以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態においては、本発明をロウ付け装置に適用した場合を主として説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかるロウ付け装置の概略構成を示す図である。図1に示すように、本実施の形態にかかるロウ付け装置10は、ワイヤガイド12、ワイヤ供給装置18、加熱機22を有する。ワイヤガイド12は中空であり、その中をワイヤ供給装置18により供給されるワイヤWが通る。ワイヤガイド先端部14からはワイヤWが突出する。また、ワイヤガイド後部16はワイヤ供給装置18と接しており、ワイヤ供給装置18から供給されるワイヤWを受けるようになっている。
加熱機22には、アセチレンガスおよびフラックスの混合気と酸素とが燃焼ガス供給装置(図示せず)から供給され、その先端24から上記混合気および酸素の燃焼による炎Fが放射されるようになっている。ワイヤガイド先端部14から突出したワイヤWは、ロウ付け対象である第1の母材M1と第2の母材M2との間のロウ付け位置に達し、所定の温度の下で溶融する。溶融されたロウ材がフラックスとともに母材M1と母材M2との間に流入することで母材M1と母材M2とが接合される。
なお、可燃ガスとしてアセチレンガス以外のガス、たとえば、プロパンガスを利用可能であることはいうまでも無い。また、本実施の形態においては、フラックスを混合気に含ませているが、直接、母材M1、M2の溶接位置に、フラックスを塗布するような構成を採用しても良いことは言うまでも無い。
本実施の形態においては、ワイヤ供給装置18および制御装置(図示せず)により、後述するようにワイヤWの供給が制御される。図2は、第1の実施の形態にかかるワイヤ供給装置の概略構成を示す図である。ワイヤ供給装置18は、ワイヤWを送り込み或いは引き戻すワイヤ供給部材20と、基部25と、基部25から直立してワイヤガイド後部16と連結される端壁26と、その上にワイヤ供給部材20を支持する可動部材30と、可動部材30の動きを規制するストッパ35とを有する。
可動部材30は、基部25に固定された可動部材支持部31と、回転軸32と、回転軸32に取り付けられたワイヤ供給装置支持台33と、を有する。回転軸32は、バネなどにより矢印D1方向に付勢されている。ワイヤ供給装置支持台33は、回転軸32の回転に伴って動く。また、ワイヤ供給装置支持台33の上面にはワイヤ供給部材20が固定されている。また、回転軸32には、その回転角を検出するための変位センサ(図示せず)が接続されている。
ワイヤ供給部材20は、その軸にモータ(図示せず)が連結された駆動ローラ36と、駆動ローラの回転に伴って回転する従動ローラ37とを有する。駆動ローラ36と従動ローラ37との間にワイヤWが位置し、駆動ローラ36の回転に伴ってワイヤWは矢印200の何れかの方向に動かされる。R1の方向にワイヤWが動くことによりワイヤWは送り込まれることになり、R2の方向にワイヤWが動くことによりワイヤWは引き戻される。R1の方向(ワイヤWを送り込む方向)を正方向と称し、R2の方向(ワイヤWを引き戻す方向)を逆方向と称する。また、ワイヤWを正方向に動かすための駆動ローラ36の回転を正回転、ワイヤWを逆方向に動かすための駆動ローラ36の回転を逆回転と称する。
図3は、本実施の形態にかかるストッパをより詳細に示す図である。図3に示すように、ストッパ35は、基部25に取り付けられ、基部25から直立する支持部41と、その下面の一部が接触面43として、ワイヤ供給装置支持台33の上面と接触する延長部42とを有する。接触面43と、ワイヤ供給装置支持台33の上面とが接触する状態で、ワイヤ供給装置支持台33の上面は、基部25とほぼ平行となる。図2に示すように、回転軸32は矢印D1方向に付勢されている。したがって、通常は、図3に示すように、ワイヤ供給装置支持台33は、その上面がストッパの接触面43と接触した状態となっている。
上述した構成のロウ付け装置10における動作の概略を図4〜図7を参照して説明する。図4に示すように、初期的には、母材M1とM2とを接合させるために、ワイヤガイド12が所定の位置に移動した状態で、一定時間の予熱の後、ワイヤ供給装置20が作動してワイヤWが送り込まれる。これにより、ワイヤガイド先端部14の開口51からワイヤWが、矢印Bに示すように、下流側(母材M1とM2とのロウ付け位置)に向かって進み、ワイヤWの先端52が母材M1の上面に当接する。この状態で、加熱機22からの炎FによりワイヤW、および、母材M1とM2とのロウ付け位置が加熱される。
ワイヤWおよび母材M1とM2とのロウ付け位置の加熱が不十分、つまり、ワイヤWが溶融温度に達しておらず、ワイヤWの先端52が母材Aの上面に当接したままの状態で、ワイヤ供給装置18のワイヤ供給部材20において、駆動ローラ36はワイヤWを正方向に動かすように作動している。したがって、図5に示すように、駆動ローラ36がワイヤWを正方向(矢印R1)に動かすことによって、ワイヤWの反力が生じる。この反力は、ロウ付け位置に送り込まれワイヤWの撓みによる、ワイヤ供給部材20の送り込みに対するものである。
ワイヤWの反力によって、ワイヤ供給部材20およびワイヤ供給部材20と固定されたワイヤ供給装置支持台33は、下方に変位しようとする。したがって、可動部材30の回転軸32が、付勢力に抗してD2方向に回転する。このD2方向の回転角は、変位センサ(図示せず)により検出される。
加熱機22により、さらに、ワイヤW、および、母材M1とM2とのロウ付け位置が加熱され、ワイヤWの溶融温度に達すると、図6に示すように、ワイヤWが溶融して、溶融したロウ材が母材M1とM2との間の隙間に流入する(符号BR参照)。ワイヤWが溶融することで、その先端52は、母材M1の上面から離間する。したがって、図7に示すように、ワイヤWの反力がなくなるため、付勢力により回転軸32はD1方向に回転し、ワイヤ供給装置支持台33の上面が、ストッパ35の接触面43と接触する状態となる。
図8は、回転軸32の変位の例を概略的に示すグラフである。図8に示す例では、ワイヤが母材M1に接触し、その後、変位が一定量になったときに、ワイヤ供給部材20の駆動ローラ36によるワイヤの供給が停止している。図8に示すように、グラフ800において、ワイヤの母材M1への接触(符号a1、a2、a3参照)の後、その変位が「0」から増大する。変位が一定量となり駆動ローラ36によるワイヤの供給が停止すると、変位はその値で維持される。この状態でも母材およびワイヤの温度は上昇する。その後、ワイヤが溶融し始めると(符号b1、b2、b3参照)、その後は比較的早く変位は「0」に戻る(符号c1、c2、c3参照)。すなわち、符号801〜803で示す範囲で、母材M1、M2の温度が上昇し、符号b1、b2、b3に示すポイントで、母材M1、M2の温度が上昇してワイヤが溶融を開始する。その後、符号811〜813に示す範囲では、ワイヤが継続して溶融する。したがって、符号811〜813に示す範囲では、溶融したワイヤが、母材M1と母材M2との間の隙間に流入して、母材M1、M2を接合する。
