JP5409675B2 - 薄膜太陽電池およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、薄膜太陽電池およびその製造方法に関し、特に光電変換効率を向上させるための構造を有する薄膜太陽電池およびその製造方法に関する。
薄膜太陽電池は、広い波長域の太陽光を光電変換層に吸収して光電変換効率の向上が図られている。そのために光電変換ユニットの光の入射側に位置するp型導電型層にSiCxやSiOXなどのワイドバンドギャップ材料が用いられる。さらに、光電変換ユニットを2層以上積層したタンデム構造を採用することによって、より広い波長域の太陽光を光電変換層に吸収して光電変換効率の向上が図られている。光の入射側に位置する第一番目の光電変換ユニットの光電変換層は短波長領域を効率よく吸収する必要があるためSiCXやSiOXなどワイドバンドギャップ材料が用いられる。
また、p型導電型層と光電変換層の間にバッファ層を形成する技術を用いることで光電変換効率の向上がはかられている。たとえば、p型導電型層と光電変換層の間に、p型導電型層と光電変換層界面のバンドギャップの連続性を十分に保つために、両層の間の大きさのバンドギャップをもつバッファ層の挿入が行われる。このため、特許文献1では、p型導電型層に接した光電変換層の一部領域においてa−CSiGe(非晶質カーボン・シリコン・ゲルマニウム)からなり、p層側からn層側に向かってC(炭素)を漸減あるいはGe(ゲルマニウム)を漸増する技術が開示されている。
一方で、一般に、光電変換層より高いバンドギャップを有するバッファ層の挿入により、光で生成した電子が電界効果によりp型導電型層で再結合されるのを防ぐことができるため光電変換効率を向上することができる。
特開平5−167091号公報
しかしながら、上記従来の技術においては、SiOX層を用いた場合についての言及はない。従って、当然ながらSiCX層とSiOX層との界面での問題点やその解決手段についても言及されていない。
たとえば、光電変換ユニットを2層以上積層したタンデム構造において、光の入射側から第一番目の光電変換ユニットのp型導電型半導体層にSiOXを用い、同じ光電変換ユニットの光電変換層にSiCxを用い、両層の間に光電変換層より高いバンドギャップを有するSiOxをバッファ層として挿入した場合、SiOX層とSiCX層が接した界面で抵抗が増大し、太陽電池の出力特性を低下させるという問題が発生する。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光電変換ユニットを1層或いは2層以上積層したタンデム構造の薄膜太陽電池において光電変換効率に優れた薄膜太陽電池を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、透光性絶縁基板と、前記透光性絶縁基板の上に形成された透明導電膜と、前記透明導電膜の上に形成され、Si原子とO原子とを含むp型導電型半導体層と、前記p型導電型半導体層の上に形成され、Si原子とO原子とC原子とを含む層を有し且つO原子濃度が前記p型導電型半導体層のO原子濃度以下であるバッファ層と、前記バッファ層の上に形成され、Si原子とC原子とを含み且つ前記バッファ層よりO原子濃度が低い光電変換層と、前記光電変換層の上に形成されたn型導電型半導体層とを備え、前記バッファ層は、前記光電変換層よりバンドギャップが高く、前記p型導電型半導体層との界面から前記光電変換層との界面に向けてO原子濃度が非増加であり且つO原子濃度が減少する領域を含むことを特徴とする。
本発明によれば、光電変換層より高いバンドギャップを有するバッファ層において、Oを含む層とCを含む層が接する界面を挟んで両層のO及びC原子濃度の変化を少なく抑えられるため、抵抗の増加を抑えられ、光電変換効率に優れた薄膜太陽電池が得られるという効果を奏する。
