JP5427300B2 - べき級数型ディジタルプリディストータとその制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、べき級数型ディジタルプリディストータとその制御方法に関する。
移動通信において、送信用電力増幅器(以下、電力増幅器)は基地局もしくは移動局の送信アンテナから出力される送信信号を所定の電力まで増幅する役割を持つ重要な無線回路である。電力増幅器は大きな電力を扱うことから高い電力効率が望まれる。
一般に、電力増幅器を高効率動作させるために、電力増幅器の動作点を飽和出力近傍に設定すること、言い換えると電力増幅器の飽和出力からのマージンを示す出力バックオフを低減することが行われている。このとき、電力増幅器の非線形特性により帯域外歪成分(以下、歪成分)が発生する。特に、電力増幅器の動作点を飽和出力に近づけるほど歪成分は増加する.さらに、歪成分は周波数依存性を持つ。
一方、電力増幅器入力信号を見ると、近年、周波数利用効率の観点からOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)伝送が注目を集めている。OFDM信号は高い周波数利用効率を得られるが、平均電力対ピーク電力比(PAPR:Peak-to-Average Power Ratio)が高いという特徴を持つ。電力増幅器は飽和出力を超えて電力増幅器入力信号を増幅できないので、出力バックオフが電力増幅器入力信号のPAPRよりも低い場合、電力増幅器出力信号の波形がクリップされる。この場合でも電力増幅器出力信号に歪成分が生じる。
歪成分は隣接する周波数帯域を使用する無線通信システムへの干渉となる。そのため、各種無線通信システムの仕様で規定されたレベルまで歪成分を低減することが必須となる。
電力増幅器の非線形特性により生じる歪成分を低減する(補償するともいう)方法としてプリディストーション法に代表される歪補償法がある。プリディストーション法は、プリディストータを用いて電力増幅器で発生する歪成分を打ち消すような歪補償成分を電力増幅器入力信号に付加する。周波数依存性を持つ歪成分を補償するプリディストータとして、歪成分の周波数依存性を補償するべき級数型ディジタルプリディストータ(以下、ディジタルプリディストータという)がある。(例えば、非特許文献1)。
一方、波形クリップにより生じる歪成分は、歪補償法により補償できない。これは、電力増幅器が飽和出力を超えて信号を増幅できないためである。この歪成分を低減する方法としてクリッピングとフィルタリングを用いる方法に代表されるPAPR低減法がある。クリッピングとフィルタリングを用いる方法では、プリディストータの前段にて電力増幅器入力信号の振幅値を予め定めた閾値以下となるように波形をクリップした後、フィルタリングによりクリップにより発生した歪成分を低減する(例えば、非特許文献2)。
図1にクリッピングとフィルタリングを用いたPAPR低減装置の従来構成例、ディジタルプリディストータの従来構成例、及びその周辺装置をそれぞれ示す。この例では、I相とQ相から成るディジタル信号(サンプル列)を入力信号SINとして入力端子TINに入力した場合を示す。
PAPR低減装置10は、リミッタ11と、フィルタ12で構成される。リミッタ11は、PAPR低減装置10への入力信号SINの振幅値が予め定めた閾値よりも大きい場合、入力信号SINの振幅値を閾値でクリップする。フィルタ12は、リミッタ11により生じた歪成分を抑圧する。一般的にクリッピングとフィルタリングを用いたPAPR低減法では、フィルタリングにより閾値を超える振幅値が再び生じるため、所望のPAPRとなるまでクリッピングとフィルタリングを繰返す。
ディジタルプリディストータ20は、分配器21と、線形伝達経路22と、3次歪発生経路23と、合成器24と、ディジタルアナログ変換器(以下、DAC)25と、アナログディジタル変換器(以下、ADC)26と、歪観測器27と、制御器28とを含む。線形伝達経路22は、遅延器22Aを有する。3次歪発生経路23は、3次歪発生器23Aと3次歪ベクトル調整器23Bと3次歪周波数特性補償器23Cとを含む。分配器21は、線形伝達経路22と3次歪発生経路23にPAPR低減装置10からのI相とQ相から成る出力信号SINを分配する。合成器24は、線形伝達経路22の出力と3次歪発生経路23の出力を合成する。DAC25は、合成器24の出力(歪補償成分が付加されたI相とQ相のディジタル信号)をI相とQ相のアナログ信号に変換する。ADC26は、増幅装置30の出力SOUTの一部を帰還信号として取り込む帰還信号生成装置40の出力(I相とQ相のアナログ信号)をI相とQ相のディジタル信号に変換する。歪観測器27は、ADC26の出力から歪成分を検出する。制御器28は、歪観測器27の出力に基づき、3次歪ベクトル調整器23Bに設定する3次歪ベクトル調整器係数(振幅値と位相値)と3次歪周波数特性補償器23Cに設定する複数の3次歪周波数特性補償器係数(振幅値と位相値)を調整する。
増幅装置30は、ディジタルプリディストータの出力であるI相とQ相のアナログ信号を直交変調する直交変調器31と、変調出力の周波数をキャリア周波数に変換するアップコンバータ32と、周波数変換された高周波信号を電力増幅する電力増幅器33を含み、電力増幅された高周波信号は出力端子TOUTから出力信号SOUTとして、例えば図示してないデュープレクサを介してアンテナに供給される。
帰還信号生成装置40は、増幅装置30の出力SOUTの一部を帰還信号として取り出す方向性結合器41と、帰還信号を周波数変換するダウンコンバータ42と、ダウンコンバートされた帰還信号をI相とQ相のアナログ信号に直交復調する直交復調器43を含む。
3次歪発生器23Aは、分配器21から分配された信号を3乗し、3次歪成分を発生させる。3次歪ベクトル調整器23Bは、3次歪発生器23Aで発生された3次歪成分に制御器28から与えられた3次歪ベクトル調整器係数を乗算することで、3次歪成分の位相と振幅を調整する。3次歪周波数特性補償器23Cは、図2に示すように3次歪成分上側帯域FDUと3次歪成分下側帯域FDLについて合わせてM分割した各帯域(帯域fから帯域f)に対し、制御器28から与えられたそれぞれ異なる3次歪周波数特性補償器係数を乗算する。図2の入力信号帯域Fには、PAPR低減装置10、ディジタルプリディストータ20、増幅装置30を経た入力端子TINの入力信号SINが含まれる。
3次歪周波数特性補償器23Cの構成例を図3に示す。3次歪周波数特性補償器23Cは、シリアルパラレル変換部23C1と、J点FFT(Fast Fourier Transform)部23C2と、J個(J≧M)の複素乗算部23C3と、J点IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部23C4と、パラレルシリアル変換部23C5と、を備えている。シリアルパラレル変換部23C1は、3次歪ベクトル調整器23Bからの入力信号をシリアルパラレル変換する。J点FFT部23C2は、シリアルパラレル変換部23C1からの入力信号をJ個のサンプル毎に時間領域から周波数領域へ変換する。J点FFT部23C2の出力において帯域fに対応する出力信号は、帯域f1に対応する複素乗算部23C3に入力され、制御器28より与えられた3次歪周波数特性補償器係数を乗算することで振幅と位相が調整される。帯域f〜fについても同様となる。このとき、M個に分割した帯域に対応しないJ点FFT部23C2の出力(即ち、入力信号帯域Fに対応する出力、帯域f1よりも低い帯域に対応する出力、帯域fMよりも高い帯域に対応する出力)は、複素乗算部で係数を乗算されることなくJ点IFFT部23C4に入力される。J点IFFT部23C4は、前段からの入力信号をJ個のサンプル毎に周波数領域から時間領域に変換する。パラレルシリアル変換部23C5は、J点IFFT部23C4からの入力信号をJ個のサンプル毎にパラレルシリアル変換する。
制御器28は、電力増幅器30で発生する歪成分を最小(もしくは予め設定した閾値以下)にするように3次歪ベクトル調整器23Bに与える3次歪ベクトル調整器係数と3次歪周波数特性補償器に与える3次歪周波数特性補償器係数を調整する。
S. Mizuta, Y. Suzuki, S. Narahashi, and Y. Yamao, "A New Adjustment Method for the Frequency-Dependent IMD Compensator of the Digital Predistortion Linearizer," IEEE Radio and Wireless Symposium 2006, pp. 255 - 258, Jan.2006. Xiaodong Li and Cimini, L.J., Jr., "Effects of clipping and filtering on the performance of OFDM," 47th IEEE Vehicular Technology Conference 1997, pp. 1634 - 1638, May. 1997.
