JP5413830B2 - ポリ乳酸系熱収縮性積層フィルム、該熱収縮性積層フィルムを基材として用いた成形品および熱収縮性ラベル、ならびに、該成形品および熱収縮性ラベルを装着した容器 - Google Patents

ポリ乳酸系熱収縮性積層フィルム、該熱収縮性積層フィルムを基材として用いた成形品および熱収縮性ラベル、ならびに、該成形品および熱収縮性ラベルを装着した容器 Download PDF

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Description

この発明は、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性フィルム、この熱収縮性フィルムを用いた成形品および熱収縮性ラベル、並びに、この成形品およびこのラベルを装着した容器に関する。
現在、ジュース等の清涼飲料、ビール等のアルコール飲料等は、瓶またはペットボトルといった容器に充填された状態で販売されている。その際、他商品との差別化や商品の視認性向上のために、容器の外側に印刷が施された熱収縮性ラベルが装着されている。この熱収縮性ラベルの素材としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン、芳香族ポリエステル等が一般的に使用されている。また、枯渇性資源の節約の観点より、植物由来原料プラスチックで構成されたラベルも検討されている。
この植物由来原料プラスチックの中でも特に、ポリ乳酸系樹脂は澱粉の発酵により得られる乳酸を原料とし、化学工学的に量産可能であり、かつ、透明性・剛性が優れていることから、ポリスチレンや芳香族ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)の代替材料として、フィルム包装材や射出成形分野において注目されている。
しかしながら、ポリ乳酸系樹脂を用いた熱収縮性フィルムは、室温において剛性であり、低温収縮性を有し、かつ自然収縮性が良好であるものの、非常に脆い材料であり、更に、加熱収縮時に収縮斑やしわが発生しやすいという問題がある。また、ポリ乳酸系熱収縮フィルムは、加熱した際、結晶化が進行して、十分な熱収縮特性が得られないという問題もあった。
上記の問題を解決する手段として、ポリ乳酸系樹脂のL−乳酸とD−乳酸の共重合比を調整したフィルムが知られている(特許文献1参照)。しかしながら、このフィルムは加熱の際の結晶化は抑制できているものの、急激な収縮により斑、皺、アバタを生じるという問題は十分に解決できていない。
また、ポリ乳酸系樹脂の結晶化度を調整し、更に脂肪族ポリエステル系樹脂をブレンドすること等による収縮仕上がり性の改良が試みられている(特許文献2参照)。しかしながら、PVC系熱収縮性フィルムと比べると、未だ十分な収縮仕上がり性とは言い難い。
さらに、ポリ乳酸系樹脂は、素材自体がもつ脆性のため、単体にシート状やフィルム状等に成形した場合、十分な強度を得られず、実用に供しづらいという問題を抱えている。
上記の問題に対し、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル(特許文献3参照)、ポリカプロラクトン(特許文献4参照)、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの共重合ポリオレフィン(特許文献5参照)等を含有させる方法が知られている。これらはポリ乳酸系樹脂フィルムの透明性を維持したまま脆性を改良させる目的を主としており、収縮仕上がり性に対しては、まだ不十分な点が残っていた。
さらに、ポリ乳酸系樹脂の脆性を改良する手法として、ポリ乳酸とポリオレフィン化合物からなるフィルム(特許文献6参照)や、ポリ乳酸と変性オレフィン化合物からなる成形品(特許文献7参照)や組成物(特許文献8参照)、ポリ乳酸とシンジオタクチックポリプロピレンからなる成形物(特許文献9参照)、乳酸を主成分とする重合体、脂肪族カルボン酸、および鎖状分子ジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルの可塑剤からなる、可塑化されたポリ乳酸フィルム(特許文献10参照)、ポリ乳酸とエポキシ化ジエン系ブロック共重合体からなる生分解性樹脂組成物(特許文献11参照)、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル、およびポリカプロラクトンからなる乳酸系重合体組成物(特許文献12)、結晶性ポリ乳酸と、天然ゴムおよびポリイソプレンから選ばれた少なくとも1種のゴム成分とからなるポリ乳酸系樹脂組成物(特許文献13)等を用いる方法が開示されている。
しかしながら、上記のポリカプロラクトン、変性オレフィン化合物、エポキシ化ジエン系ブロック共重合体、天然ゴム、ポリイソプレン等を乳酸系樹脂に混合した場合、耐衝撃性の改良効果は見られるものの、その結果透明性を著しく損なうこととなり、例えば、包装材等の内容物を確認する必要がある用途に使用するには十分な技術とは言い難い。
また、ポリアセタール樹脂とジエンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、または(メタ)アクリル酸メチルをシェル層にスチレン単位およびブタジエン単位から選ばれた少なくとも1つをコア層に含む多層構造体等の耐衝撃改良剤を、ポリ乳酸系樹脂に配合することにより耐衝撃性を向上させる手法が知られている(特許文献14参照)が、熱収縮フィルムとしては十分なものではない。
さらに、ポリ乳酸系樹脂にゴム質重合体とビニル系単体とをグラフト重合して得られたグラフト共重合体を配合する手法(特許文献15参照)も提案されているが、熱収縮フィルムとしては十分なものではない。
また、脂肪族ポリエステルと多層構造重合体とを含有する樹脂組成物において、引張伸度や耐衝撃性を向上させた手法(特許文献16参照)も提案されているが、シュリンクフィルムへの用途展開を鑑みると、シュリンクフィルムでは、製膜後、印刷工程や製袋工程を経る。一般的な印刷手法であるグラビア印刷では、多くのロールを経由し印刷されることや、生産性向上を目的とし高速で印刷されるため、これらの2次加工工程を経由する際にシュリンクフィルムに求められる耐破断性としては不十分であることが実施検証にて明らかとなった。
特開2003−119367号公報 特開2001−11214号公報 特開平9−169896号公報 特開平8−300481号公報 特開平9−151310号公報 特開2005−68232号公報 特開平9−316310号公報 特開平5−179110号公報 特開平10−251498号公報 特開2000−191895号公報 特開2000−219803号公報 特開2001−31853号公報 特開2003−183488号公報 特開2003−286400号公報 特開2004−285258号公報 特開2003−286396号公報
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、ポリ乳酸系熱収縮フィルムの耐破断性を満足させ、かつ透明性や低温収縮特性を付与する収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性フィルムを得ることにある。
本発明のもう一つの課題は、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した該熱収縮性フィルムを用いた成形品および熱収縮性ラベル、ならびに該成形品または該熱収縮性ラベルを装着した容器を得ることにある。
本発明者は、ポリ乳酸系樹脂とコアシェル型ゴム、ポリオレフィン系樹脂、および相溶化剤の配合につき鋭意検討した結果、耐破断性、透明性、低温収縮性の諸特性を満足し得る熱収縮性積層フィルムの作製に成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の課題は、ポリ乳酸系樹脂を主成分とし、コアシェル型ゴムを含む樹脂組成物からなるA層と、ポリ乳酸系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、および相溶化剤からなる樹脂組成物を主成分としてなるB層が、A/B/Aの順に積層された3層から構成される積層フィルムであって、前記B層の樹脂組成物は、樹脂組成物全体を100質量%としたとき、ポリ乳酸系樹脂を60質量%以上89質量%以下、ポリオレフィン系樹脂を10質量%以上40質量%以下、相溶化剤を1質量%以上15質量%以下含有し、前記相溶化剤が、エチレン−αオレフィン共重合体ゴム、エチレン−αオレフィン−非共役ポリエン共重合体ゴム、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー、およびスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる熱可塑性樹脂セグメントを幹成分とし、少なくとも1種のビニル系単量体から形成されるビニル系重合体セグメントを枝成分とするグラフト共重合体であり、前記積層フィルムが少なくとも一方向に延伸され、かつ80℃温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が20%以上である熱収縮性積層フィルム(以下、第1の発明という。)によって達成される。
第1の発明において、コアシェル型ゴムは、シェルが(メタ)アクリル酸エステルであり、コアがシリコーンゴムまたはアクリル系ゴムであることが好ましい。
第1の発明において、コアシェル型ゴムの含有率は、A層を構成する樹脂組成物100質量%に対し、3質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
第2の発明は、第1の発明の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた成形品である。
第3の発明は、第1の発明の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた熱収縮性ラベルである。
第4の発明は、第2の発明の成形品または第3の発明の熱収縮性ラベルを装着した容器である。
第1の発明によれば、ポリ乳酸系樹脂と、コアシェル型ゴムとを所定の割合で含有する混合樹脂で形成されるA層を最外層として有し、ポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂と相溶化剤との混合樹脂からなるB層が、A/B/Aの順に積層された3層を有するため、耐破断性、および透明性や低温収縮特性に優れた熱収縮性フィルムとなる。
さらに第2ないし第4の発明によれば、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した前記熱収縮性フィルムを用いた成形品および熱収縮性ラベル、ならびに該成形品または該熱収縮性ラベルを装着した容器を提供することができる。
以下、本願の第1ないし第4の発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において、「主成分とする」とは、各層を構成する樹脂の作用・効果を妨げない範囲で、他の成分を含むことを許容する趣旨である。さらに、この用語は、具体的な含有率を制限するものではないが、各層の構成成分全体の70質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であって、100質量%以下の範囲を占める成分である。
