JP5415361B2 - 防水用押釦スイッチ部材 - Google Patents

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Description

本発明は、防水機能を持つ機器に設ける防水用押釦スイッチ部材に関する。
防水型腕時計あるいは防水型電気カミソリは、防水機能を持つ機器として知られているが、最近では、本来、水と接触する機会が少ないあるいは接触させるべきではない携帯電話、携帯端末(PDA)等の小型の通信機器についても、雨天時の使用やバスルームへの持ち込みにも支障がないように防水機能を持たせるようになってきている。かかる機器における水の浸入箇所はいくつか存在するが、その主な箇所は、押釦を外に露出させるために設けられた複数の開口部である。当該開口部からの水の浸入は、機器内部の電気ショートを招き、機器の信用を低下させるおそれがある。そこで、かかる問題をできるだけ生じないようにするため、押釦と機器内部の回路基板上のスイッチとの間に弾性体を介在させ、開口部と弾性体とを密着させる構成を用いるのが一般的である。このような構成の一例として、特許文献1に開示される防水構造が知られている。
特許文献1に開示される防水構造は、開口側を機器の外側に向けるように貫通孔に装着される弾性材料から成るカップ部材と、当該カップ部材の開口に挿入される軸部を備える押釦とを備え、カップ部材の内側に樹脂若しくは金属製の筒状ホルダを装着したものである。筒状ホルダの存在によって、カップ部材の形状を保持して貫通孔とカップ部材との密着性を維持することができ、また、かかる防水構造を持つ押釦スイッチ部材を機器に組み込む作業も容易になる。
特開2006−344528
しかし、上記のような従来の防水構造には、次のような解決すべき問題がある。当該防止構造は、筒状ホルダを弾性材料から成るカップ部材の内側に装着したものであり、好適には、インサート成形あるいは2色成形にて一体化される。当該成形では、筒状ホルダの全面にプライマー処理等の表面処理を行い、筒状ホルダとカップ部材との接着性を高めるのが一般的である。
しかし、筒状ホルダとカップ部材とを完全に固着すると、押釦の軸部によってカップ部材の底部をスイッチに向けて押し込む際に、筒状ホルダの外側にあるカップ部材の部分が伸びにくく、押釦の押し下げに過度の力を要するのみならず、押釦の押圧感触の悪化を招く。一方、筒状ホルダの外周面およびスイッチ側の開口端面とカップ部材との接着を部分的に行うと、押釦の押圧を繰り返している内に、筒状ホルダとカップ部材とが剥離してしまう。
本発明は、かかる問題を解消すべくなされたものであって、スイッチを押す弾性材料とそれを補強する補強部材との剥離を防ぐと共に、過度の押圧をせずに良好な押圧感触が得られるようにすることを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の実施形態は、弾性材料から構成され、一方を開口すると共に当該開口側と反対側に突出する1または2以上の容器部と、弾性材料から構成され、当該容器部の開口部からその径方向外側に延出して形成される弾性フランジ部とを連接して成り、機器の筐体内方に容器部を挿入して配置される防水用押釦スイッチ部材であって、容器部の外周に沿って連続形成されるループ状のリブを1若しくは2以上備え、容器部および弾性フランジ部の内の少なくとも容器部に補強部材を備え、補強部材は、容器部の薄肉部にインサートされ、少なくとも容器部の内側部と非固着状態若しくは他よりも弱い固着状態とした防水用押釦スイッチ部材である。
本発明の別の実施形態は、補強部材を、容器部の内側部、外側部および底部と非固着状態若しくは他よりも弱い固着状態とした防水用押釦スイッチ部材である。
本発明の別の実施形態は、補強部材が、容器部の薄肉部にインサートされる筒状部と、当該筒状部の一方の開口部の径方向外側に延出して形成される補強用フランジ部とを備える防水用押釦スイッチ部材である。
本発明の別の実施形態は、リブが、容器部と弾性フランジ部との接合部から容器部の径方向外側に突出する防水用押釦スイッチ部材である。
本発明の別の実施形態は、容器部の開口部から底部に向かって容器部の内側に形成される空間内に挿入配置される押釦を、さらに備える防水用押釦スイッチ部材である。
本発明によれば、スイッチを押す弾性材料とそれを補強する補強部材との剥離を防ぐと共に、過度の押圧をせずに良好な押圧感触が得られる。
