以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。なお、ここでは蓄電装置を車両に用いた場合について述べる。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における蓄電装置のブロック回路図である。図2は本発明の実施の形態1における蓄電装置の両端電圧Viにおける温度Tiと温度準拠時比率Dtiの相関関係図である。図3は本発明の実施の形態1における蓄電装置のエネルギ準拠時比率Deiと温度準拠時比率Dtiの経時特性図である。図4は本発明の実施の形態1における蓄電装置の両端電圧Viの経時特性図である。図5は本発明の実施の形態1における蓄電装置のスイッチのオンオフ動作を行うフローチャートである。なお、図1において太線は電力系配線を、細線は信号系配線を、それぞれ示す。また、図2において横軸は温度を、縦軸は温度準拠時比率を、それぞれ示す。また、図3において横軸は時刻を、縦軸は時比率を、それぞれ示す。また、図4において横軸は時刻を、縦軸は両端電圧を、それぞれ示す。
図1において、複数個の蓄電素子11が直列に接続されて蓄電部13が構成されている。ここで、蓄電素子11には電気二重層キャパシタを用いている。前記電気二重層キャパシタとして本実施の形態1では定格電圧が3Vのものを用いた。従って、蓄電素子11の両端電圧Vi(i=1〜n、nは蓄電素子11の直列個数)は過放電の影響と過充電へのマージンを考慮して0Vから2.8Vまでの範囲となるように充放電を行うようにした。なお、図1の構成では蓄電素子11がn個直列に接続されているが、これは直並列接続構成としてもよい。この場合は回路構成上、並列接続された蓄電素子11が1個の蓄電素子11と等価であるので、前記直並列接続構成であっても後述する動作は同じである。
蓄電部13の両端には、正極端子15と負極端子17が接続されている。これらの端子は図示しない充放電回路を介して前記車両の発電機、モータ、電装品等(いずれも図示せず)に電気的に接続される。これにより、例えば前記発電機が回生電力を発生した時には、前記充放電回路により前記回生電力を蓄電素子11に充電し、蓄えた前記回生電力を前記モータや電装品に放電する動作を繰り返すことで、前記車両の省燃費化が図れる。
蓄電素子11の両端には、それぞれ電圧検出回路19が電気的に並列接続されている。これにより、各蓄電素子11の両端電圧Viが検出される。なお、電圧検出回路19は、蓄電素子11の両端にそれぞれ設ける構成に限定されるものではなく、各蓄電素子11の両端に切替スイッチ(図示せず)を設け、前記切替スイッチを制御することにより1つの電圧検出回路19で両端電圧Viを順次検出するようにしてもよい。さらに、蓄電素子11に高電圧が印加される場合は前記切替スイッチと電圧検出回路19の間にフライングキャパシタ(図示せず)を設ける構成としてもよい。
また、各蓄電素子11には、それぞれバランス回路21が電気的に並列接続されている。バランス回路21は図8で説明したバイパス回路と同等の機能を有する。すなわち、バランス回路21は抵抗器23とスイッチ25の直列回路からなる。従って、スイッチ25をオンにすると、そのスイッチ25を有するバランス回路21と並列接続された蓄電素子11から抵抗器23に電流が流れ、両端電圧Viを下げる方向に調整することができる。これにより、各蓄電素子11の両端電圧Viにおけるバラツキを低減することが可能となる。なお、スイッチ25には外部からオンオフ制御が可能な電界効果トランジスタ(FET)を用いている。また、抵抗器23としては、できるだけ早く電圧バラツキを低減するとともに、前記FETへの突入電流を低減するために、実抵抗値Riが3Ω(25℃にて)の低抵抗品を用いた。さらに、多くの前記電流を流しても温度上昇に耐えるために最高使用温度Tmaxが高い抵抗器23を用いた。本実施の形態1では抵抗器23として最高定格温度が155℃のものを用いたので、安全をみて、その約2/3倍である100℃を使用最高温度Tmaxとした。また、抵抗器23の抵抗温度係数TCRは300ppm/℃である。なお、実抵抗値Ri(=3Ω)や前記最高定格温度、抵抗温度係数TCRは一例であり、電圧バラツキ幅やバランスを取るまでの期間、前記電流の大きさ、前記FETの耐電流特性等に応じて適宜決定すればよい。
各抵抗器23の近傍には、その温度Ti(i=1〜n、nは蓄電素子11の直列個数)を検出する複数の温度センサ26が設けられている。ここで、温度センサ26としては温度Tiに対する感度が高いサーミスタを用いた。これらの温度センサ26はそれぞれ抵抗器23にできるだけ近い位置に配している。具体的には、抵抗器23と温度センサ26の間の絶縁を保った状態で隣接するように配置した。これにより、抵抗器23の温度Tiをできるだけ速く正確に測定することができる。さらに、バランス回路21の動作時に流れる前記電流に起因した抵抗器23の温度変化を的確に検出するために、抵抗器23と温度センサ26は熱伝導性基材(図示せず)上に配されている。前記熱伝導性基材としては、例えば熱伝導率λが1W/mKオーダーの高熱伝導性ガラスエポキシ回路基板を用いている。このガラスエポキシ回路基板において、抵抗器23と温度センサ26が隣接するように基板配線パターンを形成している。また、温度センサ26としてチップ型サーミスタを用いている。これにより、温度センサ26自身の熱容量が小さくなるので、バルク型サーミスタ等と比較して温度変化追従性がさらに良好となる。さらに、サーミスタの抵抗温度係数が他原理の温度検出素子に比べて大きいので、温度Tiの精度を向上することができる。従って、これらの構成を有することにより、抵抗器23の温度Tiを高精度に測定することが可能となる。
なお、抵抗器23と温度センサ26との間に電気絶縁性を有する高熱伝導性グリスを介在させる構成としてもよい。この場合はよりいっそうの温度変化追従性向上が可能となる。
また、抵抗器23と温度センサ26を前記熱伝導性基材上に配置しているが、蓄電装置を例えば非常用バックアップ電源に用いる場合のように、蓄電素子11の急峻な充放電が繰り返し行われない環境においては、前記電圧バラツキはあまり大きくならないので、バランス動作による抵抗器23の発熱が少ない。従って、このような場合はそれほど熱伝導率λが高くない通常の回路基板を用いてもよい。しかし、少ないながらも前記バランス動作による発熱は起こるので、後述するスイッチ25の制御は有用である。
