高速道路や国道その他の自動車道の路面上には、土砂や粉塵、落ち葉や草木のみならず、空気中の浮遊物質や水中に浮遊する粒子状物質いわゆるSS(suspended solids)や、自動車のタイヤや、舗装アスファルトの摩耗くずや、事故時の車の燃料や、オイルなどの油分を含んだ、様々な汚濁物質が堆積している。これらの汚濁物質は、雨天時に路面上から集排水施設を経て、河川や湖沼や沿岸海域などの公共用の水域やあるいは河川や湖沼の周辺の田畑へ流出することから、そのままでは水質汚濁を引き起こす原因のひとつとなる。
こうした路面に堆積した汚濁物質は、降雨時の主に初期の雨水による路面排水となり流出するが、通常、この路面排水には降雨の状態により3つのパターンがあるといわれている。
まず、第1のパターンは、一定の降雨強度の降水が続く場合である。この場合は、降雨初期には汚濁濃度が高くなっている。しかし、降雨開始の2時間後には汚濁濃度は収束する。
第2のパターンは、初期降雨が少なく、その後、急激に降雨が増加する場合である。この場合は、降雨初期に汚濁濃度が高く、一旦汚濁は減少に向かうものの、降雨強度が強くなると再び汚濁は高濃度に上昇する。
第3のパターンは、雨が降ったり止んだりする場合である。この場合は、初期降雨時間が短く、最も雨量が少量であるが、次の降雨時では雨量が多くなる。この場合は、路面上の汚濁物質が流出するのにある程度の降雨水量が必要であるから、初期汚濁濃度よりも次降雨時の汚濁濃度が高くなる。
ところで、このように3つのパターンがあるものの、路面汚濁物質の大部分は上記の第1ないしは第2のパターンの降雨初期の2時間のファーストフラッシュ水によってその多くが流れ出す。その中の特に路面排水中に浮游する粒子状物質であるSS物質は路面汚濁の最も大きな要因となっているものである。そこで、これらのファーストフラッシュ水を適切に処理して浄化することにより、路面排水の汚濁物質による負荷を大幅に削減して、排水することができる。
また、近年の地球温暖化に伴う天候不順により、全国各地で集中豪雨が頻発するようになってきている。そこで、集中豪雨のような急激な排水の流入に備えるには、単に路面排水を集水し、貯留槽で沈殿処理させ、比重分離によって上方に油分を分離浮上させて除去するといった処理槽を配置しただけでは十分ではなく、想定流入量を超えたときには、単に処理しきれなくなり、上方の油分の汚濁物質もろともに溢れ出し、結果汚濁物質が周囲に流出してしまうことになりかねなかった。
そこで、こうした路面排水処理装置の工夫として、例えば、本願発明者らは、バイパスからの路面排水を受け入れる流入貯槽、その後段の整流貯槽、さらにその後段の流出貯槽から形成した路面排水処理槽において、各貯槽で路面排水中の懸濁物を沈殿させ、整流貯槽では静水化してオイルは浮上させて分離する路面排水処理施設(例えば、特許文献1参照。)を開発し、また狭小な用地に敷設できる縦型の排水処理槽(例えば、特許文献2参照。)を開発し、さらには高降雨強度時における降雨初期のファーストフラッシュを含む路面排水の一定量を取水し、取水した路面排水を路面排水処理槽にて汚濁物質を物理的に浄化し、その浄化水を取水部の下流の縦溝に再び戻す工夫をした路面排水処理施設の取水および浄化装置を開発している(例えば、特許文献3参照。)。
たしかに、これらの装置はファーストフラッシュを含む路面排水を集中的に取水処理することは非常に効率的であるが、特許文献1に記載のように側溝下面にグレーチングやパンチングメタルといった適切な通水量の取水口を確保し維持し続けるためには、適宜のメンテナンスにより、ゴミなどを取り除く必要がある。
また、こうしたゴミなどの不純物を流入口で十分取り除かずに処理槽に導いてしまうと、沈殿除去することになるが、山間部などで落ち葉や草木が大量に排出される箇所に設置すると、底部を定期的にメンテナンスする必要が増すこととなる。その際、処理槽の底部をさらうことになるため、過大な労力が必要となるので、必ずしもメンテンナンスが容易ではなかった。
また、バイパスや取水の工夫を施したこうした処理槽は、スペースの都合で設置できないところも生じるなど、設置現場の形状に応じた汎用性のある工夫が求められている。
例えば、従来の路面排水処理槽は、プレキャスト製のコンクリートブロックを型枠に流して成型して得た後、これらを現場に搬送して、3〜6段程のブロックを積層して用いている。しかしながら、段数が多いので、それだけ段間の継目の漏水防止のシールに留意しなければならず、吊り下げて積層する設置工事にも習熟と時間を要している。
また、プレキャスト製のコンクリートブロックには、補強のためにその内部に鉄筋が配筋されている。しかしながら、コンクリートは一般に引張応力に対して弱い素材であるから、コンクリートにかかる引張応力に備えた鉄筋の位置取りを考慮しなければならず、配筋の位置取りには、自ずと限界がある。
さらに、ブロックの外周側壁及び内側壁には、槽内、槽外の通水用にスリットや開口孔を貫通させる必要があるところ、コンクリートブロックには配筋があるので、開口可能な位置は、配筋された鉄筋の位置取りを避けた箇所か、もしくは、予め配筋を動かせる部位に限定されることとなる。特にブロックの骨格になる外周近辺に主筋が配されるが、主筋は基本的に動かし難いものであるから、開口のために動かせる配筋は内部の補強の筋となるので、融通が効く配筋にも限りがある。また、外周に近すぎる位置に開口させると、応力がかかった際に、簡単にクラックを生じやすくなるので、外周を避けた箇所に大きな開口を設けることが望まれている。
すると、開口しうる側壁の位置は、外周縁から一定程度の距離を離した内側の箇所となるところ、高さの低い多段のブロックを積み重ねる場合には、開口しうる箇所の自由度が奪われ、大きな開口を設けられる位置は、選択肢の小さいものとなってしまっていた。また、積層するブロックの継目部分をスリットとして細く開口として利用すると、スリットの周囲を切り欠くことになるので、そこからクラックを招来しやすくなり、こうした部分には、あらかじめ成型段階で特に補強を講じる必要が生じたり、搬送時や施工時にも取扱いに注意が必要となるなど、余計な配慮が必要となっていた。
そこで、本発明の解決しようとする課題は、より高い自由度をもち、容易に設計が変更しうるプレキャストコンクリート製の路面排水処理装置を提供することである。すなわち、路面排水処理装置を設置する現場の勾配やその向き、降雨量、車両通行量、ゴミや汚濁物質の発生量などから想定される排水の流入量や汚濁物質の量などに応じて、適切な開口位置を確保しうるものであり、また路面排水処理槽の貯留量などが最適化できるような、フレキシブルで自由度の高い位置への開口孔の配置を可能とする路面排水処理槽を提供することである。
