明 細 書
高温疲労特性、制振性、耐摩耗性、及び加工性に優れた耐熱性 A1基合 金
技術分野
[0001] 本発明は、高温強靱性 (耐熱性)ゃ耐摩耗性とともに、更に、疲労特性にも優れた 耐熱性 A1基合金であって、自動車や航空機などのエンジン部品(ピストン、コンロッド )などのような、耐熱強度と軽量性を要求される機械部品に用いて好適な A1基合金 に関するものである。
背景技術
[0002] 自動車や航空機などのエンジン部品では、 300〜400°C程度までの高温強靱性( 耐熱性)ゃ耐摩耗性、更には、このような高温領域での疲労特性も要求される。
[0003] 先ず、耐熱性について、従来の溶解铸造合金では、 Al-Cu系合金(2618などの 2 000系 A1合金)を始め、種々の耐熱合金が開発されている力 使用温度が 150°Cを 超える高温下では、十分な高温強度を得ることができな力つた。 Al-Cu系合金では 時効硬化による微細析出物で強度を確保しているため、使用温度が 150°Cを超える と、この析出物相が粗大化し、著しく強度が低下するからである。
[0004] そこで、従来から、急冷凝固法を適用した A1基合金が開発されてきた。急冷凝固法 の一つである急冷粉末冶金法によれば、 Fe、 Cr、 Mn、 Ni、 Ti、 Zrなどの合金元素 の添加量を、前記溶解铸造 A1合金よりも増すことができる。したがって、これら合金元 素を多量に添加した A1合金を急冷凝固によって粉末ィ匕し、これを固化成型すること で、使用温度が 150°Cを超える高温下でも、高温強度に優れた A1基合金を得ようと するものである(特許文献 1、 2参照)。これは、前記合金元素によって、高温でも安定 な A1との金属間化合物を組織中に分散させて、高温強度を高くしている。
[0005] 更に、前記金属間化合物の微細化により、金属間化合物の分率を増加させ、高強 度化を図る技術も提案されている (特許文献 3参照)。また、急冷凝固法の一つであ るスプレーフォーミング法による、 Fe、 V、 Mo、 Zr、 Tiなどの合金元素を添カ卩し、これ ら合金元素と A1との金属間化合物を微細化させた、軽量化耐熱 A1基合金も開発さ
れており、過剰の Siを添加し、初晶の Siを微細化させて、耐磨耗性を兼備させた高 強度 A1基合金も提案されて ヽる (特許文献 4参照)。
[0006] 次ぎに、 A1基合金の疲労特性にっ 、て、前記した自動車や航空機などのエンジン 部品用に、マトリックスを構成する A1結晶粒の平均粒径を微細化させて、疲労特性を 向上させることが知られている。例えば、 Si;4〜12重量%、 Cu;0〜7重量%、 Mg ; 0〜0. 5重量%、Ti;0. 15〜0. 5重量%、Fe ;0〜0. 7重量%、 Mn;0〜0. 7重量 %、残部 A1及び不純物からなり、基地相と該基地相より弾性率が高い晶出物または 硬質粒子とからなる亜共晶組織を有する合金であって、上記合金の結晶粒度は、上 記晶出物または硬質粒子によって取り囲まれた基地相の単位セルサイズの 24倍以 下であることを特徴とする耐疲労特性に優れた A1基合金が提案されて 、る (特許文 献 5参照)。
[0007] また、合金元素として Fe、 Tiおよび Siを含有し、残部が AUりなる A1合金であって、
6、1ぉょび31の含有量がそれぞれ4原子%≤ 6≤6. 8原子%、0. 5原子%≤Ti ≤1. 2原子%、 1. 5原子%≤Si≤2. 5原子%であり、マトリックスを構成する A1結晶 粒 (面心立方構造)の平均粒径 D1が Dl≤: mであり、さらに金属間化合物の平 均粒径 D2が D2≤0. 5 mである A1基合金が提案されている(特許文献 6参照)。 特許文献 1:特許 2911708号公報
特許文献 2:特公平 7-62189号公報
特許文献 3 :特開平 5-195130号公報
特許文献 4:特開平 9-125180号公報
特許文献 5:特開平 11-199960号公報
特許文献 6:特許 3151590号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] 前記特許文献 1、 2などの急冷粉末冶金法によれば、合金元素の添加量を増せば 、 A1基合金の高温強度を高くできる。しかし、合金元素の添加量を増加し過ぎると、 金属間化合物の粗大化を招くため、 300°Cで 300MPa程度の高温強度しか得られ ていない。
[0009] これは、金属間化合物の微細化により、金属間化合物の分率を増加させた、前記 特許文献 3でも同様である。更に、前記特許文献 4などのスプレーフォーミング法によ る A1基合金でも、同様の高温強度しか得られて 、な!/、。
[0010] 更に、前記した特許文献 5、 6の疲労特性は、 300〜400°C程度での高温疲労特 性は低くならざるを得ない。例えば、特許文献 5における熱疲労試験は、 40〜260°C 程度の温度でし力なぐまた、高サイクル疲労試験 (試験片に一定の引張り-圧縮繰 返し応力を付与)も室温における評価であり、し力も、応力繰返し数 107回の疲労強 度は、 80MPaレベル程度と低い。
[0011] また、特許文献 6でも、 200°C程度の比較的低温における、高サイクル疲労試験で の応力繰返し数 107回の疲労強度は、 180MPaレベル程度と低い。したがって、 A1 基合金のマトリックスを構成する A1結晶粒の平均粒径を微細化させて、疲労特性を 向上させることには限界がある。
[0012] したがって、本発明は、かかる問題に鑑みなされたもので、自動車や航空機などの エンジン部品の要求特性を満足する、高温強靱性ゃ耐摩耗性とともに、更に、高温 疲労特性にも優れた耐熱性 A1基合金を提供することを第 1の目的とする。
[0013] また、耐熱性 A1基合金は、軟らか 、金属 A1マトリックス中に、硬 ヽ金属間化合物相 が分散した、分散強化型糸且織となっている。
