JP5409475B2 - 円筒状摺動部材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、シリンダライナ等の円筒状摺動部材に関する。
シリンダライナに代表される円筒状摺動部材は、その内周壁がピストンリングにより繰り返しの摺動摩擦を受けることや高温に晒されること等から、耐摩耗性、耐スカッフ性、強度を考慮して、鋳鉄により製造されることが普通であった。最近になり、自動車部品の軽量化が急務となってきたことや熱伝導性の改良が要求されていること等から、アルミニウム合金が選定されている。
特許文献1は、遠心鋳造により作製した中空部材を記載している。回転する円筒状金型内にアルミニウム合金粉末を供給して外側円筒形状体を先ず成形し、次に、外側円筒形状体の内部にAl−Si系合金の溶湯を供給して、外側円筒形状体に内側円筒形状体を積層した中空部材を作製する。これにより、微細な初晶Siが略均等に分散した組織を内周側に得られる。特許文献2は、内周にアルミ系金属部分とセラミックス部分が露呈したアルミシリンダを記載している。
特開2008−221308号公報 特公平4−038947号公報
過共晶Al−Si系合金において合金中のSi含有量が増すと耐摩耗性が向上する。しかしながら、Si含有量が増加すると鋳造性が悪化するため、鋳造モノブロック構造のアルミシリンダや鋳造多連アルミシリンダにおいては、Si含有量の上限は20%程度にとどまっている。すなわち、特許文献1の中空部材は、Si含有量を20%程度より増やすことは実質的に不可能であり、耐摩耗性の一層の向上は困難である。特許文献2のシリンダは、摺動特性が優れているが、難加工材であるセラミックスを複合するため加工性が悪く、加工に用いる刃具を摩耗させる欠点を有している。また、基材と強化材との分離が難しく、リサイクル性が悪いという問題も有している。
本発明の目的は、耐摩耗性等の摺動特性及び加工性に優れた円筒状摺動部材、及びその製造方法を提供することである。
上記課題を解決するために本発明は次の解決手段を採る。すなわち、
本発明は、アルミニウム合金基材中に、基材より多くの比率でSiを合金中に含有する過共晶Al−Si系合金粒子を含んでいる円筒状摺動部材であって、前記過共晶Al−Si系合金粒子のSi含有量が質量%で25%以上、45%以下であり、前記過共晶Al−Si系合金粒子が面積率20%以上、60%以下の割合で内周摺動面に分散していることを特徴とする。
過共晶Al−Si系合金粒子の面積率を20%以上、60%以下とすることにより、基材単体と比較して耐摩耗性が向上する。過共晶Al−Si系合金粒子の面積率が20%未満であると、有効な耐摩耗性の効果が得られない。面積率が60%を越えると、粒子を強固に複合させることが困難になり、その後の加工時に過共晶Al−Si系合金粒子が脱落し、強度、剛性が低下する等の不具合を生じる。
過共晶Al−Si系合金粒子の粒度の篩目開きは0.5mm以上、2.5mm以下であることが好ましい。過共晶Al−Si系合金粒子の粒度の篩目開きを上記の値とすることにより、必要とされる複合材厚さを確保でき、過共晶Al−Si系合金粒子の脱落を防ぎ、加工性を良好にする。粒度の篩目開きが0.5mm未満であると、アルミニウム合金溶湯が過共晶Al−Si系合金粒子の間に浸透しにくくなり、必要とされる複合材厚さを確保することが困難になるとともに、溶湯含浸時に溶失するといった問題が生じやすい。また、過共晶Al−Si系合金粒子がアルミニウム合金基材に強固に保持されないため、その後の加工時に過共晶Al−Si系合金粒子が脱落しやすい問題を生じる。粒度の篩目開きが2.5mmを越えると、複合材作製後の加工時における切削抵抗が増し、加工効率が低下する他、過共晶Al−Si系合金粒子の脱落も生じやすくなる。
前記過共晶Al−Si系合金粒子のSi含有量は質量%で25%以上、特に30%以上、45%以下であることが好ましい。特に、過共晶Al−Si系合金粒子のSi含有量が30質量%以上で有効な耐摩耗性の効果が得られる。過共晶Al−Si系合金粒子のSi含有量が45質量%を越えると、粒子製造時に高温溶解が必要になる他、粒子硬度が高くなり過ぎることや粒子が脆くなることなどから、加工性が悪化するなどの不具合を生じる。