また、設置現場の路面環境に見合うように、適切な排水と油水の比重分離がなしうるように、各槽へ流入、貯留、排出される際の処理能力を柔軟に調整しうる路面排水処理装置を提供することであって、さらに、急激な降雨量の増加によって排水の流入量が増加した場合であっても、排水処理装置の設置箇所の周囲へ分離した汚濁物質を漏出させて汚損することなく、降雨初期のファーストフラッシュ以後の追加の超過流入排水のみを排出する仕組みを提供することである。さらに、落ち葉や草木といった大きなゴミを予め効率よく集積分離しつつも流入を阻害しない仕組みを提供することである。
上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の手段では、下段ブロックと上段ブロックからなる上下2段のプレキャスト製コンクリートブロックの長手方向を3室に仕切ったコンクリート槽とその処理水を受ける排水側溝からなる路面排水処理装置で、下段ブロックは、長方形の底とこの底の外周に直立する外周側壁と、この底とこの外周側壁からなる路面排水処理槽を短手方向の仕切壁によって長手方向を3室に仕切り、上段ブロックは、下段ブロックの外周側壁および仕切壁の上に同寸法で載置する外周側壁と仕切壁からなる。さらに、この路面排水処理槽の3室のうち、中央の室を流入貯留槽とし、この中央の室の上段ブロックには、長手方向の一方の外周側壁に設けた路面側溝の排水溝からの排水を取り入れ用の流入口と、長手方向の他方の外周側壁の上端に設けた越流用切欠きからなる溢流口を有する。さらに、中央の室の左右の2室のそれぞれの室は、薄板製の縦方向の仕切板で路面排水処理槽の上方側を2区分に区画し、これらの2区分のうち、中央の室よりの区画を整流貯留槽とし、その他の区画を流出貯留槽としている。さらに、この流出貯留槽の上段ブロック内の鉄筋の配筋されていない無配筋部に処理水を流出貯留槽外に排出する排出用の開口孔を有する。さらに下段ブロックの上記仕切壁に、中央の室から左右の室の整流貯留槽に処理水を通す横スリットからなる通水孔を開口し、さらに上段ブロックの上記仕切壁に、中央の室の上段に浮上している処理水を中央の室から左右の室に通す通孔を配設している。さらに上記流出貯留槽の処理済排水の排出用の開口孔の下部および未処理水を排出する上記溢流口の下部の下段ブロックの外縁部に沿って上記処理済排水および上記未処理水を受ける排水側溝を配設していることを特徴とする路面排水処理装置である。
請求項2の手段では、下段ブロックと上段ブロックからなる上下2段のプレキャスト製コンクリートブロックの長手方向を3室に仕切ったコンクリート槽とその処理水を受ける排水側溝からなる路面排水処理装置で、下段ブロックは、長方形の底とこの底の外周に直立する外周側壁と、この底とこの外周側壁からなる路面排水処理槽を短手方向の仕切壁によって長手方向を3室に仕切り、上段ブロックは、下段ブロックの外周側壁および仕切壁の上に同寸法で載置する外周側壁と仕切壁からなる。さらに、この路面排水処理槽の3室のうち、中央の室を流入貯留槽とし、この中央の室の上段ブロックには、長手方向の一方の外周側壁に設けた路面側溝の排水溝からの排水を取り入れ用の流入口と、長手方向の他方の外周側壁の上端に設けた越流用切欠きからなる溢流口を有する。さらに、中央の室の左右の2室のそれぞれの室は、薄板製の縦方向の仕切板で路面排水処理槽の上方側を2区分に区画し、これらの2区分のうち、中央の室よりの区画を整流貯留槽とし、その他の区画を流出貯留槽としている。さらに、この流出貯留槽の上段ブロック内の、補助筋を移動調整して設けた鉄筋の配筋されていない無配筋部に、処理水を流出貯留槽外に排出する排出用の開口孔を有する。さらに下段ブロックの上記仕切壁に、中央の室から左右の室に処理水を通す横スリットからなる通水孔を開口し、さらに上段ブロックの上記仕切壁に、中央の室の上段に浮上している処理水を中央の室から左右の室に通す通孔を配設し、この通孔を挿通孔に形成している。さらに、この挿通孔に下向管端を有するエルボー形状の越流管の水平部を挿通係止し、中央の室の流入貯留槽の下段ブロック内にこの越流管の下向管端を配設し、この下向管端の高さを上記の横スリットの上端高さとなるように配設して中央の室の下段ブロックの横スリットの上端高さの処理水を中央の室から左右の室に通している。さらに、上記排出用の開口孔を有する流出貯留槽の槽下部内に入口を有し流出貯留槽外に出口を有する逆U字のサイフォン作用の排水管を、上記排出用の開口孔に挿通している。さらに上記流出貯留槽の処理済排水を排出する逆U字のサイフォン作用の排水管の出口下部および未処理水を排出する上記溢流口の下部の下段ブロックの外縁部に沿って上記処理済排水および上記未処理水を受ける排水側溝を配設していることを特徴とする路面排水処理装置である。
請求項3の手段では、路面排水処理装置における逆U字のサイフォン作用のある排水管に代えて、逆U字の頂部に空気抜き用の空気孔を有する逆U字の排水管を排出用の開口孔に挿通していることを特徴とする請求項2の手段の路面排水処理装置である。
請求項4の手段では、下段ブロックと上段ブロックのそれぞれの高さは、それらの高さの割合が上段ブロックの長手方向の側壁の外側下部の外縁に沿う排水側溝に面する該長手方向の側壁の無配筋部の範囲に対応して自在に変更し得ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項の手段の路面排水処理装置である。
請求項5の手段では、仕切壁で仕切られた3室のうちの左右の各室は、それらの室の上方側を薄板製の縦方向の仕切板で2区画に区分し、さらに該縦方向の仕切板の背面を一体的に支持する受け部と、該受け部から直角に伸びる支持部をL型のアングルで形成し、該L型のアングルの支持部に複数の取付け位置調整用のボルト孔を水平方向に間隔を空けて形成し、該左右の各室の対向壁面の中央上部にボルト孔を有するインサートを挿着し、該インサートを挿着したボルト孔に、上記の複数の取付け位置調整用に配設のL型のアングルの複数のボルト孔のいずれかのボルト孔を合致させ、該合致したボルト孔にボルトを挿通係止して該薄板製の縦方向の仕切板を上記左右の各室の対向壁面の上方に取付けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項の手段の路面排水処理装置である。
