次に、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の蒸気システムは、ボイラなどの蒸気発生装置から供給されてくる加圧蒸気の流入・流出により駆動力を発生させる蒸気式原動機と、この蒸気式原動機が発生する駆動力によって駆動される空気圧縮機などの被動機を備える。蒸気式原動機は、それから流出する蒸気を蒸気利用対象へ向けて供給する機能を併せ有している。被動機は、その駆動によって、外部から流体を取り入れ吐出流路を介して流体利用対象へ向けて吐出する機能を有している。
蒸気式原動機は、蒸気を用いて動力を起こす蒸気エンジンである。蒸気エンジンは、蒸気タービンでもよいが、好適にはスクリュ式蒸気エンジンである。スクリュ式蒸気エンジンは、互いに噛み合うスクリュロータ間に蒸気が導入され、その蒸気によりスクリュロータを回転させつつ蒸気を膨張して減圧し、その際のスクリュロータの回転により動力を得る装置である。
被動機は、蒸気エンジンにより駆動され、流体を吐出する装置である。具体的には、被動機は、ポンプ、送風機または圧縮機などである。
被動機は、たとえば空気圧縮機とされる。空気圧縮機は、往復式や回転式などその種類を問わないが、好適にはスクリュ式圧縮機である。スクリュ式圧縮機は、互いに噛み合って回転するスクリュロータ間に気体を吸入して、スクリュロータの回転により気体を圧縮して吐出する装置である。
蒸気エンジンには、ボイラなどから給蒸路を介して蒸気が供給される。ボイラなどからの蒸気は、蒸気溜めとも言われる蒸気ヘッダ(第一蒸気ヘッダ)に供給され、その蒸気ヘッダの蒸気が給蒸路を介して蒸気エンジンに供給されてもよい。
蒸気エンジンにて使用後の蒸気は、排蒸路を介して排出される。蒸気エンジンは、蒸気を減圧するものであるから減圧弁としても機能する。それ故、蒸気エンジンにて使用後の蒸気は、一般的な減圧弁通過後の蒸気と同様に利用可能である。すなわち、一般的に、ボイラなどからの蒸気は減圧弁を介して蒸気利用機器に供給されるが、それと同様に、蒸気エンジンにて使用後の蒸気も蒸気利用機器に供給できる。この際、蒸気エンジンからの蒸気は、排蒸路を介して蒸気ヘッダ(第二蒸気ヘッダ)に供給され、その蒸気ヘッダの蒸気が蒸気利用機器に供給される。
蒸気エンジンの制御は、蒸気エンジンへの給蒸の量を制御してなされる。具体的には、蒸気エンジンへの給蒸路に給蒸弁を設け、この給蒸弁の開度を制御する。これにより、蒸気エンジンへの給蒸量を調整でき、蒸気エンジンの作動出力を変更できる。
たとえば、蒸気エンジンがスクリュ式蒸気エンジンの場合、給蒸弁の開度を制御してスクリュ式蒸気エンジンへの給蒸量を調整し、スクリュ式蒸気エンジンの出力を変更することができる。
ただし、蒸気エンジンの制御は、以上の構成に限らない。すなわち、蒸気エンジンは、給蒸量が変更可能であれば足り、給蒸路に給蒸弁を設けて、その給蒸弁により制御する必要は必ずしもない。たとえば、前述したように、蒸気エンジンに対する給蒸路と排蒸路とをバイパス路で接続し、このバイパス路に設けたバイパス弁の開閉または開度を制御してもよい。また、前述の給蒸弁に加えて、このバイパス弁を設けてもよい。
蒸気エンジンは、被動機により流体が吐出される空間内の流体負荷と、蒸気エンジンの出口側の蒸気負荷とを用いて給蒸を制御される。
ここで、流体負荷とは、被動機により流体が吐出される空間内の流体の負荷である。具体的には、被動機がポンプ、送風機または圧縮機の場合、これが吐出する空間内の流体の使用量である。流体負荷は、被動機により流体が吐出される空間内の圧力により検出できる。
一方、蒸気負荷とは、蒸気エンジンにて使用後の蒸気が供給される箇所の蒸気の使用量である。この蒸気負荷は、蒸気エンジンにて使用後の蒸気が供給される箇所の蒸気圧により検出できる。たとえば、蒸気エンジンからの排蒸路またはその先に設けられる第二蒸気ヘッダ内の蒸気圧に基づき、蒸気の使用負荷(蒸気負荷)を検出できる。すなわち、蒸気利用機器にて蒸気が使用される場合には、排蒸路内または第二蒸気ヘッダ内の蒸気圧が下がるので蒸気負荷を検出できる。
このように、流体負荷も蒸気負荷も、圧力にて検出するのが簡易である。したがって、被動機により流体が吐出される空間内の圧力と、蒸気エンジンにて使用後の蒸気が供給される箇所の蒸気圧とを用いて蒸気エンジンへの給蒸を制御することができる。
給蒸の制御は、ボイラからの加圧蒸気の流路である給蒸路の部分で行うのでもよいし、あるいは排蒸路の部分で行うのでもよい。
給蒸制御手段はより具体的には、被動機の吐出流路に配された流体圧力センサと、蒸気式原動機からの蒸気の流路に配された蒸気圧力センサと、流体圧力センサの検出信号をデジタルデータに変換するAD変換部と、蒸気圧力センサの検出信号をデジタルデータに変換するAD変換部と、両AD変換部のデータを用いて給蒸弁に対する制御信号を生成するマイクロコンピュータとを備えた構成が好ましい。
蒸気式原動機に対する給蒸を制御する給蒸制御手段は、被動機から吐出される流体に関する負荷の情報である流体負荷と、蒸気式原動機を流入・流出する蒸気に関する負荷の情報である蒸気負荷との少なくとも2つの要素を用いて蒸気式原動機に対する給蒸を制御する。流体負荷と蒸気負荷を考慮して給蒸を制御するので、単に流体負荷だけで給蒸を制御する場合に比べてより高い運転効率が得られる。
上記において、前記の内圧制御手段の好ましい1態様として、被動機の吐出流路から分岐された外部放出流路に流体放出弁を介挿することが考えられる。被動機が空気圧縮機の場合は、空気圧縮機の吐出流路から分岐された放気流路に放気弁を介挿する例が考えられる。弁としては、電磁弁でも電動弁でもよい。