[0014] このような組織において、金属間化合物の種類によっては、 A1基合金の加工性が 低下する。例えば、 Al-Ti系である TiAl、 Al Tiなどや、 Si Nを含んだ場合、これら
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の金属間化合物は、 500°Cを超えても硬いために、 A1基合金の熱間加工性を低下さ せる問題がある。
[0015] 更に、このような分散強化型組織においては、金属 A1マトリックスが軟らかぐ強度 が比較的低いために、耐熱強度と軽量性を要求される機械部品に使用された場合、 硬 ヽ金属間化合物相を表面に保持できず、耐摩耗性が低下すると!ヽぅ問題もある。
[0016] そこで、本発明は、第 2に、力かる問題に鑑みなされたもので、より高温強度 (耐熱 性)が高ぐ耐摩耗性と加工性にも優れている耐熱性 A1基合金を提供することを第 2 の目的とする。
[0017] 更に、このような分散強化型組織の A1基合金は、用途によっては、エンジンなどの
機械的な振動を吸収する減衰性能 (制振性)が要求される場合もある。
[0018] そこで、本発明は、かかる要求にも鑑みなされたもので、自動車や航空機などのェ ンジン部品の要求特性を満足する、高温強靱性ゃ耐摩耗性とともに、更に、高温疲 労特性や制振性にも優れた耐熱性 A1基合金を提供することを第 3の目的とする。 課題を解決するための手段
[0019] この第 1の目的を達成するために、第 1発明の高温疲労特性に優れた耐熱性 A1基 合金の要旨は、 A1基合金組織が、体積分率で 50〜90%の金属化合物相と、残部 が金属 A1マトリックスとで構成され、前記金属間化合物相を構成する 0. 以上 の粒径を有する金属間化合物の内、金属間化合物面積 Sと金属間化合物の周長しと の関係 L2ZSが 13以上の表面凹凸形状を有する金属間化合物が 40%以上存在す ることを特徴とする。
金属間化合物の表面が凹凸形状を有するほど上記比率が高くなり、平滑であるほ ど低くなるが、金属間化合物の表面が凹凸形状を有することによって、金属間化合物 の金属 A1マトリックスとの界面強度が高まり、高温で応力が負荷された場合でも、金 属間化合物が金属 A1マトリックス力も剥離しにくぐ破壊の起点となりにくぐ A1基合 金の高温疲労特性を高めることができる。
[0020] 上記耐熱性 A1基合金において、前記金属間化合物相を構成する金属間化合物の 平均サイズが 7 μ m以下、好ましくは 5 μ m以下であることが好ましい。
金属間化合物の平均サイズを 7 m以下、好ましくは 5 μ m以下とすると、 A1基合 金の靭性の低下を防止することができる。
[0021] また、第 1の目的は、観点をかえ、金属 A1のプールとの関連で見ると、前記 A1基合 金組織力、前記金属間化合物相にて区切られた前記金属 A1のプールの最大長さの 平均が 40 m以下である第 2の発明によっても達成することができる。
前記金属 A1のプールの最大長さの平均力 0 m以下であることにより、強度の低 い金属 A1のプール部分に応力が集中することを抑制することができ、高温疲労特性 を維持することができる。また、前記金属 A1のプールの最大長さの平均力 0 m以 下であることにより、 A1基合金組織における金属 A1のプールと金属間化合物相の分 散状態が不均一とならず、 A1基合金組織において、金属間化合物相が集中する部
分と、金属間化合物相が無い、あるいは疎となる部分とが殆ど生じず、その結果製品
A1基合金に、引張り 圧縮の繰り返し応力が高温で付与された場合でも、疲労強度 の著し ヽ低下を抑制することができ、耐熱性及び耐摩耗性を維持することができる。
[0022] 本発明に係る耐熱性 A1基合金にぉ ヽて、前記金属間化合物相を形成する元素と して、 Cr、 Fe、 Ti、 Mn、 V、 S ら選択される元素を三種、これら三種の元素の総和 で 15〜50質量%含む組成を有するのが好ましい。
これらの元素の総和が 15質量%以上では、金属間化合物相 (体積分率)が各々不 足せず、 A1基合金の耐熱性と耐摩耗性、また高温疲労強度を向上させることができ る力 である。一方、これら元素の総和が 50質量%以下では、靭性が低下して脆くな ることがないからである。
[0023] また、本発明に係る耐熱性 A1基合金は、前記金属間化合物相を形成する元素とし て、質量%で、 Cr: 5〜30%、 Fe : 1〜20%、 Ti: 1〜15%、を各々含む組成を有す るのが好ましい。
このような組成において、スプレーフォーミング法などによる急冷凝固法によってプ リフォーム体を制作すれば、最終的に A1基合金組成の、体積分率で 50〜90%の金 属間化合物相を、 A1— Cr系、 A1— Fe系、 Al—Ti系の二元系を主相とする金属間化 合物相から構成でき、高温疲労特性を一層向上させることができるからである。
[0024] 特に、本発明に係る耐熱性 A1基合金にぉ 、て、前記金属間化合物相が A1— Cr系 、 Al— Fe系、 Al—Ti系の金属間化合物相からなるのが好ましい。
Al-Cr系、 Al-Fe系、 Al-Ti系では、高温疲労特性を向上させることができる力ゝらで ある。
[0025] また、本発明に係る耐熱性 A1基合金にお ヽて、前記 A1基合金組織が、前記金属 A 1中に、 Cr、 Fe、 Tiが、これらの総和で 0. 02〜10質量0 /0固溶しているものであるの が好ましい。
Cr、 Fe、 Tiの固溶量力 これらの総和で 0. 02質量%以上では、金属 A1マトリック スの強度が、耐熱機械部品に使用された場合に、硬い金属間化合物相を表面に保 持できる程度に上昇する。一方、 10質量%以下では、金属 A1マトリックスが脆くなら ず、即ち靭性が低下することがないからである。
