本発明では、発生した事故又は故障に関する情報から、当該事故又は故障と類似する事故又は故障の発生確率を推定する。具体的には、発生した故障又は事故のデータに基づいて、事故又は故障の発生確率を算出することによって、事故又は故障が発生すると予測される位置を特定する。
[第1の実施形態]
以下、発生した事故の状況を分析して、類似の事故が発生する確率を計算する計算機システムについて説明する。なお、故障についても同様である。
図1は、本発明の第1の実施形態における計算機システムの構成例を説明するブロック図である。図1は、天然ガスパイプラインにおける計算機システムの構成例を示す。
計算機システムは、パイプライン2201、コンプレッサ2202、2203、陰極保護システム2204、2205、データセンタシステム2213、携帯データ入力端末2214、及びコンプレッサステーション2215、2216から構成される。
パイプライン2201には、コンプレッサ2202、2203によって天然ガスが輸送されている。
陰極保護システム2204、2205は、リアルタイムで電位データ、すなわち、陰極保護(CP:Cathodic Protection)データを取得する。取得されたCPデータはゲートウェイ装置2210、2211を介してリスク診断システム2206、2207に送信される。また、取得されたCPデータは、データセンタシステム2213に格納される。以下、陰極保護システムをCP設備とも記載する。
携帯データ入力端末2214は、現場において爆発の場所特定、及び土壌の情報などを入力する装置である。携帯データ入力端末2214は、ピギング検査によって計測された欠陥データを取得し、無線通信等の電波によって、取得された欠陥データをコンプレッサステーション2215、2216に送信する。
なお、無線通信ができない環境では、記憶媒体を用いてコンプレッサステーション2215、2216にデータを入力する方法であってもよい。
コンプレッサステーション2215、2216は、パイプライン2201を管理する施設である。
コンプレッサステーション2215は、リスク診断システム2206、SCADA2208、ゲートウェイ装置2210及びオフラインデータ入力システム2212を備える。また、コンプレッサステーション2216は、リスク診断システム2207、SCADA2209及びゲートウェイ装置2211を備える。
リスク診断システム2206、2207は、パイプライン2201の事故発生確率を算出するシステムである。リスク診断システム2206、2207の処理結果は、ネットワーク2217を介してデータセンタシステム2213送信される。
なお、リスク診断システム2206の構成については、図2及び図3を用いて後述する。
SCADA2208、2209は、コンプレッサ2203における受入れ圧力、送り出し圧力、流体の受入れ温度及び送り出し温度等のデータを収集する。
ゲートウェイ装置2210、2211は、リアルタイムCPデータの場合など、パイプライン2201に関連するリアルタイムデータを収集する。また、ゲートウェイ装置2210、2211は、ネットワーク2217を介して各種データを送信する。
オフラインデータ入力システム2212は、ピグによって取得された検査データ及び土壌データのように、オフラインによって取得されるオフラインデータの取り込み用インタフェース装置である。
パイプライン2201の欠陥データは、通常ピギングによるオフラインデータとして収集される。CPデータはオンラインデータ、又はオフラインデータのいずれのデータ形式で収集されてもよい。
なお、パイプライン2201の欠陥データは、スマートピグのように超音波や磁気センサを用いて取得される。また、パイプライン2201の形状はジャイロセンサを搭載したピグによって取得される。
データセンタシステム2213は、リスク診断システム2206、2207によって算出された事故発生確率を格納する。さらに、データセンタシステム2213は、パイプライン2201全体の形状データ、欠陥データ、CP電位データ、及び運用履歴データを格納する。
本実施形態では、所定の区間毎にコンプレッサステーション2215、2216が配置される。コンプレッサステーション2215、2216は、パイプラインの所定区間を管理する。これによって、長大なパイプライン2201であっても、管理区間ごとに分割して事故発生を診断できるため、短時間で効率的にリスク診断を行うことができる。また、各コンプレッサステーション2215、2216の処理結果をデータセンタシステム2213に集約させることによって、全体の状況を容易に把握できる。
なお、石油パイプラインの場合には、コンプレッサ2202は、タービン又はポンプとなる。また、コンプレッサステーション2215、2216は、ポンプステーションとなる。
図2は、本発明の第1の実施形態のリスク診断システム2206のハードウェア構成を説明するブロック図である。
リスク診断システム2206は、プロセッサ3101、メモリ3102、不揮発性記憶媒体3103及びネットワークインタフェース3104を備える。
プロセッサ3101は、メモリ3102上に展開されるプログラムを実行する。
メモリ3102は、プロセッサ3101に実行されるプログラム及び当該プログラムを実行するために必要となる情報を格納する。
不揮発性記憶媒体3103は、メモリ3102上に展開されるプログラム及びデータを格納する。不揮発性記憶媒体3103は、例えば、HDDが考えられる。
ネットワークインタフェース3104は、ネットワークと接続するためのインタフェースである。
図3は、本発明の第1の実施形態のリスク診断システム2206のソフトウェア構成を説明するブロック図である。
リスク診断システム2206は、事故データ入力部101、解析指示部102、事故発生確率解析部103、事故データ検索部107、地図表示部108、土壌データ解析部109、形状解析部111、欠陥解析部113、CP解析部115、運用履歴解析部117、重み係数更新部119、リスト出力部120及び地図出力部121を備える。
また、リスク診断システム2206は、事故DB122、土壌DB123、パイプライン座標DB124、欠陥DB125、電気化学DB126、運用履歴DB127、確率分布DB128及び要因因果関係DB129を備える。
事故データ入力部101は、事故発生確率解析部103に事故データ130を入力する。なお、入力される事故データ130には、パイプラインの事故発生範囲における土壌pH、及びコーティング状態等が含まれる。
解析指示部102は、事故発生の可能性がある部分の検索を指示する。
事故発生確率解析部103は、パイプラインの所定の範囲における事故発生確率を算出する。
具体的には、事故発生確率解析部103は、事故が発生していないパイプラインの範囲と、事故が発生したパイプラインの範囲との類似性を算出する。また、事故発生確率解析部103は、欠陥分布、パイプライン座標、土壌pH、CP電位、圧力変動、及び温度変動などのパイプライン運用データを用いて、各要因毎の事故発生確率を算出する。
事故発生確率解析部103は、類似性解析部104、確率解析部105、複合確率計算部106を含む。
類似性解析部104は、過去に発生した事故に関する事故データと、最新の事故に関する事故データ130との類似性を判定し、事故に関連するデータを統計処理によって統合する。
確率解析部105は、事故が発生した要因のパラメータ(事故発生要因パラメータ)を用いて、事故発生確率を算出する。
複合確率計算部106は、パイプの故障及びパイプの事故の発生に関係する要因が複数存在するパイプラインの区間を選択する。また、複合確率計算部106は、要因因果関係DB129から重み係数を取得し、取得された重み係数を用いて、事故発生の要因が複数係わる事故の事故発生確率を算出する。
事故データ検索部107は、事故DB122から、過去に発生した事故に関する事故データを検索する。また、事故データ検索部107は、新たに入力された事故データ130を事故DB122に格納する。
地図表示部108は、リスク診断の結果を表示する。リスクの大きさを表すリスト及びリスクが大きい部分を表す地図等が地図表示部108に表示される。
土壌データ解析部109は、土壌DB123から、指定範囲(パイプラインの開始距離、終了距離)のパイプラインの土壌pH値等の土壌データを検索する。土壌データ解析部109は、検索結果を類似性解析部104及び確率解析部105に出力する。
形状解析部111は、パイプライン座標DB124から、指定範囲におけるパイプラインの形状に関する形状データを取得する。また、形状解析部111は、取得された指定範囲のパイプラインの形状データを用いて、パイプの折れ曲がりを表す曲率値を算出する。これは、パイプの折れ曲がり部分に発生するリンクル形状などが事故発生要因となるためである。
欠陥解析部113は、欠陥DB125から、指定区間におけるパイプラインの欠陥データを取得する。また、欠陥解析部113は、取得された欠陥情報を用いてERFのような安全指標を算出する。
CP解析部115は、電気化学DB126から、陰極保護電位(Cathodic Protection Voltage)に関するCP電位データを取得する。また、CP解析部115は、取得された陰極保護電位に関するデータを用いて、電位(ON電位)の異常を解析する。
運用履歴解析部117は、運用履歴DB127から、パイプラインの運用履歴を示す運用データを取得する。また、運用履歴解析部117は、圧力変動、及び温度変動を集計する。
重み係数更新部119は、複数の事故発生要因が関係する事故発生確率である複合確率を算出するときに用いられる重み係数を検索するとともに、事故データ130に基づいて重み係数を更新する。
重み係数更新部119は、重み係数の検索時には、関連する事故発生要因の関連性及び依存性に関するフローを検索し、さらに、検索されたフローに基づいて重み係数を検索する。
リスト出力部120は、リスク診断の結果をリストとして表示するためのデータを出力する。具体的には、リスト出力部120は、事故発生確率の値の大小に基づいて順序変更(ソーティング)を行い、事故発生確率の高い順番に、パイプライン区間のリストを作成する。なお、本実施形態では、作成されるリストは表形式データである。
地図出力部121は、リスク診断の結果を地図として表示するためのデータを出力する。例えば、所定の区間における事故発生確率値が設定された閾値より大きい場合に、当該区間を表示するための地図データが出力される。
事故DB122は、過去に発生した事故のパイプラインの状況に関する情報、すなわち、過去に発生した事故の事故発生時における事故データを格納する。例えば、事故DB122には、パイプラインの名称、事故発生位置、パイプのコーティング状態、土壌の性質、及び事故の状況が格納される。ここで、事故の状況には、漏洩、爆発、パイプの亀裂発生、コーティングの亀裂発生等を示す情報である。
事故DB122は、パイプライン全範囲の事故データを格納する。なお、事故発生位置は、所定の参照点からの距離によって表される。以下、所定の参照点を基点と記載する。
なお、事故DB122の詳細については、図28を用いて後述する。
土壌DB123は、パイプラインの所定区間における土壌pHなど、土壌の化学特性等の土壌データを格納する。例えば、土壌DB123は、基点からの距離と、当該基点からの距離に対応する土壌データとを格納する。土壌DB123は、パイプライン全範囲の土壌データを格納する。なお、土壌DB123の詳細については、の詳細については、図29を用いて後述する。
パイプライン座標DB124は、パイプラインの形状に関する形状データを格納する。形状データは、2次元又は3次元のいずれのデータであってもよい。パイプライン座標DB124は、パイプライン全範囲の形状データを格納する。なお、パイプライン座標DB124の詳細については、図30を用いて後述する。
欠陥DB125は、パイプラインの腐食及び亀裂、又はくぼみ、などの欠陥に関連するパラメータ(発生位置、長さ、幅、深さなど)である欠陥データを格納する。例えば、欠陥DB125は、基点からの距離と、当該基点からの距離に対応する欠陥データとを格納する。欠陥DB125は、パイプライン全範囲の欠陥データを格納する。なお、欠陥DB125の詳細については、図31を用いて後述する。