図1は、第一の実施の形態に係る防水用押釦スイッチ部材の斜視図である。 図2は、図1に示す防水用押釦スイッチ部材の分解斜視図である。 図3は、図2に示す防水用押釦スイッチ部材の主要部の平面図である。 図4は、図1に示す防水用押釦スイッチ部材の底面図である。 図5は、図1に示す防水用押釦スイッチ部材を機器に組み込む状態を示す組立断面図であり、図4のA−A線断面図のBで示す部分のみを図示したものである。 図6は、図5に示す状態から組み立てた状態を示す断面図である。 図7は、図2に示す補強部材の斜視図である。 図8は、図7に示す補強部材をマスキング治具にセットしてプライマーを塗装した状態の縦断面図である。 図9は、図8に示す状態から、マスキング治具と補強部材とを分離した状態を示す縦断面図である。 図10は、プライマー処理後の補強部材を金型内にセットして、金型内に未架橋状態のエラストマー組成物を供給して架橋を行い、弾性体と補強部材とから成る防水用押釦スイッチ部材の主要部を一体成形する方法を説明する断面図である。 図11は、第二の実施の形態に係る防水用押釦スイッチ部材の一部断面図である。 図12は、図11に示す補強部材をマスキング治具にセットしてプライマーを塗装した状態の縦断面図である。 図13は、図12に示す状態から、マスキング治具と補強部材とを分離した状態を示す縦断面図である。 図14は、第三の実施の形態に係る防水用押釦スイッチ部材の一部断面図である。 図15は、第一の実施の形態と類似の形態を有する防水用押釦スイッチ部材であって、押釦とシート部とを固着した変形例を示す一部断面図である。
次に、本発明の防水用押釦スイッチ部材の各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
1.第一の実施の形態
1.1 防水用押釦スイッチ部材の構成
図1は、第一の実施の形態に係る防水用押釦スイッチ部材の斜視図である。図2は、図1に示す防水用押釦スイッチ部材の分解斜視図である。図3は、図2に示す防水用押釦スイッチ部材の主要部の平面図である。図4は、図1に示す防水用押釦スイッチ部材の底面図である。
第一の実施の形態に係る防水用押釦スイッチ部材1は、弾性材料から構成されると共に一方(図1において下方)に開口して当該開口側と反対側(図1において上方)に突出する3個の容器部2aと、弾性材料から構成されると共に当該容器部2aの開口部からその径方向外側に延出して形成される弾性フランジ部2bとを連接して成る弾性体2を備える。弾性フランジ部2bの好適な厚さ(T1)、幅(W)および長さ(L)は、それぞれ、0.2〜1.5mm、3.0〜10.0mmおよび7.0〜60.0mmである。弾性体2は、容器部2aの開口側に、弾性材料から構成されるシート部3を備える。3個の容器部2aは、細長い弾性フランジ部2b上において、ほぼ直線上に配置されている。容器部2aは、内部に空間7を有する薄肉状の突出部である。容器部2aは、弾性フランジ部2bとの結合部から容器部2aの底部までの途中に、容器部2aの外周に沿って連続形成されると共に容器部2aの径方向外側に突出するループ状のリブ21を備える。弾性フランジ部2bは、その両端近傍に、シート部3の表面に到達する貫通孔4を備える。シート部3は、図2に示すように、各容器部2aの開口部分と合致する位置に形成され当該開口部分の径と近似する大きさの径を有する3個の貫通孔6を有する。弾性体2およびシート部3は、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー等の弾性材料から成り、好ましくはシリコーンゴムから成る。
図2に示すように、防水用押釦スイッチ部材1は、各容器部2aの開口側から弾性体2にその一部がインサートされる3個の補強部材10を備える。補強部材10の補強用フランジ部(後述する)の好適な幅は、弾性体2の弾性フランジ部2bの幅とほぼ同じ若しくはそれより小さい。例えば、補強用フランジ部と弾性フランジ部2bとの幅方向片側の好適なクリアランス(CL)は、0.0〜1.0mmである。各補強部材10は、その両端に貫通孔11を有している。貫通孔11には、弾性体2から突出する突出部が嵌入され、当該突出部と補強部材10の上面(図2において上方の面)と略面一になっている。補強部材10は、容器部2aの空間7の開口径より大径の開口部12を有し、その開口部12から容器部2aに向かって延出する筒状部(後述する)を備える。補強部材10は、ステンレススチール、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄等の金属; ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂; アルミナ、窒化珪素、ジルコニア等のセラミックス; 黒鉛から好適に構成される。ただし、補強部材10の材料は、これらに限定されず、弾性体2より硬度の大きな材料であれば、どのような材料でも良い。
