JP5414153B2 - 不飽和ポリエステル樹脂およびモールド成形体 - Google Patents

不飽和ポリエステル樹脂およびモールド成形体 Download PDF

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Description

本発明は不飽和ポリエステル樹脂及びその不飽和ポリエステル樹脂を用いたモールド成形体に関するもので、さらに詳しくは、硬化前の樹脂が少なくとも不飽和ポリエステルと架橋性モノマーを含み、前記不飽和ポリエステルの少なくとも一部を、木質系材料を基に作成される材料を用いることを特徴とする不飽和ポリエステル樹脂およびモールド成形体に関するものである。
不飽和ポリエステル樹脂の主鎖は主要原料として化学合成された不飽和多塩基酸と飽和多塩基酸、グリコール類から構成されている。
この不飽和ポリエステル主鎖と架橋性モノマーを反応させ3次元化した不飽和ポリエステル樹脂は不溶不融の固体となるため、この樹脂硬化物の分解処理は困難であった。このような熱硬化性樹脂成形体の処理方法としては焼却処理或いは土中への埋立処理が一般的であり、一部、熱回収等のリサイクルが行われている。
また、繊維強化プラスチック(FRP)やバルクモールディングコンパウンド(BMC)、シートモールドコンパウンド(SMC)など無機物が添加されている熱硬化性樹脂成形体のリサイクル方法としては、粉砕してフィラーとして20%程度までバージン材料に添加する方法や、熱分解や加水分解などで化学原料に戻して原料として再利用するケミカルリサイクル、マイクロ波による分解処理等が主に検討されている。
例えば、特許文献1では廃プラスチックを破砕、溶融、熱分解させて、分解油を得る装置、特許文献2ではプラスチック廃棄物の油化装置、特許文献3ではガラス繊維強化熱硬化性樹脂の廃棄物を熱分解する方法等が提案されている。そのため、処理装置としてはハンマーミル等の粉砕機や加熱器等が用いられている。
また、エステル結合やアミド結合等を有する樹脂の処理方法として、特許文献4では水分の存在下で100℃以上、1気圧以上の加温加圧の状態で加水分解させる方法、特許文献5ではアルカリ性溶液で分解する方法等が提案されている。
さらに、最近では超臨界または亜臨界流体を用いて分解処理する方法が多く提案されており、特許文献6では超臨界水や亜臨界水に酸素、空気、過酸化水素を加えて酸化分解する方法が、特許文献7では電子部品用樹脂封止やプリント基板などの樹脂成形体からの有価物回収に超臨界水酸化分解を利用する方法、特許文献8ではフェノール樹脂およびエポキシ樹脂を超臨界状態あるいは亜臨界状態の低級アルコールで分解する方法などが提案されている。
上述した処理方法は、いずれも従来の熱硬化性樹脂を対象として分解処理する方法であるが、熱硬化性樹脂自体を分解処理しやすい構造にする方法もある。
特許文献9では、バクテリア,カビなどの自然的に発生される微生物の作用によって分解されるプラスチックである生分解性樹脂を添加したモールド材を活性汚泥などに埋設して処理する方法、特許文献10では、不可重合性モノマーにアクリル酸ヒドロキシエチルなどを含む不飽和ポリエステル樹脂を塩基性水溶液で分解処理する方法、特許文献11ではコイルケースを生分解性樹脂で被覆する方法などが提案されている。
特開昭62ー32131公報 特開昭62−184034公報 特開平4−100834公報 特開平5−178976公報 特開平6−49266公報 特開平10−287766公報 特開2001−79511公報 特開2001−55468公報 特開平7−75280公報 特開平9−151222公報 特開2000−195740公報
樹脂成形体は、通常大きな占有容積を占め、使用後の保管や輸送の効率が悪く、これを解決するために機械的な破砕が行われているが、破砕エネルギーが大きく、騒音なども発生するのが現状である。そのため、容易に樹脂成形体を減容化する技術が求められている。
樹脂成形体のリサイクル処理では、特に不飽和ポリエステル樹脂のような熱硬化性樹脂の場合は、一般的には不溶不融であり、破砕処理されるため、上述したような大きな破砕エネルギーと騒音の発生がある。
また、熱硬化性樹脂は構造材として使用されることが多く、例えばモールドモータやモールドトランスのモールド材や半導体封止材としての利用など、その内部に金属等を包含している場合が多い。そのため、内部の有用な部品、材料を再生・再利用することも困難となっている。
さらに、FRPやSMC、BMC等のリサイクル方法である粉砕法や熱分解法、マイクロ波による分解法等についても上記と同様に専用の大がかりな装置が必要な上、多量のエネルギーを消費する。特に、熱分解方法については様々な提案がなされているが、どの場合も300℃以上の高温を必要としている。