電気化学DB126は、CP電位などのCP電位データを格納する。例えば、電気化学DB126は、基点からの距離と、当該基点からの距離に対応するCP電位データを格納する。電気化学DB126は、パイプライン全範囲のCP電位データを格納する。なお、電気化学DB12の詳細については、図32を用いて後述する。
運用履歴DB127は、パイプライン輸送のオペレーション履歴(輸送圧力、パイプの外壁温度)に関連する運用データを格納する。例えば、運用履歴DB127は、基点からの距離と、当該基点からの距離に対応するオペレーション履歴とを格納する。運用履歴DB127は、パイプライン全範囲の運用データを格納する。なお、運用履歴DB127の詳細については、図33を用いて後述する。
確率分布DB128は、各事故発生要因毎の事故発生確率を算出するための確率分布を格納する。なお、確率分布DB128の詳細については、図34を用いて後述する。
要因因果関係DB129は、複数の事故発生要因の因果関係を格納する。要因因果関係DB129には、複合確率を算出するときに必要となる重み係数も合わせて格納される。なお、要因因果関係DB129の詳細については、図35を用いて後述する。
事故データ130は、発生した事故の調査結果に関するデータである。結果データ131は、地図表示部108に表示されるデータである。
前述した各DB122〜129は、不揮発性記録媒体3103の記憶領域に格納される。本実施形態では、リスク診断システム2206が各DB122〜129を備えるが、他の外部のストレージシステム(図示省略)等に格納されてもよい。
次に、各データベースに格納されるデータについて説明する。
図28は、本発明の第1の実施形態の事故DB122の一例を示す説明図である。
図28に示すように、本実施形態における事故DB122には、事故データとして記述形式データ2301が格納される。
記述形式データ2301は、データの開始を表す行2302とデータの終了を表す行2310との間に具体的な事故の内容が記載される。記述形式データ2301には、事故発生時に取得できた情報が記載される。
具体的には、識別番号2303、事故発生時間2304、開始距離2305、終了距離2306、pH計測値2307、コーティング状態2308及び事故タイプ2309を含む。
識別番号2303は、事故データを識別するための番号である。事故DB122に格納されるときに付与される識別子である。事故発生時間2304は、事故が発生した時間である。
開始距離2305は、事故が発生したパイプラインの開始地点を表す。終了距離2306は、事故が発生したパイプラインの終了地点を表す。なお、開始距離2305と終了距離2306とが一致する場合もある。
pH計測値2307は、事故発生地点の土壌のpH値である。コーティング状態2308は、事故が発生したパイプラインのコーティング状態である。コーティング状態2308から、発生した事故が爆発によるものである等が推測できる。
事故タイプ2309は、発生した事故のタイプを表す。図28に示す例では、漏洩を表す「Leak」が格納される。
図29は、本発明の第1の実施形態の土壌DB123の一例を示す説明図である。
土壌DB123に格納される土壌データは、調査時期ごとにまとめて管理される。本実施形態では、調査時期に対応する土壌データ2402がメタデータ2401によって管理される。
メタデータ2401は、パイプライン名称2403、計測時期2404及びファイル名2405を含む。
パイプライン名称2403は、パイプラインの名称である。計測時期2404は、土壌データが計測された時間である。ファイル名2405は、具体的な土壌データ2402が格納されるファイルの名称である。
本実施形態では、ファイル名2405と土壌データ2402とが対応づけられており、ファイル名2405を参照することによって土壌データ2402を取得することができる。
土壌データ2402は、開始距離2406、終了距離2407、開始距離の誤差範囲2408、終了距離の誤差範囲2409を含む。
開始距離2406は、パイプラインの開始距離である。終了距離2407は、パイプラインの終了距離である。開始距離の誤差範囲2408は、パイプラインの開始距離の誤差である。終了距離の誤差範囲2409は、パイプラインの終了距離の誤差である。
また、土壌データ2402は、計測データとして、pH2410、比抵抗、参加減衰電位、硫化水素存在指数2412を含む。
図30は、本発明の第1の実施形態のパイプライン座標DB124の一例を示す説明図である。
パイプライン座標DB124には、図30に示すようなデータ形式2501でパイプラインの形状データが格納される。
データ形式2501は可変長のデータであり、データヘッダ2502、データ部2503、2504から構成される。
データヘッダ2502は、パイプライン番号と、図形数を含む。図形数は、パイプラインを構成する図形の数を示す。
データ部2503は、座標数、レイヤ番号、立体座標2505を含む。座標数は、立体座標2505の数を表す。座標数に対応する数だけ、データ1(2503)、データ2(2504)が格納される。レイヤ番号は、各図形の識別する番号である。立体座標2505は立体座標(X,Y,Z)である。
図31は、本発明の第1の実施形態の欠陥DB125の一例を示す説明図である。
欠陥DB125に格納される欠陥データは、検査時期ごとにまとめて管理される。本実施形態では、検査時期に対応する欠陥データ2602がメタデータ2601によって管理される。
メタデータ2601は、パイプライン名称2603、検査時期2604及びファイル名2605を含む。
パイプライン名称2603は、パイプラインの名称である。検査時期2604は、欠陥の検査がされた時間である。ファイル名2605は、具体的な欠陥データ2602が格納されるファイルの名称である。
本実施形態では、ファイル名2605と欠陥データ2602とが対応づけられており、ファイル名2605を参照することによって欠陥データ2602を取得することができる。
欠陥データ2602は、欠陥開始距離2606、パイプの欠陥の位置2607、欠陥の長さ2608、欠陥の周方向の開始位置2609、最大深さ2610、欠陥の深さ率2611及び欠陥タイプ2612を含む。
欠陥開始距離2606は、欠陥があるパイプラインの位置である。パイプの欠陥の位置2607は、パイプの内又は外のどちらに欠陥が存在するか表す。欠陥の長さ2608は、欠陥の長さを表す。欠陥の周方向の開始位置2609は、パイプの断面を時計に見立てて、周方向の欠陥の開始位置を時間として表す。
最大深さ2610は、欠陥の深さを表す。欠陥の深さ率2611は、公称パイプ肉厚と欠陥深さの最大値との比である。欠陥タイプ2612は、金属損失又はへこみ等の欠陥のタイプである。
図32は、本発明の第1の実施形態の電気化学DB126の一例を示す説明図である。
電気化学DB126に格納されるCP電気データは、計測時期ごとにまとめて管理される。本実施形態では、計測時期に対応するCP電気データ2702がメタデータ2701によって管理される。
メタデータ2701は、パイプライン名称2703、計測時期2704及びファイル名2705を含む。
パイプライン名称2703は、パイプラインの名称である。計測時期2704は、電位が計測された時間である。ファイル名2605は、具体的なCP電気データ2702が格納されるファイルの名称である。
本実施形態では、ファイル名2705とCP電気データ2702とが対応づけられており、ファイル名2705を参照することによってCP電気データ2702を取得することができる。
CP電気データ2702は、計測点までの距離を表す計測点2706、計測点の番号2707、陰極電位計測値(ON電位)2708、陰極電位計測値(OFF電位)2709、アノード電位、アノード電流を含む。
図33は、本発明の第1の実施形態の運用履歴DB127の一例を示す説明図である。
運用履歴DB127に格納されるデータは、運用日時ごとにまとめて管理される。本実施形態では、運用日時に対応する運用データ2802がメタデータ2801によって管理される。
メタデータ2801は、パイプライン名称2803、日時2804、コンプレッサ番号2805及びファイル名2806を含む。コンプレッサ番号2805は、コンプレッサ2202、2203を識別するための識別子である。
本実施形態では、ファイル名2806と運用データ2802とが対応づけられており、ファイル名2806を参照することによって運用データ2802を取得することができる。
運用データ2802は、時間2807、送出し圧力2808、送出し流体温度2809、受入れ圧力2810及び受入れ流体温度2811を含む。時間2807は、運用データが取得された時間を表す。
図34は、本発明の第1の実施形態の確率分布DB128の一例を示す説明図である。
確率分布DB128は、メタデータ2901、確率分布ライブラリプログラム2902及び表形式データ2903から構成される。
確率分布ライブラリプログラム2902には、後述する式(15)〜(25)が格納される。
式によって表される場合には、確率分布ライブラリプログラム2902が用いられ、図10のように数式を用いて近似できない場合には、表形式データが用いられる。
メタデータ2901は、インデックス2904、確率分布形式2905及び番号2906を含む。
インデックス2904は、メタデータ2901に含まれる情報を識別するための識別子である。インデックス2904を参照することによって確率分布が検索される。
確率情報形式2905は、確率分布のデータがプログラム(Prog)又は表形式データ(Table)のいずれであるかを識別する情報である。
番号2906は、プログラム又は表形式データの番号である。番号2906を参照することによって、対応する確率分布ライブラリプログラム2902、又は対応する表形式データ2903を検索することができる。
表形式データ2903は、図14の土壌pHなど従属変数を示す横軸データ(Horizontal)2907、及び確率値を示す縦軸データ(Vertical)2908を含む。さらに、媒介変数が必要な場合は、表形式データ2903は媒介変数に対応するカラムが追加される。
図35は、本発明の第1の実施形態の要因因果関係DB129一例を示す説明図である。
要因因果関係DB129には、重み係数対応関係データ3001が格納される。重み係数対応関係データ3001は、ID3002及び値3003を含む。
ID3002は、重み係数対応関係データ3001に格納されるデータを識別するための識別子である。値3003は、重み係数の値である。
各データベースにおけるデータ検索方法について説明する。
本実施形態における各データベースは、前述したようにパイプライン管理に関連するデータを格納し、土壌、欠陥、CP電位などのデータは基点からの距離に対応づけて管理される。
例えば、土壌DB123には、パイプラインの開始距離及び終了距離で指定された区間の土壌性質に関するデータが格納される。また、欠陥DB125には指定されたパイプラインの範囲(距離)に存在する腐食の大きさ(長さ、幅、深さ)、電気化学DB126には、指定されたパイプラインの範囲(距離)のCP電位の値が格納される。
すなわち、本実施形態では、基点からの距離を検索キーとして、各データベースに格納されるデータが検索される。
例えば、パイプラインの腐食データは、指定されたパイプラインの距離(開始距離及び終了距離)に基づいて、欠陥DB125から検索される。前述した検索を実現する方法としては、関係データベース(RDB)に欠陥データが格納される場合には、検索言語であるSQL言語を使用する方法が考えられる。
また、パイプラインの座標は、3次元のパイプライン形状座標列から構成される。そのため、パイプラインの距離が指定された場合には、指定された距離内の座標がパイプライン座標DB124から検索される。
図4は、本発明の第1の実施形態のリスク診断システム2206が事故発生確率を算出する処理の概要を説明するフローチャートである。
