JP5550084B2 - 円筒状摺動部材及びその製造方法 - Google Patents

円筒状摺動部材及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、シリンダライナ等の円筒状摺動部材に関する。
シリンダライナに代表される円筒状摺動部材は、その内周壁がピストンリングにより繰り返しの摺動摩擦を受けることや高温に晒されること等から、耐摩耗性、耐スカッフ性、強度を考慮して、鋳鉄により製造されていた。最近になり、自動車部品の軽量化が急務となってきたことや熱伝導性の改良が要求されていること等から、シリンダライナの材料としてアルミニウム合金が提案されている。
特許文献1は、遠心鋳造により作製した中空部材を記載している。回転する円筒状金型内にアルミニウム合金粉末を供給して外側円筒形状体を先ず成形し、次に、外側円筒形状体の内部にAl−Si系合金の溶湯を供給して、外側円筒形状体に内側円筒形状体を積層した中空部材を作製する。これにより、微細な初晶Siが略均等に分散した組織を内周側に得られる。特許文献2は、内周にアルミ系金属部分とセラミックス部分が露呈したアルミシリンダを記載している。
アルミニウム合金製のシリンダボアは良好な摺動特性を得るため、内周面の仕上げに電解エッチング処理(ECM)を施す場合が多い。この手法によれば、アルミニウムマトリックス部分のみが優先的にエッチングされるため、晶出したSiが僅かに突出した表面を得ることができる。これによって、良好な耐摩耗性と耐スカッフ性とを得ることができる。
特開2008−221308号公報 特公平4−038947号公報
特許文献1の中空部材は、内周に強化材を含んでおらず、Al−Si系合金のみから構成されているため、耐摩耗性や耐スカッフ性が十分でない場合がある。特許文献2のシリンダは、摺動特性が優れているが、難加工材であるセラミックスを複合するため、加工性が悪く、加工に用いる刃具を摩耗させる欠点を有している。また、硬質なセラミックスにより、ピストンリングに対する攻撃性が増し、ピストンリングの摩耗が増加する場合がある。電解エッチング処理(ECM)は、工数自体の増加や廃液処理によって製造コストが増すことが避けられない。
本発明の目的は、耐摩耗性と耐スカッフ性の摺動特性及び加工性に優れ、しかも相手摺動部材に対する攻撃性も小さい円筒状摺動部材、及びその製造方法を提供することである。
上記課題を解決するために本発明は次の解決手段を採る。すなわち、
本発明は、アルミニウム合金基材中にアルミニウム合金粒子を含む層が最外周部に配置し、その内周側にアルミニウム合金基材中に鉄系粒子を含む層が配置している円筒状摺動部材であって、鉄系粒子が面積率25%以上、60%以下の割合で内周摺動面に分散して露出していることを特徴とする。
内周摺動面に分散して露出している鉄系粒子の面積率を25%以上、60%以下とすることにより、優れた耐摩耗性と耐スカッフ性の摺動特性を得られる(図7、図8参照)。鉄系粒子の面積率が25%未満であると、充分な耐スカッフ性の向上効果が得られない。面積率が60%を越えると、遠心鋳造による製造時に、鉄系粒子間へのアルミニウム合金溶湯の含浸性が低下するため、その後の加工時に鉄系粒子が脱落しやすい問題を生じる。
鉄系粒子の粒度の篩目開きが0.5mm以上、2.36mm以下であることが好ましい。鉄系粒子の粒度の篩目開きを上記の値とすることにより、必要とされる複合材厚さを確保でき、鉄系粒子の脱落を防ぎ、加工性を良好にする。粒度の篩目開きが0.5mm未満であると、アルミニウム合金溶湯が鉄系粒子の間に浸透しにくくなり、必要とされる複合材厚さを確保することが困難になる。また、鉄系粒子がアルミニウム合金基材に強固に保持されないため、その後の加工時に鉄系粒子が脱落しやすい問題を生じる。粒度の篩目開きが2.36mmを越えると、複合材作製後の加工時における切削抵抗が増し、加工効率が低下する他、鉄系粒子の脱落も生じやすくなる。