請求項6の手段では、上段ブロックの中央の流入貯留槽の長手方向の側壁の上部に開口する路面排水の流入口から流入した処理水の水面下直近の流入貯留槽の全面に粗ゴミフィルターを配設していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項の手段の路面排水処理装置である。
本発明では、プレキャスト製のコンクリート槽の形成を、従来の3段以上の複数段のブロックに代えて、本発明ではコンクリート槽の高さを変更すること無く段数のみを減らして上下2段のブロックとしたことで、これら上下2段のブロックにおける各段の高さ設定の自由度が増す、例えばコンクリート槽の高さを100cmとするとき、上段ブロックを60cmとし下段ブロックを40cmとするように、上段ブロックを下段ブロックよりも高くすることができるなど、上下2段のブロックの高さの割合の設定の自由度が増すことにより流出貯留槽の側壁の排水用の開口孔の位置決めの際、コンクリート槽に配筋された鉄筋部を回避しやくすなり、上下方向の開口高さ位置の選択の自由度を大きくとることができる。
ところで、処理された処理水を流出貯留槽内から排出するために、流出貯留槽の側壁に設けた排出用の開口孔の高さ位置によって、流入した路面排水の流出貯留槽内での水位すなわち水深に応じて流入貯留槽と整流貯留槽の水位も同一水準に定まり、この水準での各処理槽の各所要の処理水の通過距離および処理時間が定まり、これらの水準の変化に対応して各処理槽の各所要の処理水の通過距離および処理時間が変化することとなる。したがって、これらの貯留槽の能力に係る許容流入量は流出貯留槽の水位で容易に調整できる。そこで、流出貯留槽から排水側溝へ排出する流出貯留槽の側壁に配設の排出用の開口孔の高さ位置を変えることのみを意図して、工場でプレキャストする際にコンクリート槽の成型枠を定型化して、この成型枠でプレキャストし、流出貯留槽の側壁の排出用の開口孔の位置のみは、各設置現場の環境に最適化した位置に配設するものとして、本願のコンクリート製路面排水処理装置を工場生産する。このようにすることによって、現場環境に即応した汚濁物質の分離、例えば油水分離、などに対する最適の処理能力を発現し得て適応範囲の広い路面排水処理装置が容易に得られる。
さらに流出貯留槽の側壁に設けた排出用の開口孔に逆U字の排水管を挿通した場合も、開口孔の高さ位置によって、流入した路面排水の流出貯留槽内での水位すなわち水深並びに流入貯留槽と整流貯留槽と流出貯留槽の各所要の通過距離および処理時間が変化することとなるので、これら流入貯留槽と整流貯留槽の能力に係る許容流入量は流出貯留槽の水位で容易に調整できる。したがって、逆U字の排水管の逆U字の頂点に空気抜き孔を設けると、路面排水の流出貯留槽内での水位は、常に逆U字の排水管の逆U字状となった管径の流出貯留槽の側壁に設けた開口孔の最下部と当接する管内壁の高さとなり、この位置に流出貯留槽内の水位を維持して槽内の貯留水を攪乱させないものとして、整流貯留槽で分離して上部に貯留した油分や各貯留槽の下部に沈殿した汚濁物質中の汚泥などを排水管から排水側溝に流出させなくすることができる。
他方、逆U字の排水管をサイフォン作用の排水管とすることで、排出処理貯留槽外の排水側溝内に配設の該サイフォン作用のある排水管の出口の高さ位置に応じて吸水力が作用して排出処理貯留槽内の排水管の入口より上方に貯留の貯留水を排水側溝に排出することができる。したがって、この場合は、路面排水中に含まれる油分の多寡に応じて、特に整流貯留槽内に貯められると予想される油分量に応じて、サイフォン作用の排水管の出口の高さを定めておくことで、処理した排水のみを静かに排水管の出口から排水側溝に排出することができる。
さらに、中央の流入貯留槽から、左右に設けた2室の整流貯留槽から流出貯留槽へと分流させて処理させることで、流入時の流速と比べて、槽内での流速をより緩やかなものとすることができる。流速が遅くなれば、沈殿や比重分離に必要な所要時間の移動距離が小さくなるので、各槽の大きさをコンパクトにすることができる。
また、分流させて、左右の2ルートで並行して処理できるので、逆U字の排水管の左右流出貯留槽にそれぞれ個別に処理量が確保できることとなる。このように排出ルートを2ルート設けたことで、1ルートの通水孔やそのスリットあるいは逆U字の排水管が閉塞することで溢れ出すといったトラブルを、もう一方のルートがあることで、回避しできる。また、流入口から降雨などで流れ込む急激な流入量の増加に対しても、2ルートに分流されて処理されるので、1ルートに比して余力が取りやすく、先ずは中央の室から左右の各室へと流れていくので、緊急的に中央の流入貯留槽の上端の流入口に対面する長手方向の側壁の上部に配設の越流用切欠きから溢流させなくても、ある程度の流入増加には耐えることができ、いたずらに流入貯留槽や、整流貯留槽や流出貯留槽に貯留されるべき油などの汚濁物質がこの切欠きから外部に溢流して漏出する事態を生じ難くしている。
さらに、道路の路面に高雨量の降雨があって集中的に路面排水が路面排水処理槽の中央の流入貯留槽に流入する場合に備えて、流入貯留槽の流入口に対面する長手方向の側壁の上部に上記の越流用切欠きを設けて溢流口とし、さらに中央の流入貯留槽、左右の整流貯留槽および流出貯留槽を配置した路面排水処理槽の下流側の長手方向の側壁に沿って排水側溝が設けられており、左右の流出貯留槽の逆U字の排水管からの排水と越流用切欠きの溢流口からの溢流水とを共にこの排水側溝に受け、さらに下流側の排出溝に流すことができる。
従来の路面排水処理装置では、この路面排水処理装置の下流側の側壁に沿うように排水側溝が隣接しているとは限らず、溢れた水が汚濁物質と共に、路面側部の法面の斜面を流下することが多々あった。それに対して、本願発明では、路面排水処理装置の法面の下側に水平方向に設けた長手方向の側壁に沿うように排水側溝が配設されており、路面におけるファーストフラッシュ後の汚濁度の比較的低い大量の雨水の集中流入に対して、路面排水処理槽内に既に貯留されている油分などの汚濁物質と関係なく、すなわち貯留されている汚濁物質を漏出することなく、中央の流入貯留槽の長手方向の槽壁上端の流入口から対面する長手方向の側壁面に設けた越流用切欠きの溢流口から上記した流入口からの集中流入の流入水を速やかに排水側溝に排出することができ、路面排水処理装置の周囲の法面の斜面に溢れた水を漏出することもない。したがって、路面側部法面の周囲の環境を害する危険性の低いものとなっている。