図1は、本発明の実施の形態1にかかる薄膜太陽電池の構成を示す断面図である。 図2−1は、本発明の実施の形態1の薄膜太陽電池におけるp型導電型半導体層からバッファ層に接する光電変換層の一部領域までのC(炭素)およびO(酸素)の原子濃度を示す図である。 図2−2は、本発明の実施の形態1の薄膜太陽電池におけるバッファ層およびバッファ層に接する光電変換層の一部領域までのバンドギャップを示す図である。 図2−3は、本発明の実施の形態1の薄膜太陽電池におけるp型導電型半導体層からバッファ層に接する光電変換層の一部領域までのC(炭素)およびO(酸素)の原子濃度を示す別の図である。 図2−4は、本発明の実施の形態1の薄膜太陽電池におけるバッファ層およびバッファ層に接する光電変換層の一部領域までのバンドギャップを示す別の図である。 図3−1は、比較例の薄膜太陽電池におけるp型導電型半導体層からバッファ層に接する光電変換層の一部領域までのC(炭素)およびO(酸素)の原子濃度を示す図である。 図3−2は、比較例の薄膜太陽電池におけるバッファ層およびバッファ層に接する光電変換層の一部領域までのバンドギャップを示す図である。 図4−1は、本発明の実施の形態1にかかる薄膜太陽電池の製造工程の一例を説明する断面図である。 図4−2は、本発明の実施の形態1にかかる薄膜太陽電池の製造工程の一例を説明する断面図である。 図4−3は、本発明の実施の形態1にかかる薄膜太陽電池の製造工程の一例を説明する断面図である。 図4−4は、本発明の実施の形態1にかかる薄膜太陽電池の製造工程の一例を説明する断面図である。 図5は、本発明の実施の形態1の実施例1、2及び比較例の薄膜太陽電池の構成を示す断面図である。 図6は、本発明の実施の形態1の実施例1、2及び比較例の薄膜太陽電池の各層のO原子濃度、C原子濃度およびバンドギャップを示す図である。 図7は、本発明の実施の形態1の実施例1、2及び比較例の薄膜太陽電池の各層の短絡電流密度(mA/cm2)、開放端電圧(V)、フィルファクター、光電変換効率(%)の測定結果を示す図である。 図8−1は、本発明の実施の形態2の薄膜太陽電池におけるp型導電型半導体層からバッファ層に接する光電変換層の一部領域までのC(炭素)およびO(酸素)の原子濃度を示す図である。 図8−2は、本発明の実施の形態2の薄膜太陽電池におけるバッファ層およびバッファ層に接する光電変換層の一部領域までのバンドギャップを示す図である。
以下に、本発明にかかる薄膜太陽電池およびその製造方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す図面においては、理解の容易のため、各部材の縮尺が実際とは異なる場合がある。各図面間においても同様である。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる薄膜太陽電池10の構成を示す断面図である。実施の形態1にかかる薄膜太陽電池10は、透光性絶縁基板1上に順次積層された、第1電極層となる透明導電膜2、第1光電変換ユニット3、第2光電変換ユニット4、第3光電変換ユニット5、および第2電極層となる裏面電極層6を含んでいる。透光性絶縁基板1側から入射した光が薄膜太陽電池10内で光電変換される。
第1光電変換ユニット3は、透明導電膜2側から順に積層された第1p型導電型半導体層31、バッファ層34、第1光電変換層32、第1n型導電型半導体層33を備える。同様に、第2光電変換ユニット4は、透明導電膜2側から順に積層された第2p型導電型半導体層41、第2光電変換層42、第2n型導電型半導体層43を備える。同様に、第3光電変換ユニット5は、透明導電膜2側から順に積層された第3p型導電型半導体層51、第3光電変換層52、第3n型導電型半導体層53を備える。
透光性絶縁基板1としては、例えば透光性を有するガラス基板やフィルム等を用いる。ガラス基板には、無アルカリガラス基板を用いてもよく、また、安価な青板ガラス基板を用いてもよい。より多くの太陽光を透過して第1光電変換層32、第2光電変換層42、第3光電変換層52に吸収させるために、透光性絶縁基板1はできるだけ透明で光透過性が高いことが好ましい。また、同様の意図から、太陽光が入射する側の透光性絶縁基板1の表面に、光反射ロスを低減させるように無反射コーティングを行うことによって光電変換効率の高効率化を図ってもよい。