[0026] 本発明に係る耐熱性 A1基合金にお ヽて、前記 A1基合金組織が、前記金属間化合 物相の内で 0. l ^ m以上のサイズを有する金属間化合物相中の総 A1量を、熱フエ ノールによる抽出残查法によって A1基合金カゝら分離抽出された 0. l /z m以上のサイ ズを有する固体残查中の総 A1量と、前記成分組成の内の全 A1含有量との比、総 A1 量 Z全 A1含有量を 0. 75以下として、前記金属間化合物相の内で 0. 以上の サイズを有する金属間化合物の割合を規制したものである。
合金元素の添加量が多くなり、金属間化合物相が多くなると、 A1基金属間化合物 粒子の内、大きなサイズの A1基金属間化合物粒子が大きくなるほど、即ち総 A1量 Z 全 A1含有量が 0. 75を超えた場合、高温疲労特性と制振性とが低下する。
[0027] なお、本発明に係る耐熱性 A1基合金にぉ 、て、前記 A1基合金が、急冷凝固法に より得られたものである。
[0028] 本発明は、上記第 2の目的を達成するために、合金組成面カゝら検討したもので、第 3の発明は、質量%で、 Cr: 5〜30%、 Fe : 1〜20%、 Ti: 1〜15%を含み、残部が A 1及び不可避的不純物からなる、急冷凝固法により得られた A1基合金であって、 A1基 合金組織が、体積分率で 50〜90%の金属間化合物相と、残部が金属 A1マトリックス とで構成され、前記金属 A1中に、 Cr、 Fe、 Tiが、これらの総和で 0. 02〜10質量% 固溶して ヽることを特徴とする。
Cr、 Fe、 Tiの固溶量力 これらの総和で 0. 02質量%未満では、金属 A1マトリック スの強度が、耐熱機械部品に使用された場合に、硬い金属間化合物相を表面に保 持できる程度に上昇しない。一方、 10質量%を超えた場合、金属 A1マトリックスが脆 くなつて、靭性が低下し、耐熱機械部品として使用できなくなる。
[0029] 上記構成の耐熱性 A1基合金にお ヽて、前記金属間化合物相を構成する金属間化 合物の平均サイズが 7 μ m以下であることが好ましい。
金属間化合物の平均サイズが 7 mを超えて大きくなつた場合には、 A1基合金の 加工性ゃ靭性が大幅に低下する可能性があるからである。
[0030] さらにまた、本発明は、上記耐熱性 A1基合金に対し、上記第 3の目的を達成するた めに、第 4発明は、本発明に係る耐熱性 A1基合金において、質量%で、 Cr: 5〜30 %、 Fe : 1〜20%、 Ti: 1〜15%を含み、残部が A1及び不可避的不純物力もなる、急
冷凝固法により得られた Al基合金であって、 A1基合金組織が、体積分率で 50〜90 %の金属間化合物相と、残部が金属 A1マトリックスとで構成され、前記金属間化合物 相の内で 0. l ^ m以上のサイズを有する金属間化合物相中の総 Al量を、熱フエノ ールによる抽出残查法によって A1基合金カゝら分離抽出された 0. 1 m以上のサイ ズを有する固体残查中の総 A1量と見なし、この残查中の総 A1量と、前記成分組成の 内の全 A1含有量との比、総 A1量 Z全 A1含有量を 0. 75以下として、前記金属間化 合物相の内で 0. 1 m以上のサイズを有する金属間化合物の割合を規定したこと を特徴とする。
合金元素の添加量が多くなり、金属間化合物相が多くなると、 A1基金属間化合物 粒子の内、大きなサイズの A1基金属間化合物粒子が大きくなるほど、即ち総 A1量 Z 全 A1含有量が 0. 75を超えた場合、高温疲労特性と制振性とが低下するからである 発明の効果
[0031] 以上の説明から明らかなように、上記第 1の発明によれば、以下の効果を得ることが できる。
従来の耐熱 A1基合金は、高温疲労特性を向上させるために、 A1基合金のマトリック スを構成する A1結晶粒の平均粒径を微細化させている。これに対して、本発明に係 る A1基合金は、 400°Cレベルのさらに高温での耐熱性を向上させるために、金属間 化合物相の体積分率を 50〜90%と大きくした上で、前記金属間化合物相を構成す る金属間化合物の表面形状を、高温疲労特性向上効果を有する形状に制御する。
[0032] 金属 A1マトリックスと金属間化合物相とで構成されている A1基合金において、金属 A1マトリックスは軟らかぐ金属間化合物相は硬ぐ軟らかい金属 A1マトリックス中に、 硬い金属間化合物相が分散した組織となっている。このような A1基合金組織に、耐 熱機械部品としての使用中に、応力が負荷された場合に、 A1基合金の変形によって 、軟らかい金属 A1マトリックス力も硬い金属間化合物が剥離し、硬い金属間化合物が 破壊の起点となりやすい。この傾向は、耐熱性向上のために、多量の金属間化合物 相を有している場合には、特に顕著となる。このように、硬い金属間化合物が破壊の 起点となりやすい場合、高温疲労特性は当然低下してしまう。
[0033] 即ち、合金元素の添加量が多くなり、金属間化合物相が多くなると、 A1基合金の高 温疲労特性は、 A1マトリックスと金属間化合物相の界面の強度が律速するようになる 。そして、この界面強度が弱いと、弾性変形域で破断し、高温疲労特性が低下すると いう問題が新たに生じる。
[0034] したがって、 A1基合金において、高温疲労特性を高めるためには、硬い金属間化 合物力 軟らかい金属 A1マトリックス力 剥離しにくい界面強度 (金属間化合物の金 属 A1マトリックスとの界面強度)を有することが必要となる。
[0035] このため、本第 1発明では、 A1基合金において、前記金属間化合物相を構成する 金属間化合物の表面が凹凸形状を有するように制御する。この金属間化合物の界 面強度は、後述する通り、金属間化合物の表面が凹凸形状を有する (金属間化合物 の表面がデコボコ、あるいはギザギザである)ほど高くなり、金属間化合物の表面が 平滑 (金属間化合物の表面が平坦)であるほど低くなる。