また、温度センサ26としては前記チップ型サーミスタに限定されるものではなく、抵抗器23の温度変化が緩やかな前記非常用バックアップ電源用に蓄電装置を適用する場合はチップ型より若干熱容量が大きいバルク型やビーズ型のサーミスタであってもよい。さらに、前記サーミスタに限らず、熱電対や白金測温体、焦電センサなど温度Tiを電気信号に変換できるものであればよい。
電圧検出回路19、スイッチ25および温度センサ26は、それぞれ信号系配線で制御回路27と電気的に接続されている。これにより、制御回路27は温度センサ26から温度Ti(T1〜Tn)を、電圧検出回路19から両端電圧Vi(V1〜Vn)を、それぞれ読み込む。また、スイッチ25に対してオンオフ信号SWi(i=1〜n、nは蓄電素子11の直列個数)を出力することによりオンオフ制御を行う。これにより、バランス回路21の制御を行っている。さらに、制御回路27は前記車両の外部制御回路(図示せず)とも信号系配線で接続されており、データ信号dataを送受信することで様々な情報のやり取りを行う。なお、制御回路27はマイクロコンピュータとメモリ等の周辺回路で構成されている。
次に、このような蓄電装置の動作について、高精度に、かつ抵抗器23の過剰な発熱可能性を低減するスイッチ25の時比率Diを求める原理的動作について説明する。
時比率Diは、抵抗器23の過剰な発熱可能性を低減する温度準拠時比率Dtiと、高精度化を達成するエネルギ準拠時比率Deiから決定される。従って、ここでは温度準拠時比率Dtiとエネルギ準拠時比率Deiを求める原理的動作を順に説明する。
まず、温度準拠時比率Dtiは次のようにして求められる。
上記したように、できるだけ早く前記電圧バラツキを低減するには、バランス回路21が動作している時に抵抗器23にできるだけ多くの電流を流せばよく、そのためには抵抗器23を最高使用温度Tmaxまで使うことが望ましい。この場合、抵抗器23が現在の温度Tiから最高使用温度Tmaxに至った時に、抵抗器23から前記熱伝導性基材に伝達される放熱量Qdは、
Qd=λ・L・(Tmax−Ti) (1)
で表される。ここで、距離Lは抵抗器23の熱が前記熱伝導性基材に伝達される距離であり、本実施の形態1では抵抗器23が現在の温度Tiから最高使用温度Tmaxに至った時の熱が抵抗器23から半径3cmの範囲まで伝達するものとする。従って、抵抗器23から距離L=3cmまで離れた部分の前記熱伝導性基材の温度は現在の温度Tiとなる。また、上記したように前記熱伝導性基材の熱伝導率λが1W/mK、最高使用温度Tmaxが100℃であるので、(1)式は
Qd=1・0.03・(100−Ti) (2)
となる。
従って、この放熱量Qdをバランス回路21の動作により抵抗器23で発熱させればよい。この時の発熱量Qrは、抵抗器23の調整目標抵抗値をRaとすると、
Qr=Vi2/Ra (3)
となる。
以上より、発熱量Qrと放熱量Qdが等しくなるように調整目標抵抗値Raを求めると、(2)式=(3)式より、
Ra=Vi2/(3−0.03・Ti) (4)
となる。従って、(4)式より求めた調整目標抵抗値Raになるようにスイッチ25をオンオフ制御することで、抵抗器23が最高使用温度Tmaxになるように制御されるので、抵抗器23の過剰な発熱可能性を低減しつつ前記電圧バラツキを低減することが可能となる。
ここで、調整目標抵抗値Raとは、抵抗器23の過剰な発熱可能性を低減するための、スイッチ25のオンオフ制御による抵抗器23の見かけ上の抵抗値であり、後述する高精度化のためのエネルギ準拠時比率Deiを求める際の調整目標抵抗値Raiとは異なる点に注意が必要である。調整目標抵抗値Raは抵抗器23の実抵抗値Riとオンオフ制御の温度準拠時比率Dtiから、Ra=Ri/Dtiの関係を有する。温度準拠時比率Dtiは0以上1以下の値を持ち、時比率Diが温度準拠時比率Dtiであると決定された場合(この決定方法は後述する)、Dti=0の時はスイッチ25がオフ、Dti=1の時はスイッチ25がオン、Dtiが0から1の間の時は、例えばDti=0.8ならオンオフ周期の80%がオン、20%がオフになるようにスイッチ25がオンオフ制御される。従って、上記した関係から温度準拠時比率Dtiを可変することにより抵抗器23の抵抗値を実抵抗値Riよりも大きな調整目標抵抗値Raに調整することができる。
従って、上記した関係からスイッチ25をオンオフ制御するための温度準拠時比率Dtiは、
Dti=Ri/Ra (5)
で表される。但し、実抵抗値Riは温度Tiに応じて変化するので、抵抗器23の抵抗温度係数TCR(=300ppm/℃)により実抵抗値Riを(6)式により温度補正する。
Ri=Rs・(1+TCR・(Ti−Ts)) (6)
ここで、基準温度(室温)Tsを25℃とし、基準温度Tsにおける実抵抗値Rsは3Ωであるので、(6)式は、
Ri=3・(1+0.0003・(Ti−25)) (7)
となる。但し、抵抗温度係数TCRが小さく、前記蓄電装置の使用温度範囲の中で実抵抗値Riの温度変化が無視できる程度の抵抗器23を用いた場合は(7)式による実抵抗値Riの温度補正を行なわず、基準温度Ts(=25℃)における実抵抗値Rs(=3Ω)を実抵抗値Riとして用いてもよい。
以上より、温度準拠時比率Dtiは(5)式に(4)式と(7)式を代入して整理すると、
Dti=(8.93−0.087・Ti−2.7・10-5・Ti2)
/Vi2 (8)
となる。従って、温度準拠時比率Dtiは温度Tiと両端電圧Viの関数であることがわかる。ここで、両端電圧Viを0.5Vから2.5Vまで0.5V刻みで変えた時と2.8Vの時の温度Tiと(8)式で求めた温度準拠時比率Dtiの相関関係を図2に示す。なお、(8)式の計算の結果、温度準拠時比率Dtiが1より大きくなった場合は、温度準拠時比率Dtiを1とする。図2より、温度Tiが低い間は抵抗器23の発熱量Qrが十分に放熱され最高使用温度Tmaxに至らないため、温度準拠時比率Dtiは1となる。しかし、バランス回路21の動作により前記電流が流れると抵抗器23の温度Tiが上昇し、温度Tiが最高使用温度Tmaxに至れば抵抗器23の過剰な発熱が発生してしまう。そこで、図2に示す相関関係に従って、例えば両端電圧Viが2.5Vの時は温度Tiが30.6℃に至ると、温度準拠時比率Dtiが温度Tiに応じて高温になるほど下がるように決定される。すなわち、温度Tiが高く温度準拠時比率Dtiが小さくなることにより、最終的に時比率Diが温度準拠時比率Dtiであると決定されると、スイッチ25のオン期間が短くなる。これにより、抵抗器23の発熱量Qrが放熱量Qdと等しくなるように、すなわち抵抗器23の発熱と放熱の熱的バランスが取れるようにしながら温度Tiが最高使用温度Tmaxに至るように制御されるので、過剰な発熱可能性を低減できる。