JP4704723B2 - 高温疲労特性と制振性に優れた耐熱性Al基合金 - Google Patents

高温疲労特性と制振性に優れた耐熱性Al基合金 Download PDF

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本発明は、高温強靱性(耐熱性)や耐摩耗性とともに、更に、疲労特性や制振性にも優れた耐熱性Al基合金であって、自動車や航空機などのエンジン部品(ピストン、コンロッド)などのような、耐熱強度と軽量性を要求される機械部品に用いて好適なAl基合金に関するものである。
従来の溶解鋳造合金では、Al−Cu系合金(2618などの2000系Al合金)を始め、種々の耐熱合金が開発されているが、使用温度が150℃を超える高温下では、十分な高温強度を得ることができなかった。Al−Cu系合金では時効硬化による微細析出物で強度を確保しているため、使用温度が150℃を超えると、この析出物相が粗大化し、著しく強度が低下するからである。
そこで、従来から、急冷凝固法を適用したAl基合金が開発されてきた。急冷凝固法の一つである急冷粉末冶金法によれば、Fe、Cr、Mn、Ni、Ti、Zrなどの合金元素の添加量を、前記溶解鋳造Al合金よりも増すことができる。したがって、これら合金元素を多量に添加したAl合金を急冷凝固によって粉末化し、これを固化成型することで、使用温度が150℃を超える高温下でも、高温強度に優れたAl基合金を得ることができる(特許文献1、2参照)。これは、前記合金元素によって、高温でも安定なAlとの金属間化合物を組織中に分散させて、高温強度を高くしている。
更に、前記金属間化合物の微細化により、金属間化合物の分率を増加させ、高強度化を図る技術も提案されている(特許文献3参照)。
また、急冷凝固法の一つであるスプレーフォーミング法による、Fe、V、Mo、Zr、Tiなどの合金元素を添加し、これら合金元素とAlとの金属間化合物を微細化させた、軽量化耐熱Al基合金も開発されており、過剰のSiを添加し、初晶のSiを微細化させて、耐磨耗性を兼備させた高強度Al基合金も開発されている(特許文献4参照)。
特許2911708号公報(特許請求の範囲) 特公平7−62189号公報(特許請求の範囲) 特開平5−195130号公報(特許請求の範囲) 特開平9−125180号公報(特許請求の範囲)
前記特許文献1、2などの急冷粉末冶金法によれば、合金元素の添加量を増せば、Al基合金の高温強度を高くできる。しかし、合金元素の添加量を増加し過ぎると、金属間化合物の粗大化を招くため、300℃で300MPa程度の高温強度しか得られていない。これは、金属間化合物の微細化により、金属間化合物の分率を増加させた、前記特許文献3でも同様である。更に、前記特許文献4などのスプレイフォーミング法によるAl基合金でも、同様の高温強度しか得られていない。
更に、前記した特許文献5、6の疲労特性は、300〜400℃程度での高温疲労特性は低くならざるを得ない。例えば、特許文献5における熱疲労試験は、40〜260℃程度の温度でしかなく、また、高サイクル疲労試験(試験片に一定の引張り−圧縮繰返し応力を付与)も室温における評価であり、しかも、応力繰返し数107 回の疲労強度は、80MPaレベル程度と低い。
また、特許文献6でも、200℃程度の比較的低温における、高サイクル疲労試験での応力繰返し数107 回の疲労強度は、180MPaレベル程度と低い。したがって、Al基合金のマトリックスを構成するAl結晶粒の平均粒径を微細化させて、疲労特性を向上させることには限界がある。
更に、このような分散強化型組織のAl基合金は、用途によっては、エンジンなどの機械的な振動を吸収する減衰性能(制振性)が要求される場合もある。
本発明は、かかる問題に鑑みなされたもので、自動車や航空機などのエンジン部品の要求特性を満足する、高温強靱性や耐摩耗性とともに、更に、高温疲労特性や制振性にも優れた耐熱性Al基合金を提供することを目的とする。
この目的を達成するために、本発明の高温疲労特性と制振性に優れた耐熱性Al基合金の要旨は、質量%で、Cr:5〜30%、Fe:1〜20%、Ti:1〜15%を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなり、スプレイフォーミング法による急冷凝固法により得られたプリフォーム体を熱間加工して得られたAl基合金であって、Al基合金組織が、体積分率で50〜90%の金属間化合物相と、残部が金属Alマトリックスとで構成され、前記金属間化合物相の内で0.1μm 以上のサイズを有する金属間化合物相中の総Al量を、熱フェノールによる抽出残査法によってAl基合金から分離抽出された0.1μm 以上のサイズを有する固体残査中の総Al量と見なし、この残査中の総Al量と、前記成分組成の内の全Al含有量との比、総Al量/全Al含有量を0.75以下として、前記金属間化合物相の内で0.1μm 以上のサイズを有する金属間化合物の割合を規制したことである。
