JP5426752B2 - Ag−酸化物系電気接点材料の製造方法およびそれによる電気接点材料 - Google Patents

Ag−酸化物系電気接点材料の製造方法およびそれによる電気接点材料 Download PDF

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Description

本発明は、Ag−酸化物系電気接点材料の製造方法およびそれによる電気接点材料に関する。
従来、電気接点材料の製造方法としては、素材となる合金を溶解法により作製し、圧延加工、プレス加工等を行って接点形状に加工した後、内部酸化処理を行う後酸化法による製造法がある。
また、素材となる合金を溶解法により作製し、板材等に加工した後、プレスカット等により細片を製造し、細片を内部酸化処理してから所定の形状に圧縮成形を行い、圧縮成形された材料を押し出し加工により線材や板材に加工してから接点形状に加工する、予備酸化法による製造方法がある(例えば、特許文献1参照)。
また、金属粉末を所定の形状に圧縮成形した後、焼結を行い、圧延加工した後に接点形状に加工する粉末焼結法による製造方法がある(例えば、特許文献2参照)。
特開平7−258769号公報 特開平9−111364号公報
例えば、Ag、Zn、Te、Cu、Sbを含む組成の合金を用いて電気接点を製造しようとした場合、Znを含むAg合金の塑性加工性が悪く、このため接点の製造に不可欠な圧延加工等の加工が困難であり、従来の電気接点の製造方法である後酸化法や予備酸化法での製造が困難である。
また、多少の塑性加工が可能な場合においても、接点形状に加工後に内部酸化処理を行うと、酸化膨張により結晶粒界に多数の微細な割れが発生することで、非常に脆い状態となり、そのままでは電気接点として使用することが困難である。このように、Znを含むAg−酸化物系電気接点材料は、電気接点の製造に不可欠な塑性加工性が低く、圧延加工を行うことが困難であったため、電気接点材料として実用化されていなかった。
しかしながら、Znを含むAg合金が電気接点材料として実用可能な性能を備えることができれば、大量に使用される接点材料の単価を下げることが可能となり、大量生産に好ましい電気接点材料を提供することが可能である。
本発明は、このような問題を解決することを課題とする。
そこで本発明は、Znを含むAg−酸化物系電気接点材料を製造するために、この組成によるAg合金の特徴である低い塑性加工性と、特定の内部酸化条件において結晶粒界に多数の微細な割れが発生して非常に脆くなる性質に着目した。本発明は、溶解法によりインゴットを作製した後、インゴット状態のまま内部酸化処理を行うことにより、結晶粒界に多数の微細な割れを発生させて非常に脆い状態とし、その後、インゴットを粉砕処理することにより、内部酸化処理済のAg合金の細片または粉末を得てから、そのAg合金の細片又は粉末を所望の形状に圧縮成形を行い、焼結処理した後に、押し出し加工により線材や板材の電気接点材料に加工し、最終的な接点形状に加工できるようにした。
本発明は、内部酸化処理を、酸素分圧0.5〜5.0MPa、酸化温度600〜900°Cで行う。これは、これまでの実験により、この内部酸化条件以外では内部酸化が進行せず、Znを含むAg合金が内部酸化型接点として必要な性質を得ることができないと共に結晶粒界に多数の微細な割れを発生させて非常に脆い状態とすることができず、材料を圧縮成形するために必要な細片や粉末とすることができなかったためである。
ここで、本発明における内部酸化処理によって結晶粒界に多数の微細な割れが発生する原因について実験によって明らかになった点を述べる。
従来、電気接点の主流であるAg−Sn−In系材料を内部酸化処理した場合、材料内部に酸化物が生成される際に材料は多少膨張するものの、結晶粒界に多数の微細な割れは発生しなかった。
Ag−Sn−In系材料を内部酸化処理した場合、材料表面から内部酸化が行われることによって生じたAg合金中のSnやIn等の濃度勾配を解消するために、材料表面に向かってAg合金中のSnやInが拡散していく。この場合、SnやInの拡散速度は、内部酸化時に材料表面からOが拡散していく速度よりも速いため、材料内部で若干の酸化物の凝集が発生し、酸化物の多い個所と少ない個所が生じる。このうち、酸化物濃度の低い個所は、塑性変形し易い状態である。内部酸化に伴う酸化物生成による膨張が発生した場合、この酸化物濃度が低く塑性変形し易い個所が、この膨張による変形を吸収するため、微細な割れが発生しないものである。
しかし、本発明によるZnを含むAg系材料を内部酸化処理した場合、内部酸化時のZnの拡散速度がSnやInに比べて遅く、材料表面からのOの拡散速度の方が速いためにAg合金中の酸化物の生成が速く、全体に均一に酸化物が分散し、酸化物の凝集が発生しにくい。このため、Ag−Sn−In系材料に比べて全体に展延性が低く、内部酸化時に発生する酸化物の膨張を吸収することができないため、結晶粒界に多数の微細な割れが発生することになる。特に、本発明で示した内部酸化条件下では、この現象が顕著に確認された。