[0036] 金属間化合物の表面が凹凸形状を有することによって、金属間化合物の金属 A1マ トリックスとの界面強度が高まり、高温で応力が負荷された場合でも、金属間化合物 が金属 A1マトリックス力も剥離しにくぐ破壊の起点となりにくくし、 A1基合金の高温疲 労特性を高めることができる。
[0037] スプレーフォーミング法など急冷凝固法により得られたままの A1基合金組織におけ る金属 A1のプールと金属間化合物相の分散状態では、金属間化合物の表面は平滑 になりやすい。また、急冷凝固法により得られたままの A1基合金を、更に HIP (熱間 静水圧プレス)で固化成型した場合も、金属間化合物の表面は平滑になりやすい。 常法により、 HIP処理した場合、後述する通り、加熱時間を含めた高温保持時間が 長くなり、組織自体は緻密化されるものの、金属間化合物の表面が平滑になりやす いからである。また、 HIP処理した場合、上記高温保持時間が長くなることで、金属間 化合物のサイズが粗大化する可能性が高いという問題もある。
[0038] 金属間化合物の表面が平滑な場合、合金元素の添加量が多くなり、金属間化合物 相が多くなると、前記した、 A1マトリックスと金属間化合物相との界面強度は弱くなる。 このため、高温疲労特性が低下し、弾性変形域で破断してしまう可能性が高くなる。 前記した特許文献 5の高温疲労強度が低いのはこのためである。また、これら従来の
耐熱 Al基合金のように、 A1基合金のマトリックスを構成する A1結晶粒の平均粒径を 微細化させても、金属間化合物の表面が凹凸になるわけではなぐ表面が平滑な状 態はそのまま維持される。
[0039] これに対して、前記した特許文献 6では、エアアトマイズした粉末を CIPにてビレット に成形して、このビレットを熱間押出加工している。但し、後述する通り、常法により、 熱間押出加工した場合、加熱時間を含めた高温保持時間が長くなり、金属間化合物 の表面が平滑になりやすい。また、特許文献 6では、 Fe、 Tiおよび Siの含有量が少 なぐ前記金属間化合物相が、体積分率で 50%を超える大きな割合とはならない。こ のため、金属 A1の体積分率が大きくなり、金属間化合物によって仕切られる金属プ ールの大きさが必然的に大きくなる。金属間化合物相が少なぐ前記金属 A1のブー ルの大きさが大きくなるほど、耐熱機械部品としての A1基合金使用中に、強度の低い 金属 A1のプール部分に応力が集中する。このように、強度の低い金属 A1のプール部 分に高温で応力が集中した場合、疲労特性は当然低下してしまう。
[0040] また、第 2の発明によれば以下のような効果を得ることができる。
従来の耐熱 A1基合金は、高温疲労特性を向上させるために、 A1基合金のマトリック スを構成する A1結晶粒の平均粒径を微細化させている。これに対して、本第 2発明 に係る A1基合金は、金属間化合物相の体積分率を 50〜90%と大きくした上で、言 い換えると、前記金属 A1の体積分率を小さくした上で、前記金属間化合物相にて区 切られた(囲まれた)、前記金属 A1のプール (A1基地相)を微細化させて、高温疲労 特性を向上させる。
[0041] 金属 A1マトリックスと金属間化合物相とで構成されている A1基合金において、金属 A1マトリックスは軟らかぐ金属間化合物相は硬い。このような、軟らかい金属 A1マトリ ックス中に、硬い金属間化合物相が分散した組織となっていると、前記金属 A1のプ ールの大きさが大きくなるほど、耐熱機械部品としての A1基合金使用中に、強度の 低い金属 A1のプール部分に応力が集中する。このように、強度の低い金属 A1のプー ル部分に高温で応力が集中した場合、疲労特性は当然低下してしまう。
[0042] また、前記金属 A1のプールの大きさが大きくなるほど、 A1基合金組織における金属 A1のプールと金属間化合物相の分散状態は、どうしても不均一とならざるを得な!/、。
このように、硬 、金属間化合物相と軟らか 、金属 A1のプールとが不均一に分散した 場合、高サイクルの疲労など、製品 A1基合金に、引張り-圧縮の繰返し応力が高温で 付与された場合には、疲労強度は著しく低くならざるを得ない。
[0043] 特に、スプレーフォーミング法など急冷凝固法により得られたままの A1基合金組織 における金属 A1のプールと金属間化合物相の分散状態では、金属 A1のプールの大 きさが大きくなりやすい。これに対して、急冷凝固法により得られたままの A1基合金を 、更に CIP (冷間静水圧プレス)や HIP (熱間静水圧プレス)で固化成型した場合は、 組織自体は緻密化される。しかし、金属 A1のプールの大きさが大きい組織状態は、 そのまま維持される。前記した特許文献 5の高温疲労強度が低 、のはこのためである 。また、これら従来の耐熱 A1基合金のように、 A1基合金のマトリックスを構成する A1結 晶粒の平均粒径を微細化させても、金属 A1のプール自体が微細化されるわけでは ない。
[0044] これに対して、前記した特許文献 6では、エアアトマイズした粉末を CIPにてビレット に成形して、このビレットを熱間押出加工している。したがって、特許文献 5に比較す れば、金属 A1のプールの大きさは微細化される方向に進み、疲労強度は高くなつて いる。しかし、特許文献 6では、 Fe、 Tiおよび Siの含有量が少なぐ前記金属間化合 物相が、体積分率で 50%を超える大きな割合とはならない。このため、金属 A1の体 積分率が大きくなり、金属プールの大きさが必然的に大きくなる。この結果、前記金 属間化合物相にて区切られた前記金属 A1のプールの最大長さの平均も、必然的に 40 mを超えて大きくなり、高温疲労強度が低くなる。特許文献 6での熱間押出加 ェは、絶対的に大きな金属プールをこれとの比較で相対的に微細化しているのみで ある。また、このように、金属間化合物相の量が少ないときには、金属間化合物は個 々に単独で存在しているものが多くなり、これも高温疲労強度が低くなる一因となる。
