以下、本発明を車両用シート装置に具体化した第1の実施形態について図面に基づいて説明する。図1および図2において、車両用シート装置10は、座面を形成するシートクッション15と、背もたれ面を形成するシートバック16と、シートクッション15を車両フロア12に対し前後方向にスライド可能とするシートスライドアジャスタ装置11と、車両フロア12に対して上下方向に昇降可能とする本発明に係るシートリフタ装置13と、を備えている。なお、本実施形態では、車両シート10の前後左右上下の方向は、この車両シート10が搭載された自動車の前後左右上下の方向と一致しており、図1に示す通りである。
シートクッション15は、図略のシートクッションフレームと、シートクッションフレーム上にばねを介して載置される図略のパッドと、これらを覆う図略の表皮材等によって構成されている。
シートバック16は、リクライニング装置17により、シートクッション15に対して車両前後方向に傾動可能に、かつ所定の調整角度位置で固定保持可能に、シートクッション15の後部に取付けられている。
シートスライドアジャスタ装置11は、図2に示すように、左右一対のロアレール21およびアッパレール22を備え、ロアレール21は車両前後方向(シート前後方向)に長
尺状に延在して並列配置され断面略U字を形成し車両フロア12に固定されている。一対のアッパレール22は車両前後方向に長尺状に延在され断面略逆T字状を呈し、一対のロアレール21上に車両前後方向に摺動し位置調整自在に係合されている。アッパレール22は上縁が連結された2枚の板部材22b、22cによって形成されている。板部材22b、22cは上方で若干の隙間を持って向き合い下方が大きな空間となるように形成されている。これによって、車両用シート装置10は、車両前後方向にスライド可能に、かつ所定の前後調整位置で図略のロック機構により固定保持可能となっている。なお、本発明においては、車両用シート装置10を前方の調整位置に固定する乗員は体格が小さく、体重は軽いと想定している。また車両用シート装置10を後方に移動し、後方の調整位置に固定する乗員は体格が大きく、体重も体格に比例して重いと想定している。
図2に示すように、シートリフタ装置13は、シートクッション15の左右に固定される高さ位置が調整自在にそれぞれ設けられる一対のロアアーム30と、一対のロアアーム30と一対のアッパレール22とを連結する左右一対の前側リンク部材31および左右一対の後側リンク部材32と、を備えている。またシートリフタ装置13は、ロアアーム30を上方へ付勢する付勢手段としての引張りコイルばね33を備えている。さらにシートリフタ装置13は、左右一対のロアアーム30同士を連結するトルクロッド36と、引張りコイルばね33による上方への付勢力がシートクッション15がアッパレール22とともに後方に位置するほど大きくなるようにアッパレール22に支持された引張りコイルばね33の一端を係止する第一係止部38の位置を変更する変更手段34と、を備えている。
一対のロアアーム30は、シートクッション15を下方から支持する板部材であり、アッパレール22に対して上下に移動し高さ位置が調整自在となっている。左右一対の前側および後側リンク部材31、32の各下端側は、一対のアッパレール22の前後に回動可能に連結され、一対の前側リンク部材31の上端側は、一対のロアアーム30の前部に回動可能に連結されている。そして前側リンク部材31の上端部同士は連結ロッド41によって回動可能に連結されている。また、左右一対の後側リンク部材32の上端側は、一対のロアアーム30の後部に形成された貫通孔30aを回転可能に貫通するパイプ材からなるトルクロッド36の両端部にそれぞれ一体的に結合されている。
図3に示すように一対のアッパレール22には、引張りコイルばね33の一端を係止する第一係止部38を備えた一対のL字状のアームレバー35が回動可能に支持されている。アームレバー35は変更手段34を構成し、図4に示すようにアッパレール22を構成する板部材22b、22c間の隙間部に配置されている。
各アームレバー35はL字の一端部にアッパレール22に回動可能に支持される回動軸35aを有し、L字の他端部に係合部35cを有している。係合部35cは変更手段34を構成する後述する傾斜面23と係合し摺動される部位であり、下端部がシートクッション15方向に向って直角に屈曲されている。屈曲された係合部35cの上面は傾斜面23と係合して摺動する際、摩擦を極力小さくするために前後方向に亘って所定Rで形成され接触面積が小さくなるようになっている。