なお、過共晶Al−Si系合金粒子のSi含有量は25質量%以上、特に30質量%以上とすることが好ましいと規定したが、過共晶Al−Si系合金が粒子状であるため、粒子内に鋳造欠陥が発生したとしても製品内を貫通する孔となることは殆どなく、微小なクローズド孔となるため、製品全体の機能や品質を損なうことはない。基材のSi含有量を高めずに、より高Siの材料と同等又はそれ以上の特性を得ることができることが特徴である。
基材となるアルミニウム合金のSi含有量は質量%で14%以上、25%以下であることが好ましい。アルミニウム合金基材のSi含有量が14質量%以上で有効な耐摩耗性の効果が得られる。アルミニウム合金基材のSi含有量が25質量%を越えると、高温溶解が必要となるばかりか、製造時にピットなどの鋳造欠陥が増加しやすくなることから、アルミニウム合金基材のSi含有量は25質量%以下が好ましい。基材となるアルミニウム合金のSi含有量が14質量%以上で、しかも内周摺動面に分散する過共晶Al−Si系合金粒子の面積率が25%以上であると、優れた耐摩耗性を得ることができる。
前記円筒状摺動部材としてはシリンダライナが挙げられるが、これに限られることはない。
前記円筒状摺動部材は遠心鋳造や金型加圧鋳造などによって製造できる。
遠心鋳造によって円筒状摺動部材を作製する本発明の円筒状摺動部材の製造方法は、
回転する円筒状金型の内部に粒度の篩目開きが0.5mm以上、2.5mm以下であり、Si含有量が質量%で25%以上、45%以下の過共晶Al−Si系合金粒子を供給して、金型の内周面に過共晶Al−Si系合金粒子層を形成する工程と、
前記過共晶Al−Si系合金粒子より少ない比率でSiを合金中に含有する溶融アルミニウム合金を、前記過共晶Al−Si系合金粒子層が形成された回転する金型内部に供給して、過共晶Al−Si系合金粒子層の粒子間の隙間に遠心力によってアルミニウム合金の溶湯を含浸させ、円筒状部材を鋳造する工程と、
を有することを特徴とする。
過共晶Al−Si系合金粒子はアルミニウム合金基材より多くの比率でSiを合金中に含むことにより、粒子の液相線温度は基材となるアルミニウム合金溶湯の液相線温度よりも高温になり、粒子の融点が基材の融点よりも高くなる。そのため、注湯後速やかに凝固を完了させれば、粒子は完全に溶融することなく、基材中に残存することができる。
本発明は次の製造方法を採用してもよい。すなわち、
遠心鋳造によって円筒状摺動部材を作製する本発明の円筒状摺動部材の製造方法は、
回転する円筒状金型の内部に粒度の篩目開きが0.5mm以上、2.5mm以下の共晶又は共晶近傍組成のアルミニウム合金粒子を供給して、金型の内周面にアルミニウム合金粒子層を形成する工程と、
前記アルミニウム合金粒子層が形成された回転する円筒状金型の内部に粒度の篩目開きが0.5mm以上、2.5mm以下であり、Si含有量が質量%で25%以上、45%以下の過共晶Al−Si系合金粒子を供給して、金型の内周面のアルミニウム合金粒子層上に過共晶Al−Si系合金粒子層を形成する工程と、
前記過共晶Al−Si系合金粒子より少ない比率でSiを合金中に含有する溶融アルミニウム合金を前記アルミニウム合金粒子層と過共晶Al−Si系合金粒子層とが形成された回転する金型内部に供給して、過共晶Al−Si系合金粒子層の粒子間の隙間とアルミニウム合金粒子層の粒子間の隙間とに遠心力によってアルミニウム合金の溶湯を含浸させ、円筒状部材を鋳造する工程と、
を有することを特徴とする。
最初に共晶又は共晶近傍組成のアルミニウム合金粒子を投入することで、円筒状部材の最外周部のアルミニウム合金層が、融点の低いアルミニウム合金からなるシリンダブロック等の部材と接合しやすくなる。
本発明の円筒状摺動部材は、耐摩耗性等の摺動特性及び加工性に優れる。また、過共晶Al−Si系合金粒子が基材と同じく、アルミニウム合金であるため、リサイクル性に優れる。特に、本発明の円筒状摺動部材は、アルミニウム合金基材のSi含有量を高めずに、より高Siのアルミニウム合金材料と同等又はそれ以上の摺動特性を得ることができる点に特徴を有している。