さらにその間もスイッチ25はオンになる期間があるため時間がかかるものの前記電圧バラツキを低減することができる。そして、温度準拠時比率Dtiによるスイッチ25の制御を行なっても抵抗器23の温度Tiが最高使用温度Tmaxに至った場合は、これ以上抵抗器23の温度Tiを上げないようにするため、温度準拠時比率Dtiは0になる。ゆえに、時比率Diも抵抗器23の過剰な発熱を回避するために0と決定される。その結果、スイッチ25はオフ状態を維持することになるため、これ以上の発熱は起こらず高信頼性が得られる。この場合、電圧バラツキが低減されていなければ本来なら制御回路27はスイッチ25をオンにする制御を行なおうとするのであるが、時比率Diが0であるため電圧バラツキ低減動作が中断されることになる。しかし、スイッチ25がオフの間は前記電流が流れないので抵抗器23の温度Tiが下がる。これにより、再び図2の相関関係から温度準拠時比率Dtiを求めて、0より大きい時比率Diが決定されるとスイッチ25を動作させることができる。ゆえに、電圧バラツキ低減動作が再開される。
なお、図2において、両端電圧Viに応じて前記相関関係が異なるので、現在の両端電圧Viが変化した場合は、変化後の値に応じた前記相関関係から温度準拠時比率Dtiを求めればよい。ここで、図2では両端電圧Viが0.5Vから2.5Vまでの0.5V刻みと2.8Vの場合において前記相関関係を記載しているが、実際にはその中間値も存在するので、制御回路27は(8)式より正確な温度準拠時比率Dtiを求めている。但し、(8)式で温度準拠時比率Dtiを計算した結果、負の値になれば温度準拠時比率Dti=0に、1を超えれば上記したように温度準拠時比率Dti=1にしている。
次に、エネルギ準拠時比率Deiを求める原理的動作について説明する。
今、蓄電部13を充電する場合について考える。蓄電素子11は上記したように容量値Ciにバラツキが存在するため、従来と同様に蓄電部13の単位時間当たりの電圧上昇分が一定になるように、すなわち定電流Iで充電すると、各蓄電素子11の両端電圧Viの上昇にバラツキが発生する。具体的には、測定期間tmの最初の両端電圧Vi(以下、測定期間前両端電圧Vi1という)と測定期間tmの最後の両端電圧Vi(以下、測定期間後両端電圧Vi2という)からCi・(Vi2−Vi1)=I・tmの関係式が得られ、単位時間当たりの両端電圧Viの上昇を求めると(Vi2−Vi1)/tm=I/Ciとなることから、容量値Ciが大きいほど単位時間当たりの両端電圧Viの上昇が小さくなる。ゆえに、容量値Ciのバラツキが充電による両端電圧Viのバラツキの要因となることがわかる。従って、上記したようにバランス回路21は両端電圧Viを下げる方向に調整することができるので、本実施の形態1では両端電圧Viの変化や容量値Ciに応じて最適なエネルギ準拠時比率Dei(0≦Dei≦1)でスイッチ25をオンオフ制御することにより、高精度に両端電圧Viのバランスを取ることが可能となる。
ここで、温度準拠時比率Dtiで説明したように最終決定された時比率Diでスイッチ25をオンオフ制御すると、直列に接続された抵抗器23の実抵抗値Riを見かけ上、可変することができる。ゆえに、両端電圧Viの変化や容量値Ciに応じたエネルギ準拠時比率Deiを基に時比率Diを決定することで、蓄電素子11の急峻な電圧変化を低減しつつ高精度な電圧バラツキの低減が可能となる。
そこで、本実施の形態1では測定期間tmに充電される各蓄電素子11のエネルギ変化幅(以下、エネルギ幅Eiと呼ぶ)に着目し、両端電圧Viの変化や容量値Ciに応じたエネルギ準拠時比率Deiをエネルギ幅Eiから求める。すなわち、既定の測定期間tm(本実施の形態1では0.1秒とした)の最初と最後にそれぞれ測定した各両端電圧(測定期間前両端電圧Vi1と測定期間後両端電圧Vi2)と、各蓄電素子11の容量値Ciと、から測定期間tmにおける各蓄電素子11の増加したエネルギ幅Eiを次式で求める。
Ei=Ci/2・|Vi22−Vi12| (9)
なお、ここでは蓄電部13の充電時であるのでエネルギ幅Eiは増加した値となるが、放電時であれば減少した値となる。ここでは、いずれの場合にも適用できるように、(9)式におけるVi22−Vi12の項を絶対値で表した。
また、測定期間前両端電圧Vi1と測定期間後両端電圧Vi2は測定期間tmの最初と最後にそれぞれ測定しているが、制御回路27による両端電圧Viの測定時間は0.1ミリ秒程度であり、測定期間tm(=0.1秒)に比べ極めて短い。従って、以後の説明では測定期間tmの最初と最後における両端電圧Viの測定時間は無視できるものとして説明する。
次に、各蓄電素子11のエネルギ幅Eiの中から最小エネルギ幅Eminを求める。そして、各エネルギ幅Eiと最小エネルギ幅Eminとの充電エネルギ差ΔEciを求める。
ΔEci=Ei−Emin (10)
なお、(10)式の結果、最小エネルギ幅Eminを有する蓄電素子11の充電エネルギ差ΔEciは0となる。ここで、電圧バランスを取るためのエネルギ準拠時比率Deiは充電エネルギ差ΔEci分を抵抗器23で消費するように決定されるので、充電エネルギ差ΔEciが0であればスイッチ25をオンオフ制御する必要はない。そのため、この蓄電素子11に対するエネルギ準拠時比率Deiは0となり時比率Diも0と決定されるので、スイッチ25はオフとなる。なお、任意の複数の蓄電素子11において電圧バランスが取れていると、充電エネルギ差ΔEciが実質的に0となるものが複数発生する。この場合は、それらの蓄電素子11の全てにおいてエネルギ準拠時比率Deiを0とする。ここで、実質的に0であるとは、電圧検出回路19と温度センサ26の測定誤差や制御回路27の演算誤差の範囲内で0であると定義する。
次に、充電エネルギ差ΔEciよりバランス回路21における調整目標抵抗値Raiを求める。ここで、充電エネルギ差ΔEciは測定期間tmの間に最小エネルギ幅Eminに対して余計に蓄電素子11に充電されたエネルギであるので、これをバランス回路21の抵抗器23にて消費すればよい。この際、調整目標抵抗値Raiが消費するエネルギはVi22・tb/Raiであるとする。ここで、既定の調整期間tbは本実施の形態1において測定期間tmと同じ0.1秒とした。なお、この消費するエネルギは正確には∫Vi(t)2dt/Rai(積分期間は調整期間tb)となるが、ここでは調整期間tbが0.1秒と短いため、Vi(t)=Vi2(一定)と近似して計算している。従って、調整目標抵抗値Raiが消費するエネルギVi22・tb/Raiが充電エネルギ差ΔEciと等しくなるように調整目標抵抗値Raiを求めればよいので、調整目標抵抗値Raiは次式のようになる。