鉄系粒子は、摺動特性の点から、鋳鉄又は鋼であることが好ましい。鋼粒子にはJIS SUS304に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼粒子も含まれるが、一般にオーステナイト系の鋼はマルテンサイト系の鋼やフェライト系の鋼と比較して摺動特性が劣る場合が多いため、より高い摺動特性を望む場合は、マルテンサイト系やフェライト系の鋼粒子を選定することが望ましい。
本発明においては、基材となるアルミニウム合金中のSi含有量は特に規定しないが、3%以上、25%以下とすることにより、耐スカッフ性の向上及び鋳造欠陥の減少を図ることができる(図9参照)。一般的には、基材となるアルミニウム合金中に鉄系粒子が存在しない場合は、Si含有量が9%未満であると、アルミニウムのデンドライト(α相)の晶出量が増し、シリンダライナ等の摺動部材の耐スカッフ性が低下する。しかしながら、鉄系粒子が存在すると、アルミニウム合金基材中のSi含有量は3%以上あれば、Si含有量が14%で鉄系粒子が存在しない場合に比べて耐スカッフ性が向上する。耐スカッフ性は、鉄系粒子が存在する場合、Si含有量が6%以上で効果が大きく、14%以上では更に効果が高い。他方、アルミニウム合金基材中のSi含有量が25%を越えると、高温溶解が必要となるばかりか、製造時にピットなどの鋳造欠陥が増加しやすくなることから、アルミニウム合金基材中のSi含有量は25%以下が望ましい。
前記円筒状摺動部材としてはシリンダライナが挙げられるが、これに限られることはない。
前記円筒状摺動部材は遠心鋳造によって製造できる。
遠心鋳造によって円筒状摺動部材を作製する本発明の円筒状摺動部材の製造方法は、
回転する円筒状金型の内部に粒度の篩目開きが0.5mm以上、2.36mm以下のアルミニウム合金粒子を供給して、金型の内周面にアルミニウム合金粒子層を形成する工程と、
アルミニウム合金粒子層が形成された回転する円筒状金型の内部に粒度の篩目開きが0.5mm以上、2.36mm以下の鉄系粒子を供給して、金型の内周面のアルミニウム合金粒子層上に鉄系粒子層を形成する工程と、
溶融したアルミニウム合金をアルミニウム合金粒子層と鉄系粒子層とが形成された回転する金型内部に供給して、鉄系粒子層の粒子間の隙間とアルミニウム合金粒子層の粒子間の隙間とに遠心力によってアルミニウム合金の溶湯を含浸させ、円筒状部材を鋳造する工程と、
を有することを特徴とする。
最初にアルミニウム合金粒子を投入することで、円筒状部材の最外周部をアルミニウム合金層とすることができる。その結果、鉄系粒子を最外周面に露出せずに済むため、製造される円筒状摺動部材の外周を防錆処理する必要がなくなる。また、鉄系粒子の量も減らせることができるため、円筒状摺動部材の重量を軽減できる。最初に投入するアルミニウム合金粒子の種類は特に限定されないが、シリンダライナの場合、低融点のものがダイカスト時におけるシリンダブロック材との接合に有利であり好ましい。
本発明の円筒状摺動部材は、耐摩耗性、耐スカッフ性の摺動特性に優れる。本発明を適用したシリンダライナは、従来の過共晶Al−Si合金製シリンダライナと比較して耐摩耗性、耐スカッフ性に優れる。また、本発明の円筒状摺動部材は、加工性に優れ、相手材に対する攻撃性も小さい。本発明を適用したシリンダライナは、セラミックス系強化材を含んだアルミニウム合金製のシリンダライナと比較して加工性に優れ、ピストンリングに対する攻撃性が小さい。シリンダライナの最外周部がアルミニウム合金基材中にアルミニウム合金粒子を含む層であるので、鉄系粒子を最外周面に露出させずに済む。その結果、円筒状摺動部材の外周を防錆処理する必要がなくなる。また、鉄系粒子の量も減らせることができるため、円筒状摺動部材の重量を軽減できる。本発明の円筒状摺動部材は、遠心鋳造法によって簡単に製造できる。