本発明の一実施形態であるシリンダライナを示す縦断面図である。 上記シリンダライナの内周摺動面の一部分を示す写真である。 遠心鋳造において過共晶Al−Si系合金粒子を供給する工程を示す縦断面図である。 過共晶Al−Si系合金粒子供給後の円筒状金型の縦断面図である。 遠心鋳造においてアルミニウム合金溶湯を供給する工程を示す縦断面図である。 円筒状金型から取り出された円筒状部材を示す縦断面図である。 過共晶Al−Si系合金粒子の面積率と耐摩耗性との関係を示すグラフである。 過共晶Al−Si系合金粒子のSi含有量と耐摩耗性との関係を示すグラフである。 基材となるアルミニウム合金のSi含有量と耐摩耗性との関係を示すグラフである。 遠心鋳造においてアルミニウム合金粒子を供給する工程を示す縦断面図である。 アルミニウム合金粒子供給後の円筒状金型の縦断面図である。 遠心鋳造において過共晶Al−Si系合金粒子を供給する工程を示す縦断面図である。 過共晶Al−Si系合金粒子供給後の円筒状金型の縦断面図である。 遠心鋳造においてアルミニウム合金溶湯を供給する工程を示す縦断面図である。 円筒状金型から取り出された円筒状部材を示す縦断面図である。
以下、本発明に係る円筒状摺動部材及びその製造方法について好適な実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の円筒状摺動部材であるシリンダライナ1を示す縦断面図である。このシリンダライナ1はアルミニウム合金基材中に、粒度の篩目開きが0.5mm以上、2.5mm以下の過共晶Al−Si系合金粒子を含んでおり、過共晶Al−Si系合金粒子が面積率20%以上、60%以下の割合でシリンダライナ1の内周摺動面2に分散している。
図2は実際に作製したシリンダライナの内周摺動面のミクロ組織を示している写真である。図2においてアルミニウム合金基材の両側に過共晶Al−Si系合金粒子の一部分が写っている。過共晶Al−Si系合金粒子は1.0mm〜1.5mmの篩にて分級したものである。図2により、アルミニウム合金基材と比較して過共晶Al−Si系合金粒子中には初晶Siが多量に存在することがわかる。なお、過共晶粒子と基材との界面については、過共晶粒子の表層のみ溶融し、基材と冶金的に結合している状態が好ましい。
以下、本発明のシリンダライナを遠心鋳造法により作製する一例を説明する。
図3に示されているように、回転する円筒状金型10の内部に挿入された上面開口の樋状部材である粒子フィーダ11によって過共晶Al−Si系合金粒子12Aが円筒状金型10の内部に供給される。過共晶Al−Si系合金粒子は、粒度の篩目開きが0.5mm以上、2.5mm以下である。粒子フィーダ11は円筒状金型10の長手方向に沿って移動され、過共晶Al−Si系合金粒子が円筒状金型10の長手方向に略均等に供給される。過共晶Al−Si系合金粒子は遠心力によって円筒状金型10の内周に張り付き、円筒状金型10の内周面に過共晶Al−Si系合金粒子層12(図4参照)が形成される。
次に、図5に示されているように、回転する円筒状金型10の内部にアルミニウム合金溶湯13がトラフ14の注湯管から流し込まれる。アルミニウム合金溶湯は流動性があり、遠心力の作用によって過共晶Al−Si系合金粒子層に均一に分散してゆく。このとき、アルミニウム合金溶湯は、過共晶Al−Si系合金粒子間の隙間に含浸して、アルミニウム合金基材中に過共晶Al−Si系合金粒子を含んだ円筒状部材が鋳造される。
この際、過共晶Al−Si系合金粒子の粒度の篩目開きが細かすぎると、アルミニウム合金溶湯が過共晶Al−Si系合金粒子の間に浸透しにくくなり、複合材である円筒状部材の必要な厚さを確保することが困難になる。また、過共晶Al−Si系合金粒子がアルミニウム合金基材に強固に保持されないため、内周仕上げ等の加工時に粒子が脱落しやすくなる問題を生じる。そのため、過共晶Al−Si系合金粒子の粒度の篩目開きは0.5mm以上とする。