Rai=Vi22・tb/ΔEci (11)
ここで、実抵抗値Riをエネルギ準拠時比率Deiで除することにより調整目標抵抗値Raiとなるので、エネルギ準拠時比率Deiは次式で表される。
Dei=Ri/Rai (12)
なお、エネルギ準拠時比率Deiは0≦Dei≦1の範囲であるので、(12)式の計算の結果、エネルギ準拠時比率Deiが1以上であれば、エネルギ準拠時比率Deiは1とする。この場合、エネルギ準拠時比率Deiが時比率Diとして決定されればスイッチ25がオンのままに制御される。なお、(10)式より充電エネルギ差ΔEciは正であるので、エネルギ準拠時比率Deiが負になることはない。
また、(12)式の実抵抗値Riは温度センサ26で検出した温度Tiを用いて(6)式により温度補正を行なった値としてもよい。これにより、現在の抵抗器23の温度Tiも考慮したエネルギ準拠時比率Deiが求められるので、さらなる高精度化が可能となる。但し、上記したように抵抗温度係数TCRが小さく、前記蓄電装置の使用温度範囲の中で実抵抗値Riの温度変化が無視できる程度である抵抗器23を用いた場合は、(12)式で実抵抗値Riの温度補正を行なわず、基準温度Ts(=25℃)における実抵抗値Rs(=3Ω)を実抵抗値Riとして用いてもよい。
ここで、エネルギ準拠時比率Deiの具体的な経時特性を図3の太線に示す。ここでは、任意の時刻(時刻t=0秒とする)で両端電圧Viが約3%ずれた状態にある2個の蓄電素子11について述べる。(9)式よりエネルギ幅Eiは両端電圧Viの2乗の差に比例するため、両端電圧Viが低い方の蓄電素子11が最小エネルギ幅Eminを有する。ゆえに、両端電圧Viが高い方の蓄電素子11に対してバランス回路21の制御を行なうが、その際のエネルギ準拠時比率Deiを(12)式で求めた結果が図3の太線である。なお、図3の太線は測定期間tm(=0.1秒)と調整期間tb(=0.1秒)を交互に繰り返すことにより求められたエネルギ準拠時比率Deiである。
今、時刻t=0秒であるので、図3の太線よりエネルギ準拠時比率Deiは1となる。これは、2個の蓄電素子11の充電エネルギ差ΔEciが大きくて、スイッチ25をオンのままとしても抵抗器23で充電エネルギ差ΔEciを消費できない状態である。従って、不十分ではあるものの抵抗器23で蓄電素子11の充電電流の一部が消費されつつ蓄電素子11の充電がなされることになる。ゆえに、この蓄電素子11への充電電力が抑制され充電エネルギ差ΔEciは小さくなる方向に制御される。
その後、時刻t=2.8秒以降でエネルギ準拠時比率Deiは1以下となり、経時的に低下していく。これは、上記動作で充電エネルギ差ΔEciが小さくなったため、抵抗器23で充電エネルギ差ΔEciを十分消費できる状態になったことになる。そして、経時的に充電エネルギ差ΔEciは小さくなっていくので、それに伴いエネルギ準拠時比率Deiも小さくなる。この動作により、最小エネルギ幅Eminを有する蓄電素子11に両端電圧Viを合わせる方向に調整することができる。調整期間tbの経過後はスイッチ25をオフにして、再び測定期間tmの間に測定期間前両端電圧Vi1と測定期間後両端電圧Vi2を求めてエネルギ準拠時比率Deiを計算するとともに、測定期間後両端電圧Vi2と温度Tiに基き温度準拠時比率Dtiを求め、後述するようにエネルギ準拠時比率Deiと温度準拠時比率Dtiの内、小さい方を時比率Diと決定し、その後、調整期間tbに亘ってスイッチ25を時比率Diでオンオフ制御する動作を繰り返す。
その後、時刻t=21.5秒で両者の両端電圧Viが等しくなり、エネルギ準拠時比率Deiは0となる。これらの動作により、蓄電素子11の両端電圧Viを合わせることができる。
ここで、図3の太線に示すエネルギ準拠時比率Deiにおける経時特性は下に凸の非線形特性を示すことがわかる。これは、エネルギ準拠時比率Deiを両端電圧Viだけでなくその変化や容量値Ciの関数として求めているためである。従って、高精度にエネルギ準拠時比率Deiを求めることができるので、電圧バラツキも精度よく低減することが可能となる。
次に、上記した温度準拠時比率Dtiとエネルギ準拠時比率Deiから時比率Diを最終決定する方法について述べる。実際にスイッチ25をオンオフ制御する時比率Diは、抵抗器23が過剰に発熱しない範囲において高精度に決定される。従って、エネルギ準拠時比率Deiと温度準拠時比率Dtiのうち小さい方を時比率Diと決定する。これにより、抵抗器23の温度Tiが高い場合は温度準拠時比率Dtiが小さくなるので、電圧バラツキの高精度な低減よりも、抵抗器23がこれ以上発熱しないようにする制御を優先するために、時比率Diとして温度準拠時比率Dtiを用いる。一方、抵抗器23の発熱がそれほど高くない場合は温度準拠時比率Dtiが大きくなる。この際は、発熱を抑制する動作よりも高精度な電圧バラツキ低減動作を優先できる。ゆえに、時比率Diとしてエネルギ準拠時比率Deiを用いる。
このような時比率Diの決定方法に従って図3を参照すると、前記蓄電装置の周囲温度が25℃の場合、抵抗器23の初期温度も25℃であるので、温度準拠時比率Dtiの経時特性は図3の上側の細線となる。すなわち、もともと抵抗器23の温度Tiが低いので、温度準拠時比率Dtiは時刻t=24.4秒まで1のままとなる。その後は抵抗器23の温度Tiが最高使用温度Tmax(=100℃)に至るので、温度準拠時比率Dtiが低下していく。しかし、図3の太線に示すようにエネルギ準拠時比率Deiは時刻t=21.5秒で0となり、電圧バランスが取れた状態となるので、抵抗器23の初期温度が25℃の場合はエネルギ準拠時比率Deiによってのみ時比率Diが決定されることがわかる。
一方、前記蓄電装置の周囲温度が例えば使用上限温度である65℃の場合、抵抗器23の初期温度も65℃となる。この際の温度準拠時比率Dtiの経時特性は図3の下側の細線となる。この特性によると、時刻t=0秒で蓄電素子11の充電を始めた直後は抵抗器23の最高使用温度Tmaxまで余裕があるので、温度準拠時比率Dtiは1となるが、その後時刻t=0.8秒で抵抗器23の温度Tiは最高使用温度Tmaxに達する。その後はこれ以上抵抗器23の温度Tiが過剰に上がらないようにするために、温度準拠時比率Dtiは1未満となり急激に低下する。この時点ではエネルギ準拠時比率Deiは1のままであるので、本来なら早く高精度な電圧バラツキ低減動作を行なうために時比率Diを1とするところを、抵抗器23の発熱抑制を優先して温度準拠時比率Dtiを時比率Diとして決定する。