[0045] 一方、本第 2発明の A1基合金のように、先ず、金属間化合物の量を多くすると、複 数の金属間化合物が、金属 A1 (マトリックス)を介在することなく互いに隣接して集合 体 (連続体)を形成しやすくなる。この結果、前記金属間化合物相にて区切られた前 記金属 A1のプールの最大長さの平均を小さくできる。
[0046] 言い換えると、本発明における前記金属間化合物相にて区切られた前記金属 A1の
プールの最大長さの平均を 40 m以下としょうとすれば、前提として、 A1基合金組 織力、体積分率で 50〜90%の金属間化合物相を有する必要がある。
[0047] ただ、このように金属間化合物相を多くするだけでは、前提的な条件を確保するだ けで、前記金属 A1のプールの最大長さの平均力 0 mを超える可能性もある。この ため、本発明のように、前記金属 A1のプールの最大長さの平均を 40 m以下と確 実にするためには、後述する通り、 A1基合金を更に、熱間加工することが好ましい。
[0048] また、第 3の発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明者らは、金属 A1マトリックス中に、添加合金元素を固溶させることによって、 金属 A1マトリックスの強度が上昇し、 A1基合金の耐摩耗性を向上させうることを知見 した。
[0049] 即ち、本第 3の発明では、金属間化合物形成用添加元素である、 Cr、 Fe、 Tiを、金 属 A1マトリックス中に一定量固溶させることによって、金属 A1マトリックス強度を上昇さ せる。そして、これによつて、耐熱機械部品などの使用環境下においても、金属間化 合物相を表面に保持できるだけの、金属 A1マトリックス強度を確保して、 A1基合金の 耐摩耗性を向上させる。
[0050] 更に、本第 3の発明では、金属間化合物相の内でも、比較的加工しやすい Al-Cr 系金属間化合物を、他の Al-Fe系、 Al-Ti系の金属間化合物とともに析出させて、熱 間加工性を向上乃至確保する。この結果、 400°C以上の温度での熱間加工性を向 上させるとともに、 300〜400°C程度での使用環境下では、優れた耐熱強度を発揮 する A1基合金を提供できる。
[0051] さらに、第 4の発明によれば、以下のような効果を得ることができる。
本発明に係る A1基合金は、金属 A1マトリックスと上記特定の金属間化合物相とで構 成されている。本発明のように、合金元素の添加量が多くなり、金属間化合物相が多 くなると、 A1基合金の高温疲労特性と制振性とは、上記特定の金属間化合物相の中 でも、特に、大きなサイズの金属間化合物のサイズ分布 (割合)に大きく影響される。
[0052] 即ち、前記金属間化合物相の内、大きなサイズの金属間化合物相が多くなるほど、 高温疲労特性と制振性とが低下する傾向がある。このため、本第 4発明では、前記 A1 -Cr系金属間化合物の内で 0.: L m以上の大きなサイズを有する金属間化合物の
割合を規制する。
上記のように規制することにより、本第 4発明によれば、前記 A1基の金属間化合物 相の内、大きなサイズの A1基金属間化合物相を少なくしたので、耐熱性 A1基合金を 、高温強靱性ゃ耐摩耗性とともに、更に、高温疲労特性や制振性にも優れたものと できる。
図面の簡単な説明
[0053] [図 1]第 1発明耐熱性 A1基合金の組成を示す、図面代用写真である。
[図 2]図 1の金属間化合物を示す模式図である。
[図 3]比較例の耐熱性 A1基合金の組織を示す、図面代用写真である。
[図 4]第 1発明の耐熱性 A1基合金の組織を示す、図面代用写真である。
[図 5]第 2発明の耐熱性 A1基合金の組成を示す、図面代用写真である。
[図 6]比較例の耐熱性 A1基合金の組織を示す、図面代用写真である。
[図 7]A1基合金中の金属間化合物の粒度分布を模式的に示す説明図である。
発明を実施するための最良の形態
[0054] (A1基合金組成)
先ず、本発明の A1基合金の好ましい化学成分組成 (単位:質量%)について、各元 素の限定理由を含めて、以下に説明する。
[0055] 本発明では、 400°Cレベルのさらに高温での耐熱性を向上させるために、合金元 素量を多ぐ金属間化合物量を体積分率で 50〜90%と大きくした、分散粒子強化型 とする必要がある。このような、高温疲労特性に優れた耐熱性 A1基合金の好ましい組 成としては、前記金属間化合物相を形成する元素として、 Cr、 Fe、 Ti、 Mn、 V、 S ら選択される元素を、これら元素の総和で 15〜50質量%含み、残部が A1及び不可 避的不純物からなることが好ま 、。
[0056] これら、 Cr、 Fe、 Ti、 Mn、 V、 S 選択される元素が、これら元素の総和が 15質 量%の下限未満では、金属間化合物相(体積分率)が各々不足する。このため、 A1 基合金の耐熱性と耐磨耗性、また高温疲労強度を向上させることができない。一方、 これら元素の総和が 50質量%の上限を超えた場合、靱性が低下して脆くなり、耐熱 機械部品に用いることができない。
[0057] そして、これらの金属間化合物相を形成する元素の内から選択される、疲労特性を より向上させる組み合わせとしては、特に、質量%で、 Cr: 5〜30%、 Fe : l〜20%、 Ti: l〜15%、を各々含む組成が好ましい。このような組成において、後述する通り、 スプレーフォーミング法による急冷凝固法によって、プリフォーム体を制作すれば、こ のプリフォーム体組織の前記体積分率で 50〜90%の金属間化合物相力 Al-Cr系 、 Al-Fe系、 Al-Ti系の二元系を主相とする金属間化合物カゝら構成され、高温疲労 特性を一層向上できる。
