JP5414300B2 - 塩素の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、塩素の製造方法に関する。
塩素は塩化ビニル、ホスゲンなどの原料として有用であり、塩化水素の酸化によって得られることもよく知られている。例えば、塩化水素を触媒を用いて分子状酸素で接触酸化し、塩素を製造する方法としては、従来からDeacon触媒と呼ばれる銅系の触媒が優れた活性を有するとされ、塩化銅と塩化カリウムに第三成分として種々の化合物を添加した触媒が多数提案されている。また、Deacon触媒以外にも、酸化クロムまたはこの化合物を触媒として用いる方法、酸化ルテニウムまたはこの化合物を触媒として用いる方法も提案されている。
しかしながら、塩化水素の酸化反応は59kJ/mol−塩素の発熱反応であり、触媒充填層からなる反応域(以下、単に反応域とも記す)の温度制御が不充分であると、触媒の熱劣化を引き起こす場合があった。また、運転の安定性および容易性を確保する観点からも反応域の温度制御は重要である。また、反応域における最高温度を有する箇所(以下、ホットスポットとも記す)の温度が高くなりすぎると、最悪の場合には暴走反応を引き起こすこともあり、塩化水素および/または塩素による装置材料の高温ガス腐食を起こす問題もある。
ホットスポットの温度が高くなりすぎることを抑制した塩素の製造方法としては、前記反応域における空塔速度を0.70〜10m/sとすることにより、触媒充填層を有効に活用することが可能な塩素の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、その実施に際して、高圧容器や、コンプレッサーを用いて、反応域を高圧条件下にすることにより、空塔速度を前記範囲にする必要があり、設備コスト、運転コストの面で更なる改善が求められていた。
特許第3570322号公報
本発明は上記従来技術の有する課題を鑑みてされたものであり、従来よりも反応域における空塔速度が小さい場合でもホットスポットの温度が高くなりすぎることを抑制することが可能な、塩化水素から塩素を高収率で製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の嵩密度を有する触媒を用いることにより、反応域における空塔速度が小さい場合でも、ホットスポットの温度が高くなりすぎることを抑制し、塩化水素から塩素を高収率で製造することが可能であることを見出し、本発明の塩素の製造方法を完成させた。なお、本発明における高収率とは、反応器出口における塩化水素の転化率が75%以上であることをいう。
すなわち、本発明の塩素の製造方法は、塩化水素を含むガス中の塩化水素を、酸素を含むガスを用いて、触媒充填層からなる反応域を有する固定床反応方式で酸化する方法であ
って、前記反応域における空塔速度が0.70m/s未満であり、前記触媒充填層に充填される触媒の嵩密度が700kg/m3未満であることを特徴とする。
前記触媒が、銅元素を含有する触媒であって、前記触媒の細孔直径が5〜15nmの範囲において、0.4〜2.0ml/gの細孔容積を有することが好ましく、銅元素、アルカリ金属元素、および希土類元素を含有する触媒であって、前記触媒の細孔直径が5〜15nmの範囲において、0.4〜2.0ml/gの細孔容積を有することがより好ましい。
前記反応域における最高温度が、380〜420℃であることが好ましい。
本発明の塩素の製造方法は、反応域における空塔速度が小さいため、従来よりも圧力損失を低く抑えることができ、従来よりも低い圧力条件下で塩素の製造を行うことができる。このため本発明の塩素の製造方法は、設備コスト、運転コストに優れる。
次に本発明について具体的に説明する。
本発明の塩素の製造方法は、塩化水素を含むガス中の塩化水素を、酸素を含むガスを用いて、触媒充填層からなる反応域を有する固定床反応方式で酸化する方法であって、前記反応域における空塔速度が0.70m/s未満であり、前記触媒充填層に充填される触媒の嵩密度が700kg/m3未満であることを特徴とする。
本発明において用いられる塩化水素を含むガスとしては特に限定はなく、通常は塩化水素の発生源からガス状で供給される塩化水素を含むガスをそのまま反応器に供給する。塩化水素を含むガスとしては、通常、該ガス中の塩化水素の濃度が通常10体積%以上、好ましくは50体積%以上、更に好ましくは80体積%以上のものが用いられる。該濃度が10体積%よりも低い場合には、生成した塩素の分離や、未反応酸素をリサイクルする場合のリサイクル工程が煩雑になることがある。
原料の塩化水素を工業的に得る場合、塩化水素は有機化合物の置換反応や縮合反応などの副生物として得られるために、かならずしも高純度ではない。不純物として、例えばベンゼン、クロロベンゼンなどの有機物化合物と窒素、一酸化炭素などの無機性ガスとが考えられる。有機化合物は塩素化されて高沸点化合物となり、ガスラインの閉塞などのプラントトラブルの原因となりえることから、通常反応前に除去される。本発明においても、塩化水素中の有機化合物は極力除去するのが好ましい。また工業的に得られる塩化水素中には通常炭酸ガスなどの無機性ガスが含有されているが、そのまま反応器へ入っても特に問題はない。しかし、無機性ガスの濃度が高く塩化水素の濃度が極端に低い場合には、系全体の容積が増加し、また投入するエネルギーも多くなるために好ましくなく、実用上本発明に用いる塩化水素を含むガス中の無機性ガスの濃度は90体積%以下、好ましくは50体積%以下、更に好ましくは20体積%以下である。