ディジタルプリディストータでは、合成器にて線形伝達経路の出力と3次歪発生経路の出力を合成する。このとき、3次歪ベクトル調整器に与える3次歪ベクトル調整器係数もしくは3次歪周波数特性補償器に与える3次歪周波数特性補償器係数によっては合成器出力信号のPAPRが上昇する場合がある。これは、ディジタルプリディストータの出力におけるPAPR上昇を意味する。電力増幅器の出力バックオフを超えてPAPRが上昇する場合、上述の通りディジタルプリディストータでは補償できない歪成分が生じる。そのため、ディジタルプリディストータ出力信号のPAPRが出力バックオフ以下(もしくは、所望値以下)になるようPAPR低減装置で再度PAPRを低減することが必要となる。以上のことから、ディジタルプリディストータの出力におけるPAPRが出力バックオフを超えて上昇する場合、PAPRを低減するための信号処理に関わる演算量増加が課題となる。演算量が増加した場合、信号処理回路の演算時間増加が生じるため問題となる。この問題を解決する方法として、信号処理能力高い信号処理回路を用いることが挙げられるが、信号処理回路のコストや消費電力量の増加をまねく。
図4にディジタルプリディストータの出力信号におけるPAPRの変動量計算結果を示す。この例では、変調方式をQPSKとした64サブキャリアのOFDM信号(帯域幅3.84MHz)を用いた。ディジタルプリディストータの入力信号を基準として出力信号のPAPR変動量を計算した。縦軸は相補的累積分布確率関数(CCDF:Complimentary Cumulative Distribution Function)0.1%におけるPAPR変動量を示す。横軸は3次歪ベクトル調整器に与えた位相値を示す。このとき、3次歪ベクトル調整器に与える振幅値を1.5、3次歪周波数特性補償器に与える全ての位相値と振幅値をそれぞれ0と1とした。 結果より、3次歪ベクトル調整器に与える位相値を0とした場合、ディジタルプリディストータ出力信号のPAPRが1.2dB上昇していることが分かる。よって、この発明の目的は周波数特性補償に起因するPAPRの増加を抑えることができるべき級数型ディジタルプリディストータ及びその制御方法を提供することである。
本発明によれば、電力増幅器で発生する歪成分を打ち消す歪補償成分を入力信号に付加するべき級数型ディジタルプリディストータは、
Nを予め定められた3以上の奇数として、
上記入力信号を遅延伝達する線形伝達経路と、
上記入力信号のN次歪成分を発生するN次歪発生器と、上記N次歪成分の振幅と位相を調整するN次歪ベクトル調整器と、上記N次歪ベクトル調整器の出力を周波数領域に変換し、各周波数成分の位相と振幅をそれぞれ調整し、時間領域に逆変換するN次歪周波数特性補償器とを含み、上記N次歪周波数特性補償器の出力を上記歪補償成分として出力する歪発生経路と、
上記線形伝達経路の出力と上記歪発生経路の出力とを合成する合成器と、
少なくとも上記合成器の出力信号における平均電力対ピーク電力比(PAPROUT)を計算するPAPR観測器と、
上記電力増幅器の出力に含まれる少なくともN次歪成分を観測する歪観測器と、
上記PAPR観測器と上記歪観測器の観測結果に基づいて上記N次歪ベクトル調整器と上記N次歪周波数特性補償器に対する位相値と振幅値を調整する制御器、
とを含み、上記制御器は、
上記歪観測器により観測される上記入力信号の帯域、以下入力信号帯域と呼ぶ、の上側又は下側のN次歪成分が減少するよう上記N次歪ベクトル調整器に設定する位相値と振幅値を調整するN次歪ベクトル調整器係数制御部と、上記歪観測器により観測される上記入力信号帯域の上側及び下側のN次歪成分が減少するよう上記N次歪周波数特性補償器における上記周波数領域の上記入力信号帯域外の各周波数成分の位相値と振幅値をそれぞれ調整するN次帯域外歪補償係数制御部と、上記PAPR観測器が計算した出力信号の平均電力対ピーク電力比PAPROUTが小さくなるよう上記N次歪周波数特性補償器における上記周波数領域の上記入力信号帯域内の各周波数成分の位相値と振幅値をそれぞれ調整するN次帯域内歪係数制御部と、
を含むように構成されている。
(1) このように、この発明によれば、合成器の出力におけるPAPRを観測し、それに基づいて入力信号帯域におけるN次歪成分の位相と振幅をそれぞれ調整する。そのため、N次歪ベクトル調整器に位相値と振幅値を設定することによってPAPRが基準より大きくなることを防ぐことができる。加えて、入力信号帯域の上側及び下側のN次歪成分を減少するようにN次歪周波数特性器に位相値と振幅値をそれぞれ設定することによってPAPRが基準より大きくなることを防ぐことができる。
さらに本発明によれば、ディジタルプリディストータにてPAPRを低減できることから、(2) ディジタルプリディストータ出力信号のPAPRが上昇した場合、ディジタルプリディストータの前段でPAPRを低減する場合に比べ、信号処理に関わる演算量を低減できる。
(3) PAPR低減装置を用いずディジタルプリディストータのみでPAPRを所望値以下にできる場合、PAPR低減装置に関わる演算量を削減できる。
(4) PAPR低減装置と併用することでPAPRをさらに低減できるため、PAPR低減装置のみ用いる場合に比べ電力増幅器の出力バックオフをさらに低減することができる。即ち、電力増幅器をより高効率動作させることが可能となる。
以下に電力増幅器をB級動作させた場合における効率改善量の試算を述べる。電力増幅器の最大効率を理論値である78.5%、出力バックオフを8dB、歪成分が増加することなくPAPR低減量と同じだけ出力バックオフを低減できることを仮定する。このとき、電力増幅器の効率は31.3%である。PAPRを1dB低減できたとすると、効率は35.1%となり3.8%改善する。また、PAPRを2dB低減できた場合、効率は39.3%となり、8.0%の改善が得られる。
従来のクリッピングとフィルタリングを用いたPAPR低減装置の構成例と従来のディジタルプリディストータの構成例を示すブロック図。 周波数特性補償器の帯域分割を説明するための図。 周波数特性補償器の構成例を示すブロック図。 ディジタルプリディストータの出力信号におけるPAPR変化量の計算結果例を示すグラフ。 第1実施例によるディジタルプリディストータの構成例を示すブロック図。 第1実施例における周波数特性補償器の構成例を示すブロック図。 第1実施例における制御器のブロック図。 第1実施例における制御器の処理フロー図。 ACLRの定義を説明するための図。 発明の原理を説明するために用いたディジタルプリディストータの簡易モデルを示すブロック図。 簡易モデルにおけるディジタルプリディストータの出力信号におけるピーク電力低減量計算結果を示すグラフ。 第1実施例における3次歪ベクトル調整器係数制御部の処理フロー図。 第1実施例における3次帯域内歪係数制御部の処理フロー図。 第1実施例における3次帯域外歪補償係数制御部の処理フロー図。 図15Aは第1実施例を用いた実験による電力増幅器の平均出力電力が21.2dBmの場合のCCDF測定結果の例を示すグラフであり、図15Bは第1実施例を用いた実験による電力増幅器の平均出力電力が22.1dBmの場合のCCDF測定結果の例を示すグラフであり、図15Cは第1実施例を用いた実験による電力増幅器の平均出力電力が23.1dBmの場合のCCDF測定結果の例を示すグラフである。 第1実施例を用いた実験で用いた3次歪周波数特性補償器の分割例。 第1実施例を用いた実験による電力増幅器出力電力対ACLR測定結果例。 第1実施例を用いた実験による電力増幅器出力スペクトル例。 第2実施例によるディジタルプリディストータのブロック図。 第2実施例における制御器の処理フロー図。 第2実施例における3次帯域内歪係数制御部の処理フロー図。 第2実施例の変形例によるディジタルプリディストータのブロック図。 第2実施例の変形例における制御器のブロック図。 第2実施例の変形例における3次帯域内歪係数処理部の処理フロー図。 第3実施例によるディジタルプリディストータのブロック図。 第3実施例における制御器のブロック図。 第3実施例における制御器の処理フロー図。 第3実施例における3次帯域内歪係数制御部の処理フロー図。 第3実施例における3次帯域内歪係数制御部の具体的処理フロー図。 第3実施例の変形例によるディジタルプリディストータのブロック図。 第3実施例の変形例における制御器のブロック図。 第3実施例の変形例における3次帯域内歪係数制御部の処理フロー図。 第4実施例によるディジタルプリディストータのブロック図。 第4実施例における制御器のブロック図。
[第1実施例]
図5に第1実施例のディジタルプリディストータ200とその周辺装置を示す。図5の周辺装置は、増幅装置30と、増幅装置30の出力の一部を取り込みディジタルプリディストータに帰還する信号を生成する帰還信号生成装置40である。増幅装置30と帰還信号生成装置40は図1で従来技術として説明したディジタルプリディストータの周辺装置と同じである。本実施例では、ディジタルプリディストータ200のディジタル入力信号(以下、単に入力信号あるいは送信信号ともいう)SINは、帯域幅3.84MHz、各サブキャリアの変調方式をQPSKとした64サブキャリアのOFDM信号を用いるものとして説明する。ただし、送信信号SINの帯域幅、サブキャリア数、変調方式は任意に設定してよく、OFDM信号ではなくWCDMA信号など他の通信方式を用いた信号としてもよい。