より具体的には、内圧制御手段の主制御部を給蒸制御手段の主制御部とともにマイクロコンピュータ(またはマイクロコントローラ、以下同様)で構成することとする。空気圧縮機の吐出流路に設けた圧力センサでの検出圧力、あるいは空気圧縮機の流入の検出圧力と吐出の検出圧力との差分値、あるいは空気圧縮機の回転軸について検出した回転数または回転周波数、あるいは吐出する圧縮空気の流量、あるいは吐出する圧縮空気の流速などについての検出信号値または検出データ値をマイクロコンピュータに入力する。マイクロコンピュータは、入力した信号値またはデータ値に基づいて空気圧縮機または蒸気式原動機の負荷率を求め、得られた負荷率(または相当情報)に応じた制御信号を生成し、この制御信号によって放気弁を制御する。
上記における前記の内圧制御手段による減圧・減圧解除の制御については、負荷率との関係においてヒステリシス制御とするのが運転安定化にとって好ましい。すなわち、負荷率に関して、第1の負荷率値と第2の負荷率値とを設定する。第1の負荷率値は第2の負荷率値より小さいものとする。内圧制御手段は、負荷率が第1の負荷率値をそれ以上の値からそれ未満の値へと遷移したときに減圧制御動作を開始し、負荷率が第2の負荷率値をそれより小さい値からそれ以上の値へと遷移したときに減圧解除制御動作を開始する。
もし、減圧・減圧解除の遷移時の負荷率値をただ1つだけ定めたとする。この負荷率値を負荷率閾値とする。負荷率が負荷率閾値を下回ると減圧制御動作となり、負荷率が負荷率閾値を下回ると減圧解除制御動作となる。これでは、負荷率が負荷率閾値の前後で振れるとき、減圧制御動作と減圧解除制御動作とが頻繁に繰り返されることとなり(ハンチング動作)、制御の不安定化現象を招来してしまうことになる。
これに対して、上記のように動作隙間(ディファレンシャル)を確保するための第1の負荷率値と第2の負荷率値とを用いてヒステリシス制御を行うこととすると、負荷率が第1の負荷率値と第2の負荷率値との間のある負荷率値の前後で振れたとしても、第1の負荷率値を下回らなければ減圧解除制御動作が維持され、また第2の負荷率値を上回らなければ減圧制御動作が維持されることとなる。その結果として、制御の安定化(ハンチング防止)を図ることが可能となる。
本発明の主要な課題は、前述のとおり、蒸気式原動機や被動機の停止・再起動の頻繁な繰り返しの抑制を通じて運転形態を高安定性に維持し、もって運転効率の向上を実効あるものにすることにあるが、本項の負荷率との関係における減圧・減圧解除のヒステリシス制御は運転安定化にとってさらに好ましい結果を招来することになる。
上記において、前記の内圧制御手段を流体放出弁とする場合には、前記の負荷率が第1の負荷率値を下方へ遷移したときに開弁し、負荷率が第2の負荷率値を上方へ遷移したときに閉弁するように構成するのが好ましい態様である。すなわち、減圧制御動作時には流体放出弁を開弁し、減圧解除制御動作時には流体放出弁を閉弁するものである。これは、減圧・減圧解除の遷移制御の態様として最も簡易なもののひとつであり、制御の安定性を担保する。
また、前記内圧制御手段を流体放出弁とする場合、上記のような開閉弁としてもよいが、負荷率(または相当情報)を一定に保つように開度調整可能な弁としてもよい。
上記における内圧制御手段で用いられる負荷率については、被動機の吐出流路に配された圧力センサによる検出圧力に基づいて求めるのが好ましい。この検出圧力は、もう1つの制御手段である給蒸制御手段で用いられるものであり、兼用による構成の簡素化が促進される。なお、検出圧力が兼用されても、それは制御の独立性を侵すものではない。
あるいは、上記における内圧制御手段で用いられる負荷率については、蒸気式原動機の吐出流路に配された第二圧力センサによる検出圧力に基づいて求めるのでもよい。
あるいは、上記における内圧制御手段で用いられる負荷率については、被動機の吐出流路に配された第一圧力センサによる検出圧力に基づいて求められる負荷率と、蒸気式原動機の吐出流路に配された第二圧力センサによる検出圧力に基づいて求められる負荷率とが選択切り替えされるように構成されているのでもよい。
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例1における蒸気システム(蒸気駆動空気圧縮機)の構成の概略図である。
本実施例の蒸気システム1は、蒸気を用いて動力を起こす蒸気式原動機2と、これにより駆動される被動機3とを備える。
蒸気式原動機2としては蒸気エンジン、好適には、入口側の圧力と出口側の圧力との差分のエネルギーをもってスクリュロータを回転するスクリュ式蒸気エンジンが用いられる。
蒸気エンジン2により駆動され流体を吐出する被動機3としては空気圧縮機、好適にはスクリュ式圧縮機が用いられる。
蒸気エンジン2のスクリュロータの回転駆動力を用いてスクリュ式空気圧縮機3のスクリュロータが回転される。この際、蒸気エンジン2の出力軸4と空気圧縮機3の入力軸5とは、発電機を介することなくカップリング6で接続される。ただし、出力軸4と入力軸5とは、クラッチを介して接続されてもよい。この場合、蒸気エンジン2による空気圧縮機3の駆動の有無をクラッチにより切り替えることができる。また、クラッチは、変速機を備えてもよい。この場合、変速比を変更することで、空気圧縮機3の吐出圧力を変更することができる。さらに、出力軸4と入力軸5とは、電動機(モータ)を介して接続されてもよい。この場合、空気圧縮機3は、蒸気エンジン2と電動機とのうち、一方または双方により駆動可能とされ、駆動割合を変更可能とされる。