その後、時刻t=8.0秒までは温度準拠時比率Dtiの方がエネルギ準拠時比率Deiよりも小さいので、温度準拠時比率Dtiが時比率Diとなり、スイッチ25のオンオフ制御が行なわれる。時刻t=8.0秒に至ると、温度準拠時比率Dtiよりもエネルギ準拠時比率Deiの方が小さくなる。これは、時刻t=0.8秒以降で抵抗器23の発熱抑制制御を優先した結果、抵抗器23の発熱と放熱のバランスが取れてきて、温度準拠時比率Dtiの低下が緩やかになったためである。そこで、時刻t=8.0秒以降ではエネルギ準拠時比率Deiを時比率Diと決定し、高精度な電圧バラツキ低減動作を行なう。そして、時刻t=21.5秒で電圧バランスが取れ、エネルギ準拠時比率Dei(=時比率Di)は0となる。
このように時比率Diを決定することで、高精度に電圧バラツキを低減でき、かつ抵抗器23の過剰な発熱可能性を低減することが可能となる。その結果、任意の蓄電素子11に高電圧が印加され続ける可能性が低減されるので、蓄電素子11の長寿命化が図れるとともに、任意の抵抗器23が過熱状態となる可能性も低減されるので、蓄電装置全体の長寿命化が可能となる。
次に、図3の時比率Diにより、上記した2個の蓄電素子11の両端電圧Viが実際にどのように経時変化するのかを図4に示す。なお、図4において、下側の特性は最小エネルギ幅Eminを有する蓄電素子11の両端電圧Viの経時特性を、上側の特性はエネルギ幅Ei(>Emin)を有する蓄電素子11の両端電圧Viの経時特性を、それぞれ示す。従って、ここでは上側の特性を有する蓄電素子11のスイッチ25が図3に示した時比率Diの経時特性により制御される。なお、抵抗器23の初期温度は25℃とする。
図4より、時刻t=0秒で約3%あった両端電圧Viの差が蓄電部13の充電とともに小さくなり、時刻t=21.5秒でほぼ一致する。従って、本実施の形態1の動作によって電圧バランスが取れることがわかる。なお、前記初期温度が25℃であるので、図4における時比率Diはエネルギ準拠時比率Deiと等しく決定されている。
次に、このような蓄電装置の電圧バランスを取るためのスイッチ25のオンオフ動作について、図5のフローチャートを用いて説明する。なお、図5のフローチャートは制御回路27に内蔵された前記マイクロコンピュータのメインルーチン(図示せず)から電圧バランスを取るために実行されるサブルーチンとして示す。また、エネルギ幅Eiを求めるために、図5のフローチャートを実行する時、全てのスイッチ25はオフになっている。
制御回路27の前記マイクロコンピュータは蓄電部13の充電中に電圧バランスを取るために図5のサブルーチンを実行する。これにより、制御回路27は各蓄電素子11の測定期間前両端電圧Vi1を各電圧検出回路19から読み込む(ステップ番号S10)。次に、測定期間tmが経過したか否かを判断する(S20)。ここで、測定期間tm(=0.1秒)はS10の動作が完了した時点から制御回路27に内蔵されたカウンタ(図示せず)により計測される。もし、測定期間tmが経過していなければ(S20のNo)、S20に戻り測定期間tmが経過するまで待機する。測定期間tmが経過すれば(S20のYes)、制御回路27は各蓄電素子11の測定期間後両端電圧Vi2を各電圧検出回路19から読み込む(S21)。これにより、測定期間tmの最初に測定期間前両端電圧Vi1が、測定期間tmの最後に測定期間後両端電圧Vi2が、それぞれ求められたことになる。ここで、正確にはS20のループで測定期間tmから測定期間前両端電圧Vi1と測定期間後両端電圧Vi2の測定時間(S10とS21の動作時間)を差し引いた残り期間をカウンタで計測すべきであるが、上記したように前記測定時間は測定期間tmに比べ極めて短く無視できるので、S20のループは測定期間tmそのものをカウンタで計測している。従って、前記測定時間が測定期間tmに対して無視できない場合は、S20のループで前記残り期間に対してカウンタで計測を行なえばよい。いずれの場合もS10からS21までの動作により、測定期間tmの最初と最後にそれぞれ測定期間前両端電圧Vi1と測定期間後両端電圧Vi2が求められることになる。
このようにして、測定期間前両端電圧Vi1と測定期間後両端電圧Vi2が求められたので、制御回路27は前記メモリにあらかじめ記憶された各蓄電素子11の容量値Ciとともに、(9)式を用いて各蓄電素子11のエネルギ幅Eiを求める(S23)。次に、得られたエネルギ幅Eiの中で最小エネルギ幅Eminを求める(S25)。その後、前記メモリに設けられた変数iに1を代入する(S27)。ここで、この動作をi=1と記載する。なお、判断を除く動作において、例えばi=1と記載した場合は、右辺の数値や演算結果を左辺の変数に代入するものとして定義する。
次に、制御回路27はi番目の蓄電素子11におけるエネルギ幅Eiの最小エネルギ幅Eminとの充電エネルギ差ΔEciを(10)式より求める(S29)。次に、充電エネルギ差ΔEciが実質的に0であるか否かを判断する(S31)。もし、充電エネルギ差ΔEciが実質的に0であれば(S31のYes)、上記したように電圧バランスを取る必要がないので、スイッチ25をオフのままとするために時比率Diに0を代入する(S33)。なお、時比率Diはエネルギ準拠時比率Deiと温度準拠時比率Dtiのうち小さい方を選択するのであるが、S31でYesの場合は電圧バランスを取る必要がないことが明確であるため、時比率Diは最小値である0と決定される。従って、S33において、エネルギ準拠時比率Deiや温度準拠時比率Dtiを求めることなく時比率Diが0と決定される。その後、後述するS53にジャンプする。
一方、充電エネルギ差ΔEciが実質的に0でなければ(S31のNo)、調整目標抵抗値Raiを(11)式より求める(S35)。次に、制御回路27はi番目の温度センサ26の出力から測定期間tmの後の温度Tiを読み込み(S37)、実抵抗値Riを(6)式により温度補正して求める(S38)。なお、(6)式の基準温度Ts(=25℃)における各抵抗器23の実抵抗値Rsはそれぞれ前記メモリに記憶されている。
次に、制御回路27はエネルギ準拠時比率Deiを(12)式より求める(S39)。その後、制御回路27はS21で求めた測定期間後両端電圧Vi2を両端電圧Viとし、S37で求めた温度Tiとともに、温度準拠時比率Dtiとの相関関係(図2、(8)式)から温度準拠時比率Dtiを求める(S41)。