工業的に得られる塩化水素が有機化合物を含有する場合には、活性炭等で有機化合物を吸着して除去した後に本発明に用いる塩化水素を含むガスとして供給することが好ましい。なお、工業的に得られる塩化水素を直接、活性炭等に接触させ、有機化合物を吸着させることにより、塩化水素の濃度が高い塩化水素を含むガスを得ても良いが、工業的に得られる塩化水素を加圧、冷却して有機物を凝縮除去した後、さらに活性炭等に接触させ有機物を吸着除去しても良い。有機物が吸着した活性炭は、加熱した窒素や空気等のガスを通気して有機物を脱離させる等の公知の方法で再生し、再使用することができる。
反応は、通常圧力が常圧〜5MPa-Gで行われ、そのために塩化水素を含むガスは公
知の圧縮機(送風機)を用いて加圧される。圧縮機としては、例えばターボ型の軸流圧縮機、遠心圧縮機、容積型の往復式圧縮機、ねじ式(スクリュー)圧縮機等が挙げられ、必要とする圧力、風量を勘案して適宜選択される。圧縮機の腐食の観点から、乾燥した塩化水素を含むガスを加圧するのが好ましい。
本発明に用いる酸素を含むガスとしては、酸素または空気が使用される。空気をそのまま使用してもよいが、塩化水素から塩素を得る反応は、平衡反応であるため転化率は100%に至らず、未反応塩化水素と生成物である塩素との分離が必要である。したがって、本発明に用いる酸素を含むガスとしては不活性な窒素ガスを含まない純酸素がより好ましい。工業的に用いる酸素を含むガスとしては、好ましくは酸素の濃度が80体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上のものが用いられる。酸素以外の成分としては、窒素(N2)、アルゴン(Ar)、炭酸ガス(CO2)などが挙げられる。
酸素の濃度が80体積%よりも小さい場合には、精製工程で得られる未反応酸素を主成分とするガス中の酸素濃度が低くなり、循環工程で反応工程へ供給する該ガスの量を少なくしなければならないことがある。酸素濃度が80体積%以上の酸素を含むガスは、空気の圧力スイング法や深冷分離などの通常の工業的な方法によって得ることができる。
本発明の塩素の製造方法において、塩化水素1モルに対する酸素の理論モル量は0.25モルであるが、理論量以上の酸素を供給することが好ましく、塩化水素1モルに対し酸素0.25〜2モルがさらに好ましい。酸素の量が少な過ぎると、塩化水素の転化率が低くなる場合があり、一方酸素の量が多過ぎると生成した塩素と未反応酸素の分離が困難になる場合がある。
本発明においては、塩化水素の酸化を、一つの触媒充填層からなる反応域により行ってもよく、触媒充填層を二つ以上の反応域に分割し、酸素を含むガスを二つ以上に分割して導入してもよい。酸素を含むガスを分割して導入する方法としては、塩化水素を含むガスの全量と、酸素を含むガスの一部分を第1反応域に導入し、その反応物と残りの酸素を含むガスを第2反応域以降の反応域に導入する方法があげられる。ここで、第1反応域は原料ガスの流れについての最も上流側の反応域を意味し、第2反応域は第1反応域の下流側の反応域を意味する。第1反応域に導入される酸素を含むガスの分割量は、全体量の5〜90%、好ましくは10〜80%、更に好ましくは30〜60%である。該分割量が少なすぎる場合は、第2反応域以降の反応域の温度制御が困難になることがある。
本発明において、触媒充填層に充填される触媒としては、嵩密度が700kg/m3
満であるものが用いられる。なお、前記嵩密度は、触媒と、触媒固有の孔隙と、個々の粒子間や粒子と器壁との間に存在する空間とを含む単位体積あたりの重量と定義する。嵩密度の測定では触媒の詰め方によって値が変わるが、ここではある重量の触媒を充填した容器に振動を与え、静止層高が変化しないことを確認した後に触媒の占める体積を測定することで嵩密度(固め嵩密度ともいう)を求めた。前記触媒としては特に限定はないが、例えば以下の触媒が用いられる。
本発明に用いる触媒は、銅元素を含有する触媒であって、前記触媒の細孔直径が5〜15nmの範囲において、0.4〜2.0ml/gの細孔容積を有することが好ましく、銅元素、アルカリ金属元素、および希土類元素を含有する触媒であって、前記触媒の細孔直径が5〜15nmの範囲において、0.4〜2.0ml/gの細孔容積を有することがより好ましい。
なお、前記触媒の細孔容積、および平均細孔直径はBJH(Barrett−Joyner−Halenda)法(JACS 73(1951)373 参照)による窒素吸着等温線を解析した細孔分布測定によって求めた。すなわち本発明に用いる触媒は、上記BJH法による窒素吸着等温線を解析した細孔分布測定において、細孔直径が5〜15nmの範囲における細孔容積が0.4〜2.0ml/gであることが好ましい。また、比表面積はBET法(JACS 60(1938)309 参照)により測定した。