蒸気エンジン2には、蒸気ボイラ7からの蒸気が給蒸路8を介して供給される。本実施例では、蒸気ボイラ7からの蒸気は第一蒸気ヘッダ9に供給され、この第一蒸気ヘッダ9の蒸気が給蒸路8を介して蒸気エンジン2に供給される。第一蒸気ヘッダ9から蒸気エンジン2への給蒸路8には給蒸弁10が設けられる。この給蒸弁10の開度を制御して蒸気エンジン2の出力を調整する。
蒸気エンジン2にて使用後の蒸気は、各種の蒸気利用機器11において利用することができる。本実施例では、蒸気エンジン2からの蒸気は、排蒸路12を介して第二蒸気ヘッダ13に供給され、この第二蒸気ヘッダ13の蒸気が各種の蒸気利用機器11へ供給される。蒸気エンジン2は、空気圧縮機3を駆動するだけでなく、減圧弁としても機能する。したがって、蒸気エンジン2にて使用後の蒸気は、減圧弁通過後の蒸気として各種の蒸気利用機器においてそのまま利用することもできる。
第一蒸気ヘッダ9と第二蒸気ヘッダ13とは、バイパス路14を介しても接続される。図示例では、第一蒸気ヘッダ9から蒸気エンジン2への給蒸路8のうち、給蒸弁10よりも上流部と蒸気エンジン2から第二蒸気ヘッダ13への排蒸路12の中途部とがバイパス路14で接続される。このバイパス路14の中途部には、バイパス弁15が設けられる。このバイパス弁15は、電磁弁または電動弁とされてもよいが、本実施例では自力式の減圧弁とされる。具体的には、バイパス弁15は、第二蒸気ヘッダ13内の蒸気圧を所定に維持するように機械的に自力で開度調整する。いずれにしても、蒸気エンジン2経由とバイパス弁15経由とのいずれで第二蒸気ヘッダ13に蒸気を供給してもよい条件では、蒸気エンジン2経由による蒸気供給が優先されるのがよい。
蒸気利用機器11での蒸気負荷P2がある状態で給蒸弁10が絞られるとき、第二蒸気ヘッダ13から蒸気利用機器11への蒸気の供給は、バイパス弁15が自力で開度を増しバイパス路14を有効利用する状態で実現される。
本実施例においては、制御部16は給蒸制御部17とは別に内圧制御部18を有している。この内圧制御部18については、あとで詳しく説明する。給蒸制御部17と内圧制御部18とを含む制御部16については、これをマイクロコンピュータ(またはマイクロコントローラ)で構成する。
圧力および温度が異なる二つの蒸気ヘッダ9,13のそれぞれの蒸気は、所望の蒸気利用機器11へ供給可能とされる。各蒸気ヘッダ9,13内の蒸気は、温度が異なるので、用途に応じた蒸気の使用が可能となる。すなわち、比較的高温の蒸気が必要とされる場合には第一蒸気ヘッダ9から蒸気を供給すればよいし、それよりも低温の蒸気が必要とされる場合には第二蒸気ヘッダ13から蒸気を供給すればよい。
蒸気ボイラ7は、第一蒸気ヘッダ9内の蒸気圧に基づき運転状態を制御される。具体的には、第一蒸気ヘッダ9内の蒸気圧に基づきバーナの燃焼量を制御される。
空気圧縮機3からの圧縮空気は、吐出流路としての圧縮空気路19を介して一または複数の圧縮空気利用機器20へ供給可能とされる。圧縮空気路19には、圧縮空気の使用負荷を把握するために第一圧力センサ21が設けられる。この第一圧力センサ21により圧縮空気路19内の空気圧が監視される。したがって、その空気圧が設定値未満であるか否かにより、空気負荷P2があるか否かを検知できる。すなわち、圧縮空気が使用される場合には、圧縮空気路19内の空気圧が下がるので、それが設定値未満であるか否かにより、圧縮空気の使用負荷を検知できる。ただし、圧縮空気路19の中途に中空のエアタンク(図示省略)を設け、このエアタンクに第一圧力センサ21を設けて、圧縮空気の使用負荷を検知してもよい。
第二蒸気ヘッダ13には、その蒸気の使用負荷を把握するために第二圧力センサ22が設けられる。この第二圧力センサ22により、第二蒸気ヘッダ13内の蒸気圧が監視される。したがって、その蒸気圧が所定値未満であるか否かにより、蒸気負荷P2があるか否かを検知できる。すなわち、蒸気が使用される場合には、第二蒸気ヘッダ13内の蒸気圧が下がるので、それが所定値未満であるか否かにより蒸気の使用負荷を検知できる。
本実施例の蒸気システム1では、制御部16における給蒸制御部17は、第一圧力センサ21と第二圧力センサ22の検出圧力を常時監視し、これらを用いて後述のとおり給蒸弁10の開度を制御する。さらに、制御部16における給蒸制御部17は、所望によりバイパス弁15や前記のクラッチなどを制御可能としてもよい。ただし、本実施例では、バイパス弁15は、前述したとおり自力式の減圧弁とされている。
空気圧縮機3から延出されている圧縮空気路19において、第一圧力センサ21より上流部に逆止弁23が介挿され、さらに逆止弁23より上流部において圧縮空気路19から外部放出流路としての放気流路24が分岐され、放気流路24に流体放出弁としての放気弁25が設けられている。
制御部16における内圧制御部18は、空気圧制御優先モードにおいて、第一圧力センサ21で得られる圧縮空気利用機器20の空気負荷P2に従って負荷率を求め、その求めた負荷率に基づいて放気弁25を制御するように構成されている。さらに、内圧制御部18は、蒸気圧制御優先モードにおいて、第二圧力センサ22で得られる蒸気利用機器11の蒸気負荷P2に従って負荷率を求め、その求めた負荷率に基づいて放気弁25を制御するように構成されている。
放気弁25を圧縮空気路19において逆止弁23の上流側に設けるのは、放気弁25の開弁にもかかわらず、圧縮空気利用機器20側の圧縮空気路19内の圧力を保持させるためである。それは、アンロード運転からロード運転へ復帰したときの運転効率の低下を回避するためである。さらに、空気圧縮機3について、その入口(外気)と出口(放気で大気圧)との圧力差がほとんどない状態での無負荷運転となり、エネルギーロスが少なくて済む。
