JP5417708B2 - アントラセン誘導体及びアントラキノン誘導体 - Google Patents

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Description

本発明は有機トランジスタの半導体材料に用いられるペンタセン等のアセン類の中間体として有用なアントラセン誘導体及びその原料であるアントラキノン誘導体に関する。
有機薄膜トランジスタに代表される有機半導体デバイスは、省エネルギー、低コスト、及びフレキシブルといった無機半導体デバイスにはない特徴を有することから近年注目されるようになった。有機薄膜トランジスタは有機半導体活性相、基板、絶縁相、電極等数種類の材料から構成されるが、中でも電荷のキャリアー移動を担う有機半導体活性相は該デバイスの中心的な役割を有している。この有機半導体活性相を構成する有機材料のキャリアー移動能により半導体デバイス性能が左右される。
有機半導体活性相を作成する方法としては一般的に、高温真空下、有機材料を気化させて実施する真空蒸着法、及び有機材料を適当な溶媒に溶解させその溶液を塗布する塗布法が知られている。塗布法は高温高真空条件を用いることなく、印刷技術を用いても実施することができるため、デバイス作製の製造コストを大幅に削減することができることから、経済的に好ましいプロセスである。しかし、従来、有機半導体材料として高性能な材料ほど塗布での活性相形成が困難になるという問題があった。
例えば、ペンタセン等の棒状構造のアセン類はアモルファスシリコン並みの高いキャリアー移動度を有し、優れた半導体デバイス特性を発現することが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、ペンタセンはその強い凝集性のため溶解性が低く、一般的には経済的な塗布法を適用することができない。また、ペンタセン等のポリアセンを溶解させ塗布法でデバイスを製造する試みも報告されているが(例えば、特許文献1参照)、元来難溶性のポリアセン類を溶解させるためには、高温加熱等の条件が必要とされ、さらにペンタセンの溶液は極めて容易に空気酸化されることから、塗布法の適用はプロセス的、経済的に困難を伴うものであった。また、ポリ−(3−ヘキシルチオフェン)等の自己組織化材料は溶媒に可溶であり、塗布によるデバイス作製が報告されているが、キャリヤー移動度が結晶性化合物より1桁低いことから(例えば、非特許文献2参照)、得られた有機半導体デバイスの特性が低いという問題があった。
一方、棒状構造のアセン類を製造する場合の原料として、2,3−ジブロモアントラセンが用いられている(例えば、非特許文献2参照)。しかし、これまでに報告された例は未置換の2,3−ジハロアントラセンを原料として用いているため、製造されるアセン類も低溶解性の未置換体のみしか合成することができないという問題があった。また、棒状構造のビフェニレン誘導体を製造する場合の原料として2,3−ジハロアントラセン誘導体が用いられている(例えば、特許文献2参照)。しかし、これまでに報告された例は二つのハロゲン原子が同一のもののみであり、一つのハロゲン原子のみを選択的に反応させることが困難であるという問題があった。
WO2003/016599号公報 特開2007−224011号公報 「ジャーナル オブ アプライド フィジックス」、(米国)、2002年、92巻、5259−5263頁 「オルガニック レターズ」、(米国)、2000年、2巻、85−87頁
本発明は、上記の従来技術が有する問題点に鑑み、特定の位置に置換基を有する新規なアントラセン誘導体を提供することを目的とする。さらに塗布法による半導体活性相の形成が可能な有機半導体相構成材料の原料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討の結果、新規な特定のアントラセン誘導体を見出し、本発明を完成するに到った。
さらに本発明者らは、該アントラセン誘導体を効率的に製造することができるその原料であるアントラキノン誘導体を見出し、本発明を完成するに到った。
以下、本発明について詳細に説明する。説明はアントラセン誘導体、アントラキノン誘導体の順について述べる。
(アントラセン誘導体)
本発明のアントラセン誘導体は下記一般式(1)で示される。
Figure 0005417708
(式中、置換基X は、臭素原子又はヨウ素原子を表し、X は、臭素原子又はヨウ素原子を表し、R 〜R 及びR が水素原子を表し、R 及びR がフッ素原子、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数4〜30のアリール基、炭素数2〜20のアルキニル基からなる群より選ばれる基を表し、R 〜R が水素原子を表す。但し、置換基XとXが同一原子である場合、及び置換基RとRが同時に水素原子である場合を除く。)
本発明の一般式(1)の置換基について述べる。
置換基X及びXは好ましくは臭素原子、ヨウ素原子である。
置換基R〜Rにおける、炭素数2〜20のアルキル基は特に限定はなく、例えばエチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基、2−エチルヘキシル基等のアルキル基;トリフルオロエチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロドデシル基、パーフルオロオクタデシル基等のパーフルオロアルキル基;トリフルオロエチル基、ペンタデカフルオロオクチル基、オクタデカフルオロデシル基、2−エチルパーフルオロヘキシル基等の一部の水素がフッ素に置換されたハロゲン化アルキル基等を挙げることができ、好ましくは炭素数5〜20のアルキル基であり、特に好ましくはヘキシル基、ドデシル基、オクタデシル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロオクタデシル基、さらに好ましくはドデシル基、パーフルオロドデシル基である。
置換基R〜Rにおける、炭素数4〜30のアリール基は特に限定はなく、例えばフェニル基、p−トリル基、(p−オクチル)フェニル基、(p−ドデシル)フェニル基、(p−オクタデシル)フェニル基、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、p−(トリフルオロメチル)フェニル基、p−(パーフルオロドデシル)フェニル基、ピリジニル基、テトラフルオロピリジニル基、2−チエニル基、5−(n−ヘキシル)−2−チエニル基、2,2’−ビチエニル−5−基、ビフェニル基、パーフルオロビフェニル基、ビピリジニル基等を挙げることができ、特に好ましくはフェニル基である。
置換基R〜Rにおける、炭素数2〜20のアルキニル基は特に限定はなく、例えばエチニル基、メチルエチニル基、イソプロピルエチニル基、tert−ブチルエチニル基、(オクチル)エチニル基、(デシル)エチニル基、トリフルオロメチルエチニル基、フェニルエチニル基、{4−(オクチル)フェニル}エチニル基、{3−(オクチル)フェニル}エチニル基、ナフチルエチニル基、アントラセニルエチニル基、ビフェニルエチニル基、ターフェニルエチニル基、ベンジルエチニル基、ビフェニレノエチニル基、パーフルオロフェニルエチニル基、{p−(トリフルオロメチル)フェニル}エチニル基、(パーフルオロオクチル)エチニル基、(パーフルオロドデシル)エチニル基、{4−(パーフルオロオクチル)フェニル}エチニル基、{3−(パーフルオロオクチル)フェニル}エチニル基等を挙げることができる。
置換基R〜Rにおける、炭素数2〜30のアルケニル基は特に限定はなく、例えばエテニル基、メチルエテニル基、イソプロピルエテニル基、tert−ブチルエテニル基、(オクチル)エテニル基、(デシル)エテニル基、トリフルオロメチルエテニル基、フェニルエテニル基、{4−(オクチル)フェニル}エテニル基、{3−(オクチル)フェニル}エテニル基、ナフチルエテニル基、アントラセニルエテニル基、ビフェニルエテニル基、ターフェニルエテニル基、ベンジルエテニル基、ビフェニレノエテニル基、パーフルオロフェニルエテニル基、{p−(トリフルオロメチル)フェニル}エテニル基、(パーフルオロオクチル)エテニル基、(パーフルオロドデシル)エテニル基、{4−(パーフルオロオクチル)フェニル}エテニル基、{3−(パーフルオロオクチル)フェニル}エテニル基、ビフェニレノエテニル基、フェニル(メチル)エテニル基、(トリメチルシリル)エテニル基、(トリエチルシリル)エテニル基、(トリイソプロピルシリル)エテニル基等を挙げることができ、特に好ましくは(オクチル)エテニル基、トリフルオロメチルエテニル基、フェニルエテニル基、{4−(オクチル)フェニル}エテニル基である。なお、該炭素数2〜30のアルケニル基はトランス体及びシス体が存在する場合は、トランス体及びシス体の何れであってもよく、またそれらの任意の割合の混合物であってもよい。
なお、置換基R〜Rの内、任意の二以上のものが互いに結合した場合、その結合は特に限定はなく、例えばベンゼン環、ヘキシルベンゼン環、ジドデシルベンゼン環、パーフルオロベンゼン環、トリフルオロメチルベンゼン環、(パーフルオロジドデシル)ベンゼン環等の置換基を有してもよいベンゼン環;フラン環、チオフェン環、2−ジドデシルチオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾピロール環等の芳香族複素環を挙げることができ、その中でも好ましくは置換基を有していても良いベンゼン環である。結合する位置は好ましくはRとRである。
これらの中でも置換基R〜Rとしては、好ましくはR及びRが水素原子であり、特に好ましくは、置換基R〜R及びRは水素原子であり、置換基R及びRは水素原子または炭素数2〜20のアルキル基であり、置換基R及びRは水素原子または炭素数4〜30のアリール基である。
本発明の一般式(1)で示されるアントラセン誘導体は、例えば以下の化合物を挙げることができ、
Figure 0005417708
Figure 0005417708
Figure 0005417708
Figure 0005417708
好ましくは
Figure 0005417708
である。
(アントラキノン誘導体)
本発明のアントラキノン誘導体は下記一般式(2)で示される。
Figure 0005417708
(ここで、置換基X、X、R〜Rは一般式(1)で示される置換基と同意義を示す。)
本発明の一般式(2)の置換基について述べる。
置換基X及びXは好ましくは臭素、ヨウ素原子である。
置換基R〜Rは、一般式(1)で示される置換基と同意義を示し、その中でも特に好ましくは、置換基R〜R及びRは水素原子、置換基R及びRは水素原子または炭素数2〜20のアルキル基である。
本発明の一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体は、例えば以下の化合物を挙げることができ、
Figure 0005417708
Figure 0005417708
Figure 0005417708
Figure 0005417708
好ましくは
Figure 0005417708
である。
(アントラセン誘導体の製法)