以上に述べたS39とS41から、それぞれエネルギ準拠時比率Deiと温度準拠時比率Dtiが求められたので、制御回路27は温度準拠時比率Dtiがエネルギ準拠時比率Deiより大きいか否かを判断する(S43)。もし、温度準拠時比率Dtiがエネルギ準拠時比率Deiより大きければ(S43のYes)、制御回路27は両者のうち小さい方であるエネルギ準拠時比率Deiを時比率Diに代入する(S45)。その後、後述するS49へジャンプする。
一方、温度準拠時比率Dtiがエネルギ準拠時比率Dei以下であれば(S43のNo)、制御回路27は両者のうち小さい方である温度準拠時比率Dtiを時比率Diに代入する(S47)。
このようなS45、またはS47の動作により時比率Diが決定されたので、次に制御回路27は求めた時比率Diが1より大きいか否かを判断する(S49)。もし、時比率Diが1以下であれば(S49のNo)、時比率Diはその値で決定されるため、後述するS53にジャンプする。一方、時比率Diが1より大きければ(S49のYes)、i番目の蓄電素子11に接続されたスイッチ25(以下、i番目のスイッチ25という)を常にオンにするために時比率Diに1を代入する(S51)。
次に、制御回路27はS33の後、S49のNo、およびS51の後のいずれの場合も決定された時比率Diでi番目のスイッチ25のオンオフ制御を行なう(S53)。具体的には時比率Diのオンオフ信号SWiをi番目のスイッチ25に出力する。これにより、i番目のスイッチ25は時比率Diでオンオフ動作を行ない、充電電流の一部を抵抗器23に流すことで充電エネルギ差ΔEciを小さくするように制御する。なお、オンオフ信号SWiは次に出力すべきオンオフ信号SWiが決定されるまで、現在の時比率Diで出力し続ける構成としている。
次に、制御回路27は変数iに1を加えて更新し(S55)、変数iがn+1(nは蓄電素子11の直列個数)と等しいか否かを判断する(S57)。もし、等しくなければ(S57のNo)、次の蓄電素子11に対するスイッチ25の時比率Diを求めるためにS29に戻る。
一方、変数iがn+1と等しければ(S57のYes)、全ての蓄電素子11に対するスイッチ25の時比率Diが決まり、オンオフ制御が行なわれている状態であるので、電圧バランスを取るための調整期間tb(=0.1秒)が経過したか否かを判断する(S59)。なお、調整期間tbの計測は測定期間tmの計測の場合と同様に、S57でYesと判断された時点から前記カウンタにより行なわれる。もし、調整期間tbが経過していなければ(S59のNo)、S59に戻り調整期間tbが経過するまで待機する。調整期間tbが経過すれば(S59のYes)、制御回路27は全スイッチ25をオフにするようにオンオフ信号SWiを出力する(S61)。これにより、電圧バランスの調整が一旦停止する。その後、図5のサブルーチンを終了し、前記メインルーチンに戻る。前記メインルーチンは再び図5のサブルーチンを実行する動作を繰り返す。このような動作により、抵抗器23の過剰な発熱を抑制しつつ電圧バランスを取ることができる。
なお、蓄電部13を放電する場合については、バランス回路21による両端電圧Viの調整が下げる方向のみとなるため、充電時とは異なり放電により減少したエネルギ幅Eiが最大の蓄電素子11に合わせる必要がある。従って、(9)式で各エネルギ幅Eiを求めた後に、制御回路27は最大エネルギ幅Emaxを求める。これにより、放電エネルギ差ΔEdiは(10)式に対して(13)式により求める。
ΔEdi=Emax−Ei (13)
上記以外の動作は充電時と同じであるが、(11)式のΔEciはΔEdiとなる。これらより、放電時の場合は各エネルギ幅Eiと、それらの最大エネルギ幅Emaxとの放電エネルギ差ΔEdiから調整目標抵抗値Raiを求め、エネルギ準拠時比率Deiを決定することになる。
なお、本実施の形態1において蓄電部13が充電されるか放電されるかは前記外部制御回路からのデータ信号dataにより制御回路27が判断する構成としている。また、温度準拠時比率Dtiは抵抗器23の温度Tiと両端電圧Vi(図5では測定期間後両端電圧Vi2)によって求められるので、充電時も放電時も同様に求められる。
以上の構成、動作により、抵抗器23の過剰な発熱可能性を低減しつつ高精度に電圧バラツキが低減可能な長寿命の蓄電装置を実現できる。
なお、本実施の形態1では、測定期間tmと調整期間tbをいずれも0.1秒と等しく設定しているが、これは測定期間tmを調整期間tbよりも短く設定するようにしてもよい。この場合、調整期間tbが長くなるので、より早く電圧バランスを取ることができる。但し、車両用の蓄電装置として使用する場合のように充放電頻度が多い場合は調整期間tbを長くすると、最新の充放電特性に応じた調整目標抵抗値Raiが求められず、エネルギ準拠時比率Deiの精度がかえって悪くなることがある。さらに、調整期間tbが長いと、充放電頻度が多いために抵抗器23の温度Tiが過昇温に至っても、それをタイムリーに検出できなくなる可能性もある。従って、例えば車両用では本実施の形態1のように測定期間tmと調整期間tbを等しくしてタイムリーに時比率Diを求める構成とし、非常用電源のように安定した温度環境下や充放電環境下の用途では測定期間tmを調整期間tbよりも短くする設定を適用すればよい。
また、本実施の形態1では、蓄電部13の充電時には充電エネルギ差ΔEciを、放電時には放電エネルギ差ΔEdiを、それぞれ求めて調整目標抵抗値Raiを計算し、エネルギ準拠時比率Deiを決定しているが、これは充放電時の両方でエネルギ準拠時比率Deiを決定する構成に限定されるものではなく、充電時のみ、または放電時のみにエネルギ準拠時比率Deiを求めて電圧バランスを取る構成でもよい。この場合はエネルギ準拠時比率Deiを求めた時にのみ温度準拠時比率Dtiを求め、両者の内、小さい方を時比率Diとして決定する。このような動作により、充電時、または放電時のみに電圧バランスを取る機会が限定されるものの、例えば非常用の蓄電装置のように充放電頻度が少ない用途ではいずれかの機会でもよい。従って、充電エネルギ差ΔEci、および、放電エネルギ差ΔEdiの少なくとも一方から調整目標抵抗値Raiを計算してエネルギ準拠時比率Deiを求めればよい。
(実施の形態2)
図6は本発明の実施の形態2における蓄電装置のブロック回路図である。図7は本発明の実施の形態2における蓄電装置のスイッチのオンオフ動作を行うフローチャートである。なお、図6において太線は電力系配線を、細線は信号系配線を、それぞれ示す。