また各アームレバー35はL字の屈曲部に第一係止部38を有している。第一係止部38は、円柱形状を呈し各アームレバー35のシートクッション15側の表面からシートクッション15方向に向って夫々突設されている。また、第一係止部38には、円柱形状の外周に該円柱の軸心と直交する係止溝38aが刻設されている。そして係止溝38aに引張りコイルばね33の一端が係止され、該一端が第一係止部38の軸心方向へずれて移動することを規制している。なお、係止溝38aを設けず、例えば第一係止部38の先端部に鍔を設けて引張りコイルばね33の一端の移動防止としても同様の効果は得られる。
アッパレール22の板部材22b、22cにおいて、第一係止部38が作動する部分には規制孔22aが左右に亘って貫通されている。図3に示すように規制孔22aはアームレバー35の回動軸35aを中心に描かれる大径のR1及び小径のR2の円弧と、両円弧を上下で繋ぐR部によって形成されている。そして規制孔22aの上下のR部と第一係止部38の外周面とを当接させることによって第一係止部38の上下方向への移動を規制している。
L字状のアームレバー35は図3に示す様に係合部35cと、第一係止部38とが、第一係止部38を上方にして上下に配置されている。そして規制孔22aの略中間点から後方に所定量離れた位置に回動軸35aが配置されている。このように配置されるので、アームレバー35が回動軸35aを中心に回転された場合、係合部35cの上下動に同期して第一係止部38が係合部35cと略同量だけ上下動する。
図2、図3に示す様に、第二係止部39はトルクロッド36の両端近傍に形成され、引張りコイルばね33の他端が係止されている。第二係止部39はトルクロッド36の中央部の軸径より若干小さな軸径で形成されている。これにより引張りコイルばね33の他端が係止されたとき、トルクロッド36の中央部に向ってずれ難いようになっている。なお、第二係止部39はトルクロッド36の中央部と同じ軸径としてもよい。
変更手段34を構成する図3に示すテーパブラケット24は、左右一対のロアレール21上に該ロアレール21の長手方向と平行に配設されている。テーパブラケット24は、傾斜部25を有している。そして傾斜部25の下面には前述した傾斜面23が設けられている。傾斜面23は前方から後方に向って上昇するように形成され、傾斜面23とアームレバー35の係合部35cの上面とが係合されている。
引張りコイルばね33は一端と他端とを第一係止部38と第二係止部39とに係止され、前後方向に引張り荷重Fを発生させる。そして引張り荷重Fの分力F1がロアアーム30、即ちロアアーム30が支持するシートクッション15を常に上方に付勢するよう構成されている。また引張りコイルばね33の引張り荷重によってアームレバー35は、回動軸35aを中心に図3において常に時計回りに付勢されるので、アームレバー35の係合部35cは上方へ引き上げられる。これにより傾斜面23とアームレバー35の係合部35cの上面との係合が解除されることはなく相互は離間しない。
なお、第1の実施形態においてはロアアーム30を常時上方に付勢するため、および傾斜面23とアームレバー35の係合部35cとの係合が解除されないためには、引張りコイルばね33のコイル部軸線33cが、アームレバー35の回動軸35a中心及び後側リンク部材32の回動軸32c中心よりも常に上方にあるよう各部を配置することとする。第一係止部38の上下方向の移動はアッパレール22に設けられた規制孔22aの上下のR部によって規制され、上記条件が満足されるように規制孔22aの下端のR部の位置が設定されている。また、第一係止部38の係止位置が上方であるほど、引張り荷重Fの分力F1は大きくなり上方への付勢力は大きくなるよう構成されている。
上記のように構成されるので車両用シート装置10がアッパレール22とともにロアレール21上を前後に移動すると、アームレバー35の係合部35cがロアレール21上に配設される傾斜面23と係合して摺動され、係合部35cは傾斜面23の傾斜にあわせて上下される。そしてアームレバー35の第一係止部38の位置が係合部35cに同期して上下に移動される。これにより引張り荷重Fの分力F1の大きさは車両用シート装置10が前方にあるときは小さくなり、後方にあるときは大きくなるように変化し、シートクッション15に付与される上方への付勢力の大きさも同様に変化する。
次に、シート高さの操作部について図2、図5、図6に基づいて説明する。一方である右側の後側リンク部材32は、後述する構成のセクタギヤ47を一体に設けた駆動リンク部材(32a)を構成しており、他方の後側リンク部材32は、トルクロッド36を介して従動される従動リンク部材(32b)を構成している。上記した前側および後側リンク部材31、32と、ロアアーム30と、アッパレール22とによって、4節リンク機構37(図2参照)が構成され、セクタギヤ47を設けた一方の後側リンク部材32(駆動リンク部材32a)の回動により、4節リンク機構37が作動されて、ロアアーム30が上下方向に移動されるようになっている。