本発明の一般式(1)において、R及びRが水素原子であるアントラセン誘導体は一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体を還元及び脱水から成る操作を2〜4回繰り返すことで製造することができる。
一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体の還元に用いる還元剤は特に限定はなく、カルボニル基を選択的にヒドロキシル基に還元できるものであれば良い。その具体例として、例えば水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、水素化トリフェニルスズ、水素化トリ−n−ブチルスズ、水素化ジフェニルスズ、水素化ジ−n−ブチルスズ、水素化トリエチルスズ、水素化トリメチルスズ、トリクロロシラン、トリエチルシラン、トリメチルシラン、ジフェニルシラン、フェニルシラン、ポリメチルヒドロシロキサン、水素化ホウ素リチウム、水素化ナトリウムアルミニウム、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化アルミニウム、水素化トリ−t−ブトキシアルミニウムリチウム、水素化トリエトキシアルミニウムナトリウム、水素化トリメトキシホウ素ナトリウム、硫化水素化ホウ素ナトリウム、シアン化水素化ホウ素ナトリウム、シアン化水素化ホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリ−s−ブチルホウ素リチウム、水素化トリ−t−ブチルホウ素リチウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素カリウム、水素化トリイソプロポキシホウ素カリウム、水素化トリ−s−ブチルホウ素カリウム、水素化ホウ素亜鉛、水素化ホウ素テトラメチルアンモニウム、水素化シアノホウ素テトラ−n−ブチルアンモニウム、ボラン−テトラヒドロフラン(THF)錯体、ジメチルアミン−ボラン錯体、トリメチルアミン−ボラン錯体、トリエチルアミン−ボラン錯体、ピリジン−ボラン錯体、エタン−1,2−ジアミン−ボラン錯体、ジメチルスルフィド−ボラン錯体、ジクロロボラン、2,3−ジメチル−2−ブチルボラン、ビス−3−メチル−2−ブチルボラン、ジイソピノカンフェニルボラン、ジクロロヘキシルボラン、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン、ジボラン、ヒドラジン、ジイミド、亜鉛アマルガム、アルミニウムアマルガム、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、アルミニウム、イリジウム(3価化合物)、クロム(2価化合物)、スズ、スズ(2価化合物)、セリウム(3価化合物)、鉄、鉄(2価化合物)、銅、チタン(3価化合物)、バナジウム(2価化合物)、マグネシウム、水素等を挙げることができ、好ましくは脱ハロゲン反応を抑制する観点から水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウムであり、特に好ましくは水素化ジイソブチルアルミニウムである。これらの還元剤は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。また、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化鉄(III)、塩化スズ(IV)、3フッ化ホウ素エーテル錯体などのルイス酸を組み合わせて用いてもよい。なお、水素を用いる場合はパラジウムカーボン等の触媒の存在下で実施することもできる。
一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体の還元反応は、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶剤に特に限定はなく、例えばテトラヒドロフラン(以後、THFと略す)、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、メタノール、エタノール、2−プロパノール等を挙げることができ、好ましくはTHFである。又、これら溶剤は1種若しくは2種以上の混合物を用いても良い。係る還元反応において、用いる還元剤の量は一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体1当量に対し、2.0〜20.2当量が好ましく、特に好ましくは4.2〜8.4当量である。還元反応の温度は−80〜160℃が好ましく、特に好ましくは0〜90℃である。反応時間は1〜48が好ましく、特に好ましくは2〜16時間である。
かくして得られた、下記一般式(3)で示される9,10−ジヒドロキシ−9,10−ジヒドロアントラセン誘導体を酸化合物により脱水する。
Figure 0005417708
(ここで、置換基X〜X及びR〜Rは一般式(1)で示される置換基と同意義を示す。)
一般式(3)で示される9,10−ジヒドロキシ−9,10−ジヒドロアントラセン誘導体の脱水に用いる酸化合物は特に限定はなく、ヒドロキシル基を選択的に脱水できるものであれば良い。酸化合物の具体例として、例えば塩酸、硫酸、発煙硫酸、リン酸、硝酸、トルエンスルホン酸、フッ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、塩化アンモニウム等のプロトン酸;塩化アルミニウム、3フッ化ホウ素エーテル錯体等のルイス酸等を挙げることができ、その中でも好ましくはプロトン酸であり、特に好ましくは塩酸である。また、該酸化合物は任意の濃度の水溶液、例えば塩酸水溶液として用いることもできる。
一般式(3)で示される9,10−ジヒドロキシ−9,10−ジヒドロアントラセン誘導体の脱水は、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶剤に特に限定はなく、例えば水、THF、ジエチルエーテル、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等を挙げることができ、好ましくはTHFである。又、これら溶剤は1種若しくは2種以上の混合物を用いても良い。係る脱水の温度は0〜160℃が好ましく、特に好ましくは0〜90℃である。反応時間は1〜48時間が好ましく、特に好ましくは1〜16時間である。
かくして得られた下記一般式(4)で示されるアントロン誘導体は、同様の方法で還元することができ、下記一般式(5)で示されるヒドロキシ化合物に転化された後、さらに脱水することにより一般式(1)で示されるアントラセン誘導体に誘導される。
Figure 0005417708
(ここで、置換基X〜X及びR〜Rは一般式(1)で示される置換基と同意義を示す。)
Figure 0005417708
(ここで、置換基X〜X及びR〜Rは一般式(1)で示される置換基と同意義を示す。)
なお、本発明の製法においては、前述の還元と脱水からなる操作を2回以上繰り返しても差し支えない。また、一般式(3)で示される9,10−ジヒドロキシ−9,10−ジヒドロアントラセン誘導体を、次亜リン酸ナトリウム/ヨウ化ナトリウム/酢酸あるいは2塩化スズ/塩酸水溶液で還元処理し、一般式(1)で示されるアントラセン誘導体へ変換させることもできる。
また、本発明の一般式(1)で示されるアントラセン誘導体において置換基R及びRが水素原子以外であるアントラセン誘導体は、例えば「オーガニックレター」(米国)、2004年、6巻、3325−3328頁に記載の方法または「シンレット」(米国)、2005年、2巻、217−222頁に記載の方法によっても合成することができる。すなわち、一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体と有機金属試薬を反応させ、生成する9,10−ジヒドロキシアントラセン誘導体を還元する既存の方法で製造することができる。
一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体と反応させる有機金属試薬は特に限定はなく、カルボニル基の炭素原子に選択的に付加できるものであれば良い。その具体例として、例えば炭素数2〜20のアルキルリチウム化合物、炭素数2〜20の臭化アルキルマグネシウム化合物、炭素数2〜20の塩化アルキル亜鉛化合物、炭素数4〜30のアリールリチウム化合物、炭素数4〜30の臭化アリールマグネシウム化合物、炭素数4〜30の塩化アリール亜鉛化合物、炭素数2〜20のアルキニルリチウム化合物、炭素数2〜20の臭化アルキニルマグネシウム化合物、炭素数2〜20の塩化アルキニル亜鉛化合物、炭素数2〜30のアルケニルリチウム化合物、炭素数2〜30の臭化アルケニルマグネシウム化合物、炭素数2〜30の塩化アルケニル亜鉛化合物等を挙げることができ、好ましくは炭素数4〜30のアリールリチウム化合物、炭素数4〜30の臭化アリールマグネシウム化合物、炭素数4〜30の塩化アリール亜鉛化合物等のアリール金属化合物であり、特に好ましくは炭素数4〜30のアリールリチウム化合物である。
炭素数2〜20のアルキルリチウム化合物としては、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、イソブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ネオペンチルリチウム、オクチルリチウム、ドデシルリチウム、オクタデシルリチウム、2−エチルヘキシルリチウム等のアルキルリチウム;トリフルオロエチルリチウム、パーフルオロヘキシルリチウム、パーフルオロドデシルリチウム、パーフルオロオクタデシルリチウム等のパーフルオロアルキルリチウム;トリフルオロエチルリチウム、ペンタデカフルオロオクチルリチウム、オクタデカフルオロデシルリチウム、2−エチルパーフルオロヘキシルリチウム等の一部の水素がフッ素に置換されたハロゲン化アルキルリチウム等を挙げることができる。
炭素数2〜20の臭化アルキルマグネシウム化合物としては、例えば臭化エチルマグネシウム、臭化n−プロピルマグネシウム、臭化n−ブチルマグネシウム、臭化イソブチルマグネシウム、臭化tert−ブチルマグネシウム、臭化ネオペンチルマグネシウム、臭化オクチルマグネシウム、臭化ドデシルマグネシウム、臭化オクタデシルマグネシウム、臭化2−エチルヘキシルマグネシウム等の臭化アルキルマグネシウム;臭化トリフルオロエチルマグネシウム、臭化パーフルオロヘキシルマグネシウム、臭化パーフルオロドデシルマグネシウム、臭化パーフルオロオクタデシルマグネシウム等の臭化パーフルオロアルキルマグネシウム;臭化トリフルオロエチルマグネシウム、臭化ペンタデカフルオロオクチルマグネシウム、臭化オクタデカフルオロデシルマグネシウム、臭化2−エチルパーフルオロヘキシルマグネシウム等の一部の水素がフッ素に置換された臭化ハロゲン化アルキルマグネシウム等を挙げることができる。