透明導電膜2としては、透明導電性酸化物が用いられる。透明導電性酸化物を構成する材料としては、例えばSnO2、In23、ZnO、CdO、CdIn24、CdSnO3、MgIn24、CdGa24、GaInO3、InGaZnO4、Cd2Sb27、Cd2GeO4、CuAlO2、CuGaO2、SrCu22、TiO2、Al23を使用することができ、またこれらを積層して形成した透明導電膜を使用することもできる。
透明導電膜2も光の入射側に位置するため、透光性絶縁基板1と同様に極力光透過性が高いことが好ましい。透明導電膜2中のドーパントとしては、Al、Ga、In、B、Y、Si、Zr、Ti、Fから選択した少なくとも1種類以上の元素を用いる。また、透明導電膜2の表面にはテクスチャー構造として凹凸が形成されていることが好ましい。この表面凹凸の形状やサイズは、材料の成膜条件や化学的処理により制御できる。透光性絶縁基板1と透明導電膜2との界面には、反射防止層を含んでもよい。
なお、図1に示す本実施の形態にかかる薄膜太陽電池10は、第1光電変換ユニット3、第2光電変換ユニット4、および第3光電変換ユニット5の3つの光電変換ユニットを含んでいるが、光電変換ユニットの数は3つに限定されない。すなわち、薄膜太陽電池10は、複数の光電変換ユニットが積層された構成を含んでいればよく、2つの光電変換ユニットが積層された構成を含んでいてもよく、あるいはまた、4つ以上の光電変換ユニットが積層されて構成を含んでいるのでもよい。
また、光電変換ユニットの間に挿入されて光の一部を反射、散乱させるために機能する層である中間層が、光電変換ユニット間の境界の全てまたは任意の位置に選択して挿入されていてもよい。
第1光電変換ユニット3は、上述の通り、透明導電膜2側から順に積層された第1p型導電型半導体層31、バッファ層34、第1光電変換層32、および第1n型導電型半導体層33を含んだ構成である。
第1p型導電型半導体層31の材料は、ボロン(B)などのIII属元素を不純物として含み、非晶質または微結晶のSiOX(Xは0より大きく2以下)が用いられる。SiOXは、シリコン膜中に酸素原子が存在し、該酸素原子とシリコン原子とが結合した状態で存在する膜である。このような第1p型導電型半導体層31の膜厚は、1nm〜50nmの範囲であることが好ましい。
第1光電変換層32の材料としては、i型非晶質SiCX(Xは0より大きく1以下)が用いられる。また、第1光電変換層32の膜厚は、100nm〜1μmの範囲にあることが好ましい。光電変換層中のC原子濃度は、n型導電型半導体層に向けた膜厚方向に増加してもよいしまた減少してもよい。また、一旦増加してから減少してもよいし、さらに、そこから増加してもよい。
バッファ層34の材料は、光の入射側から第1光電変換層32に向かって順にSiOX層(Xは0より大きく2以下)とSiOXY層(Xは0より大きく2以下、Yは0より大きく1以下)の積層として構成される。SiOX層(Xは0より大きく2以下)とSiOXY層(Xは0より大きく2以下、Yは0より大きく1以下)は第1光電変換層32より高いバンドギャップを有している。この様子は、第1p型導電型半導体層31からバッファ層34に接する第1光電変換層32の一部領域までのC(炭素)およびO(酸素)の原子濃度(任意単位)を示す図2−1と、バッファ層34およびバッファ層34に接する第1光電変換層32の一部領域までのバンドギャップ(任意単位)を示す図2−2に示される。
図2−1に示すように、第1p型導電型半導体層31からバッファ層34と接する第1光電変換層32の一部領域までO(酸素)原子濃度を漸減させる。その結果、Oを含む層がC(炭素)を含む層と接する界面を挟んで両層のO原子濃度の変化を小さく抑えることができ、抵抗の増加を抑制することができる。
さらに、図2−1におけるSiOXY層を多層化(2層化)して図2−3に示すようにSiOXY層のO原子濃度(任意単位)を第1光電変換層32に向けた膜厚方向に減少させた上で、SiOXY層のC原子濃度(任意単位)を第1光電変換層32に向けた膜厚方向に増加させる。このときのバッファ層34およびバッファ層34に接する第1光電変換層32の一部領域までのバンドギャップ(任意単位)を図2−4に示す。
その結果、Oを含む層がCを含む層と接する界面を挟んで両層のO原子濃度の変化を小さく抑えることができることに加え、Cを含む層がOを含む層と接する界面を挟んで両層のC原子濃度の変化を小さく抑えることができるようになる。これにより抵抗の増加をさらに抑制することができる。