ディジタルプリディストータ200は、遅延器22Aを有する線形伝達経路22と、N次歪発生器(Nは3以上の奇数であるが、図ではN=3の場合を示す)23AとN次歪ベクトル調整器23BとN次歪周波数特性補償器230Cを有するN次歪発生経路230と、I相とQ相の送信信号SINを線形伝達経路22とN次歪発生経路230に分配する分配器21と、線形伝達経路22からの出力とN次歪発生経路230からの出力とを合成する合成器24と、分配器21の出力と合成器24の出力からそれぞれについてピーク電力PPin、 PPoutと平均電力PAVin、 PAVoutを測定し、分配器21の出力と合成器24の出力におけるPAPR、即ちPAPRIN=PPin/PAVin(もしくは、PAPRIN=10log10(PPin/PAVin))、 PAPROUT=PPout/PAVout(もしくは、PAPROUT =10log10(PPout/PAVout))をそれぞれ計算するPAPR観測器290と、合成器24からの出力をディジタルアナログ変換するDAC25と、増幅装置30からの出力信号SOUTの一部を帰還信号として取り出す帰還信号生成装置40から出力されたI相とQ相のアナログ信号をそれぞれアナログディジタル変換するADC26と、ADC26からの出力信号から、ディジタルプリディストータ200に入力され電力増幅器33で増幅された送信信号の電力を測定するとともに、電力増幅器33で発生した歪成分の電力を予め定めた任意の周波数帯域f毎に測定する歪観測器27と、位相値と振幅値とで構成されるN次歪ベクトル調整器係数、位相値と振幅値とで構成される複数のN次帯域外歪補償係数、位相値と振幅値で構成される複数のN次帯域内歪係数をそれぞれ調整する制御器280とを備える。以下では、N=3の場合を例について説明する。そのため、PAPR観測器290と3次歪発生経路230の3次歪周波数特性補償器230Cと制御器280の構成要素以外は、図1に示す従来のディジタルプリディストータの各構成要素と同じものであるため、説明は必要に応じた最小限にとどめる。
本実施例における3次歪周波数特性補償器230Cの構成は図6に示すように、図3に示した3次歪周波数特性補償器23Cと同じであるが、J点FFT部の出力において入力信号帯域Fに対応する出力は対応する複素乗算部23C3にて制御器280から与えられた3次帯域内歪係数を乗算される点が異なる。図2に示すように3次歪成分上側帯域FDUと3次歪成分下側帯域FDLを合わせてM分割し、分割した各帯域(帯域fから帯域f)に対し制御器280から与えられた各帯域に対応する3次帯域外歪補償係数を乗算する。
本実施例における制御器280の構成を図7に示す。制御器280は、図2に示した3次歪成分上側帯域FDU及び3次歪成分下側帯域FDLにおける歪観測器27の測定結果を用いて3次歪ベクトル調整器係数を調整する3次歪ベクトル調整器係数制御部280Aと、分割帯域f〜fの各帯域における歪観測器27の測定結果を用いて3次帯域外歪補償係数を調整する3次帯域外歪補償係数制御部280Cと、PAPR観測器290の測定結果を用いて3次帯域内歪係数を調整する3次帯域内歪係数制御部280Bとで構成される。
図8を参照して、ディジタルプリディストータの出力信号におけるPAPRを低減しつつ歪成分の電力(以下、歪成分電力とも呼ぶ)を最小もしくは事前に定めた閾値以下にするまでのディジタルプリディストータの動作、すなわち制御器280の処理の流れを説明する。このとき、ディジタルプリディストータの入力信号は、予め定めたパイロット信号とする。パイロット信号としては、例えば、予め定めた任意の時間長とした移動局もしくは基地局と通信を行うための信号でもよく、あるいは無線通信システムの規格で定められた試験信号(LTE(Long Term Evolution)の場合、E-TM1.1といった信号)でもよい。歪成分電力が最小値もしくは事前に定めた閾値以下になるまでパイロット信号を繰り返しディジタルプリディストータに入力して後述する処理S11,S12,S13を繰り返す。歪成分電力が閾値以下になった後、パイロット信号から移動局もしくは基地局と通信を行うための信号へ切り替える。このとき、3次歪ベクトル調整器係数と3次歪帯域外歪補償係数はそれぞれパイロット信号を用いて歪観測器27により得られた歪成分電力を最小もしくは事前に定めた閾値以下にした値を用いる。図8の調整において歪成分電力の閾値を無線通信システムの規格よりも低くした場合、歪成分電力が規格よりも低い範囲であればパイロット信号ではなく移動局もしくは基地局と通信を行うための信号を使用してもよい。
歪成分電力を最小もしくは閾値以下にする3次歪ベクトル調整器係数調整処理S11及び3次帯域外歪補償係数調整処理S13における歪補償の判定指標(つまり、電力増幅器33で発生する歪成分電力が打ち消された程度を示す指標)としてACLR(Adjacent Channel Leakage Power Ratio)を用いた例を示す。図9に示すように、ここでのACLRは、測定規格に従って例えば中心周波数fから±5MHz離調点における3次歪成分上側及び下側帯域FDU、FDL(各帯域幅を3.84MHzとする)の各帯域内電力PDU、PDLと入力信号帯域F(帯域幅3.84MHzとする)内電力Pの比PDU/P、PDL/Pとした。中心周波数fからの離調点と3次歪成分上側及び下側帯域FDU、FDLは、送信信号SINの帯域幅Fに応じて適宜に設定してよい。本実施例では歪補償の判定指標としてACLRを用いているが、上側/下側それぞれの3次歪成分帯域内の電力PDU、PDLを判定指標としてもよい。
3次歪ベクトル調整器係数制御部280Aは後述する3次歪ベクトル調整器係数調整処理(S11)により3次歪ベクトル調整器23Bに与えるべき位相値と振幅値をそれぞれ求め設定する。その後、3次歪ベクトル調整器係数制御部280Aは3次歪ベクトル調整器係数調整処理により得られた位相値を3次帯域内歪係数制御部280Bに通知する。3次帯域内歪係数制御部280Bは通知を受けた位相値とPAPR観測器290の測定結果を用いて後述する3次帯域内歪係数調整処理(S12)により設定すべき位相値と振幅値をそれぞれ計算し、入力信号帯域Fに対応する3次歪周波数特性補償器230Cの複素乗算部23C3にその位相値と振幅値をそれぞれ設定する。その後、3次帯域内歪係数制御部280Bは3次帯域内歪係数調整処理が終了したことを3次帯域外歪補償係数制御部280Cに通知する。通知を受けた3次帯域外歪補償係数制御部280Cは後述する3次帯域外歪補償係数調整処理(S13)により帯域f〜fに対応する3次歪周波数特性補償器230Cの複素乗算部23C3に与えるべき位相値と振幅値をそれぞれ求め設定する。処理S13において、上側及び下側帯域のACLR、ACLRが閾値以下の場合、処理を終了する。少なくとも一方が閾値以下とならない場合、破線矢印で示すように処理S11〜S13を繰り返してもよい。3次歪周波数特性補償器230Cでなければ非対称となる歪成分を補償できないため、上側と下側帯域のACLR、ACLRのうち、どちらか一方のみ閾値以下とならない場合、処理S13のみ繰り返すこととしてもよい。
処理S11〜S13の各処理を述べる前に本発明の原理を説明する。図10にディジタルプリディストータの簡易なモデルを示す。このモデルは、線形伝達経路22と3次歪発生経路23で構成され、3次歪発生経路23は3次歪発生器23Aと3次歪ベクトル調整器23Bを有する。
ディジタルプリディストータの入力信号xin(t)をxin(t)=s(t)ejθ(t)とし、3次歪ベクトル調整器23Bの位相値、振幅値をそれぞれXP(-π≦XP ≦π)、XA(0 <XA)とする。このときディジタルプリディストータの出力信号xout(t)は、次式で表せる。
Figure 0005427300
式(1)の右辺第2項は3次歪発生経路23の出力信号を表している。即ち、3次歪ベクトル調整器23Bは3次歪発生器23Aの出力に対し複素係数XejXpを乗算している。以下のこの発明の説明において、振幅値Xと位相値Xを設定するとは、複素係数XejXpを乗算することを意味しており、このことは図3で説明した3次歪周波数特性補償器23及び後述の図6に示す3次歪周波数特性補償器230Cにおける複素乗算器による位相値と振幅値の設定も同じである。時刻t(0 ≦t ≦T) においてxout(t)にピーク電力Poutが発生する時刻をt1とすると、式(1)より、Poutは
Pout=|xout(t1)|2=|s(t1)|2(1+2|s(t1)|2s(t1)XAcos(XP)+|s(t1)|4A 2) (2)
と表せる。このとき、入力信号xin(t1)の瞬時電力Pinは、
Pin = |s(t1)|2 (3)
と表せ、3次歪発生経路23における出力信号の瞬時電力P3rdは、
P3rd = |s(t1)|6A 2 (4)
と表せる。ここで、λ=10log10(P3rd/Pin)とすると、xin(t1)の瞬時電力とxout(t1)のピーク電力比を対数で表したΔPは、
ΔP =10log10|(Pin/Pout)|
= 10log10(1/(1+2|s(t1)|2s(t1)XAcos(XP)+|s(t1)|4A 2))
= 10log10(1/(1+2×10(λ/20)cos(XP)+10(λ/10))) (5)
となる。式(5)より、振幅値XAを定数とした場合、位相値XPを-π(もしくはπ)にしたとき、ΔPを最小にできることがわかる。以上のことから、ディジタルプリディストータ入力信号に対して3次歪発生経路23における出力信号の位相を逆相にすることで、ディジタルプリディストータの出力信号におけるPAPRを低減できる。図11にXPを-πとし、λを変えた場合のΔPの計算結果を示す。図11より、λによらずΔPは0dBよりも大きいことがわかる。即ち、ピーク電力PoutをPinよりも低減できる。PoutをPinからΔPred(dB)だけ低減したい場合、XA
Figure 0005427300
と一意に求められる。
このようにして電力増幅器33の発生する歪とは無関係に求めた位相値XPと振幅値XAを3次歪ベクトル調整器23Bに設定してPAPRの低減を図っても、3次歪発生経路23の出力信号は電力増幅器33で発生する歪成分を打ち消すような成分とならないため上側帯域および下側帯域の3次歪成分を補償できない場合がある。そのため、本発明では、3次歪周波数特性補償器230Cを用いて周波数領域において入力信号帯域の位相値と振幅値をそれぞれ調整することでPAPRを低減する。これにより、上側帯域および下側帯域の3次歪成分を補償しつつPAPRの低減が可能となる。
[3次歪ベクトル調整器係数調整処理(S11)]
図12に3次歪ベクトル調整器係数制御部280Aによる3次歪ベクトル調整器係数調整処理S11のフローを示す。図12では、3次歪ベクトル調整器係数の位相値計算処理(S111)、3次歪ベクトル調整器係数の振幅値計算処理(S112)の順に処理を行う。このとき、3次歪の上側帯域FDUもしくは下側帯域FDLのどちらか一方の帯域(指定帯域と呼ぶ)を事前に選択し、指定帯域の電力(歪成分電力)P(PDU又はPDL)が閾値以下もしくは最小値であるかを判定し(S113)、閾値以下もしくは最小値となるまで処理S111〜S113を繰り返す。
3次歪ベクトル調整器係数の位相値計算処理S111および3次歪ベクトル調整器係数の振幅値計算処理S112は例えば摂動法(参考文献1参照)もしくは2次関数近似を用いた計算方法(参考文献2参照)を用いる。