ワイヤ供給部材20の駆動ローラ36によるワイヤの送り込み量は一定であるため、ワイヤ供給部材の駆動ローラ36が作動する限り、変位はほぼ一次関数的に増大する。また、図8の例では、ワイヤ接触とワイヤ溶融が複数回繰り返されているが、それぞれのグラフの上昇において、変位の増大量(傾き)はほぼ同一である(符号801〜803参照)。なお、ワイヤ接触からワイヤ溶融までの時間が長い場合には、ワイヤが一定量で維持される時間が長くなる。なお、図8においては、グラフを直線で描いているが、これは概略的なものであり、実際には、細部で折れ線になり或いは曲線となっている。
本実施の形態においては、制御装置(図示せず)が上記変位を入力して、変位に基づいて、駆動ローラ36を駆動するモータの制御、および、ロウ付け装置の位置の制御などを行う。たとえば、制御装置は、駆動ローラ36を駆動するモータ、ロウ付け位置をスライド或いは回転させるための駆動装置(モータや油圧装置)を制御する。
図9および図10は、本実施の形態にかかるロウ付け装置の制御装置によるロウ付けシーケンスの一例を示すフローチャートである。制御装置は、ロウ付け装置10のワイヤガイド12がロウ付け位置に到達するように、駆動装置(図示せず)を作動させ、ロウ付け位置に到達させる(ステップ901)。制御装置は、ワイヤガイド12がロウ付け位置に達すると、ワイヤ供給部材20の駆動ローラ36を正回転させて、ワイヤWをロウ付け位置に送り込む(ステップ902)。
制御装置は、回転軸32に取り付けられた変位センサから変位を取得して(ステップ903)、変位が増大して所定の値α以上になったか否かを判断する(ステップ904)。変位が増大することは、ワイヤWがロウ付け位置において、溶融していない状態で母材M1に接触していることを示す。なお、所定の値αは、予め定めておけば良い。値αが大きい方が、より多くのワイヤを供給できることになるため、上限はあるがその範囲内でαは大きいほうが望ましい。特に、所定の値αを、当該変位がαであるときに対応するワイヤ供給量Wαが、1箇所のロウ付け位置でのロウ付けに必要な量となるように予め設定しておくことで、1箇所のロウ付け位置でのロウ付け回数を少なくすることができる。
ステップ904でYesと判断された場合には、制御装置はワイヤ供給部材20の駆動ローラ36を停止する(ステップ905)。次いで、制御装置は、ワイヤ供給総量が、所定量A以上であるか否かを判断する(ステップ906)。なお、ワイヤ供給総量は、初期的には、1回のワイヤ供給量に一致する。また、本実施の形態において、所定量Aは、あるロウ付け位置でロウ付けに必要とするロウの量に相当する。また、ワイヤ供給量は、ワイヤWの先端が母材M1の上面に接触し、回転軸32の変位が増大したタイミングから、駆動ローラ36が停止する(ステップ905参照)までの駆動ローラ36の回転量から取得できる。或いは、制御装置は、変位センサの変位に基づいて、ワイヤ供給量を算出しても良い。変位センサの変位とワイヤ供給量との間の変換式(たとえば、ワイヤ供給量=p×変位(ただしpは定数))を利用すれば、変位からワイヤ供給量を算出することができる。
ステップ906でYesと判断された場合には、制御装置は、変位が減少して所定の値β1(α>β1>0)以下になったか否かを判断する(ステップ907)。ステップ907でYesと判断された場合には、ワイヤWは、溶融中であり、溶融されたロウによるロウ付け位置の接合が行なわれていることになる。そこで、ステップ907でYesと判断された場合には、制御装置は、ワイヤ供給部材20の駆動ローラ36を所定量だけ逆回転させる(ステップ908)。そのロウ付け位置におけるロウ付けは完了したと判断され、その後、制御装置は、次のロウ付け位置まで、ワイヤガイド12を移動させる。
ステップ907でYesと判断された場合には、1回のロウ付けに十分な量が供給されている。したがって、溶融中のロウによりロウ付け位置において母材M1、M2がしっかりと接合される。ステップ908は、ワイヤWの先端(たとえば図6の符号52参照)が、加熱機22の炎により球状となることを防止するため、ワイヤWを炎から遠ざける必要があることから実行される。
その一方、ステップ906でNoと判断された場合には、制御装置は、変位が「0」になったか否かを判断する(ステップ909)。ステップ909でYesと判断された場合には、ワイヤWはほぼ完全に溶融した状態となっている。ステップ909でYesと判断された場合にも、制御装置は、ワイヤ供給部材20の駆動ローラ36を所定量だけ逆回転させる(ステップ910)。
次いで、制御装置は内蔵したタイマに所定の時間を設定し、タイマをスタートさせる(ステップ1001)。所定時の時間が経過すると、制御装置は、ワイヤ供給部材20の駆動ローラを再度正回転させる(ステップ1002)。
制御装置は、回転軸32に取り付けられた変位センサから変位を取得して(ステップ1003)、変位が増大して所定の値α以上になったか否かを判断する(ステップ1004)。ステップ1004でYesとなった場合には、制御装置はローラを停止する(ステップ1005)。その後、制御装置は、変位が減少したと判断すると(ステップ1006でYes)、ワイヤの供給総量が、所定量A以上であるか否かを判断する(ステップ1007)。ワイヤの供給総量は、元のワイヤの供給総量に、今回のローラ正回転(ステップ1002参照)により供給されたワイヤの供給量を加算すれば良い。
ステップ1007でYesと判断された場合には、ステップ908に進み、制御装置は、ワイヤ供給部材20の駆動ローラ36を所定量だけ逆回転させた後、次のロウ付け位置まで、ワイヤガイド12を移動させる。ステップ1006で変位が減少したと判断された場合には、ワイヤは溶融中であり、溶融されたロウによるロウ付け位置での接合が行なわれていることになる。このときに、ワイヤの供給総量が、当該ロウ付け位置におけるロウ付けに十分な量であれば、そのロウ付け位置におけるロウ付けは完了したと判断される。
その一方、ステップ1007でNoと判断された場合には、制御装置は、変位がさらに減少して「0」になったか否かを判断する(ステップ1008)。ステップ1008でYesと判断されると、制御装置は、ワイヤ供給部材20の駆動ローラ36を所定量だけ逆回転させて、ステップ1001に戻る。このように、ワイヤ供給総量が、あるロウ付け位置におけるロウ付けに十分な量となるまで、ステップ1001〜1009が繰り返される。