リスク診断システム2206は、入力される事故データ130を解析する(ステップ201)。具体的には、リスク診断システム2206は、入力された事故データ130から、事故発生地点において取得された土壌データ、事故発生地点のパイプラインの形状データ、欠陥データ、CP電位データ及び運用データを取得する。
次に、リスク診断システム2206は、事故データ130の解析結果に基づいて事故DB122を参照し、入力された事故データ130に類似する事故データを検索する(ステップ202)。
例えば、事故データ130が漏洩事故に関するデータである場合には、漏洩事故に関連するデータが検索される。
なお、大規模な漏洩事故、小規模な漏洩事故などに分類することによって検索精度を向上させることができる。例えば、漏洩量、又はパイプラインの損傷範囲によって漏洩事故を分類することができる。
リスク診断システム2206は、入力された事故データ130に類似する事故データがあるか否かを判定する(ステップ203)。すなわち、入力された事故データ130に類似する過去に発生した事故の事故データが事故DB122に格納されているか否かが判定される。以下、入力された事故データ130に類似する過去に発生した事故の事故データを類似事故データとも記載する。
類似事故データがないと判定された場合、リスク診断システム2206は、処理を終了する。
類似事故データがあると判定された場合、リスク診断システム2206は、各事故発生用について、入力された事故データ130の事故発生要因と類似事故データの事故発生要因との類似性の有無を判定する。さらに、類似性がある事故発生要因があると判定された場合には、リスク診断システム2206は、類似性のある事故発生要因を統計的に統合し、要因パラメータを検出する。そして各要因パラメータについて分析を実行する(ステップ204)。
リスク診断システム2206は、全ての要因パラメータについて分析が実行されたか否かを判定する(ステップ205)。
全ての要因パラメータについて分析が実行されたと判定された場合、リスク診断システム2206は、ステップ208に進む。
全ての要因パラメータについて分析が実行されていないと判定された場合、リスク診断システム2206は、パイプライン座標DB124から、入力された事故データ130におけるパイプラインの形状データと類似する形状データを検索する(ステップ206)。ここで、類似とは、要因パラメータの誤差が小さいことを表す。
次に、リスク診断システム2206は、各事故発生要因に基づいて、事故発生確率を算出し(ステップ207)、ステップ205に戻る。
リスク診断システム2206は、全ての事故発生要因を考慮して事故発生確率を算出する(ステップ208)。
なお、処理対象となるパイプラインの区間において、複数の事故発生要因が存在する場合には、リスク診断システム2206は、各事故発生要因に基づいて、事故発生確率を算出する。
リスク診断システム2206は、ステップ208において算出された事故発生確率値が、あらかじめ設定された閾値よりも高いパイプラインの区間を表示し(ステップ209)、処理を終了する。
以下、パイプラインに関連する各種データから事故発生確率を算出ための具体的な方法について説明する。
パイプラインの事故としては、破裂、爆発、及び漏洩があげられる。微小な亀裂又はパイプの減肉が存在する場合、時間経過とともに亀裂及び減肉が進行することによって事故が発生する。
事故が発生した場合、発生した事故の状況を分析し、類似の事故発生要因を有するパイプライン区間が検索される。しかし、深刻な欠陥の存在が知られていない場合などでは事故発生の要因を分析することが困難であり、一つの事故要因のパラメータのみを用いて類似性を判定することは難しい。
本発明では、まず、リスク診断システム2206が、新たに発生した事故と類似の状況を有する過去に発生した事故を検索する。リスク診断システム2206は、検索結果に基づいて、新たに発生した事故を解析する。次に、リスク診断システム2206が、新たに発生した事故と類似する状況を有するパイプライン区間を検出する。さらに、リスク診断システム2206は、新たに発生した事故の解析結果に基づいて、当該パイプライン区間の事故発生の確率を算出する。
リスク診断システム2206は、(1)欠陥分布、(2)パイプの折れ曲がり、(3)CP電位、(4)土壌水素イオン指数(pH)、(5)圧力変動回数、及び(6)温度変動等の事故発生地点における状況を要因パラメータから把握する。前述した事故発生地点の状況は、例えば、以下のような要因パラメータを用いる。
(1)欠陥分布については、パイプラインの所定区間ごとのERFを要因パラメータとして用いる。
(2)パイプの折れ曲がりについては、パイプの水平方向、及び鉛直方向の曲率を要因パラメータとして用いる。
(3)CP電位については、CPのON電位が閾値である−0.85Vよりも卑なる場所において、卑電位の状態が持続している時間を要因パラメータとして用いる。
(4)土壌水素イオン指数(pH)については、土壌のpH値を要因パラメータとして用いる。
(5)圧力変動回数については、パイプラインの輸送圧力の変動回数を要因パラメータとして用いる。これは、パイプラインでは輸送圧力が時々刻々と変動し、当該輸送圧力の変動が事故の要因となるため必要となる。
(6)温度変動は、環境や輸送する流体の温度によって変動するパイプライン自体の温度の変動回数を要因パラメータとして用いる。これは、パイプラインの温度が環境又は輸送する流体の温度によって変動し、当該温度変動が事故発生の要因となるため必要となる。
なお、一つの要因パラメータに依存したパイプラインの事故だけが発生するとは限らない。したがって、各要因パラメータの関連性を考慮した条件を設定する必要である。本実施形態では、当該条件に基づいた条件付き確率が事故発生確率として算出される。
本実施形態では、事故要因の因果関係が予め定義される。リスク診断システム2206は、当該定義にしたがって事故を分析する。
図5A及び図5Bは、本発明の第1の実施形態における事故発生要因の因果関係を示す説明図である。
図5A及び図5Bに示すように、本実施形態におけるパイプ損傷に関する事故発生については、以下の10通りの要因が定義される。
要因1:欠陥によるパイプの劣化→圧力変動→パイプ損傷
要因2:欠陥によるパイプの劣化→温度変動→パイプ損傷
要因3:欠陥によるパイプの劣化→パイプ損傷
要因4:パイプの折れ曲がり→圧力変動→パイプ損傷
要因5:パイプの折れ曲がり→温度変動→パイプ損傷
要因6:パイプの折れ曲がり→パイプ損傷
要因7:土壌pH異常値→CP設備異常→パイプ損傷
要因8:土壌pH異常値→コーティング劣化→パイプ損傷
要因9:CP設備異常→パイプ損傷
要因10:コーティング劣化→パイプ損傷
なお、本実施形態では土壌pH異常値については、pH値が7.0よりも低い場合、すなわち、酸性の場合に異常と定義する。
また、要因3及び要因6は、応力集中及び曲げモーメント集中によって発生するパイプ損傷である。要因9及び要因10は、土壌とは関係のない設備劣化などの故障が起因するCP設備異常、工事時につけられた損傷が起因するコーティング劣化によって発生するパイプ損傷である。
本実施形態では、図5A及び図5Bに示すような因果関係が定義されるが、さらに、因果関係を追加することによって、要因を追加していくことも可能である。
本実施形態では、図5A及び図5Bに示す因果関係に基づいて事故解析が実行される。さらに、過去に発生した事故との類似性も考慮して事故の発生箇所が特定される。
本実施形態における事故解析には、以下に示す条件付き確率が用いられる。
腐食などの欠陥によるパイプの劣化(要因1、要因2)及びパイプの折れ曲がり(要因4、要因5)に関連する条件付き確率は、それぞれ、以下に示すように定義される。
パイプに欠陥が存在すると、圧力変動又は温度変動によって欠陥部分に応力がかかりパイプが損傷する。また、パイプの折れ曲がり部分がリンクル状態(折れ曲がりによるパイプの塑性変形)となっている可能性があり、当該部分に圧力変動又は温度変動が重なることによってパイプが損傷する。
このような場合、欠陥及び折れ曲がりが起因するパイプの損傷確率をP1(Damage)とすると、P1(Damage)は式(1)によって算出される。
ここで、P(Defect)は、欠陥が要因となるパイプ劣化の確率(要因3)である。P(Configuration)は、パイプの折れ曲がりが要因となるパイプ劣化の確率(要因6)である。また、P(Pressure)は、圧力変動によって発生するパイプの劣化確率であり、式(2)によって算出される。P(Temperature)は、温度変動によって発生するパイプの劣化確率であり、式(3)によって算出される。
P(Pressure| Defect)は、欠陥及び圧力変動が要因となる事故発生確率(要因1)である。P(Pressure| Configuration)は、パイプの折れ曲がり及び圧力変動が要因となる事故発生確率(要因4)である。
P(Temperature| Defect)は、欠陥及び温度変動が要因となる事故発生確率(要因2)である。P(Temperature| Configuration)は、パイプの折れ曲がり及び温度変動が要因となる事故発生確率(要因5)である。
また、C1、C2、C3、C4、D1、D2、E1及びE2は重み係数であり、式(4)、式(5)及び式(6)を満たす。
土壌pHに関連する条件付き確率(要因7及び要因8)は以下のように定義される。
土壌の酸性度が増加すると(pH値が7以下になると)、CP設備が機能不全になることによって、パイプと土壌との電位差から鉄イオンが溶け出すため、パイプが損傷する。
また、土壌の酸性度が増加するとコーティングが劣化し、土壌とパイプとが直接接触するためパイプが損傷する。
このような場合、土壌の異常が起因するパイプの損傷確率をP2(Damage)とすると、P2(Damage)は、式(7)によって算出される。
P(CPMulf)は、土壌以外の要因によるCP設備の故障確率(要因9)である。P(CoatingMulf)は、サードパーティなどが引き起こした損傷などの土壌以外の要因によるコーティングの劣化確率である。
P(CP)は、CP設備の故障確率であり、式(8)によって算出される。P(Coating)は、コーティングの劣化確率であり、式(9)によって算出される。
ここで、P(Soil)は、土壌pH値の異常が起因する土壌の異常発生確率である。P(CP| Soil)は、土壌が要因となって、すなわち、要因7によって発生するCP設備の故障確率である。P(Coating| Soil)は、コーティング劣化が要因となって、すなわち、要因8によって発生するコーティングの劣化確率である。
また、F1、F2、G1、G2、H1及びH2は重み係数であり、式(10)、式(11)及び式(12)を満たす。
前述した各確率を用いて、全ての要因を考慮した事故発生確率P(Damage)は、式(13)によって算出される。
ここで、係数J1及びJ2は式(14)を満たす。
本実施形態では、重み係数対応関係データ3001のID3002は、以下のような対応となる。
J1のID3002は「1」、J2のID3002は「2」、C1のID3002は「3」、C2のID3002は「4」、C3のID3002は「5」、C4のID3002は「6」、D1のID3002は「7」、D2のID3002は「8」、E1のID3002は「9」、E2のID3002は「10」、F1のID3002は「11」、F2のID3002は「12」、G1のID3002は「13」、G2のID3002は「14」、H1のID3002は「15」、H2のID3002は「16」が対応する。
次に、各確率の算出方法について説明する。
前述したP(Defect)及びP(CP)などの確率の算出方法は、複数のモデルが知られている。本実施形態では、複数のモデルのいずれかを用いて各確率が算出される。以下、モデルの一例を説明する。
[1]欠陥要因によって発生するパイプ劣化
図6は、本発明の第1の実施形態におけるパイプ劣化確率P(Defect)の確率分布を示す説明図である。