摂動法を用いた3次歪ベクトル調整器係数の位相値計算処理S111では、最初に任意に設定した位相値Xの前後における指定帯域の電力Pを測定し、指定帯域の電力Pが減少する方向へ事前に定めたオフセット値ΔXだけ位相値を変更し、指定帯域の電力Pを歪観測器27で測定する。位相値の変更と指定帯域の電力測定を繰り返すことで指定帯域の電力Pが閾値以下もしくは最小値となる位相値XP,MINを求める。求めた位相値XP,MINを3次歪ベクトル調整器23Bに設定する。振幅値についても同様である。このとき、求めた振幅値をXA,MINとする。
2次関数近似を用いた計算方法における3次歪ベクトル調整器係数の位相値計算処理S111では、異なるK点(Kは3以上の整数)の位相値(XP,1、 XP,2、 …、 XP,K)にてそれぞれ指定帯域の電力(PD,1、 PD,2、 …、 PD,K)を測定し、用いた位相値(XP,1、 XP,2、 …、 XP,K)と測定した指定帯域の電力(PD,1、 PD,2、 …、 PD,K)から最小2乗法により位相値に対する指定帯域における電力の依存性を示す2次関数(PD=a2XP 2+a1XP+a0)の係数(a2、 a1、 a0)を求める。求めた係数(a2、 a1、 a0)において指定帯域の電力Pを最小にする位相値XP,MIN(=-a1/2a2)を3次歪ベクトル調整器23Bに設定する。振幅値についても同様である。3次歪ベクトル調整器係数の位相値計算処理S111では最小2乗法により、位相値に対する指定帯域における電力の依存性として2次関数の係数ではなく三角関数(PD=b2cos(b1-XP)+b0)の係数(b2、b1、 b0)を求めてもよい。得られた三角関数において指定帯域の電力Pを最小にする(即ち、b1-Xp=π)位相値XPを3次歪ベクトル調整器23Bの位相値XP,MIN(=b1-π)として設定する。
2次関数近似を用いた計算方法において、係数a2が0以下となる場合または2次関数の係数が求まらない場合、測定した指定帯域の電力のうち最も指定帯域の電力を低くした位相値をXP,MINとしてもよい。
この例では、3次歪ベクトル調整器係数の位相値計算処理S111、3次歪ベクトル調整器係数の振幅値計算処理S112の順としている。これは、位相値に対する指定帯域における電力Pの増減量が、一般的に振幅値に対する指定帯域における電力の増減量に比べ高いためである。しかしながら電力増幅器33の性質によっては、振幅値に対する指定帯域における電力Pの増減量が、位相値のそれよりも高い場合もある。このような場合、3次歪ベクトル調整器係数の振幅値計算処理S112、3次歪ベクトル調整器係数の位相値計算処理S111の順としてもよい。
この例では、指定帯域の電力Pが閾値以下もしくは最小値に到達しない場合、処理S11が終了しないため3次歪ベクトル調整器係数の位相値計算処理S111と3次歪ベクトル調整器係数の振幅値計算処理S112を事前に定めた繰り返し回数だけ繰り返したとき処理S11が終了するようにしてもよい。このとき、処理S11により得られた位相値と振幅値のうち指定帯域の電力Pを最も小さくした位相値と振幅値を3次歪ベクトル調整器に設定する。この処理を行うため、設定した位相値と振幅値のうち指定帯域の電力Pを最も低くする位相値と振幅値を電力Pと対応させて図示してない記憶手段にそれぞれ記憶しておくものとする。
[参考文献1]T. Nojima and T. Konno, “Cuber Predistortion Linearizer for RelayEquipment in 800 MHz Band Land Mobile Telephone System,”IEEE Transactions on vehicular technology, Vol. 34 , Issue 4, pp. 169-177, 1985.
[参考文献2]J. Ohkawara, Y. Suzuki, and S. Narahashi, "Fast Calculation Scheme for Frequency Characteristic Compensator of Digital Predistortion Linearizer," IEEE Vehicular Technology Conference Spring 2009, proceedings, Apr. 2009.
[3次帯域内歪係数調整処理(S12)]
図13に3次帯域内歪係数制御部280Bによる3次帯域内歪係数調整処理S12のフローを示す。3次帯域内歪係数制御部280Bは3次歪ベクトル調整器係数制御部280Aより3次歪ベクトル調整器に設定した位相値XP,MINの通知を受ける。PAPR観測器290で測定した合成器24の出力信号におけるPAPR(PAPROUTと表す)がPAPRの閾値(PAPRTH)よりも高い場合、図10で説明した原理に基づいて入力信号帯域に対応する3次歪周波数特性補償器230Cの複素乗算部23C3に与える位相値Y(=π-XP,MIN)を計算し、設定する(S121)。次いで、3次帯域内歪係数の振幅値計算処理により、合成器24の出力信号におけるPAPRが閾値以下となる振幅値を計算し、設定する(S122)。具体的には、PAPR観測器290で測定したディジタルプリディストータ200の入力信号におけるPAPR(PAPRINと表す)と予め決めた閾値PAPRTHとの差分ΔPAPR(=PAPRIN-PAPRTH)(dB)を求める。そして、式(6)に習って入力信号帯域Fに対応する3次歪周波数特性補償器230Cの複素乗算部23C3に与える振幅値YAを次式(7)により計算し設定する。
Figure 0005427300
ここで、|s(t1)|4は合成器出力のピーク電力が発生する時刻t1における入力信号の瞬時電力値を2乗したものであり、PAPR観測器290で観測し計算する。
処理S122にて振幅値Yを設定した後、3次帯域内歪係数制御部280Bは処理S12が終了したことを3次帯域外歪補償係数制御部280Cに通知する。処理S121を実施した後、PAPROUTを観測し、PAPROUTがPAPRTHより低くなる場合、処理S122を実施せず処理S12を終了することにしてもよい。
本実施例では、処理S12において処理S121とS122を繰返し行うことなくディジタルプリディストータ出力信号のPAPRを低減できるため、従来のPAPR低減装置を用いた構成に比べPAPR低減に関わる演算量を低減できる。
[3次帯域外歪補償係数調整処理(S13)]
図14に3次帯域外歪補償係数制御部280Cによる3次帯域外歪補償係数調整処理S13のフローを示す。3次帯域外歪補償係数制御部280Cは図2で説明したように分割した各帯域f(m=1、…、M)に対し事前に定めた順番に従って3次帯域外歪補償係数の位相値計算処理S131、3次帯域外歪補償係数の振幅値計算処理S132を行う。その後、ACLR計算処理(S133)を行い、処理S134にて上側帯域FDUと下側帯域FDLのどちらのACLR(即ちACLRとACLR)も閾値以下になっていると判定された場合、残りの分割帯域における3次帯域外歪補償係数を計算することなく初期値のままとし、3次帯域外歪補償係数調整処理S13を終了する。また、処理S134で上側帯域もしくは下側帯域のどちらか一方でもACLRが閾値以下になっていない場合、処理S131に戻り、残りの分割帯域について同様に3次帯域外歪補償係数の位相値計算処理S131、3次帯域外歪補償係数の振幅値計算処理S132を順番に行う。処理S134で全ての分割帯域についての処理が終了しても閾値以下にならなかった場合は、図8に破線矢印で示すように処理S11に戻り、処理S11、S12、S13を再び行ってもよい。なお、分割帯域の処理順は、上側帯域と下側帯域から交互に選択して行ってもよいし、例えば上側帯域と下側帯域からそれぞれ1つの帯域を選択し、そのペア毎に処理を行ってもよい。
分割帯域f(1≦m≦M)における3次帯域外歪補償係数の位相値計算処理S131では、3次歪ベクトル調整器係数の位相値計算処理S111(図12)と同様に摂動法、2次関数近似を用いた計算方法などを用いて分割帯域fに対応する3次歪周波数特性補償器230Cの複素乗算部23C3に設定する位相値ZP,mを求め、設定する。先の3次歪ベクトル調整器係数の位相値計算処理S111では歪観測器27により上側又は下側指定帯域の歪成分電力P(PDU又はPDL)を測定したが、3次帯域外歪補償係数の位相値計算では、位相値を設定する分割帯域fにおける電力DDmを測定し、最小とする位相値ZP,mを決める。3次帯域外歪補償係数の振幅値計算処理S132についても同様である。
この例では、分割した帯域を1帯域ずつ又は2つずつ順番に3次帯域外歪補償係数の位相値計算処理S131(もしくは振幅値計算処理S132)を行うが、同時に3つ以上の分割帯域(例えば、入力信号帯域を除く全ての分割した帯域)にて3次帯域外歪補償係数の位相値計算処理S131または3次帯域外歪補償係数の振幅値計算処理S132を行ってもよい。また、3次歪ベクトル調整器係数調整処理の場合と同様に電力増幅器33の性質によっては3次帯域外歪補償係数の位相値計算処理S131と3次帯域外歪補償係数の振幅値計算処理S132の順番を入れ替えてもよい。
図14の3次帯域外歪補償係数調整処理S13では分割した帯域毎に位相値と振幅値をそれぞれ調整するため、図12の3次歪ベクトル調整器係数調整処理S11に比べPAPRの上昇量は小さいと考えられる。そのため、処理S13によるPAPROUTの上昇は無視できると考えられる。しかし、処理S13によりPAPROUTがPAPRTHを超える場合、図13の3次帯域内歪係数調整処理S12を再度実行してもよい。処理S12を再度実行した後、ACLR、ACLRがどちらも閾値以下であれば処理S13は行わなくてもよい。これは他の実施例でも同様である。
図15A,15B,15Cに図5の実施例における実験結果の例を太線で示す。参考のため図1の従来構成による結果を細線で示す。縦軸はCCDF、横軸はプリディストータ出力におけるPAPRである。実験では電力増幅器入力信号の中心周波数を2.14GHzとし、2GHz帯1W級電力増幅器(AB級バイアス)を用いた。図15A、15B、15Cは電力増幅器33の平均出力電力がそれぞれ21.2dBm、22.1dBm、23.1dBmの場合である。図16に3次歪周波数特性補償器230Cによる周波数帯の分割を示す。3次歪成分上側帯域FDUと下側帯域FDLの歪成分を補償するため、M=4とし、上側と下側それぞれ等間隔に帯域を2分割した。加えて、入力信号帯域Fにおける3次歪成分の位相と振幅を調整することでPAPRを低減する。本実験では、3次帯域内歪係数調整処理S12において3次帯域内歪係数の振幅値計算処理S122は行っていない。CCDFが0.1%におけるPAPRを比較すると、図15Aでは7.2dBから6.3dBに、図15Bでは7.1dBから6.0dBに、図15Cでは7.4dBから5.4dBにそれぞれPAPRを低減できていることがわかる。
