JP5421611B2 - 時効硬化型ばね用ステンレス鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、Niを必要最小限の含有量に抑制しつつ、300系ステンレス鋼板とほぼ同等のばね性、耐久性、耐食性等の特性を有し、300系ステンレス鋼板が適用されるばね用途に使用可能な時効硬化性に優れるばね用ステンレス鋼板に関する。
従来、ばね性が求められる用途には加工硬化型や析出硬化型高強度ステンレス鋼が使用されてきた。加工硬化型高強度ステンレス鋼としては、SUS301やSUS304の調質圧延材が使用されている。しかしながら、素材の硬さを高くするためには高度の冷間加工を必要とすることや、冷間加工状態での硬さが高いためプレスや曲げ加工等の製造段階において、スプリングバックや金型への負荷、磨耗が大きいことから製品寸法に難があることなど量産製造には適していない。
一方、析出硬化型ステンレス鋼としては、17−4PH鋼などが挙げられる。また、時効処理前の硬さが低く、打抜き加工性や成形加工性に優れた時効析出型のマルテンサイト系ステンレス鋼として、特許文献1および特許文献2に靭性や捩り特性を改善した鋼が掲示されているが、これらの鋼はマトリックスがマルテンサイト相であるため必ずしも曲げ加工面で満足できるものではない。
近年、以下の特許文献3−6に記される、いわゆる200系ステンレス鋼をベースとした鋼が、300系ステンレス鋼の代替材として提供されつつある。これらの鋼はNiに代わるオーステナイト形成元素として多くは約4%以上のMnを含有させ、Ni含有量を低減させてコスト節減を図る素材である。
一方、ばね用を上述した文献までの大量のMnを含有させずとも、Niを節減したオーステナイト系ステンレス鋼の技術も提示されている(特許文献7および8)。
特開昭60−33649号公報 特開平8−73931号公報 特開2006−111932号公報 特開2007−197806号公報 特開平11−241145号公報 特開平7一70700号公報 特公昭60−33186号公報 特開2006−22369号公報
4%以上のMnを含有する技術では、その製鋼、精錬の際に有害なMn酸化物の微細粒子が生成し、環境保全の観点から課題が多い。また、Mn含有量が高いことで表面品質が低下し、焼鈍酸洗性や光輝焼鈍などの生産性を損なう。従って、Niを低減したにも関わらず、これらの生産性低下により、その効果が総コストとの関連で相殺されてしまうという課題がある。一方、Mnを抑制したNi低減鋼である技術(特許文献7)では、高強度ばねとして必要な加工度が高いため、良好な曲げ加工性を得ることが困難である。
本発明者は、Niの使用量を制限でき、かつMnを多く配合することにより発生する問題を排除して、優れた耐久性、ばね性を付与するばね用のステンレス鋼板について検討した。その結果、成分規定範囲に加えて金属組織および時効処理条件を制御することにより達成し得ることを把握し、本発明に至った。
本発明はNiおよびMnを節減しつつも300系ステンレス鋼と同等の材料特性を有する時効硬化型ばね用ステンレス鋼板を提供するものである。なお本発明内でいうばねとは、鋼板より所定寸法に切り出され、他の加工は施されない板ばねから、曲げ、張り出し、絞り、ねじり、引き抜き、穴あけなどの加工を通じて成形される各種ばねに至るまでの広範な形状のものを指し、ガスケットや建築金物、ワッシャーも含む。
具体的には、質量%で、0.10%≦C+0.5N≦0.25%(但しC>0.05%、N>0.05%)、1.5<Si≦4.0%、0.5%≦Mn≦3.04%、P≦0.06%、S≦0.005%、0.5%≦Ni<5.0%、15.1%≦Cr≦19.0%、0.8%≦Cu≦3.5%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記(1)式で示されるオーステナイト安定度指標Md30が0〜80、下記(2)式で示される積層欠陥エネルギー生成指標SFEが0〜40未満となるように成分調整され、加工誘起マルテンサイト相を15〜50体積%、残部がオーステナイト相からなる複合組織を呈する鋼板を素材として成形加工され、その後時効処理が施されることにより達成される。
Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr・・・(1)
SFE=6.2Ni+18.6Cu+0.7Cr+3.2Mn−53・・・(2)
上記(1)〜(2)式の元素記号の箇所には質量%で表されたそれぞれの元素の含有値が代入される。
本発明のばね用時効硬化型ステンレス鋼板では、マルテンサイト相中にCuリッチ相が析出しており、また、任意の部位の表面硬さが450HV以上であることが望ましい。
本発明によれば、Ni含有量を5.0質量%未満に節減しつつも、Mn含有量の多量添加を回避し、優れた耐久性、ばね性、耐食性等を兼ね備えた時効硬化型ばね用ステンレス鋼板が提供される。この鋼板より製造されたばねは、素材が300系ステンレス鋼である高強度ばねに代替できる。したがって、本発明はコスト面および品質面でNi原料の高騰に対応し得るものである。
時効硬化能に及ぼすSi含有量の影響を示すグラフである。 時効硬化とSiおよびCu含有量の関係を示すグラフである。
本発明者らは、NiおよびMn含有量の少ないオーステナイト系ステンレス鋼板を素材としたばねについて優れた時効硬化性を得るべく検討し以下の知見を得るに至った。
まず、ばねとして優れた耐久性を発現させるために、その素材は優れた耐へたり性を有していることが前提となり、それは素材を高強度化することで達成される。オーステナイト系ステンレス鋼板をベースに高強度化を得る手段として最も有効なのは冷間圧延などの加工を付与してオーステナイトを加工硬化させるとともに、オーステナイトの一部を硬質な加工誘起マルテンサイトへ変態させる、いわゆる加工誘起変態塑性(TRIP)現象を利用することである。ばねへの成形工程でも加工ひずみが付与された部分ではTRIP現象により硬化し、このTRIP現象の起こりやすさはオーステナイト安定度により左右される。しかし、高強度化すればするほど耐へたり性は向上するものの、ばねとしての加工性、例えば後述の曲げ性は低下する。ばね素材として優れた加工性を維持しつつ、ばねとして良好な耐へたり性を得るうえで、オーステナイト安定度およびばね素材の加工誘起マルテンサイト量を調整する必要があることが明らかとなった。
曲げ性は引張試験などで評価される伸びとある程度相関があり、伸びにはTRIP現象と加工誘起マルテンサイトの強度を左右する固溶強化元素であるC、N含有量が深く関与していることが分かった。すなわち、オーステナイト安定度ならびにC,N含有量を適正範囲に調整することが必須とされた。ただし、これのみでは安定して優れた曲げ性が得られないことが分かった。そこで、本発明者らはさらに積層欠陥エネルギーの生成指標であるSFEを適正範囲に調整することで安定して良好な曲げ性が得られることが明らかとなった。この理由として、SFEが大きいとオーステナイトの加工硬化が小さくなるために加工誘起マルテンサイトとオーステナイトとの硬度差が大きくなること、逆にSFEが小さいとオーステナイトの加工硬化が大きくなるためにオーステナイトの延性が低下し、このいずれも曲げ性を低下させる要因であると推定される。
オーステナイト相の安定度およびSFEを適正範囲に調整し、ばね材として良好な製造性および加工性の維持を図った上で、ばね材として優れた時効硬化性を得るためには、Si、CuおよびN含有量を適正範囲に調整する必要があることが明らかとなった。
「成分元素」
以下、本発明鋼に含まれる合金成分ならびに含有範囲限定理由について説明する。
1)CおよびN
C、Nは加工誘起マルテンサイト(α’)相を固溶強化するために有用な元素である。本発明鋼においてはCに対するNの固溶強化の寄与はおおよそ半分である。成形加工によりα’相を生成させてSUS301並みの優れた強度を得るには、C、Nとも0.05質量%を越える含有量を確保しつつ、C質量%+0.5×N質量%(以下、C+0.5Nと略記)を0.10質量%以上とする必要がある。一方、C、Nの含有量が多くなりすぎると過度に硬質化し、加工性を阻害する要因となる。この傾向は(C+0.5N)が0.25質量%を越えると顕著に現れるため、これ以下となるように調整する必要がある。より好ましくは、C含有量が0.12質量%以下、N含有量が0.18質量%以下で調整されるのが良い。