第1の発明は、ポリ乳酸系樹脂を主成分とし、コアシェル型ゴムを含む樹脂組成物からなるA層と、ポリ乳酸系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、および相溶化剤からなる樹脂組成物を主成分としてなるB層が、A/B/Aの順に積層された3層で構成される熱収縮性積層フィルムである
<A層>
第1の発明は、ポリ乳酸系樹脂を主成分とし、コアシェル型ゴムを含む樹脂組成物からなるA層を最外層として有する。
(ポリ乳酸系樹脂)
第1の発明のA層で使用されるポリ乳酸系樹脂は、D−乳酸もしくはL−乳酸の単独重合体、またはこれらの共重合体であり、具体的には構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、さらにはL−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリ(DL−乳酸)があり、また、D−乳酸とL−乳酸との共重合比の異なる複数の上記共重合体の混合樹脂も含まれる。
上記L−乳酸とD−乳酸との共重合体は、D−乳酸とL−乳酸との共重合比(以下「D/L比」と略する。)は、好ましくは「3/97」〜「15/85」または「85/15」〜「97/3」であり、より好ましくは「5/95」〜「15/85」または「85/15」〜「95/5」であり、さらに好ましくは「8/92」〜「15/85」または「85/15」〜「92/8」であり、特に好ましくは「10/90」〜「15/85」または「85/15」〜「90/10」である。
D−乳酸の共重合比が97より高く、または3未満の場合には、高い結晶性を示し、融点も高く、耐熱性および機械的物性に優れる傾向がある。しかしながら、熱収縮性フィルムとして使用する場合は、通常、印刷および溶剤を用いた製袋工程が伴うため、印刷適性および溶剤シール性を向上させるために構成材料自体の結晶性を適度に下げることが必要となる。また、結晶性が過度に高い場合、延伸時に配向結晶化が進行し、加熱時のフィルム収縮特性が低下する傾向がある。さらに、延伸条件を調整することによって結晶化を抑えたフィルムとしても、熱収縮時に加熱により結晶化が収縮より先に進行してしまいその結果、収縮ムラや収縮不足を生じてしまう傾向がある。
一方、D−乳酸の共重合比が85未満、または15より高い場合は、結晶性がほぼ完全になくなってしまうため、その結果加熱収縮後にラベル同士がぶつかった場合に熱にて融着してしまうなどのトラブルが発生しやすくなる。そこで、上記の範囲にポリ乳酸樹脂のD−乳酸とL−乳酸との構成比を調整することにより、先記のような問題を生じない収縮特性の優れた熱収縮フィルムを得ることが可能となる。
第1の発明では、D/L比が異なるポリ乳酸系樹脂をブレンドすることも可能であり、かつ、ブレンドした方がポリ乳酸系樹脂のD/L比をより容易に調整できるので、より好ましい。この場合には、複数の乳酸系重合体のD/L比を、平均した値が上記範囲内に入るようにすればよい。使用用途に合わせて、D/L比の異なるポリ乳酸系樹脂を2種以上ブレンドし、結晶性を調整することにより、耐熱性と熱収縮特性のバランスをとることができる。
また、上記ポリ乳酸系樹脂は、上記PLA系樹脂の本質的な性質を損なわない範囲内であれば、少量の共重合成分として、乳酸以外のα−ヒドロキシカルボン酸、テレフタル酸等の非脂肪族ジカルボン酸、コハク酸等の脂肪族ジカルボン酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の非脂肪族ジオール、エチレングリコール等の脂肪族ジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。また、分子量増大を目的として、少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を使用することもできる。
乳酸以外のα−ヒドロキシカルボン酸単位としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
また、前記ジオール単位としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール,1,4−シクロへキサンジメタノール等が挙げられる。また、前記ジカルボン酸単位としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸等が挙げられる。
乳酸と、乳酸以外のα−ヒドロキシカルボン酸等との共重合体における共重合比は特に限定されないが、乳酸の占める割合が高いほど、石油資源の消費が少ないため好ましく、また後述するビカット軟化点の範囲を超えない程度の割合で共重合すると好ましい。具体的には乳酸と、乳酸以外のα−ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、または脂肪族ジカルボン酸との共重合体の共重合比は乳酸/乳酸以外のα−ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、または脂肪族ジカルボン酸=「95/5」〜「10/90」、好ましくは「90/10」〜「20/80」、さらに好ましくは「80/20」〜「30/70」である。共重合比が上記範囲内であれば、剛性、透明性、耐衝撃性などの物性バランスの良好なフィルムを得ることができる。また、これらの共重合体の構造としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が挙げられ、いずれの構造でもよい。但し、フィルムの耐衝撃性および透明性の観点から、ブロック共重合体またはグラフト共重合体が好ましい。
上記ポリ乳酸系樹脂の重量(質量)平均分子量は、20,000以上、好ましくは40,000以上、さらに好ましくは60,000以上であり、上限が400,000以下、好ましくは350,000以下、さらに好ましくは300,000以下である。重量(質量)平均分子量が20,000以上であれば、適度な樹脂凝集力が得られ、フィルムの強伸度が不足したり、脆化したりすることを抑えることができる。一方、重量(質量)平均分子量が400,000以下であれば、溶融粘度を下げることができ、製造、生産性向上の観点からは好ましい。
上記ポリ乳酸系樹脂の重合法としては、縮合重合法、開環重合法など、公知の方法を採用することも可能である。例えば縮合重合法であれば、D−乳酸、L−乳酸、または、これらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。また、開環重合法では、乳酸の環状2量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤などを用いながら、所定の触媒の存在下で開環重合することにより任意の組成を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。上記ラクチドには、L−乳酸の二量体であるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより、任意の組成、結晶性を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。
第1の発明に好ましく使用されるポリ乳酸系樹脂の代表的なものとしては、Nature Works LLC社製の「Nature Works」等が商業的に入手されるものとして挙げられる。また、PLA系樹脂とジオールとジカルボン酸とのランダム共重合体の具体例としては、例えば「GS−Pla」(三菱化学社製)が挙げられ、またブロック共重合体の具体例としては、例えば「プラメート」(DIC社製)が挙げられる。
<コアシェル型ゴム>
第1の発明のA層で使用されるコアシェル型ゴムは、コア層とコア層を覆う1層以上のシェル層から構成される重合体である。本発明のフィルムのA層で使用されるシェルの層数は特に限定されるものではなく、2層以上であっても構わない。
上記コアシェル型ゴムのコア層としては、耐破断性向上のため、ゴム弾性を有するものが好ましく、例えば、アクリル系、シリコーン系、スチレン系、ニトリル系、共役ジエン系、ウレタン系、オレフィン系重合体などが挙げられる。中でも、シュリンクフィルムの要求特性の一つである透明性の観点から、コア層としては、シリコーンゴム、アクリル系ゴムが好ましい。その具体例としては、コア層がジメチルシロキサンやフェニルメチルシロキサン等のシロキサン化合物、アクリル酸エチルやアクリル酸ブチル、2エチルヘキシルアクリレート等のアクリル化合物を重合させてから成るゴム成分、またはこれらの成分の共重合成分等も好ましい。
上記コアシェル型ゴムの最外層を形成するシェル層としては、シェルが不飽和カルボン酸エステル系単位、グリシジル基含有ビニル系単位、脂肪族ビニル系単位、芳香族ビニル系単位、シアン化ビニル系単位、マレイミド系単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位、またはその他のビニル系単位等を含有する重合体が挙げられる。中でも、ポリ乳酸系樹脂との相溶性の観点より(メタ)アクリル酸エステル系単位を含有する重合体が好ましい。
上記コアシェル型ゴムの製造方法としては、特に限定されるものでなく、公知の重合方法、例えば、モノマーと多官能ビニルモノマーを特定比率で含む混合物を懸濁重合、乳化重合等で得られる。
上記コアシェル型ゴムの含有率は、A層を構成する樹脂組成物全体の質量を基準(100質量%)として、3質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上であり、30質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
上記コアシェル型ゴムの含有率が3質量%以上であれば、A層の耐破断性を向上し、積層構造を有する本発明のフィルムにおいても、A層の耐破断性の向上により積層フィルム全体への破断の伝播を抑制することができ、シュリンクフィルムとしての要求品質に十分な引張破断伸度を得ることができる。また、コアシェル型ゴムの添加量が30質量%以下であれば、A層と後述するB層との層間における剥離が生じることがないため、印刷工程、製袋工程でのハンドリングが良好となる。
上記コアシェル型ゴムの円相当径は、特に限定されるものではないが、0.01μm以上、好ましくは0.02μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上であり、100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。コアシェル型ゴムの円相当径0.01μm以上であれば、耐破断性効果を発現するのに十分であるため好ましく、また円相当径が100μm以下であれば、最表層を形成するA層に添加した場合においても、表面荒れ等による外部ヘイズの増加が少なく、本発明のフィルムに印刷を施し、意匠性を高める場合においても、インキ抜けなどが生じにくく、印刷図柄の外観を損ねるなどの欠点もなく好ましい。