また、図17に図5の実施例によるACLR対平均出力電力の結果を実線で示し、図1の従来構成による結果を破線で示す。縦軸はACLR、横軸は増幅器出力における平均電力である。結果より、従来例に比べ本実施例を用いることで同一平均出力電力におけるACLRがわずかであるが改善していることがわかる。なお、ディジタルプリディストーションを行わない場合もDPDL(digital predistortion linearizer)無しとして図中に示している。参考として平均出力電力が22.1dBにおける電力増幅器の出力スペクトルをこの発明によるものと、従来構成によるものと、プリディストーションを行わないものを図18に示す。この結果からも本実施例により歪成分が低下していることがわかる。
図5の実施例では、N=3とし、3次歪発生経路のみ備えた構成について述べたが、3次歪発生経路と並列に更に3次より高次の1つ又は複数の異なる奇数次の歪発生経路を備えた構成としてもよい。これは他の実施例にも適用できる。例えば、3次歪発生経路と5次歪発生経路がある場合、3次歪ベクトル調整器係数、3次歪発生経路の3次帯域内歪係数、5次歪ベクトル調整器係数、5次歪発生経路の5次帯域内歪係数、3次帯域外歪補償係数、5次帯域外歪補償係数の順に各係数を求める。
図5の実施例において3次帯域内歪係数調整処理S12を行ったとき、ディジタルプリディストータ200の出力信号における平均電力が低下する場合がある。そのため、図示してない自動利得調整器(AGC)を合成器24から電力増幅器33の間又は分配器21の入力側に設置し、処理S12を実施した前後で平均電力が同じとなるように制御器280でAGCの利得を調整してもよい。このとき、平均電力はPAPR観測器290で観測し制御器280に通知してもよく、電力増幅器33における出力の平均電力を測定する機能を歪観測器27に付加し、平均電力の観測結果を制御器280に通知してもよい。制御器280は、電力増幅器33に入力すべき平均電力を図示してない記憶手段に予め記憶し、その平均電力と通知された平均電力の差を小さくするようにAGCの利得を調整する。以下の実施例においてもAGCを用いた構成としてもよい。
入力信号帯域Fに対応する3次歪周波数特性補償器230Cの位相値および振幅値を調整した場合、電力増幅器33に入力する信号が変化するため、電力増幅器の非線形特性により歪成分が変動する場合がある。そのため、図8において処理S12とS13の順番を入れ替えた場合、ACLRを閾値以下にするまでの繰り返し回数が増加する可能性があることから、図8で示した順番で処理を行うことが望ましい。
一般的に電力増幅器は温度などの電力増幅器の外部環境、電力増幅器入力信号の平均電力、などに急峻な変化がない場合、電力増幅器の特性は大きく変動しない。そのため、パイロット信号から移動局もしくは基地局と通信を行うための信号に切り替わった場合、ACLRが閾値を越えない限り、3次歪ベクトル調整器係数の振幅値と位相値、3次帯域外歪補償係数の振幅値と位相値、3次帯域内歪係数の位相値、はそれぞれパイロット信号を用いて得られた値のままとし、3次帯域内歪補償係数の振幅値については処理S122によりPAPRINに応じて再度設定する。PAPRINが大きく変わらない場合、3次帯域内歪補償係数の振幅値を送信信号に応じて適応的に設定せず、パイロット信号を用いて得られた値のままでもよい。
電力増幅器33への入力信号の平均電力変動により電力増幅器の特性が変わる場合に対応するため、ディジタルプリディストータにおける入力信号の平均電力または瞬時電力に応じて設定すべき3次歪ベクトル調整器係数と3次帯域外歪補償係数と3次帯域内歪係数がそれぞれ記憶された制御器280内の図示してないルックアップテーブル(LUT)を参照し、3次歪ベクトル調整器23Bと3次歪周波数特性補償器230Cにそれぞれ与えることにしてもよい。LUTに記憶する3次歪ベクトル調整器係数と3次帯域外歪補償係数と3次帯域内歪係数はそれぞれ事前に本実施例記載の方法を用いて計算する。LUTを用いた構成は、他の実施例に適用してもよい。
PAPR観測器290では分配器21の出力と合成器24の出力をそれぞれ観測しているが、合成器24の出力の代わりに3次歪周波数特性補償器230Cの出力を観測するようにしてもよい。このとき、PAPR観測器290は分配器21の出力と3次歪周波数特性補償器230Cの出力を加算することで合成器24の出力におけるピーク電力と平均電力をそれぞれ計算する。この構成は他の実施例に適用してもよい。
帰還信号生成装置40において直交復調器43を用いず、例えばIF帯にダウンコンバートした信号をADC26に入力する構成としてもよい。このとき、ADC26のサンプリングレートを低減でき、ADC26の消費電力量を低減できる場合がある。これは、ディジタルプリディストータ200の低消費電力化につながる。
また、IF帯にダウンコンバートした信号から入力信号帯域FSの電力を測定するため、帯域FSのみ通過させるアナログの帯域通過フィルタと電力検波器を用意し、観測器27の代わりとしてもよい。同様に分割した各帯域の電力を測定するため帯域fのみ通過させる帯域通過フィルタと電力検波器をM個用意し、それらを観測器27の代わりとしてもよい。このとき、電力検波器の出力はそれぞれADC26を経て制御器280へ入力する。これにより、ディジタル信号処理による歪成分電力に関わる演算量を低減できる場合がある。
上記の構成を適用できる場合は他の実施例に必要に応じて適用してもよい。
[第2実施例]
図5の第1実施例で示した構成では、ディジタルプリディストータの入力信号の性質によってはディジタルプリディストータにおける出力信号のPAPRが閾値以下にならない可能性がある。そのため、第2実施例では、ディジタルプリディストータの出力信号のPAPRが閾値以下になるまで3次帯域内歪係数(位相値と振幅値)を繰り返し調整する。
図19に本発明における第2実施例の構成例を示す。第1実施例と異なる点は、PAPR観測器291と制御器280の処理にある。制御器280の構成自体は図7に示した制御器280と同じなので図7を参照する。PAPR観測器291は、合成器24の出力のPAPRのみ観測する。図20に制御器280の処理フローを示す。この処理フローは3次帯域内歪係数制御部280B(図7参照)による3次帯域内歪係数調整処理(S12A)が第1実施例の図8における処理S12と異なる。
3次帯域内歪係数制御部280Bの処理S12Aの処理について説明する。その他の処理については図8と同じであるため省略する。図20に示した制御器280の処理フローを実施している間、ディジタルプリディストータの入力信号SINとして第1実施例と同様にパイロット信号を入力するものとする。 制御器280の処理フロー終了後、第1実施例と同様に移動局もしくは基地局と通信を行うための信号へ切り換える。
図21に3次帯域内歪係数制御部280Bによる3次帯域内歪係数調整処理S12Aのフローを示す。
[3次帯域内歪係数調整処理(S12A)]
3次帯域内歪係数制御部280Bは3次歪ベクトル調整器係数制御部280Aより3次歪ベクトル調整器23Bに設定した位相値XP,MINの通知を受ける。次いで、摂動法を用いた3次帯域内歪係数の位相値計算処理(S12A1)を行う。即ち、処理S12A1では、位相値Y(=π-XP,MIN)を計算し、3次歪周波数特性補償器230Cの入力信号帯域に対応する複素乗算器23C3(図6参照)に初期値として設定した後、Yの前後におけるディジタルプリディストータ200の出力信号におけるPAPRをPAPR観測器291で測定し、PAPRが減少する方向へ事前に定めたオフセット値ΔYだけ位相値を変更し、PAPRを測定する。なお、摂動法の初期値としては、3次ベクトル調整器係数調整処理S11で決定した位相値YP=π-XP,MINを使用せず、任意の値を初期値として使用してもよい。位相値の変更とPAPRの測定を繰り返すことでPAPRが最小となる位相値YP,MINを図示してない記憶手段に記憶更新し、PAPRが閾値以下となる位相値YP,MINが求まったら、あるいは指定回数繰り返してもPAPRが閾値以下にならない場合は、摂動法を用いた3次帯域内歪係数の振幅値計算処理(S12A2)を行う。このときの位相値は、処理S12A1においてPAPRを最も低くした位相値とする。この処理を行うため、処理S12A1で位相値を計算し設定する毎に得られるPAPRが記憶されている最小PAPRより小さければ最小PAPRを更新すると共にそのときの位相値を最もPAPRを低くした位相値YP,MINとして記憶するものとする。
処理S12A2では、最初に任意に設定した振幅値Yの前後における合成器出力のPAPRをPAPR観測器291で測定し、処理S12A1と同様にPAPRが減少する方向へ事前に定めたオフセット値ΔYだけ振幅値を変更し、PAPRを測定する。振幅値の変更とPAPRの測定を繰り返すことでPAPRが最小となる振幅値YA,MINを記憶更新し、PAPRが閾値以下となる振幅値YA,MINを求める。処理S12A2にてPAPRが閾値以下にならない場合、振幅値は設定した振幅値においてPAPRを最も低くした振幅値とする。この処理を行うため、処理S12A2で振幅値を計算し、設定する毎に得られるPAPRが記憶されている最小PAPRより小さければ最小PAPRを更新すると共に、その振幅値を最もPAPRを低くした振幅値YA,MINとして記憶するものとする。処理S12A1〜S12A2を指定回数だけ繰り返す(S12A3)。繰り返す場合、処理S12A1で最初に設定する位相値Yは記憶されているYP,MINとし、処理S12A2で最初に設定する振幅値Yは記憶されているYA,MINとする。このとき、ΔYとΔYはそれぞれ変更してもよい。
処理S12A1、S12A2のいずれかにてPAPRが閾値以下になった場合、処理S12Aを終了して図20の処理S13の処理へ移行する(図21の破線)。処理S12A1〜S12A2を指定回数繰り返してもPAPRが閾値以下にならない場合、設定した位相値と振幅値においてPAPRを最も低くした位相値と振幅値をそれぞれ3次歪周波数特性補償器230Cの入力信号帯域に対応する複素乗算器23C3に設定し、処理S13へ遷移するようにしてもよい。