前記触媒の細孔構造としては、細孔直径5〜15nmの範囲の細孔容積は好ましくは0.4〜2.0ml/gであり、より好ましくは、上記範囲の細孔容積は0.45〜2.0ml/gである。細孔直径は反応物、および生成物の拡散、移動に関係しており、大きすぎると拡散は速いが触媒表面への到達頻度が下がり、小さすぎると逆に拡散が遅くなる。このため、反応頻度と拡散速度の兼ね合いから、細孔直径5〜15nmの範囲が触媒の活性に影響する。また、前記細孔直径における細孔容積は活性点の量に関係し、上記範囲では、高活性が得られる。細孔容積は大きいほど望ましいように思えるが、細孔容積が2.0ml/gを越えた場合には触媒製造の段階で、触媒各成分の拡散速度の差などにより、組成にばらつきが出て複合化が均一にできないため、触媒の活性が充分でない。また、細孔容積が2.0ml/gを越えると触媒強度が充分に得られず、触媒の崩壊が懸念される。
従来から銅元素、アルカリ金属元素、および希土類元素を含有する触媒は知られていたが、触媒自体の細孔構造についての検討は行われておらず、例えば米国特許3260678号明細書に記載されているのは、活性成分を担持する担体の物性が触媒の活性に影響をおよぼすことについてのみである。本出願人は銅元素、アルカリ金属元素、および希土類元素を含有する触媒において、活性成分の担持方法や担持量が異なると、同じ担体であっても活性が異なり、担体の物性を規定しても触媒の活性にはばらつきがあることを見出し、触媒自体の細孔構造が上記範囲を満たすと優れた活性を有する触媒となることを見出し、該触媒についてすでに特許出願を行った(PCT/JP2008/067085)。本発明に用いる触媒は、担体の物性が異なっていても、触媒成分の担持条件によって、好ましい細孔構造が形成できれば、高活性触媒として用いることが可能である。
前記触媒の比表面積は、通常は100m2/g〜500m2/g、好ましくは170m2
/g〜500m2/g、より好ましくは200m2/g〜500m2/gである。比表面積
は大きいほど活性点が増えるため好ましいが、比表面積の増大に伴って、細孔構造は崩壊しやすくなるため上記範囲であることが好ましい。
前記触媒には、活性成分として、銅元素を含有することが好ましく、銅元素、アルカリ金属元素、および希土類元素を含有することがより好ましい。
前記触媒が銅元素を含有する触媒である場合には、該触媒の銅元素の含有量は、触媒100重量%あたり、1〜20重量%が好ましい。
以下前記触媒が銅元素、アルカリ金属元素、および希土類元素を含有する場合における各活性成分について説明する。
前記触媒に含まれる銅元素は、原子価が1価、2価いずれの状態で含まれていてもよい。銅元素の含有量は、触媒100重量%あたり、1〜11重量%が好ましく、1.3〜10重量%がより好ましく、2〜10重量%がさらに好ましい。
前記触媒に含まれるアルカリ金属元素としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムが挙げられる。これらのアルカリ金属は単独で使用し
ても、2種以上で使用しても良い。このうち、ナトリウムおよび/またはカリウムが好ましく、カリウムがより好ましい。アルカリ金属元素の含有量は、触媒100重量%あたり、0.4〜9重量%が好ましく、0.5〜9重量%がより好ましく、1〜9重量がさらに好ましく、2〜8重量%が特に好ましい。
前記触媒に含まれる希土類元素としては、周期律表第3族のスカンジウム、イットリウム、原子番号57〜71のいわゆるランタノイドが挙げられる。これらの希土類金属は、単独で使用しても、2種以上で使用しても構わない。このうち、イットリウム、スカンジウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユ−ロピウム、ガドリニウム、ディスプロシウム、イッテルビウムが好ましく、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウムがより好ましい。希土類元素の含有量は、触媒100重量%あたり、0.6〜11重量%が好ましく、0.8〜11重量%がより好ましく、1〜11重量%がさらに好ましく、2〜10重量%が特に好ましい。
前記触媒は、好ましくは銅元素、アルカリ金属元素、および希土類元素を含むが、銅元素と、希土類元素との重量比が1:0.6〜1:1.5であり、銅元素と、アルカリ金属元素との重量比が、1:0.4〜1:1.0であることが好ましい。また、銅元素と、希土類元素との重量比が1:0.8〜1:1.3であり、銅元素と、アルカリ金属元素との重量比が、1:0.5〜1:0.9あることがより好ましい。上記範囲では各元素が複合化しやすく、触媒の活性に優れる。
前記触媒は、通常上記活性成分が担体に担持されている。活性成分を分散、担持する担体は、塩酸、塩素に対して分解しない耐腐食性を有するものであり、細孔直径が5〜18nmの範囲において、0.5〜2.5ml/gの細孔容積を有するものを用いることが好ましく、0.5〜2.0ml/gの細孔容積を有するものがより好ましい。
また、担体の形状は粒子状、顆粒状、あるいは種々の成形体でも構わないが、活性成分を均一に分散担持するためには、粒子状であることが好ましい。また、担体の素材としては、シリカ、シリカアルミナ、チタニア、ジルコニア、などが挙げられるが、なかでもシリカが好ましい。シリカ担体は通常の市販のシリカゲル、ヒュームドシリカ等、いずれも用いることができる。