ロアアーム30には、シート高さ操作部を構成するクラッチ機構40が装着され、このクラッチ機構40に操作部材としての操作レバー41が連結されている。クラッチ機構40は、図6に示すように、ロアアーム30に固定されるケース43を備え、ケース43内に、操作レバー41の操作によって回転可能な出力軸44が支持され、この出力軸44の一端にピニオンギヤ45が設けられている。上記した一方の後側リンク部材32(駆動リンク部材32a)には、セクタギヤ47が一体的に設けられ、セクタギヤ47の先端部にトルクロッド36を中心とした円弧状の歯部47aが形成され、この歯部47aにクラッチ機構40のピニオンギヤ45が噛合されている。
これにより、ピニオンギヤ45の回転によってセクタギヤ47が回動される。セクタギヤ47の回動により、駆動リンク部材32aが回動されるとともに、駆動リンク部材32aの回動がトルクロッド36を介して従動リンク部材32bに伝達され、上記した4節リンク機構37によりロアアーム30、が適宜の高さ位置に昇降される。
図5および図6において、セクタギヤ47には、トルクロッド36を中心とする円弧状の長穴50が形成され、この長穴50に遊嵌するストッパピン51の一端がロアアーム30およびクラッチ機構40のケース43を貫通してロアアーム30およびケース43に締結され、ストッパピン51によってセクタギヤ47の回動範囲が規制されるようになっている。ストッパピン51の他端は、ピニオンギヤ45の軸端を回転可能に軸承する軸受部52を有する押えブラケット53に締結されている。押えブラケット53は、ピニオンギヤ45を挟んでストッパピン51と反対側の2点で、ロアアーム30およびクラッチ機構40のケース43を貫通する連結ピン55、56によりロアアーム30およびケース43に一体的に連結されている。
また、クラッチ機構40は、操作レバー41の操作による正回転あるいは逆回転の入力を出力軸44(ピニオンギヤ45)に伝達する第1クラッチ部と、操作レバー41が操作された後に出力軸44の回動を規制する第2クラッチ部とを有する。第1クラッチ部は第1ローラ61あるいは第2ローラ62を介して出力軸44(ピニオンギヤ45)に力を伝達する。第2クラッチ部は、操作レバー41が図略のスプリングの付勢力によって元の位置(中立位置)に復帰された状態において、車両シート10の重量、及び乗員の体重による負荷によって出力軸44が回動されること阻止する。なお、第1クラッチ部、及び第2クラッチ部は公知のものであり、その詳細な構成については説明を省略する。
次に、上記した実施の形態における動作について、体格の小さな乗員と体格の大きな乗員が操作した場合に分けて図7、図8に基づいて説明する。まず平均より体格の小さな乗員が操作した場合について説明する。
図7に示すように、例えば平均的な体格の乗員用に調整された車両用シート装置10に体格の小さな乗員が乗車した場合、車両用シート装置10は、所定の位置からシートスライドアジャスタ装置11によってロアレール21上を前方に移動され、調整位置にてロッ
ク機構により固定保持される。
このとき、アームレバー35の係合部35cは、ロアレール21上に配設されるテーパブラケット24の傾斜面23と係合し摺動されて下降する。そして、アームレバー35の第一係止部38は係合部35cと同期し同様に下方に下降する。この状態において引張りコイルばね33の軸線33cと後側リンク部材32の回動軸32cとは近接し、シートクッション15を上方に付勢する力である引張り荷重Fの分力F1は小さくなっている。これによりシートクッション15を上方へ付勢する力は体格の小さな乗員に適切な小さな付勢力として付与されている。
そして、この状態で乗員が操作レバー41を、シートクッション15が上昇する方向に操作すると、クラッチ機構40によって出力軸44が一方向に回転される。これによって、ピニオンギヤ45に噛合するセクタギヤ47が駆動リンク部材32aとともにトルクロッド36を中心にして、図5において反時計回りに回動される。駆動リンク部材32aの作動はトルクロッド36を介して従動リンク部材32bに伝達され、4節リンク機構37によりロアアーム30とともにシートクッション15が上昇される。この場合、シートクッション15は乗員の体格、つまり体重に適した付勢力を付与されているため、乗員は強すぎる付勢力によって上方に跳ね上げられたりすることもなく、微妙な量の高さ位置調整もスムーズに行なうことができる。