防水用押釦スイッチ部材1は、シート部3の各貫通孔6を貫通して、弾性体2の各容器部2aの内側に形成される各空間7にそれぞれ挿入設置可能な押釦13を備える。押釦13は、空間7に挿入する軸15と、その軸15の一端に形成され貫通孔6を貫通しない大きさのフランジ部14とを備える。フランジ部14は、好適には、その厚さ方向に段を有し、上段が下段より小面積となる形状を持つ。押釦13は、特に材料に限定されず、例えば、樹脂、金属、セラミックス、ガラス等から形成される。押釦13を、補強部材10の材料と同じ材料で形成することもできる。
防水用押釦スイッチ部材1は、弾性体2と補強部材10とを最小限の構成部材とし、その他に、シート部3および/または押釦13を備えることができる。このため、シート部3および押釦13の少なくともいずれか一方を設けていない状態の構成でも、防水用押釦スイッチ部材1と称する。
図5は、図1に示す防水用押釦スイッチ部材を機器に組み込む状態を示す組立断面図であり、図4のA−A線断面図のBで示す部分のみを図示したものである。図6は、図5に示す状態から組み立てた状態を示す断面図である。
機器(例えば、携帯電話、携帯端末、テレビ、ラジオ、オーディオ機器等に代表される押しボタンを備える機器)の筐体50は、弾性体2の容器部2aを挿入可能な貫通孔51を有する。機器は、筐体50の内方であって貫通孔51の位置にドーム型スイッチ60を備える。ドーム型スイッチ60は、印刷回路基板(PCB)61上にリング状の電極板62と、当該電極板62の内側に配置される電極板63と、電極板62と電気的に接続される一方で電極板63と電気的に接続されていない導電性のドーム64とを備え、固定部材65上に固定される。ドーム64は、容器部2a側からの押圧を受けると、弾性変形してへこんで電極板63と接触する。この結果、電極板62と電極板63とが導通する。ドーム64は、導電性材料(金属など)のみから構成されても良く、また、非導電性材料から構成されていてその内面に導電性材料をコートしたものでも良い。また、電極板62は、リング状以外の形状であっても良く、また、その個数も1個ではなく2個以上であっても良い。
弾性体2は、弾性フランジ部2bから容器部2aにかけて、補強部材10の一部を埋設する。補強部材10は、筒形状の筒状部31と、その筒状部31の一端側から当該筒状部31の径方向外側に延出する補強用フランジ部30とを連接して成る。ただし、筒状部31と、補強用フランジ部30とは、必ずしも連接されていなくても良い。補強部材10の筒状部31は、弾性体2の容器部2aの薄肉部にインサートされており、補強用フランジ部30との連接部近傍以外、容器部2aから露出していない。すなわち、筒状部31の外側および内側は、それぞれ、弾性体2の外側部22および内側部23に覆われている。外側部22は、その一部にリブ21を形成するために必須であり、これに加えて内側部23を形成することによって、次のような利点がある。利点の1つは、押釦13の押圧操作に伴う容器部2aの伸縮が高い耐久性にて実現でき、かつ押釦13の操作性も向上することである。容器部2aの耐久性を高めるには、その厚みを大きくする必要がある。しかし、外側部22のみを形成してその厚みを大きくすると、伸びにくくなることから押圧操作による操作感が著しく低下する。これを防止するため、容器部2aの耐久性を確保するために必要な厚さを筒状部31の外側と内側に分担させて、外側部22および内側部23を形成するのが好ましい。利点のもう1つは、筒状部31を金属製とした場合に、それを外側部22と内側部23とで覆うことにより、筒状部31の耐食性を高めることができることである。筒状部31をステンレススチール製とすることにより、筒状部31の耐食性を高めることはできるが、シリコーンの撥水性によりさらにその耐食性を高めることができる。
一方、補強用フランジ部30の筒状部31と反対側の面(図5における上方の面)は、弾性体2中に完全に埋設されず、弾性フランジ部2bのシート部3側の面とほぼ面一状態にて弾性体2から露出している。シート部3は、補強部材10の補強用フランジ部30を覆うように、弾性体2に固定されている。その固定方法は、接着剤を用いた接着、加熱による溶着、嵌め込み、挟持等のいずれの方法でも良い。押釦13は、シート部3と固着されていない。