また、流入貯留槽と整流貯留槽との間の仕切壁間に配設のエルボー形状の越流管は、流入貯留槽に急激に路面排水が流入したとき、流入貯留槽の水位が急激に上昇して溢れてしまうことを避けるために、スリットの通水孔を介する水の流動に加えて、上記のエルボー形状の越流管により素早くそれぞれの左右の各槽へと流入水を通すことができるので、一つの槽だけに流入してこの槽から溢れてしまう事態を回避しやすくなっている。さらに、整流貯留槽で油水が分離する際は比重分離を利用することから、可及的に穏やかな水流であることが望まれるが、横スリットの通水孔のみから水が流れ込むことで水流の乱れ抑制していることに加えて、エルボー形状の越流管を流入貯留槽に設けて流入貯留槽から整流貯留槽に流入する水流の勢いを低減させているので、整流貯留槽内は穏やかな流速となり効率よく油水の比重分離を促すことができる。
整流貯留槽と流出貯留槽の間に配設の、例えば溶融亜鉛メッキをした鋼板製である仕切板は、油が比重分離されて浮上する速度と移動する距離との関係を利用した、整流貯留槽と流出貯留槽の仕切り板で仕切られた部分に水より軽い油分からなる汚濁物質を滞留させるために設けたものである。左右の室内を区切るこの仕切板の下方は仕切られてなく開放されている。したがって、整流貯留部と流出貯留部の下部は解放されているものの、このように仕切板で整流貯留部と流出貯留部の上部を仕切ることで、水よりも比重が小さく上部に滞留する油分を捕捉でき、汚濁物質の流出を適切に阻止しうるものとなっている。さらにこの場合、この整流板を垂直に配設することを基本とするが、例えば整流貯留槽側の上面側を広面積となるように傾斜させて配設すると油分が多い路面排水の処理に向いたものとなる。もちろんこれとは逆向きに傾斜させることもでき、これらの傾斜は、この路面排水処理装置を設置する場所の環境に合わせて選択して用いることができる。このように流入貯留槽の隣に位置する左右の整流貯留槽には、浮上する油が上方に滞留するとはいえ、現地の設置環境によって、滞留する汚濁物質の発生量が異なる。そこで、より最適化するために、さらに仕切り板の位置を、L型アングルとL型アングルを係止するボルトのインサートの複数の孔の位置取りによって、可変にすることができる。仕切り板の位置を可変とすることで、整流貯留槽と流出貯留槽との容積の割合を変えられるので、現場の環境に合わせて敷設した路面排水処理槽の運用開始後であっても、油分などの汚濁物質の発生状況の変化に即応して自在に容積の割合を変更して対応することができる。
路面から集水された路面排水が流入貯留槽へ流入する際、流入口から流入貯留槽へ流入した路面排水の水面下直近の該流入貯留槽内の全面に粗ゴミフィルター、例えば立体編み目構造をしたプラスチック樹脂製のフィルター、を設置することで、流入口からの落ち葉や草木といった大型のゴミが流入貯留槽内に滞留することを予め避けることができる。こうしたフィルターによって、大型ゴミによる通水孔すなわちスリットや排水用の開口孔や排水管などの目詰まりを予め低減でき、メンテナンス頻度を減らし、その手間を低減することになるので、ロングランでの運用が実現しやすくなる。これに対して従来の装置では、流入貯留槽への流入路手前の取水口に、グレーチングやパンチングメタルを設置するなどして、流入量を調整しているが、この取水口の部位に上記のフィルターを設置するとなると、フィルターサイズを小さくしなければ設置できず効率が下がり、さらにファーストフラッシュの取込みがフィルターのコンディション次第で変化することもあるなどの要因で、必ずしも十分なものとはいえなかった。それに対して、本発明では、表面積の大きな流入貯留槽の上部で一括して粗ゴミを例えば立体的な編み目構造のフィルターで受けることで、目詰まりが起こり難く、通水性が長期にわたって維持できるので、効率よく大型の粗ゴミを排除し収集できる。さらに例えば1m以上の水深の処理槽を底さらいして底面から粗ゴミを除去するのではなく、立体編み目構造の軽いプラスチック部材からなる粗ゴミフィルターを水面下直近に配置するので、このフィルター上に溜まった粗ゴミを除去するのは極めて容易であり、また、粗ゴミフィルターの立体編み目構造の部材自体を粗ゴミと共に交換してしまうことも物理的およびコスト的にも可能で容易に実施できる。
本発明の路面排水処理装置1の実施の形態について、以下、適宜に図面を参照して説明する。
高速道路などの自動車道の道路脇の側溝28などから集水した路面排水を、道路脇の法面29に設置した流下排水溝3に流し、この流下排水溝3から路面排水処理装置1に取水できるように、該流下排水溝3の下端に、本発明の路面排水処理装置1を設置する。この路面排水処理装置1で浮上と沈殿の比重分離によって、路面27から流れ込んだ路面排水中に含まれている土砂や粉塵、落ち葉や草木、空気中の浮遊物質や水中に浮遊する粒子状物質であるSS、自動車のタイヤ、舗装アスファルトの摩耗くず、事故時の車の燃料やオイルなどの油分を含んだ様々な汚濁物質を分離除去した後、処理した排水を路面排水処理装置1の排水側溝25から、さらに外部の下流側排水溝26へと流下させるものである。
そこで、上記した路面排水処理装置1について説明する。この路面排水処理装置1は下段ブロック4aと上段ブロック5aの上下2段のプレキャスト製コンクリートブロック4、5からなる路面排水処理槽2とこの長手方向の側壁4dの外壁に沿って有する排水側溝25から形成されている。これらのうち、下段ブロック4aと上段ブロック5aの上下2段のプレキャスト製コンクリートブロック4、5はそれぞれ予め鉄筋製の骨組みを配筋して組み上げ、その周囲に型枠を配して、流し込んだコンクリートにより成型したものである。これら上下2段のプレキャスト製コンクリートブロック4、5の外周側壁4c、5bの厚みは、例えば10cmであるので、主筋となる下段ブロック4aの外周側壁4cや上段ブロック5aの外周側壁5bに挿入の鉄筋は厚みを有するように立体的に二重に組み上げて強度を確保している。さらに、これら鉄筋の主筋を補強する役割の補助筋を水平方向と垂直方向に例えば20cmといった間隔をあけて配置し、これらを溶接で固定している。その際、路面排水処理槽2を形成するコンクリート槽2aの流入口6や越流用切欠き8からなる溢流口8aあるいは上段ブロック5aの仕切壁7に設けた通孔11や下段ブロック4aの仕切壁7に設けた通水孔12もしくは排出用の開口孔23の配設位置に応じて、予め設計段階で補助筋の配設位置を設定し、その設定位置に補助筋を移動調整して無配筋な箇所を形成する。その上で、流入口6や溢流口8a、あるいは通孔11である挿通孔11aや通水孔12もしくは排出用の開口孔23などの開口を型枠の所定の位置に設け、この型枠を用いて工場にて、これらの開口を有する成型された下段ブロック4aと上段ブロック5aからなる路面排水処理槽2のコンクリート槽2aを製造する。