本発明に係るAl基合金は、金属Alマトリックスと上記特定の金属間化合物相とで構成されている。本発明のように、合金元素の添加量が多くなり、金属間化合物相が多くなると、Al基合金の高温疲労特性と制振性とは、上記特定の金属間化合物相の中でも、特に、大きなサイズの金属間化合物のサイズ分布(割合)に大きく影響される。
即ち、前記金属間化合物相の内、大きなサイズの金属間化合物相が多くなるほど、高温疲労特性と制振性とが低下する傾向がある。このため、本発明では、前記Al−Cr系金属間化合物の内で0.1μm 以上の大きなサイズを有する金属間化合物の割合を規制する。
この際、前記金属間化合物の内で、0.1μm 以上の大きなサイズを有する金属間化合物の割合を少なくする(規制する)ことは可能であるが、その割合を定量的に規定するのは難しい。
急冷凝固法により得られたAl基合金は、前記成分組成を前提とすると、前記金属間化合物相を構成(形成)する金属間化合物は、Al−Cr系、Al−Fe系、Al−Ti系などのAl基からなる2元系の金属間化合物から主として構成される。このため、本発明では、これら共通してAl基からなる金属間化合物の、比較的測定しやすいAl量によって、0.1μm 以上の大きなサイズを有する金属間化合物相の割合を規定する。即ち、0.1μm 以上の大きなサイズを有する金属間化合物相中の総Al量を測定し、この総Al量をAl基合金に含有される全Al量との関係で規定する。
本発明では、このように、前記Al基の金属間化合物相の内、大きなサイズのAl基金属間化合物相を少なくしたので、耐熱性Al基合金を、高温強靱性や耐摩耗性とともに、更に、高温疲労特性や制振性にも優れたものとできる。
(Al基合金組成)
本発明のAl基合金の化学成分組成(単位:質量%)について、各元素の限定理由を含めて、以下に説明する。
本発明Al基合金の基本的な化学成分組成は、質量%で、Cr:5〜30%、Fe:1〜20%、Ti:1〜15%を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなるものとする。また、Cr、Fe、Tiの総和が15〜50%であることが好ましい。
Cr、Fe、Tiは、Al−Cr系、Al−Fe系、Al−Ti系などの金属間化合物相を形成するとともに、金属Al中に各々固溶し、金属Alの強度を高めて、Al基合金の耐熱性と耐磨耗性とを向上させる。また、これらCr、Fe、Tiは、スプレイフォーミング法による急冷凝固法によって、Al−Cr系、Al−Fe系、Al−Ti系などの金属間化合物相のいずれかに、当該金属間化合物を構成する元素以外のいずれかの元素が更に固溶して、Al基合金の耐熱性と耐磨耗性とを向上させることができる。
Cr、Fe、Tiの各含有量が上記各下限未満では、Al−Cr系、Al−Fe系、Al−Ti系などの金属間化合物相の量が不足する。このため、Al基合金の耐熱性と耐磨耗性とを向上させることができない。また、Cr、Fe、Tiの含有量総和が上記各下限未満でも、同じく、金属間化合物相の量が不足する可能性がある。
一方、Cr、Fe、Tiの各含有量が上記各上限を超えた場合、靱性が低下して、却って、Al基合金の耐熱強度を低下させる。また、Cr、Fe、Tiの含有量総和が上記各上限を超えた場合でも、同じく、靱性が低下して、却って、Al基合金の耐熱強度を低下させる可能性がある。
したがって、Crは5〜30%、Feは1〜20%、Tiは1〜15%の各含有量範囲とし、Cr、Fe、Tiの含有量総和も15〜50%の範囲とする。また、Cr、Fe、Tiの総和は、好ましくは、15〜50%とする。
(金属間化合物相)
本発明Al基合金組織は、体積分率で50〜90%の前記金属間化合物相と、残部が金属Alマトリックスとで構成される。Cr、Fe、Tiを各々を含む前記組成では、Al−Cr系、Al−Fe系、Al−Ti系の二元系などを主相とするAl基金属間化合物相が体積分率で50〜90%を占めるようにする。
金属Alマトリックスと金属間化合物相とで構成されているAl基合金において、金属Alマトリックスは軟らかく、金属間化合物相は硬い。Al基合金では、このような、軟らかい金属Alマトリックス中に、硬い金属間化合物相が分散した組織となっている。そして、この硬い金属間化合物相が、Al基合金に、耐熱性と耐磨耗性、また、高温疲労強度を持たせる主相となる。一方、軟らかい金属Alマトリックスは、これら硬い金属間化合物相のバインダー、あるいは、これら硬い金属間化合物相の土台となって、金属間化合物相の機能を発揮させる役割を担う。
