JP5426256B2 - スキン層および発泡層を有する把持部材 - Google Patents
スキン層および発泡層を有する把持部材 Download PDFInfo
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Description
ステアリングホイールに対しては、軽量化、グリップしたときの触感、操作性などが要求されており、こうした特性を満たすものとして、RIM成形発泡ポリウレタンによるステアリングホイールが主流となっている。
しかしながら、RIM発泡成形では、離型剤やバリヤコートの塗布工程が必要であり、成形サイクルがながくなる(一般的には4〜5分)。また、成形後のバリとり等の二次的加工が必要であり生産効率が非常に悪い。更に、熱可塑性でないためリサイクル性に劣り、燃焼時に有害なシアンガスを発生するという問題もある。
そこで、RIM発泡ポリウレタン樹脂に代わるソフト感のあるステアリングホイールが提案されている。
しかし、RIM成形発泡ポリウレタン樹脂成形品と比較するとソフト感が不十分であり、軽量化の観点からもメリットがない。
また、ステアリングホイールの軽量化、触感、操作性の向上のため、芯金と、オレフィン系又はスチレン系熱可塑性エラストマーから構成される表面層と、それらの間に無機フィラーを配合して弾性率を特定の範囲に調整したプロピレン系樹脂層を介在させて積層したステアリングホイールが提案されている(特許文献2)。オレフィン系またはスチレン系エラストマーは、エステル系あるいはウレタン系熱可塑性エラストマーと比較すると、低硬度化が可能であり、柔らかい感触を得ることができる。しかし、RIM成形発泡ポリウレタン樹脂に比べて弾力性に劣り、握ったときの感触が不十分である。また、アース電位のプレート状導電性治具などの専用装置が必要で、塗装装置が複雑になるという問題がある。
更に、スチレン系熱可塑性エラストマーを使用して、型開速度を変化させることで、発泡を制御し、発泡セルの状態、発泡倍率を適切な状態に確保するという発泡射出成形方法も提案されている(特許文献3)。また、キャビティの非意匠面に設けた可動スライドコアを有する金型を用いて、ショアD硬度が20〜60の熱可塑性エラストマー100重量部と発泡剤0.01〜10重量部からなる発泡性熱可塑性エラストマーを、金型に60%以上の充填量で射出した後、4秒以内に該スライドコアを後退させて発泡させてステアリングホイールを製造するものも提案されている(特許文献4)。
しかし、いずれも金型が非常に複雑となる。
本願発明は、熱可塑性エラストマーを使用して、生産性良く製造が可能で、リサイクルも可能であり、かつRIM発泡ポリウレタン樹脂が有する優れたグリップ感と少なくとも同等あるいはそれ以上に向上した、又操作性にも優れたステアリングホイールなどの自動車用把持部材を提供することを目的とする。
一方、本発明者は、ステアリングホイールにおいては、そのグリップ感に関与する特性として、その構成樹脂材料の圧縮硬さ(LC値)、圧縮エネルギー(WC値)、および圧縮回復性(RC値)の3種の圧縮特性が重要であるとの知見を得ていた。
前記手法により、好ましい触感を示すことを確認した発泡熱可塑性エラストマーと、従来よりグリップ時の触感が優れているとの評価を受けている発泡ポリウレタン樹脂について前記の3種の圧縮特性を測定して、その測定値から、前記課題を解決し得る優れた触感を具備する把持部材を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
[1]スキン層および発泡層を有する発泡熱可塑性エラストマーをグリップ部に使用した把持部材において、
該発泡熱可塑性エラストマーが以下の圧縮特性を具備することを特徴とする把持材。
A.圧縮硬さ(LC値)がLC=0.8〜0.9
B.圧縮エネルギー(WC値)がWC=600〜1000(gf・cm/cm2)
C.圧縮回復性(RC値)がRC>50%
[2]前記熱可塑性エラストマーがオレフィン系熱可塑性エラストマーである前記[1]記載の把持部材。
に関する。
A.圧縮硬さ(LC値)がLC=0.8〜0.9
B.圧縮エネルギー(WC値)がWC=600〜1000(gf・cm/cm2)
C.圧縮回復性(RC値)がRC>50%
とすることにより、その把持部材を把持(グリップ)したときの感触を、これまで触感の良いものとされてきた、発泡ポリウレタン樹脂によるものと比べても少なくともそれと同等、あるいはそれよりも向上することができ、操作性にも優れている。
そして、RIM成形発泡ポリウレタンについて従来から指摘されてきた問題点を解消して、成形サイクルを短縮することができ、またリサイクルも可能であり、焼却したときの有害ガスの発生も防止することができる。
本発明は、熱可塑性エラストマーの発泡射出成形により得られる表皮層および発泡層を有する把持部材に関するものである。
前記発泡射出成形方法自体は、特に制限されるものではなく、公知の方法を使用することができる。すなわち、ステアリングホイール用の芯金を型内にインサートして、型閉め後、これに溶融させた発泡処方の熱可塑性エラストマーを射出してキャビティ内で発泡成形することにより成形される。使用する金型として、コア型と可動型からなる金型を用いて、可動型を移動させて発泡の進行につれてキャビティを拡張させる方法によっても良いが、金型が複雑になるのでショートショットで金型キャビティ内に発泡性熱可塑性エラストマーを注入して金型を固定した状態で射出成形する方が好ましい。