上記したバッファ層34の構成によって抵抗の増加を抑制できる理由は、一般にOを含む層とCを含む層が接する界面では、Siのネットワークが不連続となり抵抗を増加させる要因となるのであるが、本実施の形態によりその界面を挟んだ両層の間においてO原子濃度及びC原子濃度の変化を小さくして序々に近づけるようにすることで連続性が向上し、抵抗増加を抑制できるためである。
ここで、Oを含む層がCを含む層と接する界面を挟んだ両層のO原子濃度の変化は2%以下であることが好ましい。また、Cを含む層がOを含む層と接する界面を挟んだ両層のC原子濃度の変化は1.7%以下であることが好ましい。これらの値以下に抑えれば、抵抗増加を抑えられ、出力特性に影響を与えないからである。
バッファ層34は、微結晶、非晶質いずれでも良いが、非晶質の方が好ましい。これにより、高いバンドギャップが得られやすいためバッファ層のO原子濃度やC原子濃度を減らすことができる。その結果、Cを含む層やOを含む層がそれぞれ、Oを含む層やCを含む層と接する界面を挟んだ両側の層の間でのCおよびOの原子濃度変化を抑えられるので、抵抗の増加を抑制できる。
第1n型導電型半導体層33の材料としては、例えばリンなどのV属元素を不純物として含む、非晶質または微結晶のシリコンが挙げられる。第1n型導電型半導体層33膜厚は、10nm〜50nmの範囲である。
第2光電変換ユニット4は、上述したように透明導電膜2の側から順に積層された第2p型導電型半導体層41、第2光電変換層42、および第2n型導電型半導体層43により構成される。
第2p型導電型半導体層41の材料は、ボロン(B)などのIII属元素を不純物として含み、例えば非晶質または微結晶のSiCX(Xは0より大きく1以下)、非晶質または微結晶のSiOX(Xは0より大きく2以下)などが挙げられる。膜厚は、5nm〜50nmの範囲にあることが好ましい。
第2光電変換層42の材料としては、例えばi型非晶質シリコンゲルマニウム、i型非晶質または微結晶のシリコンなどが挙げられる。
第2n型導電型半導体層43の材料としては、例えばリンなどのV属元素を不純物として含む、非晶質または微結晶のシリコンが挙げられる。
第3光電変換ユニット5は、上述したように透明導電膜2の側から順に積層された第3p型導電型半導体層51、第3光電変換層52、および第3n型導電型半導体層53により構成される。
第3p型導電型半導体層51の材料は、ボロン(B)などのIII属元素を不純物として含み、例えば非晶質または微結晶のSiCX(Xは0より大きく1以下)、非晶質または微結晶のSiOX(Xは0より大きく2以下)、非晶質または微結晶のシリコンなどが挙げられる。
第3光電変換層52の材料としては、例えばi型微結晶シリコンやi型微結晶シリコンゲルマニウムなどが挙げられる。
第3n型導電型半導体層53の材料としては、例えばリンなどのV属元素を不純物として含む、非晶質または微結晶のシリコンが挙げられる。
上記した第1光電変換層32、第2光電変換層42および第3光電変換層52は、光を吸収して光電変換する役割を担うので、互いに異なるバンドギャップ、すなわち異なる吸収波長領域を有することが好ましい。また、第1光電変換ユニット3、第2光電変換ユニット4および第3光電変換ユニット5の各層を構成する薄膜の成膜方法は特に限定されないが、例えばプラズマCVD法、加熱職媒体を用いたCVD法、熱CVD法や反応性スパッタリングのいずれかの手法が好ましい。
裏面電極層6は、光を反射する導電膜からなる。裏面電極層6は、可視光から赤外光までの光に対して高い反射率を有し、高い導電性を有することが好ましい。このような材料としては、例えばアルミニウム(Al)や銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)および白金(Pt)からなる群より選択される少なくとも1種の金属またはこれらを含む合金が挙げられる。