本発明に示す製造方法により、従来、電気接点の製造が困難であったZnを含むAg系材料を用いて電気接点を製造することが可能となり、従来の接点材料よりも接点性能に優れた電気接点を製造することが可能となった。
これまでの実験により、Znを含むAg系材料としては、Ag98.7〜50質量%、Zn1〜40質量%、Te0.1〜3.0質量%、Cu0.1〜5.0質量%、Sb0.1〜2.0質量%に配合したものが、接点性能に優れた電気接点として製造することが可能であることがわかった。
また、AgにZnを添加する際に、Te、Cu、Sbの3元素を併せて添加することにより、接点性能に優れた電気接点を製造することが可能になることがわかった。これら3元素の配合割合は、それぞれ上記の最小値未満では、耐消耗性および耐溶着性に効果がなくなる。また、それぞれ上記の最大値を超えると、酸化物が多くなり過ぎるため接触抵抗が増大し、ひいては温度上昇を招くこととなり、溶着現象を発生させる要因となることがわかった。
Znの配合割合を1〜40重量%とした理由は、1重量%未満では、酸化物による所望の効果が得られないため添加する意味がなく、40重量%を超えると電気接点として製造が困難になってしまうためである。
また、実験により、上記合金にさらに、Sn0.5〜8.0量%、In1.0〜6.0量%、Ni0.1〜0.3量%、の少なくとも1種を添加すると、酸化物が均一に析出するように制御し、結晶粒を微細化させることに有効であることがわかった。
Sn、In、Niの配合割合を上記のように定めた理由は、Snが0.5量%未満、Inが1.0量%未満、Niが0.1量%未満では、酸化物が均一に析出するように制御し、結晶粒を微細化させるような効果が得られなかったからである。また、Snが8.0量%、Inが6.0量%を超えると、酸化物が凝集して内部酸化不良が発生し、Niが0.3量%を超えると均一な溶解が困難になることがわかったからである。
また、実験により、Mn、Ga、Mg、Biの少なくとも1種を0.01〜0.3量%の範囲で添加することにより、電気接点としての性能をさらに向上させることが可能であることがわかった。これは、微細な酸化物を結晶組織内に析出させることにより、耐消耗性や、耐溶着性を向上させることができるからである。なお、これらの添加量が、0.01量%未満ではその効果が得られず、0.3量%を超えると酸化物が凝集して内部酸化不良が発生することがわかった。
本発明の電気接点材料による電気接点は、耐溶着性、耐アーク消耗性、低接触抵抗等の諸電気特性に優れ、種々の接点用途において優れた特性を有することがわかった。
これにより、Ag合金中にZnを含有し、大量に使用される接点材料として、単価が低く、大量生産に好ましい電気接点材料を提供することが可能となった。
本発明の実施例を表1により説明する。
表1に示した各実施例の材料を、溶解により、厚さ20mm、幅50mm、長さ50mmのインゴットに製造した後、インゴット状態のまま800°C、酸素圧力0.5MPaで約120hrほど内部酸化処理を行う。
その後、粉砕機を用いてインゴットを粉砕し、細片および/もしくは粉末を製造する。製造した細片および/もしくは粉末を所望形状に圧縮成形した後、焼結し、押し出し加工により、直径4mmの線材にし、さらに伸線加工および熱処理により、直径2mmの線材とした。このときの加工率は75%であった。
つぎに、上記線材を、成形プレスにより厚さ0.8mm、幅および長さを2.5mmの角形になるように成形加工を行った後、DC200,300,350Vにて溶着試験を行った。
なお、比較のために、従来例としてAg−Sn−In系の予備酸化型接点2例を作製して比較試験を行った。
Figure 0005426752

Claims (5)

  1. Znを含むAg合金を、酸素分圧0.5〜5.0MPa、酸化温度600〜900°Cの条件で内部酸化処理を行うことにより結晶粒界に多数の微細な割れを発生させ、これを粉砕することにより得られる細片および/もしくは粉末を所望の形状に圧縮成形した後、焼結し、所定の形状に押し出し加工することを特徴とするAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
  2. 請求項1において、Znを含むAg合金を、Ag98.7〜50質量%、Zn1〜40質量%、Te0.1〜3.0質量%、Cu0.1〜5.0質量%、Sb0.1〜2.0質量%としたことを特徴とするAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
  3. 請求項2において、さらに、Sn0.5〜8.0量%、In1.0〜6.0量%、Ni0.1〜0.3量%の少なくとも1種を添加したことを特徴とするAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
  4. 請求項3において、さらに、Mn、Ga、Mg、Biの少なくとも1種を0.01〜0.3質量%添加したことを特徴とするAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたAg−酸化物系電気接点材料。
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