他方、過共晶Al−Si系合金粒子の粒度の篩目開きが大きすぎると、内周仕上げ等の加工時に切削抵抗が増し、加工効率が低下する他、過共晶Al−Si系合金粒子の脱落も生じやすくなるため、過共晶Al−Si系合金粒子の粒度の篩目開きは2.5mm以下とする。
なお、過共晶Al−Si系合金粒子のサイズや所望する円筒状部材の厚さによって、付与する遠心力を変化させる必要があるが、概ね90G以上が好適である。
円筒状部材が凝固した後、円筒状金型10から蓋体10aが取り外され、円筒状部材15(図6参照)が円筒状金型10から取り出される。図6の円筒状部材15において、16は過共晶Al−Si系合金粒子層の粒子間の隙間にアルミニウム合金溶湯が含浸して形成された層、13Bは層16の内側に形成されたアルミニウム合金溶湯による層である。
その後、所定の長さで切断され、シリンダライナが製造される。その後、シリンダライナの内周面に仕上加工が施されて、アルミニウム合金溶湯による層13Bは削除され、過共晶Al−Si系合金粒子が面積率20%以上、60%以下の割合で分散した面を内周面に露出させる。
図7はアルミニウム合金製のシリンダライナについて、過共晶Al−Si系合金粒子の面積率の耐摩耗性に及ぼす影響を示している。図中の過共晶Al−Si系合金粒子のSi量及びアルミニウム合金基材のSi量は質量%である。過共晶Al−Si系合金粒子の粒度の篩目開きは1.0mm〜1.5mmである。試験機にはピンオンプレート式往復摺動試験機を使用した。シリンダライナに相当するプレート材(以下、ライナ材という。)と組み合せるピン材(ピストンリング相当材)は、ステンレス鋼製で窒化処理が施されている。図7において、縦軸は、過共晶Al−Si系合金粒子が無添加(0%)の場合のライナ材の摩耗量を1としたときの各ライナ材の相対摩耗量を示しており、横軸は摺動面上の過共晶Al−Si系合金粒子の面積率及びSi含有量を表している。縦軸の値が小さいほど、ライナ材の耐摩耗性は優れる。
図7により、過共晶Al−Si系合金粒子の面積率の増加に伴い、ライナ材の摩耗量が減少することがわかる。すなわち、ライナ材の耐摩耗性が向上することがわかる。過共晶Al−Si系合金粒子の面積率が15%の場合、耐摩耗性向上効果が僅かであることから、本発明においては、摺動面に分散する過共晶Al−Si系合金粒子の面積率を20%以上とした。
過共晶Al−Si系合金粒子の面積率は大きいほど、耐摩耗性は向上する傾向にある。しかしながら、面積率が60%を越えると、粒子を強固に複合させることが困難になり、その後の加工時に過共晶Al−Si系合金粒子が脱落したり、強度、剛性が低下する等の不具合を生じるため、過共晶Al−Si系合金粒子の面積率は60%以下とした。
図8はアルミニウム合金製のシリンダライナについて、過共晶Al−Si系合金粒子のSi含有量の耐摩耗性に及ぼす影響を示している。図中の過共晶Al−Si系合金粒子のSi量及びアルミニウム合金基材のSi量は質量%である。過共晶Al−Si系合金粒子の粒度の篩目開きは1.0mm〜1.5mmである。試験機にはピンオンプレート式往復摺動試験機を使用した。シリンダライナに相当するプレート材(以下、ライナ材という。)と組み合せるピン材(ピストンリング相当材)は、ステンレス鋼製で窒化処理が施されている。図8の縦軸及び横軸の表記は図7の場合と同じである。
図8により、過共晶Al−Si系合金粒子のSi含有量の増加に伴い、ライナ材の摩耗量が減少することがわかる。すなわち、ライナ材の耐摩耗性が向上することがわかる。過共晶Al−Si系合金粒子のSi含有量が25質量%であっても、基材より多くのSiが含まれるため、耐摩耗性向上効果は認められるが、30質量%以上の場合は耐摩耗性効果がより明瞭になる。したがって、過共晶Al−Si系合金粒子のSi含有量は30質量%以上であることがより好ましいことがわかる。
過共晶Al−Si系合金粒子のSi含有量は多いほど、耐摩耗性は向上する傾向にある。しかしながら、Si含有量が45質量%を越えると、粒子製造時に高温溶解が必要になる他、粒子硬度が高くなり過ぎたり、粒子が脆くなることなどから、加工性が悪化するなどの不具合を生じるため、過共晶Al−Si系合金粒子のSi含有量は45質量%以下であることが好ましい。