パイプ劣化確率P(Defect)は、図6の曲線401のような確率分布となる。図6において、縦軸がパイプ劣化確率P(Defect)を表し、横軸がERF(安全指数)を表す。図6の示す曲線401は、式(15)のように表される。
ここで、G1は形状パラメータであり、S1はスケールパラメータである。
[2]パイプの折れ曲がりが要因によって発生するパイプ劣化
図7は、本発明の第1の実施形態におけるパイプ劣化確率P(Configuration)の確率分布を示す説明図である。
パイプ劣化確率P(Configuration)は、図7の曲線501及び曲線502のような確率分布となる。図7において、縦軸はパイプ劣化確率P(Configuration)を表し、横軸はパイプの曲率を表す。図7に示す曲線501及び曲線502は、式(16)のように表される。
ここで、Rは曲率であり、R0は許容限界である。なお、RがR0以下の場合、パイプ劣化確率P(Configuration)は「0」と定義する。
式(16)に示すように、形状パラメータ及びスケールパラメータは時間に依存するパラメータである。そのため、曲線501及び曲線502に示すような時間変化をする。この変化は、時間経過に伴ったパイプの劣化に対応する。なお、パイプの水平方向及び垂直方向について確率分布を分けてもよい。
[3]土壌pHによる危険性
図8は、本発明の第1の実施形態における土壌の異常発生確率P(Soil)の確率分布を示す説明図である。
土壌のpH値は季節ごとに変化し、また、pH値によって土壌の危険度が変化する。そのため、土壌の危険確率P(Soil)は、図8の曲線601及び曲線602のような確率分布となる。図8において、縦軸は土壌の異常発生確率P(Soil)を表し、横軸は時期(例えば、月)を表す。図8に示す曲線601及び曲線602は、式(17)のように表される。
図8に示すように、土壌の異常発生確率P(Soil)は、正規分布と類似の形状となる。
[4]圧力変動によって発生するパイプ劣化
図9は、本発明の第1の実施形態における事故発生確率P(Pressure| Defect)の確率分布を示す説明図である。図10は、本発明の第1の実施形態における事故発生確率P(Pressure| Configuration)の確率分布を示す説明図である。
欠陥及び圧力変動、並びにパイプラインの折れ曲がり及び圧力変動が起因となって事故が発生する。
事故発生確率P(Pressure| Defect)は、図9の曲線702及び曲線703のような確率分布となる。図9において、縦軸は事故発生確率P(Pressure| Defect)を表し、横軸は変動回数N−N0を表す。
また、事故発生確率P(Pressure| Configuration)は、図10の曲線801及び曲線802のような確率分布となる。図10において、縦軸は事故発生確率P(Pressure| Configuration)を表し、横軸は変動回数N−N0を表す。
図9に示す曲線701及び曲線702は、式(18)のように表される。また、図10に示す曲線801及び曲線802は、式(19)のように表される。
ここで、N0は許容限界における変動回数を表し、また、R0は許容限界における曲率を表す。
[5]温度変動によって発生するパイプ劣化
事故発生確率P(Temperature| Defect)は図9に示す確率分布と同様となり、また、事故発生確率P(Temperature| Configuration)は図10に示す確率分布と同様となるため説明を省略する。
[6]CP設備の故障
図11は、本発明の第1の実施形態におけるCP設備の故障確率P(CP)の確率分布を示す説明図である。
CP設備は、銅−硫酸銅参照ではON電位が−0.85VになるとCP設備の故障となる。前述したような電位が(CP設備の故障が)発生してから時間が経過すると、パイプが損傷する。
故障確率P(CP)は、図11の曲線901のような確率分布となる。図11において、縦軸は故障確率P(CP)を表し、横軸は時間t−t0を表す。図11に示す曲線901は、式(20)のように表される。
ここで、t0は許容限界の時間を表す。
[7]コーティング劣化
図12は、本発明の第1の実施形態におけるコーティングの劣化確率P(Coating)の確率分布を示す説明図である。
パイプラインがコーティングされるときに損傷があると、当該損傷が拡大することによってコーディングが劣化する。
コーティングの劣化確率P(Coating)は、図12の曲線1001のような確率分布となる。図12において、縦軸はコーティングの劣化確率P(Coating)を表し、横軸は時間t−t0を表す。
図12に示す曲線1001は、式(21)のように表される。
ここで、t0は許容限界の時間を表す。
[8]土壌pHによるCP設備の故障
図13は、本発明の第1の実施形態におけるCP設備の故障確率P(CP| Soil)の確率分布を示す説明図である。
土壌のpH値が7より小さくなる場合等、土壌pHの異常によってCP電位の異常が発生し、これによってCP設備が故障する。
CP設備の故障確率P(CP| Soil)は、図13の曲線1101のような確率分布となる。図13において、縦軸は故障確率P(CP| Soil)を表し、横軸は土壌pH値を表す。図13に示す曲線1101は、式(22)のように表される。
[9]土壌pHによるコーティング劣化
図14は、本発明の第1の実施形態におけるコーティングの劣化確率P(Coating| Soil)の確率分布を示す説明図である。
土壌異常がパイプのコーティング材に異常を引き起こす可能性がある。
コーティングの劣化確率P(Coating| Soil)は、図14の曲線1201のような確率分布となる。図14において、縦軸はコーティングの劣化確率P(Coating| Soil)を表し、横軸は、土壌のpH値を表す。図14に示す曲線1201は、式(23)のように表される。
[10]CP設備の故障によるパイプ損傷
図15は、本発明の第1の実施形態におけるCP設備の故障確率P(CPMulf)の確率分布を示す説明図である。
土壌以外の要因によるCP設備の故障によっても、パイプが損傷する。
CP設備の故障確率P(CPMulf)は、図15の曲線1301のような確率分布となる。図15において、縦軸はCP設備の故障確率P(CPMulf)を表し、横軸は時間t−t0を表す。図15に示す曲線1301は、式(24)のように表される。
図15に示すように、CP設備の故障はすぐにパイプの損傷につながるわけではなく、CP設備の故障の発生時点から経過した時間に依存する。
[11]コーティング劣化によるパイプ損傷
図16は、本発明の第1の実施形態におけるコーティングの劣化確率P(CoatingMulf)の確率分布を示す説明図である。
土壌以外の要因によるコーティング劣化によってもパイプが損傷する。
コーティングの劣化確率P(CoatingMulf)は、図16の曲線1401のような確率分布となる。図16において、縦軸はコーティングの劣化確率P(CoatingMulf)を表し、横軸は時間t−t0を表す。図16に示す曲線1401は、式(25)のように表される。
図16に示すように、コーティングの劣化はすぐにパイプの損傷につながるわけではなく、コーディング劣化の発生時点から経過した時間に依存する。
前述したもの以外にも、漏洩事故などを考慮した場合、バルブ又はパイプの溶接部分は、事故発生の要因となり得る。実際、バルブ又はパイプの溶接部分は、時間とともに劣化する。
図17は、本発明の第1の実施形態におけるバルブ設備、又はパイプの溶接部分における時間経過と事故発生確率との関係を示す説明図である。
バルブ設備又はパイプの溶接部分における、確率分布は図9の曲線701又は曲線702に示すようなバスタブ型曲線に従うと仮定することができる。
図17に示すように、バルブの設置当初は不良によって故障率が高くなっているが、時間の経過とともにいったん故障発生確率は減少し、その後増加する。
図6〜図17に示す確率分布は、確率分布DB128に格納される。リスク診断システム2206は、図5A及び図5Bに示す各要因の因果関係に基づいて確率分布を検索し、当該確率分布を用いて、式(13)に示す事故発生確率P(Damage)を算出する。
次に、リスク診断システム2206の具体的な処理について説明する。
図18〜図22は、本発明の第1の実施形態のリスク診断システム2206が実行する処理の詳細を説明するフローチャートである。
リスク診断システム2206は、入力された故障及び事故データに基づいて、過去に発生した類似の事故データを検索する。さらに、リスク診断システム2206は、互いの事故データにおいて共通する要因を考慮した事故発生確率を算出し、当該算出結果に基づいて、類似の故障又は事故が発生すると予測されるパイプラインの範囲を検索する。
なお、以下の説明では、事故が発生した場合を説明するが、故障が発生した場合であっても同一の処理となる。
リスク診断システム2206は、解析指示部102から処理開始命令を受けると、事故データ入力部101から事故データ130を取得する(ステップ1601)。取得された事故データ130は、事故発生確率解析部103に入力される。
事故データ130には、事故が発生した地点の名称、パイプライン名称、事故が発生したパイプライン範囲(長さ)、事故発生地点の土壌pH、事故が発生した時間に関連する情報及びコーティングの状態等が含まれる。
事故が発生したパイプライン範囲とは、事故発生地点を含むパイプラインの所定区間を表し、具体的には、パイプラインの開始距離と終了距離とによって指定される区間を表す。
また、事故が発生した時間に関連するデータには、例えば、年、月及び日などの情報が含まれる。
コーティングの状態には、コーティングの状態を数値化した情報が含まれる。例えば、「0」はコーティングの状態が正常、「1」はコーティングが劣化、「2」はコーティングが損傷のような情報が考えられる。
なお、事故データ130に含まれるデータは一例であって、その他の情報が含まれていてもよい。
事故発生確率解析部103は、欠陥解析部113に欠陥データの検索を命令する(ステップ1602)。
事故発生確率解析部103からの指示を受けた欠陥解析部113は、欠陥DB125を参照して、事故が発生したパイプラインの範囲における欠陥データを検索する。具体的には、欠陥解析部113は、式(26)に示す範囲の欠陥データを検索する。
ここで、Lは、基点からパイプラインの事故地点までの距離である。また、L−αが開始距離となり、L+αが終了距離となる。なお、αはあらかじめ決められた値である。
欠陥解析部113は、検索された欠陥データに基づいて、当該パイプラインの安全性を解析する(ステップ1603)。
具体的には、欠陥解析部113は、事故が発生したパイプライン範囲、すなわち式(26)に示す範囲のパイプラインを一定区間に区切り、各区間毎に存在する欠陥の分布を解析する。なお、パイプが交換又は修理された区間については解析をしなくてもよい。
本実施形態では、パイプラインの安全性を解析するために、ERFと呼ばれる危険値を用いる。ERFは国毎に基準が設定され、本実施形態では、本発明を適用する国の基準が用いられる。ERFは、例えば、式(27)又は式(28)を用いて算出する方法が考えられる。
ここで、dは腐食の最大深さ[mm]、tはパイプ肉厚[mm]、Pは許容圧力[MPa]、PMAOPは許容圧力[MPa]、Fは安全係数、AはFolias係数を表す。
パイプに欠陥がある場合、パイプ肉厚tが減肉しているために実際のパイプ肉厚と異なる。したがって、欠陥がない場合のERF値と比較して、欠陥がある場合のERF値は大きくなる。
また、パイプの減肉は、時間経過によって進行する場合があり、事故発生時におけるパイプ肉厚の変化を予測する必要がある。パイプの減肉の予測方法は複数考えられる。例えば、同じ場所において、異なる時間の欠陥データが取得される場合には、取得されたデータを式(29)に代入することによって予測することができる。
ここで、Hnewは最新欠陥データであり、Holdは前回取得された欠陥データである。また、ΔtはHnewとHoldとが取得された時間差である。なお、欠陥データには、欠陥の長さ、幅及び深さが含まれる。