炭素数2〜20の塩化アルキル亜鉛化合物としては、例えば塩化エチル亜鉛、塩化n−プロピル亜鉛、塩化n−ブチル亜鉛、塩化イソブチル亜鉛、塩化tert−ブチル亜鉛、塩化ネオペンチル亜鉛、塩化オクチル亜鉛、塩化ドデシル亜鉛、塩化オクタデシル亜鉛、塩化2−エチルヘキシル亜鉛等の塩化アルキル亜鉛;塩化トリフルオロエチル亜鉛、塩化パーフルオロヘキシル亜鉛、塩化パーフルオロドデシル亜鉛、塩化パーフルオロオクタデシル亜鉛等の塩化パーフルオロアルキル亜鉛;塩化トリフルオロエチル亜鉛、塩化ペンタデカフルオロオクチル亜鉛、塩化オクタデカフルオロデシル亜鉛、塩化2−エチルパーフルオロヘキシル亜鉛等の一部の水素がフッ素に置換された塩化ハロゲン化アルキル亜鉛等を挙げることができる。
炭素数4〜30のアリールリチウム化合物としては、例えばフェニルリチウム、p−トリルリチウム、(p−オクチル)フェニル基、(p−ドデシル)フェニルリチウム、(p−オクタデシル)フェニルリチウム、p−フルオロフェニルリチウム、ペンタフルオロフェニルリチウム、p−(トリフルオロメチル)フェニルリチウム、p−(パーフルオロドデシル)フェニルリチウム、ピリジニルリチウム、テトラフルオロピリジニルリチウム、2−チエニルリチウム、5−(n−ヘキシル)−2−チエニルリチウム、2,2’−ビチエニル−5−リチウム、ビフェニルリチウム、パーフルオロビフェニルリチウム、ビピリジニルリチウム等を挙げることができる。
炭素数4〜30の臭化アリールマグネシウム化合物としては、例えば臭化フェニルマグネシウム、臭化p−トリルマグネシウム、臭化(p−オクチル)フェニルマグネシウム、臭化(p−ドデシル)フェニルマグネシウム、臭化(p−オクタデシル)フェニルマグネシウム、臭化p−フルオロフェニルマグネシウム、臭化ペンタフルオロフェニルマグネシウム、臭化p−(トリフルオロメチル)フェニルマグネシウム、臭化p−(パーフルオロドデシル)フェニルマグネシウム、臭化ピリジニルマグネシウム、臭化テトラフルオロピリジニルマグネシウム、臭化2−チエニルマグネシウム、臭化5−(n−ヘキシル)−2−チエニルマグネシウム、臭化2,2’−ビチエニル−5−マグネシウム、臭化ビフェニルマグネシウム、臭化パーフルオロビフェニルマグネシウム、臭化ビピリジニルマグネシウム等を挙げることができる。
炭素数4〜30の塩化アリール亜鉛化合物としては、例えば塩化フェニル亜鉛、塩化p−トリル亜鉛、塩化(p−オクチル)フェニル亜鉛、塩化(p−ドデシル)フェニル亜鉛、塩化(p−オクタデシル)フェニル亜鉛、塩化p−フルオロフェニル亜鉛、塩化ペンタフルオロフェニル亜鉛、塩化p−(トリフルオロメチル)フェニル亜鉛、塩化p−(パーフルオロドデシル)フェニル亜鉛、塩化ピリジニル亜鉛、塩化テトラフルオロピリジニル亜鉛、塩化2−チエニル亜鉛、塩化5−(n−ヘキシル)−2−チエニル亜鉛、塩化2,2’−ビチエニル−5−亜鉛、塩化ビフェニル亜鉛、塩化パーフルオロビフェニル亜鉛、塩化ビピリジニル亜鉛等を挙げることができる。
炭素数2〜20のアルキニルリチウム化合物としては、例えばエチニルリチウム、メチルエチニルリチウム、イソプロピルエチニルリチウム、tert−ブチルエチニルリチウム、(オクチル)エチニルリチウム、(デシル)エチニルリチウム、トリフルオロメチルエチニルリチウム、フェニルエチニルリチウム、{4−(オクチル)フェニル}エチニルリチウム、{3−(オクチル)フェニル}エチニルリチウム、ナフチルエチニルリチウム、アントラセニルエチニルリチウム、ビフェニルエチニルリチウム、ターフェニルエチニルリチウム、ベンジルエチニルリチウム、ビフェニレノエチニルリチウム、パーフルオロフェニルエチニルリチウム、{p−(トリフルオロメチル)フェニル}エチニルリチウム、(パーフルオロオクチル)エチニルリチウム、(パーフルオロドデシル)エチニルリチウム、{4−(パーフルオロオクチル)フェニル}エチニルリチウム、{3−(パーフルオロオクチル)フェニル}エチニルリチウム等を挙げることができる。
炭素数2〜20の臭化アルキニルマグネシウム化合物としては、例えば臭化エチニルマグネシウム、臭化メチルエチニルマグネシウム、臭化イソプロピルエチニルマグネシウム、臭化tert−ブチルエチニルマグネシウム、臭化(オクチル)エチニルマグネシウム、臭化(デシル)エチニルマグネシウム、臭化トリフルオロメチルエチニルマグネシウム、臭化フェニルエチニルマグネシウム、臭化{4−(オクチル)フェニル}エチニルマグネシウム、臭化{3−(オクチル)フェニル}エチニルマグネシウム、臭化ナフチルエチニルマグネシウム、臭化アントラセニルエチニルマグネシウム、臭化ビフェニルエチニルマグネシウム、臭化ターフェニルエチニルマグネシウム、臭化ベンジルエチニルマグネシウム、臭化ビフェニレノエチニルマグネシウム、臭化パーフルオロフェニルエチニルマグネシウム、臭化{p−(トリフルオロメチル)フェニル}エチニルマグネシウム、臭化(パーフルオロオクチル)エチニルマグネシウム、臭化(パーフルオロドデシル)エチニルマグネシウム、臭化{4−(パーフルオロオクチル)フェニル}エチニルマグネシウム、臭化{3−(パーフルオロオクチル)フェニル}エチニルマグネシウム等を挙げることができる。
炭素数2〜20の塩化アルキニル亜鉛化合物としては、例えば塩化エチニル亜鉛、塩化メチルエチニル亜鉛、塩化イソプロピルエチニル亜鉛、塩化tert−ブチルエチニル亜鉛、塩化(オクチル)エチニル亜鉛、塩化(デシル)エチニル亜鉛、塩化トリフルオロメチルエチニル亜鉛、塩化フェニルエチニル亜鉛、塩化{4−(オクチル)フェニル}エチニル亜鉛、塩化{3−(オクチル)フェニル}エチニル亜鉛、塩化ナフチルエチニル亜鉛、塩化アントラセニルエチニル亜鉛、塩化ビフェニルエチニル亜鉛、塩化ターフェニルエチニル亜鉛、塩化ベンジルエチニル亜鉛、塩化ビフェニレノエチニル亜鉛、塩化パーフルオロフェニルエチニル亜鉛、塩化{p−(トリフルオロメチル)フェニル}エチニル亜鉛、塩化(パーフルオロオクチル)エチニル亜鉛、塩化(パーフルオロドデシル)エチニル亜鉛、塩化{4−(パーフルオロオクチル)フェニル}エチニル亜鉛、塩化{3−(パーフルオロオクチル)フェニル}エチニル亜鉛等を挙げることができる。
炭素数2〜30のアルケニルリチウム化合物としては、例えばエテニルリチウム、メチルエテニルリチウム、イソプロピルエテニルリチウム、tert−ブチルエテニルリチウム、(オクチル)エテニルリチウム、(デシル)エテニルリチウム、トリフルオロメチルエテニルリチウム、フェニルエテニルリチウム、{4−(オクチル)フェニル}エテニルリチウム、{3−(オクチル)フェニル}エテニルリチウム、ナフチルエテニルリチウム、アントラセニルエテニルリチウム、ビフェニルエテニルリチウム、ターフェニルエテニルリチウム、ベンジルエテニルリチウム、ビフェニレノエテニルリチウム、パーフルオロフェニルエテニルリチウム、{p−(トリフルオロメチル)フェニル}エテニルリチウム、(パーフルオロオクチル)エテニルリチウム、(パーフルオロドデシル)エテニルリチウム、{4−(パーフルオロオクチル)フェニル}エテニルリチウム、{3−(パーフルオロオクチル)フェニル}エテニルリチウム、ビフェニレノエテニルリチウム、フェニル(メチル)エテニルリチウム、(トリメチルシリル)エテニルリチウム、(トリエチルシリル)エテニルリチウム、(トリイソプロピルシリル)エテニルリチウム等を挙げることができる。なお、該炭素数2〜30のアルケニルリチウムはトランス体及びシス体が存在する場合は、トランス体及びシス体の何れであってもよく、またそれらの任意の割合の混合物であってもよい。
炭素数2〜30の臭化アルケニルマグネシウム化合物としては、例えば臭化エテニルマグネシウム、臭化メチルエテニルマグネシウム、臭化イソプロピルエテニルマグネシウム、臭化tert−ブチルエテニルマグネシウム、臭化(オクチル)エテニルマグネシウム、臭化(デシル)エテニルマグネシウム、臭化トリフルオロメチルエテニルマグネシウム、臭化フェニルエテニルマグネシウム、臭化{4−(オクチル)フェニル}エテニルマグネシウム、臭化{3−(オクチル)フェニル}エテニルマグネシウム、臭化ナフチルエテニルマグネシウム、臭化アントラセニルエテニルマグネシウム、臭化ビフェニルエテニルマグネシウム、臭化ターフェニルエテニルマグネシウム、臭化ベンジルエテニルマグネシウム、臭化ビフェニレノエテニルマグネシウム、臭化パーフルオロフェニルエテニルマグネシウム、臭化{p−(トリフルオロメチル)フェニル}エテニルマグネシウム、臭化(パーフルオロオクチル)エテニルマグネシウム、臭化(パーフルオロドデシル)エテニルマグネシウム、臭化{4−(パーフルオロオクチル)フェニル}エテニルマグネシウム、臭化{3−(パーフルオロオクチル)フェニル}エテニルマグネシウム、臭化ビフェニレノエテニルマグネシウム、臭化フェニル(メチル)エテニルマグネシウム、臭化(トリメチルシリル)エテニルマグネシウム、臭化(トリエチルシリル)エテニルマグネシウム、臭化(トリイソプロピルシリル)エテニルマグネシウム等を挙げることができる。なお、該炭素数2〜30の臭化アルケニルマグネシウムはトランス体及びシス体が存在する場合は、トランス体及びシス体の何れであってもよく、またそれらの任意の割合の混合物であってもよい。
炭素数2〜30の塩化アルケニル亜鉛化合物としては、例えば塩化エテニル亜鉛、塩化メチルエテニル亜鉛、塩化イソプロピルエテニル亜鉛、塩化tert−ブチルエテニル亜鉛、塩化(オクチル)エテニル亜鉛、塩化(デシル)エテニル亜鉛、塩化トリフルオロメチルエテニル亜鉛、塩化フェニルエテニル亜鉛、塩化{4−(オクチル)フェニル}エテニル亜鉛、塩化{3−(オクチル)フェニル}エテニル亜鉛、塩化ナフチルエテニル亜鉛、塩化アントラセニルエテニル亜鉛、塩化ビフェニルエテニル亜鉛、塩化ターフェニルエテニル亜鉛、塩化ベンジルエテニル亜鉛、塩化ビフェニレノエテニル亜鉛、塩化パーフルオロフェニルエテニル亜鉛、塩化{p−(トリフルオロメチル)フェニル}エテニル亜鉛、塩化(パーフルオロオクチル)エテニル亜鉛、塩化(パーフルオロドデシル)エテニル亜鉛、塩化{4−(パーフルオロオクチル)フェニル}エテニル亜鉛、塩化{3−(パーフルオロオクチル)フェニル}エテニル亜鉛、塩化ビフェニレノエテニル亜鉛、塩化フェニル(メチル)エテニル亜鉛、塩化(トリメチルシリル)エテニル亜鉛、塩化(トリエチルシリル)エテニル亜鉛、塩化(トリイソプロピルシリル)エテニル亜鉛等を挙げることができる。なお、該炭素数2〜30の塩化アルケニル亜鉛はトランス体及びシス体が存在する場合は、トランス体及びシス体の何れであってもよく、またそれらの任意の割合の混合物であってもよい。
一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体と有機金属試薬の反応は、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶剤に特に限定はなく、例えばテトラヒドロフラン(以後、THFと略す)、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、メタノール、エタノール、2−プロパノール等を挙げることができ、好ましくはTHFである。又、これら溶剤は1種若しくは2種以上の混合物を用いても良い。係る反応において、用いる有機金属試薬の量は一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体1当量に対し、1.0〜20.2当量が好ましく、特に好ましくは2.0〜8.4当量である。該反応の温度は−80〜160℃が好ましく、特に好ましくは−80〜110℃である。反応時間は1〜48が好ましく、特に好ましくは2〜16時間である。