放気弁25に対する制御の態様は、常時は放気弁25は閉弁状態にしておき、負荷率が一定以上に低下したときに放気弁25を開放することによって空気圧縮機3の内部圧力を減圧し、負荷率が復帰すれば放気弁25を閉弁して空気圧縮機3の内部圧力に対する減圧状態を解除するものとする。
次に、制御部16による制御動作を説明する。制御部16は、機能的には、空気負荷率および蒸気負荷率と給蒸弁開度との関係を制御する給蒸制御部17と、空気負荷率および蒸気負荷率と放気弁状態との関係を制御する内圧制御部18とを有する。
〔1〕空気圧制御優先モード
空気圧制御優先モードは、内圧制御部18が、第一圧力センサ21の検出空気圧に基づいて負荷率LPを求め、さらにその負荷率LPに基づいて放気弁25の動作を制御するモードである。ここで、負荷率LPについて、第1の負荷率値LP1 <第2の負荷率値LP2 の関係にあるものとする。
第一圧力センサ21の検出空気圧による負荷率LPが第2の負荷率値LP2 以上であれば、蒸気システム1はロード運転状態にあり、第1の負荷率値LP1 未満であれば、蒸気システム1はアンロード運転状態にあるとする。放気弁25は、ロード運転状態では閉弁状態とされ、アンロード状態では開弁状態とされる。第1の負荷率値LP1 と第2の負荷率値LP2 との間はヒステリシス制御の遷移領域となる。
いま、圧縮空気利用機器20における圧縮空気の使用量が一定以上にあり、蒸気システム1はロード運転状態にあるとする。ロード運転状態では、放気弁25は閉弁状態にある。このロード運転状態において、第一圧力センサ21の検出空気圧による負荷率LPが第1の負荷率値LP1 未満に遷移したとき、内圧制御部18は、閉弁状態にある放気弁25を開弁し、空気圧縮機3の内部空間を開放状態の放気弁25を介して大気に開放する。これにより、空気圧縮機3の内圧が下げられる。
もし、この放気弁25による大気開放がなければ、空気圧縮機3の内圧ひいては駆動トルクが過剰上昇し、その結果、空気圧縮機3や蒸気エンジン2に過大な機械的負担をかけるリスクが高まる。そして、このリスクを回避するには、給蒸弁10を閉弁して蒸気エンジン2を停止し、空気圧縮機3も停止しなければならなくなる。
しかし、本実施例のように放気弁25を開弁して空気圧縮機3の内部空間を減圧すれば、駆動トルクが軽減されるため、空気圧縮機3の継続した駆動が許容されることになる。すなわち、給蒸弁10を介しての蒸気エンジン2への給蒸は低レベル状態で維持し、蒸気エンジン2の駆動による空気圧縮機3の駆動を維持する。これで、空気圧縮機3は実質的に無負荷の状態での運転(アンロード運転)となる。
また、アンロード運転状態において、第一圧力センサ21の検出空気圧による負荷率LPが第2の負荷率値LP2 以上に遷移したとき、内圧制御部18は、開弁状態にある放気弁25を閉弁する。これにより、ロード運転状態に復帰することになる。
上記のロード運転状態とアンロード運転状態との間の遷移は第1の負荷率値LP1 と第2の負荷率値LP2 とを用いたヒステリシス制御となっているため、状態遷移が起こる割合が減殺され、制御の安定化を期することができる。
ロード運転状態にあっては、給蒸制御部17は、第一圧力センサ21の検出空気圧による負荷率LPの変化に応じて給蒸弁10の開度を調節する。すなわち、負荷率LPが減少するに従って給蒸弁10の開度を減らして給蒸量を減少させる一方、負荷率LPが増加するに従って給蒸弁10の開度を増やして給蒸量を増加させる。給蒸弁10の開度の調節範囲は、上限が100%であり、下限はアンロード運転時に要求される開度で、これは設計事項であり、また必要に応じて開閉調整できるものとするとよい。
〔2〕蒸気圧制御優先モード
蒸気圧制御優先モードは、内圧制御部18が、第二圧力センサ22の検出蒸気圧に基づいて負荷率LPを求め、さらにその負荷率LPに基づいて放気弁25の動作を制御するモードである。
第二圧力センサ22の検出蒸気圧による負荷率LPが第2の負荷率値LP2 以上であれば、蒸気システム1はロード運転状態にあり、第1の負荷率値LP1 未満であれば、蒸気システム1はアンロード運転状態にある。放気弁25は、ロード運転状態では閉弁状態とされ、アンロード状態では開弁状態とされる。
いま、蒸気利用機器11における高圧蒸気の使用量が一定以上にあり、蒸気システム1はロード運転状態にあるとする。ロード運転状態では、放気弁25は閉弁状態にある。このロード運転状態において、第二圧力センサ22の検出蒸気圧による負荷率LPが第1の負荷率値LP1 未満に遷移したとき、内圧制御部18は、閉弁状態にある放気弁25を開弁し、空気圧縮機3の内部空間を開放状態の放気弁25を介して大気に開放する。これにより、空気圧縮機3の内圧が下げられる。
このように放気弁25を開弁して空気圧縮機3の内部空間を減圧すれば、駆動トルクが軽減されるため、空気圧縮機3の継続した駆動が許容されることになる。すなわち、給蒸弁10を介しての蒸気エンジン2への給蒸は低レベル状態で維持し、蒸気エンジン2の駆動による空気圧縮機3の駆動を維持する。これで、空気圧縮機3は実質的に無負荷の状態での運転(アンロード運転)となる。
また、アンロード運転状態において、第二圧力センサ22の検出蒸気圧による負荷率LPが第2の負荷率値LP2 以上に遷移したとき、内圧制御部18は、開弁状態にある放気弁25を閉弁する。これにより、ロード運転状態に復帰することになる。