[0058] また、これら Cr、 Fe、 Tiは、スプレーフォーミング法による急冷凝固法によって、 Al- Cr系、 Al-Fe系、 Al-Ti系などの金属間化合物相のいずれかに、当該金属間化合 物を構成する元素以外のいずれかの元素が更に固溶して、 A1基合金の耐熱性と耐 磨耗性とを向上させることができる。
[0059] A1- Cr系、 Al-Fe系、 Al-Ti系などの二元系の金属間化合物相のいずれかに、当 該金属間化合物を構成する元素以外の Cr、 Fe、 Tiいずれかが固溶した場合、当該 金属間化合物および A1基合金の強度、靱性、硬さ (耐熱強度、耐磨耗性)を向上さ せることができる。より具体的な例としては、 Al-Cr系金属間化合物相に、 Fe、 Tiのい ずれか、また両方が固溶していることを言う。
[0060] これら当該金属間化合物を構成する元素以外の Cr、 Fe、 Tiいずれかが固溶した 金属間化合物は、例えば、 Al-Cr金属間化合物に Fe、 Tiの元素が固溶されないよう な場合に比して、耐熱強度と耐磨耗性とのバランスに優れている。このため、 A1基合 金の強度、靱性、硬さを一層向上させることができる。
[0061] Cr、 Fe、 Tiの上記各含有量の下限未満、および Cr、 Fe、 Tiの含有量総和が、上 記 15質量%の下限未満では、 Al-Cr系、 Al-Fe系、 Al-Ti系などの金属間化合物 相 (体積分率)と、これら各金属間化合物に、当該金属間化合物を構成する元素以 外のいずれかの元素の固溶量が各々不足する。このため、 A1基合金の耐熱性と耐 磨耗性、また高温疲労強度を向上させることができない。
[0062] 一方、 Cr、 Fe、 Tiの上記各含有量の上限を超えた場合、および Cr、 Fe、 Tiの含有 量総和が、上記 50質量%の上限を超えた場合、上記金属間化合物相と、これら各 金属間化合物に、当該金属間化合物を構成する元素以外のいずれかの元素が固
溶した組織が得られたとしても、靱性が低下して、脆くなる。このため、耐熱機械部品 に用いることができない。
[0063] したがって、 Cr、 Fe、 Tiを各々含む組成において、 Crは 5〜30%、 Feは 1〜20% 、 Tiは 1〜15%の各含有量範囲とし、 Cr、 Fe、 Tiの含有量の総和も 15〜50%の範 囲とする。
[0064] この他、 Mn: 5〜30%、 Fe : l〜20%、 Si: 1〜10%を各々含む組成か、 Fe : l〜2 0%、 V: 0. 5〜5%、 Si: l〜10%を各々含む組成、とすることもできる。このような組 成では、後述する通り、スプレーフォーミング法による急冷凝固法によって、プリフォ 一ム体を制作すれば、このプリフォーム体組織の前記体積分率で 50〜90%の金属 間化合物相力 Al- Mn- Fe-Si系、あるいは Al-Fe-V-Si系などの四元系を主相と する金属間化合物相から構成され、高温疲労特性を一層向上できる。
[0065] これら、 Mn、 Fe、 Si、 Vの上記各含有量の下限未満、および Mn、 Fe、 Si、 Vの含 有量総和が、上記 15質量%の下限未満では、四元系の金属間化合物相 (体積分率 )が各々不足する。このため、 A1基合金の耐熱性と耐磨耗性、また高温疲労強度を 向上させることができない。一方、 Mn、 Fe、 Si、 Vの上記各含有量の上限を超えた 場合、および Mn、 Fe、 Si、 Vの含有量総和が、上記 50質量%の上限を超えた場合 、靱性が低下して、脆くなる。このため、耐熱機械部品に用いることができない。
[0066] (金属間化合物相)
本発明 A1基合金組織は、体積分率で 50〜90%の前記金属間化合物相と、残部 が金属 A1マトリックスとで構成される。 Cr、 Fe、 Tiを各々を含む前記組成では、 Al- C r系、 Al-Fe系、 Al_Ti系の二元系を主相とする金属間化合物相が体積分率で 50〜 90%を占めるようにする。また、 Mn、 Fe、 Siを各々含む前記組成では、 Al- Mn- Fe -Si系の四元系を主相とする金属間化合物相が体積分率で 50〜90%を占めるよう にする。更に、 Fe、 V、 Siを各々含む前記糸且成では、 Al-Fe-V-Si系などの四元系を 主相とする金属間化合物相が体積分率で 50〜90%を占めるようにする。なお、本発 明 A1基合金組織において、これら主相に対して、これら主相以外の金属間化合物相 を含むことも、 A1基合金の特性を阻害しな 、範囲で許容する。
[0067] 金属 A1マトリックスと金属間化合物相とで構成されている A1基合金において、金属
Alマトリックスは軟らかぐ金属間化合物相は硬い。 A1基合金では、このような、軟ら かい金属 A1マトリックス中に、硬い金属間化合物相が分散した組織となっている。そ して、この硬い金属間化合物相力 A1基合金に、耐熱性と耐磨耗性、また、高温疲 労強度を持たせる主相となる。一方、軟らかい金属 A1マトリックスは、これら硬い金属 間化合物相のバインダー、あるいは、これら硬い金属間化合物相の土台となって、金 属間化合物相の機能を発揮させる役割を担う。
[0068] 金属間化合物の量が少ないときには、金属間化合物は単独で存在しているものが 多いが、本発明 A1基合金のように、体積分率を 50%以上と、金属間化合物の量を多 くすると、複数の金属間化合物が互いに隣接して集合体 (連続体:金属間化合物相) を形成しやすくなる。このため、 A1基合金に、耐熱性と耐磨耗性、また、高温疲労強 度を持たせる主相としての機能をより発揮しやすくなり、特に、高温疲労強度が向上 する。