かくして得られた、下記一般式(6)で示される9,10−ジヒドロキシアントラセン誘導体を還元する。
Figure 0005417708
(ここで、置換基X〜X及びR〜Rは一般式(1)で示される置換基と同意義を示す。)
一般式(6)で示される9,10−ジヒドロキシアントラセン誘導体の還元に用いる還元剤は特に限定はなく、ヒドロキシル基を選択的に還元できるものであれば良い。その具体例として、例えばヨウ化ナトリウム/次亜りん酸ナトリウム、塩化スズ、シアン化水素化ホウ素ナトリウム、ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、3フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、3フッ化ホウ素ジメチルエーテル錯体、3フッ化ホウ素メタノール錯体、3フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体、3フッ化ホウ素フェノール錯体、3フッ化ホウ素ピペリジン錯体、3フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体、3臭化ホウ素、3臭化ホウ素ジクロロメタン錯体、3塩化ホウ素ジクロロメタン錯体、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、水素化トリフェニルスズ、水素化トリ−n−ブチルスズ、水素化ジフェニルスズ、水素化ジ−n−ブチルスズ、水素化トリエチルスズ、水素化トリメチルスズ、トリクロロシラン、トリエチルシラン、トリメチルシラン、ジフェニルシラン、フェニルシラン、ポリメチルヒドロシロキサン、水素化ホウ素リチウム、水素化アルミニウムナトリウム、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化アルミニウム、水素化トリ−t−ブトキシアルミニウムリチウム、水素化トリエトキシアルミニウムナトリウム、水素化トリメトキシホウ素ナトリウム、硫化水素化ホウ素ナトリウム、シアン化水素化ホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリ−s−ブチルホウ素リチウム、水素化トリ−t−ブチルホウ素リチウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素カリウム、水素化トリイソプロポキシホウ素カリウム、水素化トリ−s−ブチルホウ素カリウム、水素化ホウ素亜鉛、水素化ホウ素テトラメチルアンモニウム、水素化シアノホウ素テトラ−n−ブチルアンモニウム、ボラン−テトラヒドロフラン(THF)錯体、ジメチルアミン−ボラン錯体、トリメチルアミン−ボラン錯体、トリエチルアミン−ボラン錯体、ピリジン−ボラン錯体、エタン−1,2−ジアミン−ボラン錯体、ジメチルスルフィド−ボラン錯体、ジクロロボラン、2,3−ジメチル−2−ブチルボラン、ビス−3−メチル−2−ブチルボラン、ジイソピノカンフェニルボラン、ジクロロヘキシルボラン、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン、ジボラン等を挙げることができ、好ましくはヨウ化ナトリウム/次亜りん酸ナトリウム、塩化スズ、シアン化水素化ホウ素ナトリウム、ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、3フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体であり、特に好ましくはヨウ化ナトリウム/次亜りん酸ナトリウム、塩化スズである。これらの還元剤は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
一般式(6)で示される9,10−ジヒドロキシアントラセン誘導体の還元反応は、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶剤に特に限定はなく、例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、酢酸、テトラヒドロフラン(以後、THFと略す)、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、メタノール、エタノール、2−プロパノール等を挙げることができ、好ましくはジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、酢酸、THFである。又、これら溶剤は1種若しくは2種以上の混合物を用いても良い。係る還元反応において、用いる還元剤の量は一般式(6)で示される9,10−ジヒドロキシアントラセン誘導体1当量に対し、1.0〜20.2当量が好ましく、特に好ましくは2.0〜10.4当量である。還元反応の温度は−80〜160℃が好ましく、特に好ましくは0〜90℃である。反応時間は1〜48が好ましく、特に好ましくは2〜16時間である。
かくして得られた、本発明の一般式(1)で示されるアントラセン誘導体は、さらに精製することができる。精製する方法は特に限定はなく、例えばカラムクロマトグラフィー、再結晶化、あるいは昇華による方法を挙げることができる。
(アントラキノン誘導体の製法)
本発明の一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体は、例えば「ベリヒテ」(独国)、1933年、66B巻、1876−1891頁に記載の方法によっても合成することができる。
本発明の一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体は下記一般式(7)で示される無水フタル酸誘導体と下記一般式(8)で示されるベンゼン誘導体とを塩化アルミニウム存在下に下記一般式(9)で示される2−ベンゾイル安息香酸誘導体を製造し、次いで環化させることで製造することができる。または下記一般式(10)で示されるハロベンゼン誘導体をリチウム化合物でリチオ化し、一般式(7)で示される無水フタル酸誘導体と反応させることで下記一般式(9)で示される2−ベンゾイル安息香酸誘導体を製造し、次いで環化させることで製造することもできる。
Figure 0005417708
(ここで、置換基X〜X及びR〜Rは一般式(1)で示される置換基と同意義を示す。)
Figure 0005417708
(ここで、置換基R〜Rは一般式(1)で示される置換基と同意義を示す。)
Figure 0005417708
(ここで、置換基X〜X及びR〜Rは一般式(1)で示される置換基と同意義を示す。)
Figure 0005417708
(ここで、置換基Xは臭素原子、ヨウ素原子を示し、R〜Rは一般式(1)で示される置換基と同意義を示す。)
一般式(7)で示される無水フタル酸誘導体における置換基X〜Xは好ましくは水素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数2〜20のアルキル基であり、置換基R〜Rは、好ましくは水素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数2〜20のアルキル基である。そして、具体的な一般式(7)で示される無水フタル酸誘導体としては、例えば無水フタル酸、4−ブロモ無水フタル酸、4,5−ジブロモ無水フタル酸、4,5−ジヨード無水フタル酸、4−ブロモ−5−ヨード無水フタル酸、3,6−ジフルオロ−4,5−ジブロモ無水フタル酸、3,6−ジフルオロ−4−ブロモ−5−ヨード無水フタル酸、3,6−ジエチル−4,5−ジブロモ無水フタル酸、3,6−ジヘキシル−4,5−ジブロモ無水フタル酸、3,6−ジフェニル−4−ブロモ−5−ヨード無水フタル酸、3,6−ジフェニル−4−ブロモ−5−ヨード無水フタル酸等が挙げられ、好ましくは無水フタル酸、4−ブロモ−5−ヨード無水フタル酸である。
一般式(8)で示されるベンゼン誘導体における置換基R〜Rは、好ましくは水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数4〜30のアリール基、炭素数2〜30のアルケニル基である。そして、具体的な一般式(7)で示されるベンゼン誘導体としては、例えば1,2−ジフルオロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2−ジブロモベンゼン、1,2−ジヨードベンゼン、1−ブロモ−2−フルオロベンゼン、1−ブロモ−2−ヨードベンゼン、1,2,3,4−テトラフルオロベンゼン、1,2−ジブロモ−3,6−ジフルオロベンゼン、1,2−ジエチルベンゼン、1,2−ジヘキシルベンゼン、1,2−ジドデシルベンゼン、1−ドデシル−2−フルオロベンゼン、1,2−ジフェニルベンゼン、1,2−ジ(p−トリフルオロメチルフェニル)ベンゼン、1−パーフルオロ−2−フルオロベンゼン、1,2−ジ(パーフルオロヘキシル)ベンゼン、1,2−ジ(パーフルオロドデシル)ベンゼン、1,2−ジピリジニルベンゼン、1,2−ジ(2−チエニル)ベンゼン、1,2−ジ{5−(n−ヘキシル)2−チエニル}ベンゼン、1,2−ジビフェニルベンゼン等が挙げられ、好ましくは1−ブロモ−2−ヨードベンゼン、1,2−ジヘキシルベンゼン、1,2−ジドデシルベンゼン、1−ドデシル−2−フルオロベンゼン、1−ブロモ−3,4−ジフェビルベンゼン、1−ブロモ−3,4−ジ(ドデシン−1−イル)ベンゼンである。
一般式(10)で示されるハロベンゼン誘導体における置換基Xは臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくは臭素原子であり、置換基R〜Rは、好ましくは水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数4〜30のアリール基、炭素数2〜30のアルケニル基である。そして、具体的な一般式(10)で示されるベンゼン誘導体としては、例えば1−ブロモ−3,4−ジフルオロベンゼン、1−ブロモ−2,3,4,5−テトラフルオロベンゼン、1−ブロモ−3,4−ジフェニルベンゼン、1−ブロモ−3,4−ジエチルベンゼン、1−ブロモ−3,4−ジヘキシルベンゼン、1−ブロモ−3,4−ジドデシルベンゼン、1−ブロモ−3−ドデシル−4−フルオロベンゼン、1−ヨード−3,4−ジドデシルベンゼン、1−ブロモ−3,4−ジ(ヘキシン−1−イル)ベンゼン、1−ブロモ−3,4−ジ(ドデシン−1−イル)ベンゼン、1−ブロモ−3,4−ジ(p−トリフルオロメチルフェニル)ベンゼン、1−ブロモ−3,4−ジ(パーフルオロヘキシル)ベンゼン、1−ブロモ−3,4−ジ(パーフルオロドデシル)ベンゼン、1−ブロモ−3,4−ジピリジニルベンゼン、1−ブロモ−3,4−ジ(2−チエニル)ベンゼン、1−ブロモ−3,4−ジ{5−(n−ヘキシル)2−チエニル}ベンゼン、1−ブロモ−3,4−ジビフェニルベンゼン等が挙げられ、好ましくは1−ブロモ−3,4−ジフェニルベンゼン、1−ブロモ−3,4−ジ(ドデシン−1−イル)ベンゼンである。