2)Si
本発明では時効硬化型ばねとして優れたばね性を得る上でSiは最も重要な元素である。Siは、加工誘起マルテンサイト相の生成に起因する加工硬化を高め、さらにオーステナイト相の加工にともなう下部組織の発達を変化させオーステナイト相の加工硬化にも寄与する。この作用を有効に得るためには1.5質量%を超えるSi含有量を確保する必要がある。しかし、過剰添加は高温域でのδフェライト相の多量生成を招き、熱間加工性を阻害する。これらの弊害は、Si含有量が4.0質量%を超えた場合に顕著に現れるため、Si含有量は4.0質量%以下に制限される。なお、Si多量の含有による熱間加工性あるいは成形加工性低下は、Niなどの含有量あるいはγ安定度の調整によって回避し得る。
3)Mn
MnはNiに比べて安価で、Niの機能を代替できる有用なオーステナイト形成元素である。本発明においてその機能を活用するために0.5%以上のMn含有量を確保する必要がある。一方、Mn含有量が過剰となると、製鋼工程における環境保全の問題が生じやすくなる。また、表面性状に起因する生産性の低下ならびにMnSなどの介在物生成に起因する加工性の劣化を引き起こす要因となる。このため、Mn含有量は3.04質量%以下に制限される。
4)PおよびS
PおよびSは不可避的不純物として混入するが、その含有量は低いほど望ましく、加工性その他の材料特性や製造性に多大な悪影響を与えない範囲として、Pについては0.06質量%以下、Sは0.005質量%以下に規定した。
5)Ni
Niはオーステナイト系ステンレス鋼に必須の元素であるが、本発明ではコスト低減の観点からNi含有量を極力低く抑える成分設計を行っており、上限を5.0質量%未満に規定する。ただし、上記のC、N、Mnの範囲で良好な熱間加工性を得るには、例えば1200℃の加熱温度でγ単相となるようにNi量を含有させる必要があり、その下限は0.5質量%である。したがって、Ni含有量は0.5〜5.0質量%未満の範囲に規定した。
6)Cr
Crはステンレス鋼の耐食性を担保する不動態皮膜の形成に必須の元素である。本発明では、代替対象である従来の300系オーステナイト系ステンレス鋼に要求される耐食性を十分に確保する上で、Cr含有量の下限を15.1質量%以上とした。ただし、Crはフェライト生成元素であるため、過度のCr含有により熱延前加熱温度が(γ+δ)2相域となり、加熱後もδフェライトの多量生成を招き、熱間加工性を損なう要因となるため好ましくない。種々検討の結果、本発明ではオーステナイト生成元素の含有量の調整により19.0質量%までCrを含有させることができる。したがって、Cr含有量は15.1〜19.0質量%に規定される。
7)Cu
Cuはオーステナイト生成元素であることから、Cu含有量の増加に応じてNi含有量の設定自由度が拡大し、Niを抑制した成分設計が容易になる。また、時効処理時にはマルテンサイト中にCuリッチ相として析出する。このCuリッチ相はCuを60%以上含む第2相であり、ε−Cuと称されている。マルテンサイト相中でこのようなCuリッチ相の析出は顕著な高強度化をもたらす。この作用を有効に得るためには0.8質量%以上のCu含有量を確保する必要がある。ただし、3.5質量%を越える多量のCu含有は熱間加工性を阻害しやすい。このため、Cu含有量は0.8〜3.5質量%に規定される。
上記の成分以外は実質的にFeの組成をもつが、上記の成分に加えて、熱間加工性確保を目的としたB、Caの1種あるいは2種、耐食性向上を目的としたMoを含有することができる。ただし、B、Moは多量に含有された場合には熱間加工性を、Ca多量含有の場合には耐食性を低下させる要因となる。したがって、含有される場合には、BあるいはCaは総量で0.0070質量%以下、Moは1.5質量%以下で含有されるのが望ましい。