本発明の一実施形態であるシリンダライナを示す縦断面図である。 本発明の円筒状摺動部材の内周摺動面の一部分を示す写真である。 遠心鋳造において鉄系粒子を供給する工程を示す縦断面図である。 鉄系粒子供給後の円筒状金型の縦断面図である。 遠心鋳造においてアルミニウム合金溶湯を供給する工程を示す縦断面図である。 円筒状金型から取り出された円筒状部材を示す縦断面図である。 鉄系粒子の面積率と耐摩耗性との関係を示すグラフである。 鉄系粒子の面積率と耐スカッフ性との関係を示すグラフである。 アルミニウム合金中のSi含有量と耐スカッフ性との関係を示すグラフである。 遠心鋳造においてアルミニウム合金粒子を供給する工程を示す縦断面図である。 アルミニウム合金粒子供給後の円筒状金型の縦断面図である。 遠心鋳造において鉄系粒子を供給する工程を示す縦断面図である。 鉄系粒子供給後の円筒状金型の縦断面図である。 遠心鋳造においてアルミニウム合金溶湯を供給する工程を示す縦断面図である。 円筒状金型から取り出された円筒状部材を示す縦断面図である。
以下、本発明に係る円筒状摺動部材及びその製造方法について好適な実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の円筒状摺動部材であるシリンダライナ1を示す縦断面図である。このシリンダライナ1はアルミニウム合金基材中に、粒度の篩目開きが0.5mm以上、2.36mm以下の鉄系粒子を含んでいる。鉄系粒子は面積率25%以上、60%以下の割合でシリンダライナ1の内周摺動面2に分散して露出している。
実際に作製した円筒状摺動部材の内周摺動面の写真を図2に示す。濃色部分が鉄系粒子であり、淡色部分が生地であるアルミニウム合金である。
以下、本発明のシリンダライナの最外周部に配置されるアルミニウム合金層がないシリンダライナを遠心鋳造法により作製する一例を説明する。
図3に示されているように、回転する円筒状金型10の内部に挿入された上面開口の樋状部材である粒子フィーダ11によって鉄系粒子12Aが円筒状金型10の内部に供給される。鉄系粒子は、粒度の篩目開きが0.5mm以上、2.36mm以下である。粒子フィーダ11は円筒状金型10の長手方向に沿って移動され、鉄系粒子が円筒状金型10の長手方向に略均等に供給される。鉄系粒子は遠心力によって円筒状金型10の内周に張り付き、円筒状金型10の内周面に鉄系粒子層12(図4参照)が形成される。
次に、図5に示されているように、回転する円筒状金型10の内部にアルミニウム合金溶湯13がトラフ14の注湯管から流し込まれる。アルミニウム合金溶湯は流動性があり、また遠心力の作用によって鉄系粒子層に均一に分散してゆく。このとき、アルミニウム合金溶湯は、鉄系粒子間の隙間に含浸して、アルミニウム合金基材中に鉄系粒子を含んだ円筒状部材が鋳造される。
この際、鉄系粒子の粒度の篩目開きが細かすぎると、アルミニウム合金溶湯が鉄系粒子の間に浸透しにくくなり、複合材である円筒状部材の必要な厚さを確保することが困難になる。また、鉄系粒子がアルミニウム合金基材に強固に保持されないため、内周仕上げ等の加工時に粒子が脱落しやすくなる問題を生じる。そのため、鉄系粒子の粒度の篩目開きは0.5mm以上とする。
他方、鉄系粒子の粒度の篩目開きが大きすぎると、内周仕上げ等の加工時に切削抵抗が増し、加工効率が低下する他、鉄系粒子の脱落も生じやすくなるため、鉄系粒子の粒度の篩目開きは2.36mm以下とする。
なお、鉄系粒子のサイズや所望する円筒状部材の厚さによって、付与する遠心力を変化させる必要があるが、概ね90G以上が好適である。
円筒状部材が凝固した後、円筒状金型10から蓋体10aが取り外され、円筒状部材15(図6参照)が円筒状金型10から取り出される。図6の円筒状部材15において、16は鉄系粒子層の粒子間の隙間にアルミニウム合金溶湯が含浸して形成された層、13Bは層16の内側に形成されたアルミニウム合金溶湯による層である。