一般式(7)で示される無水フタル酸誘導体と一般式(8)で示されるベンゼン誘導体とを塩化アルミニウム存在下に一般式(9)で示される2−ベンゾイル安息香酸誘導体を製造する工程(第1A工程)について述べる。
第1A工程では、好ましくは塩化アルミニウムに一般式(8)で示されるベンゼン誘導体を加え、一般式(7)で示される無水フタル酸誘導体を添加し、反応させて一般式(9)で示される2−ベンゾイル安息香酸誘導体を製造する。
この第1A工程は、一般式(8)で示されるベンゼン誘導体を溶媒を兼ねて過剰存在下で実施することができるが、溶媒中で実施することもできる。用いる溶媒に特に限定はなく、例えば二硫化炭素、塩化メチレン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ニトロメタン、ニトロベンゼン等を挙げることができ、好ましくはテトラクロロエタンである。
一般式(8)で示されるベンゼン誘導体の使用量は一般式(7)で示される無水フタル酸誘導体1当量に対して1〜20当量が好ましく、特に好ましくは3〜8当量である。塩化アルミニウムの使用量は無水フタル酸誘導体1当量に対して1〜8当量が好ましく、特に好ましくは1.5〜3当量である。反応温度は0〜200℃が好ましく、特に好ましくは50〜180℃である。反応時間は20分〜16時間が好ましく、特に好ましくは30分〜4時間である。反応終了後、反応液を希塩酸または希硫酸に投入し、加温して塩化アルミニウムとの錯体を分解すると目的物である一般式(8)で示される2−ベンゾイル安息香酸誘導体が析出する。この一般式(8)で示される2−ベンゾイル安息香酸誘導体は中間体としてこのままでも十分使用可能であるが、アルカリ水溶液に抽出し、希硫酸や希塩酸等で酸析し、濾取水洗乾燥して得ることも可能である。
一般式(10)で示されるハロベンゼン誘導体をリチウム化合物でリチオ化又はグリニャール化し、一般式(7)で示される無水フタル酸誘導体と反応させることで一般式(9)で示される2−ベンゾイル安息香酸誘導体を製造する工程(第1B工程)について述べる。
第1B工程で用いるリチウム化合物は特に限定はなく、一般式(10)で示されるハロベンゼン誘導体を選択的にリチオ化できるものであれば良い。具体例として、例えばメチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、フェニルリチウム、p−フルオロフェニルリチウム、m−フルオロフェニルリチウム、o−フルオロフェニルリチウム、p−クロロフェニルリチウム、3,5−ジフルオロフェニルリチウム、p−(トリフルオロメチル)フェニルリチウム、1,1’−ビフェニル−4−リチウム、1−ナフチルリチウム等を挙げることができ、好ましくはn−ブチルリチウムである。係る、アリールリチウムの調製は、対応するアリール基を有するハロゲン化アリールをn−ブチルリチウム等のアルキルリチウムを用いてハロゲンをリチオ化することで調製することができる。
また、グリニャール化で用いる反応剤としてはマグネシウム金属、エチルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムブロミド、tert−ブチルマグネシウムブロミド等を挙げることができ、好ましくはマグネシウム金属である。
第1B工程では、好ましくはリチウム化合物またはグリニャール化合物に一般式(10)で示されるハロベンゼン誘導体を加え、一般式(7)で示される無水フタル酸誘導体を添加、反応させて一般式(9)で示される2−ベンゾイル安息香酸誘導体を製造する。
この第1B工程は、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶剤に特に限定はなく、例えばテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等を挙げることができ、好ましくはテトラヒドロフランである。又、これら溶剤は1種若しくは2種以上の混合物を用いても良い。用いるリチウム化合物の量は一般式(10)で示されるハロベンゼン誘導体1当量に対し、0.5〜8当量が好ましく、特に好ましくは0.8〜3当量である。リチオ化反応の反応温度は−100〜200℃が好ましく、特に好ましくは−90〜0℃である。リチオ化反応の反応時間は0.5〜120分が好ましく、特に好ましくは1〜30分である。
一般式(10)で示されるハロベンゼン誘導体の使用量は一般式(7)で示される無水フタル酸誘導体1当量に対して1〜20当量が好ましく、特に好ましくは3〜8当量である。一般式(10)で示されるハロベンゼン誘導体をリチオ化した後、一般式(7)で示される無水フタル酸との反応の反応温度は−90〜200℃が好ましく、特に好ましくは−80〜100℃である。反応時間は1分〜36時間が好ましく、特に好ましくは3分〜12時間である。反応終了後、反応液に水または希塩酸を投入すると目的物である一般式(9)で示される2−ベンゾイル安息香酸誘導体が析出する。この一般式(9)で示される2−ベンゾイル安息香酸誘導体は中間体としてこのままでも十分使用可能であるが、アルカリ水溶液に抽出し、希硫酸や希塩酸等で酸析し、濾取水洗乾燥して得ることも可能である。
第1A工程または第1B工程で製造した一般式(9)で示される2−ベンゾイル安息香酸誘導体を、第2工程で環化して一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体を製造する。
この第2工程は通常、一般式(9)で示される2−ベンゾイル安息香酸誘導体を硫酸、発煙硫酸、活性白土、超強酸性化合物等の存在下に脱水環化することにより達成される。特に、硫酸または発煙硫酸の存在下に加熱する方法が好ましい。発煙硫酸の場合、SOの濃度は2〜30%が好ましく、特に好ましくは5〜25%である。硫酸の使用量は、一般式(9)で示される2−ベンゾイル安息香酸誘導体100重量部に対して2〜10重量部が好ましく、特に好ましくは4〜6重量部である。反応時間は0.5〜10時間が好ましく、特に好ましくは1〜3時間である。反応温度は70〜110℃が好ましく、特に好ましくは80〜110℃である。反応終了後、反応液を冷却、水に投入すると一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体が沈殿として得られる。沈殿を濾取、水洗、希アルカリ洗、水洗、乾燥して得られたもの、あるいは沈殿を有機溶剤で抽出し、抽出液を湯洗、希アルカリ洗、湯洗、濃縮して得られたものはこのままでも十分高純度であるが、更に蒸留による精製、あるいは再結晶等の精製を行っても良い。
また、該第2工程は一般式(9)で示される2−ベンゾイル安息香酸誘導体を塩化チオニル等を用いて酸クロライドに変換した後、塩化アルミニウムを用いて分子内フリーデルクラフツ反応により、一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体を合成することもできる。
本発明の一般式(1)で示されるアントラセン誘導体は、電子ペーパー及び有機EL等のフレキシブルディスプレイ、あるいはICタグ用のトランジスタの有機半導体材料に用いられるアセン類の原料として、さらに有機半導体レーザー材料の原料として利用することができる。また、本発明の一般式(1)におけるXが水素原子以外であるアントラセン誘導体は反応性の異なるハロゲン原子を有するため、反応部位を選択的に制御することが容易である。
本発明は一般式(1)で示されるアントラセン誘導体を提供する。さらに、詳細にはアントラセン誘導体は、塗布法の適用が可能であり且つ剛直棒状分子を有するため優れた半導体デバイス特性を有する有機半導体材料として期待される溶解性の高いアセン誘導体の原料を提供する。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
生成物の同定にはH NMRスペクトル及びマススペクトルを用いた。なお、H NMRスペクトルは日本電子製JEOL GSX−270WB(270MHz)を用いて、マススペクトル(MS)は日本電子製JEOL JMS−700を用いて、試料を直接導入し、電子衝突(EI)法(70エレクトロンボルト)を用いて測定した。
反応における溶媒は市販の脱水溶媒をそのまま用いた。
合成例1(4−ブロモ−5−ヨードフタル酸無水物の合成)(一般式(7)で示される無水フタル酸誘導体の合成)
4−ブロモ−5−ヨードフタル酸無水物は「ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー」(米国)、1951年、16巻、1577−1581頁を参考に、以下の様に合成した。
4−ブロモフタルイミド(東京化成工業製)13.3g(58.9mmol)を窒素ガスで置換した100mlの二口ナスフラスコに入れた。次いでヨウ素7.78g(30.6mmol)及び10%発煙硫酸(ヨツハタ化学工業製)50mlを加え、90℃で23時間反応を行った。
反応混合物を室温に冷やして氷に注ぎ入れた後、ガラスフィルターでろ過し、黄色固体17.1gを得た。得られた固体を濃硫酸47mlに溶解させ、130℃で5時間反応を行った。反応混合物を氷冷後、氷水を加えて析出した固体をろ過し、フタル酸誘導体の固体18.5gを得た。次に水酸化ナトリウム4.8gを水24mlに溶かした水溶液に得られた固体を室温で溶かした。この塩基性水溶液に酢酸を加えpHを3〜4に中和し、析出するフタル酸誘導体のモノナトリウム塩の白色沈殿をろ過した。得られた白色沈殿を水に懸濁させ、濃塩酸でpHを1以下にし、再びフタル酸誘導体として白色固体7.75gを得た。この固体をトルエン70mlに溶かし、無水酢酸13ml(138mmol)を加え、105℃で4時間反応を行った。反応液を減圧濃縮して白色固体6.9gを得た。この固体を加熱トルエンで再結晶し、目的の4−ブロモ−5−ヨードフタル酸無水物を6.79g(19.2mmol)を得た。(収率32.7%)。
H NMR(CDCl,22℃):δ=8.51(s,1H),8.23(s,1H)。
MS m/z: 353(M,100%),309(M−CO,18%),282(M−C,10%),155(M−CI,16%),74(M−CIBr,32%)。
H NMRスペクトルを図1に示した。
合成例2(1,2―ジドデシルベンゼンの合成)(一般式(8)で示されるベンゼン誘導体の合成)
1,2―ジドデシルベンゼンは「日本化学会誌」1989年、6巻、983−987頁に従い以下の様に合成した。
1,2−ジクロロベンゼン2.22g(15.1mmol)、ジクロロ〔1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン〕ニッケル(東京化成工業製)131mg(0.24mmol)、乾燥ジエチルエーテル11.5mlの混合液にドデシルマグネシウムブロミド(シグマ−アルドリッチ製、1.0mol/lジエチルエーテル溶液)45ml(45.0mmol)を窒素雰囲気中0℃で滴下した。35℃で20時間反応を行い、反応混合物を0℃に冷やして希塩酸を加え、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル溶液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水の順に洗浄し、塩化カルシウムで乾燥させた。得られた液体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)及び減圧蒸留で精製し、目的の1,2―ジドデシルベンゼンを5.56g(13.4mmol)を得た。(収率88.5%)。