上記のロード運転状態とアンロード運転状態との間の遷移は第1の負荷率値LP1 と第2の負荷率値LP2 とを用いたヒステリシス制御となっているため、状態遷移が起こる割合が減殺され、制御の安定化を期することができる。
ロード運転状態にあっては、給蒸制御部17は、第二圧力センサ22の検出蒸気圧による負荷率LPの変化に応じて給蒸弁10の開度を調節する。すなわち、負荷率LPが減少するに従って給蒸弁10の開度を減らして給蒸量を減少させる一方、負荷率LPが増加するに従って給蒸弁10の開度を増やして給蒸量を増加させる。給蒸弁10の開度の調節範囲は、上限が100%であり、下限はアンロード運転時に要求される開度で、これは設計事項であり、また必要に応じて開閉調整できるものとするとよい。
本発明の上記の実施例では、負荷率を判定基準にして、負荷率が一定以上に低下すると、放気弁25を開弁して空気圧縮機3の内部圧力を減圧し、限界を超えた過剰圧力状態を免れさせ、駆動トルクを軽くすることから、空気圧縮機3の動作を止める必要性を排除する。動作を止めないので、再起動も必要でない。すなわち、負荷率の変動にかかわらず、継続的な運転が許容されることになる(実質的な無負荷状態でのアンロード運転)。この内圧制御部18による放気弁25の制御は給蒸制御部17による給蒸弁10の制御から実質的に独立している。その結果として、蒸気エンジン2や空気圧縮機3の停止・再起動の頻繁な繰り返しが抑制され、運転の形態が安定性の高いものに維持され、もって運転効率の向上を実効あるものにすることができる。
次に、内圧制御部18による放気弁25のヒステリシス制御について詳しく説明する。
負荷率LPに関して、第1の負荷率値LP1 と第2の負荷率値LP2 とを設定する。第1の負荷率値LP1 は、従来技術であれば、蒸気エンジン2への給蒸を停止し、空気圧縮機3の動作を停止させる停止領域の上限に対応する。第2の負荷率値LP2 は第1の負荷率値LP1 より大きいものとする。オイルフリー仕様でない通常型の場合、第1の負荷率値LP1 は十分に小さくて、たとえば5〜20%であり、第2の負荷率値LP2 はたとえば10〜30%である。
典型例としては、第1の負荷率値LP1 =10%、第2の負荷率値LP2 =20%がある。なお、オイルフリー仕様というのは、環境問題の観点からスクリュロータの部分に潤滑油を供給しない簡易タイプのことであり、軸受部の隙間管理が厳しい関係上、回転数の変動(特に低下)をよしとしないという制約がある。
従来技術であれば、負荷率LPが第1の負荷率値LP1 を下回ったとき(停止領域に入ったとき)に、給蒸弁10を閉弁して蒸気エンジン2を停止し、空気圧縮機3の動作を停止させる。これに対して、本発明の実施例では、負荷率LPが第1の負荷率値LP1 を下回ったときの領域は停止領域ではなく、上記の通り運転を継続する(アンロード運転)。そして、負荷率LPが第2の負荷率値LP2 を上回る状態まで回復すれば、ロード運転に戻す。つまり、負荷率LPの変動に応じてロード運転とアンロード運転とを切り替える。より詳しくは、次のとおりである。
制御部16における内圧制御部18は、負荷率が第1の負荷率値LP1 をそれ以上の値からそれ未満の値へと遷移したときに放気弁25を開弁して減圧制御動作を行い、負荷率が第2の負荷率値LP2 をそれより小さい値からそれ以上の値へと遷移したときに放気弁25を閉弁して減圧解除制御動作を行う。
第1の負荷率値LP1 と第2の負荷率値LP2 との間の領域では、放気弁25は開弁状態も閉弁状態もともに取り得る。第1の負荷率値LP1 を下回っていったん開弁状態になれば、次は第2の負荷率値LP2 を上回らない限り開弁状態を保持する。また、第2の負荷率値LP2 を上回って閉弁状態になれば、次は第1の負荷率値LP1 を下回らない限り閉弁状態を保持する。
空気圧縮機3の内部圧力は、負荷率LPが次第に低下するに従って増加する。負荷率LPが第1の負荷率値LP1 を下回って放気弁25が開弁し、空気圧縮機3が大気に開放されると、内部圧力は急激に低下し、大気圧に近い圧力で安定化する。次に、負荷率LPが第2の負荷率値LP2 を上回らない限り、内部圧力はほぼ大気圧の状態を保つ。第2の負荷率値LP2 を上回ると放気弁25が閉弁し、このときまで空気圧縮機3は無負荷運転状態を保持していたので、内部圧力は比較的ゆっくりと上昇し、圧力ヒステリシスのループを形成しつつ、負荷運転状態へ復帰する。
放気弁25の開弁状態から閉弁状態への遷移あるいは閉弁状態から開弁状態への遷移や、空気圧縮機3の内部圧力の高圧状態から大気圧状態への遷移あるいは大気圧状態から高位圧力状態への遷移は、負荷率LPが(LP2 −LP1 )よりも大きく変化しない限り生じない。それゆえ、放気弁25の頻繁な開閉動作が回避され、結果として、制御の安定化を実現することができるのである。
本発明においては、蒸気エンジン2や空気圧縮機3の停止・再起動の頻繁な繰り返しの抑制を通じて運転形態を高安定性に維持し、もって運転効率の向上を実効あるものにすることにあるが、負荷率との関係における減圧・減圧解除のヒステリシス制御は運転安定化にとってさらに好ましい結果を招来することになる。
次に、蒸気システム1の動作を図2、図3のフローチャートに従って説明する。定常運転状態までのフローについては、本発明の主旨とは直接関係しないので、説明を省略する。
平常時は給蒸制御部17が制御実行権を持っており、ロード運転状態からアンロード運転状態へ遷移すると制御実行権が給蒸制御部17から内圧制御部18へ渡される。そして、アンロード運転状態からロード運転状態へ復帰すると、制御実行権が内圧制御部18から給蒸制御部17へ戻される。