その後、所定の長さで切断され、シリンダライナが製造される。その後、シリンダライナの内周面に仕上加工が施されて、アルミニウム合金溶湯による層13Bは削除され、鉄系粒子が面積率25%以上、60%以下の割合で分散した面を内周面に露出させる。
図7は、鉄系粒子として鋳鉄の粒子を用いた場合のアルミニウム合金製のシリンダライナと、窒化ピストンリングとの往復動摩擦試験の結果を示している。図7において、縦軸は、鉄系粒子が無添加(0%)の場合のシリンダライナの摩耗量を1としたときの各シリンダライナの摩耗量を相対値で示しており、横軸は摺動面上の鉄系粒子の面積率を表している。すなわち、縦軸の値が小さいほど、シリンダライナの耐摩耗性は優れる。
図7により、鉄系粒子の面積率の増加に伴い、シリンダライナの摩耗量が減少することがわかる。鉄系粒子の面積率が21%でも、鉄系粒子の面積率が0%の場合と比較して、約2割の摩耗量の低減効果が得られる。耐摩耗性だけが必要な場合は、鉄系粒子の面積率は20%前後でも効果がある。しかしながら、耐スカッフ性を必要とする場合は、次に示すように必ずしも充分とは言えない。
図8は、鉄系粒子として鋳鉄の粒子を用いた場合のアルミニウム合金製のシリンダライナと、窒化ピストンリングとの往復動スカッフ試験の結果を示している。図8において、縦軸は、鉄系粒子が無添加(0%)の場合のシリンダライナのスカッフ発生までの時間を1としたときの各シリンダライナのスカッフ時間を相対値で示しており、横軸は摺動面上の鉄系粒子の面積率を表している。すなわち、縦軸の値が大きいほど、シリンダライナの耐スカッフ性は優れる。
図8により、鉄系粒子の面積率の増加に伴い、シリンダライナの耐スカッフ性が向上することがわかる。しかしながら、鉄系粒子の面積率が21%の場合、耐スカッフ性向上効果は僅かであり、効果不充分である。したがって、鉄系粒子の面積率は25%以上と規定した。特に、鉄系粒子の面積率が40%以上で良好な結果を得られる。
鉄系粒子の面積率は大きいほど、耐摩耗性と耐スカッフ性は向上する傾向にある。しかしながら、面積率が60%を越えると、製造時の溶湯含浸性が低下し、その後の加工時に鉄系粒子が脱落しやすくなる問題を生ずるため、鉄系粒子の面積率は60%以下と規定した。
図7、図8においては、基材となるアルミニウム合金中のSi含有量は14%であり、鉄系粒子の粒度の篩目開きは1.0mm〜1.5mmである。
図9は、アルミニウム合金中のSi含有量と耐スカッフ性との関係について、鉄系粒子を含む場合と含まない場合とにおけるアルミニウム合金製のシリンダライナと窒化ピストンリングとの往復動スカッフ試験の結果を示している。図9において、縦軸は、鉄系粒子が存在せず、Si含有量が14%の場合のシリンダライナのスカッフ発生までの時間を1としたときの各シリンダライナのスカッフ時間を相対値で示しており、横軸はアルミニウム合金中のSi含有量を表している。すなわち、縦軸の値が大きいほど、シリンダライナの耐スカッフ性は優れる。図9において、鉄系粒子は鋳鉄粒子であり、鉄系粒子の粒度の篩目開きは1.0mm〜1.5mm、鉄系粒子の面積率は25%である。
図9により、鉄系粒子が存在することにより、アルミニウム合金基材中のSi含有量は3%以上あれば、鉄系粒子が存在せず、Si含有量が14%の場合よりも耐スカッフ性が向上することがわかる。耐スカッフ性は、鉄系粒子が存在する場合、Si含有量が6%以上で効果が大きく、14%以上では非常に効果がある。
図7〜図9においては、鉄系粒子として鋳鉄粒子を用いた例を示したが、他の鋼の粒子を用いることもできる。本発明に用いる鉄系粒子には、JIS SUS304に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼の粒子なども含まれるが、一般にオーステナイト系の鋼はマルテンサイト系の鋼やフェライト系の鋼と比較して摺動特性が劣る場合が多いため、より高い摺動特性を望むのであれば、マルテンサイト系やフェライト系の粒子を用いる方がよい。