金属間化合物の量が少ないときには、金属間化合物は単独で存在しているものが多いが、本発明Al基合金のように、体積分率を50%以上と、金属間化合物の量を多くすると、複数の金属間化合物が、金属Al(マトリックス)を介在することなく互いに隣接して、金属間化合物(粒子)の集合体(連続体)である金属間化合物相を形成しやすくなる。このため、Al基合金に、耐熱性と耐磨耗性、また、高温疲労強度を持たせる主相としての機能をより発揮しやすくなる。
前記金属間化合物相の体積分率が50%未満では、Al基合金に、耐熱性と耐磨耗性、また、高温疲労強度を持たせる主相となる金属間化合物相が不足し、これらの特性が低下する。また、金属間化合物相の量が少なくなる一方で、金属Alの体積分率が大きくなり、金属間化合物相にて区切られた金属プールの大きさが必然的に大きくなる。この結果、耐熱性と耐磨耗性、また、特に高温疲労強度が低くなる可能性がある。
一方、前記金属間化合物相の体積分率が90%を超えた場合、金属Alの量が少なくなりすぎ、Al基合金の靱性が低下して、脆くなる。このため、耐熱Al基合金として使用できなくなる。
(0.1μm 以上のAl基金属間化合物の規制)
本発明では、更に、前記した通り、Al基金属間化合物の内で0.1μm 以上のサイズを有する金属間化合物中の総Al量を、熱フェノールによる抽出残査法によってAl基合金から分離抽出された0.1μm 以上のサイズを有する固体残査中の総Al量と見なし、この残査中の総Al量と前記全Al含有量との比、総Al量/全Al含有量を0.75以下として、前記Al基金属間化合物の内で0.1μm 以上のサイズを有する金属間化合物の割合を小さく規制する。
前記した通り、本発明のように、合金元素の添加量が多くなり、金属間化合物相が多くなると、Al基金属間化合物粒子の内、大きなサイズのAl基金属間化合物粒子が多くなるほど、高温疲労特性と制振性とが低下する。このため、本発明では、Al基金属間化合物相の内で0.1μm 以上の大きなサイズを有するAl基金属間化合物の割合を規制する。
この際、前記Al基金属間化合物粒子の内で、0.1μm 以上の大きなサイズを有する金属間化合物粒子の割合を少なくする(規制する)ことは可能であるが、その割合を定量的に規定するのは難しい。SEMやTEMによって測定された前記Al基金属間化合物の平均サイズがたとえ同じであっても、0.1μm 以上の大きなサイズを有するAl基金属間化合物の量的な割合が異なる場合は、当然起こりうる。
例えば、図1に、Al基金属間化合物のサイズと量との分布関係を模式的に示すように、Al基合金のA(実線で示す曲線)とB(点線で示す曲線)とは平均粒径サイズが同じ0.1μm である。しかし、両者は、0.1μm 以上の大きなサイズのAl基金属間化合物の量的な割合が異なる。即ち、Al基合金Bの方が、0.1μm 以上の大きなサイズのAl基金属間化合物の量が、Al基合金Aよりも多い。この結果、Al基合金Bの方が、Al基合金Aよりも、高温疲労特性と制振性とが低くなる。
このため、本発明では、比較的測定しやすいAl量によって、0.1μm 以上の大きなサイズを有するAl基金属間化合物の割合を規定する。即ち、0.1μm 以上の大きなサイズを有するAl基金属間化合物の総Al量を測定し、この総Al量をAl基合金に含有される全Al含有量との関係で規定する。
より具体的には、Al基金属間化合物の内で0.1μm 以上のサイズを有するAl基金属間化合物中の総Al量を、熱フェノールによる抽出残査法によって、Al基合金から分離抽出された、0.1μm 以上のサイズを有する固体残査中の総Al量と見なす。
熱フェノールによる抽出残査法は、通常は、合金(Al基合金)を熱フェノール処理して、金属(Al)を液相として、析出している金属間化合物を固相として分離し、金属Al中の合金元素固溶量や、析出している金属間化合物量や金属間化合物組成を、定性的、定量的に測定するものである。試験試料の重さは約0.5g程度、分解温度は、試料の形状にもよるが、約180℃で時間は15分程度、ろ過時間は15分から2時間程度とする。
本発明では、この熱フェノールによる抽出残査法を利用して、金属Alと金属Alに固溶しているCr、Fe、Tiなどの金属とを、ともに熱フェノール溶液に溶解させる。その一方で、Al基金属間化合物は、固体状態として、熱フェノール溶液に存在させ、両者を先ず分離する。
ここで、この熱フェノール溶液を0.1μm のメッシュサイズを有するフィルターでろ過すれば、0.1μm 以上のサイズを有するAl基金属間化合物は、固体残査として、フィルター上に残留する。そして、0.1μm 未満のサイズのAl基金属間化合物は、上記金属分が溶解した熱フェノール溶液とともに、前記フィルターを透過し、0.1μm のサイズを境に、0.1μm 以上と、0.1μm 未満のサイズのAl基金属間化合物とを分離できる。
このフィルター上に残留した固体残査(0.1μm 以上のサイズを有するAl基金属間化合物)の中の総Al量を計測すれば、この総Al量は、前記Al基金属間化合物の内で0.1μm 以上のサイズを有するAl基金属間化合物中の総Al量と見なすことができる。このフィルター上に残留した固体残査中の総Al量の計測は、ICP発光分析やX線分析により、適宜行なうことができる。
