.8wt%〜2.4wt%であることを特徴とする、請求項1に記載のマグネシウム系合金の製造方法。
  5. 前記Mg合金の最終組成は、Al:6.0〜8.0wt%、Mn:0.1〜0.3wt%、Sr:0.2〜0.3wt%、Zn:0.04wt%未満、Sn:0.9wt%未満、及びMg残部であることを特徴とする、請求項4に記載のマグネシウム系合金の製造方法。
  6. 前記形成される化合物は、MgCa、AlCa及び(Mg、Al)Caの中で少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載のマグネシウム系合金の製造方法。
  7. マグネシウム系合金において、
    マグネシウムまたはマグネシウム合金の溶湯にCaOを0.5〜4.0wt%添加し、前記CaOの還元反応によって前記CaOが一部または全部消尽された結果として製造されたMg合金であり、前記マグネシウム系合金中のMg元素または合金をなす他の元素とCaが結合して形成された化合物を存在させ
    前記Mg合金の最終組成は、Al:6.0〜8.0wt%、Mn:0.1〜0.3wt%、Sr:0.2〜0.3wt%、Zn:0.04wt%未満、Sn:0.9wt%未満、及びMg残部であることを特徴とする、マグネシウム系合金。
  8. 前記添加されるCaOは1.0〜3.5wt%であることを特徴とする、請求項7に記載のマグネシウム系合金の製造方法。
  9. 前記生成されるCaの量は0.8wt%〜2.4wt%であることを特徴とする、請求項7に記載のマグネシウム系合金。
  10. 前記形成される化合物は、MgCa、AlCa及び(Mg、Al)Caの中で少なくとも1種であることを特徴とする、請求項7に記載のマグネシウム系合金。
  11. マグネシウム系合金において、
    マグネシウムまたはマグネシウム合金の溶湯にCaOを0.5〜4.0wt%添加し、前記CaOの還元反応によって前記CaOが一部または全部消尽された結果として製造されたMg合金であり、前記マグネシウム系合金中のMg元素または合金をなす他の元素とCaが結合して形成された化合物を存在させ
    前記Mg合金の最終組成は、Al:6.0〜8.0wt%、Mn:0.1〜0.3wt%、Sr:0.2〜0.3wt%、Zn:0.04wt%未満、Sn:0.9wt%未満、及びMg残部であることを特徴とする、マグネシウム系合金。
  12. 前記添加されるCaOは1.0〜3.5wt%であることを特徴とする、請求項11に記載のマグネシウム系合金の製造方法。
  13. 前記生成されるCaの量は0.8wt%〜2.4wt%であることを特徴とする、請求項11に記載のマグネシウム系合金。
  14. 形成される前記化合物は、MgCa、AlCa及び(Mg、Al)Caの中で少なくとも1種であることを特徴とする、請求項11に記載のマグネシウム系合金。
  15. マグネシウム系合金において、
    マグネシウムまたはマグネシウム合金の溶湯にCaOを添加し、前記CaOの還元反応によって製造されたMg合金であることを特徴とする、マグネシウム系合金。
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