過共晶Al−Si系合金粒子中に晶出する初晶Siの大きさが小さい場合は、耐摩耗性向上効果が小さくなるため、過共晶Al−Si系合金粒子中の初晶Siの大きさは20μm以上とすることが好ましい。一方、過共晶Al−Si系合金粒子中の初晶Siの大きさは100μmを越えると加工性が低下するため、100μm以下とすることが好ましい。
図9はアルミニウム合金製のシリンダライナについて、基材となるアルミニウム合金のSi含有量の耐摩耗性に及ぼす影響を示している。図中の過共晶Al−Si系合金粒子のSi量及びアルミニウム合金基材のSi量は質量%である。過共晶Al−Si系合金粒子の粒度の篩目開きは1.0mm〜1.5mmである。試験機にはピンオンプレート式往復摺動試験機を使用した。シリンダライナに相当するプレート材(以下、ライナ材という。)と組み合せるピン材(ピストンリング相当材)は、ステンレス鋼製で窒化処理が施されている。図9の縦軸及び横軸の表記は図7の場合と同じである。
基材となるアルミニウム合金のSi含有量が11質量%の場合、過共晶Al−Si系合金粒子の面積率及びSi含有量がそれぞれ60%、45質量%と上限値であっても、図7及び図8より、摩耗レベルは過共晶Al−Si系合金粒子が無添加時の摩耗レベルの6割程度である。しかしながら、図9より、基材となるアルミニウム合金のSi含有量が14質量%以上であれば、ライナ材は優れた耐摩耗性が得られることがわかる。特に、過共晶Al−Si系合金粒子の面積率が25%以上であれば、過共晶Al−Si系合金粒子が無添加のAl−11%Si合金の摩耗レベルの5割以下のレベルまで摩耗を抑制でき、優れた耐摩耗性が得られることがわかる。
基材となるアルミニウム合金のSi含有量については、予め高めの材料を選定することが望ましいが、アルミニウム合金の溶解をより高温で行う必要があるなど製造上の課題が増す。25質量%を越えると、シリンダライナ等の製造時に鋳造欠陥が増加する等の問題が生じやすくなることから、アルミニウム合金基材のSi含有量は25質量%以下に抑えることが実用上好ましい。
一般に、セラミックスの多くは難加工材である。したがって、セラミックスの繊維や粒子を強化材とする複合材からなるシリンダの加工は困難であることは想像に難くない。アルミニウム合金を基材とする本発明のシリンダライナは、強化材としてセラミックス材料を用いず、過共晶Al−Si系合金粒子を用いているため、セラミックスを含んだ複合材からなるシリンダライナと比較して加工性に優れている。
また、一般に硬質なセラミックスを含む複合材からなるシリンダは、ピストンリングの摩耗を促進する場合がある。しかし、アルミニウム合金を基材とする本発明のシリンダライナは、強化材としてセラミックス材料を用いず、過共晶Al−Si系合金粒子を用いているため、ピストンリングに対する攻撃性が小さい。
本発明における過共晶Al−Si系合金粒子には、所定の組成にて鋳造されたビレットを粉砕した粉砕粉や、ビレットを切削加工して作製した切り粉などを適用することができる。ただし、大きさは篩目開きが0.5mm以上、2.5mm以下にて分級されたものとする必要がある。なお、扁平な粒子は溶湯の浸透性に劣るため、できるだけ丸い粒子を選定することが好ましい。篩目開きが0.5mm未満の過共晶粒子は基材の含浸性の低下や分散時に溶失するといった問題が生じやすいため好ましくない。他方、篩目開きが2.5mmを越える過共晶粒子は切削抵抗の増加や粒子の脱落が生じやすいため好ましくない。
更に、本発明の円筒状摺動部材のアルミニウム合金基材にはCu、Fe、Ni、Mn、Mg、Ti、Cr等の金属元素を適量加えてもよい。これにより、基材の機械的特性の向上を図ることができる。特に、A390アルミニウム合金にも含まれるCuが添加される場合は、T6処理に代表される熱処理を施した際の基材強化に有効である。ただし、これらの元素を多量に添加することは、粗大な金属間化合物の晶出につながり、シリンダライナ等の靭性を損なうおそれがあるため注意が必要である。