まず、給蒸制御部17による制御動作について図2を用いて説明する。
まずステップS1において、マイクロコンピュータの給蒸制御部17は、蒸気システム1に設定されている優先モードを判定する。すなわち、空気圧制御優先モードであるか否かを判定し、空気圧制御優先モードであると判定したときはステップS2に進み、蒸気圧制御優先モードであると判定したときはステップS3に進む。
空気圧制御優先モードの場合に進んだステップS2においては、給蒸制御部17は第一圧力センサ21の検出空気圧P1を取得し、それを制御変数Pに代入する。
蒸気圧制御優先モードの場合に進んだステップS3においては、給蒸制御部17は第二圧力センサ22の検出蒸気圧P2を取得し、それを制御変数Pに代入する。
次いでステップS4において、給蒸制御部17は、ステップS2またはステップS3で値が確定した制御変数P(検出圧力値)に基づいて蒸気システム1の負荷率LPを算出する。
次いでステップS5において、給蒸制御部17は、フラグFに「0」がセットされているか否かを判定する。このフラグFは、蒸気システム1の運転状態がロード運転状態かアンロード運転状態かを識別するもので、たとえばロード運転状態ではF=0であり、アンロード運転状態ではF=1であるとする。フラグF=0であればステップS6に進み、フラグF=1であればステップS8に進む。
ロード運転状態にあってフラグF=0のときに進んだステップS6においては、給蒸制御部17は、ステップS4で求めた負荷率LPを閾値判定する。すなわち、負荷率LPが第1の負荷率値LP1 以上であるか否を判定する。第1の負荷率値LP1 以上であると判定したときは、ステップS7に進み、そうでないときはステップS8に進む。ステップS7に進むのは、蒸気システム1の運転状態がロード運転状態にあることが確認されたときである。ステップS8に進むのは、蒸気システム1の運転状態がアンロード運転状態にあることが確認されたときである。
運転状態がロード運転状態にあることが確認されたときに進んだステップS7においては、給蒸制御部17はステップS4で求めた負荷率LPに比例して開度を示すように給蒸弁10を容量制御する。ステップS7に続いては処理をステップS1に戻す。
一方、蒸気システム1の運転状態がアンロード運転状態にあることが確認されたときに進んだステップS8においては、給蒸制御部17は給蒸弁10の開度をロックする。これ以降、ロックが解除されるまでは、給蒸弁10はその最小の開度に保たれる。最小の開度は、第1の負荷率値LP1 に対応した開度である。
次いでステップS9において、給蒸制御部17は制御実行権を内圧制御部18に渡す。
次に、制御実行権を給蒸制御部17から渡された内圧制御部18による制御動作について図3を用いて説明する。
まずステップS11において、マイクロコンピュータの内圧制御部18は、優先モードが空気圧制御優先モードであるか否かを判定し、空気圧制御優先モードであると判定したときはステップS12に進み、蒸気圧制御優先モードであると判定したときはステップS13に進む。
空気圧制御優先モードの場合に進んだステップS12においては、内圧制御部18は第一圧力センサ21の検出空気圧P1を取得し、それを制御変数Pに代入する。
一方、蒸気圧制御優先モードの場合に進んだステップS13においては、内圧制御部18は第二圧力センサ22の検出蒸気圧P2を取得し、それを制御変数Pに代入する。
次いでステップS14において、内圧制御部18は、ステップS12またはステップS13で値が確定した制御変数P(検出圧力値)に基づいて蒸気システム1の負荷率LPを算出する。
次いでステップS15において、内圧制御部18は、フラグFに「1」がセットされているか否かを判定する。ロード運転状態でフラグF=0であればステップS16に進み、アンロード運転状態でフラグF=1であればステップS19に進む。
ロード運転状態にあってフラグF=0のときに進んだステップS16においては、内圧制御部18は、ステップS14で求めた負荷率LPを閾値判定する。すなわち、負荷率LPが第1の負荷率値LP1 未満に遷移したか否を判定する。第1の負荷率値LP1 未満に遷移したと判定したときは、ステップS17に進み、そうでないときはステップS23に進む。ステップS17に進むと、アンロード運転への移行となり、そうでなければロード運転の状態が保たれる。
ステップS17において、内圧制御部18は、放気流路24における放気弁25を開弁する。これでアンロード運転へ移行する。
次いでステップS18において、内圧制御部18は、フラグFに放気弁25が開弁されて現在アンロード運転状態であることを示す「1」をセットし、ステップS11へ戻る。
フラグF=1がセットされている状態でステップS15に移行すると、今度はステップS19に進むことになる。
アンロード運転状態にあってフラグF=1のときに進んだステップS19においては、内圧制御部18は、ステップS14で求めた負荷率LP(新たなサイクルで取得)を閾値判定する。すなわち、負荷率LPが第2の負荷率値LP2 以上に遷移したか否を判定する。第2の負荷率値LP2 以上に遷移したと判定したときは、ステップS20に進み、そうでないときはステップS11に戻る。