下段ブロック4aと上段ブロック5aの上下2段のプレキャスト製コンクリートブロック4、5から路面排水処理槽2と、この外壁に沿って形成されている排水側溝25からなる路面排水処理槽2についてさらに説明する。先ず、下段ブロック4aは、図2に示すように長方形の底4bを有し、この底4bの外周に垂直に立ち上がる外周側壁4cを配設している。これらの外周側壁4cは、図4に示すように対面する長手方向の側壁4dと、図2に示すように対面する短手方向の側壁4eとで直方形状を形成している。その直方形状の外周側壁4cの長手方向の側壁4dを、さらに3つに分割するために、短手方向の側壁4eと並行な短手方向の2枚の下段の仕切壁7aをそれぞれ離間して設けて直方形状の下段ブロック4aの内部に立設している。この下段ブロック4aはプレキャスト製コンクリートブロック4からなっている。
これらの下段ブロック4aの対面する長手方向の側壁4dおよび対面する短手方向の側壁4eと下段ブロック4a内の2枚の短手方向の下段の仕切壁7aのそれぞれの位置上に上段ブロック5aを載置し、この上段ブロック5aの対面する長手方向の側壁5cおよび対面する短手方向の側壁5dと上段ブロック5a内の2枚の短手方向の上段の仕切壁7bから、上下2段のプレキャスト製コンクリートブロック4、5からなるコンクリート槽2aが形成されている。すなわち下段ブロック4aの上に上段ブロック5aを積層することによりコンクリート槽2aを形成している。さらに、このコンクリート槽2aの長手方向を2枚の立設する仕切壁7で仕切って左、中央、右の3室としている。なお、仕切壁7は、下段の仕切壁7aと上段の仕切壁7bからなっている。
さて、上下2段のプレキャスト製のコンクリートブロック4、5を積層させて形成せしめたコンクリート槽2aは、上記したように直方体のブロック内を2枚の仕切壁7によって、その長手方向を3つに仕切って、中央と左右の室の3室からなるコンクリート槽2aとしている。サイズはこの限りではないが、例えば一例として示すと、コンクリート槽2a内の各室の幅を130cm、奥行きを130cmとし、下段ブロック4aの外周側壁4cおよび上段ブロック5aの外周側壁5bであるコンクリート壁の厚みおよび仕切壁7の厚みをそれぞれ10cmとすると、コンクリート槽2aは長手の全幅430cm、奥行き150cmの長方形の大きさからなっている。このとき、例えば下段ブロック4aの高さを73cm、上段ブロック5aの高さを100cmとするとき、上下2段の合計の全高は173cmである。この場合、下段ブロック4aの底4bの厚みを10cmとするとき、コンクリート槽2aの底4bからの内部高さは163cmである。
上記で仕切壁7で3室に仕切った形成した中央の室を流入貯留槽9としている。この流入貯留槽9を路側の法面29に設けた上段ブロック5aの外周側壁5bの、法面29に面した長手方向の側壁5cの上端の中央に、上端から40cm下った位置に上辺を有する縦60cm、横60cmの切欠きからなる流入口6を設けている。この流入口6に対面する長手方向の側壁5cの上端に越流用切欠き8である溢流口8aを配設している。この溢流口8aは、例えば中央の室である流入貯留槽9の部分の長手方向の側壁5cの上端に、左右の2個が設けられている。さらに、図1に示すように、道路脇の側溝28から路面排水を流下するU字状ブロックからなる流下排水溝3を路側の法面29に配設し、この流下排水溝3の下端を流入口6に接続している。この場合、道路の路肩に設置された側溝用桝などで集水された路面排水を流下排水溝3に流して、その下端に接続した流入口6に導入することで、中央の流入貯留槽9へ路面排水を流入させている。したがって、流入貯留槽9の貯留部の深さは、上記の内部高さ163cmから流入口6の深さの40cmを減じた値の、123cmであり、この流入貯留槽9の水位123cmの内容積は約2000リットルである。同様に仕切壁7で分割した左右の室もそれぞれ約2000リットルとしている。したがって、中央の流入貯留槽9に流入口6から流入した路面排水は、先ず、深さ123cmの水深の路面排水の貯留水面21となって貯留される。
さらに、上記したように、中央の室の流入貯留槽9の左右の2室では、それぞれを例えば溶融亜鉛メッキした薄鋼板製の仕切板13で、これらの室の上方側は2区画に仕切って区分しているが、下方側は仕切ることなく1区画のままとしている。この仕切板13で区分した2区画のうち、上記した流入貯留槽9の側の仕切壁7の下部に横スリット12aからなる通水孔12を設け、通水孔12に面する中央の流入貯留槽9よりの仕切板13で仕切られた区画を整流貯留槽14としている。他方、この流入貯留槽9から遠い仕切板13で仕切られた区画を流出貯留槽15としている。さらに、この流出貯留槽15の上段ブロック5aの外周側壁5bの上部には、路面排水処理槽2で処理した路面排水を流出貯留槽15から排出するための、排出用の開口孔23を配設している。
ところで、上段ブロック5aの大きさが、例えば横幅430cmで、高さ100cmからなるとき、上段ブロック5aの長手方向の側壁5cの左右両端から34cm中央よりの位置に、直径30cmの排出用の開口孔23を設けるものとする。この場合、図8に示す様に、排出用の開口孔23の中心の位置の上限位置を長手方向の側壁5cの上端から25cm下方とし、排出用の開口孔23の中心の位置の下限位置を下端から25cm上方とする。しかも上記の長手方向の側壁5cの左右両端から34cm中央よりの位置で、かつ、上記の上下限位置の間ならば、どの高さ位置であっても直径30cmの排出用の開口孔23を設けることが自由にできる位置としている。そこで上段ブロック5aの製造時に、この上段ブロック5aの長手方向の側壁5cの上端および下端から上下にそれぞれ10cm入った位置との間および上段ブロック5aの長手方向の側壁5cの左端および右端とこれらから19cm内側に入った位置との間には、コンクリートの側壁5cの内部に鉄筋を配筋してコンクリートブロックに強度を付与している。しかし、排出用の開口孔23を開口し得る箇所で、現実に設けた、図8で実線で示す、開口孔23はコンクリートの側壁5c内に鉄筋の配筋されていない無配筋部であり、その下部の仮想線で示す部分は調整用の開口孔23aを設ける箇所である。この仮想線で示す調整用の開口孔23aを実際に設ける場合は、その箇所を無敗筋部とする。