上記コアシェル型ゴムのコアとシェルの質量比は、特に限定されるものではないが、多層構造重合体全体に対して、コア層が20質量部以上、好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上であり、95質量部以下、好ましくは90重量部以下、さらに好ましくは85質量以下である。コア層が20重量部以上であればA層に添加した場合の耐破断性効果を保持できるため好ましい。
上記コアシェル型ゴムの市販品としては、例えば、「メタブレン」(三菱レイヨン社製)、「カネエース」(鐘淵化学工業社製)、「パラロイド」(呉羽化学工業社製)、「アクリロイド」(ロームアンドハース社製)、「スタフィロイド」(武田薬品工業社製)、または「パラペットSA」(クラレ社製)などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
<B層>
第1の発明のB層は、ポリ乳酸系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、および相溶化剤からなる樹脂組成物を主成分とする。また、後に説明するとおりB層は内層である。
(ポリ乳酸系樹脂)
B層において用いるポリ乳酸系樹脂は、上記したA層におけるものと同様のものを使用することができる。
(ポリオレフィン系樹脂)
第1の発明において使用されるポリオレフィン系樹脂は、振動周波数10Hz、歪み0.1%の条件で測定したときの20℃の貯蔵弾性率(E’)が100MPa以下、好ましくは80MPa以下、さらに好ましくは50MPa以下である。また貯蔵弾性率(E’)の下限値はフィルム全体の腰(常温での剛性)を考慮し、0.1MPa以上、好ましくは1.0MP以上、さらに好ましくは3.0MPa以上である。第1の発明の20℃の貯蔵弾性率(E’)が上記範囲に有するポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィンの結晶化度が低く、密度が小さくなるため、ポリオレフィン系樹脂の平均屈折率も低くなり、混合するポリ乳酸系樹脂との平均屈折率を近づけることができる。そのため、第1の発明の内部ヘイズを低減することが達成できるため、耐破断性の改良と透明性の維持において、非常に有用である。また貯蔵弾性率(E’)が100MPa以下であれば、耐破断性の改良効果が低下することもなく、大幅な外観不良の発生を抑えることができる。一方、第1の発明の貯蔵弾性率(E’)が0.1MPa以上であれば、フィルム全体の腰が大幅に低下することを抑えることができる。
さらに、上記ポリオレフィン系樹脂は、振動周波数10Hzで測定したときの70℃の貯蔵弾性率(E’)が50MPa以下、好ましくは30MPa以下、より好ましくは20MPa以下、さらに好ましくは10MPa以下である。一方、貯蔵弾性率(E’)の下限値は、0.1MPa以上、好ましくは0.5MPa以上、さらに好ましくは1.0MPa以上である。第1の発明をペットボトルの収縮ラベル用途等に使用する場合、ペットボトル等の被覆対象物へのラベル装着工程として、熱収縮加工工程を要する。また、内容物の劣化、破裂等を防止するため、熱収縮加工は60〜100℃にて行われる。そのため、第1の発明で使用されるポリオレフィン系樹脂の70℃の貯蔵弾性率(E’)が50MPa以下であれば、熱収縮加工温度領域において、フィルムに十分な熱収縮率を発現させることができる。また70℃の貯蔵弾性率(E’)が0.1MPa以上であれば、熱収縮加工工程において、十分なフィルムの強度を維持することができるため、フィルムの破袋やよれ等が生じず被覆対象物への均一な装着を可能にしやすい。
なお、ポリオレフィン系樹脂の貯蔵弾性率(E’)は、20℃および70℃の温度下で、振動周波数10Hz、歪み0.1%、昇温速度2℃/分、チャック間2.5cmの条件の下、−150℃から200℃の範囲で動的粘弾性を測定することにより算出することができる。
第1の発明において、上記貯蔵弾性率(E’)の大きさは、後述するエチレンと炭素数3以上20以下のα−オレフィンとの共重合体の含有量を増減することにより調整することができる。例えば、上記貯蔵弾性率(E’)を上げたい場合には、エチレンと炭素数3以上20以下のα−オレフィンとの共重合体の含有量を減らす、あるいはα−オレフィンとの共重合体におけるα−オレフィンの共重合比率を減らし、反対に貯蔵弾性率(E’)を下げたい場合には、エチレンと炭素数3以上20以下のα−オレフィンとの共重合体の含有量を増やし、あるいはα−オレフィンとの共重合体におけるα−オレフィンの共重合比率を増やすことによって調整可能である。
第1の発明において、使用されるポリオレフィン系樹脂は振動周波数10Hz、歪み0.1%の条件下で測定したときの20℃の貯蔵弾性率(E’)が前記載の範囲を満たしていれば、特に限定されないが、70℃の貯蔵弾性率(E’)を所定の範囲に調整する観点、並びに、熱収縮特性、機械的物性および成形性の観点から、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはこれらの混合物を用いることが好ましい。
以下に、第1の発明で用いられる好ましいポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂を例示する。
第1の発明で用いられるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体などのエチレン系共重合体が挙げられる。中でも、熱収縮率と成形性との観点から、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはこれらの混合物を用いることが好ましい。ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂は、重合方法や共重合成分などにより多様な種類が存在するため、その範囲に特に限定されるものではない。好ましい種類を以下に示す。
第1の発明で用いられるポリエチレン系樹脂としては、密度が0.92g/cm以上0.94g/cm以下の中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、密度が0.92g/cm未満の低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、および直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)が挙げられる。この中でも延伸性、フィルムの耐衝撃性、透明性等の観点からは、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)が特に好適に用いられる。
上記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)としては、エチレンと炭素数3以上20以下、好ましくは炭素数4以上12以下のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等が例示される。この中でも1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好適に用いられる。また、共重合するα−オレフィンは1種のみを単独で、または2種以上を組み合わせて用いても構わない。
第1の発明において、上記ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン成分を含み、その含有率が70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上がより好ましい。70質量%以上であればフィルム全体の腰を維持することができる。
特に、第1の発明において、上記ポリエチレン系樹脂の密度は0.910g/cm以下であることが好ましく、0.905g/cm以下がより好ましく、0.900g/cm以下がさらに好ましい。また、下限は特に限定されないが0.800g/cm以上が好ましく、0.850g/cm以上がより好ましく、0.880g/cm以上がさらに好ましい。密度が0.910g/cm以下であれば、ポリ乳酸との親和性も向上し、さらに延伸性が維持され実用温度域(70℃以上90℃以下程度)の熱収縮率を充分得ることができる点で好ましく、一方、密度が0.800g/cm以上であればフィルム全体の腰(常温での剛性)や耐熱性を著しく低下させないため、実用上好ましい。
上記ポリエチレン系樹脂は、メルトフローレート(MFR:JIS K7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が0.1g/10分以上10g/10分以下のものが好適に用いられる。MFRが0.1g/10分以上であれば、押出加工性を良好に維持でき、一方、MFRが10g/10分以下であれば積層フィルムの厚み斑や力学強度の低下を起こしにくく、好ましい。
次に、第1の発明で用いられるポリプロピレン系樹脂としては、ホモプロピレン樹脂のほか、ホモプロピレン樹脂と比較して、柔軟性を有する軟質ポリプロピレン系樹脂が挙げられる。軟質ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、プロピレン−エチレンゴムなどが挙げられる。これら中でも延伸性、耐破断性の観点から、ランダムポリプロピレン樹脂が特に好適に使用される。
上記ランダムポリプロピレン樹脂において、プロピレンと共重合させるα−オレフィンとしては、好ましくは炭素数2以上20以下、より好ましくは炭素数4以上12以下のものが挙げられ、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどを例示できる。本発明のフィルムにおいては、延伸性、熱収縮特性、フィルムの耐衝撃性や透明性、剛性等の観点から、α−オレフィンとしてプロピレン単位の含有率が80質量%以上、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上のランダムポリプロピレンが特に好適に用いられる。また、共重合するα−オレフィンは1種のみを単独で、または2種以上を組み合わせて用いても構わない。
また、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、通常、MFR(JIS K7210、温度:230℃、荷重:21.18N)が、0.5g/10分以上、好ましくは1.0g/10分以上であり、かつ15g/10分以下、好ましくは10g/10分以下であることが望ましい。
これらのポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂は、より具体的には、ポリエチレン系樹脂として商品名「ノバテックLD、LL」「カーネル」「タフマーA、P」(日本ポリエチ社製)、「サンテックHD、LD」(旭化成ケミカルズ社製)、「HIZEX」「ULTZEX」「EVOLUE」(三井化学社製)、「モアテック」(出光興産社製)、「UBEポリエチレン」「UMERIT」(宇部興産社製)、「NUCポリエチレン」「ナックフレックス」(日本ユニカー社製)、「Engage」(ダウケミカル社製)などとして市販されている。これらの樹脂は、各々単独に、または2種以上を混合して使用することができる。