また、モールド成形体は、そのまま埋め立て処理されることが多く、部品内部にある金属類などの有価物の回収は殆ど行われていない。
さらに、最近提案され始めた超臨界あるいは亜臨界流体を用いた分解方法では、主に水やアルコールが使用されているが、その方法では分解処理後の生成物の分離や廃液処理などに多くの工程を必要とするため、装置が大きく複雑になり、処理エネルギーやコストも大きくなる。
また、生分解性樹脂を添加して処理する場合、生分解性を有する部分は分解されるが、他の分解されない部分が残ったり、分解に長時間を要するなどの課題があった。
一方、地球環境保護の観点からは廃棄物においても、廃棄物処理場の不足や廃棄物の再利用・リサイクルなど多くの課題があり、その対策技術が多く検討されている。
このような状況の中で、樹皮や間伐材、剪定枝、建築廃材などから発生する木質系廃材の再利用技術の開発も強く求められている。また、木質系廃材は、上記建築廃材などだけでなく、東南アジアなどで多く栽培されているパーム椰子の椰子殻廃材や廃葉・廃幹なども大量に発生するため、その利用方法の開発が望まれている。
本発明は、硬化前の樹脂が少なくとも不飽和ポリエステルと架橋性モノマーを含む不飽和ポリエステル樹脂であって、該不飽和ポリエステル樹脂を構成する前記不飽和ポリエステルの主鎖の少なくとも一部が、木質系材料にフェノール系溶剤と酸を用いることで得られた、リグノフェノールを基に作成されることを特徴とする。
なお、木質系材料が、樹皮や間伐材、剪定枝、建築廃材などから発生する木質系廃材、あるいはパーム椰子の椰子殻廃材や廃葉・廃幹から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする不飽和ポリエステル樹脂が好ましい。
さらに、上記の不飽和ポリエステル樹脂を用いて作成したモールド成形体で、かかる従来の課題を解決したものである。
なお、そのモールド成形体がモールドモータあるいはモールドトランスであることが内部に有価物を多く含んでいるため好ましい。
以上のように本発明では、木質系廃材などを基に作成した材料を原料にして不飽和ポリエステル主鎖を作成し、その樹脂をモールド材に使用することで、分解性を向上させた不飽和ポリエステル樹脂およびそれを用いたモールド成形体を提供することである。これにより、廃材なども有効利用できるため、環境問題にも貢献できる。
本発明のモールド成形体は、もちろん不飽和ポリエステル主鎖の一部が生分解性を有するため、土壌中などで分解されるが、その分解処理には長時間を要する。そのため、例えばアルカリ性水溶液に浸漬することによって、不飽和ポリエステル主鎖部分を分解して、短時間で分解することも可能である。使用後廃棄物となった樹脂成形体をアルカリ性水溶液で処理することで、減容化などの廃棄処理を容易にすることができる。
また、木質系材料由来の材料含有量を変更することによって、アルカリ性水溶液の浸透性を調節できるため、樹脂成形体の特性と分解性の調節も可能になる。
また、上記不飽和ポリエステル樹脂を用いたモールド成形体において、その内部に有価物、例えば鉄芯や巻線などを有しているモールドモータやモールドトランスなどは、廃棄時に、アルカリ性水溶液などに浸漬して液を浸透させ、モールド部分を容易に崩壊・剥離させて、内部の有価物を取り出すことができ、再利用の容易なモールド成形体を提供できる。
木質系材料は、主にセルロース、ヘミセルロース、リグニンから構成されていて、セルロースおよびヘミセルロースはグルコース分子を構成単位とする多糖類であり、リグニンは以下の式で表される構造を基本とする高分子である。
Figure 0005414153
そのため、これらの分解生成物は多くの水酸基を有している。この水酸基を反応基として、多塩基酸と反応させることで、不飽和ポリエステルの主鎖とすることができる。
ただし、セルロース、ヘミセルロースとリグニンは全く異なる構造の分子であるため、木質系材料の分解・利用のためには、それらの分離・分解が必要となる。
その方法としては、一般にパルプ工業で用いられているアルカリによる蒸解処理や、蒸煮・爆砕処理、酸処理による分解、酵素や菌類などを利用する生物分解法、超臨界水やアルコールによる処理など、さまざまな分離・分解方法が適用可能である。その中でも特開2001−261839に示されているフェノールやクレゾールで処理した後に酸で処理する相分離系変換システムを用いたリグニンの分離が好ましい。この方法は、分離効率が高く、他の方法に比べてリグニンが有効に利用できると考えられる。