また、第3光電変換ユニット5のシリコンへの金属拡散を防止するために、第3光電変換ユニット5と裏面電極層6との間に酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム錫(ITO:Indium Tin Oxide)、酸化スズ(SnO2)等の透明導電膜を挿入してもよい。裏面電極層6は、例えばスパッタ法、CVD法やスプレー法など公知の手段によって形成される。このようにして、図1に示すような薄膜太陽電池10が形成される。
つぎに、上記のように構成された本実施の形態にかかる図1に示した薄膜太陽電池10の製造方法について図4−1〜図4−4を参照して詳細に説明する。図4−1〜図4−4は、実施の形態1にかかる薄膜太陽電池10の製造工程の一例を説明するための断面図である。
まず、図4−1に示す透光性絶縁基板1を用意する。ここでは、透光性絶縁基板1として無アルカリガラス基板を用いて以下説明する。また、透光性絶縁基板1として安価な青板ガラス基板を用いてもよいが、この場合は、透光性絶縁基板1からのアルカリ成分の拡散を防止するためにPCVD法などによりSiO2膜を50nm程度形成するのがよい。
つぎに、酸化スズ(SnO2)膜を熱CVD法により透光性絶縁基板1上に製膜し、表面にマクロな凹凸を有する透明導電膜2を形成する(図4−1)。透明導電膜2を形成する方法として真空蒸着法、イオンプレーティング法などの物理的方法や、スプレー法、ディップ法、CVD法などの化学的方法を用いてもよい。また、結晶粒の大きさの制御や膜の移動度を向上させるために熱処理を行っても良い。
この後、透明導電膜2上に第1光電変換ユニット3、第2光電変換ユニット4、第3光電変換ユニット5を順にプラズマCVD法により形成する。
まず、透明導電膜2上に、第1p型導電型半導体層31としての厚さ15nmのp型非晶質SiOX膜を形成する(図4−2)。
つぎに、バッファ層34をSiOX、SiOXYと積層する。SiOXの膜厚は1〜20nm、SiOXYの膜厚は1〜20nmである。
SiOXの製膜条件は、例えば以下の条件とすることにより、膜中に所望のO原子濃度と所望のバンドギャップが得られる。
基板温度:200℃
圧力:2.5Torr
電力:50W
反応ガス流量:H2=80sccm
SiH4=24〜56sccmの間
CO2=56〜24sccmの間
SiOXYの製膜条件は、例えば以下の条件とすることにより、膜中に所望のO、C原子濃度と所望のバンドギャップが得られる。
基板温度:200℃
圧力:2.5Torr
電力:50W
反応ガス流量:H2=80sccm
SiH4=40〜32sccmの間
CO2=24〜16sccmの間
CH4=16〜32sccmの間
バッファ層34に引き続き、第1光電変換層32としての厚さ300nmのi型非晶質SiCX膜、第1n型導電型半導体層33としての厚さ30nmのn型導電型半導体層を順次形成する(図4−2)。
つぎに、第1光電変換ユニット3上に第2光電変換ユニット4を形成する(図4−3)。第2光電変換ユニット4の形成は、第2p型導電型半導体層41としての厚さ20nmのp型非晶質SiCX膜、第2光電変換層42としての厚さ150nmのi型非晶質シリコンゲルマニウム膜、第2n型導電型半導体層43としての厚さ30nmのn型微結晶シリコン膜を第1光電変換ユニット3上に順次積層形成する。
つぎに、第2光電変換ユニット4上に第3光電変換ユニット5を形成する(図4−4)。第3光電変換ユニット5の形成は、第3p型導電型半導体層51としての厚さ20nmのp型非晶質SiCX膜、第3光電変換層52としての厚さ2μmのi型微結晶シリコン膜、第3n型導電型半導体層53としての厚さ30nmのn型微結晶シリコン膜を第2光電変換ユニット4上に順次積層形成する。
更に、本実施形態におけるバッファ層34の材料が、第1光電変換層32より高いバンドギャップを有するSiO層として構成される場合に、例えば、図8−1および図8−2に示すように、第1p型導電型層31のバッファ層34側の領域から第1光電変換層32のバッファ層34側の領域までO原子濃度を第1光電変換層32に向けた膜厚方向に減少させる。つまりバッファ層34のO原子濃度は第1p型導電型層31のO原子濃度以下であり、O原子濃度が第1p型導電型層31から第1光電変換層32に向けて傾斜して減少し、第1光電変換層32のO原子濃度はバッファ層34のO原子濃度よりも少ない。