また、図5および図6において太線で示すように、補強部材10の補強用フランジ部30の表面、裏面および端面、貫通孔11の内周面、筒状部31の外周面および開口端面は、プライマー層40を有する。すなわち、筒状部31の内周面のみがプライマー層40を有していない。このため、図6に示すように、防水用押釦スイッチ部材1を機器の筐体50に組み込んだ状態において、押釦13をドーム型スイッチ60の方向に押し込むと、押釦13の軸15の先端部は、容器部2aの空間7内の底部に形成される突出部24を通じて容器部2aの底部を押し、その結果、容器部2aの底部および側部がドーム64の方向に伸びる。その際、容器部2aにインサートされる筒状部31の外側にある外側部22がドーム64の方向に少し伸び、それ以上に、筒状部31の内側にある内側部23がドーム64の方向に伸びる。図6のC部分の拡大図に示すように、筒状部31の内周面にプライマー層40が形成されていないので、筒状部31の内周面は、容器部2aの内側部23と非固着状態にて接している。この結果、内側部23は、筒状部31の外周面と固着されている外側部22に比べて伸びやすくなっている。なお、筒状部31の開口端面にプライマー層40を形成しないようにしても良い。内側部23の好適な厚さ(T3)は、0.05〜1.0mmである。
プライマー層40の材料(プライマー)としては、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。所望により、前記樹脂を硬化及び/又は架橋する架橋剤を用いることができ、このような架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が挙げられる。プライマー層40の好適な厚さ(T4)は、0.1〜10μm程度である。また、補強部材10に樹脂を用いる場合には、プライマーを塗布する代わりに、樹脂の表面を荒らすブラスト処理の他、プラズマ処理、UV処理、四塩化ケイ素ガス等を酸化炎で酸化させて得られる酸化ケイ素を補強部材10の表面に付して酸化ケイ素膜を形成するいわゆるイトロ処理等の表面処理を行っても良い。すなわち、筒状部31の少なくとも内周面と容器部2aの内側部23とを非固着状態若しくは相対的に内側部23以外の箇所よりも固着力を弱くし、筒状部31のその他の部分と容器部2aとを固着若しくは少なくとも内側部23の場合よりも相対的に高い固着力にて固着する方法であれば、如何なるプライマーの材料を用いても、また、プライマーの塗装以外の如何なる表面処理を行っても良い。
容器部2aの外周に沿って連続形成されるリブ21は、容器部2aを筐体50の貫通孔51に押し込んで組み込んだ状態において、貫通孔51の内壁から圧縮を受けて変形する。これによって、高い防水機能を実現できる。また、リブ21は、容器部2aの可動域にて筺体50の貫通孔51から外れない位置と大きさにて容器部2aに形成されている。押釦13をドーム型スイッチ60の方向に押し込む際に、外側部22のみがドーム64側に伸びると、リブ21と貫通孔51の内壁との間に隙間が生じ、防水機能の低下を招く可能性がある。しかし、この実施の形態に係る防水用押釦スイッチ部材1では、容器部2aの内側部23も伸びるので、リブ21と貫通孔51の内壁との間に隙間が生じにくく、防水性をより高く維持することができる。
1.2 防水用押釦スイッチ部材の製造方法
(1)プライマー処理
図7は、図2に示す補強部材の斜視図である。図8は、図7に示す補強部材をマスキング治具にセットしてプライマーを塗装した状態の縦断面図である。図9は、図8に示す状態から、マスキング治具と補強部材とを分離した状態を示す縦断面図である。
補強部材10のプライマー処理に用いるマスキング治具70は、補強部材10の補強用フランジ部30の幅とほぼ同じ幅で補強用フランジ部30の長さより少し長い平板71と、その平板71のほぼ中央に立設する円柱72とを備える。円柱72の外径は、筒状部31の開口部12の内径よりわずかに小さい。平板71の表面から円柱72の先端までの高さは、補強用フランジ部30の裏面から筒状部31の開口端面までの高さと同一若しくはそれより高い。さもないと、プライマー処理の際に、筒状部31の内側が露出し、当該内側にもプライマーが塗装されてしまうからである。プライマーの塗装は、マスキング治具70に補強部材10をセットした後、補強部材10側からスプレー等の手法で行うのが好ましい。