2つの欠陥データが取得可能な場合には、式(29)に示すような欠陥変化の速度Vを算出することができる。また、3つ以上の欠陥データが取得可能な場合には、欠陥変化の加速度を算出することも可能である。
一方、前述したような経時的な欠陥データが取得できない場合には、式(30)を用いて欠陥変化の速度を算出する方法が考えられる。
欠陥解析部113は、算出されたERF値に基づいて欠陥DB125を参照し、式(31)に示す範囲に、所定の閾値(例えば、ERF値が1.0)以上の欠陥が存在するか否かを判定する(ステップ1604)。欠陥解析部113は、判定結果を事故発生確率解析部103に通知する。なお、所定の閾値は、本発明を適用する国毎に決められた値が用いられる。
ここで、mはあらかじめ決められた値であり、m>0、かつ、m>αを満たす。
式(31)に示す範囲に欠陥が存在すると判定された場合、事故発生確率解析部103は、ステップ1607に進む。
式(31)に示す範囲に欠陥が存在しないと判定された場合、事故発生確率解析部103は、事故データ130に対応する事故と、過去に発生した事故との類似度を算出する(ステップ1606)。具体的には、類似性解析部104が、過去に発生した事故のERF値を用いて、事故データ130に対応する事故との類似度を算出する。類似度の算出方法は例えば以下のような方法を用いる。
類似性解析部104は、各間隔毎のERF値を算出し、算出されたERF値の中から最大値ERFnewを求める。
次に、類似性解析部104は、事故データ検索部107に事故DB122から過去に発生した事故の検索を命令する。
類似性解析部104は、検索結果に基づいて過去に発生した事故のデータを参照して、過去に発生した事故についても前述した方法を用いてERF値の最大値ERFoldを求める。類似性解析部104は、算出されたERFnew及びERFoldを式(32)に代入してSを算出する。
ここで、式(31)のmの値を小さくして一定区間範囲が小さくなると一致度は低くなるのため、式(31)におけるmを可変にして各範囲におけるSが算出される。
類似性解析部104は、式(32)によって算出されたSを式(33)に代入して、欠陥分布の類似度λを算出する。
なお、各項目に重み係数として重要度を示す係数Ciが乗算される。ここでiは、可変にした区間範囲に対応する。
危険欠陥の分布の重なりが大きい場合には、類似度λは「1.0」に近い値となる。また、危険欠陥の分布の重なりが小さい場合には、類似度λは「0」に近い値となる。
さらに、あらかじめ決められた値λth、εに対して、式(34)を満たす場合には、事故データ130に対応する事故は、過去に発生した事故と類似性があると判定できる。
なお、λthは、過去に発生した事故を用いて算出されたλの平均値を用いてもよい。
事故発生確率解析部103は、事故データ130に対応する事故のパイプ劣化確率P(Defect)を算出する(ステップ1607)。具体的には、確率解析部105が、事故データ130に対応する事故のパイプ劣化確率P(Defect)を算出する。
ステップ1604において危険欠陥が存在すると判定された場合、確率解析部105は、確率分布DB128を参照して図6に示す確率分布曲線を検索し、ステップ1603において算出されたERF値と検索された確率分布曲線とを用いて、事故データ130に対応する事故のパイプ劣化確率P(Defect)を算出する。
一方、ステップ1604において危険欠陥が存在しないと判定された場合、確率解析部105は、ERF値を用いてパイプ劣化確率P(Defect)を算出できない。そこで、確率解析部105は、過去に発生した事故のパイプ劣化確率P(Defect)と算出された類似度λとを用いて、式(35)によって事故データ130に対応する事故のパイプ劣化確率P(Defect)を算出する。
次に、事故発生確率解析部103は、事故データ130に対応する事故のパイプライン形状が要因となる事故発生確率、すなわち、パイプ劣化確率P(Configuration)を算出する。パイプライン形状の水平および垂直方向の曲率が大きい(曲率半径が小さい)ほど、曲がり部は塑性変形の影響による事故発生確率が高くなる。
そこで、事故発生確率解析部103は、事故データ130に対応する事故が発生した地点におけるパイプラインの形状データを検索する(ステップ1608)。
具体的には、事故発生確率解析部103は、事故データ入力部101から入力された事故データ130に含まれるパイプラインの開始距離及び終了距離を指定して、パイプラインの形状データの取得を形状解析部112に命令する。
当該命令を受信した形状解析部112はパイプライン座標DB124を参照し、事故発生地点におけるパイプライン形状を示す3次元座標で示された形状データを検索し、検索された形状データを事故発生確率解析部103に送信する。本実施形態では(X,Y)と(d,Z)とが3次元座標として取得される。ここで、dは基点からの距離を表す。
事故発生確率解析部103は、取得された形状データ((X,Y)及び(d,Z))を用いて、曲率を算出する(ステップ1609)。ここで、水平方向の曲率をR1とすると、曲率R1は、式(36)〜式(39)を用いて算出することができる。
ここで、kはあらかじめ決定された値である。+kは現在参照している座標からk個分先の座標を示し、-kは現在参照している座標からk個分後の座標を示す。
また、鉛直方向の曲率をR2とすると、曲率R2は式(36)〜(38)のXをdに、YをZ、R1をR2に変更することによって算出できる。
なお、パイプライン形状の類似度は一定範囲での曲率の比較だけでは比較できないため、事故発生確率解析部103は、座標の間引きを行い、広域におけるパイプライン形状に関する類似度も算出する。
事故発生確率解析部103は、事故データ検索部107に、過去に発生した事故におけるパイプラインの形状データの検索を命令する(ステップ1610)。
当該命令を受信した事故データ検索部107は、事故データ130に含まれる事故が発生したパイプライン範囲(長さ)に基づいて事故DB122を参照し、過去に発生した事故におけるパイプラインの形状データを検索する。
事故発生確率解析部103は、ステップ1610において検索された過去に発生した事故におけるパイプライン形状と、入力された事故データ130におけるパイプライン形状との類似度を算出する(ステップ1611)。具体的には、類似性解析部104が、パイプライン形状の類似度を算出する。類似度は、例えば以下のような方法を用いて算出される。
類似性解析部104は、式(40)を用いてSを算出する。
ここで、Sはステップ1610において取得されたパイプライン範囲に対する類似度を示す。i=1、2であり、t1は水平方向の曲率、R2は鉛直方の曲率を表す。また、ti oldは過去に発生した事故におけるパイプライン形状の曲率を表す。
類似性解析部104は、算出されたSを用いて、式(41)によってパイプライン形状の類似度λを算出する。
ここで、jは座標の間引き方を変えた場合に対応する。
事故発生確率解析部103は、事故データ130に対応する事故のパイプ劣化確率P(Configuration)を算出する(ステップ1612)。具体的には、確率解析部105が、事故データ130に対応する事故のパイプ劣化確率P(Configuration)を算出する。
確率解析部105は、確率分布DB128を参照して図7に示す確率分布曲線を検索し、算出されたパイプの曲率と検索された確率分布曲線とを用いて、過去に発生した事故のパイプ劣化確率P(Configuration)を算出する。
具体的には、確率解析部105は、算出された曲率を入力として、図7に示す曲線を用いて、過去に発生した事故のパイプ劣化確率P(Configuration)を求める。ここで、図7に示すように、パイプの使用年数に対応する曲線が、25年から40年というように範囲に応じて定義される。したがって、時間Tを入力すると、Tを含む時間範囲の曲線が選択され、さらに、曲率を入力することによって過去に発生した事故のパイプ劣化確率P(Configuration)が算出される。
確率解析部105は、さらに式(42)に示すように、事故データ130に対応する事故のパイプ劣化確率P(Configuration)を算出する。
λを乗算することによって、過去に発生した事故との類似性を考慮した確率が算出可能となる。λが小さい場合には、過去に発生した事故との類似性が高くないためパイプ劣化確率P(Configuration)は小さな値となる。
次に、事故発生確率解析部103は、事故データ130に対応する事故の土壌pH値の異常に起因する事故発生確率、すなわち、事故データ130に対応する事故における土壌の異常発生確率P(Soil)を算出する。
まず、事故発生確率解析部103は、事故データ検索部107に、過去に発生した事故に関連する土壌データの検索を命令する(ステップ1613)。
当該命令を受信した事故データ検索部107は、事故データ130に含まれる土壌データを土壌DB123に格納するとともに、土壌DB123から過去に発生した事故に関連する土壌データを検索する。事故データ検索部107は、事故データ130に含まれる事故が発生したパイプライン範囲(長さ)に基づいて、土壌データを検索する。検索された土壌データは、事故発生確率解析部103に送信される。
利用される土壌データには、土壌pH、含水量、及びイオン化率などが考えられるが、本実施形態では、pHを用いた場合について説明する。なお、含水量、又はイオン化率などへの応用も容易に可能である。
事故発生確率解析部103は、ステップ1613において検索された過去に発生した事故における土壌pHを用いて、事故データ130に対応する事故と過去に発生した事故とにおける土壌pHの類似度を算出する(ステップ1614)。具体的には、類似性解析部104が、事故データ130に対応する事故と過去に発生した事故とにおける土壌pHの類似度を算出する。土壌pHの類似度λは、例えば以下の式(43)及び式(44)を用いて算出される。
ここで、Cは任意の係数である。
類似性が高いほど、λは「1.0」に近い値となる。なお、土壌データが取得されない場合には、Sの値に応じて土壌に関連する事故の発生確率の重み係数は「0」となる。
事故発生確率解析部103は、事故データ130に対応する事故の土壌の異常発生確率P(Soil)を算出する(ステップ1615)。具体的には、確率解析部105が、事故データ130に対応する事故の土壌の異常発生確率P(Soil)を算出する。
確率解析部105は、確率分布DB128を参照して、図8に示すような確率分布を検索し、当該確率分布を用いて過去に発生した事故の土壌の異常発生確率P(Soil)を算出する。
具体的には、確率解析部105は、事故データ130に含まれる事故が発生した時間に関連するデータと検索された確率分布とを用いて、過去に発生した事故の土壌の異常発生確率P(Soil)を算出する。なお、パイプラインが敷設される地域に対応した確率分布曲線を用いて土壌の異常発生確率P(Soil)が算出される。
さらに、確率解析部105は、式(45)に示すように、過去に発生した事故の土壌の異常発生確率P(Soil)にステップ1614において算出された類似度λを乗算することによって、事故データ130に対応する事故の土壌の異常発生確率P(Soil)を算出する。
次に、事故発生確率解析部103は、CP電位に異常があるか否かを判定する(ステップ1616)。
事故発生確率解析部103は、式(31)に示す範囲を指定して、CP解析部115にCP電位が−0.85Vより卑なる部分があるか否かを判定する。なお、CP電位は、銅−硫酸銅参照を基準とする。CP電位が−0.85Vより卑なる部分がある場合には、CP電位に異常があると判定される。
CP電位に異常がないと判定された場合、確率解析部105はP(CPMulf)=0とし、事故発生確率解析部103は、ステップ1619に進む。
CP電位に異常があると判定された場所、事故発生確率解析部103は、類似するCP電位である過去に発生した事故を検索するとともに、事故データ130に対応する事故と、検索された過去に発生した事故との類似度を算出する(ステップ1617)。