本実施の形態においては、制御装置は、ワイヤの反力を、可動部材30の回転軸32の変位(回転角)として得ることができる。また、制御装置は、変位に基づいて、ワイヤWの母材への接触、および、ワイヤWの溶融を判断することができる。これにより、ワイヤWの送り込み、引き戻しを適切に制御することができる。また、上記変位が生じた時間間隔に基づいて、ロウ付け位置におけるロウ材の供給量を算出することができる。これにより、ロウ付け位置における適量のロウ材の供給を実現することが可能となる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、制御装置が、ワイヤの反力を、可動部材30の回転軸32の変位(回転角)として取得するように構成されている。第2の実施の形態では、ワイヤの反力を、ワイヤ供給部材20の、ワイヤWの延びる方向と平行する向きの変位として表すような構成としている。
図11は、第2の実施の形態にかかるワイヤ供給装置の概略構成を示す図である。第2の実施の形態にかかるワイヤ供給装置118において、第1の実施の形態にかかるワイヤ供給装置18と同様の構成部分には同一の符号を付している。図11に示すように、第2の実施の形態にかかるワイヤ供給装置118は、ワイヤ供給部材20、基部25、側壁26、可動部材130およびストッパ135を有する。第2の実施の形態にかかるワイヤ供給装置118において、ワイヤ供給部材20は、可動部材130によりワイヤWと平行に(矢印121参照)移動、つまりスライドすることができる。また、可動部材130中のスプリングなどにより、ワイヤ供給部材20は、矢印D4の方向に付勢され、初期的には、ワイヤ供給装置130の下流側(図11において左側)の面が、ストッパ135と接触している。また、可動部材支持部120は、ワイヤ供給装置118の基部25に固定されている。
図12は、本実施の形態にかかる可動部材130をより詳細に示す部分断面図である。図12に示すように、可動部材130は、ワイヤ供給部材20の下端に取り付けられた摺動部材131と、摺動部材131の側端部のそれぞれにおいて、摺動部材をワイヤWと平行に移動させることをガイドするガイド部材132、133とを有している。摺動部材131の下面は平滑であり、可動部材支持部120の上面をスライドすることができるようになっている。
第2の実施の形態にかかるロウ付け装置の動作の概略を、図11〜図14を参照して説明する。
第1の実施の形態と同様に、図4に示すように、初期的には、母材M1とM2とを接合させるために、ワイヤガイド12が所定の位置に移動した状態で、一定時間の予熱の後、ワイヤ供給装置20が作動してワイヤWが送り込まれる。これにより、ワイヤガイド先端部14の開口51からワイヤWが、矢印Bに示すように、下流側(母材M1とM2とのロウ付け位置)に向かって進み、ワイヤWの先端52が母材M1の上面に当接する。この状態で、加熱機22からの炎FによりワイヤW、および、母材M1とM2とのロウ付け位置が加熱される。
ワイヤWおよび母材M1とM2とのロウ付け位置の加熱が不十分、つまり、ワイヤWが溶融温度に達しておらず、ワイヤWの先端52が母材Aの上面に当接したままの状態で、ワイヤ供給装置118のワイヤ供給部材20において、駆動ローラ36はワイヤWを正方向に動かすように作動している。したがって、図13に示すように、駆動ローラ36がワイヤWを正方向(矢印R1)に動かすことによって、ワイヤWの反力が生じる。ワイヤWの反力によって、ワイヤ供給部材20は、可動部材130によって、矢印D3方向に移動する。矢印D3方向への移動量は、変位センサ(図示せず)により検出される。
加熱機22により、さらに、ワイヤW、および、母材M1とM2とのロウ付け位置が加熱され、ワイヤWの溶融温度に達すると、図6に示すように、ワイヤWが溶融して、溶融したロウ材が母材M1とM2との間の隙間に流入する(符号BR参照)。ワイヤWが溶融することで、その先端52は、母材M1の上面から離間する。したがって、図14に示すように、ワイヤWの反力がなくなるため、ワイヤ供給部材20は、可動部材130における付勢力によりD4方向に急速に移動し、ワイヤ供給部材20の下流側の面が、ストッパ135に接触する状態となる。
第2の実施の形態においても、図13のD3方向を正とすると、ワイヤ供給部材20の変位およびワイヤWの状態は、図8に示すグラフとほぼ同様に表され得る。したがって、制御装置は、第1の実施の形態と同様に、図9および図10に示す処理フローにしたがって、ロウ付け装置を制御することができる。
第2の実施の形態においては、ワイヤの反力を、ワイヤ供給部材20のワイヤWと平行した変位として、制御装置が得ることができる。また、制御装置は、得られた変位に基づいて、ワイヤWの母材への接触、および、ワイヤWの溶融を判断することができる。
また、第2の実施の形態においては、変位は、ワイヤの供給された長さと一致する。したがって、第2の実施の形態においては、変位に基づいたワイヤの供給量を容易かつ正確に算出することもできる。
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
たとえば、前記実施の形態においては、変位が0まで減少した場合(図9のステップ909参照)、一旦駆動ローラ36を逆回転させて、一旦ワイヤWをロウ付け位置から離間させている(ステップ910参照)。しかしながら、このようなシーケンスに限定されるものではない。図15は、本実施の形態にかかるロウ付けシーケンスの他の例を示すフローチャートである。図9のステップ901〜908の処理は、第1の実施の形態と同様である。
ステップ906でNoと判断された場合、つまり、ワイヤ供給総量が所定量Aより少なかったであった場合、制御装置は、変位が減少して所定の値β2(α>β2>0)以下になったか否かを判断する(ステップ1501)。ステップ1501でYesと判断された場合には、ワイヤWは、溶融中であり、溶融されたロウによるロウ付け位置の接合が行なわれていることになる。
ステップ1501でYesと判断された場合には、制御装置は、ワイヤ供給部材20の駆動ローラ36を正回転させて、ワイヤをロウ付け位置に送り込み(ステップ1502)、さらに、変位を測定する(ステップ1503)。制御装置は、ワイヤ供給総量が、所定の値A以上になっていれば(ステップ1504でYes)、ステップ908に進み、ワイヤ供給部材20の駆動ローラ36を所定量だけ逆回転させ、そのロウ付け位置におけるロウ付けが完了したと判断された後、次のロウ付け位置まで、ワイヤガイド12を移動させる。
ステップ1504でNoと判断された場合には、制御装置は、取得した変位が増大して、ある値γ(α>γ>β2)以上になったか否かを判断する(ステップ1505)。変位が増大することは、溶融したロウ材(ワイヤ)が正回転により送り込まれ、ロウ材が溶融しつつ、かつ、ワイヤWの先端がロウ付け位置において、母材M1との接触を継続していることを意味している。ステップ1505でNoと判断された場合には、ステップ1504に戻り、当該ロウ付け位置におけるロウ付けに十分な量となっていれば(ステップ1504でYes)、ステップ908に進む。
ステップ1505でYesと判断された場合には、制御装置は、ワイヤ供給部材20の駆動ローラ36を減速或いは停止させる(ステップ1506)。次いで、制御装置は、ワイヤ供給総量が、所定の値A以上になっていれば(ステップ1507でYes)、ステップ908に進み、ワイヤ供給部材20の駆動ローラ36を所定量だけ逆回転させ、そのロウ付け位置におけるロウ付けが完了したと判断された後、次のロウ付け位置まで、ワイヤガイド12を移動させる。