またポリプロピレン系樹脂として商品名「ノバテックPP」「WINTEC」「タフマーXR」(日本ポリプロ社製)、「三井ポリプロ」(三井化学社製)、「住友ノーブレン」「タフセレン」「エクセレンEPX」(住友化学社製)、「IDEMITSU PP」「IDEMITSU TPO」(出光興産社製)、「Adflex」「Adsyl」(サンアロマー社製)、「VERSIFY」(ダウケミカル社製)などとして市販されている。これらの樹脂は、各々単独に、または2種以上を混合して使用することができる。
また、第1の発明は、さらにポリオレフィン系樹脂として、上記エチレンと共重合可能なモノマーとの共重合体も好適に用いることができる。エチレンと共重合可能なモノマーとの共重合体を例示すれば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体などが挙げられる。
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体のエチレン含有率は70質量%以上、好ましくは75質量%以上であり、かつ95質量%以下、好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下であるものが望ましい。エチレン含有率が70質量%以上であれば、フィルム全体の耐破断性と収縮特性を良好に維持できる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)の市販品としては、例えば、「エバフレックス」(三井デュポンポリケミカル社製)、「ノバテックEVA」(三菱化学社製)、「エバスレン」(DIC社製)、「エバテート」(住友化学社製)が挙げられる。また、エチレン/エチルアクリレート共重合体(EEA)の市販品としては、例えば「エバフレックスEEA」(三井デュポンポリケミカル社製)、エチレン/メチルアクリレート共重合体としては「エルバロイAC」(三井デュポンポリケミカル社製)などがそれぞれ挙げられる。これらの共重合体は、各々単独に、または2種以上を混合して使用することができる。
上記エチレンと共重合可能なモノマーとの共重合体のMFRは、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JIS K7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が、下限が好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1.0g/10分以上であり、上限が好ましくは15g/10分以下、より好ましくは10g/10分以下である。
第1の発明で使用されるポリオレフィン系樹脂は、質量平均分子量の下限値が好ましくは50,000以上、より好ましくは100,000以上であり、上限値が700,000以下、より好ましくは600,000以下、さらに好ましくは500,000以下である。ポリオレフィン系樹脂の質量平均分子量が上記範囲内であれば、所望の機械物性や耐熱性等の実用物性を発現でき、また適度な溶融粘度が得られ、良好な成形加工性が得られる。
また、上記ポリオレフィン系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法等が挙げられる。
(相溶化剤)
第1の発明において相溶化剤は、ポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを相溶化させる樹脂を主成分としてなる。相溶化剤は、ポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを相溶化させる樹脂であれば特に限定されないが、エチレン−αオレフィン共重合体ゴム、エチレン−αオレフィン−非共役ポリエン共重合体ゴム、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー、およびスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる熱可塑性樹脂セグメントを幹成分とし、少なくとも1種のビニル系単量体から形成されるビニル系重合体セグメントを枝成分とするグラフト共重合体を用いることが好ましい。
グラフト共重合体の幹成分となる熱可塑性樹脂セグメントに使用する熱可塑性樹脂は、エチレン−αオレフィン共重合体ゴム、エチレン−αオレフィン−非共役ポリエン共重合体ゴム、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる。これらは単独で用いてもよく、また2種以上組み合わせて用いてもよい。
エチレン−αオレフィン共重合体ゴム、およびエチレン−αオレフィン−非共役ポリエン共重合体ゴムのエチレン以外のαオレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセンなどが挙げられる。これらのαオレフィンは単独もしくは2種以上混合して用いられる。また非共役ポリエンとしては5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン(DCP)、5−ビニル−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルテトラヒドロインデン(以上、環状ジエン)、1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン(以上、鎖状ジエン)、および、8−メチル−4−エチリデン−1,7−ノナジエン、4−エチリデン−1,7−ウンデカジエン(以上、鎖状トリエン)等を挙げることができる。
エチレン−αオレフィン共重合体ゴムの具体例としては、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−ブテン共重合体ゴム、エチレン−ヘキセン共重合体ゴム、エチレン−オクテン共重合体ゴム等が挙げられる。
また、エチレン−αオレフィン−非共役ポリエン共重合体ゴムの具体例としては、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン共重合体ゴム、エチレン−ブテン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴムが挙げられる。
エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の具体例としては、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸2−エチルヘキシル共重合体等が挙げられる。
エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の市販品は、エチレン−アクリル酸エチル共重合体として、商品名「レクスパールEEA」(日本ポリエチレン社製)、「エバフレックス−EEA」(三井・デュポンポリケミカル社製)、エチレン−メチル(メタ)アクリル酸共重合体として、商品名「アクリフト」、(住友化学社製)、「ニュクレル」(三井・デュポンポリケミカル社製)などが挙げられる。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体の市販品としては、例えば「エバフレックス」(三井・デュポンポリケミカル社製)、「ノバテックEVA」(日本ポリエチ社製)などが挙げられる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、ポリプロピレンとエチレン−プロピレン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物、ポリエチレンとエチレン−プロピレン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物、ポリプロピレンとエチレン−プロピレン−非共役ポリエン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物、ポリエチレンとエチレン−プロピレン−非共役ポリエン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物、ポリプロピレンとスチレン−ブタジエンブロック共重合体ゴムの水素添加品(SEBS)とのブレンド物又はその架橋物、ポリプロピレンとエチレン−1−オクテン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物、ポリエチレンとエチレン−1−オクテン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物等が挙げられる。架橋は公知の方法により行われ、その中でも有機過酸化物による架橋が好ましい。
これらのオレフィン系熱可塑性エラストマーは、既に市販されており、例えば商品名「ミラストマー」(三井化学社製)、商品名「サントプレーン」(エー・イー・エスジャパン社製)、商品名「住友TPE」(住友化学社製)、商品名「エンゲ−ジ」(デュポン・ダウ・エラストマー社製)、商品名「サーモラン」(三菱化学社製)などが挙げられる。
スチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)又はその水素添加品(H−SBR)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体ゴム(SBS)又はその水素添加品(SEBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体ゴム(SIS)又はその水素添加品(SEPS、HV−SIS)等が挙げられる。上記スチレン系熱可塑性エラストマーも、既に市販されており、例えば商品名「タフテック」(旭化成社製)、商品名「エラストマーAR」(アロン化成社製)、商品名「セプトン」(クラレ社製)、商品名「クレイトン」(クレイトンポリマージャパン社製)、商品名「JSRTR」(JSR社製)などが挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂の中で、エチレン−プロピレン共重合体ゴム又はその酸変性物、エチレン−オクテン共重合体ゴム又はその酸変性物、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ポリエン共重合体ゴム又はその酸変性物、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
グラフト共重合体の枝成分となるビニル系重合体セグメントを形成するビニル単量体は、アルキル鎖長の炭素数が1から20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、酸基を有するビニル単量体、ヒドロキシル基を有するビニル単量体、エポキシ基を有するビニル単量体、シアノ基を有するビニル単量体、スチレンより選択される少なくとも1種の単量体である。
さらに具体的にこのビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン等が挙げられる。これらの中でも、ポリ乳酸樹脂との高い親和性から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、アクリロニトリル、スチレンが好ましい。