本願発明は、路面排水処理槽2を上下2段のプレキャスト製コンクリートブロック4、5とすることで、従来の3段以上の多段のコンクリートブロックから形成するものに比して、本願の上段ブロック5aの高さの範囲をより一層大きく採ることができる。したがって、コンクリートの上段ブロック5aの長手方向の側壁5cの内部に鉄筋を配筋していない無配筋部とする箇所の高さの変更範囲の幅も広くとることができ、したがって直径30cmの大きな排出用の開口孔23であっても、この範囲に自由に設けることができる。この点が、上下2段のプレキャスト製コンクリートブロック4、5とした本願発明の最も大きな特徴である。しかしながら、現場での上段ブロック5aのどの高さ位置に排出用の開口孔23を設けるかについて、工場での製造時に前もって解っている場合は、実際に設ける排出用の開口孔23以外の箇所には、鉄筋を配筋するものとする。
さらに、整流貯留槽14と流出貯留槽15の間の仕切板13の下部は2区画に区分することなく、1区画のままとしているものの、このように仕切板13で室の上部を仕切ることで整流貯留槽14と流出貯留槽15に区分し、水よりも比重の小さい油分を上部に滞留させ、滞留した油分を仕切壁13で移動を制限して整流貯留槽14に貯留し、油分を含む汚濁物質が整流貯留槽14から流出貯留槽15へ流出することを適切に阻止し得るものとしている。一方、水よりも重い汚泥などは、仕切壁7の下部に開口の通水孔12の上端まで位置する仕切板13の下端よりも下側である整流貯留槽14と流出貯留槽15共通部である左右の2室に、貯留される。
さらに、路面排水を流出貯留槽15から排出する排出用の開口孔23の長手方向の側壁5cの下部および溢流口8aの下部である下段ブロック4aの側壁の外縁に沿って排水側溝25を配設し、流出貯留槽15からの排水を受けまた溢流口8aからの未処理の排水を受けている。さらに、排水側溝25の排水をこの排水側溝25に連接した外部下流側の排水溝26へ流し去るものとしている。
さらに、上段ブロック5aには、路側の法面29の上方から落下してくる落下物を防護するために、図1に示すように、法面29の高所側の上段ブロック5aの外周側壁5bの上に落下物防護用ブロック24を積層している。さらに、図示していないが、落下物防護用ブロック24の上部にフェンスなどを設けてもよい。この場合、落下物の高さは、例えば30cm程度として、上段ブロック5aの上面と落下物防護用ブロック24の下面をモルタルで一体化して強化するものとする。さらに、例えば、路面排水処理槽2の周囲の法面29をコンクリートでシールして法面29の上にコンクリート層30を形成し、路面排水処理槽2の周囲の法面29を強化するものとする。
ところで、従来の路面排水処理槽2では、路面排水処理槽2へ路面27の排水を流入させる手前の道路側溝の路面排水の取水口にグレーチングやパンチングメタルを設置するなどして、路面排水の流入量を調整している。こうした工夫をした取水口には、取水口側のグレーチングやパンチングメタルが目詰まりすることのないように、何らかのフィルターを設ける必要がある。しかし、路面排水処理槽2へ流入する手前の路面側溝からの法面29に設けられた排水溝は断面積が小さいので、この排水溝に設置できるフィルターのサイズは小さく、路面27に降雨したそのファーストフラッシュの取込みがこのフィルターのコンディション次第で変化しかねず、フィルターとして必ずしも十分とはいえなかった。このような従来技術に対し、本願発明の流入貯留槽9は流入貯留槽9にとり入れた路面排水の貯留水面21の直下の近傍の全面に表面積の大きな粗ゴミフィルター22を配設している。この粗ゴミフィルター22は表面積が大きく、しかも立体的な編み目構造から形成されているので、これらのことに相俟って、粗ゴミフィルター22は目詰まりを起こしにくく、通水性が維持できるので、効率よく粗ゴミが捕集できる。
請求項2に係る発明では、下段ブロック4aと上段ブロック5aからなる上下2段のプレキャスト製コンクリートブロック4、5の長手方向を3室に仕切ったコンクリート槽2aと、このコンクリート槽2aで処理された排水をその外周側壁4cの排出用の開口孔23の外壁直下の下段ブロック4aの外縁で受ける排水側溝25とからなる路面排水処理装置1である。この下段ブロック4aは、長方形の底4bとこの底4bの外周に直立する外周側壁4cからなり、この底4bとこの外周側壁4cからなる下段ブロック4aを短手方向の下段の仕切壁7aによって長手方向を3室に仕切っている。さらに、上段ブロック5aは、下段ブロック4aの外周側壁4cおよび仕切壁7aの上に、同寸法から構成されて載置される、上段ブロック5aの外周側壁5bと上段の仕切壁7bからなっている。さらに、コンクリート槽2aの中央の室とその左右の室からなる3室のうち、中央の室を流入貯留槽9としている。この中央の室の上段ブロック5aには、法面29の上方側の長手方向の側壁5cに道路脇の側溝28からの流下排水溝3からの排水の取り入れ用の流入口6を設けている。さらに法面29の下方側の長手方向の側壁5cの上端に越流用切欠き8からなる溢流口8aを例えば2個配設している。さらに、中央の室の左右の2室のそれぞれの室には、薄鋼板製の縦方向の仕切板13でコンクリート槽2aの上方側を2区画に区分している。これらの仕切板13で仕切った2区画のうち、中央の室である流入貯留槽9に近い区画を整流貯留槽14とし、流入貯留槽9に遠い区画を流出貯留槽15としている。さらに流出貯留槽15を形成する上段ブロック5aの外周側壁5b内の鉄筋の配筋されていない無配筋部に、処理済の水を流出貯留槽15の外に排出するための、排出用の開口孔23を有する。さらに下段ブロック4の上記の下段の仕切壁7aに、中央の室から左右の室に処理水を通す横スリット12aからなる通水孔12を開口している。さらに上段ブロック5aの上記の上段の仕切壁7bに、中央の室の上段に浮上している処理水を中央の室から左右の室に通す通孔11を配設している。ここまでの構成は、請求項1に係る発明の構成と同じである。