また、一般に、セラミックスの多くは難加工材である。したがって、セラミックスの繊維や粒子を強化材とする複合材からなるシリンダの加工は困難であることは想像に難くない。アルミニウム合金を基材とする本発明のシリンダライナは、強化材としてセラミックス材料を用いず、鉄系粒子を用いているため、セラミックスを含んだ複合材からなるシリンダライナと比較して加工性に優れている。
また、一般に硬質なセラミックスを含む複合材からなるシリンダは、ピストンリングの摩耗を促進する場合がある。しかし、アルミニウム合金を基材とする本発明のシリンダライナは、強化材としてセラミックス材料を用いず、鉄系粒子を用いているため、ピストンリングに対する攻撃性が小さい。
本発明における円筒状摺動部材は、摺動特性に優れるため、本発明をシリンダライナに適用する場合、従来の過共晶Al−Si合金製シリンダライナやセラミックス複合材からなるシリンダライナにおいて施されることの多かったECM処理を省略することができる。
本発明における鉄系粒子には、各種のショット材、切り粉、粉砕粉等を適用することができる。特に、切り粉や粉砕粉の活用は、廃材の活用という点からも有意義である。なお、扁平な粒子は溶湯の浸透性に劣るため、できるだけ丸い粒子を選定することが好ましい。
更に、本発明の円筒状摺動部材のアルミニウム合金基材にはCu、Fe、Ni、Mn、Mg、Ti、Cr等の金属元素を適量加えてもよい。これらの金属元素は鋳造用およびダイカスト用アルミニウム合金に広く添加されている。Cu等が添加される場合は、T6処理に代表される熱処理を施した際、アルミニウム合金基材を強化することが可能であり、鉄系粒子がより強固に保持されるようになる。
本発明の円筒状摺動部材の摺動特性は、鉄系粒子の面積率に最も大きく左右されるため、上記金属元素の添加量の影響は比較的少ない。したがって、基材となるアルミニウム合金には様々なリサイクルアルミニウム合金材を用いることができる。ただし、粗大な金属間化合物が晶出すると、基材の機械的性質が損なわれる場合があるため注意を必要とする。
以下、アルミニウム合金基材中にアルミニウム合金粒子を含む層が最外周部に配置し、その内周側にアルミニウム合金基材中に鉄系粒子を含む層が配置している本発明のシリンダライナを遠心鋳造法により作製する一例を説明する。
図10に示されているように、回転する円筒状金型10の内部に挿入された上面開口の樋状部材である粒子フィーダ11Aによってアルミニウム合金粒子17Aが円筒状金型10の内部に供給される。アルミニウム合金粒子は、粒度の篩目開きが0.5mm以上、2.36mm以下である。粒子フィーダ11Aは円筒状金型10の長手方向に沿って移動され、アルミニウム合金粒子が円筒状金型10の長手方向に略均等に供給される。アルミニウム合金粒子は円筒状金型10の遠心力によって円筒状金型10の内周に張り付き、円筒状金型10の内周面にアルミニウム合金粒子層17(図11参照)が形成される。
次に、図12に示されているように、回転する円筒状金型10の内部に挿入された上面開口の樋状部材である粒子フィーダ11によって鉄系粒子12Aが円筒状金型10の内部に供給される。鉄系粒子は、粒度の篩目開きが0.5mm以上、2.36mm以下である。粒子フィーダ11は円筒状金型10の長手方向に沿って移動され、鉄系粒子が円筒状金型10の長手方向に略均等に供給される。鉄系粒子は回転する円筒状金型10の遠心力によってアルミニウム合金粒子層17の内周に張り付き、円筒状金型10の内周面のアルミニウム合金粒子層17上に鉄系粒子層12(図13参照)が形成される。