具体的には、事故発生確率解析部103は、まず、CP解析部115に、CP電位が−0.85Vより卑なる場所において、CP電位が−0.85Vより卑になった時間の取得を命令する。なお、CP設備が補修された場合には、補修後にCP電位が−0.85Vより卑になった時間が取得される。
当該命令を受信したCP解析部115は、電気化学DB126を参照して、CP電位が−0.85Vより卑になった時間を取得する。ここで、取得された時間をt0とする。
次に、事故発生確率解析部103は、事故データ検索部107に、類似するCP電位である過去に発生した事故の検索を命令する。当該命令を受信した事故データ検索部107は、事故データ130に対応する事故の発生地点の距離(L)と事故データに含まれるCP電位とに基づいて、類似するCP電位である過去に発生した事故を検索する。
類似性解析部104は、類似するCP電位である過去に発生した事故データがある場合には類似度λは「1」とし、類似するCP電位である過去に発生した事故データがない場合には類似度λを「0」とする。なお、類似度λはCP電位値に従って連続量となるように決定してもよい。
事故発生確率解析部103は、事故データ130に対応する事故のCP設備の故障確率P(CPMulf)を算出する(ステップ1618)。
具体的には、確率解析部105は、確率分布DB128を参照して図15に示す確率分布曲線を検索する。確率解析部105は、検索された確率分布曲線、並びに、取得された時間t0及び事故データ130に含まれる事故が発生した時間tとを用いて、CP設備の故障確率P(CPMulf)を算出する。さらに、確率解析部105は、ステップ1617において算出されたλを式(46)に代入して、事故データ130に対応する事故のCP設備の故障確率P(CPMulf)を算出する。
事故発生確率解析部103は、事故データ130に含まれるにコーティングの状態を参照し、コーティング劣化があるか否かを判定する(ステップ1619)。
例えば、コーティングの状態が数値を用いて表されている場合、当該数値が劣化又は損傷を表す数値である場合には、コーティング劣化があると判定される。
コーティング劣化がないと判定された場合、事故発生確率解析部103は、ステップ1622に進む。
コーティング劣化があると判定された場合、事故発生確率解析部103は、事故データ検索部107に、過去に発生した事故におけるコーティング状態の情報を検索するように命令する(ステップ1620)。
当該命令を受信した事故データ検索部107は、事故DB122からコーティング劣化によって発生した事故のパイプライン範囲を検索する。
事故発生確率解析部103は、事故データ130に対応する事故のコーティング劣化確率P(CoatingMulf)を算出する(ステップ1621)。
まず、類似性解析部104は、類似度を算出する。例えば、コーティング劣化が要因となる過去に発生した事故の数をMとして、当該過去に発生した事故のうち、事故データ130におけるコーティング状態を表す数値が同一である過去に発生した事故の数をNとすると、類似性解析部104は、M/Nを計算することによって類似度λを算出することができる。
確率解析部105は、コーティング劣化の時間を推定する。例えば、パイプの交換又は修理を行った場合には、交換又は修理が行われた時間を起点として、現在までの時間差を算出する。
そして、確率解析部105は、確率分布DB128から図12の1001に示すような確率分布曲線を検索する。確率解析部105は、推定されたコーティング劣化の時間と、検索された確率分布曲線とを用いて、コーティング劣化確率P(CoatingMulf)を算出する。さらに、確率解析部105は、算出されたコーティング劣化確率P(CoatingMulf)に類似度λを乗算することによって、事故データ130に対応する事故のコーティング劣化確率P(CoatingMulf)を算出する。
事故発生確率解析部103は、欠陥及び圧力変動が起因する事故発生確率P(Pressure| Defect)を算出する(ステップ1622)。すなわち、要因1(欠陥によるパイプの劣化→圧力変動→パイプ損傷)による事故発生確率が算出される。
まず、確率解析部105は、変動回数を算出する。ここで、変動回数には、圧力変動の限界回数を用いられ、式(47)によって求めることができる。
ここで、Iは安全ファクタ定数、Cは定数、Nは破断までの圧力変動回数、qは2.0〜3.0の定数、及びSは応力値である。応力値Sは、軸方向の応力値と周方向の応力値の相乗平均を用いる。
次に、事故発生確率解析部103は、運用履歴解析部117に輸送圧力記録の検索を命令する。当該命令を受信した運用履歴解析部117は、運用履歴DB127を参照し、現在までの輸送圧力に関する記録を検索し、検索結果を事故発生確率解析部103に送信する。
事故発生確率解析部103は、受信した現在までの輸送圧力に関するデータを用いて、圧力の変動が一定幅以上で変動した圧力の変動数Nnowを算出する。
確率解析部105は、式(47)によって算出されたNと、算出されたNnowとを式(48)に代入して、Ndiffを算出する。
確率解析部105は、確率分布DB128から図9に示すような確率分布曲線を検索する。確率解析部105は、算出されたNdiffと、検索された確率分布曲線とを用いて、要因1による事故発生確率P(Pressure| Defect)を算出する。
要因1による事故発生確率P(Pressure| Defect)は、図9に示すように、パイプラインの設置時当初では大きく、時間が経過すると低下し、一定時間以上経過すると、材料の劣化によって再び増加する。
事故発生確率解析部103は、圧力変動に関連する条件付き事故発生確率を算出する(ステップ1623)。
具体的には、確率解析部105が、ステップ1607において算出されたP(Defect)とステップ1622において算出されたP(Pressure| Defect)とを乗算することによって、圧力変動に関連する条件付き事故発生確率(P(Pressure| Defect)×P(Defect))を算出する。
事故発生確率解析部103は、パイプの折れ曲がり及び圧力変動が起因する事故発生確率P(Pressure| Configuration)を算出する(ステップ1624)。すなわち、要因4による事故発生確率が算出される。
変動回数には、ステップ1622と同様に圧力変動の限界回数が用いられる。確率解析部105は、ステップ1622と同様に式(48)を計算することによってNdiffを算出する。
確率解析部105は、確率分布DB128から図10に示すような確率分布曲線を検索する。確率解析部105は、算出されたNdiffと、検索された確率分布曲線とを用いて、要因4による事故発生確率P(Pressure| Configuration)を算出する。
要因4による事故発生確率P(Pressure| Configuration)は、図10に示すように、パイプラインの設置時当初は確率が大きく、時間が経過すると低下し、一定時間以上経過すると、材料の劣化によって再び増加する。
事故発生確率解析部103は、圧力変動に関連する事故発生確率を算出する(ステップ1625)。
具体的には、確率解析部105が、ステップ1612において算出されたP(Configuration)と、ステップ1624において算出されたP(Pressure| Configuration)とを乗算することによって、圧力変動に関連する事故発生確率(P(Pressure| Configuration)×P(Configuration))を算出する。
事故発生確率解析部103は、欠陥及び温度変動が起因する事故発生確率P(Temperature| Defect)を算出する(ステップ1626)。すなわち、要因2による事故発生確率が算出される。
変動回数には、温度変動の限界回数が用いられる。温度変動の限界回数はステップ1622と同様の方法によって求めることができる。
確率解析部105は、式(47)を用いてNを算出する。なお、温度変動の場合、定数Cが変更される。次に、確率解析部105は、式(48)を用いてNdiffを算出する。
確率解析部105は、確率分布DB128から図9に示すような確率分布曲線を検索する。確率解析部105は、算出されたNdiffと、検索された確率分布曲線とを用いて、欠陥及び温度変動が起因する事故発生確率P(Temperature| Defect)を算出する。
事故発生確率解析部103は、温度変動に関連する条件付き事故発生確率を算出する(ステップ1627)。
具体的には、確率解析部105が、ステップ1607において算出されたP(Defect)と、ステップ1626において算出されたP(Temperature| Defect)とを乗算することによって、温度変動に関連する条件付き事故発生確率(P(Temperature| Defect)×P(Defect))を算出する。
事故発生確率解析部103は、パイプの折れ曲がり及び温度変動が起因する事故発生確率P(Temperature| Configuration)を算出する(ステップ1628)。すなわち、要因5が要因となる事故発生確率が算出される。
確率解析部105は、ステップ1626と同様に式(47)を用いてNを算出する。次に、確率解析部105は、式(48)を用いてNdiffを算出する。
確率解析部105は、確率分布DB128から図10に示すような確率分布曲線を検索する。確率解析部105は、算出されたNdiffと、検索された確率分布曲線とを用いて、パイプの折れ曲がり及び温度変動が起因する事故発生確率P(Temperature| Configuration)を算出する。
事故発生確率解析部103は、温度変動に関連する条件付き事故発生確率を算出する(ステップ1629)。
具体的には、確率解析部105が、ステップ1612において算出されたP(Configuration)と、ステップ1628において算出されたP(Temperature| Configuration)とを乗算することによって、温度変動に関連する条件付き事故発生確率(P(Temperature| Configuration)×P(Configuration))を算出する。
事故発生確率解析部103は、CP設備に異常があるか否かを判定する(ステップ1630)。
CP設備に異常がないと判定された場合、事故発生確率解析部103は、ステップ1633に進む。
CP設備に異常があると判定された場合、事故発生確率解析部103は、土壌が事故発生要因となるCP設備の故障確率P(CP| Soil)を算出する(ステップ1631)。すなわち、要因7による事故発生確率が算出される。
具体的には、確率解析部105は、確率分布DB128から図13に示すような確率分布曲線を検索する。確率解析部105は、取得されたCP電位が−0.85Vより卑になった時間と、検索された確率分布曲線とを用い、さらに、土壌pH値を指定することによって事故発生確率を算出する。算出された事故発生確率がP(CP| Soil)となる。
確率解析部105は、ステップ1615において算出されたP(Soil)と、ステップ1631において算出されたP(CP| Soil)とを乗算する(ステップ1632)。
事故発生確率解析部103は、コーティング劣化があるか否かを判定する(ステップ1633)。
コーティング劣化がないと判定された場合、事故発生確率解析部103は、ステップ1636に進む。
コーティング劣化があると判定された場合、事故発生確率解析部103は、コーティング劣化が要因となって発生するコーティングの劣化確率P(Coating| Soil)を算出する(ステップ1634)。すなわち、要因8による事故発生確率が算出される。
具体的には、確率解析部105は、確率分布DB128から図14に示すような確率分布曲線を検索する。確率解析部105は、検索された確率分布曲線と、土壌pH値を指定することによって事故発生確率を算出する。算出された事故発生確率がP(Coating| Soil)となる。
確率解析部105は、ステップ1615において算出されたP(Soil)と、ステップ1634において算出されたP(Coating| Soil)とを乗算する(ステップ1635)。