したがって、前記Al基金属間化合物の内で0.1μm 以上のサイズを有する金属間化合物を、前記残査中の総Al量と、前記全Al含有量との比、総Al量/全Al含有量で、0.75以下として、高温疲労特性と制振性とを向上乃至確保する。この総Al量/全Al含有量が0.75を超えた場合、高温疲労特性と制振性とが低下する。
(Al−Cr金属間化合物)
本発明Al基合金組織において、AlとCrは、例えば、Al13Cr2 、Al45Cr7 、Al112.3 Cr28.6、Al11Cr2 、Al8 Cr5 、Al16Cr9.5 、Al2 Crなどの金属間化合物を形成している。
これらAl−Cr金属間化合物相は、耐熱強度と耐磨耗性とのバランスに優れている。但し、Alの価数が高い金属間化合物相の方が低密度であり、軽量化の点では好ましい。更に、これらAl−Cr金属間化合物相に、Cr以外のFeとTiのいずれか、あるいは両方を、FeとTiとの総和で1質量%以上の量を固溶させることで、固溶強化により、Al−Cr金属間化合物の強度、靱性、硬さを向上させることができる。
(Al−Fe金属間化合物)
また、AlとFeは、例えば、Al13Fe4 、Al3 Fe、Al2.8 Fe、Al5 Fe2 、Al2 Fe、AlFeなどの金属間化合物を形成している。
これらAl−Fe金属間化合物相は、硬いため耐磨耗性に優れており、Al基合金の耐磨耗性を向上させる。但し、Alの価数が高い金属間化合物相の方が低密度であり、軽量化の点では好ましい。更に、これらAl−Fe金属間化合物相に、Fe以外のCrとTiのいずれか、あるいは両方を、CrとTiとの総和で1質量%以上の量を固溶させることで、固溶強化により、Al−Fe金属間化合物の強度、靱性、硬さを向上させることができる。
(Al−Ti金属間化合物)
更に、AlとTiは、例えば、Al3 Ti、Al2 Ti、TiAl、Ti3 Alなどの金属間化合物を形成している。
これらAl−Ti金属間化合物相は、金属間化合物相自体を微細化し、金属間化合物相乃至Al基合金の強度と靱性を向上させる。したがって、後述する、溶解条件との組み合わせで、上記金属間化合物相の微細化のための効果をより発揮する。但し、Alの価数が高い金属間化合物相の方が低密度であり、軽量化の点では好ましい。これらAl−Ti金属間化合物相に、Ti以外のFeとCrのいずれか、あるいは両方を、FeとCrとの総和で1質量%以上の量を固溶させることで、固溶強化により、Al−Ti金属間化合物の強度、靱性、硬さを向上させることができる。
(金属間化合物の平均サイズ)
本発明では、前記Al基金属間化合物の内で0.1μm 以上のサイズを有する金属間化合物の割合を規制するためにも、また、Al基合金の靱性を向上させるために、Al−Cr系、Al−Fe系、Al−Ti系の各金属間化合物相を微細化することが好ましい。具体的には、金属間化合物の平均サイズを5μm以下のできるだけ小さいものとすることが好ましい。
前記した通り、金属間化合物の量が少ないときには、金属間化合物は単独で存在しているものが多いが、本発明Al基合金のように、金属間化合物の量を多くすると、複数の金属間化合物粒子が、金属Al(マトリックス)を介在することなく互いに隣接して、金属間化合物相として、金属間化合物粒子の集合体(連続体)を形成しやすくなる。したがって、本発明Al基合金のように、金属間化合物量が多い場合には、この金属間化合物粒子自体を微細化することがより好ましい。本発明では、これら金属間化合物粒子の集合体乃至連続体を、金属間化合物相と総称し、これら金属間化合物の平均サイズを、好ましくは上記のように規定する。
本発明のように、Cr、Fe、Tiの含有量や金属間化合物の量が多くなるほど、高温強度と耐磨耗性は向上する。しかし、一方で、合金元素量や金属間化合物量が少ないAl基合金に比して、金属間化合物相の平均サイズの靱性への影響が大きくなる。この点、金属間化合物の平均サイズが5μmを超えて大きくなった場合には、Al基合金の加工性や靱性が大幅に低下する可能性がある。また、前記Al基金属間化合物相の熱間加工性を向上乃至確保する効果も、金属間化合物相を形成するAl基金属間化合物粒子自体が粗大化した場合には、半減してしまう可能性がある。
したがって、Cr、Fe、Tiの含有量や金属間化合物の量が多いAl基合金の加工性や靱性を保障するためには、金属間化合物の平均サイズを5μm以下とすることが好ましい。これら平均サイズが5μm以下を超えて大きくなった場合には、Al基合金の加工性や靱性を保障できない可能性がある。