ステップ1507でNoと判断された場合には、変位が減少して所定の値β2(α>β2>0)以下になったか否かを判断する(ステップ1508)。ステップ1508でNoと判断された場合には、ステップ1507に戻り、当該ロウ付け位置におけるロウ付けに十分な量となっていれば(ステップ1507でYes)、ステップ908に進む。
ステップ1508でYesと判断された場合には、ステップ1502に戻り、ステップ1502〜1508の処理を繰り返す。
第2の実施の形態においては、図15の一連の処理においてはワイヤを供給し続けるため、ロウ付けに要する時間を短くすることが可能となる。また、ワイヤと母材とが接触しながら連続でワイヤを供給するという状態の中で、ワイヤ供給総量が所定量Aを超えた段階で、あるロウ付け位置におけるロウ付けを終了するため、ロウ付けに使用されるロウ材の量を適切にすることもできる。
また、前記第1の実施の形態および第2の実施の形態においては、ワイヤ供給部材20における変位(回転量或いはスライドした移動量)を測定しているが、他の部材における変位が測定されても良い。図16は、本発明の第3の実施の形態にかかるロウ付け装置の概略構成を示す図である。図16において、第1の実施の形態と同様の構成部分には同一の符号を付している。
図16に示すように、第3の実施の形態にかかるロウ付け装置200は、ワイヤガイド212およびワイヤ供給装置218を有する。第3の実施の形態にかかるワイヤ供給装置218において、ワイヤ供給部材20は固定されており、ワイヤの反力によりその位置は変化しない。その一方、ワイヤガイドは、ワイヤガイド先端部214と、ワイヤガイド後部216との間に、弾性変形可能な中央部218を有する。また、中央部218の一端(中央部218とワイヤガイド後部216との接続部)に、可動部材230を有する。可動部材230は、回転軸232を有し、中央部218が回転可能である。回転軸には変位センサが設けられ、中央部218の回転角を得ることができる。
また、図16において中央部218が実線で示す位置となるように、中央部218は、スプリングなどの付勢部材により付勢される。また、可動部材230は、中央部218を上記実線で示す位置で停止するようにストッパ(図示せず)を有している。
この例では、ワイヤWの反力によって、ワイヤガイドの中央部218が、付勢部材による付勢に抗して、矢印方向に回転し、これにより、中央部218は、破線で示すような形状および位置となる(符号218b参照)。このときに、回転角を変位として取得すれば、第1の実施の形態と同様に、ワイヤの供給の制御等が可能となる。
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態においても、第3の実施の形態と同様に、ワイヤガイドの変位を取得するように構成される。図17は、本発明の第4の実施の形態にかかるロウ付け装置の概略構成を示す図である。なお、図17においても、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と同様の構成部分には同一の符号を付している。
図17に示すように、第4の実施の形態にかかるロウ付け装置300は、ワイヤガイド312、ワイヤ供給装置218、および、可動部材330を有する。ワイヤガイド312は、上流側(ワイヤ供給装置218の側)に、第1のフレキシブルチューブ316を有する。第1のフレキシブルチューブ316は、その一端がワイヤ供給装置218に連結されるとともに、他端が可動部材330に連結される。また、ワイヤガイド312は、下流側に、第2のフレキシブルチューブ318を有する。第2のフレキシブルチューブ318は、その一端が、可動部材330に連結され、他端が、ワイヤガイド先端部314に連結される。
第1のフレキシブルチューブ316および第2のフレキシブルチューブ318は、それぞれ、中空で、その中をワイヤが通ることができる。たとえば、第1のフレキシブルチューブ316は、細いコイル状の金属の本体をゴムなどの樹脂で被ったような構造である。第2のフレキシブルチューブ318も、第1のフレキシブルチューブ316と同様であるが、可動部材により形状が変化するため、より可撓性を有しているのが望ましい。
可動部材330は、ワイヤの延びる方向と平行に延び、ワイヤガイドを支持するワイヤガイド支持部334、ワイヤガイド支持部334の中央部付近に配置された回転軸332、ワイヤガイド支持部334の端部から、当該ワイヤガイド支持部334に対して直立に延びる連結部336、および、連結部336の端部から、ワイヤが延びる方向と平行に延びるストッパ338を有している。
回転軸332からはアーム340が延び、アーム340の先端にワイヤガイド先端部314が取り付けられる。アーム340は、回転軸332の回転に伴った揺動可能である。回転軸332には変位センサが設けられ、その回転角(つまり、アーム340の回転角)を、変位として得ることができる。
回転軸332は、アーム340の下面が、ストッパ338の上面と接触するように、スプリング(図示せず)などにより、矢印D5方向に付勢されている。また、ストッパ338により、アーム340は、図17に示す位置より下方にならないようになっている。
第4の実施の形態においては、ワイヤWの反力によって、ワイヤガイド先端部314が上流方向に移動し、これに伴って、アーム340が、回転軸332を中心に、矢印D6方向に回転する。したがって、センサが、回転軸332の回転角を変位として取得すれば、第1の実施の形態や第3の実施の形態等と同様に、ワイヤの供給の制御等が可能となる。
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態においても、ワイヤガイドの変位を検出しているが、ワイヤガイドの回転角ではなく、ワイヤの延びる方向と平行の移動を変位として取得する。
図18は、本発明の第5の実施の形態にかかるロウ付け装置の概略構成を示す図である。なお、図17においても、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と同様の構成部分には同一の符号を付している。
図18に示すように、第5の実施の形態にかかるロウ付け装置400は、ワイヤガイド412、ワイヤ供給装置218、および、可動部材430を有する。ワイヤガイド412は、上流側(ワイヤ供給装置218の側)に、第1のフレキシブルチューブ316を有する。第1のフレキシブルチューブ316は、その一端がワイヤ供給装置218に連結されるとともに、他端が可動部材430に連結される。また、ワイヤガイド412は、下流側に、第2のフレキシブルチューブ318を有する。第2のフレキシブルチューブ318は、その一端が、可動部材430に連結され、他端が、ワイヤガイド先端部314に連結される。