この結果、第1p型導電型層31とバッファ層34との界面およびバッファ層と第1光電変換層32との界面の抵抗増加を抑制することができる。
つぎに、第3光電変換ユニット5(第3n型導電型半導体層53)の上に裏面電極層6をスパッタリング法により形成する(図1)。本実施の形態では、裏面電極層6として膜厚300nmのアルミニウム(Al)膜を形成するが、高光反射率を有する銀(Ag)膜を用いてもよく、シリコンへの金属拡散を防止するために第3光電変換ユニット5と裏面電極層6との間に酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム錫(ITO)、酸化スズ(SnO2)等の透明導電膜を形成してもよい。以上により、図1に示すような薄膜太陽電池10が完成する。
つぎに、本実施の形態にかかる薄膜太陽電池の製造方法により作製した薄膜太陽電池の実施例および比較例の特性評価について説明する。
ここでは、上述した実施の形態1にかかる薄膜太陽電池の製造方法において、図1から第2光電変換ユニット4および第3光電変換ユニット5を省略して図5に示す薄膜太陽電池11を作製して以下に示す実施例1、2および比較例とした。即ち、第1光電変換ユニット3の形成後、第1n型導電型半導体層33の上に上述した裏面電極層6をスパッタリング法により形成して薄膜太陽電池11を完成させた。
(実施例1)
バッファ層34を図2−1および図2−2に示すようにSiOX層(第1バッファ層)とSiOXY層(第2バッファ層)を積層する構造とした。上述したようにSiH4/CO2/CH4のガス流量を増減させることにより、図6に示すO原子濃度、C原子濃度およびバンドギャップを有するSiOX層(第1バッファ層)およびSiOXY層(第2バッファ層)が得られた。
(実施例2)
バッファ層34を図2−3および図2−4に示すようにSiOX層(第1バッファ層)と、2層のSiOXY層(第2、第3バッファ層)を積層する構造とした。上述したようにSiH4/CO2/CH4のガス流量を増減させることにより、図6に示すO原子濃度、C原子濃度およびバンドギャップを有するSiOX層(第1バッファ層)およびSiOXY層(第2、第3バッファ層)が得られた。
(比較例)
バッファ層34を図3−1および図3−2に示すようにSiOX層(第1バッファ層)の単層とした。SiH4/CO2のガス流量を調整して、図6に示すO原子濃度およびバンドギャップを有するSiOX層(第1バッファ層)が得られた。
これら実施例1、2および比較例の薄膜太陽電池11に対して、スペクトル分布AM1.5、エネルギー密度100mW/cm2の擬似太陽光を、試料温度が25℃±1℃の下で透光性絶縁基板1側から照射した。そして、透明導電膜2にコンタクト領域を通じて接触させた正極プローブと裏面電極層6に接触させた負極プローブの間の電圧および電流を測定することで、薄膜太陽電池11の出力特性を測定した。実施例1、2および比較例の薄膜太陽電池11について、短絡電流密度(mA/cm2)、開放端電圧(V)、フィルファクター、光電変換効率(%)の測定結果を図7に示す。
図7に示すように実施例1の薄膜太陽電池11では、短絡電流が11.8mA/cm2、開放電圧が1.01V、フィルファクターが71、光電変換効率が8.5%であり、実施例2の薄膜太陽電池では、短絡電流が11.8mA/cm2、開放電圧が1.01V、フィルファクターが73、光電変換効率が8.7%であった。比較例の薄膜太陽電池では、短絡電流密度が11.7mA/cm2、開放端電圧が1.0V、フィルファクターが65、光電変換効率が7.6%であった。
図7において実施例1と比較例とを比較することにより、実施例1の方が、フィルファクターが大きく増加し、光電変換効率が大きく増加していることがわかる。これは、Oを含む層とCを含む層が接する界面を挟んで両層のO原子濃度の変化を少なく抑えられ、抵抗の増加を抑えられたためと考えられる。
また、実施例1と実施例2とを比較することにより、実施例2の方が、フィルファクターおよび光電変換効率が更に増加していることがわかる。これは、Oを含む層とCを含む層が接する界面を挟んで両層のO及びC原子濃度の変化を少なく抑えられ、抵抗の増加を抑えられたためと考えられる。