金属間化合物(金属間化合物粒子)の平均サイズの測定は、5000〜15000倍のTEM(透過型電子顕微鏡)により行なった。即ち、TEMの視野内の観察組織像から、金属間化合物をトレースし、画像解析のソフトウエアとして、MEDIACYBERNETICS社製のImage-ProPlus を用いて、各金属間化合物の重心直径を求め、平均化して求めた。測定対象視野数は10とし、各視野の平均サイズを更に平均化して、金属間化合物の平均サイズとした。ただ、あまり観察倍率が高倍率になり過ぎると、観察箇所による金属間化合物相の疎密の差が大きく、試料全体の状態を表さなくなる。一方、低倍率になり過ぎると、サブμmレベルの金属間化合物相の存在状態を検知できなくなる。このため、更に、EDXを併用することで、金属間化合物乃至金属間化合物相と金属Al相との区別がより容易とした。
(製造方法)
以下に、本発明Al基合金の製造方法を説明する。本発明Al基合金は、合金元素量が多いために、金属間化合物を多く析出させるために、通常の溶解鋳造方法ではなく、急冷凝固法によって、プリフォーム体を制作するまた、急冷凝固法のうち、スプレイフォーミング法で製造される。
スプレーフォーミング法は、通常の溶解鋳造法( インゴットメイキング) よりも、格段に速い冷却・凝固速度を有するために、金属Alマトリックッス中に、Cr、Fe、Tiを所定量固溶させることができる。また、生成されるCr、Fe、Tiなどの各金属間化合物に、当該金属間化合物を構成する元素以外の二つの元素を強制固溶させることもできる。言い換えると、スプレーフォーミング法の冷却・凝固速度は、金属間化合物形成と、金属Alマトリックッスや金属間化合物相への上記元素の強制固溶とに適したものと言える。
但し、スプレイフォーミング法でも、その冷却・凝固速度の最適化は必要である。スプレイフォーミング法による好ましい態様は、上記本発明成分組成のAl合金を、溶解温度1100〜1600℃で溶製した後、溶湯のスプレイを開始して、スプレイフォーミング法によりプリフォームを作製する。
溶解温度を1100℃以上としたのは、上記本発明成分組成のAl合金において、各金属間化合物を完全に溶解させるためである。また、各合金元素の含有量が多いほど、各金属間化合物を完全に溶解させるためには、溶解温度を1100℃以上のより高い温度とすることが好ましいが、1600℃を超える温度とする必要は無い。
溶湯のスプレイを開始する際、好ましくは、前記溶湯を、スプレー開始温度まで100℃/h以上の冷却速度で冷却し、その後900〜1200℃でこの溶湯のスプレーを開始して、スプレーフォーミング法によりプリフォームを作製することである。前記高温で溶解するのは、金属間化合物を完全に溶解させるためであるが、ここで一旦溶湯を冷却してからスプレイを開始するのは、金属間化合物をある程度晶出させることや、晶出した金属間化合物を核として、スプレイフォーミング中に、他の金属間化合物を微細に晶出させる効果があるためである。また、低温からスプレイを開始すると、スプレイの冷却速度を上げ、晶出する金属間化合物が更に微細化される効果がある。
より具体的には、上記溶湯をスプレー開始温度まで100℃/h以上の冷却速度で冷却するパターン制御によって、先ず、スプレー開始までに、金属間化合物の微細化に効果のあるAl−Ti金属間化合物をある程度晶出させ、これを核として、スプレー中に、他のAl−Cr系、Al−Fe系の金属間化合物を微細に晶出させる。このパターン制御を行なわないと、晶出する金属間化合物を微細化できない可能性が高い。
また、溶湯のスプレー開始温度までの前記冷却速度が100℃/h未満では、上記した、スプレー開始までにAl−Ti金属間化合物をある程度晶出させることや、晶出したAl−Ti金属間化合物を核として、スプレーフォーミング中に、他のAl−Cr系、Al−Fe系の金属間化合物を微細に晶出させることができず、晶出する金属間化合物を微細化できない可能性が高い。
溶湯のスプレー開始温度は、スプレー過程(スプレーフォーミング過程)における、冷却・晶出速度に影響する。即ち、溶湯のスプレー開始温度は、低温の方が冷却速度を速くしやすい。しかし、スプレー開始温度が900℃未満では、スプレー過程前に、溶湯中に金属間化合物が晶出してしまい、ノズルが閉塞しやすくなる。一方、スプレー開始温度が1200℃を超えると、スプレー過程中での冷却速度が遅くなり、金属間化合物が粗大化しやすく、特に、後述する熱間加工によって、最終的なAl基合金組織における、金属Alのプールの最大長さが粗大化する可能性が高い。
なお、スプレー過程(スプレイフォーミング過程)の時間は、スプレー開始から40分以内に行なう(終了する)ことが好ましい。この時間が40分を超えると、溶湯やAl基合金プリフォーム体の高温での保持時間が40分を超え、プリフォームされたAl基合金中の金属間化合物が粗大化する可能性が高い。このため、Al基合金中の0.1μm 以上のサイズを有する金属間化合物の割合が多くなる可能性が高い。