第1のフレキシブルチューブ316および第2のフレキシブルチューブ318は、第4の実施の形態と同様に、それぞれ、中空で、その中をワイヤが通ることができる。たとえば、第1のフレキシブルチューブ316は、細いコイル状の金属の本体をゴムなどの樹脂で被ったような構造である。第2のフレキシブルチューブ318も、第1のフレキシブルチューブ316と同様であるが、可動部材により形状が変化するため、より可撓性を有しているのが望ましい。
可動部材430は、ワイヤの延びる方向と平行に延び、ワイヤガイドを支持するワイヤガイド支持部334、ワイヤガイド支持部334の周囲を取り囲む形状のスリーブ部材432、ワイヤガイド支持部334の端部から、ワイヤガイド支持部334に対して直立に延びる連結部336、および、連結部336の端部から、ワイヤの延びる方向と平行に延びるストッパ338を有している。
スリーブ部材432からはアーム340が延び、アーム340の先端にワイヤガイド先端部314が取り付けられる。アーム340は、スリーブ部材の移動に伴って、ワイヤの延びる方向と平行に移動可能である。スリーブ部材432或いはワイヤガイド支持部材334には、変位センサが設けられ、スリーブ部材432の移動を変位として得ることができる。
スリーブ部材432は、重力或いはスプリングにより矢印D7の方向に付勢され、初期的には、アーム340の下面が、ストッパ338の上面と接触することで、その位置が保持される。つまり、ストッパ338により、スリーブ部材432は、図18に示す位置より下流方向に移動しないようになっている。
第5の実施の形態においては、ワイヤWの反力によって、ワイヤガイド先端部314が上流方向に移動し、これに伴って、アーム340およびスリーブ部材432が、矢印D8方向に移動する。したがって、センサが、スリーブ部材432の、ワイヤの延びる方向と平行の移動を変位として取得すれば、第2の実施の形態等と同様に、ワイヤの供給の制御等が可能となる。
また、上記実施の形態においては、本発明をロウ付け装置に適用したが、ミグ溶接やマグ溶接を行なうアーク溶接装置に本発明を適用することも可能である。ミグ溶接は、アーク溶接のうち、シールドガスに不活性ガス(たとえば、アルゴンやヘリウム)のみを用いるものであり、その一方、マグ溶接は、アーク溶接の打ち、シールドガスに不活性ガスと炭酸ガスの混合気を用いるものである。
本発明をマグ溶接やミグ溶接のためのアーク溶接装置に使用する場合には、第1の実施の形態ないし第5の実施の形態にかかるロウ付け装置のワイヤガイド(ワイヤガイド先端部14)を、溶接トーチ(溶接ガン)に置き換える。また、加熱機22は使用されない。
図19は、アーク溶接装置における溶接トーチおよびその周辺の概略構成を示す図である。図19に示すように、溶接トーチ414は、ガスノズルが取り付けられた本体415、ワイヤに電気を供給するコンタクトチップ416を備える。母材M1は、電力を供給する溶接機(図示せず)の一方の電極と接続されるとともに、コンタクトチップ416も、溶接機(図示せず)の他方の電極と接続される。
このようなアーク溶接装置においては、溶加材のワイヤWはコンタクトチップ416を介して通電されている。したがって、ワイヤWが母材M1に接近することにより、コンタクトチップ416を介して与えられた電流によりアークが形成される。その一方、溶接トーチ414の本体415の先端部417からは、シールドガスが噴出し(符号418参照)、アークを空気から遮断する。アークによる熱により母材M1、M2と、溶加材とが溶融し、溶接位置419において、母材M1、M2が接合される。
上記ミグ溶接、マグ溶接を行なう場合にも、第1の実施の形態ないし第5の実施の形態に示したワイヤ供給装置、可動部材を設けることにより、可動部材における変位に基づいて、ワイヤWの送り込みを制御することができる。
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、ワイヤの反力を、ワイヤ供給部材20において、可動部材30の回転軸32の変位(回転角)として得ていた。また、第2の実施の形態では、ワイヤの反力を、ワイヤ供給部材20のワイヤWと平行した移動量として得ていた。しかしながら、ワイヤの反力は、ワイヤ供給部材20以外においても取得できる。第6の実施の形態においては、ワイヤガイドを保持する装置において、ワイヤの反力を変位として取得する。図20は、本発明の第6の実施の形態にかかるロウ付け装置の概略構成を示す図である。第6の実施の形態においては、ワイヤガイド512を保持するととも移動するワイヤガイド保持・移動装置520(以下、単に「保持・移動装置」と称する)も図示している。
図20に示すように、第6の実施の形態にかかるロウ付け装置510は、ワイヤガイド512、および、ワイヤガイド512を保持する保持・移動装置520を有する。ワイヤガイド512は、保持・移動装置520のワイヤガイド保持部材522を介してワイヤ供給装置518に接続される。ワイヤ供給装置518からは、中空のフレキシブルチューブ519が延びる。ワイヤWは、フレキシブルチューブ519中を通過し、ワイヤ供給装置518およびワイヤガイド512の内部をそれぞれ経て、ワイヤガイド512の先端から突出する。
保持・移動装置520は、ワイヤガイド保持部材522、先端部524、上部アーム526、下部アーム528、旋回部材530を有する。旋回部材530はベース532に上下方向に配置された軸(図示せず)を中心に回転可能に取り付けられる。上部アーム526と下部アーム528との間には、上部アーム駆動部材534が配置され、また、旋回部材530と下部アーム528との間には、下部アーム駆動部材536が配置される。
先端部524からはワイヤガイド回転軸540が突出し、ワイヤガイド回転軸540の先端がワイヤガイド保持部材522に連結される。ワイヤガイド回転軸540にはモータ(図示せず)が連結され、制御装置(図示せず)からの制御信号により回転することができる。また、先端部524は、上下動回転軸542を有する。上下動回転軸542にも、モータ(図示せず)が連結され、制御装置(図示せず)からの制御信号により回転し、ワイヤガイド512を上下動回転軸542を中心に上下動させることができる(矢印2001参照)。
上部アーム駆動部材534も回転軸544を有する。この回転軸544にもモータ(図示せず)が連結され、制御装置(図示せず)からの制御信号により回転し、上部アーム526を、回転544を中心に上下動させることができる(矢印2002参照)。同様に、下部アーム駆動部材536も回転軸546を有する。この回転軸546にもモータ(図示せず)が連結され、制御装置(図示せず)からの制御信号により回転し、下部アーム528を、回転546を中心に上下動させることができる(矢印2003参照)。
本実施の形態においては、上部アーム駆動部材534の回転軸544において、ワイヤの反力により生ずる変位を検出する。なお、変位の検出は、上部アーム駆動部材534の回転軸544に限定されず、先端部524の上下動回転軸542や、下部アーム駆動部材536の回転軸546においても、同様の手段或いは処理により検出することが可能である。