ビニル系重合体セグメントを形成するビニル系重合体の質量平均分子量〔テトラヒドロフラン(THF)中、スチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)による測定値〕は、通常1,000〜2,000,000、好ましくは5,000〜1,200,000の範囲である。この質量平均分子量が1,000未満であると、グラフト共重合体の耐熱性が低下する傾向があり、質量平均分子量が2,000,000を超えると、グラフト共重合体の溶融粘度が高くなり、成形性が低下する傾向にある。
また、グラフト共重合体のメルトフローレート(MFR)又はメルトインデクス(MI)は、好ましくは0.01g/10分以上、より好ましくは0.1g/10分以上、さらに好ましくは1.0g/10分以上であり、500g/10分以下、好ましくは300g/10分以下、さらに好ましくは200g/10分以下である。このMFRはJIS K7210に規定された方法に準拠して、樹脂温度230℃、測定荷重21.18Nの条件で測定したものである。MFRが0.01g/10分以上500g/10分以下の範囲にあれば、グラフト共重合体とポリ乳酸系樹脂との良好な親和性が得られる。
グラフト共重合体は、熱可塑性樹脂セグメントが通常、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、99質量%以下、好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下からなり、ビニル系重合体セグメントは通常、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、95質量%以下、好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。熱可塑性樹脂セグメントが5質量%以上、又はビニル系重合体セグメントが95質量%以下であれば、ポリ乳酸樹脂へのグラフト共重合体の分散性が低下することもなく、良好な外観を有する成形体が得られる。一方、熱可塑性樹脂セグメントが99質量%以下、又はビニル系重合体セグメントが1質量%以上であれば、ポリ乳酸樹脂に対する十分な改良効果が得られる。このような知見に基づき、熱可塑性樹脂セグメントとビニル系重合体セグメントの割合を調整して、グラフト共重合体の極性を変更することにより、ポリ乳酸樹脂とグラフト共重合体との相互作用を調整することができる。
グラフト共重合体を製造する際のグラフト化法は、一般に知られている連鎖移動法、電離性放射線照射法等いずれの方法でも良いが、下記に示す方法が最も好ましい。なぜならば、製造方法が簡便で、グラフト効率が高く、熱によるビニル系重合体セグメントの二次的凝集が起こらず、グラフト共重合体をポリ乳酸樹脂と混合しやすくなり、両者の相互作用に優れているためである。
上記のグラフト共重合体の市販品としては、例えば商品名「モディパー」(日本油脂社製)、「レゼダ」(東亜合成社製)などが挙げられる。
相溶剤として2種以上の樹脂を使用する場合、ポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂との相溶性、混合樹脂の透明性、粘弾性値等を考慮して配合比を調整することができる。例えば、上記のグラフト共重合体と変性スチレン−芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体、芳香族ビニル系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体の水素添加物、又はこれらに極性基を導入した共重合体などを混合樹脂として用いることができる。2種以上の相溶化剤を使用した場合、ポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂との相溶効果をさらに促進させ、フィルムの透明性を向上させるため好ましい。
(ポリ乳酸系樹脂、ポリオレフィン系樹脂および相溶化剤の質量比)
第1の発明において、前記B層を構成するポリ乳酸系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、および相溶化剤の質量比は、前記B層を構成する樹脂組成物100質量%に対して、ポリ乳酸系樹脂が60質量%以上89質量%以下であり、ポリオレフィン系樹脂が10質量%以上40質量%以下であり、相溶化剤が1質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
また、より好ましくは、ポリ乳酸系樹脂が70質量%以上87質量%以下、ポリオレフィン系樹脂が10質量%以上30質量%以下、相溶化剤が3質量%以上12質量%以下であり、さらに好ましくは、ポリ乳酸系樹脂が75質量%以上85質量%以下、ポリオレフィン系樹脂が10質量%以上25質量%以下、相溶化剤が5質量%以上10質量%以下である。ポリオレフィン系樹脂の質量比が10質量%以上であれば、フィルムの耐破断性が著しく低減することがなく、また、40質量%以下であれば、B層に隣接するA層との層間剥離強度を所定の範囲に維持することができる。また、相溶化剤の質量比が3質量%以上であれば、相溶効果が発揮され、外観不良などが発生し難くなり、また、12質量%以下であれば、フィルムの剛性を阻害することもなく好ましい。
<A層およびB層への添加物>
さらに第1の発明では、上記A層およびB層には本発明の効果を著しく阻害しない範囲で上記ポリオレフィン系樹脂以外の、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂(GPPS(汎用ポリスチレン))、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)、SBS(スチレン−ブタジエン共重合体)、SIS(スチレン−イソプレン共重合体)、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合)、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体)、スチレン−カルボン酸共重合体)等、ポリアミド系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂を少なくとも1種以上さらに含有することができる。
特に、(メタ)アクリル系樹脂は、ポリ乳酸系樹脂と相溶化するため、ポリ乳酸系樹脂とブレンドすることによって収縮特性に影響を及ぼすガラス転移温度を調整することが可能となり、収縮仕上がり性を向上させるのに有効な樹脂となる。
上記(メタ)アクリル系樹脂の中でも、メタクリル系樹脂が好ましい。このメタクリル系樹脂とは、メタクリル酸メチル単独重合体、又はメタクリル酸メチルを50質量%以上と、他のビニル単量体との共重合体をいう。このビニル単量体としては、メタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類、不飽和酸類、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
上記メタクリル酸エステル類の具体例としては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。
また、上記アクリル酸エステル類の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。さらに、上記不飽和酸類の例としては、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられる。
また、上記のメタクリル系樹脂を構成する共重合体には、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリル酸ブチル共重合体、ポリアクリル酸ブチル共重合体等のエラストマー成分や、無水グルタル酸単位、グルタルイミド単位をさらに含んでいてもよい。
これらの中でも、剛性、成形性の観点から、メタクリル酸メチルの単独重合体であるポリメチルメタクリレート(PMMA)、およびメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸、メタクリル酸から選ばれる2種以上からなる共重合体が好適に用いられる。
第1の発明においてポリメチルメタクリレート(PMMA)が最も好適に用いられる。本樹脂をブレンドすることによって、メタクリル系樹脂のガラス転移温度を高くすることが可能であり、その結果、収縮時での急激な収縮開始を緩和し、良好な収縮仕上がり性が得られる。
上記(メタ)アクリル系樹脂の含有量は、A層またはB層の樹脂組成物全体を基準(100質量%)として、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、かつ30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
上記(メタ)アクリル系樹脂の市販品としては、例えば、「スミペックス」(住友化学社製)、「アクリペット」(三菱レイヨン社製)、「パラペット」(クラレ社製)、「アルテュグラス」(アトフィナ・ジャパン社製)、「デルペット」(旭化成ケミカルズ社製)などが挙げられる。
さらに第1の発明では、上記混合樹脂中に、この発明の効果を著しく阻害しない範囲で、耐衝撃性、透明性、成形加工性および熱収縮性フィルムの諸特性を向上させる目的で軟質性樹脂を添加してもよい。
上記軟質性樹脂としては、ポリ乳酸系樹脂を除く脂肪族ポリエステル系樹脂、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂、ジオールとジカルボン酸と乳酸系樹脂との共重合体等が挙げられる。
上記軟質性樹脂の中でも特に、ポリ乳酸系樹脂を除く脂肪族ポリエステル系樹脂が好ましい。このポリ乳酸系樹脂を除く脂肪族ポリエステル系樹脂とは、脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体と脂肪族多価アルコールとを主成分とする脂肪族ポリエステルである。脂肪族ポリエステル系樹脂を構成する脂肪族ジカルボン酸残基としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等から誘導される残基が挙げられる。また脂肪族多価アルコール残基としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等から誘導される脂肪族ジオール残基が挙げられる。
第1の発明において好適に用いられる脂肪族ジカルボン酸残基は、コハク酸残基またはアジピン酸残基であり、脂肪族多価アルコール残基は1,4−ブタンジオール残基である。
さらに、第1の発明において好適に用いられる脂肪族ジカルボン酸は、その融点が100℃以上170℃以下にあるものが好ましい。融点をその範囲に調整することによって通常収縮が行われる60℃から100℃の範囲でも、その脂肪族ポリエステルは結晶状態を保つことが可能となり、その結果、収縮時に柱のような役割を担うことによって、さらに良好な収縮仕上がり性を得ることが可能となる。