本発明鋼は、強度、延性、曲げ性、耐へたり性などの材料特性面において、SUS301と同等レベルを得る上で上記規定範囲に加えさらに(1)式で表されるオーステナイト安定度指標Md30が0〜80、(2)式で示される積層欠陥エネルギー生成指標SFEが0〜40未満となるように成分調整されることが望ましい。Md30が大きいほど軽度の冷延ひずみの付与でオーステナイトからα’相への変態が起こり易く、その後の時効処理によってα’相へCuリッチ相が析出することで発現する。本発明ではさらにSiを一定量含有させることで、加工誘起α’相が微細に生成し、高い転位密度となるために時効処理時のCuリッチ相の析出サイトが多くなること、ならびに転位が再配列する際に転位の相互作用を強める結果として、優れた時効硬化性が得られると考えられる。しかし、Md30が80を越えて大きくなると、γがあまりに不安定となりすぎるために曲げ加工途中でのα’生成量が多量となり割れが誘発されて曲げ性が劣化する。
本発明ではSFEに加えて、SiおよびN含有量を調整することで軽度の冷延ひずみでもオーステナイト相にて大きな加工硬化が得られ、その後の時効処理によって優れた時効硬化性を確保することができる。その理由として冷間圧延や曲げ加工等で導入される下部組織がSiおよびNの含有よりセル状の転位配列から、プラナー状もしくは一部がプラナー状の転位配列に変化し、オーステナイト相の加工硬化と時効時のひずみ時効硬化が有効に発現できるためと考えられる。ただし、SFEが40以上ではα’相とオーステナイト相との硬度差が大きくなり、曲げ加工時にはα’相/オーステナイト界面近傍でき裂が生じやすくため曲げ性が低下することや、また、オーステナイトの加工硬化が小さくなるために時効処理におけるひずみ時効の効果が十分得られない。また、SFEが0未満の場合にはオーステナイトの加工硬化が大きくなり過ぎるため延性低下が顕著に起こるようになる。
本発明では、ばねへの成形加工の前に加工誘起マルテンサイト相を15〜50体積%含有し、他はオーステナイト相となるように金属組織が調整される。この加工誘起マルテンサイトは、最終焼鈍後に行われる冷間あるいは温間での調質圧延や加工により導入される。本発明では、加工誘起マルテンサイトが15体積%以上となるようにひずみが付与されることで優れた時効硬化を発現するようになる。なお、オーステナイト、加工誘起マルテンサイト以外に2体積%以下のフェライトを含んでいてもよい。
以上のように、化学成分および金属組織が調整された本発明鋼に時効処理を施すことにより、ひずみ時効およびCuリッチ相の析出が起こるため、高強度化が図れる。このような効果は時効処理温度が400℃以上で顕著に現れる。一方、時効処理温度が500℃を超えるとひずみの回復やCuリッチ相の粗大化によりひずみ時効や析出強化の効果が小さくなるために、強度が急激に低下する。したがって、時効処理温度は400〜500℃に規定した。
本発明のステンレス鋼板は、一般的なオーステナイト系ステンレス鋼板の製造プロセスにより製造可能である。熱間圧延以降の冷間圧延および中間・仕上焼鈍、調質圧延を施すことにより、例えば板厚0.1〜3mmの調質圧延材とすることができる。その後、形状矯正が適宜実施されても良い。
(実施例1)
表1の組成をもつ鋼を溶製した。表1において、A1〜A7が本発明で規定する化学成分を有する発明対象素材、B1〜B3が比較素材、C1、C2は順に従来材であるSUS301、SUS304である。発明対象素材および比較素材については調質圧延後のマルテンサイト量を同程度にするためにMd30が同じになるよう成分調整を行った。なお、B1、B2およびB3はそれぞれSi含有量およびCu含有量が本発明で規定する範囲を外れる。
Figure 0005421611
本発明対象素材A1〜A7、比較素材B1〜B3、従来素材C1、C2について、冷延鋼板の材料特性調査を行った。各鋼とも100kgの鋼塊を得た後に、抽出温度1230℃で熱間圧延することにより板厚3mmの熱延鋼帯を製造した。それぞれの鋼の板厚3mmの熱間圧延板を1080℃で焼鈍を施した後、冷間圧延、焼鈍を繰り返すことにより、硬さが480±3、板厚が1.0±0.003mmの調質圧延鋼板を得た。なお、調質圧延後の硬さが480HV5となる調質圧延率をそれぞれの鋼についてあらかじめ調べておき、その調質圧延率をもとに仕上焼鈍時の板厚を設定し、その板厚まで冷間圧延を行った後に1080℃で均熱1分の仕上焼鈍を実施した。なお、従来素材C1、C2については熱延後の板厚および調質圧延率を調整することにより、板厚1mmでかつ硬さが480±3の調質圧延板を得た。その後の板厚1.0mmまでの調質圧延では、板温が70℃となるよう加温した上で7〜10パスで行った。