また、スプレー過程(スプレイフォーミング過程)では、冷却速度を十分に速くすることが重要となる。冷却速度を十分に速くすると、金属間化合物の晶出核生成頻度が多くなるために金属間化合物粒子の粗大化を防止でき、金属間化合物相を微細化できる。また、金属間化合物粒子が微細かされるために、隣接粒と接触する頻度も小さくなり、金属間化合物の外郭寸法も小さくできる。
なお、一般のスプレイフォーミング法では、強度向上のためにプリフォームを緻密化する方向を重視している。このため、緻密なプリフォームを形成できる程度の緩い凝固状態を形成するために、冷却速度を遅くしている。この結果、一般のスプレイフォーミング法では、微細な金属間化合物は形成され難い。例えば前記特許文献4のように、プリフォームの気孔率が1質量%以下となっているような場合には、明らかに、冷却速度が遅すぎ、必然的に本発明のような微細な金属間化合物は得られず、金属間化合物が粗大となっている。
スプレイフォーミングにおける(スプレー過程中の)冷却速度は、例えば、ガス/メタル比(G/M比:単位質量あたりの溶湯に吹き付けるガスの量)によって制御できる。本発明では、このG/M比が高いほど、冷却速度を速くでき、本発明で規定するような微細な金属間化合物が得られ、金属Alマトリックッス中に、Cr、Fe、Tiを所定量固溶させることができる。また、金属間化合物に、前記した金属間化合物を構成する以外の元素を強制固溶させることができる。
G/M比が低過ぎると、冷却速度が不足し、金属Alマトリックッス中に、Cr、Fe、Tiを所定量固溶させることができなくなる。また、金属間化合物に、前記した金属間化合物を構成する以外の元素を強制固溶させられなくなる。また、金属間化合物も粗大となる。但し、G/M比が高過ぎると、プリフォームの歩留まり(溶湯の堆積効率)が低下する。
これらの条件を満足するG/M比の下限は、例えば、3Nm 3/kg以上、好ましくは5Nm 3/kg以上、さらに好ましくは6Nm3 /kg以上であり、G/M比の上限は、例えば、20Nm3 /kg以下、好ましくは15Nm3 /kg以下とすることが推奨される。
このようなスプレイフォーミング法より得られたAl基合金は、このAl基合金プリフォーム体を一旦真空容器中に密封した状態でHIP処理を行なって緻密化するか、あるいは、そのままのプリフォーム体の状態で、熱間にて、鍛造、押出、圧延のいずれかで加工することが必要である。また、前記急冷粉末冶金法によって得られた粉末も、CIPやHIPで一旦固化成型するか、あるいは、そのままのプリフォーム体の状態で、Al基合金(プリフォーム体)を、上記熱間加工することが必要である。但し、HIP処理は、高温に3時間以上の長時間Al基合金(プリフォーム体)を曝すことになるので、金属間化合物が粗大化しやすくなる。このため、本発明では、HIP処理はしない方が好ましい。
これらの熱間加工(塑性加工)によって、Al基合金組織における、前記Al基金属間化合物の内で0.1μm 以上の大きなサイズを有するAl基金属間化合物の割合を、前記した規定を満足するように規制できる。また、Al基金属間化合物相を含めた金属間化合物相が、前記した規定を満足するように微細均一に分散される。
但し、これらの鍛造、押出、圧延の熱間加工における加工温度は、450〜550℃の範囲と、比較的低くすることが好ましい。このような加工温度範囲において熱間加工すると、Al基金属間化合物相を含めた金属間化合物が微細化されるとともに、均一に分散される。
熱間加工における加工温度が550℃を超えて高くなると、金属間化合物が粗大化して、前記Al基金属間化合物の内で0.1μm 以上の大きなサイズを有する金属間化合物の割合を、前記した規定を満足するように規制できない。また、他の金属間化合物も粗大化する。一方、加工温度が450℃未満では、熱間加工による上記効果が達成できない。
同様の主旨で、これらの熱間加工における加工率はできるだけ大きくする。熱間押出の場合は押出比を6以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上として、また、熱間圧延や熱間鍛造の場合には、加工率を70%以上とする。押出比や加工率がこれより小さ過ぎると、熱間加工による上記効果が達成できない可能性が高い。
このように熱間加工されたAl基合金は、そのまま、あるいは、機械加工など適宜の処理が施されて、製品Al基合金とされる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1に示す、A〜Kまでの各成分組成(A〜Fが発明例組成、G〜Jが比較例組成)のAl合金の溶湯を、1300〜1600℃の溶解温度で溶解し、この溶湯をスプレー開始温度まで100℃/h以上の冷却速度で冷却し、その後900〜1400℃でこの溶湯のスプレーを開始して、G/M比2〜10でスプレイフォーミング(使用ガス:N2 )し、種々のプリフォームを作製した。発明例、比較例の各例における、これらスプレイフォーミング条件も表2に示す。