触媒が銅元素を含有する触媒である場合には、触媒中の担体の含有量は、触媒100重量%あたり、99〜65重量%であることが好ましい。また、触媒が銅元素、アルカリ金属元素、および希土類元素を含有する触媒である場合には、触媒中の担体の含有量は、触媒100重量%あたり、通常98〜65重量%、好ましくは97〜69重量%、より好ましくは94〜72重量%である。上記範囲では、触媒の活性と強度とを両立することができるため好ましい。
また前記触媒は、上記活性成分および担体以外の成分(その他の成分)を含んでいてもよい。その他の成分としては、パラジウム元素、イリジウム元素、クロム元素、バナジウム元素、ニオブ元素、アルカリ土類金属元素などがあげられる。その他の成分が含まれる場合には、担体100重量部あたり、通常0.01〜10重量部の範囲で含まれる。
また、前記触媒の嵩密度は前述のように700kg/m3未満であり、300〜600
kg/m3であることが好ましい。本発明に用いる触媒の嵩密度が前記範囲にすることで
、酸化反応により生じる単位体積あたりの発熱量をある程度抑えることができ、過度なホットスポットを抑制できる。これは、触媒の熱的劣化の防止、局所的な温度上昇の防止、運転の安定性および容易性の向上のために好ましい。嵩密度が低すぎると、反応容積が大きくなり設備コストの面で不利となる。前記触媒の嵩密度は、前述のように触媒の真の密
度から触媒固有の孔隙と空隙を含めた単位体積あたりの重量を測定することで求めることができる。また、前記触媒の嵩密度は、後述する触媒を製造するための方法において、細孔容積や触媒形状、触媒直径により調製することができる。
上記触媒を製造するための方法としては特に限定されないが、例えば次のような方法で製造することができる。
上記触媒を製造する方法は通常、少なくとも銅化合物、好ましくは銅化合物とアルカリ金属化合物と希土類化合物とを、細孔直径が5〜18nmの範囲において、0.5〜2.5ml/gの細孔容積を有する担体に分散する工程を有する。また、上記触媒を製造する方法としてはさらに、少なくとも銅化合物が分散した担体、好ましくは銅化合物とアルカリ金属化合物と希土類化合物とが分散した担体を200〜600℃で焼成する工程を有することが好ましい。
上記製造方法において、触媒の活性成分である銅元素、アルカリ金属元素、および希土類元素は、それぞれ銅化合物とアルカリ金属化合物、および希土類化合物として担体に分散される。担体としては、細孔直径が5〜18nmの範囲において、0.5〜2.5ml/gの細孔容積を有するものを用いることが好ましく、0.5〜2.0ml/gの細孔容積を有するものがより好ましい。前記担体に分散する方法については特に限定されず、真空チャンバー内での上記元素の蒸着、気相担持、液相担持のいずれの方法も使用できるが、操作性や、均一分散性を考慮すると、液相担持が望ましい。液相担持の場合、各活性成分を含む化合物を溶媒に添加し、原料溶液や原料が溶媒中に分散した原料分散液とした後に、触媒担体に吹き付けてもよいし、あるいは、触媒担体を、前記原料溶液や原料分散液中に浸した後、そのまま、原料溶液や原料分散液を攪拌しながら蒸発乾固を行ってもよく、また、触媒担体を、前記原料溶液や原料分散液中に浸した後、触媒担体をこの原料溶液や原料分散液中から引き上げ、乾燥する方法でも構わない。触媒担体を原料溶液や原料分散液中に浸して分散担持する場合は、担持量が少ない場合には、再度触媒担体を原料溶液や原料分散液中に浸すことにより、活性成分の含有率を上げることができる。前記原料溶液や原料分散液中の活性成分は、担体の細孔内へ入る大きさであれば、溶媒中に溶解していない、固体状態のままでも構わないが、活性成分を均一に細孔内へ分散させるためには、各活性成分が溶媒中に溶解した状態すなわち原料溶液であることが好ましい。
これらの各活性成分を担体に分散することにより得られた触媒は、該触媒に残存する、原料溶液や原料分散液由来の溶媒量が、該触媒の細孔容積より少ない量にすることが好ましい。触媒に残存する溶媒量が、触媒の細孔容積よりも大きいと、活性成分を分散した触媒を反応器に充填した後に、触媒表面に出ている溶媒が触媒表面から蒸発、あるいは揮散する際に、活性成分が移動することになり、活性成分の触媒担体への担持量が不均一となる。触媒に残存する溶媒量が、触媒の細孔容積よりも少ない量であれば、触媒中に溶媒を含んでいても、表面は濡れずに、活性成分は触媒細孔内に固定されたままのため、担持量は均一で変化することはない。
これら液相で担持する場合の各活性成分の溶媒としては、活性成分を含む化合物を溶解または分散できるものであれば特に限定されないが、取り扱いの容易さから水が好ましい。活性成分を溶媒に溶解、分散するときの濃度は、活性成分の化合物が均一に溶解または分散できれば、特に制限されないが、濃度が低すぎると、担持に時間がかかるため、活性成分および溶媒の合計100重量%当たりの活性成分量は、好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは2〜40重量%である。
上記触媒の製造方法においては、前記分散後の触媒に細孔容積以上の量の溶媒が残存する場合には、前記分散後、反応器への充填前に溶媒除去が必要となるが、細孔容積以下の
溶媒量であれば、そのままの状態で反応に用いても、溶媒除去を行ってもよい。溶媒を除去する場合には、乾燥だけでも良いが、更に焼成を行ってもよい。乾燥条件としては、特に限定はないが、通常は大気中または減圧下、0〜120℃、10min〜24hrの条件で実施される。