ステップS19→S11→S12(S13)→S14→S15→S19のループを繰り返すうちは、アンロード運転状態が保たれていることになる。その場合に、負荷率LPが第1の負荷率値LP1 に対して小さい側にあるか大きい側にあるかは無関係である。第1の負荷率値LP1 を下回っていったんアンロード運転状態になると、第2の負荷率値LP2 を上回る状態にならない限り、上記のループ内にとどまり、アンロード運転の状態が保たれる。同様に、第2の負荷率値LP2 を上回って再びロード運転状態になり、後述するステップS20→S21→S22→S23を経て図3のルーチンに戻ると、今度は、第1の負荷率値LP1 を下回る状態にならない限り、ステップS6→S7→S1→S2(S3)→S4→S5→S6のループ内にとどまる。これがヒステリシス制御である。
負荷率LPが第2の負荷率値LP2 以上に遷移したと判定した結果進んだステップS20においては、内圧制御部18は、放気弁25を閉弁する。これでロード運転へ移行(復帰)する。
次いでステップS21において、内圧制御部18は、フラグFに放気弁25が閉弁されて現在ロード運転状態であることを示す「0」をセットする。
次いでステップS22において、内圧制御部18は給蒸制御部17にロック解除指令を与え、ステップS23に移行する。なお、ロック解除指令を受けた給蒸制御部17は、給蒸弁10の開度を制御する状態に復帰する。
ステップS23においては、内圧制御部18は制御実行権を給蒸制御部17に戻す。制御実行権を受け取った給蒸制御部17は、図3の制御を遂行する。
なお、ステップS16からステップS23への移行は、通常は起こらない。これは、LP<LP1 となった結果、ステップS6の判定結果が否定され、制御実行権が給蒸制御部17から内圧制御部18へ移った直後に、LP≧LP1 に戻ったことを意味する。このような推移は通常では起こらないが、ルーチン上必要である。
図4は、本発明の実施例2における蒸気システムの構成の概略図である。本実施例2の蒸気システム1も、基本的には上記実施例1と同様である。そこで、以下では、両者の異なる点についてのみ説明し、同様の部分については対応する箇所に同一の符号を付すにとどめ説明を省略する。
本実施例2では、上記実施例1の蒸気システム1に、蒸気ボイラ7への給水タンク26と空気圧縮機3の廃熱利用を関連付けたものである。蒸気ボイラ7には給水タンク26からの水(軟水)が供給され、蒸気化される。具体的には、給水タンク26には所定量の水が貯留されており、その水は給水ポンプ27を介してボイラ7へ供給される。ボイラ7に供給された水は、ボイラ7において加熱され蒸気化される。その蒸気は、所望により気水分離器(図示省略)や第一蒸気ヘッダ9を介して給蒸路8から蒸気エンジン2へ供給される。ボイラ7は、缶内圧力が所定に維持されるようにバーナ(図示省略)の燃焼量が制御される。
空気圧縮機3には、空気圧縮機3で発生する廃熱を熱交換によって回収するための熱交換器28が付設されている。この熱交換器28には給水タンク26への給水路29が接続されている。
この場合、給水タンク26への給水により空気圧縮機3の冷却を図ることができるとともに、空気圧縮機3の放熱で給水を加温することができる。
上記のとおり、アンロード運転状態では、無負荷状態でも空気圧縮機3を運転し続けるために、給蒸弁10を開いて蒸気エンジン2を駆動している。このアンロード運転時の蒸気エンジン2の駆動にはそれなりのエネルギーを必要とする。しかし、仕事については何ら実効的な仕事はなされていない。その消費エネルギーは、仕事遂行の観点からは無駄なエネルギーといえる。本実施例2では、給水タンク26への給水路29に空気圧縮機3との熱交換器28を接続し、その熱交換で得られた廃熱エネルギーを回収し再利用するので、エネルギー上の無駄が解消され、アンロード運転を無理なく採用できるのである。
上記の実施例1では、負荷率の閾値として、第1の負荷率値LP1 =10%、第2の負荷率値LP2 =20%を例に挙げたが、これはオイルフリー仕様でない通常型の場合のものである。オイルフリー仕様の場合には、摩擦抵抗要素の条件が厳しくなり、LP1 =10%、LP2 =20%では運転不能である。そこで、オイルフリー仕様の場合には、第1の負荷率値LP1 =40%、第2の負荷率値LP2 =50%など高めに設定することになる。
図5は、本発明の実施例3における蒸気システムの構成の概略図である。本実施例3の蒸気システム1も、基本的には上記実施例1と同様である。以下では、両者の異なる点についてのみ説明し、同様の部分については対応する箇所に同一の符号を付すにとどめ説明を省略する。
本実施例3では、放気弁25を介挿する放気流路24が、逆止弁23より下流側において圧縮空気路19から分岐されている。この場合の放気弁25は、開状態と閉状態の2状態を切り替える開閉弁とするよりは、流量を段階的または連続的に可変する流量調整弁とする方が好ましい。
本実施例3と上記の実施例1との差は次のとおりである。実施例1の場合、逆止弁23の上流側で放気弁25が大気開放となる。この大気開放の位置は、圧縮空気利用機器20よりも空気圧縮機3により近い位置である。空気圧縮機3がその吐出側で近いところから大気開放されると、入口出口間の圧力差の急激な低下のために空気圧縮機3の回転数が大きく変動し、駆動トルクが不安定になってしまう。とりわけ、オイルフリー仕様の空気圧縮機の場合は、回転抵抗要素が大きい関係で回転数・駆動トルクの変動が大きい。
そこで、本実施例3では、逆止弁23より下流側の位置を大気開放位置としている。大気開放位置と空気圧縮機3の出口との間に逆止弁23が存在していることと、大気開放位置が空気圧縮機3の出口からの距離が大きくなったことの相乗により、大気開放時の入口出口間の圧力差の変動を抑制する。その結果として、空気圧縮機3の回転数・駆動トルクの変動を抑制して、アンロード運転をより安定性の高いものにすることができる。