このように、第1光電変換層32より高いバンドギャップを有するSiOX層とSiOXY層が積層したバッファ層34を挿入することで、薄膜太陽電池11の光電変換効率を向上させることが可能となる。
実施の形態2.
本実施形態にかかる薄膜太陽電池の基本的な構成は、図1に示した実施の形態1にかかる薄膜太陽電池10と同様である。しかし、バッファ層34の構成が実施の形態1とは異なる。
本実施形態におけるバッファ層34の材料は、第1光電変換層32より高いバンドギャップを有するSiOXY層として構成される。例えば、図8−1および図8−2に示すように2種類のSiOXY層の積層によりバッファ層34を構成することにより、SiOXY層のO原子濃度を第1光電変換層32に向けた膜厚方向に減少させた上で、SiOXY層のC原子濃度を第1光電変換層32に向けた膜厚方向に増加させる。
この結果、Oを含む層とCを含む層が接する界面を挟んで両層のO及びC原子濃度の変化を少なく抑えられるため、抵抗の増加を抑制することができる。
更に、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上記実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出されうる。
例えば、上記実施の形態1および2それぞれに示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出されうる。更に、上記実施の形態1および2にわたる構成要件を適宜組み合わせてもよい。
以上のように、本発明にかかる薄膜太陽電池およびその製造方法は、p型導電型半導体層と光電変換層の間にバッファ層を備えた薄膜太陽電池に有用であり、特に、光電変換層に短波長領域を効率よく吸収させるワイドバンドギャップ材料を用いた薄膜太陽電池に適している。
1 透光性絶縁基板
2 透明導電膜
3 第1光電変換ユニット
4 第2光電変換ユニット
5 第3光電変換ユニット
6 裏面電極層
10、11 薄膜太陽電池
31 第1p型導電型半導体層
32 第1光電変換層
33 第1n型導電型半導体層
34 バッファ層
41 第2p型導電型半導体層
42 第2光電変換層
43 第2n型導電型半導体層
51 第3p型導電型半導体層
52 第3光電変換層
53 第3n型導電型半導体層

Claims (15)

  1. 透光性絶縁基板と、
    前記透光性絶縁基板の上に形成された透明導電膜と、
    前記透明導電膜の上に形成され、Si原子とO原子とを含むp型導電型半導体層と、
    前記p型導電型半導体層の上に形成され、Si原子とO原子とC原子とを含む層を有し且つO原子濃度が前記p型導電型半導体層のO原子濃度以下であるバッファ層と、
    前記バッファ層の上に形成され、Si原子とC原子とを含み且つ前記バッファ層よりO原子濃度が低い光電変換層と、
    前記光電変換層の上に形成されたn型導電型半導体層と
    を備え、
    前記バッファ層は、前記光電変換層よりバンドギャップが高く、前記p型導電型半導体層との界面から前記光電変換層との界面に向けてO原子濃度が非増加であり且つO原子濃度が減少する領域を含む
    ことを特徴とする薄膜太陽電池。
  2. 前記バッファ層は、前記p型導電型半導体層と前記Si原子とO原子とC原子とを含む層との間にさらにSi原子とO原子を含む層を有する
    ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜太陽電池。
  3. 前記バッファ層は、前記p型導電型半導体層との界面から前記光電変換層との界面に向けてC原子濃度が非減少であり且つC原子濃度が増加する領域を含む
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜太陽電池。
  4. 前記Si原子とO原子とC原子とを含む層は、前記O原子濃度が減少する領域と前記C原子濃度が増加する領域とを含む
    ことを特徴とする請求項3に記載の薄膜太陽電池。
  5. O原子濃度が不連続に変化する前記O原子濃度が減少する領域において、O原子濃度の変化が2%以下である