不飽和ポリエステルは基本原料としてグリコール類と不飽和多塩基酸、飽和多塩基酸から構成される。本発明では、このグリコール類の少なくとも一部に上述した木質系材料分解物から得られた材料を置換する。そのため、もちろん従来の不飽和ポリエステルに使用されている石油由来のグリコール類、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジブロムネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、水素化ビスフェノールA等を、その一部に使用してもかまわない。なお、置換の割合は、木質系材料分解物から得られた材料の分子量や構造により、適宜変化させて、不飽和ポリエステル樹脂の機械的物性や電気的物性などの特性と分解性のバランスを図る。
不飽和多塩基酸としては、例えば、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が用いられる。また、木質系材料分解物から得られた材料には不飽和基を有するものもあるため、その場合は不飽和多塩基酸の添加量を減少させることも可能である。
飽和多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。木質系材料分解物から得られた材料は、芳香族や環状をしているものが多く、構造的に硬くて脆くなる傾向があるため、飽和多塩基酸としては、直鎖状の分子であるマロン酸やコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸などが好ましい場合が多い。
架橋剤となる付加重合性モノマーとしては、スチレン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。なお、これらのモノマーのうち、安価で架橋性も良好なスチレンが好ましいが、不飽和ポリエステル樹脂の分解性をより向上させるためにはアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等が親水性のためより好ましい。
架橋性モノマーの総量は、不飽和多塩基酸に対してモル比で1.3〜5倍添加することが好ましい。モル比1.3以下では未反応の不飽和多塩基酸が多くなり、成形体の強度等が低下し、モル比5以上では未反応のモノマーが多く残存する場合がある。
不飽和ポリエステル樹脂には無機充填材を添加しても、勿論かまわない。
無機充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラス球等が挙げられる。
補強材としては、ガラス繊維や、ポリアクリロニトリル系あるいはレーヨン系もしくはピッチ系の炭素繊維、ビニロン、ポリプロピレン、ポリエステル、アラミド繊維等の有機繊維も添加してもかまわない。なお、この繊維状補強材に木質系材料から得られる繊維を利用しても勿論かまわない。
また、低収縮剤として、例えば、ポリスチレン、ポリカプロラクトン、ポリジプロピレンアジペート、ポリジプロピレンイソフタレート等を添加してもかまわない。この中でポリカプロラクトンは生分解性を有しているため、不飽和ポリエステル樹脂の分解性を向上させるためには好ましい。
また、重合開始剤として、例えば、t−ブチルパーオクエート、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエート、2,2,ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、3,3,5,トリメチル(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等を添加してもかまわない。
また、着色剤として、一般的な染料や顔料を用いることができ、例えば、酸化鉄、酸化チタン、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、クロムバーミリオン、群青等の無機顔料やアゾ化合物、シアニンブルー、塩素化シアニンブルー、シアニングリーン等の有機顔料、インジゴレッド、オイルレッド等の染料やカーボンブラック等を添加してもかまわない。
また、増粘剤として、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、多価イソシアナート化合物等を添加してもかまわない。
また、離型剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