[0069] また、体積分率を 50%以上と金属間化合物の量を多くして、上記金属間化合物相 を形成すると、これら金属間化合物相にて区切られた前記金属 A1のプールの最大長 さの平均を小さくできる。
[0070] 前記金属間化合物相の体積分率が 50%未満では、 A1基合金に、耐熱性と耐磨耗 性、また、高温疲労強度を持たせる主相となる金属間化合物相が不足し、これらの特 性が低下する。また、金属間化合物相の量が少なくなる一方で、金属 A1の体積分率 が大きくなり、金属間化合物相にて区切られた金属プールの大きさが必然的に大きく なる。この結果、前記金属間化合物相にて区切られた前記金属 A1のプールの最大 長さの平均も、必然的に 40 /z mを超えて大きくなる。このため、耐熱性と耐磨耗性、 また、特に高温疲労強度が低くなる。
[0071] 一方、前記金属間化合物相の体積分率が 90%を超えた場合、金属 A1の量が少な くなりすぎ、 A1基合金の靱性が低下して、脆くなる。このため、耐熱 A1基合金として使 用できなくなる。
[0072] (金属間化合物の平均サイズ)
本発明 A1基合金においても、金属間化合物相を形成する個々の金属間化合物( 金属間化合物粒子)の平均サイズは小さいほど好ましい。本発明のように、金属間化
合物の量を多くした Al基合金では、金属間化合物量が少な 、A1基合金に比して、 高温強度ゃ耐摩耗性は大きく向上するものの、金属間化合物の平均サイズの靱性 への影響が大きくなる。この点、金属間化合物の平均サイズが 7 mを超えて大きく なった場合には、 A1基合金の靱性が大幅に低下する。したがって、本発明では、金 属間化合物相を形成する金属間化合物 (粒子)の平均サイズを 7 μ m以下と規定す る。好ましくは、 5 m以下と規定する。金属間化合物相を形成する金属間化合物( 粒子)の平均サイズを 5 m以下とすることにより、靭性をさらに向上させることができ る。本発明では、これら金属間化合物粒子の集合体乃至連続体を、金属間化合物 相と総称し、これら金属間化合物粒子の平均サイズを上記のように規定する。金属間 化合物の平均サイズの測定は、後述する通り、 5000〜15000倍の透過型電子顕微 鏡 (TEM)にて A1基合金組織を観察して行なう。
[0073] (0. 1 ^ m以上の Al基金属間化合物の規制)
本発明では、更に、前記した通り、 A1基金属間化合物の内で 0. l ^ m以上のサイ ズを有する金属間化合物中の総 A1量を、熱フ ノールによる抽出残查法によって A1 基合金から分離抽出された 0. 1 μ m以上のサイズを有する固体残查中の総 Al量と 見なし、この残查中の総 A1量と前記全 A1含有量との比、総 A1量 Z全 A1含有量を 0. 75以下として、前記 A1基金属間化合物の内で 0. l ^ m以上のサイズを有する金属 間化合物の割合を小さく規制する。
[0074] 前記した通り、本発明のように、合金元素の添加量が多くなり、金属間化合物相が 多くなると、 A1基金属間化合物粒子の内、大きなサイズの A1基金属間化合物粒子が 多くなるほど、高温疲労特性と制振性とが低下する。このため、本発明では、 A1基金 属間化合物相の内で 0. 1 m以上の大きなサイズを有する A1基金属間化合物の割 合を規制する。
[0075] この際、前記 A1基金属間化合物粒子の内で、 0. 1 m以上の大きなサイズを有す る金属間化合物粒子の割合を少なくする (規制する)ことは可能であるが、その割合 を定量的に規定するのは難しい。 SEMや TEMによって測定された前記 A1基金属 間化合物の平均サイズがたとえ同じであっても、 0. l ^ m以上の大きなサイズを有 する A1基金属間化合物の量的な割合が異なる場合は、当然起こりうる。
[0076] 例えば、図 7に、 Al基金属間化合物のサイズと量との分布関係を模式的に示すよう に、 A1基合金の A (実線で示す曲線)と B (点線で示す曲線)とは平均粒径サイズが 同じ 0. l ^ mである。し力し、両者は、 0. 1 m以上の大きなサイズの Al基金属間 化合物の量的な割合が異なる。即ち、 A1基合金 Bの方力 0. l ^ m以上の大きなサ ィズの A1基金属間化合物の量力 A1基合金 Aよりも多い。この結果、 A1基合金 Bの 方が、 A1基合金 Aよりも、高温疲労特性と制振性とが低くなる。
[0077] このため、本発明では、比較的測定しやすい A1量によって、 0. 1 m以上の大き なサイズを有する A1基金属間化合物の割合を規定する。即ち、 0. l ^ m以上の大き なサイズを有する A1基金属間化合物の総 A1量を測定し、この総 A1量を A1基合金に 含有される全 A1含有量との関係で規定する。
[0078] より具体的には、 A1基金属間化合物の内で 0. l ^ m以上のサイズを有する Al基 金属間化合物中の総 A1量を、熱フ ノールによる抽出残查法によって、 A1基合金か ら分離抽出された、 0. l ^ m以上のサイズを有する固体残查中の総 Al量と見なす。
[0079] 熱フエノールによる抽出残查法は、通常は、合金 (A1基合金)を熱フエノール処理し て、金属 (A1)を液相として、析出している金属間化合物を固相として分離し、金属 A1 中の合金元素固溶量や、析出している金属間化合物量や金属間化合物組成を、定 性的、定量的に測定するものである。試験試料の重さは約 0. 5g程度、分解温度は、 試料の形状にもよる力 約 180°Cで時間は 15分程度、ろ過時間は 15分から 2時間程 度とする。
[0080] 本発明では、この熱フ ノールによる抽出残查法を利用して、金属 A1と金属 A1に固 溶している Cr、 Fe、 Tiなどの金属とを、ともに熱フエノール溶液に溶解させる。その一 方で、 A1基金属間化合物は、固体状態として、熱フエノール溶液に存在させ、両者を 先ず分離する。