比較例8のみは、得られたプリフォームをHIP処理し、このHIP処理ままのAl基合金(試験材)の特性を評価した。HIP処理条件は、得られたプリフォームをSUS製の缶に装填し、13kPa(100Torr)以下に減圧した状態で、温度575℃で2時間保持して脱気し、缶を密封してカプセルを形成した。得られたカプセルをHIP処理[温度:550℃、圧力:100MPa(1000気圧)、保持時間:2時間]した。
その他の例は、得られた各プリフォームを、表2に示す、加熱温度(加熱から押出加工における温度)条件、押出比条件で、丸棒に熱間押出加工して、Al基合金(試験材)を得た。
これら熱間押出加工後のAl基合金およびHIP処理後のAl基合金などの試験材の特性を以下のようにして評価した。これらの結果を各々表3に示す。
(総Al量/全Al含有量)
前記した総Al量/全Al含有量は、前記熱フェノールによる抽出残査法により行い、フィルター上に残留した固体残査中の総Al量は、ICP発光分析により求めた。そして、これらの各総Al測定量と、各Al基合金の表1に示す各全Al含有量との比、総Al量/全Al含有量を求めた。
(金属間化合物相の体積分率)
Al基合金組織の金属間化合物相の体積分率は、1000倍のSEMにより、約500μm×約500μm程度の大きさの各10視野のAl基合金の組織観察して測定した。そして、写真撮影なり画像処理した視野内の組織の、金属Al相と金属間化合物相との区別をEDXによって行った上で、視野内の金属間化合物相の体積分率を測定した。
(金属間化合物の平均サイズ)
金属間化合物(金属間化合物粒子)の平均サイズの測定は、前記した通り、5000〜15000倍のTEM(透過型電子顕微鏡)によりEDXを併用して行なった。即ち、TEMの視野内の観察組織像から、金属間化合物をトレースし、画像解析のソフトウエアとして、MEDIACYBERNETICS社製のImage-ProPlus を用いて、各金属間化合物の重心直径を求め、平均化して求めた。測定対象視野数は10とし、各視野の平均サイズを更に平均化して、金属間化合物の平均サイズとした。
(金属間化合物の同定)
前記視野内の各金属間化合物を、X線回折およびTEMの電子線回折パターンから、金属間化合物の結晶構造を解析した。その結果、表3の発明例1〜7と比較例8〜14では、金属間化合物相は、Al−Cr系、Al−Fe系、Al−Ti系の二元系を主相とするAl基金属間化合物と金属Alマトリックスとで構成されていることを確認した。
(金属間化合物相への元素の固溶量)
因みに、表3の発明例1〜7、比較例8〜14のAl−Cr系金属間化合物に固溶したFe、Tiなどの元素の固溶量を測定したところ、程度差はあるが、Fe、Ti含有量の内の5〜10%程度のFe、Tiが固溶していた。元素の固溶量測定は、15000倍の組織のFE−TEM(日立製作所製、HF−2000電界放射型透過電子顕微鏡)および、このTEMに付随の、45000倍のEDX(Kevex社製、Sigmaエネルギー分散型X線検出器:energy dispersive X- ray spectrometer)により、前記視野内のAl−Cr系金属間化合物を各々10点測定し、平均化した。
(高温強度)
これらAl基合金の高温強度を測定した。平行部Φ4×15mmLとした各Al基合金の試験片を400℃に加熱して15分この温度に保持後、試験片をこの温度で高温引張試験を行なった。引張速度は0.5mm/minとし、歪み速度5×10-4(1/s)とした。高温引張強度は、250MPa以上のものを高温強度乃至耐熱性が合格として評価した。
(耐磨耗性)
高温での耐磨耗性試験は、ピンオンディスク磨耗試験で行なった。ピン材(Φ7mm×15mm長さ、約1g)に各試験材をセットし、磨耗相手側である試験ディスク材はFC200(鋳鉄)とした。試験温度は400℃とし、荷重10kgf、ピンの回転半径0.02mで、回転する前記試験ディスク材に、試験材を、潤滑無しで10分間接触させた。この際の各試験材の摩耗による質量減少率、(試験前質量−試験後質量)/試験材の試験前質量で評価した。この質量の摩耗減少率が0.2g以下のものを高温での耐磨耗性が合格として評価した。
(高温疲労強度)
高温疲労特性は、小野式回転曲げ疲労試験機を用い、平行部Φ8×30mmL、全長90mmLとした各Al基合金の試験片を400℃に加熱して15分この温度に保持後、高温試験片を回転数3000rpm、繰り返し数107 回で高温回転曲げ疲労試験を行ない、疲労強度を求めた。高温疲労強度は110MPa以上のものを高温疲労特性が合格として評価した。
(制振性)
制振性、振動減衰性能試験法(インピーダンス法)を用い、全長100mm×幅5mm×厚さ1mmとした各Al基合金の試験片中央部にひずみゲージを取り付け、試験片中央部に加振した際の、固有減衰能SDCを求めた。半値幅法により、SDCは、2πη×100%で表され、η=Δ(f0 /f)〔但し、f0 :試験片の共振周波数、f:加振周波数〕で表される損失係数ηと、δ=πηで表される対数減衰率とから算出した。