図21は、本実施の形態にかかる変位検出の概略を説明する図である。図21に示すように、本実施の形態にかかる回転軸544には、ポテンショメータなどの角度センサ550が取り付けられ、回転軸544における所定の基準位置からの回転角を検出することができる。上部アーム駆動部材534のモータ(図示せず)は、ワイヤガイド512が溶接位置に到達すると、重力に抗して所望の位置で保持されるように制御され、また、重力以外の一時的な力に応じて回転軸544を中心に回転できるようになっている。
図21において実線にて示す位置が、ワイヤガイド512、上部アーム526の保持された位置である。ワイヤWの先端が母材Aの上面に当接したままの状態(符号2100参照)で、ワイヤ供給装置518がワイヤを供給し続けると、ワイヤWの反力が発生し、これによって、ワイヤガイド512は上側に動かされる(符号2101参照)。ワイヤガイド512の上側の移動に伴って、ワイヤガイド512に連結された上側アーム526も、回転軸544を中心に矢印2103方向に回転する。このときの回転角anを、角度センサ550が変位として検出する。
図22および図23は、本実施の形態にかかるロウ付け装置の制御装置によるロウ付けシーケンスの一例を示すフローチャートである。制御装置は、ワイヤガイド512がロウ付け位置に到達するように、保持・移動装置520を作動させ、ロウ付け位置に到達させる(ステップ2201)。制御装置は、ワイヤガイド512がロウ付け位置に達すると、ワイヤ供給装置518のモータ(図示せず)を正回転させて駆動ローラ(図示せず)を駆動し、ワイヤWをロウ付け位置に送り込む(ステップ2202)。
制御装置は、角度センサ550から、回転軸544の所定の基準位置からの角度の変化(変位角)を取得する(ステップ2203)。なお、変位角は図21の矢印2103方向に正の値をとる。制御装置は、変位角anが増大して所定の値X以上になったか否かを判断する(ステップ2204)。変位角が増大することは、ワイヤWがロウ付け位置において、溶融していない状態で母材M1に接触していることを示す。なお、所定の値Xは、予め定めておけば良い。所定の値Xを、当該変位角anがXに一致するときに対応するワイヤ供給量Wanが、1箇所のロウ付け位置でのロウ付けに必要な量となるように予め設定しておくことで、1箇所のロウ付け位置でのロウ付け回数を少なくすることができる。
ステップ2204でYesと判断された場合には、制御装置はワイヤ供給部材518のモータ(図示せず)を停止して、ワイヤWの送り込みを停止する(ステップ2205)。次いで、制御装置は、ワイヤ供給総量が、所定量A以上であるか否かを判断する(ステップ2206)。
なお、ワイヤ供給総量は、初期的には、1回のワイヤ供給量に一致する。また、本実施の形態において、所定量Aは、あるロウ付け位置でロウ付けに必要とするロウの量に相当する。また、ワイヤ供給量は、1動作で終了する場合、すなわち、図22のステップ2206でYesと判断される場合には、変位角X(ステップ2204参照)と変位角Y(ステップ2207参照)との差(X−Y)に基づいて算出することができる。また、2動作以上となる場合、すなわち、図23に示す処理も実行される場合には、(変位角X×動作数)+(ステップ2306における変位角の減少分)に基づいて算出することができる。
ステップ2206でYesと判断された場合には、制御装置は、変位角が減少して所定の値Y(X>Y>0)以下になったか否かを判断する(ステップ2207)。ステップ2207でYesと判断された場合には、ワイヤWは、溶融中であり、溶融されたロウによるロウ付け位置の接合が行なわれていることになる。そこで、ステップ2207でYesと判断された場合には、制御装置は、ワイヤ供給装置518のモータを所定量だけ逆回転させて、ワイヤWを所定量だけ引き戻す(ステップ2208)。そのロウ付け位置におけるロウ付けは完了したと判断され、その後、制御装置は、次のロウ付け位置まで、保持・移動装置520を制御してワイヤガイド512を移動させる。
ステップ2206でYesと判断された場合には、1回のロウ付けに十分な量が供給されている。したがって、溶融中のロウによりロウ付け位置において母材M1、M2がしっかりと接合される。ステップ2208は、ワイヤWの先端が、加熱機(図示せず)の炎により球状となることを防止するため、ワイヤWを炎から遠ざける必要があることから実行される。
その一方、ステップ2206でNoと判断された場合には、制御装置は、変位角が「0」になったか否かを判断する(ステップ2209)。ステップ2209でYesと判断された場合には、ワイヤWはほぼ完全に溶融した状態となっている。ステップ2209でYesと判断された場合にも、制御装置は、ワイヤ供給装置518のモータを所定量だけ逆回転させて、ワイヤWを所定量だけ引き戻す(ステップ2210)。
次いで、制御装置は内蔵したタイマに所定の時間を設定し、タイマをスタートさせる(ステップ2301)。所定時の時間が経過すると、制御装置は、ワイヤ供給装置518のモータを再度正回転させて、ワイヤWを送り込む(ステップ2302)。
制御装置は、角度センサ550から、回転軸544の所定の基準位置からの角度の変化(変位角)を取得する(ステップ2303)。制御装置は、変位角anが増大して所定の値X以上になったか否かを判断する(ステップ2304)。ステップ2304でYesとなった場合には、制御装置は、ワイヤ供給装置518のモータを停止してワイヤWの送り込みを停止する(ステップ2305)。その後、制御装置は、変位角が減少したと判断すると(ステップ2306でYes)、ワイヤの供給総量が、所定量A以上であるか否かを判断する(ステップ2307)。ワイヤの供給総量は、元のワイヤの供給総量に、今回のワイヤ供給装置518のモータの正回転(ステップ2302参照)により供給されたワイヤの供給量を加算すれば良い。
ステップ2307でYesと判断された場合には、ステップ2208に進み、制御装置は、ワイヤ供給装置518のモータを所定量だけ逆回転させて、ワイヤを所定量だけ引き戻した後、次のロウ付け位置まで、次のロウ付け位置まで、保持・移動装置520を制御してワイヤガイド512を移動させる。ステップ2306で変位角が減少したと判断された場合には、ワイヤは溶融中であり、溶融されたロウによるロウ付け位置での接合が行なわれていることになる。このときに、ワイヤの供給総量が、当該ロウ付け位置におけるロウ付けに十分な量であれば、そのロウ付け位置におけるロウ付けは完了したと判断される。
その一方、ステップ2307でNoと判断された場合には、制御装置は、変位角がさらに減少して「0」になったか否かを判断する(ステップ2308)。ステップ2308でYesと判断されると、制御装置は、ワイヤ供給装置518のモータを所定量だけ逆回転させてワイヤを所定量だけ引き戻した上で、ステップ2301に戻る。このように、ワイヤ供給総量が、あるロウ付け位置におけるロウ付けに十分な量となるまで、ステップ2301〜2309が繰り返される。