上記ポリ乳酸を除く脂肪族ポリエステル系樹脂の含有量は、A層またはB層の樹脂組成物全体を基準(100質量%)として、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、かつ30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
第1の発明において、耐衝撃性、透明性、成形加工性および熱収縮性フィルムの諸特性を向上させる目的で、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、可塑剤をさらに添加してもよい。この可塑剤としては、脂肪酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤などが挙げられる。
上記脂肪酸エステル系可塑剤の具体例としては、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジ(n−オクチル)アジペート、ジ(n−デシル)アジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジブチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジ(n−ヘキシル)アゼレート、ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジ(2−エチルヘキシル)ドデカンジオネート等が挙げられる。
また、上記フタル酸エステル系可塑剤の具体例としては、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート等が挙げられる。さらに、上記トリメリット酸エステル系可塑剤の具体例としては、トリ(2−エチルヘキシル)トリメリテート等が挙げられる。
<第1の発明の製造方法>
第1の発明は、上記混合樹脂を用いて、公知の方法によって製造することができる。フィルムの形態としては平面状、チューブ状の何れであってもよいが、生産性(原反フィルムの幅方向に製品として数丁取りが可能)や内面に印刷が可能という点から平面状が好ましい。
平面状のフィルムの製造方法としては、例えば、複数の押出機を用いて樹脂を溶融し、Tダイから共押出し、チルドロールで冷却固化し、縦方向にロール延伸をし、横方向にテンター延伸をし、アニールし、冷却し、印刷が施される場合にはその面にコロナ放電処理をして、巻取機にて巻き取ることによりフィルムを得る方法が挙げられる。また、チューブラー法により製造したフィルムを切り開いて平面状とする方法も挙げられる。
上記延伸における延伸倍率は、オーバーラップ用等、二方向に収縮させる用途では、縦方向が2倍以上10倍以下、横方向が2倍以上10倍以下、好ましくは縦方向が3倍以上6倍以下、横方向が3倍以上6倍以下程度である。一方、熱収縮性ラベル用等、主として一方向に収縮させる用途では、主収縮方向に相当する方向が2倍以上10倍以下、好ましくは3倍以上7倍以下、より好ましくは3倍以上5倍以下であり、それと直交する方向が1倍以上2倍以下(1倍とは延伸していな場合を指す。)、好ましくは1.01倍以上1.5倍以下の、実質的には一軸延伸の範疇にある倍率比を選定することが望ましい。上記範囲内の延伸倍率で延伸した二軸延伸フィルムは、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が大きくなりすぎることはなく、例えば、収縮ラベルとして用いる場合、容器に装着するとき容器の高さ方向にもフィルムが熱収縮する、いわゆる縦引け現象を抑えることができるため好ましい。
延伸温度は、用いる樹脂のガラス転移温度や熱収縮性フィルムに要求される特性によって変える必要があるが、概ね60℃以上、好ましくは70℃以上であり、上限が100℃以下、好ましくは90℃以下の範囲で制御される。
次いで、延伸したフィルムは、必要に応じて、自然収縮率の低減や熱収縮特性の改良等を目的として、50℃以上100℃以下程度の温度で熱処理や弛緩処理を行った後、分子配向が緩和しない時間内に速やかに冷却され、熱収縮性フィルムとなる。
また、第1の発明は、必要に応じてコロナ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面処理や表面加工、さらには、各種溶剤やヒートシールによる製袋加工やミシン目加工などを施すことができる。
<フィルムの層構成>
第1の発明は、A層およびB層が、A/B/Aの順に積層された3層から構成される積層フィルムである。
上記の積層体を形成する方法としては、共押出法、各層のフィルムを形成した後に、重ね合わせて熱融着する方法、接着剤等で接合する方法等が挙げられる。
次に、第1の発明の実施形態である(A)層/(B)層/(A)層の3層構成のフィルムについて説明する。
各層の厚み比は、上述した作用効果を考慮して設定すればよく、特に限定されるものではない。表裏層(A)層のフィルム全体の厚みに対する厚み比は10%以上、好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%であり、前記厚み比の上限は70%以下、好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下である。また中間層(B)層のフィルム全体の厚みに対する厚み比は、20%以上、好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上であり、上限は90%以下、好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下である。フィルム全体の厚みに対する表裏層の厚み比が上記範囲内であれば、ポリ乳酸系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、および相溶化剤からなる樹脂組成物を主成分としてなる中間層(B)層の表面荒れを抑制することができ、透明性、光沢性の優れたフィルムを得ることができる。また、フィルム全体の厚みに対する中間層の厚み比が上記範囲内であれば、耐破断性の優れたフィルムを得ることができ、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムがバランスよく得ることができる。
第1の発明の総厚みは、特に限定されるものではないが、透明性、収縮加工性、原料コスト等の観点からは薄い方が好ましい。具体的には、延伸後のフィルムの総厚みは80μm以下がよく、好ましくは70μm以下であり、さらに好ましくは60μm以下である。また、フィルムの総厚みの下限は特に限定されないが、フィルムのハンドリング性を考慮すると、20μm以上であることが好ましい。
<物理的・機械的特性>
(収縮率)
第1の発明は、80℃温水中に10秒間浸漬させた際の主収縮方向の熱収縮率が20%以上であることが重要であり、より好ましくは30%以上である。
これは、ペットボトルの収縮ラベル用途等の比較的短時間(数秒〜十数秒程度)での収縮加工工程への適応性を判断する指標となる。現在、ペットボトルのラベル装着用途に工業的に最も多く用いられている収縮加工機としては、収縮加工を行う加熱媒体として水蒸気を用いる蒸気シュリンカーと一般に呼ばれているものである。さらに熱収縮性フィルムは被覆対象物への熱の影響などの点からできるだけ低い温度で十分熱収縮することが必要である。しかしながら、温度依存性が高く、温度によって極端に収縮率が異なるフィルムの場合、蒸気シュリンカー内の温度斑に対して収縮挙動の異なる部位が発生し易いため、収縮斑、皺、アバタなどが発生し収縮仕上がり外観が悪くなる傾向にある。これら工業生産性も含めた観点から、80℃温水中に10秒間浸漬させた際のフィルム主収縮方向の熱収縮率が20%以上であれば、収縮加工時間内に十分に被覆対象物に密着でき、かつ斑、皺、アバタが発生せず良好な収縮仕上がり外観を得ることができるため好ましい。このことより本発明のフィルムは、80℃の熱収縮率が20%以上70%以下であることがより好ましい。
なお、「主収縮方向」とは、縦方向と横方向のうち延伸方向の大きい方を意味し、例えば、ボトルに装着する場合にはその外周方向に相当する方向である。
また、第1の発明が熱収縮性ラベルとして用いられる場合、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率は、80℃の温水中で10秒間浸漬したときは10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が10%以下のフィルムであれば、収縮後の主収縮方向と直交する方向の寸法自体が短くなったり、収縮後の印刷柄や文字の歪み等が生じやすかったり、角型ボトルの場合において縦ひけ等が生じたりする等のトラブルが発生し難い。
なお、上記の熱収縮の上限は記載されていないが、熱収縮によって、延伸前のフィルムの長さより短くなることはないので、熱収縮の上限は、延伸前のフィルム長となる収縮率である。
(透明性)
第1の発明の透明性は、厚み50μmのフィルムをJIS K7105に準拠した場合、全ヘイズ値は30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、7%以下であることが最も好ましい。また、内部ヘイズ値は15%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、6%以下であることが最も好ましい。全ヘイズ値が30%以下であれば、フィルムを装着した被覆体の視認性を保持することができ、また内部ヘイズ値が15%以下であれば、フィルムの積層化等によりフィルムの表面荒れを抑制することで、フィルムの全ヘイズ値をさらに低減させることができ、より透明性を向上させることができる。
(引張破断伸度)
第1の発明の耐衝撃性は、引張破断伸度により評価できる。この引張破断伸度は、雰囲気温度0℃の引張試験において、特にラベル用途ではフィルムの引き取り(流れ)方向(MD)で伸び率が100%以上、好ましくは150%以上、さらに好ましくは200%以上ある。雰囲気温度0℃での引張破断伸度が100%以上あれば印刷・製袋などの工程時にフィルムが破断するなどの不具合を生じにくくなり、好ましい。また、印刷・製袋などの工程の高速化にともなってフィルムに対してかかる張力が増加するような際にも、引張破断伸度が150%以上あれば破断しづらく、好ましい。上限については特に限定されないが、現在の工程の速度を考えた場合、500%ほどあれば十分だと考えられ、伸びを付与しすぎようとするとその反面フィルムの剛性が低下してしまう傾向となる。
また、第1の発明の23℃環境下の引張試験において、特にラベル用途ではフィルムの引き取り(流れ)方向(MD)で伸び率が100%以上、好ましくは200%以上、さらに好ましくは300%以上ある。23℃環境下での引張破断伸度が100%以上あれば印刷・製袋等の工程時にフィルムが破断する等の不具合が生じにくくなり、好ましい。また、印刷・製袋等の工程のスピードアップにともなってフィルムに対してかかる張力が増加するような際にも、引張破断伸度が100%以上あれば破断しづらく、好ましい
(貯蔵弾性率E’)