上記触媒の製造方法においては、少なくとも銅化合物が分散した担体、好ましくは銅化合物とアルカリ金属化合物と希土類化合物とが分散した担体を200〜600℃で焼成することが好ましい。温度以外の焼成条件としては、通常大気中、1〜10hrの条件で実施される。
担体に分散される銅化合物、アルカリ金属化合物、および希土類化合物は、どのような化合物でもよいが、通常はそれぞれ独立にハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、アルコキシドまたは錯塩である。中でも塩化物、硝酸塩または酢酸塩であることが複合塩を形成しやすいという点で好ましい。さらに硝酸塩または酢酸塩であることが、触媒製造の際にステンレス等の鉄系材料を含む装置を用いた場合であっても、装置を腐食することが少なく好ましい。
銅化合物、アルカリ金属化合物、希土類化合物および担体の使用量としてはその担持方法によっても異なるが、得られる触媒に含まれる銅元素、アルカリ金属元素、および希土類元素が前述の範囲内になる量を用いることが好ましい。
上記製造方法によって得られる触媒の形状は、特に限定されず、いずれの形状でも用いることができるが、例えば、粉体状、顆粒状、ペレット状、球状、ヌードル状等が挙げられる。サイズについても、反応器に充填可能なサイズであればいずれのものでもよい。
触媒サイズは、触媒直径が2〜8mmの範囲が好ましく、さらに3〜5mmが特に好ましい。触媒直径が小さすぎると圧力損失が大きくなり、加圧する必要がある。反応管サイズにもよるが、反応管サイズが小さい場合、触媒直径が大きすぎるとガス抜けが起こり、反応率が低下する恐れがある。なお、ここでいう触媒直径とは、球形粒状では球の直径、円柱形ペレット状では断面の直径、その他の形状では最大直径を意味する。
また担体として、シリカ担体を用いる場合には、市販されているものをそのまま使用することもできるが、30〜700℃の温度で乾燥または焼成して使用することもできる。
さらに上記銅化合物とアルカリ金属化合物、および希土類化合物に加えて、パラジウム化合物、イリジウム化合物、クロム化合物、バナジウム化合物、ニオブ化合物、アルカリ土類金属化合物などその他の化合物を担体に分散させる場合にも、その添加方法は特に限定されず、銅化合物とアルカリ金属化合物、および希土類化合物と一緒に溶液にして担体に分散しても良いし、別途、先に担体に分散しても、あるいは後から担体に分散しても良い。このようにして上記活性成分および担体以外の成分を含んでいる触媒を得ることができる。上記触媒にこれら他の成分が含まれる場合には、担体100重量部あたり、金属元素換算で通常0.01〜10重量部の範囲である。
本発明の塩素の製造方法における触媒の使用量は、標準状態(0℃、0.1MPa)における塩化水素の供給速度(L/hr)と、触媒充填層の体積(L)との比(GHSV)で
表すと、通常10〜20000h-1、好ましくは100〜1000h-1、より好ましくは150〜700h-1で行われる。原料を反応域に流す方向は、上向きでも下向きでもよい。反応圧力は、通常、常圧〜5MPa-G、好ましくは常圧〜0.6MPa-G、さらに好ましくは常圧〜0.5MPa-Gで行われる。
また、本発明の塩素の製造方法における反応域の温度(反応温度)は、通常は250〜500℃、好ましくは320〜420℃である。前記範囲内では、塩化水素の転化率に優れ、上記触媒の熱劣化が起こりづらいため好ましい。
また、本発明の塩素の製造方法において、反応域における最高温度、すなわちホットスポットの温度は、380〜420℃であることが好ましい。
前記範囲では、反応域における温度制御が容易となるため好ましい。さらに本触媒の利点は、420℃でも触媒の熱劣化が起こりにくいことにあり、これにより前記反応領域における空塔速度を0.7m/s未満としても触媒充填層を有効に活用することができる。
本発明の塩素の製造方法は、通常反応器内に、触媒充填層からなる反応域を形成して行うが、反応器としては特に限定はなく、従来公知の塩素の製造に用いられる反応器を用いることができる。反応器としては例えば、特表2006−509705号公報や、特表2007−515372号公報に記載された反応器を用いることができる。
なお、本発明において触媒充填層からなる反応域とは、充填された上記触媒からなる層や、充填された上記触媒と触媒を希釈する不活性物質や担体のみで成型した充填物とからなる層を意味する。触媒充填層からなる反応域の上部および/または下部には、不活性物質や担体のみで成型した充填物を充填してもよい。ただし、不活性物質や担体のみで成型した充填物のみからなり触媒を含まない充填層は、触媒充填層とは見なさない。
本発明においては、前記反応域における空塔速度が0.70m/s未満であり、好ましくは0.005〜0.69m/sである。反応域における空塔速度が前記範囲内であると、従来よりも低圧条件下で塩素の製造を行うことができ、設備コスト、運転コストに優れる。なお、本発明における空塔速度とは、触媒充填層に供給される全てのガスの標準状態(0℃、0.1MPa)における供給速度と反応管の断面積との比を意味する。なお、空塔速度は一般に反応域の後半になるにつれて遅くなる。本発明においては、前記空塔速度は、反応域の初期における空塔速度、すなわち反応域入口における空塔速度である。