本発明の不飽和ポリエステル樹脂やモールド成形体を分解する方法として、活性汚泥などで生物的分解を行う方法もあるが、長時間を要するため、例えば、2〜7規定の濃度のアルカリ性アルカリ金属化合物またはアルカリ性アルカリ土類金属化合物を含む水溶液に浸漬することで、不飽和ポリエステル主鎖の加水分解が促進されるため、容易に分解処理が行える。特に、上記濃度の溶液では、加水分解に十分な水酸イオンを与えるとともに、アルカリ性アルカリ金属化合物またはアルカリ性アルカリ土類金属化合物の添加による溶液の粘度上昇もそれほど大きくならないため、溶液の不飽和ポリエステル樹脂への浸透性を低下させない。このことにより、短時間でモールド成形体などを分解処理することができる。
アルカリ性アルカリ金属化合物あるいはアルカリ性アルカリ土類金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、ナトリウムエトキシド、カリウムブトキシド等が挙げられる。これらのアルカリ性アルカリ金属化合物あるいはアルカリ性アルカリ土類金属化合物の溶液の濃度は、大きいほど水酸イオンが増えて不飽和ポリエステル樹脂のエステル結合を攻撃して加水分解を促進するが、ナトリウムイオンやカリウムイオン等も多くなるため溶液の粘度も高くなり、樹脂中への液の浸透性は低下する。そのため、十分な加水分解反応が起き、かつ液の浸透性も低下させないような濃度が好ましい。そこで、アルカリ性アルカリ金属化合物あるいはアルカリ性アルカリ土類金属化合物の溶液濃度は10規定以下が好ましく、特に2〜7規定がより好ましい。なお、これらのアルカリ性アルカリ金属化合物あるいはアルカリ性アルカリ土類金属化合物は、単成分のみならず、複数含まれていてもよい。
また、溶液の樹脂に対する浸透性を改善するために、親水性溶媒として例えば、メチルアルコールやエチルアルコールなどのアルコール類、アセトン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアミン等を添加してもよい。また、水を電気分解する装置により生成したアルカリ性水溶液を分解処理に使用してもよい。その場合は、pH11以上の水溶液を用いるのが好ましい。pH11未満では、十分な加水分解反応が起きず処理時間が長くなる可能性がある。また、水を電気分解する際に塩化ナトリウムや塩化カリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化ナトリウム、塩酸等を少量電解質として添加してもよい。特に、塩化ナトリウムや塩化カリウムが取扱い上好ましい。
また、処理温度は、当然高温の方がより大きな分解速度が得られるため、水の沸点以下(常圧では100℃以下)の範囲内で加温してもよいが、アルコール類が含まれている場合はそれらの沸点以下が好ましい。
なお、分解方法は上記アルカリ性水溶液に浸漬するだけでなく、酸処理や溶剤処理などでもかまわない。このような液体が浸透して分解を引き起こす分解方法であることが、本発明の不飽和ポリエステル樹脂やモールド成形体の特徴が生かせるため好ましい。
本発明のモールド成形体としては、例えばモータやトランスなどが挙げられる。
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
(実施例1)
まず、木質系材料中のリグニンから作成した材料を用いた例を示す。
木質系材料としてパーム椰子の廃幹を用いた。200×300×50mmの板状に切り出した廃幹を、φ10mmのスクリーンを付けた槇野産業製カッターミルVM−22で数mm程度に粗粉砕した。次に、その粗粉砕品を槇野産業製微粉砕機DD−2−3.7により、さらに粉砕を行った。なお、スクリーンはΦ0.35mmを用いた。その結果、平均粒径約140μmの粉末が得られた。この粉末を106μmの篩目を有する篩で分級した。
106μmの篩目を通過した分級後の粉末をアセトンで脱脂した後、p−クレゾールを添加したアセトン溶液に入れ、室温で撹拌・混合した。その液を一晩静置した後、アセトンを揮散させ、そこに72%硫酸を添加して室温で10分間撹拌した。その反応混合物を遠心分離して沈殿物を回収して、蒸留水で洗浄し、乾燥した。この乾燥物をアセトンで抽出し、得られた抽出物を一旦乾燥させた後、アセトンに再溶解させジエチルエーテル中に滴下して生成した沈殿を遠心分離にて回収し、乾燥させてリグノフェノールを得た。
このリグノフェノールを0.5M水酸化ナトリウム水溶液で170℃で処理して、リグノフェノール誘導体を得た。この誘導体は以下の式で表される基本骨格を有していると考えられる。
Figure 0005414153
このリグノフェノール誘導体を不飽和ポリエステル主鎖の材料として使用した。
なお、不飽和多塩基酸には無水マレイン酸、飽和多塩基酸には無水フタル酸を用いた。
また、グリコール類の一部にはジエチレングリコールも使用した。なお、リグノフェノール誘導体とジエチレングリコールの混合比を変えて、数種類作成した。