図9に示すように、プライマーを乾燥させた後、補強部材10をマスキング治具70から外すと、補強部材10の補強用フランジ部30であって平板71と接触している面および筒状部31の内周面を除き、補強部材10へのプライマーの塗装が完了する。その後、乾燥、焼成の各工程を経て、プライマー層40が形成される。次に、補強部材10を逆さにしてマスキング治具70に固定し、先に補強部材10の平板71と接触していた面へのプライマーの塗装を行う。なお、マスキング治具70を、筒状部31の内周面全てを覆うに十分な長さの円柱72のみで構成し、プライマーを一回のみ塗装するだけで、筒状部31の内周面以外の全領域にプライマーを塗装しても良い。
(2)一体成形
図10は、プライマー処理後の補強部材を金型内にセットして、金型内に未架橋状態のエラストマー組成物(例えば、所定配合されたシリコーンゴムコンパウンド)を供給して架橋を行い、弾性体と補強部材とから成る防水用押釦スイッチ部材の主要部を一体成形する方法を説明する断面図である。
第一の金型80にプライマー処理後の補強部材10をセットし、その上に所定配合後シート状に分出し加工された未架橋状態のエラストマー組成物を乗せその上から第二の金型90を被せる。第一の金型80は、突出部24を形成するための凹部81を備える。第二の金型90は、リブ21を形成するための凹部91を備える。所望の温度・圧力にて所定時間、圧縮加熱することにより、弾性体2にプライマー処理後の補強部材10をインサートした状態の成形体が出来上がる。
(3)組み立て
弾性体2と補強部材10とを一体成形した後、図2に示すように、シート部3を弾性フランジ部2bの片面に接着剤等により固定し、押釦13をシート部3の貫通孔6を通して弾性体2の容器部2a内の空間7に挿入する。これによって、防水用押釦スイッチ部材1の組み立てが完了する。
(4)例示的な製法
次に、例示的な製法につき、図8〜図10を参照して説明する。ステンレススチール製の補強部材10をマスキング治具70に嵌め込み、信越化学工業株式会社製のプライマー(品名: プライマーNo.23)をスプレー塗装した後、30分間の送風乾燥を行い、その後に乾燥機に入れて200℃で60分間の加熱処理を行う。加熱処理の後、マスキング治具70から補強部材10を取り外す。次に、補強部材10を逆さにしてマスキング治具70に嵌め込み、補強用フランジ部30のプライマー処理を行っていない面に、上記のプライマーを塗装する。以後、最初と同様、乾燥および加熱を行う。この結果、補強部材10の内周面を除く面へのプライマー層40の形成が完了する。次に、図10に示すように、第一の金型80にプライマー層40付きの補強部材10を装填する。次に、信越化学工業株式会社製のシリコーンゴムコンパウンド(品名: KE−951U)100重量部に信越化学工業株式会社製の架橋剤(品名: C−8)2重量部を混練してシート状に分出したものを投入して180℃、3分間、加熱圧縮成形を行う。成形後に第一の金型80と第二の金型90とを開き、補強部材10と弾性体2とが一体化した成形体を取り出す。この成形体に、シート部3を固着し、押釦13をその上に非固着状態で載置すると、防水用押釦スイッチ部材1が完成する。なお、図15に基づき後述するように、押釦13とシート部3とを固着し、シート部3を弾性体2に非固着状態で載置するようにしても良い。
2.第二の実施の形態
第二の実施の形態において、第一の実施の形態と共通する構成等については、同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
2.1 防水用押釦スイッチ部材の構成
図11は、第二の実施の形態に係る防水用押釦スイッチ部材の一部断面図である。図11は、図6と同様、1つの容器部2aの近傍を示す断面図である。
第二の実施の形態に係る防水用押釦スイッチ部材1は、第一の実施の形態と異なり、補強部材10の筒状部31の内周面のみならず、筒状部31の開口端面および外周面にもプライマー層40を有していない。すなわち、プライマー層40は、補強部材10の補強用フランジ部30の表面、裏面、端面および貫通孔11の内周面にのみ形成されている。このため、補強部材10の筒状体31と容器部2aとが非固着状態若しくは固着していても補強用フランジ部30と弾性フランジ部2bとの固着よりも弱い状態にある。したがって、押釦13をドーム型スイッチ60に向けて押し込むと、容器部2aの外側部22と内側部23の両方がドーム64の方向に伸びる。このため、押しボタンの押圧感覚がより良くなる。一方、補強部材10は、補強用フランジ部30にて弾性体2と固着されているため、弾性体2から容易に剥離することはない。