図6における蓄電装置の構成において、図1と同じ構成要素には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。すなわち、本実施の形態2における特徴となる構成は次の通りである。
1)蓄電部13に流れる電流Iを検出する電流検出回路31を備えた。なお、電流検出回路31は蓄電部13と電気的に直列接続されるとともに、制御回路27とも信号系配線により電気的に接続される。従って、電流検出回路31は電流Iを検出して制御回路27に出力する機能を有する。
2)蓄電部13の温度を検出する蓄電部温度センサ33を備えた。なお、蓄電部温度センサ33で検出された温度を蓄電部温度Tと呼ぶ。また、蓄電部温度センサ33は蓄電部13の内部に設けられ、蓄電素子11の近傍に配されている。蓄電部温度センサ33は制御回路27と信号系配線により電気的に接続される。従って、蓄電部温度センサ33は蓄電部温度Tを検出して制御回路27に出力する機能を有する。
ここで、蓄電部温度センサ33としては蓄電部温度Tに対する感度が高いサーミスタを用いた。なお、蓄電部温度センサ33は前記サーミスタに限らず、熱電対や白金測温体、焦電センサなど蓄電部温度Tを電気信号に変換できるものであればよい。
次に、このような蓄電装置の動作について図7のフローチャートを用いて説明する。なお、図7も図5と同様に前記メインルーチンから実行されるサブルーチンとして記載した。さらに、図7において、図5の動作と同じ部分には同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
制御回路27は前記メインルーチンから図7のサブルーチンを実行すると、まず電流検出回路31より測定期間tmの直前の電流(以下、測定期間前電流I1という)を読み込む(S71)。次に、測定期間前電流I1が実質的に0であるか否かを判断する(S73)。ここで、実質的に0であるとは、電流検出回路31の測定誤差範囲内で電流Iが0であると以下定義する。
もし、測定期間前電流I1が実質的に0であれば(S73のYes)、蓄電部13は充放電されていないことになる。従って、エネルギ幅Eiを求めることができないので電圧バラツキの低減もできないことになる。そこで、この場合は時比率Diを求める動作を行なわず、かつオンオフ制御されているスイッチ25を全てオフにするために、図5で説明したS61へジャンプする。これにより、非充放電時は全スイッチ25をオフにした後、図7のサブルーチンを終了し、前記メインルーチンに戻る。なお、前記メインルーチンは図7のサブルーチンを繰り返し実行するので、蓄電部13の充放電が開始されれば、電圧バランス動作を行なうことができる。このように、蓄電装置内に電流検出回路31を内蔵し直接電流Iを読み込む構成としたことにより、図7のサブルーチンを実行するだけで充放電状態がわかるので、前記メインルーチンが前記外部制御回路と充放電状態の交信を行なう必要がなくなり、動作負担が軽減される。
ここで、S73に戻り、測定期間前電流I1が実質的に0でなければ(S73のNo)、蓄電部13は充放電されているので、次に制御回路27は各蓄電素子11の測定期間前両端電圧Vi1を各電圧検出回路19から読み込み(S75)、測定期間tmが経過したか否かを判断する(S77)。ここで、測定期間tm(=0.1秒)はS75の動作が完了した時点から前記カウンタにより計測される。これは、実施の形態1で述べたように、両端電圧Viの前記測定時間が測定期間tmに対して極めて短く、前記測定時間を無視しているためである。従って、S77の動作のみで測定期間tmを計測している。なお、同様に電流Iの測定時間も両端電圧Viの前記測定時間と同様に極めて短いので、測定期間tmの最初に測定した測定期間前電流I1の測定時間(S71の動作時間)と、測定期間tmの最後に測定した測定期間後電流I2の測定時間(後述するS79の動作時間)についても無視している。
もし、測定期間tmが経過していなければ(S77のNo)、S77に戻り測定期間tmが経過するまで待機する。測定期間tmが経過すれば(S77のYes)、制御回路27は電流検出回路31より測定期間tmの直後の電流(以下、測定期間後電流I2という)を読み込む(S79)。次に、測定期間後電流I2が実質的に0であるか否かを判断する(S81)。もし、測定期間後電流I2が実質的に0であれば(S81のYes)、測定期間tmの経過中に蓄電部13の充放電が停止したことになる。この場合、エネルギ差Eiを求めると測定期間tmの間でいつ充放電が停止したかによって値が変動し、そのような誤差を含む値で時比率Diを求めるとかえって電圧バラツキが拡大する可能性がある。従って、本実施の形態2では測定期間tmの間に充放電が停止した場合は時比率Diを求める動作を行なわず、かつオンオフ制御されているスイッチ25を全てオフにするために、図5で説明したS61へジャンプする。これにより、非充放電時は全スイッチ25をオフにした後、図7のサブルーチンを終了し、前記メインルーチンに戻る。このような動作により、さらなる高精度な電圧バラツキの低減が可能となる。
ここで、S81に戻り、測定期間後電流I2が実質的に0でなければ(S81のNo)、次に制御回路27は測定期間前電流I1の正負の符号と測定期間後電流I2の正負の符号が等しいか否かを判断する(S83)。ここで、電流Iにおける正の符号とは蓄電部13が充電される方向に電流Iが流れている場合であると定義する。従って、放電時は電流Iの符号は負となる。もし、符号が等しくなければ(S83のNo)、電流Iは測定期間tmの間に充電と放電が切り替わったことになる。この場合も、S81の場合と同様に、測定期間tmの間でいつ充放電が切り替わったかによってエネルギ差Eiの値が変動し、時比率Diの誤差が大きくなる。従って、本実施の形態2では測定期間tmの間に充放電が切り替わった場合は時比率Diを求める動作を行なわず、かつオンオフ制御されているスイッチ25を全てオフにするために、図5で説明したS61へジャンプする。これにより、制御回路27は全スイッチ25をオフにした後、図7のサブルーチンを終了し、前記メインルーチンに戻る。このような動作によっても、さらなる高精度な電圧バラツキの低減が可能となる。
以上の測定期間前電流I1と測定期間後電流I2の検出による動作をまとめると、これらの電流I1、I2の少なくともいずれか一方が実質的に0であるか、または相互に符号が異なる場合は、各スイッチ25をオフにするようにしている。これにより、誤差が大きくなる可能性がある時比率Diを求めないので、さらに高精度に電圧バラツキの低減を行なうことが可能となる。