本実施例において、処理S12A1を行った後に、処理S12A2の代わりに摂動法でなく、図13の処理S122と同様に式(7)を使った計算による処理を実施してもよい。その場合、図19に破線で示すように、分岐された入力信号をPAPR観測器291に与えてPAPRINの測定ができるようにする。また、処理S12A1の代わりに摂動法でなく、図13の処理S121と同様にYP=π-XP,MINの計算による処理を行ってから処理S12A2を行ってもよい。このとき、処理S123での繰り返しは処理S12A2のみを実行する。
移動局もしくは基地局と通信を行うための信号へ切り替わった場合、ACLRが再度閾値を超えるまで、3次歪ベクトル調整器係数の振幅値と位相値、3次帯域内歪補償係数の位相値と振幅値、3次歪帯域外歪補償係数の振幅値と位相値はそれぞれパイロット信号を用いて得られた値を継続使用する。
[変形実施例]
図22の変形実施例は、図19の第2実施例においてパイロット信号を使った設定処理が終了し、入力信号がパイロット信号から移動局もしくは基地局と通信を行うための信号へ切り替わった後、合成器24の出力におけるPAPROUTが閾値を超えた場合、3次歪ベクトル調整器係数の振幅値と位相値、3次歪帯域外歪補償係数の振幅値と位相値はそれぞれパイロット信号を用いて得られた値のままとし、3次帯域内歪補償係数の位相値と振幅値だけを後述する図24の3次帯域内歪係数調整処理(S12A’)により調整する。処理S12A’を実施中は、PAPROUTが閾値を超えた部分を含む所定長の送信信号を繰り返し使用する。処理S12A’によりPAPROUTが閾値以下になってもACLRが閾値を超えた場合は、図19の実施例で説明した方法により送信信号の所定長を繰り返し使用して3次歪ベクトル調整器係数の振幅値と位相値、3次帯域内歪補償係数の位相値と振幅値、3次歪帯域外歪補償係数の振幅値と位相値をそれぞれ再調整する。
図22に示す実施例の構成は、送信信号発生器50で構成された送信信号発生装置500と、DAC25の前段にオンとオフを切り替えるスイッチ(SW)201とを付加した点と制御器281の構成が図19と異なる。また図23に示すように、制御器281には送信信号発生器50の出力信号、SW201のオンとオフをそれぞれ切り替える切替制御部281Dが付加されているが、3次歪ベクトル調整器係数制御部280A、3次帯域内歪係数制御部280B、3次帯域外歪補償係数制御部280Cは図19の制御器280におけるもの(即ち、図7における280A、280B、280C)と同じである。送信信号発生装器50は、制御器281から与えられた指示に従い、移動局もしくは基地局と通信を行うための信号を出力する機能と、パイロット信号を出力する機能と、通信信号中の任意の時間長の任意の信号部分を繰り返し出力する機能を有する。SW201はディジタル信号処理で簡易に行えるようにDAC25の前段に設置しているが、SW201をアナログ回路で構成したい場合、DAC25から出力端子TOUTの間の任意の位置にSW201を挿入してもよい。
図24に3次帯域内歪係数制御部280Bによる3次帯域内歪係数調整処理S12A’のフローを示す。
[3次帯域内歪係数調整処理(S12A’)]
3次帯域内歪係数制御部280BはPAPR観測器291から通知されたPAPROUTが閾値を超えている場合、その信号をディジタルプリディストータから出力しないようSW201をオフとするとともに3次帯域内歪係数調整処理(S12A’)が終了するまでPAPROUTが閾値を超えた信号部分を送信信号発生器50で繰り返し出力させるように切替制御部281Dに通知する(S12A0)。このとき発生させる信号の1周期の時間は予め定めておくこととする。次いで、すでに設定されている位相値Yを初期値として摂動法を用いた3次帯域内歪係数の位相値計算処理(S12A1)を行い、PAPRが閾値以下となる位相値YP,MINを求める。図21の場合と同様に処理S12A1を指定回数繰り返してもPAPRが閾値以下にならない場合、摂動法を用いた3次帯域内補償係数の調整処理S12A2を行う。
処理S12A1〜S12A2を予め指定した回数だけ繰り返す(S12A3)。処理S12A1、S12A2のいずれかにてPAPRが閾値以下になった場合、切替制御部281DにてSW201をオンとし、処理S12A’の調整処理に用いた信号をディジタルプリディストータ200から出力した後、送信信号発生器50の出力を移動局もしくは基地局と通信を行うための信号へ切り替えるよう切替制御部281Dに通知する(S12A4)。処理S12A1〜S12A2を指定回数繰り返してもPAPRが閾値以下にならない場合、設定した位相値と振幅値においてPAPRを最も低くした位相値と振幅値をそれぞれ設定し、処理S12A4へ遷移する。その他は図19の実施例と同様である。
[第3実施例]
本発明によりPAPRを低減した場合、電力増幅器33の出力におけるEVM(Error Vector Magnitude)が劣化する可能性がある。EVMは各種システムの規格により所定の値以下となるように定められている。例えば、LTEでは各サブキャリアの変調方式をQPSKとした場合、EVMを17.5 %以下にすることが求められている。そのため、第3実施例では、ディジタルプリディストータの出力信号におけるEVMを規格値以下とする範囲でPAPRを低減できる構成を示す。
図25に本発明における第3実施例の構成例を示す。本構成は、図19の第2実施例における歪観測器27の代わりにEVMを測定する機能を付加した歪・EVM観測器271を使用している。歪・EVM観測器271は、ディジタルプリディストータ200の入力信号SINと帰還信号生成装置40を介して得られる電力増幅器33の出力信号SOUTをそれぞれ復調し、復調結果を比較することでEVMを測定する。EVMを測定するため、歪・EVM観測器271は送信信号に含まれる同期をとるための信号を観測し、ディジタルプリディストータ200の入力信号SINと電力増幅器33の出力信号SOUTの同期をそれぞれ取る。ここで、ディジタルプリディストータ200の入力信号SINにおけるi番目の復調結果をZ(i)、電力増幅器33の出力信号SOUTにおける復調結果をZ'(i)とし、L点で平均化する場合、EVM(%)は
Figure 0005427300
で与えられる。Lは予め決めた2以上の整数である。
図26に制御器282の構成を示す。図7の制御器280と異なる点は、PAPRのみならず、歪・EVM観測器271が測定したEVMも3次帯域内歪係数制御部280B’へ与える点である。図27に制御器282の処理フローを示す。3次帯域内歪係数制御部280B’による3次帯域内歪係数調整処理(S12B)が他の実施例と異なる。以下、3次帯域内歪係数調整処理S12Bについて説明する。その他の処理については他の実施例と同じであるため省略する。
図27に示した制御器282の処理フローを実施している間、ディジタルプリディストータ200には第1実施例と同様に入力信号としてパイロット信号が与えられる。制御器282の処理フロー終了後、第1実施例と同様に移動局もしくは基地局と通信を行うための信号へ切り換える。
図28に3次帯域内歪係数制御部280B’による3次帯域内歪係数調整処理(S12B)のフローを示す。
[3次帯域内歪係数調整処理(S12B)]
3次帯域内歪係数制御部280B’は3次歪ベクトル調整器係数制御部280Aより3次歪ベクトル調整器23Bに設定した位相値XP,MINの通知を受ける。次いで、後述するEVMとPAPRを用いた3次帯域内歪係数の位相値計算処理(S12B1)を行う。同様にEVMとPAPRを用いた3次帯域内歪係数の振幅値計算処理(S12B2)を行う。処理S12B2の後、EVMが閾値を越えているもしくはPAPROUTが閾値を越えている場合、指定回数だけ処理S12B1〜S12B2を繰り返し(S12B3)、処理S12Bを終了して図27の処理S13に移る。
処理S12B1、S12B2のいずれかにてEVMが閾値以下かつPAPRが閾値以下になった場合、処理S12Bを終了して図27の処理S13に移る。
図29を用いてEVMとPAPRを用いた3次帯域内歪係数の位相値計算処理(S12B1)を説明する。EVMとPAPRを用いた3次帯域内歪係数の振幅値計算処理(S12B2)も同じであり、後者の説明は省略する。
[EVMとPAPRを用いた3次帯域内歪係数の位相値計算処理(S12B1)]
位相値Y(=π-XP,MIN)を計算し、Yの前後の2つの値におけるEVM(EP,1、 EP,2)とディジタルプリディストータ200の出力信号(合成器240の出力信号)におけるPAPR(RP,1、 RP,2)をそれぞれ測定する(S12B11)。次に、EVMが減少する方向とPAPRが減少する方向が一致するかを判定し(S12B12)、一致する場合、PAPRが下がる方向へ摂動法を用いてEVMが閾値を超えない条件にてPAPRを閾値以下とする位相値を求める(S12B13)。処理S12B13にてPAPRを閾値以下とする位相値が求まらない場合、設定した位相値のうちPAPRを最も低くした位相値を設定する。
処理S12B12にて、EVMが減少する方向とPAPRが減少する方向が一致しない場合、測定したEP,1、EP,2がどちらとも閾値より大きいかを判定する(S12B14)。EP,1、EP,2のどちらか一方でも閾値以下の場合、PAPRが下がる方向に摂動法を用いてEVMが閾値を超えない条件にてPAPRを閾値以下にする位相値を求める(S12B15)。処理S12B15にて、PAPRを閾値以下にする位相値が求まらない場合、設定した位相値のうちPAPRを最も低くする位相値を設定する。
処理S12B14にて、EP,1、EP,2がどちらも閾値より大きい場合、EVMが下がる方向に摂動法を用いてEVMを閾値以下とする位相値を求める(S12B16)。
図27の調整処理が終了して移動局もしくは基地局と通信を行うための信号へ切り替わった後は、ACLRが再度閾値を超えるまでは、3次歪ベクトル調整器係数の振幅値と位相値、3次帯域内歪補償係数の位相値と振幅値、3次歪帯域外歪補償係数の振幅値と位相値はそれぞれパイロット信号を用いて得られた値のままとし、ACLRが閾値を超えた場合にはパイロット信号を使って図27の処理を再度行う。
[変形実施例]