容器部2aのリブ101は、容器部2aの外周に沿って連続形成されるループ状のリブであるが、第一の実施の形態のリブ21と異なり、弾性フランジ部2bと容器部2aとの接合部から、容器部2aの底部より上方の位置までの領域にて、容器部2aの径方向外側に突出する。また、リブ101が最も突出している部分の厚さは、第一の実施の形態のリブ21の厚さよりも大きい。この結果、容器部2aは、押釦13をドーム型スイッチ60の方向に押し込んだときに、外側部22が十分に伸びるための伸び代部を有することになる。
2.2 防水用押釦スイッチ部材の製造方法
(1)プライマー処理
図12は、図11に示す補強部材をマスキング治具にセットしてプライマーを塗装した状態の縦断面図である。図13は、図12に示す状態から、マスキング治具と補強部材とを分離した状態を示す縦断面図である。
補強部材10のプライマー処理に用いるマスキング治具70は、第一の実施の形態にて用いたマスキング治具70と同一のものである。第二の実施の形態に係る防水用押釦スイッチ部材1の補強部材10のプライマー処理が第一の実施の形態における同処理と異なる点は、筒状部31にキャップ110を被せてからスプレー等によりプライマーを塗装することである。キャップ110の内側の径は、筒状部31の外径より少し大きい。また、キャップ110の側面の高さは、筒状部31の高さと同一若しくはそれより大きい。このため、筒状部31の外周面へのプライマーの塗装を防止できる。
図13に示すように、プライマーを乾燥させた後、補強部材10をマスキング治具70から外し、さらにキャップ110を外すと、補強用フランジ部30の平板71と接触している面と、筒状部31の内周面、外周面および開口端面とを除き、補強部材10へのプライマーの塗装が完了する。その後、乾燥、焼成の各工程を経て、プライマー層40が形成される。次に、補強部材10を逆さにしてマスキング治具70に固定し、先に補強部材10の平板71と接触していた面へのプライマーの塗装を行う。なお、マスキング治具70を、筒状部31の内周面全てを覆うに十分な長さの円柱72のみで構成し、かつキャップ110と一緒に用いることにより、プライマーを一回のみ塗装するだけで、筒状部31の内周面、外周面および開口端面以外の全領域にプライマーを塗装しても良い。
(2)一体成形および組み立て
その後の工程は、第一の実施の形態と同様である。
(3)例示的な製法
図12に示すように、キャップ110を筒状部31の上から被せてからスプレーでプライマーを塗装する以外は、第一の実施の形態で説明した例示的な製法と同様である。
3.第三の実施の形態
第三の実施の形態において、第一の実施の形態と共通する構成等については、同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
図14は、第三の実施の形態に係る防水用押釦スイッチ部材の一部断面図である。図14は、図6と同様、1つの容器部2aの近傍を示す断面図である。
第三の実施の形態に係る防水用押釦スイッチ部材1は、第一の実施の形態および第二の実施の形態と異なり、筒状部31のみから成る補強部材10を弾性体2にインサートした構成を有する。筒状部31の内周面は、プライマー層40を有しておらず、それ以外の領域に存在する。このため、押釦13をドーム型スイッチ60に向けて押し込むと、容器部2aの外側部22よりも、内側部23の方がドーム64の方向に伸びる。このため、押しボタンの押圧感覚が良くなる。一方、補強部材10は、その外周面、その開口両端面にて弾性体2と固着されているため、弾性体2から容易に剥離することはない。
容器部2aの外側部22に形成されるリブ121,122は、容器部2aの外周に沿って連続形成されるループ状のリブであるが、第一の実施の形態および第二の実施の形態と異なり、容器部2aの開口側から底部に向かって2個並んで形成されている。このように、複数のリブ121,122を形成することにより、防水性をより高めることができる。
補強部材10の内周面以外にプライマー層40を形成するためには、円柱72のみからなるマスキング治具70を用意して、補強部材10をそのマスキング治具70に嵌め込み、その状態で、円柱72の両端側からスプレー等にてプライマーを塗装することもできる。塗装後、第一の実施の形態で説明した工程を経て、プライマー層40付きの補強部材10が出来上がる。その後、第一の実施の形態と同様に一体成形の工程を経ると、弾性体2と補強部材10とが一体化した成形体が出来上がる。