表1〜2から明らかなように、発明例1〜7(発明組成A〜F)は、本発明で規定する、Cr、Fe、Tiの各成分範囲と、好ましいCr、Fe、Ti含有量の総和の範囲をともに満足する。また、スプレーフォーミングの際のスプレー時間を含め、各製造条件が前記した好ましい範囲内である。この結果、Al基合金組織中に、Al−Cr系、Al−Fe系、Al−Ti系などのAl基金属間化合物を主相として有し、これら金属間化合物相の体積分率が50〜90%であるとともに、Al基金属間化合物の平均サイズが5μm以下である。更に、総Al量/全Al含有量が0.75以下であり、0.1μmを超える大きなサイズのAl基金属間化合物が少ない。
この結果、発明例1〜7は、表3から明らかなように、高温強度、耐摩耗性、高温疲労強度や制振性に優れている。
これに対して、比較例8〜14は、本発明で規定する、Cr、Fe、Tiの各成分範囲、金属間化合物相の体積分率、金属間化合物の平均サイズ、総Al量/全Al含有量、のいずれかが範囲から外れている。この結果、比較例8〜14は、表3から明らかなように、高温強度、耐摩耗性、高温疲労強度や制振性のいずれかが発明例に比して著しく劣っている。
例えば、熱間押出加工せずにHIP処理のみを行なった比較例8は、金属間化合物相の体積分率、金属間化合物の平均サイズを満足しているものの、総Al量/全Al含有量が高めに外れる。このため、高温強度、耐摩耗性、高温疲労強度や制振性が発明例に比して劣る。
比較例9、10は、発明例合金Aを用いているものの、スプレーフォーミングの際のスプレー時間が40分を超える。このため、金属間化合物相の体積分率、金属間化合物の平均サイズを満足しているものの、総Al量/全Al含有量が高めに外れる。このため、高温強度、耐摩耗性、高温疲労強度や制振性が発明例に比して劣る。
比較例11は、Crが下限に外れる表1の合金Gを用いている。このため、このため、本発明で規定する他の要件を満足しているものの、高温強度、耐摩耗性、高温疲労強度や制振性が発明例に比して劣る。
比較例12は、Crが上限に外れる表1の合金Hを用いている。このため、このため、本発明で規定する他の要件を満足しているものの、総Al量/全Al含有量が高めに外れる。この結果、高温強度、耐摩耗性、高温疲労強度が発明例に比して劣る。
比較例13は、Cr、Fe、Ti含有量の総和が少な過ぎる表1のI合金を用いている。このため、金属間化合物相の体積分率が低めに外れる。この結果、高温強度、耐摩耗性、高温疲労強度が発明例に比して劣る。
比較例14は、Cr、Fe、Ti含有量の総和が多過ぎる表1のJ合金を用いている。このため、金属間化合物相の体積分率が高めに外れる。この結果、押出加工において割れが発生し、押出が不可能となり、特性も評価できなかった。
以上の結果から、本発明の各要件の臨界的な意義が分かる。
Figure 0004704723
Figure 0004704723
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以上説明したように、本発明は、軽量であり、より高温強度(耐熱性)が高く、高温疲労強度や制振性にも優れている耐熱性Al基合金を提供できる。したがって、自動車や航空機などの、ピストン、コンロッドなどの耐熱特性が求められる種々の部品に適用することができる。
Al基合金中の金属間化合物の粒度分布を模式的に示す説明図である。

Claims (2)

  1. 質量%で、Cr:5〜30%、Fe:1〜20%、Ti:1〜15%を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなり、スプレイフォーミング法による急冷凝固法により得られたプリフォーム体を熱間加工して得られたAl基合金であって、Al基合金組織が、体積分率で50〜90%の金属間化合物相と、残部が金属Alマトリックスとで構成され、前記金属間化合物相の内で0.1μm 以上のサイズを有する金属間化合物相中の総Al量を、熱フェノールによる抽出残査法によってAl基合金から分離抽出された0.1μm 以上のサイズを有する固体残査中の総Al量と見なし、この残査中の総Al量と、前記成分組成の内の全Al含有量との比、総Al量/全Al含有量を0.75以下として、前記金属間化合物相の内で0.1μm 以上のサイズを有する金属間化合物の割合を規制したことを特徴とする高温疲労特性と制振性に優れた耐熱性Al基合金。
  2. 前記金属間化合物の平均サイズが5μm以下である請求項1に記載の高温疲労特性と制振性に優れた耐熱性Al基合金。
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