H NMR(CDCl,22℃):δ=7.11(m,4H),2.59(t,J=7.8Hz,4H),1.55(m,4H),1.26(m,36H),0.88(t,J=6.8Hz,6H)。
MS m/z: 414(M,100%),260(M−C1123,71%),106(M−C2246,98%)。
H NMRスペクトルを図2に示した。
合成例3(1−ブロモ−3,4−ジヨードベンゼンの合成)
1,2−ジヨードベンゼン(東京化成工業製)3.08g(9.32mmol)に窒素雰囲気中、乾燥ジクロロメタン20ml、鉄粉67mg(1.20mmol)、ヨウ素10mg(0.04mmol)を加えた。混合液を0℃に冷却し、臭素0.48ml(9.37mmol)を加えて1.5時間反応させた。反応混合液に3mol/l水酸化ナトリウム水溶液と3mol/l硫酸水素ナトリウム水溶液を加えて塩基性にし、塩化メチレンで抽出して有機層を水で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥し、塩化メチレンを減圧留去して黄色液体を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)で無機物及び着色成分を除き、THFとメタノールの混合溶媒から再結晶して目的の1−ブロモ−3,4−ジヨードベンゼン2.67g(6.53mmol)を得た。(収率70.1%)。
合成例4(1−ブロモ−3,4−ジフェニルベンゼンの合成)(一般式(10)で示されるハロベンゼン誘導体の合成)
合成例3で得られた1−ブロモ−3,4−ジヨードベンゼン2.15g(5.25mmol)にジヒドロキシフェニルボラン(和光純薬工業製)1.47g(12.1mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)458mg(0.40mmol)、炭酸ナトリウム3.34g(31.5mmol)、トルエン42ml、エタノール10.5ml、水13.3mlを加え、80℃で29時間反応させた。1M塩酸水溶液を加えて反応をクエンチし、トルエンで抽出した後、有機層を水洗浄して硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)で精製して目的の1−ブロモ−3,4−ジフェニルベンゼン1.46g(4.72mmol)を得た。(収率89.9%)。
合成例5(1−ブロモ−3,4−ジ(ドデシン−1−イル)ベンゼンの合成)(一般式(10)で示されるハロベンゼン誘導体の合成)
合成例3で得られた1−ブロモ−3,4−ジヨードベンゼン1.84g(4.50mmol)を窒素置換した500mlシュレンクに入れ、ヨウ化銅90mg(0.47mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成製)272mg(0.24mmol)、乾燥THF59ml、トリエチルアミン2.29g(22.2mmol)、1−ドデシン1.57g(9.47mmol)を加えた。この反応混合物を室温で26時間反応させた。1M塩酸水溶液を加えて反応をクエンチし、トルエンで抽出した後、有機層を水洗浄して硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジエチルエーテルとヘキサンの混合液)で精製して目的の1−ブロモ−3,4−ジ(ドデシン−1−イル)ベンゼン1.52g(3.14mmol)を得た。(収率69.8%)。
合成例6(1−ドデシル−2−フルオロベンゼンの合成)(一般式(8)で示されるベンゼン誘導体の合成)
1−クロロ−2−フルオロベンゼン(東京化成工業製)1.31g(10.0mmol)、ジクロロ〔1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン〕ニッケル(東京化成工業製)43mg(0.08mmol)、乾燥ジエチルエーテル7.6mlの混合液にドデシルマグネシウムブロミド(シグマ−アルドリッチ製、1.0mol/lジエチルエーテル溶液)14.9ml(14.9mmol)を窒素雰囲気中0℃で滴下した。35℃で20時間反応を行い、反応混合物を0℃に冷やして希塩酸を加え、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル溶液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水の順に洗浄し、塩化カルシウムで乾燥させた。得られた液体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)及び減圧蒸留で精製し、目的の1−ドデシル−2−フルオロベンゼンを1.23g(9.45mmol)を得た。(収率94.5%)。
実施例1(6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジドデシルアントラキノンの合成)(一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体の合成)
合成例1で得られた4−ブロモ−5−ヨードフタル酸無水物6.79g(19.2mmol)、合成例2で得られた1,2−ジドデシルベンゼン7.97g(19.2mmol)、テトラクロロエタン12.0mlの混合液に塩化アルミニウム5.78g(43.4mmol)を加え、室温で3時間反応を行った。水を加えてクエンチし、さらに水洗浄を行い、テトラクロロエタンを減圧留去することで、3’,4’−ジドデシル−4−ブロモ−5−ヨードベンゾフェノンカルボン酸及び3’,4’−ジドデシル−5−ブロモ−4−ヨードベンゾフェノンカルボン酸の混合物14.6g得た(収率99%)(一般式(9)で示される2−ベンゾイル安息香酸誘導体)。その生成物の構造式を以下に示す。
Figure 0005417708
この3’,4’−ジドデシル−4−ブロモ−5−ヨードベンゾフェノンカルボン酸及び3’,4’−ジドデシル−5−ブロモ−4−ヨードベンゾフェノンカルボン酸の混合物10.0g(13.0mmol)を濃硫酸77mlに溶かし、80℃で1時間反応した(環化反応)。反応混合物を氷に注ぎ入れ、析出した固体をろ過して水で洗浄した。乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル,10:1)及びヘプタンからの再結晶で精製し、6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジドデシルアントラキノンの黄色粉末を5.98g(7.97mmol)得た。(収率61.2%)。
H NMR(CDCl,22℃):δ=8.73(s,1H),8.45(s,1H),8.05(s,2H),2.75(m,4H),1.62(m,4H),1.26(m,36H),0.88(m,6H)。
MS m/z: 750(M,100%),440(M−C2246,8%),313(M−C2246I,2%),233(M−C2246IBr,1%)。
H NMRスペクトルを図3に示した。生成物の構造式を以下に示す。
Figure 0005417708
実施例2(6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジドデシルアントラセンの合成)
(一般式(1)で示されるアントラセン誘導体の合成)
実施例1で合成した6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジドデシルアントラキノン383mg(0.53mmol)を窒素ガスで置換した50mlのシュレンク管に入れた。次いでTHF6.0mlを加え、水素化ジイソブチルアルミニウム(関東化学製、0.99mol/l、トルエン溶液)1.30ml(1.29mmol)を加え、室温で1.5時間還元反応を行った。得られた6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジドデシル−9,10−ジヒドロキシ−9,10−ジヒドロアントラセン(一般式(3)で示される化合物)を含む反応混合物に6M塩酸水溶液3.5mlを加え、65℃で3時間脱水反応を行った。反応混合物を室温まで冷やし、ジエチルエーテルで抽出した。エーテル溶液を飽和食塩水で洗浄して硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧乾燥し、6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジドデシルアントロン及び7−ブロモ−6−ヨード−2,3−ジドデシルアントロン(一般式(4)で示されるアントロン誘導体)を主成分とする固体395mgを得た。この主生成物の構造式を以下に示す。
Figure 0005417708
得られた6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジドデシルアントロン及び7−ブロモ−6−ヨード−2,3−ジドデシルアントロンを主成分とする固体395mgにTHF6.0mlを加え、水素化ジイソブチルアルミニウム1.90ml(1.88mmol)を加え、室温で1.5時間還元反応を行った。次いで6M塩酸水溶液3.5mlを加え、3時間脱水反応を行った。反応混合物を室温まで冷やし、ジエチルエーテルで抽出した。エーテル溶液を飽和食塩水で洗浄して硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)で精製し、6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジドデシルアントラセンの黄色固体を219mg(0.30mmol)得た。(収率59.6%)。
H NMR(CDCl,22℃):δ=8.55(s,1H),8.27(s,1H),8.16(s,1H),8.15(s,1H),7.72(s,2H),2.78(m,4H),1.71(m,4H),1.27(m,36H)0.88(m,6H)。
MS m/z: 720(M,100%),410(M−C2246,16%),283(M−C2246I,4%),203(M−C2246IBr,5%)。
H NMRスペクトルを図4に示した。生成物の構造式を以下に示す。
Figure 0005417708
得られたアントラセンは、ハロゲン原子が異なる(本発明の一般式(1)においてX及びXが異なる原子)ことから、一方のみを選択的に反応させることが可能であり、選択性に優れるものである。
実施例3(6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジフェニルアントラキノンの合成)(一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体の合成)