上記の板厚1.0mmの調質圧延鋼板より幅10mm、長さ200mmの板ばねを長手方向が圧延方向となるように採取し、さらに時効処理を施した。時効処理条件は450℃材炉60minを施し、時効処理前後のばね表面における硬さ測定をJIS Z 2244に準じ10kgの荷重で実施した。
本発明鋼のばね表面の時効処理前における硬さは480±3HV、時効処理後は517〜550HVであり、時効による硬度上昇分ΔHVは40〜68であった。一方、比較素材のB1、B2、B3および従来素材C1、C2の時効処理前における硬さは480±3HV、時効処理後は498〜517HVであり、ΔHV20〜35であった。これらの結果より本発明によるばねは比較あるいは従来材のばねに比べ時効硬化能に優れることが確認された。図1に時効硬化能に及ぼすSi含有量の影響を示す。
図1および2に示されるように、本発明範囲内にある素材では良好な時効硬化能を示した。一方、本発明範囲から外れるB1、B2およびB3は時効硬化能に劣った。これはSi添加量の少ないB1およびB2では、オーステナイト相の加工硬化能が低く、十分なひずみ時効の効果が得られなかったためと考える。一方、Cu添加量の少ないB3では、マルテンサイト相中におけるCuリッチ相の析出に必要なCu量が不足しており、析出硬化量が得られないためと考える。以上のように、本発明範囲に合金元素量を規定することにより、良好な時効硬化能が得られることが確認された。
(実施例2)
本発明対象素材A1〜A7および比較素材B1〜B3、従来材C1〜C2を素材として成形加工され、時効処理が施されたばねについてばね限界値および孔食電位測定を行なった。素材の作製工程は実施例1と同一である。また、調質圧延素材を450℃で60min時効した供試材を用いて引張特性を調査した。引張特性は、JIS Z 2201準拠の13B号試験片を、引張方向が圧延方向となるように採取した。その試験片を、200kN引張試験機を用いてクロスヘッド移動速度3mm/min、標点間距離50mm、常温の条件で引張試験を行った。硬さはJIS Z2244に準じ10kgの荷重で測定した。ばね限界値はJIS H3130に準じて、繰り返したわみ試験により測定した。表2に仕上焼鈍板の引張特性および調質圧延板の硬さおよびばね限界値を示す。
Figure 0005421611
表2に示すように、本発明対象素材は従来材であるSUS301、SUS304と同等以上の強度、延性、ばね性を有することが確認された。

Claims (3)

  1. 質量%で、0.10%≦C+0.5N≦0.25%(但しC>0.05%、N>0.05%)、1.5<Si≦4.0%、0.5%≦Mn≦3.04%、P≦0.06%、S≦0.005%、0.5%≦Ni<5.0%、15.1%≦Cr≦19.0%、0.8%≦Cu≦3.5%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    下記(1)式で示されるオーステナイト安定度指標Md30が0〜80、下記(2)式で示される積層欠陥エネルギー生成指標SFEが0〜40未満であって、加工誘起マルテンサイト相を15〜50体積%、残部がオーステナイト相からなる、時効硬化型ばね用ステンレス鋼板。
    Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr・・・(1)
    SFE=6.2Ni+18.6Cu+0.7Cr+3.2Mn−53・・・(2)
  2. 前記マルテンサイト相に、Cuリッチ相が析出している、請求項1に記載の時効硬化型ばね用ステンレス鋼板。
  3. 表面硬さが450HV以上である、請求項1または2に記載の時効硬化型ばね用ステンレス鋼板。
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