なお、実施の形態1では上記したように充電または放電の状態をデータ信号dataにより前記外部制御回路から送信されているが、測定期間tmの間で充放電が停止したり切り替わったりした場合にも、前記外部制御回路からデータ信号dataが送信される。これを受けると、制御回路27は割り込み処理により図5のS61に相当する動作を行なうよう制御している。これに対し、本実施の形態2では上記したような複雑な制御を行なわなくても遅延なく高精度に電圧バラツキの低減ができるという特徴を有する。
ここで、S83に戻り、測定期間前電流I1と測定期間後電流I2の符号が互いに等しければ(S83のYes)、次に制御回路27は各蓄電素子11の測定期間後両端電圧Vi2を各電圧検出回路19から読み込む(S85)。次に、測定期間前電流I1と測定期間後電流I2から平均電流Imを求める(S87)。ここまでで求められた測定期間前両端電圧Vi1、測定期間後両端電圧Vi2および平均電流Imと、測定期間tmとから、各蓄電素子11の容量値Ciをそれぞれ求める(S89)。なお、容量値Ciは
Ci=Im・tm/|Vi2−Vi1| (14)
より求めることができる。このようにして容量値Ciを図7のサブルーチンが実行される都度、計算することにより、実施の形態1のように前記メモリに記憶した初期(新品時)の容量値Ciを用いる場合に比べ、劣化等によりゆっくりと変化した後の現在の容量値Ciを求めることができるので、時比率Diの高精度化が可能となる。従って、この目的のためにも電流検出回路31により電流Iを求める構成としている。
次に、制御回路27は蓄電部温度センサ33から現在の蓄電部温度Tを読み込み各容量値Ciを温度補正する(S91)。これは、容量値Ciが蓄電部温度Tによっても変化するためである。なお、容量値Ciの温度特性は蓄電素子11の新品時に各々測定され、基準温度(例えば25℃)に対する温度変化率として前記メモリに記憶してある。従って、S89で求めた容量値Ciと、現在の蓄電部温度Tから得られる温度変化率とから、現在の蓄電部温度Tにおける容量値Ciを求めることができる。
次に、制御回路27は(9)式を用いて各蓄電素子11のエネルギ幅Eiを求める(S93)。その後、平均電流Imが0より大きいか否かを判断する(S95)。もし、平均電流Imが0より大きければ(S95のYes)、蓄電部13は充電中であるので、図5と同様に各エネルギ幅Eiの内の最小エネルギ幅Eminを求め、変数である最大最小幅Ebsに代入する(S97)。その後、後述するS101にジャンプする。一方、平均電流Imが0より大きくなければ(S95のNo)、蓄電部13は放電中であるので、各エネルギ幅Eiの内の最大エネルギ幅Emaxを求め最大最小幅Ebsに代入する(S99)。
S97およびS99の後、制御回路27は変数iに1を代入し(S101)、i番目の蓄電素子11におけるエネルギ幅Eiの最大最小幅Ebsとのエネルギ差ΔEiを求める(S103)。ここで、エネルギ差ΔEiを求める際に、充電時には(10)式を、放電時には(13)式を用いるのであるが、本実施の形態2では電流検出回路31の出力から充電、または放電が判別できるので、本来は実施の形態1で述べたように充電エネルギ差ΔEciを求める際には(10)式を、放電エネルギ差ΔEdiを求める際には(13)式を、それぞれ用いるのであるが、ここでは制御を簡略化するために、(15)式によりエネルギ差ΔEiを求めている。
ΔEi=|Ei−Ebs| (15)
ここで、最大最小幅Ebsは、充電時には最小エネルギ幅Eminが、放電時には最大エネルギ幅Emaxが、それぞれ代入されるので、この最大最小幅Ebsとエネルギ幅Eiとの差の絶対値を求めれば、(10)式や(13)式と同じ計算をしていることになり、エネルギ差ΔEiが求められる。なお、実施の形態2では(15)式によりエネルギ差ΔEiが求められるので、充電エネルギ差ΔEciと放電エネルギ差ΔEdiを総称してエネルギ差ΔEiと呼ぶ。
こうしてエネルギ差ΔEiを求めた後の動作は図5のS31以降と全く同じであるため、詳細な説明を省略する。但し、図7のS31、S35では図5のS31、S35におけるΔEciをΔEiに変更している。
以上の構成、動作により、両端電圧Viの変化と容量値Ciを考慮し、さらに電流Iを求めて蓄電部13の充放電状態を考慮するとともに、電流Iを基に容量値Ciを求め蓄電部温度Tで補正して時比率Diを求めているので、さらなる高精度な電圧バラツキ低減が可能な蓄電装置を実現できる。
なお、本実施の形態2では電流検出回路31と蓄電部温度センサ33を同時に設けた構成について説明したが、これはいずれか一方のみを有するようにしてもよい。この場合、例えば比較的充放電頻度が多い車両用途であっても、蓄電装置が車室内など温度変化の少ない環境に設置されていれば、電流検出回路31のみを設ける構成としてもよい。また、例えば比較的充放電頻度が少ない非常時のバックアップ用途(非常用電源)であっても、蓄電装置が屋外に近い環境に設置され、1日の間、あるいは季節による温度変化が大きい場合は、蓄電部温度センサ33のみを設ける構成としてもよい。このように、用途や使用環境に応じて適宜、電流検出回路31と蓄電部温度センサ33の要、不要をそれぞれ選択すればよいが、本実施の形態2のように両方を同時に設ける構成が最も高精度に電圧バラツキを低減できる。
また、本実施の形態2においても、実施の形態1と同様に測定期間tmと調整期間tbをそれぞれ0.1秒と等しく設定しているが、これらは測定期間tmが調整期間tbよりも短く設定するようにしてもよい。これにより、実施の形態1で述べたように調整期間tbが長くなるので、より早く電圧バランスを取ることができ、特に前記非常用電源等の安定した充放電環境下の用途に好適である。
また、本実施の形態1、2では測定期間tmを0.1秒としているが、この値に限定されるものではなく、例えば充放電頻度が極めて速い場合には測定期間tmをより短くして時比率Diをさらにタイムリーに求めるようにしてもよいし、充放電頻度がそれほど多くない場合は測定期間tmを長くして時比率Diの精度をさらに高めるようにしてもよい。このように、前記蓄電装置の用途や仕様に応じて測定期間tmを適宜決定すればよい。同様に、調整期間tbも0.1秒に限定されるものではなく、測定期間tmや前記蓄電装置の用途、仕様に応じて適宜決定すればよい。
また、本実施の形態1、2では蓄電装置を車両用として用いたが、これは上記したとおり非常用電源として用いてもよい。
また、本実施の形態1、2では、蓄電素子11として電気二重層キャパシタを用いたが、これは電気化学キャパシタ等の他のキャパシタであってもよい。