すなわち、A.圧縮硬さ(LC値)がLC=0.8〜0.9
B.圧縮エネルギー(WC値)がWC=600〜1000(gf・cm/cm2)
C.圧縮回復性(RC値)がRC>50%
を同時に満足することである。
前記官能テストは60名のパネラーによるもので、このパネラーは、一般のユーザーから選んだ。
1)発泡熱可塑性エラストマーのテストピース
熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系、スチレン系、ポリエステル系の各熱可塑性エラストマーからそれぞれ選び、また発泡手法(物理発泡(N2、CO2)、化学発泡剤、膨張剤(日本フィライト(株)製エクスパンセル980MB)を変えて、以下のようにして調製した。
テストピース成形用の金型(キャビティ10×200×150mm)を使用し、金型温度を30℃とした。熱可塑性エラストマーに対して0〜3重量部の発泡剤又は膨張剤を添加し、熱可塑性エラストマーを200℃で溶融して金型をコアバックせずにショートショトで射出成形を行った。射出後30秒で金型から取り出し、テストピースをとした。
2)発泡ポリウレタン樹脂のテストピース
テストピース成形用の金型(キャビティ10×200×150mm)を使用し、金型温度を40℃とした。自動車用ステアリングホイール用のポリウレタン樹脂成形材料(ポリオール、触媒、鎖延長剤、助剤からなるポリオール混合物とポリイソシアネート化合物からなるNCOインデックスが110)を予め型を閉じた状態でポリウレタン樹脂材料液を注入し、型内で反応させる反応射出成形法(RIM)で成形した。型内反応温度は約90℃で、射出後30秒で金型から取り出し、テストピースとした。
なお、いずれのテストピースもそのスキン層の厚みを1.0mmとした。
その結果、最もグリップ時の触感が好ましいとされたものは、オレフィン系の熱可塑性エラストマー(JSR(株)製:エクセリンク9700N)と重炭酸ナトリウムを主成分とする発泡剤(永和化成工業株式会社製のポリスレンEV405D)とを組み合わせて使用して得た発泡熱可塑性エラストマーであった。次いで好ましい触感とされたのは発泡ポリウレタン樹脂であった。
この測定結果は、前記の触感が最も好ましいと評価された発泡熱可塑性エラストマーが、従来のポリウレタン樹脂と類似した接触圧力分布を示し、荷重負荷部が全体的に沈み、圧力分布の均一性に優れていた。このことは材料の発泡バランスが均一で、圧縮特性のバラツキが小さいことを示している。他のテストピースでは前記2者よりもかなり不均一であることがわかった。このように接触圧力分布の測定結果は、前記の官能テストの評価結果とも一致している。
この測定は、サンプルピースに試験機の先端部を当接して、図2に示すように、荷重をかけたとき得られる曲線と次いで荷重を減らしていく時に得られる曲線との間の面積aと、後者の曲線とABCとの間の面積bとから、
圧縮硬さ(LC値)=(a+bの面積)/三角形ABCの面積
圧縮エネルギー(WC値)=a+bの面積
圧縮回復性(RC値)=bの面積/(aの面積+bの面積)
として得られる。
なお、LC値の値が1(=MAX)に近づく程圧縮硬さが大きく、WC値の値が大きい程、圧縮されやすく、またRC値の値が100%(=MAX)に近づく程、回復性があることを示している。
また、圧縮硬さ(LC値)、圧縮エネルギー(WC値)についても、前記のテストピースによる官能テストの結果で触感が良いとされた前記2者の測定値から、LC値は0.8〜0.9、より好ましくは0.8〜0.85、WC値は600〜1000(gf・cm/cm2)、より好ましくは700〜850(gf・cm/cm2)、であった。
このように発泡熱可塑性エラストマーが前記特性を有する時、把持部材をグリップしたときの感触は、これまで触感が優れていると評価されている発泡ポリウレタン樹脂と同等か、それ以上の好ましい触感を付与することができる。
すなわち、射出樹脂材料は、熱可塑性エラストマーとしてJSR(株)製TPEエクセリンク9700Nを使用し、発泡剤として永和化成工業(株)製EV405Dを前記TPEに対して0.01〜10重量部、好ましくは1〜5重量部添加し、これをインサート部材として芯金を型内に配置した金型にショートショトでステアリングホイールのグリップ部の射出成形を行った。成形装置は、図1に示すように、均一な発泡状態を得るために、バランス良く中央部の2箇所にゲート位置を設定し、上下にオーバーフロー部を設けた構成のものを使用した。
こうして得られた、ステアリングホイールのグリップ部は、スキン層の厚みが1.0〜2.0mmであり、圧縮硬さ(LC値)が0.83、圧縮エネルギー(WC値)が830(gf・cm/cm2)、圧縮回復性(RC値)が62%であり、グリップ部は、どの部分も感触は良く、発泡ポリウレタン樹脂製のものと比べても勝るとも劣るものではない。
Claims (2)
- スキン層および発泡層を有する発泡熱可塑性エラストマーをグリップ部に使用した把持部材において、
該発泡熱可塑性エラストマーが以下の圧縮特性を具備することを特徴とする把持材。
A.圧縮硬さ(LC値)がLC=0.8〜0.9
B.圧縮エネルギー(WC値)がWC=600〜1000(gf・cm/cm2)
C.圧縮回復性(RC値)がRC>50% - 前記熱可塑性エラストマーがオレフィン系熱可塑性エラストマーである請求項1記載の把持部材。
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