さらに、請求項2に係る発明では、通孔11を挿通孔11aに形成している。さらに、この挿通孔11aに下向管端10bを有するエルボー形状の越流管10の水平部10aを挿通係止している。中央の室の流入貯留槽9の下段ブロック4a内に、越流管10の下向管端10bを配設し、この下向管端10bの高さを上記の横スリット12aの上端高さと同一高さとなるように配設し、下段ブロック5の横スリット12aの上端高さの処理水を中央の室の流入貯留槽9から左右の室の整流貯留槽14に通して、流入口6から大量の路面排水が流入して、横スリット12aから左右の室の整流貯留槽に14に送給しきれなかった際に、エルボー形状の越流管10の下向管端10bから水平部10aにそれらの路面排水を通し、左右の室の整流貯留槽14に送給するものとしている。さらに、上記の排出用の開口孔23を有する流出貯留槽15の槽下部内に入口16aを有し、流出貯留槽15の外に出口16bを有する逆U字のサイフォン作用のある排水管16を、上記の排出用の開口孔23に挿通している。さらに上記の流出貯留槽15の処理済排水を排出する逆U字のサイフォン作用のある排水管16の出口16bの下部および未処理水を排出する上記の越流用切欠き8の溢流口8aの下部の下段ブロック4aの外縁に沿って上記の処理済排水および上記の未処理水を受ける排水側溝25を配設している。
さらに、請求項3に係る発明では、上記の請求項2に係る発明の路面排水処理層2における逆U字のサイフォン作用のある排水管16に代えて、逆U字の頂部に空気抜き用の空気孔17aを、図3に示すように、有する逆U字の排水管17を排出用の開口孔23に挿通している。その他の路面排水処理層2の構成は請求項2に係る発明の構成と同一である路面排水処理装置1である。
さらに請求項4に係る発明では、下段ブロック4aと上段ブロック5aのそれぞれの高さは、それらの高さの割合が上段ブロック5aの長手方向の側壁5cの外側下部の外縁に沿う排水側溝25に面するこの長手方向の側壁5cの無配筋部の範囲に対応して自在に変更し得るものである。これらの構成は、請求項1〜3のいずれか1項に係る発明である路面排水処理装置1に適用できる。
請求項5に係る発明では、仕切壁7で仕切られた3室のうちの左右の各室は、それらの室の上方側を例えば亜鉛メッキした薄鋼板製の縦方向の仕切板13で2区画に区分し、さらに、図6に示すように、受け部18aと直角に曲折した支持部18bを有するL型のアングル18を使用して、この受け部18aにより縦方向の仕切板13の背面を例えばねじ18cにより一体化して取り付ける。さらに、L型のアングル18の支持部18bに複数個の取付け位置調整用のボルト孔18dを水平方向に間隔をあけ、例えば1列に3個を形成し、これらの3個のボルト孔18dを上下の2列に設けて計6個とする。ここで、上の列の3個の中の1個のボルト孔18dを選択し、これと上下が同位置である下の列のボルト孔18dを選択して準備する。一方、コンクリート槽2aの上段ブロック5aの長手方向の側壁5cに設けたボルト孔19にインサート19aを装着して準備する。このように準備した、上段ブロック5aの長手方向の側壁5cのインサート19aを装着したボルト孔19に、L型のアングル18の支持部18bに設け上記で選択したボルト孔18dを一致させ、ボルト20をワッシャー20aを介してインサート19aにねじ締めして、仕切り板13を長手方向の側壁5cに直角として縦方向に形成し、構成としている。これらの構成は請求項1〜4のいずれか1項に係る発明である路面排水処理装置1に適用できる。
請求項6に係る発明では、上段ブロック5aの中央の流入貯留槽9の長手方向の側壁5cの上辺から下方に切り欠かいて形成し、かつ長手方向の側壁5cの上辺の上に設けた落下物防護用ブロック24の下辺の下で開口する路面排水の流入口6を設けている。さらに流入口6から流入貯留槽6に流入してきた処理水の水面直近の処理水中の流入貯留槽6の全面に粗ゴミフィルター22を配設している、この例えば立体編み目構造をしたプラスチック樹脂製の粗ゴミフィルター22を設置することで、流入口6から路面の落ち葉や草木といった大型の粗ゴミが流入貯留槽9に入って滞留しない様にし、適時に粗ゴミフィルター22上に溜まった大型の粗ゴミを改修して除去する構成としている。これらの構成は請求項1〜5のいずれか1項に係る発明である路面排水処理装置1に適用できる。
さらに上下2段のプレキャスト製コンクリートブロック4、5について説明する。先ず、これらのコンクリートブロック4、5におけるクラックの発生の防止として、コンクリート槽2aの内部の要所に配筋した鉄筋の主筋が、これらのコンクリートの長手方向の側壁5cに開口の排出用の開口孔23を阻害しないために、例えば直径30cmの排水管を挿通させるため排出用の開口孔23を上段ブロック5aの長手方向の側壁4dに開口するとき、主筋の上下方向の周縁部から開口孔23の上下方向の外周までの距離を少なくとも10cm離すこと、すなわち開口孔23の中心から少なくとも25cm離すことが望ましい。同様に、主筋の左右方向の周縁部から開口孔23の左右方向の外周までの距離を少なくとも20cm離すこと、すなわち開口孔23の中心から少なくとも35cm離すことが望ましい。この場合、本発明の高さ100cmの上段ブロック5aであれば、開口孔23を設ける長手方向の側壁5cの高さの調整可能な幅として、上下に50cmが確保できることとなる。
他方、本願発明の比較例として、例えば従来の4段積みのブロックから路面排水処理槽を形成する場合は、最上段ブロックを60cmのブロックとしたとき、30cmの排出用の開口孔を側壁内部に設けたとき、上下の主筋までの距離をそれぞれ10cm離す必要があるので、上下方向の調整幅は残りのわずか10cmしかないこととなる。本願発明の上段ブロック5aと同様に、上記の従来の4段積みの例では、最上段ブロックと2段目のブロックとの合計の高さを60cmとし、3段目のブロックと4段目のブロックとの合計の高さを40cmとし、これら4段のブロックで100cmの高さを確保した場合でも、最上段のブロックと2段目のブロックの境目にかかる位置は目地部に干渉してしまうこととなるので、ここに排出用の開口孔を開口すると目地部から漏水の恐れが生じるので、開口することができない。してみると、従来例では開口できる位置が上下方向に極めて限定されてしまうことがわかる。