本実施の形態においては、制御装置は、ワイヤWの反力を、ワイヤガイド512を保持し、移動させる保持・移動装置520の回転軸(本実施の形態では、上部アーム526を駆動する上部アーム駆動部材534の回転軸544)における変位角として取得する。制御装置は、取得された変位角に基づいて、ワイヤWの母材への接触、および、ワイヤWの溶融を判断することができる。これにより、ワイヤWの送り込み、引き戻しを適切に制御することができる。また、上記変位角に基づいて、ロウ付け位置におけるロウ材の供給量を算出することができる。これにより、ロウ付け位置における適量のロウ材の供給を実現することが可能となる。
また、同じように、ワイヤWの反力を、保持・移動装置520の回転軸における他の変位として捉えることも可能である。たとえば、上部アーム駆動部材534の回転軸544が、トルクセンサ(図示せず)を介してモータ(図示せず)と連結されていても良い。トルクセンサは、回転軸544にかかる負荷が増大するのにしたがってトルク値trが増大する。そこで、第7の実施の形態においては、ワイヤWの反力を、回転軸544のトルク値trとして取得して、ロウ付け装置を制御する。
図24および図25は、第7の実施の形態にかかるロウ付け装置の制御装置によるロウ付けシーケンスの一例を示すフローチャートである。制御装置は、ロウ付け装置10のワイヤガイド512がロウ付け位置に到達するように、保持・移動装置520を作動させ、ロウ付け位置に到達させる(ステップ2401)。制御装置は、ワイヤガイド512がロウ付け位置に達すると、ワイヤ供給装置518のモータ(図示せず)を正回転させて駆動ローラ(図示せず)を駆動し、ワイヤWをロウ付け位置に送り込む(ステップ2402)。
制御装置は、回転軸544のトルクセンサからトルク値trを取得して(ステップ2403)、トルク値trが増大して所定の値p以上になったか否かを判断する(ステップ2404)。トルク値が増大することは、ワイヤWがロウ付け位置において、溶融していない状態で母材M1に接触していることを示す。なお、所定の値pは、予め定めておけば良い。値pが大きい方が、より多くのワイヤを供給できることになるため、上限はあるがその範囲内でpは大きいほうが望ましい。特に、所定の値pを、当該トルク値trがpであるときに対応するワイヤ供給量Wpが、1箇所のロウ付け位置でのロウ付けに必要な量となるように予め設定しておくことで、1箇所のロウ付け位置でのロウ付け回数を少なくすることができる。
ステップ2404でYesと判断された場合には、制御装置はワイヤ供給装置518のモータ(図示せず)を停止して、ワイヤWの送り込みを停止する(ステップ2405)。次いで、制御装置は、ワイヤ供給総量が、所定量A以上であるか否かを判断する(ステップ2406)。
なお、ワイヤ供給総量は、初期的には、1回のワイヤ供給量に一致する。また、本実施の形態において、所定量Aは、あるロウ付け位置でロウ付けに必要とするロウの量に相当する。また、ワイヤ供給量は、ワイヤWの先端が母材M1の上面に接触し、回転軸544のトルクセンサから取得したトルク値が増大したタイミングから、ワイヤWの送り込みが停止する(ステップ2405参照)までの、ワイヤ供給装置518のモータ軸(図示せず)の回転量から取得できる。
ステップ2406でYesと判断された場合には、制御装置は、トルク値が減少して所定の値q(p>q>0)以下になったか否かを判断する(ステップ2407)。ステップ2407でYesと判断された場合には、ワイヤWは、溶融中であり、溶融されたロウによるロウ付け位置の接合が行なわれていることになる。そこで、ステップ2407でYesと判断された場合には、制御装置は、ワイヤ供給装置518のモータを所定量だけ逆回転させて、所定量だけワイヤWを引き戻す(ステップ2408)。そのロウ付け位置におけるロウ付けは完了したと判断され、その後、制御装置は、保持・移動装置520を制御して、次のロウ付け位置までワイヤガイド512を移動させる。
ステップ2407でYesと判断された場合には、1回のロウ付けに十分な量が供給されている。したがって、溶融中のロウによりロウ付け位置において母材M1、M2がしっかりと接合される。ステップ2408は、ワイヤWの先端が、加熱機(図示せず)の炎により球状となることを防止するため、ワイヤWを炎から遠ざける必要があることから実行される。
その一方、ステップ2406でNoと判断された場合には、制御装置は、トルク値が「0」になったか否かを判断する(ステップ2409)。ステップ2409でYesと判断された場合には、ワイヤWはほぼ完全に溶融した状態となっている。ステップ2409でYesと判断された場合にも、制御装置は、ワイヤ供給装置518のモータを所定量だけ逆回転させて、ワイヤWを所定量だけ引き戻す(ステップ2410)。
次いで、制御装置は内蔵したタイマに所定の時間を設定し、タイマをスタートさせる(ステップ2501)。所定時の時間が経過すると、制御装置は、ワイヤ供給装置518のモータを再度正回転させて、ワイヤWを送り込む(ステップ2502)。
制御装置は、回転軸544のトルクセンサからトルク値trを取得して(ステップ2503)、トルク値trが増大して所定の値p以上になったか否かを判断する(ステップ2504)。ステップ2504でYesとなった場合には、制御装置は、ワイヤ供給装置518のモータを停止して、ワイヤWの送り込みを停止する(ステップ2505)。その後、制御装置は、回転軸544のトルクセンサからのトルク値trが減少したと判断すると(ステップ2506でYes)、ワイヤの供給総量が、所定量A以上であるか否かを判断する(ステップ2507)。ワイヤの供給総量は、元のワイヤの供給総量に、今回のワイヤWの送り込み(ステップ2502参照)により供給されたワイヤの供給量を加算すれば良い。
ステップ2507でYesと判断された場合には、ステップ2408に進み、制御装置は、ワイヤ供給装置518のモータ(図示せず)を所定量だけ逆回転させてワイヤWを引き戻した後、保持・移動装置520を制御して、次のロウ付け位置までワイヤガイド12を移動させる。ステップ2506でトルク値trが減少したと判断された場合には、ワイヤは溶融中であり、溶融されたロウによるロウ付け位置での接合が行なわれていることになる。このときに、ワイヤの供給総量が、当該ロウ付け位置におけるロウ付けに十分な量であれば、そのロウ付け位置におけるロウ付けは完了したと判断される。
その一方、ステップ2507でNoと判断された場合には、制御装置は、回転軸544のトルクセンサからのトルク値trがさらに減少して「0」になったか否かを判断する(ステップ2508)。ステップ2508でYesと判断されると、制御装置は、ワイヤ供給装置518のモータ(図示せず)を所定量だけ逆回転させてワイヤWを所定量だけ引き戻し、ステップ2501に戻る。このように、ワイヤ供給総量が、あるロウ付け位置におけるロウ付けに十分な量となるまで、ステップ2501〜2509が繰り返される。