さらに、放気弁25を流量調整弁とする場合には、次のような利点がある。放気弁25が放気動作をする時点では、圧縮空気利用機器20につながる圧縮空気路19にはすでに大きな空気圧がかかっている。そのような大きな空気圧の状態から急激に大気開放へ進むと、圧縮空気利用機器20またはその付帯設備(圧縮空気貯溜タンク)に過大な機械的負担を与える結果となる。そこで、放気弁25を流量調整弁として、いきなり大気開放するのではなく、開度を徐々に増していくことにより、圧縮空気利用機器20またはその付帯設備(圧縮空気貯溜タンク)に過大な機械的負担がかかるのを回避する。つまり、放気動作に伴う状態変化を穏やかなものにすることができる。これも、特にオイルフリー仕様の場合に効果的である。
放気動作時、空気圧縮機3の内圧は実施例1ほどには下がらず、したがって実施例1より多くのエネルギーを消費する。そこで、本実施例3では空気圧縮機3から熱回収を行う実施例2のタイプに適用するのがよりが好ましい。
図6は、本発明の実施例4における蒸気システムの構成の概略図である。本実施例4の蒸気システム1も、基本的には上記実施例1と同様である。以下では、両者の異なる点についてのみ説明し、同様の部分については対応する箇所に同一の符号を付すにとどめ説明を省略する。
蒸気エンジン2は、2段の空気圧縮機3,3に対して動力伝達系30を介して連結されている。前段の空気圧縮機3と後段の空気圧縮機3とは連通路31を介して接続されている。圧縮空気利用機器20につながる圧縮空気路19は、後段の空気圧縮機3の出口に接続されている。この圧縮空気路19には逆止弁23が介挿され、また第一圧力センサ21が設けられている。そして、連通路31から外部放出流路としての放気流路24が分岐され、放気流路24に流体放出弁としての放気弁25が設けられている。
オイルフリー仕様の場合、空気圧縮機3は2段構成とすることが多い。1段構成では摩擦抵抗要素の条件が厳しく、圧縮性能が不足しがちとなるためである。2段構成の空気圧縮機3,3の場合、放気弁25は、後段の空気圧縮機3からの圧縮空気路19に設けるのではなく、前段の空気圧縮機3と後段の空気圧縮機3をつなぐ連通路31に設けることが望ましい。前段の空気圧縮機3にかかる負荷は、後段の空気圧縮機3にかかる負荷よりも大きく、アンロード運転時は、後段の圧縮空気路19を大気開放するよりは、前段の連通路31を大気開放するほうが、より負担の少ない、より安定性の高い無負荷運転を実現できるからである。この場合、放気弁25は、開閉弁、流量調整弁のいずれでもよいが、前述の理由により流量調整弁とするのがより好ましい。なお、連通路31に加えて圧縮空気路19にも放気弁25を設けてもよい。
バイパス路14に介挿してあるバイパス弁15は、通常は、蒸気駆動空気圧縮機の主装置部である蒸気エンジン・空気圧縮機ユニットとは別の独立構成となっている。バイパス弁15を容量制御する場合、通常は第二圧力センサ22からの検出信号に基づく制御信号でバイパス弁15を制御している。その結果、高圧蒸気が蒸気エンジン2を流れる状態とバイパス路14を流れる状態とが同時的に起こる場合が生じる。給蒸弁10の制御とバイパス弁15の制御とが互いに独立しているためである。
ところで、蒸気エンジン2は原理的に出口と入口との間の差圧で動作するものであり、この差圧はなるべく変動させたくないのが実態である。しかし、従来の一般的方式であると、給蒸弁10の制御とバイパス弁15の制御とが互いに独立していることから、負荷の不規則な変動によってバイパス弁15が流量調整されると、蒸気エンジン2における出口と入口との間の差圧が変動してしまい、安定動作に支障を来すことがある。
この不都合をも含めて対策を講じたのが本発明の実施例5である。
図7は、本発明の実施例5における蒸気システムの構成の概略図である。本実施例5の蒸気システム1も、基本的には上記実施例1と同様である。以下では、両者の異なる点についてのみ説明し、同様の部分については対応する箇所に同一の符号を付すにとどめ説明を省略する。
本実施例5では、制御部16における給蒸制御部17が、バイパス路14に介挿のバイパス弁15を直接に制御するように構成してある。この結果、給蒸制御部17は、単に給蒸弁10だけでなく、給蒸弁10の制御とともにバイパス弁15をも直接的に制御することができる。その結果として、負荷の不規則な変動が生じても、給蒸弁10とともにバイパス弁15をも同時並行的に流量調整することが可能で、蒸気エンジン2における出口と入口との間の差圧を一定に保つことができるようになる。すなわち、動作の安定性を確保することができる。
上記の構成においては、流量調整が可能なバイパス弁15を給蒸制御部17で直接的に制御する構成としたので、そのバイパス弁15はいわゆる減圧弁機能を有しているといえる。なお、給蒸弁10での流量とバイパス弁(減圧弁)15での流量とを一括表示することは容易であり、そうすることにより制御の容易性・確実性を担保しやすい。
本発明の蒸気システムは、上記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、上記実施例では蒸気エンジン3はスクリュ式としたが、場合によりタービン式としてもよい。
また、上記実施例では、蒸気の使用負荷は第二蒸気ヘッダ13に設けた第二圧力センサ22により検出したが、第二圧力センサ22は第二蒸気ヘッダ13ではなく、蒸気エンジン3からの排蒸路12とバイパス路14との合流後の管路に設けてもよい。その場合、第二蒸気ヘッダ13は、その設置を省略することもできる。
また、上記実施例において、空気圧縮機3に代えてポンプまたは送風機を設置してもよい。その場合も、上記実施例と同様に制御すればよい。