4.その他の実施の形態
以上、本発明に係る防水用押釦スイッチ部材の各実施の形態を説明してきたが、本発明は、上記の各実施の形態に限定されることなく、種々変形して実施可能である。
例えば、上記各実施の形態では、補強部材10として、筒状部31と補強用フランジ部30とを備える形態でプライマー層40の形成領域が異なるもの2種類と、筒状部31のみからなるもの1種類の計3種類の補強部材10を例示してきた。また、容器部2aの外側部22に3種類の異なる形状のリブ21、リブ101およびリブ121,122を有する各弾性体2を例示してきた。補強部材10と弾性体2との組み合わせとしては、第一の実施の形態、第二の実施の形態および第三の実施の形態以外に、その他の6種類の組み合わせを採用しても良い。
図15に、第一の実施の形態と類似の形態を有し、押釦とシート部とを固着した変形例を示す。
図15に示す防水用押釦スイッチ部材1は、図6に示す構造と異なり、シート部3が弾性体2と固着されずに、押釦13と固着されている。この結果、押釦13は、押圧操作の際、シート部3と共に可動となる。なお、シート部3を弾性体2と固着しないため、補強用フランジ部30のシート部3との対向する面にプライマー層40を形成していない。第二の実施の形態および第三の実施の形態に係る防水用押釦スイッチ部材1においても、シート部3を弾性体2と固着せず、押釦13と固着することができる。
シート部3を設けずに、弾性体2の中に補強用フランジ部30を完全に埋設しても良い。補強用フランジ部30の貫通孔11は必須の部分ではなく、設けなくても良い。一方、シート部3にも、貫通孔11の位置に合致した貫通孔を形成しても良い。これらの貫通孔は、補強部材10と弾性体2との固定方法、弾性体2と機器の筺体50との固定方法などによって、如何なる位置に設けても、また、如何なる数を形成しても良い。また、容器部2aは、1個のみでも、4個以上でも良い。また、図10に基づいて説明した成形法は、一例にすぎず、これと別の方法により成形を行っても良い。例えば、別の成形方法として、未架橋状態のエラストマー組成物を、第一の金型80と第二の金型90とによって形成された空間内に流し込む方法を採用しても良い。
本発明は、防水機器に組み込まれる押釦スイッチ部材として利用することができる。
1 防水用押釦スイッチ部材
2 弾性体
2a 容器部
2b 弾性フランジ部
7 空間
10 補強部材
12 開口部
13 押釦
21 リブ
22 外側部
23 内側部
30 補強用フランジ部
31 筒状部
50 筐体
101 リブ
121 リブ
122 リブ

Claims (4)

  1. 弾性材料から構成され、一方を開口すると共に当該開口側と反対側に突出する1または2以上の容器部と、
    弾性材料から構成され、当該容器部の開口部からその径方向外側に延出して形成される弾性フランジ部と、
    を連接して成り、機器の筐体内方に前記容器部を挿入して配置される防水用押釦スイッチ部材であって、
    前記容器部の外周に沿って連続形成されるループ状のリブを1若しくは2以上備え、
    前記容器部および前記弾性フランジ部の内の少なくとも前記容器部に補強部材を備え、
    前記補強部材は、前記容器部の薄肉部にインサートされ、前記容器部の内側部、外側部および底部と非固着状態若しくは他よりも弱い固着状態であることを特徴とする防水用押釦スイッチ部材。
  2. 前記補強部材は、
    前記容器部の薄肉部にインサートされる筒状部と、
    当該筒状部の一方の開口部の径方向外側に延出して形成される補強用フランジ部と、
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の防水用押釦スイッチ部材。
  3. 前記リブは、前記容器部と前記弾性フランジ部との接合部から前記容器部の径方向外側に突出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防水用押釦スイッチ部材。
  4. 前記容器部の開口部から底部に向かって前記容器部の内側に形成される空間内に挿入配置される押釦を、さらに備えることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の防水用押釦スイッチ部材。
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