以下、本発明のシリンダライナを遠心鋳造法により作製する別の例を説明する。
図10に示されているように、回転する円筒状金型10の内部に挿入された上面開口の樋状部材である粒子フィーダ11Aによって共晶又は共晶近傍組成のアルミニウム合金粒子17Aが円筒状金型10の内部に供給される。アルミニウム合金粒子は、粒度の篩目開きが0.5mm以上、2.5mm以下である。粒子フィーダ11Aは円筒状金型10の長手方向に沿って移動され、アルミニウム合金粒子が円筒状金型10の長手方向に略均等に供給される。アルミニウム合金粒子は円筒状金型10の遠心力によって円筒状金型10の内周に張り付き、円筒状金型10の内周面にアルミニウム合金粒子層17(図11参照)が形成される。
次に、図12に示されているように、回転する円筒状金型10の内部に挿入された上面開口の樋状部材である粒子フィーダ11によって過共晶Al−Si系合金粒子12Aが円筒状金型10の内部に供給される。過共晶Al−Si系合金粒子は、粒度の篩目開きが0.5mm以上、2.5mm以下である。粒子フィーダ11は円筒状金型10の長手方向に沿って移動され、過共晶Al−Si系合金粒子が円筒状金型10の長手方向に略均等に供給される。過共晶Al−Si系合金粒子は回転する円筒状金型10の遠心力によってアルミニウム合金粒子層17の内周に張り付き、円筒状金型10の内周面のアルミニウム合金粒子層17上に過共晶Al−Si系合金粒子層12(図13参照)が形成される。
次に、図14に示されているように、回転する円筒状金型10の内部にアルミニウム合金溶湯13がトラフ14の注湯管から流し込まれる。アルミニウム合金溶湯は流動性があり、遠心力の作用によって過共晶Al−Si系合金粒子層とアルミニウム合金粒子層に均一に分散してゆく。このとき、アルミニウム合金溶湯は、過共晶Al−Si系合金粒子間の隙間とアルミニウム合金粒子間の隙間とに含浸して、アルミニウム合金基材中に過共晶Al−Si系合金粒子とアルミニウム合金粒子とを含んだ円筒状部材が鋳造される。
円筒状部材が凝固した後、円筒状金型10の蓋体10aが取り外され、円筒状部材18(図15参照)が円筒状金型10から取り出される。図15の円筒状部材18において、16は過共晶Al−Si系合金粒子層の粒子間の隙間にアルミニウム合金溶湯が含浸して形成された層、13Bは層16の内側に形成されたアルミニウム合金溶湯による層、19は層16の外側に形成され、アルミニウム合金粒子層の粒子間の隙間にアルミニウム合金溶湯が含浸して形成された層である。
その後、所定の長さで切断され、シリンダライナが製造される。その後、シリンダライナの内周面に仕上加工が施されて、アルミニウム合金溶湯による層13Bは削除され、過共晶Al−Si系合金粒子が面積率20%以上、60%以下の割合で分散した面を内周面に露出させる。
上記製造方法によると、シリンダライナの最外周部を共晶又は共晶近傍組成のアルミニウム合金粒子を含んだアルミニウム合金層とすることができるので、融点の低いアルミニウム合金からなるシリンダブロックとの接合がしやすくなる。
上記実施形態でシリンダライナを遠心鋳造法によって作製する方法を説明したが、遠心鋳造法による製造方法は上記で説明した方法に限られることはない。例えば、過共晶Al−Si系合金粒子とアルミニウム合金溶湯を予め混合し、その混合物を速やかに回転する金型内に注湯することにより、過共晶Al−Si系合金粒子が完全に溶融することなくアルミニウム合金基材中に分散した円筒状摺動部材を得ることができる。
また、円筒状摺動部材の製造方法は、遠心鋳造法に限定されるものではない。過共晶Al−Si系合金粒子とアルミニウム合金溶湯を混合した後、その混合物を一般の鋳造用金型に注湯することにより、過共晶Al−Si系合金粒子が完全に溶融することなくアルミニウム合金基材中に分散した円筒状摺動部材を得ることができる。この場合も、混合から短時間で凝固を完了させることが肝要であるため、速やかに冷却を行うことが可能な金型加圧鋳造の適用が好ましい。
1 シリンダライナ