本発明の塩素の製造方法においては、反応管内に二つ以上の触媒充填層からなる反応域を有する固定床反応方式で行うこともできる。少なくとも二つの触媒充填層を形成する方法としては、反応管内の触媒充填層を管軸方向に少なくとも二つの反応域に分割して、同一または活性、組成、粒径等の異なる触媒を充填する方法、または触媒を不活性物質や担体のみで成型した充填物で希釈したものを、希釈率を変えて充填する方法、または触媒と触媒を不活性物質や担体のみで成型した充填物で希釈したものとを充填する方法をあげることができる。
通常、連続する反応域は直接に接している状態にあるが、反応域の間に不活性物質や担体のみで成型した充填物を充填してもよい。ただし、不活性物質や担体のみで成型した充填物のみからなる充填層は、触媒充填層とは見なさない。
本発明においては、触媒充填層を管軸方向に二つ以上の反応域に分割して、第1反応域の熱伝導度が最も高くなるように、触媒または触媒と不活性物質や担体のみで成型した充填物を充填してもよい。原料の入口側の反応域では、反応物質である塩化水素と酸素の濃度が高いために反応速度が大きく、酸化反応による発熱が大きい。したがって、入口側の反応域に触媒の熱伝導度が比較的高い触媒を充填することにより、過度なホットスポットを抑制することができる。
本発明の塩素の製造方法においては、触媒充填層を管軸方向に二つ以上の反応域に分割
して、第1反応域から最終反応域に向かって、ガスの流れ方向に、反応域の活性が順次高くなるように触媒または触媒と不活性物質や担体のみで成型した充填物とを充填してもよい。二つ以上の反応域に分割することにより、連続する反応域の温度差を小さくすることができ、運転を安定して容易に行うことができる。
本発明の塩素の製造方法においては、触媒充填層を管軸方向に少なくとも二つ以上の反応域に分割して、最終反応域の活性を、その直前の反応域の活性よりも高くなるように、触媒または触媒と不活性物質や担体のみで成型した充填物を充填し、かつ最終反応域のホットスポットを、その直前の反応域のホットスポットよりも低くしてもよい。最終反応域の活性がその直前の活性よりも低く、かつ最終反応域のホットスポットがその直前の反応域のホットスポットよりも高い場合は、塩化水素を酸素で酸化して塩素と水に変換する反応が平衡反応であるために、塩化水素の転化率が化学平衡組成に支配されて低くなる場合がある。
本発明の塩素の製造方法においては、触媒充填層からなる反応域の温度制御を熱交換方式で行う方法が、反応熱が良好に除去され、運転の安定性および容易性が確保されるために好ましい。本発明の熱交換方式とは、触媒が充填された反応管の外側にジャケット部を有し、反応で生成した反応熱をジャケット内の熱媒体によって除去する方式を意味する。熱交換方式では、反応管内の触媒充填層からなる反応域の温度が、ジャケット内の熱媒体によって制御される。工業的には、直列に配列された触媒充填層からなる反応域を有する反応管を並列に配列し、外側にジャケット部を有する多管式熱交換器型の固定床多管式反応器を用いることもできる。熱交換方式以外の方法としては、電気炉方式があげられるが、反応域の温度制御が難しいといった問題がある。
熱媒体としては、溶融塩、スチーム、有機化合物または溶融金属をあげることができるが、熱安定性や取り扱いの容易さ等の点から溶融塩またはスチームが好ましく、より良好な熱安定性の点から溶融塩が更に好ましい。溶融金属は、コストが高く、取り扱いが難しいといった問題がある。溶融塩の組成としては、硝酸カリウム50重量%と亜硝酸ナトリウム50重量%の混合物、硝酸カリウム53重量%と亜硝酸ナトリウム40重量%と硝酸ナトリウム7重量%の混合物などをあげることができる。有機化合物としては、ダウサムA(ジフェニルオキサイドとジフェニルの混合物)をあげることができる。
本発明の塩素の製造方法においては、触媒充填層からなる反応域の温度制御を、二つ以上の独立した温度制御により行い、触媒充填層を有効に活用し、塩素を安定して高収率で得ることができる。
温度制御を、二つ以上の独立した温度制御により行う方法としては、例えば反応管内の触媒充填層を管軸方向に少なくとも二つの反応域に分割して、熱交換方式と熱交換方式以外の方法の組み合わせで該反応域の温度制御を行う方法、少なくとも二つに分割された反応域に独立したジャケット部を作り、独立に熱媒体を循環させて該反応域の温度制御を行う方法、仕切り板によってジャケット部を少なくとも二つに分割して、仕切られた部分に独立して熱媒体を循環させて該反応域の温度制御を行う方法をあげることができる。前記仕切り板は、反応管に溶接などにより直接固定されていてもよいが、仕切り板や反応管に熱的な歪みが生じることを防ぐために、実質的に独立して熱媒体を循環できる範囲内において、仕切り板と反応管との間に適当な間隔を設けることができる。ジャケット内の熱媒体の流れは、下方から上方に流れるようにするのが好ましい。またこれらの方法は、2種以上を組み合わせて行ってもよい。
反応管の内径は、通常10〜50mm、好ましくは10〜40mm、更に好ましくは10〜30mmである。反応管の内径が小さすぎる場合は、工業用反応装置で塩化水素の満
足いく処理量を得るためには、過剰数の反応管が必要とされるので不利益である場合があり、反応管の内径が大きすぎる場合は、触媒充填層に過度のホットスポットを生じさせる場合がある。