また、乗員が操作レバー41を、シートクッション15が下降する方向に操作すると、クラッチ機構40によって出力軸44が前記と逆方向に回転され、ピニオンギヤ45に噛合するセクタギヤ47がトルクロッド36を中心にして、図5において時計回りに回動されることにより、ロアアーム30とともにシートクッション15が下降される。この場合においても、シートクッション15は乗員の体格、つまり体重に適した付勢力を付与されているため、乗員は余分な力を必要とすることなくシートクッション15をスムーズに下降させることができる。
次に平均より体格の大きな乗員が操作した場合について説明する。体格の大きな乗員が車両用シート装置10に乗車した場合、車両用シート装置10は、乗員によって所定の位置からシートスライドアジャスタ装置11によってロアレール21上を後方に移動され、調整位置にてロック機構により固定保持される(図8参照)。
このとき、アームレバー35の係合部35cは、ロアレール21上に配設されるテーパブラケット24の傾斜面23と係合し摺動されて上昇する。そして、アームレバー35の第一係止部38は係合部35cと同期し同様に上方に上昇する。この状態において引張りコイルばね33の軸線33cと後側リンク部材32の回動軸32cとは離間し、クッション15を上方に付勢する力である引張り荷重Fの分力F1は大きくなる。これによりシートクッション15を上方へ付勢する力は、体格の大きな乗員に適切な大きな付勢力として付与されている。
そして、この状態で乗員が操作レバー41を、シートクッション15が上昇する方向に操作すると、前述のようにシートクッション15が上昇される。この場合、シートクッション15は乗員の体格、つまり体重に適した大きな付勢力を付与されている。これにより乗員は必要以上の力を加えなくともシートクッション15を軽く上昇させることができスムーズに高さ調整が行なえる。
また、乗員が操作レバー41を、シートクッション15が下降する方向に操作すると、前述のようにシートクッション15が下降される。この場合においても、シートクッション15は乗員の体格、つまり体重に適した付勢力を付与されているため、シートクッショ
ン15は急激に下降することはなく、スムーズに高さ位置が調整できる。
上述から明らかなように、第1の実施形態によれば、体格が小さい乗員が自身の体格に合わせてシートクッション15の位置を前方に移動した場合、シートクッション15に付与される上方への付勢力を小さくできる。また体格が大きい乗員が自身の体格に合わせてシートクッション15の位置を後方に移動した時には、シートクッション15に付与される上方への付勢力を大きくできる。通常、体格が大きいほど体重が増す傾向にあるため、体重検知を別途行うことなく、体格のみの情報によって体重を想定しシートクッション15に付与される上方への付勢力を乗員の体重に対して適切な大きさになるよう簡易に調整できる。
また、第1の実施形態によれば、アームレバー35の係合部35cがテーパブラケット24の傾斜面23と係合して摺動し傾斜面23の斜面に合わせて上下動される。そしてアームレバー35の係合部35cと同期して第一係止部38の係止位置が上下動されシートクッション15を支持するロアアーム30への付勢力が調整される。このように非常に簡素な構成によって適切なシートクッション15への付勢力が設定でき、低コストにて対応できる。
さらに、第1の実施形態によれば、付勢手段として引張りコイルばね33が適用されている。引張りコイルばね33は、アッパレールに支持された第一係止部38を有するアームレバー35と、第二係止部39を有するロアアーム30との間に前後方向に延在されて配置される。そして第一係止部38と第二係止部39はロアレール21上を一体的に移動する。この配置状態において引張りコイルばね33の一方の支持点である第一係止部38のみが上下に移動されるので、前後に延在される引張りコイルばね33の取付け長さに大きな変化は生じない。これにより、引張りコイルばね33は大きな応力幅の環境で作動されることはなく、折損に対して高い信頼性が得られ、よって設計に対する自由度も高くなる。
次に第2の実施形態について図9、図10に基づいて説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態に対してアームレバーの係合部の形態のみが異なり、その他については同様であるため、変更点についてのみ説明し、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略する。また第1の実施形態と同様の部品については、同じ符号を付し説明する。なお、図9においては、シート高さの操作部が省略されているが、第1の実施形態と同様にシート高さの操作部は設けられており、シート高さ位置の調整は操作部を作動させることにより行なわれる。