図30の変形実施例は図25の実施例においてパイロット信号を使った設定処理が終了し、入力信号がパイロット信号から移動局もしくは基地局と通信を行うための信号へ切り替わった後、合成器24の出力におけるPAPROUTが閾値を超えた場合、3次歪ベクトル調整器係数の振幅値と位相値、3次歪帯域外歪補償係数の振幅値と位相値はそれぞれパイロット信号を用いて得られた値のままとし、3次帯域内歪補償係数の位相値と振幅値だけを後述する図32の3次帯域内歪係数調整処理(S12B’)により調整する。処理S12B’を実施中は、PAPROUTが閾値を超えた部分を含む所定長の送信信号を繰り返し使用する。処理S12B’によりPAPROUTが閾値以下になってもACLRが閾値を超えた場合は、図25の実施例で説明した方法により3次歪ベクトル調整器係数の振幅値と位相値、3次帯域内歪補償係数の位相値と振幅値、3次歪帯域外歪補償係数の振幅値と位相値をそれぞれ再調整する。
図30に示すディジタルプリディストータの構成は、図22で示した送信信号発生器50で構成される送信信号発生装置500と、電力増幅器33の出力側にオンとオフを切り替えるスイッチ(SW)202とを付加した点と制御器283の構成が図25と異なる。図31に示すように、制御器283は図23と同様に、送信信号発生器50の出力信号、SW202のオンとオフをそれぞれ切り替える切替制御部281Dが図26の制御器282に付加された構成となっているが、3次帯域内歪係数制御部280B’の処理は図23と異なる。
図32に3次帯域内歪係数制御部280B’による3次帯域内歪係数調整処理S12B’のフローを示す。
[3次帯域内歪係数調整処理(S12B’)]
3次帯域内歪係数制御部280B’はPAPR観測器291から通知されたPAPROUTが閾値を超えている場合、その信号をディジタルプリディストータから出力しないようSW202をオフとするとともに3次帯域内歪係数調整処理(S12B’)が終了するまでPAPROUTが閾値を超えた信号部分を送信信号発生器50で繰り返し出力させるように切替制御部281Dに通知する(S12B0)。次いで、処理S12B1を行った後、処理S12B2を行う。処理S12B1、S12B2は図28におけるものと同様の処理である。
処理S12B1〜S12B2を予め指定した回数だけ繰り返す(S12B3)。処理S12B1、S12B2のいずれかにてEVMが閾値以下かつPAPRが閾値以下になった場合、そのときの位相値と振幅値を記憶し、切替制御部281DにてSW202をオンとし、処理S12B’の調整処理に用いた信号をディジタルプリディストータ200から出力した後、送信信号発生器50の出力を移動局もしくは基地局と通信を行うための信号へ切り替えるよう切替制御部281Dに通知する(S12B4)。処理S12B1〜S12B2を指定回数繰り返してもEVMが閾値以下かつPAPRが閾値以下にならない場合、設定した位相値と振幅値においてEVMが閾値以下となる範囲でPAPRを最も低くした位相値と振幅値をそれぞれ読み出して設定し、処理S12B4へ遷移する。
[第4実施例]
HSPA(High Speed Packet Access)やLTEといった移動無線方式では、基地局-端末間のチャネル状態(伝搬路の状態)に合わせ、スケジューリング、変調方式などを変更する適応変調、などを行っている。例えばLTEでは、端末側から送信されるチャネル状態の指標値を表すCQI(Channel Quality Indicator)に基づき、スケジューリングおよび適応変調を行う。
チャネル状態が良い場合は通信品質が高いため、ディジタルプリディストータ出力信号のPAPRをさらに低減できる可能性がある。PAPRを低減できればそれに応じて電力増幅器のバイアスを低くすることにより電力増幅器の効率を高めることができる。以下では、無線システムとしてLTEを用いた場合を例とし、CQIが大きい場合(チャネル状態が良い場合)、閾値PAPRTHをより小さな値とすることで、ディジタルプリディストータ出力信号のPAPRをさらに低減する構成を説明する。ただし、CQIが大きいほどチャネル状態が良いものとする。LTEではない無線システムを用いる場合は、CQIの代わりに例えば適応変調を行うために参照する品質情報をチャネル状態の指標値として用いればよい。
図33に本発明による第4実施例のディジタルプリディストータとその周辺装置を示す。本構成は、CQIに基づいて閾値PAPRTHを動的に変更するとともにそのPAPRTHに合わせて電力増幅器33のバイアスを変更する。そのため、CQIを制御器284に入力する点と、制御器284からの指示に基づき電力増幅器33に与えるバイアスを変更する電源装置60が付加されている点が図5の構成と異なる。
本構成の制御器284を図34に示す。この制御器284は、3次歪ベクトル調整器係数制御部280Aと3次帯域内歪係数制御部280Bと3次帯域外歪補償係数制御部280Cとに加えて更に、テーブル参照部284Eとバイアス制御部284Fとを含んでいる。テーブル参照部284EにはCQIと対応する閾値PAPRTHとの関係と、閾値PAPRTHと対応するバイアス値との関係とが表として予め記録されている。バイアス制御部284Fは電力増幅器33に与えるバイアスを電源装置60に指示する。テーブル参照部28Eは与えられたCQIに対応する閾値PAPRTHを表から読み出して3次帯域内歪係数制御部280Bに与える。3次帯域内歪係数制御部280Bは与えられた閾値PAPRTHと、PAPR観測器290により観測された入力信号におけるPAPRINとの差分ΔPAPR=PAPRIN-PAPRTHを使って式(7)により振幅値Yを計算し、位相値Yを第1実施例の図13の処理で説明したと同様に、3次歪ベクトル調整において設定した位相値XP,MINからY=π-XP,MINとして求め、これら振幅値Yと位相値Yを3次歪周波数特性補償器230Cに3次帯域内歪係数として設定する。テーブル参照部284Eは更に、CQIに対応する閾値PAPRTHに対応するバイアス値を表から読み出し、バイアス制御部284Fに与える。バイアス制御部284Fは与えられたバイアス値を電源装置60に与えそれにより電力増幅器33にバイアスを設定する。
CQIと閾値PAPRTHとの関係はCQIが大きくなると閾値PAPRTHが小さくなる関係であり、CQIに対して誤り率特性などの伝送特性を大きく劣化させない範囲でできるだけ小さいPAPRTHとして予め測定により決める。閾値PAPRTHとバイアス値との関係は閾値PAPRTHが小さくなるとバイアス値が小さくなる関係であり、設定したPAPRTHに対してACLRが閾値以下となりかつ電力増幅器33の効率が最も高くなるバイアス値として予め測定により決める。テーブル参照部284Eにはこのようにして決められた関係が表として記録されている。CQIと閾値PAPRTHの関係は必ずしも線形関係でなくても良く、例えばCQIが増大するにつれ閾値PAPRTHが階段状に減少するようにしてもよい。また、CQIに対し閾値PAPRTHが決められ、閾値PAPRTHに対しバイアス値が決められているので、結局、各CQIに対し閾値PAPRTHとバイアス値が与えられる1つの表としてテーブル参照部284Eに記録しておいてもよい。
このように、CQIの増大に従って閾値PAPRTHを低減し、それに従って電力増幅器33のバイアスを小さくした場合、歪観測器27により観測される電力増幅器出力中の歪成分が変化し、その結果、ACLRを閾値以下にする3次歪ベクトル調整器係数と3次帯域外歪補償係数が変化してしまう場合がある。そこで、PAPRTHとそのときのバイアスにおいてACLRが閾値以下となる3次歪ベクトル調整器係数と3次帯域外歪補償係数をテーブル参照部284Eに予め表として記録しておく。3次歪ベクトル調整器係数と3次帯域外歪補償係数はそれぞれ前述した第1実施例の方法を用いて予め求めておく。この場合も、閾値PAPRTHに対応する3次歪ベクトル調整器係数と3次帯域外歪補償係数を1つの表として設けてもよいし、先に述べたCQIに対応する閾値PAPRTHとバイアス値の表と統合した1つの表として設けてもよい。また、3次帯域内歪係数としては、PAPRINの取り得る各値毎にそれぞれの閾値PAPRTHとの差分ΔPAPRから式(7)で計算される適切な3次帯域内歪係数としての振幅値YAを表として予めテーブル参照部284Eに記録しておいてもよい。
電力増幅器から出力する信号の平均電力を変える場合,とりうる平均電力毎にCQIに対するPAPRTH,バイアス値,3次歪ベクトル調整器係数,3次帯域外歪補償係数を表としてテーブル参照部284Eに記録しておいてもよい。
プリディストータ及び電力増幅器を含むシステムの起動時の初期値として予め決めた閾値PAPRTHとバイアス値が使用され、前述の実施例1による処理により3次歪ベクトル調整器23B、3次歪周波数特性補償器230Cに対する設定が行われる。CQIが入力されると、テーブル参照部284Eの表からCQIに対応する閾値PAPRTH及びバイアス値が読み出され、それぞれ3次帯域内歪係数制御部280Bとバイアス制御部284Fに与え、更に3次歪ベクトル調整器係数及び3次帯域外歪補償係数を読み出してそれぞれ3次歪ベクトル調整器係数制御部280A及び3次帯域外歪補償係数制御部280Cに与えればよい。CQIが変化した場合、改めて第1実施例と同様の処理により第3歪ベクトル調整器係数及び第3帯域外歪補償係数を求めるより、テーブル参照部284Eの表から読み出した値及び係数を使用することにより処理速度を高めることができる。
上述ではCQIが改善される場合について述べたが、逆にチャネル状態が悪くなった場合も、テーブル参照部284Eの表にCQIが小さい範囲での対応する閾値PAPRTH、バイアス値、3次歪ベクトル調整器係数及び3次帯域外歪補償係数を予め設けておくことにより対応可能である。
本実施例の構成を図22に示した構成に適用しても良い。このとき、CQIに対応する閾値PAPRTHと3次歪ベクトル調整器係数と3次帯域外歪補償係数とバイアス値はそれぞれテーブル参照部284Eから参照する。3次帯域内歪係数はPAPROUTがテーブル参照部284Eより与えられたPAPRTH以下となるように3次帯域内歪係数制御部280Bにて図24の処理S12A’を用いて調整する。
処理S12A’を用いてCQIとPAPRINに対して設定すべき3次帯域内歪補償係数を測定により予め得ている場合,3次帯域内歪補償係数をテーブル参照部284Eから参照するようにしてもよい.