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄膜太陽電池。
  6. C原子濃度が不連続に変化する前記C原子濃度が増加する領域において、C原子濃度の変化が1.7%以下である
    ことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の薄膜太陽電池。
  7. 前記n型導電型半導体層の上に、
    別のp型導電型半導体層と別の光電変換層と別のn型導電型半導体層とからなる光電変換ユニットを1ユニット或いは複数ユニットさらに備えた
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の薄膜太陽電池。
  8. 透光性絶縁基板の上に透明導電膜を形成する工程と、
    前記透明導電膜の上にSi原子とO原子とを含むp型導電型半導体層を形成する工程と、
    前記p型導電型半導体層の上にSi原子とO原子とC原子とを含む層を有し且つO原子濃度が前記p型導電型半導体層のO原子濃度以下であるバッファ層を形成する工程と、
    前記バッファ層の上にSi原子とC原子とを含み且つ前記バッファ層よりO原子濃度が低い光電変換層を形成する工程と
    を備え、
    前記バッファ層を形成する工程において、反応ガスの流量を変化させることにより、前記バッファ層が前記光電変換層よりバンドギャップが高く、前記p型導電型半導体層との界面から前記光電変換層との界面に向けてO原子濃度が非増加であり且つO原子濃度が減少する領域を含むように形成する
    ことを特徴とする薄膜太陽電池の製造方法。
  9. 前記バッファ層を形成する工程において、前記Si原子とO原子とC原子とを含む層を形成する前に、前記p型導電型半導体層の上にSi原子とO原子を含む層を形成する
    ことを特徴とする請求項8に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
  10. 反応ガスの流量を変化させることにより、前記バッファ層を、前記p型導電型半導体層との界面から前記光電変換層との界面に向けてC原子濃度が非減少であり且つC原子濃度が増加する領域を含むように形成する
    ことを特徴とする請求項8または9に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
  11. 反応ガスの流量を変化させることにより、前記Si原子とO原子とC原子とを含む層を、前記O原子濃度が減少する領域と前記C原子濃度が増加する領域とを含むように形成する
    ことを特徴とする請求項10に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
  12. 反応ガスの流量を変化させることにより、O原子濃度が不連続に変化する前記O原子濃度が減少する領域において、O原子濃度の変化が2%以下となるようにする
    ことを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
  13. 反応ガスの流量を変化させることにより、C原子濃度が不連続に変化する前記C原子濃度が増加する領域において、C原子濃度の変化が1.7%以下となるようにする
    ことを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
  14. 前記光電変換層の上にn型導電型半導体層を形成する工程をさらに備える
    ことを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
  15. 前記n型導電型半導体層の上に、
    別のp型導電型半導体層と別の光電変換層と別のn型導電型半導体層とからなる光電変換ユニットを1ユニット或いは複数ユニット形成する工程をさらに備えた
    ことを特徴とする請求項14に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
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