第1の実施形態においては、アームレバー35の係合部35cは傾斜面23と係合した。しかし第2の実施形態においては、図9、図10に示すようにアームレバー65の係合部65cは、変更手段64を構成する傾斜溝66に係合されている。傾斜溝66は断面L字状のテーパブラケット68の垂直壁に貫設されている。傾斜溝66は第1の実施形態の傾斜面23と同様の傾斜角にて前方から後方に向って上昇している。なお、傾斜溝66は、第1の実施形態のテーパブラケット24に垂直壁を設け、該垂直壁に貫設してもよい。
アームレバー65は、L字の一端部にアッパレール22に回動可能に支持される回動軸65aを有し、L字の他端部に係合部65cを有している。係合部65cは摺動ピン67が突設され形成されている。そして摺動ピン67が変更手段64を構成する傾斜溝66内に係合され摺動ピン67の外周面と傾斜溝66内面とが摺動される。そして係合部65cの上下動に同期して第一係止部38が上下動し、第1の実施形態と同様にシートクッション15への上方への付勢力が調整される。
上記した第2の実施形態によれば、係合部65cが傾斜溝66に係合されているので、係合部65cが上方、または下方のいずれに付勢されても、係合部65cが傾斜溝66から離脱する虞はない。これにより信頼性が向上されるとともに引張りコイルばね33の配置等に対する設計の自由度も高くなる。
次に第3の実施形態について図11乃至図14に基づいて説明する。第3の実施形態は、第1、第2の実施形態に対して、付勢手段が異なる。第1、第2の実施形態においては、付勢手段として引張りコイルばねが適用されたが、第3の実施形態においては、付勢手段としてトーションバーが適用されている。よってトーションバーを適用することによって変更される部位のみについて説明し、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略する。また第1の実施形態と同様の部品については、同じ符号を付し説明する。なお、図11においては、シート高さの操作部が省略されているが、第1の実施形態と同様にシート高さの操作部は設けられており、シート高さ位置の調整は操作部を作動させることにより行なわれる。
トーションバー73は左右一対のアッパレール72に亘って軸部が延在されている。そして該軸部が左右一対のアッパレール72に刻設された各溝部72aの底面に回動自在に平行に支持されている。トーションバー73の一端は一方である右側のアッパレール72に支持された第一係止部に係止されている。またトーションバー73の他端は他方である左側のロアアーム70に設けられた第二係止部に係止されている。
第3の実施形態のシートリフタ装置83は、図11に示すように、シートクッション15の左右に固定される高さ位置が調整自在にそれぞれ設けられる一対のロアアーム70と、一対のロアアーム70と一対のアッパレール72とを連結する左右一対の前側リンク部材31および左右一対の後側リンク部材32と、を備えている。またシートリフタ装置83は、ロアアーム70を上方へ付勢する付勢手段として前述したトーションバー73を備えている。さらにシートリフタ装置83は、左右一対のロアアーム70同士を連結するトルクロッド36と、トーションバー73による上方への付勢力がシートクッション15がアッパレール72とともに後方に位置するほど大きくなるように、アッパレール72に支持されたトーションバー73の一端を係止する第一係止部78の位置を変更する変更手段74と、を備えている。
一方である右側のアッパレール72には、トーションバー73の一端を係止する第一係止部78を備えたL字のアームレバー75が回動可能に支持されている。アームレバー75は変更手段74を構成しアッパレール72を構成する板部材72b、72c間の隙間部に配置されている。アームレバー75は、L字の一辺が上方で略水平に配置され、L字の他辺がL字の一辺の後端部から下方に向って配置されている。
アームレバー75はL字の一辺の前端にアッパレール22に回動可能に支持される回動軸75aを有し、L字の他辺の下端部に係合部75cを有している。係合部75cは変更手段74を構成する後述する傾斜面26と係合し摺動される。係合部75cはシートクッション15方向に向って直角に屈曲されたのち下方に向けて直角に屈曲されている。そして屈曲された係合部75cの下面となる板側面部と傾斜面26とが係合されている。
アームレバー75はL字の屈曲部に、トーションバー73の一端を係止する第一係止部78を有している。第一係止部78は、アームレバー75のL字の屈曲部に上方から下方に向って所定量加工された溝である。
アッパレール72の板部材72b、72cにおいて、第一係止部78が作動する部分には規制孔72dが左右に亘って貫通されている。図13に示すように規制孔72dはアー