本実施例の構成を図30に示した構成に適用しても良い。このとき、CQIに対応する閾値PAPRTHと3次歪ベクトル調整器係数と3次帯域外歪補償係数とバイアス値はそれぞれテーブル参照部284Eから参照し、3次帯域内歪係数はPAPRTOUTがテーブル参照部284Eより与えられたPAPRTH以下となるように図32の処理S12B’により調整する。このとき、EVMの測定結果に基づいて、EVMが閾値以下となる範囲でディジタルプリディストータ出力信号のPAPROUTを最も下げられるPAPRTHを予めテーブル参照部284Eに記録しておく構成としてもよい。また、処理S12B’を用いて、EVMが閾値以下となる範囲でCQIとPAPRINに対して設定すべき3次帯域内歪補償係数を測定により予め得ている場合、3次帯域内歪補償係数をテーブル参照部284Eから参照するようにしてもよい。
同様に、本実施例の構成を他の図19,25に示した構成にそれぞれ適用してもよい。
以上説明した各実施例及びその変形例において、ブロック図で示したこの発明によるべき級数型ディジタルプリディストータの構成は、その一部又は全てをそれぞれ専用のディジタル回路で構成してもよいし、DSP(digital signal processor)やFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成してもよいし、コンピュータにより処理フローで説明した方法を記述したプログラムを実行するように構成してもよいし、あるいはこれらの所望の組み合わせにより実現してもよい。

Claims (11)

  1. 電力増幅器で発生する歪成分を打ち消すための歪補償成分を入力信号に付加するべき級数型ディジタルプリディストータであって、
    Nを予め定められた3以上の奇数として、
    上記入力信号を遅延伝達する線形伝達経路と、
    上記入力信号のN次歪成分を発生するN次歪発生器と、上記N次歪成分の振幅と位相を調整するN次歪ベクトル調整器と、上記N次歪ベクトル調整器の出力を周波数領域に変換し、各周波数成分の位相と振幅をそれぞれ調整し、時間領域に逆変換するN次歪周波数特性補償器とを含み、上記N次歪周波数特性補償器の出力を上記歪補償成分として出力する歪発生経路と、
    上記線形伝達経路の出力と上記歪発生経路の出力とを合成する合成器と、
    少なくとも上記合成器の出力信号における平均電力対ピーク電力比PAPROUTを計算するPAPR観測器と、
    上記電力増幅器の出力に含まれる少なくともN次歪成分を観測する歪観測器と、
    上記PAPR観測器と上記歪観測器の観測結果に基づいて上記N次歪ベクトル調整器と上記N次歪周波数特性補償器に対する位相値と振幅値を調整する制御器、
    とを含み、上記制御器は、
    上記歪観測器により観測される上記入力信号の帯域、以下入力信号帯域と呼ぶ、の上側又は下側のN次歪成分が減少するよう上記N次歪ベクトル調整器に設定する位相値と振幅値を調整するN次歪ベクトル調整器係数制御部と、上記歪観測器により観測される上記入力信号帯域の上側及び下側のN次歪成分が減少するよう上記N次歪周波数特性補償器における上記周波数領域の上記入力信号帯域外の各周波数成分の位相値と振幅値をそれぞれ調整するN次帯域外歪補償係数制御部と、上記PAPR観測器が計算した出力信号の平均電力対ピーク電力比PAPROUTが小さくなるよう上記N次歪周波数特性補償器における上記周波数領域の上記入力信号帯域内の各周波数成分の位相値と振幅値をそれぞれ調整するN次帯域内歪係数制御部と、
    を含む。
  2. 請求項1記載のべき級数型ディジタルプリディストータにおいて、上記N次帯域外歪補償係数制御部は上記周波数領域の上記入力信号帯域外の上側及び下側帯域を合わせてM個の分割帯域に分割し、Mは2以上の予め決めた整数であり、各分割帯域毎に上記上側及び下側のN次歪成分が減少するよう位相値と振幅値を設定するように構成されている。
  3. 請求項1又は2記載のべき級数型ディジタルプリディストータにおいて、上記N次帯域内歪係数制御部は上記N次歪ベクトル調整器に対し設定した位相値に基づいて上記N次歪周波数特性補償器による上記周波数領域の上記入力信号帯域内の各周波数成分に設定する位相値を計算するよう構成されている。
  4. 請求項1又は2記載のべき級数型ディジタルプリディストータにおいて、上記N次帯域内歪係数制御部は上記平均電力対ピーク電力比PAPROUTが小さくなるよう上記N次歪周波数特性補償器による上記周波数領域の上記入力信号帯域内の各周波数成分の位相値と振幅値の少なくとも一方を摂動法又は関数近似法により計算し設定するよう構成されている。
  5. 請求項1乃至4の何れか記載のべき級数型ディジタルプリディストータにおいて、上記PAPR観測器は更に上記入力信号の平均電力対ピーク電力比PAPRINを計算するよう構成されており、上記N次帯域内歪係数制御部は上記N次歪周波数特性補償器による上記周波数領域の上記入力信号帯域内の各周波数成分に設定する振幅値を、上記入力信号のPAPRINと予め決めた閾値PAPRTHとの差から計算するよう構成されている。
  6. 請求項1乃至5のいずれか記載のべき級数型ディジタルプリディストータにおいて、上記電力増幅器への上記合成器の出力の供給をオン・オフするスイッチが更に設けられており、上記制御器は更に、上記PAPR観測器による上記合成器の出力の平均電力対ピーク電力比PAPROUTが上記予め決めた閾値PAPRTHを超えた場合、上記スイッチをオフとして上記通信信号の上記PAPROUTがPAPRTHを越えた部分を含む所定長を上記入力信号として繰返し発生するよう上記送信信号発生器に指示すると共に上記N次歪周波数特性補償器における上記周波数領域の上記入力信号帯域内の周波数成分に設定する位相値と振幅値を上記平均電力対ピーク電力比PAPROUTが上記閾値PAPRTH以下となるように再設定するよう上記N次帯域内歪係数制御部に指示する切替制御部を含む。
  7. 請求項1乃至5のいずれか記載のべき級数型ディジタルプリディストータにおいて、上記歪観測器は更に上記電力増幅器の出力と上記入力信号の復調結果からEVM(error vector magnitude)を計算するよう構成されており、上記N次帯域内歪係数制御部は上記PAPR観測器が観測する上記合成器の出力における平均電力対ピーク電力比PAPROUTと上記歪観測器が計算するEVMがそれぞれ予め決めた閾値以下となるように上記N次歪周波数特性補償器における上記入力信号帯域内の周波数成分に位相値と振幅値を設定するように構成されている。
  8. 請求項7記載のべき級数型ディジタルプリディストータにおいて、上記制御器は更に、上記PAPR観測器による上記合成器の出力の平均電力対ピーク電力比PAPROUTが上記予め決めた閾値PAPRTHを超えた場合、上記電力増幅器の出力をオフとして上記通信信号の上記PAPROUTがPAPRTHを越えた部分を含む所定長を上記入力信号として繰返し発生するよう上記送信信号発生器に指示すると共に上記N次歪周波数特性補償器における上記周波数領域の上記入力信号帯域内の周波数成分に設定する位相値と振幅値を上記平均電力対ピーク電力比PAPROUTが上記閾値PAPRTH以下となるように再設定するよう上記N次帯域内歪係数制御部に指示する切替制御部を含む。
  9. 請求項1乃至8のいずれか記載のべき級数型ディジタルプリディストータにおいて、上記制御器は更に、基地局と端末間のチャネル状態の指標値に対応して閾値PAPRTHとバイアス値が予め記録されたテーブル参照部と、チャネル状態の指標値に応じて上記テーブル参照部から読み出されたバイアス値を上記電力増幅器にバイアスを与える電源装置に設定するバイアス制御部とを含み、上記テーブル参照部に記録された閾値PAPRTHはチャネル状態の指標値が大きいほど小さく、バイアス値は閾値PAPRTHが小さいほど小さい値とされている。
  10. 請求項9記載のべき級数型ディジタルプリディストータにおいて、上記N次帯域内歪係数制御部は、上記平均電力対ピーク電力比PAPROUTがチャネル状態に応じて上記テーブル参照部から読み出された閾値PAPRTH以下となるように上記入力信号帯域内の各周波数成分の位相値と振幅値を調整するよう構成されている。
  11. 請求項1記載のべき級数型ディジタルプリディストータの制御方法であり、
    上記制御器の処理は、
    (a)上記歪観測器により観測される上記入力信号の帯域、以下入力信号帯域と呼ぶ、の上側帯域又は下側帯域のN次歪成分が減少するよう上記N次歪ベクトル調整器に設定する位相値と振幅値を上記N次歪ベクトル調整器係数制御部により制御する処理ステップと、
    (b) 上記歪観測器により観測される上記入力信号帯域の上側帯域及び下側帯域のN次歪成分が減少するよう上記N次帯域外歪補償係数制御部により上記N次歪周波数特性補償器における上記周波数領域の上記入力信号帯域外の各周波数成分の位相値と振幅値をそれぞれ調整する処理ステップと、
    (c) 上記PAPR観測器が計算した出力信号の平均電力対ピーク電力比PAPROUTが小さくなるよう上記N次帯域内歪係数制御部により上記N次歪周波数特性補償器における上記周波数領域の上記入力信号帯域内の各周波数成分の位相値と振幅値をそれぞれ設定する処理ステップと、
    を含む。
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