2 内周摺動面
10 円筒状金型
10a 蓋体
11,11A 粒子フィーダ
12A 過共晶Al−Si系合金粒子
12 過共晶Al−Si系合金粒子層
13 アルミニウム合金溶湯
13B アルミニウム合金溶湯による層
14 トラフ
15 円筒状部材
16 過共晶Al−Si系合金粒子層の粒子間の隙間にアルミニウム合金溶湯が含浸して形成された層
17A アルミニウム合金粒子
17 アルミニウム合金粒子層
18 円筒状部材
19 アルミニウム合金粒子層の粒子間の隙間にアルミニウム合金溶湯が含浸して形成された層

Claims (8)

  1. アルミニウム合金基材中に、基材より多くの比率でSiを合金中に含有する過共晶Al−Si系合金粒子を含んでいる円筒状摺動部材であって、前記過共晶Al−Si系合金粒子のSi含有量が質量%で25%以上、45%以下であり、前記過共晶Al−Si系合金粒子が面積率20%以上、60%以下の割合で内周摺動面に分散していることを特徴とする円筒状摺動部材。
  2. 前記過共晶Al−Si系合金粒子の粒度の篩目開きが0.5mm以上、2.5mm以下であることを特徴とする請求項1記載の円筒状摺動部材。
  3. 前記過共晶Al−Si系合金粒子のSi含有量が質量%で30%以上、45%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の円筒状摺動部材。
  4. 前記基材となるアルミニウム合金のSi含有量が質量%で14%以上、25%以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の円筒状摺動部材。
  5. 前記過共晶Al−Si系合金粒子が面積率25%以上、60%以下の割合で内周摺動面に分散していることを特徴とする請求項4記載の円筒状摺動部材。
  6. 前記円筒状摺動部材が遠心鋳造又は金型加圧鋳造によって形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の円筒状摺動部材。
  7. 遠心鋳造によって円筒状摺動部材を作製する円筒状摺動部材の製造方法であって、
    回転する円筒状金型の内部に粒度の篩目開きが0.5mm以上、2.5mm以下であり、Si含有量が質量%で25%以上、45%以下の過共晶Al−Si系合金粒子を供給して、金型の内周面に過共晶Al−Si系合金粒子層を形成する工程と、
    前記過共晶Al−Si系合金粒子より少ない比率でSiを合金中に含有する溶融アルミニウム合金を、前記過共晶Al−Si系合金粒子層が形成された回転する金型内部に供給して、過共晶Al−Si系合金粒子層の粒子間の隙間に遠心力によってアルミニウム合金の溶湯を含浸させ、円筒状部材を鋳造する工程と、
    を有することを特徴とする円筒状摺動部材の製造方法。
  8. 遠心鋳造によって円筒状摺動部材を作製する円筒状摺動部材の製造方法であって、
    回転する円筒状金型の内部に粒度の篩目開きが0.5mm以上、2.5mm以下の共晶又は共晶近傍組成のアルミニウム合金粒子を供給して、金型の内周面にアルミニウム合金粒子層を形成する工程と、
    前記アルミニウム合金粒子層が形成された回転する円筒状金型の内部に粒度の篩目開きが0.5mm以上、2.5mm以下であり、Si含有量が質量%で25%以上、45%以下の過共晶Al−Si系合金粒子を供給して、金型の内周面のアルミニウム合金粒子層上に過共晶Al−Si系合金粒子層を形成する工程と、
    前記過共晶Al−Si系合金粒子より少ない比率でSiを合金中に含有する溶融アルミニウム合金を前記アルミニウム合金粒子層と過共晶Al−Si系合金粒子層とが形成された回転する金型内部に供給して、過共晶Al−Si系合金粒子層の粒子間の隙間とアルミニウム合金粒子層の粒子間の隙間とに遠心力によってアルミニウム合金の溶湯を含浸させ、円筒状部材を鋳造する工程と、
    を有することを特徴とする円筒状摺動部材の製造方法。
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