合成例4で得られた1−ブロモ−3,4−ジフェニルベンゼン1.46g(4.72mmol)を窒素ガスで置換した300mlのシュレンク管に入れた。次いでTHF28.3mlを加えて−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.59mol/l、ヘキサン溶液)3.0ml(4.77mmol)を加え、30分間反応させた。次いで合成例1で得られた4−ブロモ−5−ヨードフタル酸無水物1.66g(4.72mmol)を加え、室温まで昇温した。水を加えてクエンチし、さらに水洗浄を行い、3’,4’−ジフェニル−4−ブロモ−5−ヨードベンゾフェノンカルボン酸及び3’,4’−ジフェニル−5−ブロモ−4−ヨードベンゾフェノンカルボン酸の混合物を2.6g得た(収率96%)。(一般式(9)で示される2−ベンゾイル安息香酸誘導体)この生成物の構造式を以下に示す。
Figure 0005417708
得られた3’,4’−ジフェニル−4−ブロモ−5−ヨードベンゾフェノンカルボン酸及び3’,4’−ジフェニル−5−ブロモ−4−ヨードベンゾフェノンカルボン酸の混合物2.6g(4.5mmol)を濃硫酸26mlに溶かし、80℃で1時間反応した(環化反応)。反応混合物を氷に注ぎ入れ、析出した固体をろ過して水で洗浄した。乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/塩化メチレン,10:1)及びヘプタンからの再結晶で精製し、6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジフェニルアントラキノンの黄色粉末を298mg(0.53mmol)得た。(収率11.2%)。
生成物の構造式を以下に示す。
Figure 0005417708
実施例4(6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジフェニルアントラセンの合成)(一般式(1)で示されるアントラセン誘導体の合成)
実施例3で合成した6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジフェニルアントラキノン243mg(0.43mmol)を窒素ガスで置換した50mlのシュレンク管に入れた。次いでTHF4.9mlを加え、水素化ジイソブチルアルミニウム(関東化学製、0.99mol/l、トルエン溶液)1.20ml(1.20mmol)を加え、室温で1.5時間還元反応を行った。得られた6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジフェニル−9,10−ジヒドロキシ−9,10−ジヒドロアントラセン(一般式(3)で示される化合物)を含む反応混合物に6M塩酸水溶液2.9mlを加え、65℃で3時間脱水反応を行った。反応混合物を室温まで冷やし、ジエチルエーテルで抽出した。エーテル溶液を飽和食塩水で洗浄して硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧乾燥し、6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジフェニルアントロン及び7−ブロモ−6−ヨード−2,3−ジフェニルアントロンを主成分とする個体248mgを得た(一般式(4)で示されるアントロン誘導体)。この主生成物の構造式を以下に示す。
Figure 0005417708
得られた6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジフェニルアントロン及び7−ブロモ−6−ヨード−2,3−ジフェニルアントロンを主成分とする固体248mgにTHF4.9mlを加え、水素化ジイソブチルアルミニウム1.20ml(1.20mmol)を加え、室温で1.5時間還元反応を行った。次いで反応混合物に6M塩酸水溶液2.9mlを加え、3時間脱水反応を行った。反応混合物を室温まで冷やし、ジエチルエーテルで抽出した。エーテル溶液を飽和食塩水で洗浄して硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)で精製し、6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジフェニルアントラセンの黄色固体を128mg(0.24mmol)得た。(収率56.6%)。
生成物の構造式を以下に示す。
Figure 0005417708
得られたアントラセンは、ハロゲン原子が異なる(本発明の一般式(1)においてX及びXが異なる原子)ことから、一方のみを選択的に反応させることが可能であり、選択性に優れるものである。
実施例5(6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジ(ドデシン−1−イル)アントラキノンの合成)(一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体の合成)
合成例5で得られた1−ブロモ−3,4−ジ(ドデシン−1−イル)ベンゼン1.52g(3.14mmol)を窒素ガスで置換した300mlのシュレンク管に入れた。次いでTHF18.8mlを加えて−95℃に冷却し、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.59mol/l、ヘキサン溶液)2.0ml(3.18mmol)を加え、30分間反応させた。次いで合成例1で得られた4−ブロモ−5−ヨードフタル酸無水物1.10g(3.14mmol)を加え、室温まで昇温した。水を加えてクエンチし、さらに水洗浄を行い、1−ブロモ−3,4−ジ(ドデシン−1−イル)ベンゼン及び3’,4’−ジ(ドデシン−1−イル)−5−ブロモ−4−ヨードベンゾフェノンカルボン酸の混合物を2.3g(3.1mmol)得た(収率98%)(一般式(9)で示される2−ベンゾイル安息香酸誘導体)。この生成物の構造式を以下に示す。
Figure 0005417708
得られた1−ブロモ−3,4−ジ(ドデシン−1−イル)ベンゼン及び3’,4’−ジ(ドデシン−1−イル)−5−ブロモ−4−ヨードベンゾフェノンカルボン酸の混合物2.3g(3.1mmol)を濃硫酸17mlに溶かし、80℃で1時間反応した(環化反応)。反応混合物を氷に注ぎ入れ、析出した固体をろ過して水で洗浄した。乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/塩化メチレン,10:1)及びヘプタンからの再結晶で精製し、6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジ(ドデシン−1−イル)アントラキノンの黄色粉末を245mg(0.33mmol)得た。(収率11.2%)。この生成物の構造式を以下に示す。
Figure 0005417708
実施例6(6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジ(ドデシン−1−イル)アントラセンの合成)(一般式(1)で示されるアントラセン誘導体の合成)
実施例5で合成した6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジ(ドデシン−1−イル)アントラキノン245mg(0.33mmol)を窒素ガスで置換した50mlのシュレンク管に入れた。次いでTHF3.8mlを加え、水素化ジイソブチルアルミニウム(関東化学製、0.99mol/l、トルエン溶液)0.70ml(0.70mmol)を加え、室温で1.5時間還元反応を行った。得られた6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジ(ドデシン−1−イル)−9,10−ジヒドロキシ−9,10−ジヒドロアントラセン(一般式(3)で示される化合物)を含む反応混合物に6M塩酸水溶液2.0mlを加え、65℃で3時間脱水反応を行った。反応混合物を室温まで冷やし、ジエチルエーテルで抽出した。エーテル溶液を飽和食塩水で洗浄して硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧乾燥し、6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジ(ドデシン−1−イル)アントロン及び7−ブロモ−6−ヨード−2,3−ジ(ドデシン−1−イル)アントロンを主成分とする固体251mgを得た(一般式(4)で示されるアントロン誘導体)。この主生成物の構造式を以下に示す。
Figure 0005417708
得られた6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジ(ドデシン−1−イル)アントロン及び7−ブロモ−6−ヨード−2,3−ジ(ドデシン−1−イル)アントロンを主成分とする固体251mgにTHF3.8mlを加え、水素化ジイソブチルアルミニウム0.70ml(0.70mmol)を加え、室温で1.5時間還元反応を行った。次いで反応混合物に6M塩酸水溶液2.0mlを加え、3時間脱水反応を行った。反応混合物を室温まで冷やし、ジエチルエーテルで抽出した。エーテル溶液を飽和食塩水で洗浄して硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)で精製し、6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジ(ドデシン−1−イル)アントラセンの黄色固体を102mg(0.14mmol)得た。(収率43.7%)。
生成物の構造式を以下に示す。
Figure 0005417708
得られたアントラセンは、ハロゲン原子が異なる(本発明の一般式(1)においてX及びXが異なる原子)ことから、一方のみを選択的に反応させることが可能であり、選択性に優れるものである。
実施例7(6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジドデシル−9,10−ジフェニルアントラセンの合成)(一般式(1)で示されるアントラセン誘導体の合成)
窒素ガスで置換した50mlのシュレンク管にTHF8.6mlを加え−78℃に冷やし、フェニルリチウム(関東化学製、1.0mol/l、シクロヘキサン、ジエチルエーテル溶液)1.10ml(1.10mmol)を加えた。次いで実施例1で合成した6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジドデシルアントラキノン383mg(0.51mmol)を加え、室温まで昇温させて一晩撹拌した。1M塩酸水溶液5.6mlを加えて反応をクエンチし、ジクロロメタンで抽出した。エーテル溶液を飽和食塩水で洗浄して硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧乾燥し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジエチルエーテル/ジクロロメタン)で精製して6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジドデシル−9,10−ジヒドロキシ−9,10−ジフェニルアントラセンを主成分とする固体277mgを得た(一般式(6)で示される9,10−ジヒドロキシアントラセン誘導体)。この生成物の構造式を以下に示す。