ジエチレングリコールとリグノフェノール誘導体の水酸基のモル数と無水マレイン酸および無水フタル酸のカルボキシル基のモル数の比が1.1:1になるように配合を調整し、窒素ガス中で100℃程度に加熱しながら撹拌混合し、その後、徐々に温度を上げて最終190℃まで加温して酸価が20程度になるまでエステル化を行った。その後、温度を100℃に下げて重合禁止剤としてヒドロキノンを加えた後、室温近くまで冷却後、架橋製モノマーとしてスチレンとアクリル酸2−ヒドロキシエチルの1:1混合液を加えて、固形分約70%の不飽和ポリエステル樹脂液を作成した。
この不飽和ポリエステル樹脂液と、ポリスチレン系低収縮剤であるDIC製PB987とを7:3の割合で混合したものを100重量部とり、重合開始剤1.1ジブチルパーオキシ−3.3.5トリメチルシクロヘキサンを1重量部加えて攪拌混合して樹脂液組成物を得た。
次に、他の充填剤である炭酸カルシウム28重量部、水酸化アルミニウム43重量部、離型剤であるステアリン酸亜鉛1.4重量部、着色剤である炭素粉末0.3重量部をニーダに移し、乾式混合を行った。約5分後、均一に混ざったこの乾式混合物に、上記樹脂液組成物21.2重量部を徐々に加え、約10分混練した。
最後に、長さ3mmのガラス繊維を全体の8重量部になるよう添加してペースト状の不飽和ポリエステル樹脂を得た。
比較例として、リグノフェノール誘導体を全く用いずに、グリコール類としてジエチレングリコールのみを用いて、他は上記と同条件で比較用不飽和ポリエステル樹脂を作成した。
得られた不飽和ポリエステル樹脂の流動性を測定した。測定方法は、スパイラル形状の溝を掘った金型(金型温度145℃)をトランスファー成形機に取り付け、成形圧力5MPa、硬化時間120sec、不飽和ポリエステル樹脂投入量50gで成形を行い、中心部からのスパイラル長を読み取り、スパイラルフローとして流動性を評価した。
また、上記トランスファー成形機を用いて、長さ127mm、幅12.7mm、厚み3.2mmの曲げ強度測定用成形体を作成した。成形条件は、金型温度145℃、成形圧力5MPaである。
この成形体を島津製作所製オートグラフを用いて、テストスピード10mm/minで曲げ強度を測定した。
それらの結果をまとめて(表1)に示す。
Figure 0005414153
この結果、リグノフェノール誘導体の割合が高いほど強度は大きくなるが、ジエチレングリコールの2倍以上のモル比になると流動性が低下することがわかった。
ただし、流動性は硬化剤の種類を変更するなどして調整可能である。
次に、上記曲げ強度測定用成形体を5規定の水酸化ナトリウム水溶液に80℃で10時間浸漬した後、成形体を切断して液の浸透度を測定した。ここで、液の浸透度は、浸透した部分の色の変化から目視で評価した浸透度と、X線マイクロアナライザで測定したナトリウムの浸透度とが一致したため、目視評価で簡易的に行った。その結果を(表2)に示す。
Figure 0005414153
この結果より、リグノフェノール誘導体を添加するほど、アルカリ性水溶液の浸透度が大きくなることがわかる。また、液が浸透した部分は軟らかくなっていて、手で容易にぼろぼろに崩壊させることができた。
このような液の浸透による分解方法を用いることで、モールド成形体を容易に分解できるようになり、モールド内部に有価物がある場合は、その有価物を容易に取り出しリサイクルできる。
(実施例2)
本実施例でも、木質系材料中のリグニンから作成した材料を用いた例を示す。
本実施例では木質系材料として杉木材を用いて、実施例1と同様の粉砕機で数mm程度に粗粉砕した。この粉砕物をアセトンで脱脂して実施例1と同様の方法でリグノフェノール誘導体を作成した。このリグノフェノール誘導体とジエチレングリコールのモル比を1:1にして、他は実施例1と同条件で不飽和ポリエステル樹脂液を作成した。
また、杉木材粉砕物を苛性ソーダの蒸解液に浸漬して、加温加圧することで繊維を分離し、洗浄、乾燥した繊維状充填材を作成した。
実施例1のガラス繊維をこの繊維状充填材に変更して、杉木材から作成した上記不飽和ポリエステル樹脂液を用いて、他は実施例1と同条件で不飽和ポリエステル樹脂を作成した。
この不飽和ポリエステル樹脂の評価を実施例1と同様に行ったところ、スパイラルフローは168cmで、曲げ強度は53MPaであった。
また、実施例1と同条件で5規定の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬処理すると、液は成形体に全浸透しており、手で容易にぼろぼろに崩壊させることができた。
(実施例3)
本実施例では木質系材料中のリグニンとセルロースおよびヘミセルロースから作成した材料を用いた例を示す。