次に、図14に示されているように、回転する円筒状金型10の内部にアルミニウム合金溶湯13がトラフ14の注湯管から流し込まれる。アルミニウム合金溶湯は流動性があり、また遠心力の作用によって鉄系粒子層とアルミニウム合金粒子層に均一に分散してゆく。このとき、アルミニウム合金溶湯は、鉄系粒子間の隙間とアルミニウム合金粒子間の隙間とに含浸して、アルミニウム合金基材中に鉄系粒子とアルミニウム合金粒子とを含んだ円筒状部材が鋳造される。
円筒状部材が凝固した後、円筒状金型10の蓋体10aが取り外され、円筒状部材18(図15参照)が円筒状金型10から取り出される。図15の円筒状部材18において、16は鉄系粒子層の粒子間の隙間にアルミニウム合金溶湯が含浸して形成された層、13Bは層16の内側に形成されたアルミニウム合金溶湯による層、19は層16の外側に形成され、アルミニウム合金粒子層の粒子間の隙間にアルミニウム合金溶湯が含浸して形成された層である。
その後、所定の長さで切断され、シリンダライナが製造される。その後、シリンダライナの内周面に仕上加工が施されて、アルミニウム合金溶湯による層13Bは削除され、鉄系粒子が面積率25%以上、60%以下の割合で分散した面を内周面に露出させる。
上記製造方法によると、シリンダライナの最外周部をアルミニウム合金層とすることができるので、鉄系粒子を最外周面に露出させずに済む。その結果、製造されるシリンダライナの外周を防錆処理する必要がなくなる。また、鉄系粒子の量も減らせることができるため、シリンダライナの重量を軽減できる。
1 シリンダライナ
2 内周摺動面
10 円筒状金型
10a 蓋体
11,11A 粒子フィーダ
12A 鉄系粒子
12 鉄系粒子層
13 アルミニウム合金溶湯
13B アルミニウム合金溶湯による層
14 トラフ
15 円筒状部材
16 鉄系粒子層の粒子間の隙間にアルミニウム合金溶湯が含浸して形成された層
17A アルミニウム合金粒子
17 アルミニウム合金粒子層
18 円筒状部材
19 アルミニウム合金粒子層の粒子間の隙間にアルミニウム合金溶湯が含浸して形成された層

Claims (6)

  1. アルミニウム合金基材中にアルミニウム合金粒子を含む層が最外周部に配置し、その内周側にアルミニウム合金基材中に鉄系粒子を含む層が配置している円筒状摺動部材であって、鉄系粒子が面積率25%以上、60%以下の割合で内周摺動面に分散して露出していることを特徴とする円筒状摺動部材。
  2. 前記鉄系粒子の粒度の篩目開きが0.5mm以上、2.36mm以下であることを特徴とする請求項1記載の円筒状摺動部材。
  3. 前記鉄系粒子が鋳鉄又は鋼であることを特徴とする請求項1又は2記載の円筒状摺動部材。
  4. 前記円筒状摺動部材が遠心鋳造によって形成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の円筒状摺動部材。
  5. 前記円筒状摺動部材がシリンダライナであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の円筒状摺動部材。
  6. 遠心鋳造によって円筒状摺動部材を作製する円筒状摺動部材の製造方法であって、
    回転する円筒状金型の内部に粒度の篩目開きが0.5mm以上、2.36mm以下のアルミニウム合金粒子を供給して、金型の内周面にアルミニウム合金粒子層を形成する工程と、
    アルミニウム合金粒子層が形成された回転する円筒状金型の内部に粒度の篩目開きが0.5mm以上、2.36mm以下の鉄系粒子を供給して、金型の内周面のアルミニウム合金粒子層上に鉄系粒子層を形成する工程と、
    溶融したアルミニウム合金をアルミニウム合金粒子層と鉄系粒子層とが形成された回転する金型内部に供給して、鉄系粒子層の粒子間の隙間とアルミニウム合金粒子層の粒子間の隙間とに遠心力によってアルミニウム合金の溶湯を含浸させ、円筒状部材を鋳造する工程と、
    を有することを特徴とする円筒状摺動部材の製造方法。
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