Figure 0005417708
得られた6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジドデシル−9,10−ジヒドロキシ−9,10−ジフェニルアントラセンを含む固体277mgにヨウ化ナトリウム310mg(2.10mmol)、次亜りん酸ナトリウム350mg(2.91mmol)、酢酸7.3mlを加え、1.5時間加熱還流させて還元反応を行った。加熱終了後、析出する固体をろ過し、固体を水とメタノールで洗浄し、6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジドデシル−9,10−ジフェニルアントラセンの固体を227mg(0.26mmol)得た。(収率85%)。
生成物の構造式を以下に示す。
Figure 0005417708
得られたアントラセンは、ハロゲン原子が異なる(本発明の一般式(1)においてX及びXが異なる原子)ことから、一方のみを選択的に反応させることが可能であり、選択性に優れるものである。
実施例8(2−ブロモ−3−ヨード−6−ドデシル−7−フルオロアントラキノンの合成)(一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体の合成)
合成例1で得られた4−ブロモ−5−ヨードフタル酸無水物3.34g(9.45mmol)、合成例6で得られた1−ドデシル−2−フルオロベンゼン1.23g(9.45mmol)、テトラクロロエタン6.0mlの混合液に塩化アルミニウム2.84g(21.4mmol)を加え、室温で3時間反応を行った。水を加えてクエンチし、さらに水洗浄を行い、テトラクロロエタンを減圧留去することで、3’−ドデシル−4’−フルオロ−4−ブロモ−5−ヨードベンゾフェノンカルボン酸及び3’−ドデシル−4’−フルオロ−5−ブロモ−4−ヨードベンゾフェノンカルボン酸及び4’−ドデシル−3’−フルオロ−4−ブロモ−5−ヨードベンゾフェノンカルボン酸及び4’−ドデシル−3’−フルオロ−5−ブロモ−4−ヨードベンゾフェノンカルボン酸の混合物7.2g得た(収率99%)(一般式(9)で示される2−ベンゾイル安息香酸誘導体)。その生成物の構造式を以下に示す。
Figure 0005417708
この3’−ドデシル−4’−フルオロ−4−ブロモ−5−ヨードベンゾフェノンカルボン酸及び3’−ドデシル−4’−フルオロ−5−ブロモ−4−ヨードベンゾフェノンカルボン酸及び4’−ドデシル−3’−フルオロ−4−ブロモ−5−ヨードベンゾフェノンカルボン酸及び4’−ドデシル−3’−フルオロ−5−ブロモ−4−ヨードベンゾフェノンカルボン酸の混合物7.2g(6.4mmol)を濃硫酸38mlに溶かし、80℃で1時間反応した(環化反応)。反応混合物を氷に注ぎ入れ、析出した固体をろ過して水で洗浄した。乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル,10:1)及びヘプタンからの再結晶で精製し、2−ブロモ−3−ヨード−6−ドデシル−7−フルオロアントラキノンの黄色粉末を1.26g(2.10mmol)得た。(収率22.2%)。
Figure 0005417708
実施例9(2−ブロモ−3−ヨード−6−ドデシル−7−フルオロアントラセンの合成)(一般式(1)で示されるアントラセン誘導体の合成)
実施例8で合成した2−ブロモ−3−ヨード−6−ドデシル−7−フルオロアントラキノン1.26mg(2.10mmol)を窒素ガスで置換した200mlのシュレンク管に入れた。次いでTHF24.0mlを加え、水素化ジイソブチルアルミニウム(関東化学製、0.99mol/l、トルエン溶液)5.20ml(5.11mmol)を加え、室温で1.5時間還元反応を行った。得られた2−ブロモ−3−ヨード−6−ドデシル−7−フルオロ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−ジヒドロアントラセン(一般式(3)で示される化合物)を含む反応混合物に6M塩酸水溶液14.0mlを加え、65℃で3時間脱水反応を行った。反応混合物を室温まで冷やし、ジエチルエーテルで抽出した。エーテル溶液を飽和食塩水で洗浄して硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧乾燥し、3−ブロモ−2−ヨード−7−ドデシル−6−フルオロアントロン及び2−ブロモ−3−ヨード−6−ドデシル−7−フルオロアントロン(一般式(4)で示されるアントロン誘導体)を主成分とする固体1.56gを得た。この主生成物の構造式を以下に示す。
Figure 0005417708
得られた3−ブロモ−2−ヨード−7−ドデシル−6−フルオロアントロン及び2−ブロモ−3−ヨード−6−ドデシル−7−フルオロアントロンを主成分とする固体1.56gにTHF24.0mlを加え、水素化ジイソブチルアルミニウム5.20ml(5.11mmol)を加え、室温で1.5時間還元反応を行った。次いで6M塩酸水溶液14.0mlを加え、3時間脱水反応を行った。反応混合物を室温まで冷やし、ジエチルエーテルで抽出した。エーテル溶液を飽和食塩水で洗浄して硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)で精製し、2−ブロモ−3−ヨード−6−ドデシル−7−フルオロアントラセンの黄色固体を868mg(3.96mmol)得た。(収率59.6%)。
生成物の構造式を以下に示す。
Figure 0005417708
得られたアントラセンは、ハロゲン原子が異なる(本発明の一般式(1)においてX及びXが異なる原子)ことから、一方のみを選択的に反応させることが可能であり、選択性に優れるものである。
比較例1(特開2007−224011号公報記載のアントラセンの合成)(本発明の一般式(1)においてX及びXが同一原子である場合)
窒素ガスで置換した100mlのシュレンク管に2,3−ジブロモアントラセン443mg(1.32mmol)と乾燥THF46mlを加え−83℃に冷やした。次いでn−ブチルリチウム(関東化学製、1.59mol/l、ヘキサン溶液)2.5ml(4.0mmol)を加え、30分間撹拌した。反応混合物にヨウ素1.67g(6.59mmol)とTHF8mlから成る混合物を滴下し、室温まで昇温した。1M塩酸水溶液を加えて反応をクエンチし、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル溶液を飽和食塩水で洗浄して硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧乾燥した。得られた固体のうち、3−ブロモ−2−ヨードアントラセンは269mg(0.70mmol)得られた(収率53%)。
得られたアントラセンは、ハロゲン原子が同じ(本発明の一般式(1)においてX及びXが同一原子)であることから、一方のみを選択的に反応させることが困難である。
合成例1で合成した4−ブロモ−5−ヨードフタル酸無水物のH NMRスペクトル 合成例2で合成した1,2−ジドデシルベンゼンのH NMRスペクトル 実施例1で合成した6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジドデシルアントラキノンのH NMRスペクトル 実施例2で合成した6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジドデシルアントラセンのH NMRスペクトル

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)で示されることを特徴とするアントラセン誘導体。
    Figure 0005417708
    (式中、置換基Xは、臭素原子又はヨウ素原子を表し、Xは、臭素原子又はヨウ素原子を表し、R〜R及びRが水素原子を表し、R及びRがフッ素原子、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数4〜30のアリール基、炭素数2〜20のアルキニル基からなる群より選ばれる基を表し、R〜Rが水素原子を表す。但し、置換基XとXが同一原子である場合を除く。)
  2. 一般式(1)で示されるアントラセン誘導体において、置換基Xは、臭素原子、Xは、ヨウ素原子であることを特徴とする請求項1に記載のアントラセン誘導体。
  3. 一般式(1)で示されるアントラセン誘導体において、Rがフッ素原子、ドデシル基、フェニル基、ドデシン−1−イル基からなる群より選ばれる基、Rがドデシル基、フェニル基、ドデシン−1−イル基からなる群より選ばれる基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアントラセン誘導体。
  4. 一般式(1)で示されるアントラセン誘導体が、6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジドデシルアントラセン、6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジフェニルアントラセン、6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジ(ドデシン−1−イル)アントラセン、2−ブロモ−3−ヨード−6−ドデシル−7−フルオロアントラセンからなる群より選ばれるアントラセン誘導体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアントラセン誘導体。
  5. 下記一般式(2)で示されることを特徴とするアントラキノン誘導体。
    Figure 0005417708
    (式中、置換基X は、臭素原子、X は、ヨウ素原子であり,R〜Rは、請求項1に記載の一般式(1)で示される置換基と同意義を示す。)
  6. 一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体において、Rがフッ素原子、ドデシル基、フェニル基、ドデシン−1−イル基からなる群より選ばれる基、Rがドデシル基、フェニル基、ドデシン−1−イル基からなる群より選ばれる基であることを特徴とする請求項5に記載のアントラキノン誘導体。
  7. 一般式(2)で示されるアントラキノン誘導体が、6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジドデシルアントラキノン、6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジフェニルアントラキノン、6−ブロモ−7−ヨード−2,3−ジ(ドデシン−1−イル)アントラキノン、2−ブロモ−3−ヨード−6−ドデシル−7−フルオロアントラキノンからなる群より選ばれるアントラキノン誘導体であることを特徴とする請求項5又は6に記載のアントラキノン誘導体。
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