反応管の内径(D)と触媒直径(d)の比率(D/d)は、通常5/1〜100/1、好ましくは5/1〜50/1、更に好ましくは5/1〜20/1である。比率が小さすぎる場合は、触媒充填層に過度のホットスポットを生じさせる場合、或いは工業用反応装置で塩化水素の満足いく処理量を得るためには、過剰数の反応管が必要とされるので不利益である場合があり、比率が大きすぎる場合は、触媒充填層に過度のホットスポットを生じさせる場合、あるいは触媒充填層の圧力損失が大きくなる場合がある。
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
[触媒の調整]
平均細孔直径13.6nm、比表面積236m2/g、全細孔容積0.96ml/gで
あり、細孔直径5〜18nmの範囲における細孔容積が0.85ml/gのサンゴバン製、SS62138を空気中、500℃で2h焼成した(シリカ担体1とする)。ガラス製フラスコに水30gと塩化第二銅(和光純薬、特級)1.29g、塩化ランタン・七水和物(和光純薬、特級)1.6g、塩化カリウム(和光純薬、特級)0.67gを加えて水溶液とし、これにシリカ担体1を10.1g加え、ロータリーエバポレーターを用いて、80℃で蒸発乾固した。これを、空気中、250℃で3h焼成し、Cu:K:La:SiO2=5:3:5:87の重量比率の担持触媒を得た(触媒1とする)。触媒1の細孔分
布測定を行った結果、比表面積316m2/g、細孔直径5〜15nmの範囲における細
孔容積は1.05ml/gであった。
また、前述のように触媒の真の密度から触媒固有の孔隙と空隙を含めた単位体積あたりの重量に従って測定した触媒1の嵩密度は500kg/m3であった。
〔実施例1〕
反応器には、熱源として電気炉を備えた内径0.0254mおよび長さ1.2cmのガラス製反応管(外径5mmの温度測定用鞘管を反応管内部に挿入)からなる単管固定床反応器を用いた。
前記反応管内に、前述の触媒1を3.0g充填し、反応管内に触媒充填層を形成した。
塩化水素1.86L/hr(標準状態、塩化水素:鶴見曹達、99.7体積%以上)、酸素1.14L/hr(標準状態、酸素:福岡酸素、99.5体積%以上)および窒素0.6L/hr(標準状態、窒素:福岡酸素、99.99体積%以上)を電気炉で370℃に加熱した反応器に供給して加熱し、反応管の上部から下部へダウンフローで流通させた。塩化水素/酸素のモル比は31/19、GHSVは318h-1、反応域における空塔速度が0.002m/sであった。
なお、前記GHSVは前記標準状態における塩化水素の供給速度と、触媒充填層の体積との比であり、下記式に従って計算することができる。なお、触媒充填層の体積は、前記反応管内部の体積から、温度測定用鞘管の体積を減ずることにより求めることができる。GHSV[h-1]=1.86[L/hr]/{(25.4[mm]/2)2×π×12[
mm]−(5[mm]/2)2×π×12[mm]}=1.86[L/hr]/0.00
5844[L]=318h-1
触媒充填層の反応温度は入口370℃、ホットスポット370℃であった。この時、反応管出口部の圧力は、0.0MPa−Gであった。
出口ガスをヨウ化カリウム水溶液にサンプリングして、生成した塩素と未反応の塩化水素と生成水を吸収させ、ヨウ素滴定法および中和滴定法によって、塩素の生成量および未反応塩化水素量を測定した。塩化水素の塩素への転化率は80.0%であった。小スケールの反応器において、低空塔速度条件下、高収率で塩素を得た。
〔実施例2〕
反応器には、熱源として電気炉を備えた内径0.0254mおよび長さ1.2cmのガラス製反応管(外径5mmの温度測定用鞘管を反応管内部に挿入)からなる単管固定床反応器を用いた。
前記反応管内に、前述の触媒1を3.0g充填し、反応管内に触媒充填層を形成した。
塩化水素3.72L/hr(標準状態、塩化水素:鶴見曹達、99.7体積%以上)、酸素2.22L/hr(標準状態、酸素:福岡酸素、99.5体積%以上)および窒素1.20L/hr(標準状態、窒素:福岡酸素、99.99体積%以上)を電気炉で380℃に加熱した反応器に供給して加熱し、反応管の上部から下部へダウンフローで流通させた。塩化水素/酸素のモル比は31/19、GHSVは637h-1、反応域における空塔速度が0.004m/sであった。
なお、前記GHSVは前記標準状態における塩化水素の供給速度と、触媒充填層の体積との比であり、下記式に従って計算することができる。なお、触媒充填層の体積は、前記反応管内部の体積から、温度測定用鞘管の体積を減ずることにより求めることができる。GHSV[h-1]=3.72[L/hr]/{(25.4[mm]/2)2×π×12[
mm]−(5[mm]/2)2×π×12[mm]}=3.72[L/hr]/0.00
5844[L]=637h-1
触媒充填層の反応温度は入口415℃、ホットスポット415.3℃であった。この時、反応管出口部の圧力は、0.0MPa−Gであった。
出口ガスをヨウ化カリウム水溶液にサンプリングして、生成した塩素と未反応の塩化水素と生成水を吸収させ、ヨウ素滴定法および中和滴定法によって、塩素の生成量および未反応塩化水素量を測定した。塩化水素の塩素への転化率は81.6%であった。小スケールの反応器で低空塔速度条件下、反応域におけるホットスポットが420℃近くにおいても高収率で塩素を得た。
次に、反応器のスケールが異なる場合の実施例を説明する。
〔実施例3〕