第1の発明は、振動周波数10Hz、歪み0.1%、昇温速度2℃/分、チャック間2.5cmの条件の下、測定温度が−150℃から150℃の範囲で、フィルム延伸方向と直交する方向について動的粘弾性を測定した際の、20℃における貯蔵弾性率(E’)が1,000MPa以上3,000MPa以下の範囲にあることが好ましく、1,200MPa以上2,500MPa以下の範囲であることがさらに好ましい。フィルムの貯蔵弾性率E’が1,000MPa以上であれば、フィルム全体としての腰(常温での剛性)を高くすることができ、フィルムが柔らかくなり過ぎて変形しやすくなり、印刷、製袋等の2次加工時にロールテンションによってフィルムが伸びる等の不具合や、フィルムの厚みを薄くした場合において、ペットボトル等の容器に製袋したフィルムをラベリングマシン等で被せる際に、斜めに被ったり、フィルムの腰折れ等で歩留まりが低下したりしやすい等の問題点が発生し難いため、好ましい。一方、フィルムの貯蔵弾性率E’が3,000MPa以内であれば、硬くて伸びにくいフィルムになり、2次加工時にシワが入りやすくなる、使用時にカサカサした感触を感じさせるといった不具合が起きないため、好ましい。
フィルム延伸方向と直交する方向について20℃における貯蔵弾性率(E’)を1,000MPa以上3,000MPa以下の範囲とするためには、各層の樹脂組成を本発明で規定する範囲とすることが重要であるが、単層の場合、混合樹脂の剛性や脂組成を調節することで調整が可能である。また積層フィルムの場合、フィルム全体の厚みに対する外層と内層との厚み比率を変更させることで調整可能である。例えば、貯蔵弾性率(E’)を高くしたい場合は積層フィルム全体の厚みに対するPLA層の比率を上げる、混合樹脂層の剛性を上げることで調整できる。
(自然収縮率)
第1の発明の自然収縮率はできるだけ小さい方が望ましいが、一般的に熱収縮性フィルムの自然収縮率は、例えば、30℃50%RHで30日保存後の自然収縮率は、好ましくは3.0%未満、より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。上記条件下における自然収縮率が3.0%未満であれば作製したフィルムを長期保存する場合であっても容器等に安定して装着することができ、実用上問題を生じにくい。上記フィルムの自然収縮率を調整する手段としては、各層の樹脂組成を本発明で規定する範囲とすることが重要であるが、特に混合樹脂層のフィルム全体の厚みに対する厚み比を10%以上とすることが好ましい。
[第2の発明(成形品)、第3の発明(熱収縮性ラベル)、第4の発明(容器)]
第1の発明は、被包装物によって平面状から円筒状等に加工し包装に供することができる。ペットボトル等の円筒状の容器で印刷を要するものの場合、まずロールに巻き取られた広幅のフラットフィルムの一面に必要な画像を印刷し、そしてこれを必要な幅にカットしつつ印刷面が内側になるように折り畳んでセンターシール(シール部の形状はいわゆる封筒貼り)して円筒状とすれば良い。センターシール方法としては、有機溶剤による接着方法、ヒートシールによる方法、接着剤による方法、インパルスシーラーによる方法が考えられる。この中でも、生産性、見栄えの観点から有機溶剤による接着方法が好適に使用される。
また、第1の発明は、フィルムの熱収縮特性、収縮仕上がり性、透明性等に優れているため、その用途が特に制限されるものではないが、必要に応じて印刷層、蒸着層、その他機能層を積層して形成することにより、ボトル(ブローボトル)、トレー、弁当箱、総菜容器、乳製品容器等の様々な成形品として用いることができる。
特に第1の発明を食品容器(例えば、清涼飲料水用または食品用のPETボトル、ガラス瓶、好ましくはPETボトル)用熱収縮性ラベルとして用いる場合、複雑な形状(例えば、中心がくびれた円柱、角のある四角柱、五角柱、六角柱など)であっても該形状に密着可能であり、シワやアバタ等のない美麗なラベルが装着された容器が得られる。この発明の成形品および容器は、通常の成形法を用いることにより作製することができる。
また、第1の発明は、優れた低温収縮性、収縮仕上り性を有するため、高温に加熱すると変形を生じるようなプラスチック成形品の熱収縮性ラベル素材のほか、熱膨張率や吸水性等がこの発明の熱収縮性フィルムとは極めて異なる材質、例えば金属、磁器、ガラス、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂から選ばれる少なくとも1種を構成素材として用いたプラスチック包装体(容器)の熱収縮性ラベル素材として好適に利用できる。
上記プラスチック包装体を構成する材質としては、上記の樹脂の他、ポリスチレン、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、(メタ)アクリル酸−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。これらのプラスチック包装体は2種以上の樹脂類の混合物でも、積層体であってもよい。
以下に第1の発明(フィルム)、第3の発明(熱収縮性ラベル)および第4の発明(該ラベルを装着した容器)について、実施例を用いて説明する。
なお、実施例に示す測定値および評価は次のように行った。実施例では、積層フィルムの引き取り(流れ)方向を「縦」方向(または「MD」)、その直角方向を「横」方向(または「TD」)と記載する。
(1)熱収縮率
得られた熱収縮性フィルムを縦100mm、横100mmの大きさに切り取り、70℃及び、80℃の温水バスに10秒間それぞれ浸漬し、収縮量を測定した。熱収縮率は、縦方向および横方向について、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。
◎:熱収縮率が40%以上の場合
○:熱収縮率が20%以上40%未満の場合
×:熱収縮率が20%未満の場合
(2)引張破断伸度
得られた熱収縮性フィルムを主収縮方向と直交する方向(縦方向)に110mm、主収縮方向に15mmの大きさに切り出し、JIS K6732に準拠し、引張速度100mm/minで、雰囲気温度0℃および23℃におけるフィルムの主収縮方向と直交する方向(縦方向)での引張破断伸度を測定し、10回の測定値の平均値を測定し、下記基準に従い評価した。測定値および評価の結果を表1に示した。
◎:引張破断伸度が200%を超える場合
○:引張破断伸度が100%を超え、200%以下である場合
×:引張破断伸度が100%以下である場合
(3)ヘイズ値
得られたフィルムの透明性を評価するため、JIS K7105にて全ヘイズ値を測定した。
◎:全ヘイズ値が7%未満の場合
○:全ヘイズ値が7%以上9%未満の場合
×:全ヘイズ値が9%以上の場合
また、各実施例、比較例で使用した原材料は、下記の通りである。
(ポリ乳酸系樹脂)
・Nature WorksLLC社製、商品名:NatureWorks4060D、L体/D体量=88/12、以下、「PLA(1)」と略する。
・Nature WorksLLC社製、商品名:NatureWorks4042D、L体/D体量=95/5、以下、「PLA(2)」と略する。
・Nature WorksLLC社製、商品名:NatureWorks4032D、L体/D体量=98.8/1.2、以下、「PLA(3)」と略する。
(ポリオレフィン系樹脂)
・ダウケミカル社製、商品名:バーシファイ2400、ポリプロピレン−エチレンランダム共重合体[ポリプロピレン/エチレン=85/15、10Hz貯蔵弾性率:10MPa(20℃)、3MPa(70℃)]、以下、「PO(1)」と略する。
(相溶化剤)
・日油社製、商品名:モディパーA5200[(エチレン−アクリル酸エチル)−メタクリル酸メチルグラフト共重合体(=70/30)、10Hz貯蔵弾性率:85MPa(20℃)、14MPa(70℃)]、以下「相溶化剤(1)」と略する。
(コアシェル型ゴム)
・三菱レイヨン社製、商品名:メタブレンS2001(以下「コアシェル型ゴム(1)」と略する。)
・三菱レイヨン社製、商品名:メタブレンS2006(以下「コアシェル型ゴム(2)」と略する。)
・三菱レイヨン社製、商品名:メタブレンW450A(以下「コアシェル型ゴム(3)」と略する。)
・三菱レイヨン社製、商品名:メタブレンSX005(以下「コアシェル型ゴム(4)」と略する。)
・カネカ社製、商品名:カネエースFM−21(以下「コアシェル型ゴム(5)」と略する。)
・カネカ社製、商品名:カネエースFM−40(以下「コアシェル型ゴム(6)」と略する。)
・カネカ社製、商品名:カネエースFM−53(以下「コアシェル型ゴム(7)」と略する。)
・カネカ社製、商品名:カネエースUF−100(以下「コアシェル型ゴム(8)」と略する。)
(実施例および比較例)
表1から3に示す、PLA(1)33質量%、PLA(2)44質量%とPO(1)17質量%、および、相溶化剤(1)7質量%とを混合して2軸押出機(三菱重工業社製)に投入し、設定温度210℃で溶融混合し、設定温度210℃のストランドダイスより押出した後、水槽にて冷却した樹脂組成物を、ストランドカッターにより切削し、ペレットを得た(B層用樹脂(1)と称する。)。
また、表2に示すように、PLA(1)16質量%、PLA(2)27質量%とPO(1)50質量%、および相溶化剤(1)7質量%と変更した以外は、上記B層用樹脂(1)と同様の手法によりペレットを得て、後述する比較例5に示す検討に用いた(B層用樹脂(2)と称する。)
また、表2に示すように、PLA(1)33質量%、PLA(2)44質量%とPO(1)24質量%と変更した以外は、上記B層用樹脂(1)と同様の手法によりペレットを得て、後述する比較例6に示す検討に用いた(B層用樹脂(3)と称する。)
次に、表1に示す、PLA(1)40質量%、PLA(2)50質量%と、コアシェル型ゴム(1)〜(8)をそれぞれ10質量%とを混合して2軸押出機(三菱重工業社製)に投入し、設定温度210℃で溶融混合し、設定温度210℃のストランドダイスより押出した後、水槽にて冷却した樹脂組成物を、ストランドカッターにより切削し、ペレットを得た(それぞれA層用樹脂(1)〜(8)と称する。)。
また、表3に示すように、PLA(1)42.5質量%、PLA(2)52.5質量%と、コアシェル型ゴム(2)5質量%と変更した以外は、A層用樹脂(1)〜(8)と同様の手法によりペレットを得て、後述する実施例9に示す検討に用いた(A層用樹脂(9)と称する。)。
また、表3に示すように、PLA(1)35質量%、PLA(2)45質量%と、コアシェル型ゴム(2)20質量%と変更した以外は、A層用樹脂(1)〜(8)と同様の手法によりペレットを得て、後述する実施例10に示す検討に用いた(A層用樹脂(10)と称する。)。
また、表3に示すように、PLA(1)42.5質量%、PLA(2)52.5質量%と、コアシェル型ゴム(3)5質量%と変更した以外は、A層用樹脂(1)〜(8)と同様の手法によりペレットを得て、後述する実施例11に示す検討に用いた(A層用樹脂(11)と称する。)。
また、表3に示すように、PLA(1)45質量%、PLA(2)55質量%と変更した以外は、A層用樹脂(1)〜(8)と同様の手法によりペレットを得て、後述する比較例7に示す検討に用いた(A層用樹脂(12)と称する。)。
また、表3に示すように、PLA(1)25質量%、PLA(2)35質量%と、コアシェル型ゴム(2)40質量%と変更した以外は、A層用樹脂(1)〜(8)と同様の手法によりペレットを得て、後述する比較例8に示す検討に用いた(A層用樹脂(13)と称する。)。
(実施例1)