次に、事故発生確率解析部103は、リスク診断システム2206が管理するパイプラインにおいて、事故データ130に類似する要因を有するパイプライン区間を抽出する(ステップ1636)。
以下、事故データ130に類似する要因を有するパイプライン区間を事故発生推定区間と記載する。
事故発生推定区間の抽出方法としては、以下のような方法が考えられる。まず、事故発生確率解析部103は、各DB123〜127を参照し、事故データ130における要因1〜要因10の各要因毎の類似度を算出する。事故発生確率解析部103は、算出された類似度が所定値以上の区間を事故発生区間として抽出する。
なお、各要因の類似度の算出方法は、事故データ130と過去に発生した事故との類似度を算出するときと同様の方法(例えば、ステップ1607参照)を用いる。
図23は、本発明の第1の実施形態における、事故データ130と類似する要因を有するパイプライン区間の一例を示す説明図である。
パイプライン1701は、リスク診断システム2206が管理するパイプラインを直線形状として表したものである。
図23に示すように、各要因ごとに、事故発生推定区間が抽出される。各要因の事故発生確率は、パイプラインの距離に対応させて算出できる。
本実施形態では、複合確率計算部106が、各要因ごとに、事故データ130と類似する要因を有するパイプライン区間の事故発生確率を算出する。さらに、複合確率計算部106が、予め設定された閾値以上の事故発生確率であるパイプライン区間を事故発生区間として抽出する。
なお、本実施形態では、事故発生推定区間はパイプラインの開始距離と終了距離とによって管理される。
図23に示す例では、区間1703、1704が要因1の事故発生推定区間である。区間1705、1706が要因2の事故発生推定区間である。区間1707〜1709が要因3の事故発生推定区間である。区間1710、1711が要因4の事故発生推定区間である。区間1712、1713が要因5の事故発生推定区間である。区間1714〜1716が要因6の事故発生推定区間である。区間1717が要因7の事故発生推定区間である。区間1718が要因8の事故発生推定区間である。区間1719、1720が要因9の事故発生推定区間である。区間1721が要因10の事故発生推定区間である。
このとき、以下の区間で事故発生の要因が重複する。
重複区間1(1722):区間1703、区間1705、区間1707、区間1721
重複区間2(1723):区間1708、区間1710、区間1714、区間1719
重複区間3(1724):区間1704、区間1713
重複区間4(1725):区間1706、区間1711、区間1715
すなわち、重複区間1(1722)と、重複区間2(1723)と、重複区間3(1724)と、重複区間4(1725)とが複数の要因を有するパイプライン区間であると判定される。
事故発生確率解析部103は、要因が重複するパイプライン区間の開始距離と終了距離とを重複区間として抽出する。
事故発生確率解析部103は、複数の要因を有するパイプライン区間があるか否かを判定する(ステップ1637)。
複数の要因を有するパイプライン区間がないと判定された場合、事故発生確率解析部103は、ステップ1642に進む。
複数の要因を有するパイプライン区間があると判定された場合、事故発生確率解析部103は、重み係数を検索する(ステップ1638)。
具体的には、事故発生確率解析部103は、重み係数更新部119に重み係数の検索を命令する。当該命令を受信した重み係数更新部119は、要因因果関係DB129から重み係数を取得し、取得された重み係数を事故発生確率解析部103に送信する。
本実施形態では、重み係数更新部119は、ID3002を検索キーとして各要因の重み係数を読み出し、読み出された各要因の重み係数を事故発生確率解析部103に送信する。
検索された重み係数は、次のステップ1639において、事故データ130の解析結果に基づいて更新される。
例えば、事故発生地点の土壌pH値が高い場合には、土壌pH値によって誘発される事故の事故発生確率に関連する重み係数が大きくなり、事故発生地点においてパイプが折れ曲がっている箇所が多い場合には、パイプライン形状に関する事故発生確率に関連する重み係数が大きくなる。
事故発生確率解析部103は、要因因果関係DB129から各要因の重み係数を読み出し、事故データ130の解析結果に基づいて、読み出された重み係数を更新する(ステップ1639)。
本実施形態における重み係数は、C1〜C4、D1〜D2、E1〜E2、F1〜F2、G1〜G2、H1〜H2及びJ1〜J2がある。それぞれの重み係数は、式(4)〜(6)、(10)〜(12)及び(14)に示す条件を満たす。
また、式(1)〜(3)及び式(7)〜(9)を用いると、欠陥及び折れ曲がりが起因するパイプの損傷確率をP1(Damage)及び土壌の異常が起因するパイプの損傷確率をP2(Damage)は、式(49)及び式(50)のようになる。
ここで、C1〜C4は、要因1〜6に関連する重み係数である。また、D1〜D2は、要因1及び要因4に関連する重み係数である。E1〜E2は、要因2及び要因5に関連する重み係数である。F1〜F2は、要因7〜10に関連する重み係数であるG1〜G2は、要因7及び要因9に関連する重み係数である。H1〜H2は、要因8及び要因10に関連する重み係数である。J1〜J2は、要因1〜要因10に関連する重み係数である。
重み係数は、実際にパイプを調査したことによって更新される。以下、具体例を用いて説明する。事故データ130に対応する事故は、CP電位の異常とパイプの欠陥との組み合わせによる事故が原因である場合について説明する。また、事故が発生したパイプの耐用年数を越えていたと仮定する。
このとき、重複区間におけるパイプラインにおけるパイプの対応年数が、あとN年であると判定された場合、圧力変動に関連する重み係数は、D1及びD2であり、式(5)の条件を満たす。
事故データ130に対応する事故が発生した地点の周辺に欠陥の存在が認められるため欠陥によって発生した事故発生頻度及びパイプの折れ曲がりによって発生した事故発生頻度を更新する。
すなわち、欠陥によって発生した事故発生頻度をDN1、パイプの折れ曲がりによって発生した事故発生頻度をDN2とすると、式(51)及び式(52)によって、更新される。
さらに、欠陥によるパイプの折れ曲がりも関連する場合にはDN2はDN2+1となり、DN1、DN2はそれぞれ、式(53)及び式(54)によって更新される。
他の要因によって発生した事故についても同様に数式を用いて重み係数が更新される。この場合、C1〜C4、E1〜E2、F1〜F2、G1〜G2、H1〜H2、J1〜J2に関連する要因の頻度をそれぞれ、CN1〜CN4、EN1〜EN2、FN1〜FN4、GN1〜GN2、HN1〜HN2、JN1〜JN2とする。
E1〜E2は、欠陥、パイプラインの折れ曲がり及び温度変動に起因する事故発生確率における重み係数である。G1〜G2には、土壌pH及びCP設備異常に起因する事故発生確率における重み係数である。また、H1〜H2は、土壌pH及びコーティング劣化に起因する事故発生確率における重み係数である。
C1〜C4、F1〜F2、及びJ1〜J2については以下のように考える。
C1:事故データ130に対応する事故に対して欠陥及び圧力変動、並びに、パイプライン形状及び圧力変動の要因が無視できない場合には頻度CN1を加算する。
C2:事故データ130に対応する事故に対して欠陥及び温度変動、並びに、パイプライン形状及び温度変動の要因が無視できない場合には頻度CN2を加算する。
C3:事故データ130に対応する事故に対して欠陥単独の要因が無視できない場合にはCN3を加算する。
C4:事故データ130に対応する事故に対してパイプライン折れ曲がり単独の要因が無視できない場合にはCN4を加算する。
F1:事故データ130に対応する事故に対して土壌pH及びCP設備異常の要因が無視できない場合にはFN1を加算する。
F2:事故データ130に対応する事故に対して土壌pH及びコーティング劣化の要因が無視できない場合にはFN2を加算する。
J1:欠陥及びパイプラインの折れ曲がりに関係する要因が無視できない場合にはJN1を加算する。
J2:土壌、CP設備異常及びコーティング劣化に関係する要因が無視できない場合にはJN2を加算する。
関連する要因が多くなると重み係数の変化は小さくなるが、要因の頻度が高くなると有意な値となる。また、実際に事故が発生していなくても、パイプのひび割れが発生しているような場合、補修やパイプの交換、さらには、CP設備の検査、CP電位計測、コーティングの交換を行ったときに、異常が発見された場合には、事故が発生したものとして事故データを登録してもよい。
事故発生確率解析部103は、更新された重み係数を重み係数更新部119に送信する。重み係数更新部119は、受信した重み係数を要因因果関係DB129に格納する。
事故発生確率解析部103は、正規化係数を算出する(ステップ1640)。
これは、式(4)〜(6)(10)〜(12)及び(14)を満たすように更新された重み係数を用いた場合に事故発生確率が1より大きくなることがあるため、更新された重み係数の正規化するための正規化係数が算出される。
正規化係数をNorとした場合、複合確率計算部106は、式(55)を用いて正規化係数Norを算出する。
ここで、Pjは要因1〜10の組み合わせごとに算出された事故発生確率である。
事故発生確率解析部103は、重複区間の複数要因を考慮した事故発生確率を算出する(ステップ1641)。
具体的には、事故発生確率解析部103は、複合確率計算部106が、更新された重み係数、及び算出された正規化係数を式(1)〜(3)及び式(7)〜(9)に代入し、全ての要因を考慮した事故発生確率P(Damage)を算出する。
ステップ1637において、複数の要因を有するパイプライン区間がないと判定された場合、確率解析部105は、重み係数と関係しない区間の事故発生確率を算出し(ステップ1642)、ステップ1643に進む。すなわち、各要因についての事故発生確率が算出される。
事故発生確率解析部103は、算出された事故発生確率の値が大きいものから順に並び替え(ソーティングし)、地図表示部108に表示するための出力情報を生成する(ステップ1643)。生成される情報には、例えば、地図データと表形式データとが含まれる。
地図出力部121は、生成された出力情報に基づいて、地図データを表示する(ステップ1644)。具体的には、地図上に事故が発生すると予測される位置を事故発生確率の高いものから順に、地図表示部108に表示する。
地図表示部108に表示される地図データについては、図25を用いて後述する。
リスト出力部120は、生成された出力情報に基づいて、表形式の結果データ131を地図表示部108に表示する(ステップ1645)。これによって、事故データ130に類似する事故が発生するパイプライン範囲を確認することができる。
なお、地図表示部108に表示される結果データ131については、図26を用いて後述する。
以上の処理によって、事故発生確率解析部103は処理を終了する。
図25は、本発明の第1の実施形態の地図表示部108に表示される地図データの一例を示す説明図である。
地図表示部108には、パイプライン形状1901、事故発生の可能性のある区間1902が表示される。
パイプライン形状1901は、事故が発生する可能性のあるパイプラインの形状を表す。事故発生の可能性のある区間1902は、事故発生確率が所定の閾値以上であるパイプラインの区間を表す。
地図表示部108に備わる、マウス及びキーボード等の入出力装置を用いて、地図表示部108に表示されるポインタ1904を、事故発生の可能性のある区間1902に合わせると、事故発生確率情報1903が表示される。
事故発生確率情報1903には、全ての要因を考慮した事故発生確率P(Damage)と各要因毎の事故発生確率が含まれる。
図25に示す例では、全ての要因を考慮した事故発生確率P(Damage)が「0.58」、要因1による事故発生確率が「0.87」、また要因8による事故発生確率が「0.45」であることが分かる。