本実施の形態においては、制御装置は、ワイヤWの反力を、上部アーム駆動部材534の回転軸544におけるトルク値として取得し、制御装置は、トルク値に基づいて、ワイヤWの母材への接触、および、ワイヤWの溶融を判断することができる。これにより、ワイヤWの送り込み、引き戻しを適切に制御することができる。
第6の実施の形態および第7の実施の形態においては、ワイヤWの反力を、保持・移動装置の回転軸における変位として取得したが、保持・移動装置の他の部分の変位として取得することも可能である。図26は、本発明の第8の実施の形態にかかるロウ付け装置の概略構成を示す図である。
図26に示すように、第8の実施の形態にかかるロウ付け装置610は、ワイヤガイド612、および、ワイヤガイド612を保持する保持・移動装置620を有する。ワイヤガイド612は、保持・移動装置620のワイヤガイド保持部材622を介してワイヤ供給装置618に接続される。ワイヤ供給装置618からは、中空のフレキシブルチューブ619が延びる。ワイヤWは、フレキシブルチューブ619中を通過し、ワイヤ供給装置618およびワイヤガイド612の内部をそれぞれ経て、ワイヤガイド612の先端から突出する。
保持・移動装置620は、ワイヤガイド保持部材622、アーム部材626、アーム保持部材628および旋回部材630を有する。
旋回部材630はベース632に上下方向に配置された軸(図示せず)を中心に回転可能に取り付けられる。アーム部材626の一端は、ワイヤガイド保持部材622に取り付けられる。アーム部材626は他端に駆動部材634を有し、駆動部材634は、アーム保持部材628に取り付けられたガイド部材636と係合して、制御装置からの制御信号にしたがって垂直方向(矢印2601参照)にスライドすることができる。
本実施の形態においては、アーム部材626の駆動部材634によって、ワイヤの反力により生ずる変位を検出する。図27は、本実施の形態にかかる変位検出の概略を説明する図である。本実施の形態においては、駆動部材634にリニア位置センサなどの位置センサ(図示せず)が設けられ、駆動装置634の位置を検出することができる。また、駆動装置634は、制御装置からの制御信号にしたがって、重力に抗して所望の位置で保持されるように制御され、また、重力以外の一時的な力に応じて、ガイド部材636に沿って垂直方向にスライドすることができる。
図27において実線にて示す位置が、ワイヤガイド612、アーム部材626、駆動装置634の保持された位置である。ワイヤWの先端が母材Aの上面に当接したままの状態(符号2700参照)で、ワイヤ供給装置618がワイヤを供給し続けると、ワイヤWの反力が発生し、これによって、ワイヤガイド612は上側に動かされる(符号2702参照)。ワイヤガイド612の上側の移動に伴って、ワイヤガイド612に連結されたアーム部材626も、垂直方向(矢印2703参照)に移動する。このときの変位量vを、位置センサにより検出する。
第8の実施の形態における制御装置における処理は、第6の実施の形態と略同様である。第6の実施の形態において変位角anが、所定の値X、Yなどと比較されていたが、第8の実施の形態においては、垂直方向の変位量vを、他の所定の値X’、Y’などと比較すれば良い。
第8の実施の形態によれば、制御装置は、ワイヤWの反力を、アーム部材626の駆動装置634における垂直方向の変位量として取得し、制御装置は、変位量に基づいて、ワイヤWの母材への接触、および、ワイヤWの溶融を判断することができる。これにより、ワイヤWの送り込み、引き戻しを適切に制御することができる。
さらに、ワイヤWの反力を、保持・移動装置520の部材の連結部における応力として捉えることもできる。図28は、本発明の第9の実施の形態にかかるロウ付け装置の概略構成を示す図である。
図28に示すように、第9の実施の形態にかかるロウ付け装置710は、ワイヤガイド712、および、ワイヤガイド712を保持する保持・移動装置720を有する。ワイヤガイド712は、保持・移動装置720のワイヤガイド保持部材722を介してワイヤ供給装置718に接続される。ワイヤ供給装置718からは、中空のフレキシブルチューブ719が延びる。ワイヤWは、フレキシブルチューブ719中を通過し、ワイヤ供給装置718およびワイヤガイド712の内部をそれぞれ経て、ワイヤガイド712の先端から突出する。
保持・移動装置720は、ワイヤガイド保持部材722、アーム部材726、アーム保持部材728および旋回部材730を有する。
旋回部材730はベース732に上下方向に配置された軸(図示せず)を中心に回転可能に取り付けられる。アーム部材726の一端は、ワイヤガイド保持部材722に取り付けられる。アーム部材726は、他端で連結部材734を介して、アーム保持部材728に取り付けられる。本実施の形態においては、アーム保持部材728において、連結部材734と接触した位置の近傍に、歪ゲージなどの応力検出部材736が配置されている。なお、応力検出部材736の配置する位置はこれに限定されず、アーム部材726の一端に生じた力が、応力として検出できる位置、たとえば、アーム部材726と連結部材734との接触位置(符号2801)、アーム保持部材728と旋回部材730との接触位置(符号2802)、旋回部材730とベース732との接触位置(符号2803)などに、応力検出部材736を配置しても良い。
第9の実施の形態において、ワイヤWの先端が母材Aの上面に当接したままの状態(符号2700参照)で、ワイヤ供給装置718がワイヤを供給し続けると、ワイヤWの反力が発生し、これによって、ワイヤガイド712は上側に動かされようとする。しかしながら、第9の実施の形態においては、ワイヤガイド712は、アーム部材726に固定され、かつ、アーム部材726は、連結部材734を介してアーム保持部材728と固定される。したがって、反力の大きさにしたがった歪みが生じる。第9の実施の形態では、応力検出部材736が、上記歪みを検出し、歪みの値に基づいて、ワイヤWの母材への接触、および、ワイヤWの溶融を判断する。第8の実施の形態における制御装置における処理は、第6の実施の形態と略同様である。第6の実施の形態において変位角anが、所定の値X、Yなどと比較されていたが、第8の実施の形態においては、歪みを示す値stを、他の所定の値X”、Y”などと比較すれば良い。
なお、第9の実施の形態では、保持・移動装置720は、ワイヤガイド保持部材722、アーム部材726、アーム保持部材728および旋回部材730を有するものであった(図28)。しかしながら、保持・移動装置は、上記構成に限定されず、たとえば、第6の実施の形態に記載されたように、ワイヤガイド保持部材522、先端部524、上部アーム526、下部アーム528、旋回部材530を有するような構成であっても良い(図20参照)。この場合にも、図20に示すアーム部材526の一端に生じた力が、応力として検出できる位置に、応力検出部材を配置すれば良い。