2台の単軸押出機(三菱重工業社製)、および2種3層マルチマニホールド口金により、A層/B層/A層の積層共押出が可能な設備において、B層を形成する単軸押出機に、先にペレット化したB層用樹脂(1)を導入し、A層を形成する単軸押出機に、A層用樹脂(1)を導入し、各押出機設定温度210℃で溶融混合後、各層の厚みが、A層/B層/A層=30μm/190μm/30μmとなるよう共押出し、50℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて幅200mm、厚さ250μmの未延伸積層シートを得た。次いで、このシートをフィルムテンター(京都機械社製)を用いて、予熱75℃、延伸75℃、熱処理85℃、予熱1ゾーン、延伸3ゾーン、熱処理2ゾーンにて、横方向に5倍延伸をして、厚さ50μmの熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
(実施例2〜8)
表1に示すように、実施例1におけるA層用樹脂(1)を、それぞれA層用樹脂(2)〜(8)に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
(比較例1)
2台の単軸押出機(三菱重工業社製)、および2種3層マルチマニホールド口金により、A層/B層/A層の積層共押出が可能な設備において、B層を形成する単軸押出機に、先にペレット化したB層用樹脂(1)を導入し、A層を形成する単軸押出機を使用せずに、押出機設定温度210℃で溶融混合後、B層の厚みが、250μmとなるよう押出し、50℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて幅200mm、厚さ250μmの未延伸積層シートを得た。次いで、このシートをフィルムテンター(京都機械社製)を用いて、予熱75℃、延伸75℃、熱処理85℃、予熱1ゾーン、延伸3ゾーン、熱処理2ゾーンにて、横方向に5倍延伸をして、厚さ50μmの熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
(比較例2)
2台の単軸押出機(三菱重工業社製)、および2種3層マルチマニホールド口金により、A層/B層/A層の積層共押出が可能な設備において、B層を形成する単軸押出機を使用せず、A層を形成する単軸押出機に、A層用樹脂(1)を導入し、押出機設定温度210℃で溶融混合後、A層の厚みが、250μmとなるよう押出し、50℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて幅200mm、厚さ250μmの未延伸積層シートを得た。次いで、このシートをフィルムテンター(京都機械社製)を用いて、予熱75℃、延伸75℃、熱処理85℃、予熱1ゾーン、延伸3ゾーン、熱処理2ゾーンにて、横方向に5倍延伸をして、厚さ50μmの熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
(比較例3、4)
A層を形成する単軸押出機に、A層用樹脂(2)、(3)を導入した以外は、比較例2と同様の手法により、熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
Figure 0005413830
実施例1〜8で得られたフィルムに関しては、フィルムの外観も良好で、全ヘイズから見られる透明性も良好であった。また、フィルムのMDの引張破断伸度も23℃、0℃ともに良好な値を示した。一方、比較例1で得られたB層単層フィルムに関しては、引張破断伸度は良好なものの、表面荒れによる全ヘイズが著しく増大し、フィルムの透明性を保持するのに困難が生じる。また、比較例2〜4で得られたフィルムに関しては、フィルムの透明性は良好なものの、引張破断伸度が低く、シュリンクフィルムの加工工程である印刷工程や製袋工程で求められる耐破断性を得るのに十分でない。
(比較例5)
2台の単軸押出機(三菱重工業社製)、および2種3層マルチマニホールド口金により、A層/B層/A層の積層共押出が可能な設備において、B層を形成する単軸押出機に、先にペレット化したB層用樹脂(2)を導入し、A層を形成する単軸押出機に、A層用樹脂(2)を導入し、各押出機設定温度210℃で溶融混合後、各層の厚みが、A層/B層/A層=30μm/190μm/30μmとなるよう共押出し、50℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて幅200mm、厚さ250μmの未延伸積層シートを得た。次いで、このシートをフィルムテンター(京都機械社製)を用いて、予熱75℃、延伸75℃、熱処理85℃、予熱1ゾーン、延伸3ゾーン、熱処理2ゾーンにて、横方向に5倍延伸をして、厚さ50μmの熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
(比較例6)
表2に示すように、B層を形成する単軸押出機に、先にペレット化したB層用樹脂(3)を導入した以外は、比較例5と同様の手法により熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
Figure 0005413830
実施例2で得られたフィルムは、先に述べたように、優れた透明性と耐破断性を有しているのに対し、比較例5または比較例6で得られたフィルムは、フィルムに斑なムラが生じており、外観が劣っていた。また、実施例2、比較例5および6で得られたフィルムに粘着テープをフィルムに貼り付け、テープを剥がした際、比較例5で得られたフィルムにおいて層間剥離が生じた。
(実施例9〜11、比較例7、8)
表3に示すように、A層を形成する単軸押出機に、それぞれA層用樹脂(9)〜(13)を導入した以外は、実施例1と同様の手法により、熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表3に示す。
Figure 0005413830
表3に示すように、実施例2、4、9〜11で得られたフィルムに関して、良好な透明性と耐破断性を有しているのに対し、コアシェル型ゴムを添加していない比較例7では、透明性は良好なものの、0℃における引張強伸度が不十分な値を示した。このような低温での引張強伸度が不十分である場合、印刷工程等の工程において、ライン速度を増速した場合に対応しがたく、シュリンクフィルムとしての要求特性を満たすとは言いがたい。また、比較例8で得られたフィルムのように、コアシェル型ゴムの添加量を本発明の範囲より逸脱する範囲で添加した場合、透明性の低下もさることながら、粘着テープをフィルムに貼り付け、テープを剥がした際に層間剥離が生じた。
本発明に規定する熱収縮性フィルム(実施例1〜8)は、ポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂、及び相溶化剤から構成される熱収縮性単層フィルム(比較例1)や、ポリ乳酸系樹脂とコアシェル型ゴムから構成される熱収縮性単層フィルム(比較例2〜4)、または、ポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂、及び相溶化剤から構成される中間層とポリ乳酸系樹脂からのみで構成される表裏層を有する熱収縮性フィルム(比較例7)と比較し、フィルムの透明性と耐破断性を両立し、シュリンクフィルムとしての要求特性を満たす良好なフィルムであることを示した。また、本発明に規定する熱収縮性フィルム(実施例1〜11)は、低温収縮特性、耐衝撃性、透明性、外観、ハンドリング性に優れていた。これに対し、ポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂との質量比が本発明の規定する範囲を超えているフィルム(比較例5)は、ポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂の分散不良に起因すると考えられる、外観不良を起こしていた。また、ポリオレフィン系樹脂の質量比が本発明の規定する範囲を超えているため、隣接する最外層との層間剥離が容易に生じていた。また、相溶化剤の質量比が本発明の規定する範囲を外れるフィルム(比較例6)に関しても、外観不良が生じており、さらには、低温での引張破断伸度が著しく低下するものであった。さらに、コアシェル型ゴムの添加量が本発明の規定する範囲を外れるフィルム(比較例8)に関しても、隣接する最外層との層間剥離が容易に生じていた。
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う熱収縮性フィルム、該フィルムを用いた成形品および熱収縮性ラベル、並びに、該成形品およびラベルを装着してなる容器もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
本発明の熱収縮性フィルムは、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. ポリ乳酸系樹脂を主成分とし、コアシェル型ゴムを含む樹脂組成物からなるA層と、ポリ乳酸系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、および相溶化剤からなる樹脂組成物を主成分としてなるB層が、A/B/Aの順に積層された3層で構成される積層フィルムであって、
    前記B層の樹脂組成物は、樹脂組成物全体を100質量%としたとき、ポリ乳酸系樹脂を60質量%以上89質量%以下、ポリオレフィン系樹脂を10質量%以上40質量%以下、相溶化剤を1質量%以上15質量%以下含有し、
    前記相溶化剤が、エチレン−αオレフィン共重合体ゴム、エチレン−αオレフィン−非共役ポリエン共重合体ゴム、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー、およびスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる熱可塑性樹脂セグメントを幹成分とし、少なくとも1種のビニル系単量体から形成されるビニル系重合体セグメントを枝成分とするグラフト共重合体であり、
    前記積層フィルムが少なくとも一方向に延伸され、かつ80℃温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が20%以上である、熱収縮性積層フィルム。
  2. 前記A層を構成する樹脂組成物に含有されるコアシェル型ゴムにおけるシェルが(メタ)アクリル酸エステルであり、コアシェル型ゴムにおけるコアがシリコーンゴムまたはアクリル系ゴムである請求項1に記載の熱収縮性積層フィルム。
  3. 前記コアシェル型ゴムの含有率が、A層を構成する樹脂組成物100質量%に対し、3質量%以上20質量%以下である、請求項1または請求項2に記載の熱収縮性積層フィルム。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた成形品。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた熱収縮性ラベル。
  6. 請求項に記載の成形品または請求項に記載の熱収縮性ラベルを装着した容器。
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