なお、事故発生確率情報1903の表示内容は様々考えられる。例えば、全ての要因を考慮した事故発生確率P(Damage)と、関連する全ての要因の事故発生確率を表示する方法が考えられる。また、全ての要因を考慮した事故発生確率P(Damage)と、関連性の高い要因の事故発生確率とを表示する方法であってもよい。
関連性が高い要因は、例えば、事故発生確率P(Damage)において所定値以上の確率値である要因、又は、重み係数が所定値以上である要因が考えられる。これによって、事故発生確率P(Damage)において支配的な要因を特定することが可能となる。
図26は、本発明の第1の実施形態の地図表示部108に表示される結果データ131の一例を示す説明図である。
結果データ131は、ID2000、開始距離2001、終了距離2002、事故発生確率2003、要因1(2004)、要因2(2005)、要因3(2006)、要因4(2007)、要因5(2008)、要因6(2009)、要因7(2010)、要因8(2011)、要因9(2012)及び要因10(2013)を含む。
ID2000は、事故発生の可能性のあるパイプライン区間を識別するための識別子である。開始距離2001は、ID2000に対応するパイプラインの開始距離である。終了距離2002は、ID2000に対応するパイプラインの終了距離である。
事故発生確率2003は、全ての要因を考慮した事故発生確率P(Damage)である。
要因1(2004)は、要因1に起因する事故発生確率である。要因2(2005)は、要因2に起因する事故発生確率である。要因3(2006)は、要因3に起因する事故発生確率である。要因4(2007)は、要因4に起因する事故発生確率である。要因5(2008)は、要因5に起因する事故発生確率である。要因6(2009)は、要因6に起因する事故発生確率である。要因7(2010)は、要因7に起因する事故発生確率である。要因8(2011)は、要因8に起因する事故発生確率である。要因9(2012)は、要因9に起因する事故発生確率である。要因10(2013)は、要因10に起因する事故発生確率である。
以下、具体例を用いて説明する。
図24は、本発明の第1の実施形態のリスク診断システム2206の適用例を説明する図である。
本発明の適用場面としては、例えば、以下のような場合が考えられる。
(1)パイプの調査を行った結果、パイプライン上には深刻な欠陥(例えば、ERFが1.2以上の欠陥)は存在しなかったが、離れた場所に深刻な欠陥が発生している場合。
(2)パイプラインに45度程度の折れ曲がりが存在する場合。
(3)運用データを調べたところ、温度変動は少なかったが、パイプラインの使用年数が長く、圧力変動が限界値N近くに達していた場合。
(4)土壌データを取得した結果、年間を通して土壌pHは7以下を示しており、コーティングが損傷していることがわかった場合。
前述したような場合に、各要因が考慮された事故発生確率P(Damage)が算出される。
事故発生パイプライン1801は、事故データ130に対応する事故のパイプラインである。
土壌pH1803は、事故発生パイプライン1801周辺の土壌pHに関する情報である。土壌pH1803は、pH=2.0である。
新規事故発生区間1805は、パイプラインの亀裂によって発生した事故の範囲である。
パイプライン形状1806は、事故発生パイプライン1801のパイプライン形状に関する情報である。パイプライン形状1806の斜線部分は、パイプの折れ曲がり部分を表す。
欠陥部分1808は、事故発生パイプライン1801の欠陥の分布に関する情報である。ここで、欠陥部分1808は、縦軸がパイプの断面を表す。図24に示す例では、地面に対して鉛直方向を12時方向とした場合のパイプの断面図である。また欠陥部分1808の横軸はパイプの距離を表す。
コーティング劣化1810は、事故発生パイプライン1801のpHの範囲に関する情報である。
類似パイプライン1802は、事故データ130に対応する事故と類似する要因を有するパイプライン範囲である。
土壌pH1804は、類似パイプライン1802周辺の土壌pHに関する情報である。土壌pH1804は、pH=2.5である。
パイプライン形状1807は、類似パイプライン1802のパイプライン形状に関する情報である。欠陥部分1809は、類似パイプライン1802の欠陥の分布に関する情報である。コーティング劣化1811は、類似パイプライン1802のコーティング劣化に関する情報である。
図24に示す例において、パイプライン形状の類似度λは式(41)から「0.92」と算出され、欠陥分布の類似度λは式(33)から「0.75」と算出される。本実施形態では、いずれの要因についても類似性があると判定される。
この場合、欠陥及び折れ曲がりが起因するパイプの損傷確率P1(Damage)は、式(1)を用いて、P1(Damage)=0.87と算出される。
また、土壌pHの類似度λは式(44)から「0.80」と算出される。この場合、土壌の異常が起因するパイプの損傷確率をP2(Damage)は、式(7)を用いて、P2(Damage)=0.45と算出される。
さらに、J1=0.74、J2=0.26とした場合に、全ての要因を考慮した事故発生確率P(Damage)は、式(13)を用いて算出される。このとき正規化係数は、式(56)に示すように算出される。
以上より、式(7)を用いて算出されたP(Damage)に、式(56)を用いて算出された正規化係数を乗算することによって、P(Damage)=0.58と算出される。
なお、各重み係数は、要因因果関係DB129から読み出された値が用いられる。
以上のように事故データ130から算出された事故発生確率に基づいて、類似する事故が発生するリスクが推定できる。
重み係数は、パイプの調査を行ったときに更新してもよい。このとき事故発生確率曲線と、重み係数とが更新される。例えば、パイプの調査時にパイプのひび割れが発見された場合、パイプの補修時若しくはパイプの交換時、CP設備の検査時、CP電位計測時、又はコーティングの交換時に異常が発見された場合には、事故データ130として登録してもよい。この場合、類似事故の推定とは別に、重み係数のみを更新する処理を実行してもよい。
図27は、本発明の第1の実施形態の重み係数の更新処理を説明するフローチャートである。
事故発生確率解析部103は、事故データ130を取得する(ステップ2101)。この処理は、ステップ1601と同一の処理である。
事故データ130には、土壌データ、パイプライン形状、欠陥データ、CP電位及びコーティングの損傷度等の情報が含まれる。
事故発生確率解析部103は、取得された事故データ130に基づいて、重み係数を更新する(ステップ2102)。重み係数の更新方法は、ステップ1639と同一の方法が用いられる。
事故発生確率解析部103は、更新された重み係数を重み係数更新部119に送信する。
更新された重み係数を受信した重み係数更新部119は、図3に示すような因果関係に基づいて、関連する重み係数の更新結果を反映し(ステップ2103)、処理を終了する。
[変形例]
変形例では、ガス又はオイル漏れのような事故の場合について説明する。
計算機システム及びリスク診断システム2206の構成については、第1の実施形態と同一であるため説明を省略する。
ガス又はオイル漏れのような事故の場合は、パイプラインの欠陥部分に輸送圧力から生じる応力が集中するために、応力が集中する箇所が破裂して事故が引き起こされる。また、バルブ又は溶接などが老朽化によって事故が引き起こされる可能性もある。
そのため、ガス又はオイル漏れのような事故については、前述したような設備異常に関連する要因も考慮に入れる必要がある。
したがって、変形例では、欠陥、CP電位、運用履歴に加え、設備異常の要因も考慮した事故発生確率が算出される。
バルブ又は溶接の故障確率は、図17に示すようなバスタブ曲線によって表される。このような場合、パイプの形状のみではなく、設備の位置にも注目した事故発生確率が算出される。
以下、ガスの漏洩事故の発生確率を求める場合について説明する。変形例では、以下に示すような要因因果関係が考慮される。
要因1:バルブ劣化−パイプ損傷
要因2:溶接劣化−パイプ損傷
要因3:欠陥発生−パイプ損傷
バルブ劣化、又は溶接劣化に関連する事故発生確率は、図17に示す確率分布曲線を用いて算出される。また、欠陥による事故発生確率P(Leak)は、式(57)を用いて算出できる。
ここで、K1、K2及びK3は重み係数であり、式(58)を満たす。なお、本実施形態では、K1はID3002が「17」、K2はID3002が「18」、K3はID3002「19」と対応づけられて、要因因果関係DB129に格納される。
ここで、P(Valve)は、バルブが劣化又は損傷する確率である。P(Valve)は、図17に示すように、時間の関数として表され、バルブの取付け直後は損傷する確率値は高いが、時間経過によってならされると損傷確率が低下する。しかし、さらに時間が経過すると、流体が通過するときの磨耗などの要因により劣化が進む。
P(Weld)は、溶接が劣化する確率である。P(Leak| Valve)は、バルブがあるところで漏洩が発生する確率である。P(Leak| Weld)は溶接があるところで、漏洩が発生する確率である。P(Defect)は、欠陥があるところで、漏洩が派生する確率である。
ここで、P(Leak| Valve)、P(Leak| Weld)及びP(Defect)は以下のようにして算出することができる。
事故発生確率解析部103は、事故DB122を参照して、漏洩事故の記録を検索する。
具体的には、事故発生確率解析部103は、図28に示すような記述形式データ2301の事故タイプ(Type)2309が「Leak」である事故データの数Nを求め、さらに、Causeと記載された欄に、ValveまたはWeldと記載された行データの数Q、R、Sを求める。Mはバルブが劣化又は損傷することによって漏洩が発生した回数を示し、Lは溶接が劣化・損傷して漏洩が発生した回数を示す。
さらに、事故発生確率解析部103は、算出されたN、Q、R及びSを式(59)〜(61)に代入することによって、P(Leak| Valve)、P(Leak| Weld)及びP(Defect)をそれぞれ算出する。
なお、重み係数K1、K2及びK3については、所有者のパイプライン以外の事故統計情報を、以下の式(64)〜(66)ように反映することによって精度を高めることができる。
ここで、Tは漏洩事故データの総数(T>N)、Uはバルブ劣化による漏洩事故の数(U>M)、Vは溶接による漏洩事故の数(V>Q)、Wは欠陥による漏洩事故の数(W>R)である。
なお、所有者のパイプライン以外の事故統計情報が存在しない場合は、式(62)〜(64)を用いて算出されたK1、K2及びK3は使用しなくてもよい。
この場合、要因因果関係DB129から重み係数を検索し、検索された重み係数と、式(55)を用いて算出される正規化係数とを用いて式(57)に示す欠陥による事故発生確率P(Leak)が算出される。
なお、式(55)のPjは、P(Leak| Valve)×P(Valve)、P(Leak| Weld)×P(Weld)、P(Defect)の3つが対応する。
本発明の一形態によれば、パイプライン施設において、センサの限界を超えているためパイプラインの欠陥に関する情報が直接得られない場合であっても、発生した事故と類似する事故発生要因を有する事故の発生を推定することができる。これによって、パイプラインの事故発生を事前に予測した保守管理が可能となる。
また、本発明の一形態によれば、明確な欠陥等がない箇所において発生した事故を解析することによって、当該事故の事故発生確率を算出すると共に、当該事故と類似する事故の発生を予測することができる。
本実施形態は、天然ガスを湯即するパイプラインを例に説明したが、石油若しくはエチレンのような液体、又は、水素若しくは二酸化炭素のような気体を輸送するパイプラインにも適用することができる。
また、本実施形態では、パイプラインを例に説明したが、鉄道のレール、又は電話線等、長さが関係する施設の保守管理についても適用することができる。