木質系材料として杉木材を用いて、実施例2と同様の方法でリグノフェノール誘導体を作成した。
また、その際に使用した72%硫酸にはセルロース、ヘミセルロース分解生成物が含まれているため、その液からさらに酵素糖化法によりグルコースへと分解し、発酵法によりエタノールを生成した。得られたエタノールを脱水してエチレンとし、このエチレンと水、塩素を用いて、エチレンクロロヒドリンを得た。これを水酸化ナトリウムにより脱塩酸を行い、エチレンオキシドとした後、水和によりジエチレングリコールを得た。
このようにして生成したリグノフェノール誘導体とジエチレングリコールを用いて、そのモル比を1:1にして、他は実施例1と同条件で不飽和ポリエステル樹脂液を作成した。
この不飽和ポリエステル樹脂液を用いて、他は実施例2と同条件で不飽和ポリエステル樹脂を作成した。
この不飽和ポリエステル樹脂の評価を実施例1と同様に行ったところ、スパイラルフローは172cmで、曲げ強度は57MPaであった。
また、実施例1と同条件で5規定の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬処理すると、液は成形体に全浸透しており、手で容易にぼろぼろに崩壊させることができた。
(実施例4)
本実施例では、実施例1のサンプルNo.4と同様の組成の不飽和ポリエステル樹脂をモールド材として、モールドモータを作成した。その概略縦断面図を図1に示す。ブラケット2に設けたベアリング10に、回転子3のシャフト9が回転自在に軸支されている。回転子3を間隔を隔てて囲むように配された固定子1があり、固定子鉄芯6の珪素鋼板にエナメル被覆銅線から成る固定子巻線7が巻かれている。この固定子鉄芯6、固定子巻線7及びブラケット2に接して上記モールド材8によりモールドした構成となっている。このモータはフランジ部4もモールド材で一体構成されている。なお、5は取付孔である。なお、モールドの厚みは薄い部分で約4mm、厚い部分で約10mm程度であった。
このモールドモータを100℃で48時間、5規定の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した。処理後のモールドモータのモールド材の硬度は21であった。
そのため、浸漬後のモールドモータを取り出し、素手でモールド材のみを綺麗に剥離することができ、内部の固定子鉄芯や固定子巻線をモールドする前の状態のまま回収することができた。
このように本発明の不飽和ポリエステル樹脂を用いたモールドモータ等のモールド成形体は、内部にある金属類を容易に回収することができる。
なお、以上の実施例では、不飽和ポリエステルの主鎖成分として、リグノフェノール誘導体とジエチレングリコール、無水マレイン酸、無水フタル酸を用いたが、勿論これらに限定されず、他のグリコール類や多塩基酸を用いてもかまわない。
また、分解方法として水酸化ナトリウム水溶液で処理する方法を用いたが、活性汚泥法による生物処理など、他の方法を用いてもかまわない。
以上の結果より、木質系廃材などを基に作成した材料を原料にして不飽和ポリエステル主鎖を作成し、その樹脂をモールド材に使用することで、分解性を向上させた不飽和ポリエステル樹脂およびそれを用いたモールド成形体を提供できた。
なお、分解はアルカリ性水溶液などに浸漬処理することで容易にでき、モールド内部の有価物のリサイクルも可能となる。
本発明の一実施例におけるモールドモータの概略縦断面図
符号の説明
1 固定子
2 ブラケット
3 回転子
4 フランジ部
5 取付孔
6 固定子鉄芯
7 固定子巻線
8 モールド材
9 シャフト
10 ベアリング

Claims (4)

  1. 硬化前の樹脂が少なくとも不飽和ポリエステルと架橋性モノマーを含む不飽和ポリエステル樹脂であって、該不飽和ポリエステル樹脂を構成する前記不飽和ポリエステルの主鎖の少なくとも一部が、木質系材料にフェノール系溶剤と酸を用いることで得られた、リグノフェノールを基に作成されることを特徴とする不飽和ポリエステル樹脂。
  2. 木質系材料が、樹皮や間伐材、剪定枝、建築廃材などから発生する木質系廃材、あるいはパーム椰子の椰子殻廃材や廃葉・廃幹から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする
    請求項1記載の不飽和ポリエステル樹脂。
  3. 請求項1又は2のいずれかに記載される不飽和ポリエステル樹脂を用いて作成した
    モールド成形体。
  4. 請求項3記載のモールド成形体がモールドモータあるいはモールドトランスであることを特徴とする
    モールド成形体。
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