本願発明は、上下2段のプレキャスト製コンクリートブロック4、5からなり、流入貯留槽9に流入した路面排水を、隣室の下段ブロック4aの下部を開口した仕切板13を設けて区画した、整流貯留槽14と流出貯留槽15へと導いて連続処理しているが、その路面排水の許容流入量は、上段ブロック5aに開口した逆U字の排水管17の高さ位置によって定まる水深と、縦方向の仕切板13の下辺の開口部の高さと、油の浮上速度と、所要通過時間に関係する逆U字の排水管17までの距離とからなる因子で決定されるところであり、上段ブロック5aの逆U字の排水管17の開口位置は、上下方向の水深と、左右方向の所要通過時間とのいずれにも関わる事項である。
同様に、本願発明で、流入貯留槽9と整流貯留槽14と流出貯留槽15との通水のための、通水孔12の横スリット12aおよびエルボー形状の越流管10を配置する際にも、その高さや開口の大きさや位置といった通水量に関する設計の自由度が高くなる。これにより、沈降する堆積物の量などに応じて、施工場所の環境に見合った設計が容易となる。一方、整流貯留槽14と流出貯留槽15の間に設けられた仕切板13は、例えば耐食性のために、溶融亜鉛メッキされた鋼板からなっている。さらに、仕切板13はL型のアングル18で、図6や図7に示す様に、法面29の上流側と下流側の上段ブロック5aの長手方向の側壁5cのボルト孔19のインサート19aにボルト20でねじ止めされている。この仕切板13の下方は、路面排水の流入量との関係で、油の浮上速度と逆U字の排水管17までの距離から、整流貯留槽14の側に適切に油分が浮上するように、整流貯留槽14の下側と流出貯留槽15の下側である開口部の高さを算出することで、仕切板13の下端の高さを適切に決定することができる。また、さらに、L型のアングル18の支持部18bに、ボルト20を挿通するボルト孔18dを複数個、例えば3個を5cm間隔で設けることで、L型のアングル18の受け部18aに、例えばねじ18cで留めた仕切板13を5cm置きに可変して上段ブロック5aの長手方向の側壁5cに固定することができる。さらに、この上段ブロック5aの短手方向の側壁5dから少なくとも50cmの位置に仕切板13を配設するためには、この上段ブロック5aの長手方向の側壁5cにボルト19の挿通用のインサート19aを挿通するボルト孔18dの位置を仕切壁7の側から少なくとも20cmの距離をあけて設けおけば、ボルト孔18dを3個の中のいずれかに可変して取り付ける領域が確保できる。なお、整流貯留槽14と流出貯留槽15形成する左右の室の大きさを奥行き130cm、水深123cmのとする場合、この室の中で仕切り板を5cmだけ移動すると55リットルの貯留量が変動でき、10cmだけ移動すると110リットルの貯留量が変動できる。
上記したように工場生産した上下2段のプレキャスト製コンクリートブロック4、5からなる路面排水処理槽2は、下段ブロック4aおよび上段ブロック5aに、図示しないが、それぞれ釣り手具としてヒンジを取り付けて吊り下げ可能としてから、設置現場までトラックなどにて搬送する。設置現場では、路面側部の法面29に水平な基礎を造り、その上にモルタルを敷設してから、クレーンを用いて、路面排水処理槽2の下段ブロック4aおよび上段ブロック5aの積層間に、ウレタンなどのシール材を挟持させて漏水防止措置を講じながら、慎重に積層して設置する。さらに、法面29の低い側である路面排水処理槽2の長手方向の側壁4dの外縁に沿って排水側溝25を配設する。その後、適宜に下段ブロック4aの一部を法面29内に埋め戻す。さらに、この埋め戻した上下2段のプレキャスト製コンクリートブロック4、5からなる路面排水処理槽2や排水側溝25の周囲の法面29の一定の区画をコンクリート層30でシールして法面29と一体下して強化してもよい。これらの上下2段のプレキャスト製コンクリートブロック4、5からなる路面排水処理槽2は長手方向を水平となるように横置きして設置するものとする。したがって、路面排水処理槽2の上段ブロック5aの長手方向の側壁5cの一方が法面29の高所側の流下排水溝3の側に設けられ、この長手方向の側壁5cと対面する法面29の低所側の長手方向の側壁5cが配設されている。したがって、上段ブロック5aは、流入口6が法面29の高所側に長手方向の側壁4cが位置するように、下段ブロック4aに積層する。さらに、以上降雨などの非常時に大量の路面排水が流入口6から流れ込んできた場合、これらの路面排水を処理することなく、貯留水槽9をオーバーフローして法面29の低所側の長手方向の側壁4cの上辺に設けた越流用切欠き8である例えば2個の溢流口8aからその下縁の排水側溝25に流出させる構成としている。さらに排水側溝25から外部下流側の排水溝26に連接して排水側溝25に流れ込んだ処理済の水および非常時に流れ込んだ未処理の水をこの外部下流側の排水溝26から法面29の下方に流下させるものとしている。なお、上記したように、法面29の高所側の上段ブロック5aの外周側壁5bの上に落下物防護用ブロック24を積層している。
流入貯留槽9の貯留水面21に近接して直ぐ下側に配設し粗ゴミフィルター22は、例えばポリプロピレン製のプラスチック樹脂の硬質の線条を屈曲させるようにして積層融着させて5cmほどの厚みの立体的な編み目構造の積層体の板状に形成したものである。このように粗ゴミフィルター22は屈曲しながら隙間を開けた形で積層したプラスチックスの線条であるため、内部の通水性が極めて良好であり、立体編み目構造であるため、80〜95%程度の空隙率を有している。したがって、粗ゴミフィルター22として用いた場合、流入した水の通水を阻害することが少なく、径が1cm大程度のゴミを捕捉しうるものとなっている。この粗ゴミフィルター22を、上記のように例えば中央の室の流入貯留槽9の水面近辺の水面下の全面に設置するなどする。この場合、粗ゴミフィルター22は弾性力が高いので、130cm四方の流入貯留槽9の幅と奥行きの外周よりも、若干大き目のサイズの方形の板状であっても、その粗ゴミフィルター22の周囲を押し込むようにコンクリート槽2aの上段ブロック5aの外周側壁5bと仕切壁7の間に嵌め込むことで容易に固定することができる。このような粗ゴミフィルター22によって、路面排水処理槽2の内部の仕切壁7に形成の上記の通水孔12やその横スリット12aや排出用の開口孔23などの大型ゴミによる目詰まりが低減され、通常は粗ゴミフィルター22状の粗ゴミを定期的に回収するだけで、通水孔12やその横スリット12aや排出用の開口孔23などの目詰まりゴミを除去するためのメンテナンスの頻度を大幅に減らすことができ、したがって、保守の手間も総じて低減さでき、従来の粗ゴミフィルター22を有しない路面排水処理槽2に比して、ロングランでの運用が容易となる。