反応器には、内径0.0213mおよび長さ5.9mのNi製反応管を約1.8万本有する多管式固定床反応器を想定し、前述の触媒1を19.1t充填し、反応管一本あたりの原料ガスフィード流量として塩化水素 462L/hr(標準状態)、酸素 276L/hr(標準状態)および窒素 151L/hr(標準状態)、原料ガスの組成 塩化水素52/酸素31/窒素17、原料ガスフィード温度 342℃、熱媒温度 342℃、入口圧力 0.5MPa−G、GHSV 220h-1、反応域入口における空塔速度 0
.69m/sの条件で反応解析を行った。
熱媒には亜硝酸ナトリウムと硝酸カリウムとの混合物の物性値を用い、原料ガスと熱媒とは平流接触を想定した。
塩化水素の酸化は、塩化水素と酸素(原料)、塩素と水(生成物)の平衡反応である。実施例1、2のように小スケールの反応器を用いて類似な条件下、反応速度用データの採取を行うことで塩化水素の消失・生成反応速度定数を決定し、反応速度式(下記数式(1)〜4)を構築し、それらを反応解析において使用した。
−dC1/dt = 2*k1f*C1^2*C2^0.5 − 2*k1r*C3*C4
・・・(1)
−dC2/dt = − dC1/dt/4 ・・・(2)
dC3/dt = − dC1/dt/2 ・・・(3)
dC4/dt = − dC1/dt/2 ・・・(4)
上記の数式において、−dC1/dtは塩化水素の消失速度(kmol/m3/s)、
−dC2/dtは酸素の消失速度(kmol/m3/s)、dC3/dtは塩素の生成速
度(kmol/m3/s)、dC4/dtは水の生成速度(kmol/m3/s)、k1fは塩素生成速度の速度定数(s-1)、k1rは塩素消費速度の速度定数(s-1)、C1は塩化水素濃度(kmol/m3)、C2は酸素濃度(kmol/m3)、C3は塩素濃度(kmol/m3)、C4は水濃度(kmol/m3)である。
2次元固定床反応モデルを用いて、上記の数式、物質収支、および全体の熱収支を解くことで、管軸方向、半径方向の濃度分布、温度分布を解いた。
解析の結果、触媒充填層のホットスポットは371℃、反応器出口温度は342℃、出口圧力は0.44MPa−G、反応率はHCL転化率基準で84.7%であった。工業的スケールにおいて、低空塔速度条件下、高収率で塩素を得られるとの推算結果を得た。
〔実施例4〕
実施例3において原料ガスに不純物として一酸化炭素が含まれる場合の実施例を説明する。
反応器には、内径0.020mおよび長さ5.9mのNi製反応管を約2.1万本有す
る多管式固定床反応器を想定し、前述の触媒1を19.1t充填し、反応管一本あたりの原料ガスフィード流量として塩化水素 408L/hr(標準状態)、酸素 243L/hr(標準状態)、窒素 118L/hr(標準状態)および一酸化炭素 16L/hr
(標準状態)、原料ガスの組成 塩化水素52/酸素31/窒素15/一酸化炭素2、
原料ガスフィード温度 200℃、熱媒温度 330℃、入口圧力 0.5MPa−G、
GHSV 220h-1、反応域入口における空塔速度 0.69m/sの条件で反応解析を行った。
熱媒には亜硝酸ナトリウムと硝酸カリウムの混合物を用い、原料ガスと熱媒は平流接触を想定した。
一酸化炭素は酸化されて二酸化炭素を生じる。
この酸化消費速度式として下記数式(5)を使用し、酸素消費速度式は、一酸化炭素の酸化に使用される酸素消費分を含む下記数式(6)を使用し、数式(1)、(3)〜(6)を用いて反応解析を実施した。
−dC5/dt = k2*C5・・・(5)
−dC2/dt = − dC1/dt/4 − dC5/dt/2・・・(6)
上記の数式において、−dC5/dtは一酸化炭素の消失速度(kmol/m3/s)
、k2は一酸化炭素の消費速度定数(s-1)、C5は一酸化炭素濃度(kmol/m3
である。
解析の結果、触媒充填層のホットスポットは387℃、反応器出口温度は330℃、出口圧力は0.44MPa−G、反応率はHCL転化率基準で80.6%であった。工業的スケールにおいて、一酸化炭素を含む低空塔速度条件下、反応域におけるホットスポットが390℃近くにおいても高収率で塩素を得られるとの推算結果を得た。

Claims (4)

  1. 塩化水素を含むガス中の塩化水素を、酸素を含むガスを用いて、触媒充填層からなる反応域を有する固定床反応方式で酸化する方法であって、
    前記反応域における空塔速度が0.70m/s未満であり、
    前記触媒充填層に充填される触媒の嵩密度が700kg/m3未満であることを特徴と
    する塩素の製造方法。
  2. 前記触媒が、銅元素を含有する触媒であって、
    前記触媒の細孔直径が5〜15nmの範囲において、0.4〜2.0ml/gの細孔容積を有することを特徴とする請求項1に記載の塩素の製造方法。
  3. 前記触媒が、銅元素、アルカリ金属元素、および希土類元素を含有する触媒であって、
    前記触媒の細孔直径が5〜15nmの範囲において、0.4〜2.0ml/gの細孔容積を有することを特徴とする請求項1または2に記載の塩素の製造方法。
  4. 前記反応域における最高温度が、380〜420℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の塩素の製造方法。
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