ムレバー75の回動軸75aを中心に描かれる大径のR1及び小径のR2の円弧と、両円弧を上下で繋ぐR部によって形成されている。そして規制孔72dの上下の各R部と第一係止部78に係止されるトーションバー73の一端とが当接されることによってトーションバー73の一端の上下方向の移動が規制されている。アームレバー75が上記のように配置されることにより、アームレバー75が回動軸75a回りに回転されたとき、係合部75cの上下動に同期して第一係止部78が係合部75cと略同量だけ上下動する。
第二係止部79は、他方である左側のロアアーム70に設けられている。トーションバー73の他端は、本実施形態においては軸部の左側端部から後方斜め上に直角に屈曲され、所定量延在した後、シートクッション15方向に向って直角に屈曲されている。そして最後に屈曲された部分の直線部がロアアーム70の下面に設けられた第二係止部79と当接して取付けられている。
なお、この状態は、トーションバー73が捻られていない図13に示すフリー状態から、一端を第一係止部78に固定し、他端を時計回りに捻って取付けた状態である。このときトーションバー73の軸部中心と第一係止部78とを結ぶ線分と、トーションバー73の軸部中心と第二係止部79とを結ぶ線分とが成す取付け角度はθ1となっている。これによりトーションバー73は取付け角θ1に見合った大きさの反発力F2によって第二係止部79を反時計回りにダイレクトに付勢しロアアーム70を上方に付勢している。なお、上記においてトーションバー73のフリー状態の他端の位置はロアアーム70に付与する付勢力の大きさに応じて決定される。
変更手段74を構成するテーパブラケット24は、一方である右側のロアレール21上に該ロアレール21の長手方向と平行に配設されている。テーパブラケット24は、傾斜部25を有している。傾斜部25の上面には傾斜面26が設けられている。傾斜面26は前方から後方に向って上昇するよう形成され、傾斜面26とアームレバー75の係合部75cの下面とが係合されている。
上記のように構成されることにより、トーションバー73の捻りに対する反発力F2によってロアアーム70、即ちロアアーム70が支持するシートクッション15は常に上方に付勢されている。また第一係止部78においては、トーションバー73の反発力F2によってアームレバー75の係合部75cが常に傾斜面26に押圧されている。これにより傾斜面26とアームレバー75の係合部75cの下面との係合が解除されることはなく相互は離間しない。そして図14に示すように車両用シート装置10がアッパレール72とともに後方に移動され、第一係止部78の係止位置が上方に移動されると、トーションバー73の取付け角度はθ2となる。取付け角度がθ2になるとトーションバー73の軸部の捻り量はさらに大きくなり、シートクッション15を上方へ付勢する力もさらに大きくなる。
以上から第1、第2の実施形態と同様に、車両用シート装置10がアッパレール72とともにロアレール21上を前後に移動されると、アームレバー75の係合部75cがロアレール21上に配設される傾斜面26と係合して摺動され、係合部75cは傾斜面26の傾斜にあわせて上下される。そしてアームレバー75の第一係止部78が係合部75cに同期して上下に移動される。これによりトーションバー73の捻り量の大きさは車両用シート装置10がロアレール21上の前方にあるときは小さく、後方にあるときは大きくなるように変化する。またシートクッション15に付与される上方への付勢力の大きさも、捻り量の大きさに比例して同様に変化する。
上記した第3の実施形態によれば、付勢手段としてトーションバー73が適用され、トーションバー73に付加したねじり力に対する反発力が、他端側の第二係止部を介してシ
ートクッション15を支持するロアアーム70に入力されシートクッション15が上方へ付勢される。このように、トーションバー73の反発力が分力ではなくダイレクトにロアアーム70に入力されるので、ロアアーム70への上方への付勢力の大きさは組付け精度の影響を受けにくい。
なお、第3の実施形態においては、一方である右側のロアレール21と、アッパレール72とに、テーパブラケット24と、アームレバー75と、トーションバー73の一端の第一係止部78とを設けた。そして他方である左側のロアアーム70にトーションバー73の他端の第二係止部79を設けた。しかしこれに限らず、テーパブラケット24等の各部材をそれぞれ左右逆に設けてもよい。
また、上記した実施の形態で述べたクラッチ機構40は、特にその構成を限定されるものではなく、上記したような機能を有するあらゆる構成のクラッチ機構を利用できるものである。