[0081] ここで、この熱フエノール溶液を 0. 1 mのメッシュサイズを有するフィルターでろ 過すれば、 0.: L m以上のサイズを有する A1基金属間化合物は、固体残查として、 フィルター上に残留する。そして、 0. 1 m未満のサイズの Al基金属間化合物は、 上記金属分が溶解した熱フエノール溶液とともに、前記フィルターを透過し、 0. 1 mのサイズを境に、 0. 1 m以上と、 0. l ^ m未満のサイズの Al基金属間化合物
とを分離できる。
[0082] このフィルター上に残留した固体残查(0. 1 m以上のサイズを有する A1基金属 間化合物)の中の総 A1量を計測すれば、この総 A1量は、前記 A1基金属間化合物の 内で 0.: L m以上のサイズを有する A1基金属間化合物中の総 A1量と見なすことが できる。このフィルター上に残留した固体残查中の総 A1量の計測は、 ICP発光分析 や X線分析により、適宜行なうことができる。
[0083] したがって、前記 A1基金属間化合物の内で 0. l ^ m以上のサイズを有する金属 間化合物を、前記残查中の総 A1量と、前記全 A1含有量との比、総 A1量 Z全 A1含有 量で、 0. 75以下として、高温疲労特性と制振性とを向上乃至確保する。この総 A1量 Z全 A1含有量が 0. 75を超えた場合、高温疲労特性と制振性とが低下する。
[0084] (Al-Cr金属間化合物)
本発明 A1基合金組織において、 A1と Crは、例えば、 Al Cr、 Al Cr、 Al Cr
13 2 45 7 112. 3 2
、 Al Cr、 Al Cr、 Al Cr 、 Al Crなどの金属間化合物を形成している。
8. 6 11 2 8 5 16 9. 5 2
[0085] これら Al-Cr金属間化合物相は、熱間加工性を向上乃至確保するために必須であ る。 Al-Cr金属間化合物相は、前記金属間化合物相の内でも、比較的加工しやすい 。このため、 Al- Cr系金属間化合物を、他の Al- Fe系、 Al-Ti系の金属間化合物とと もに析出させると、熱間加工性を向上乃至確保できる。この結果、 400°C以上の温度 での熱間加工性を向上させるとともに、 300〜400°C程度での使用環境下では、優 れた耐熱強度を発揮できる。
[0086] また、 Al-Cr金属間化合物相は、耐熱強度と耐磨耗性とのバランスに優れて ヽる。
但し、 A1の価数が高い金属間化合物相の方が低密度であり、軽量ィ匕の点では好まし い。更に、これら Al- Cr金属間化合物相に、 Cr以外の Feと Tiのいずれ力 あるいは 両方を、 Feと Tiとの総和で 1質量%以上の量を固溶させることで、固溶強化により、 A 1-Cr金属間化合物の強度、靱性、硬さを向上させることができる。
[0087] (Al-Fe金属間化合物)
また、 A1と Feは、例えば、 Al Fe、 Al Fe、 Al Fe、 Al Fe、 Al Fe、 AlFeなどの
13 4 3 2. 8 5 2 2
金属間化合物を形成して ヽる。
[0088] これら Al-Fe金属間化合物相は、硬 ヽため耐磨耗性に優れており、 A1基合金の耐
磨耗性を向上させる。但し、 A1の価数が高い金属間化合物相の方が低密度であり、 軽量ィ匕の点では好ましい。更に、これら Al-Fe金属間化合物相に、 Fe以外の Crと Ti のいずれか、あるいは両方を、 Crと Tiとの総和で 1質量%以上の量を固溶させること で、固溶強化により、 Al-Fe金属間化合物の強度、靱性、硬さを向上させることがで きる。
[0089] (Al-Ti金属間化合物)
更に、 A1と Tiは、例えば、 Al Ti、 Al Ti、 TiAl、 Ti Alなどの金属間化合物を形成
3 2 3
している。
[0090] これら Al-Ti金属間化合物相は、金属間化合物相自体を微細化し、金属間化合物 相乃至 A1基合金の強度と靱性を向上させる。したがって、後述する、溶解条件との 組み合わせで、上記金属間化合物相の微細化のための効果をより発揮する。但し、 A1の価数が高い金属間化合物相の方が低密度であり、軽量ィ匕の点では好ましい。 更に、これら Al-Ti金属間化合物相に、 Ti以外の Feと Crのいずれ力 あるいは両方 を、 Feと Crとの総和で 1質量%以上の量を固溶させることで、固溶強化により、 Al-Ti 金属間化合物の強度、靱性、硬さを向上させることができる。
[0091] (金属間化合物の表面形状)
本発明では、高温疲労特性を向上させるために、金属間化合物相を構成する金属 間化合物 (粒子)の表面が凹凸形状を有するように制御する。具体的には、金属間化 合物の大きさに応じて、 5000〜15000倍の透過型電子顕微鏡(TEM)にて A1基合 金組織を観察した際の、視野内に存在する 0. 5 m以上の粒径を有する各金属間 化合物の内、金属間化合物面積 Sと金属間化合物の周長 Lとの関係 L2ZSが 13以 上の表面凹凸形状を有する金属間化合物が 40%以上存在するように制御する。
[0092] 本発明 A1基合金では、体積分率が 50%以上の多量の金属間化合物を形成する ために、 A1中に多量の合金元素を添カ卩している。このため、金属 A1マトリックスに過 飽和に固溶した合金元素は、金属間化合物を形成して (析出して)平衡状態になろう とする傾向が強い。ー且形成された金属間化合物と金属 A1マトリックスとの界面でも、 金属 A1マトリックス中から合金元素が金属間化合物に析出(移行)して、平衡状態に なろうとする傾向が強い。
[0093] 金属間化合物と金属 Alマトリックスとの界面において、合金元素が金属 A1マトリック ス側から金属間化合物側に移行、析出して、平衡状態に達した場合、金属 A1マトリツ タスとの界面である、金属間化合物の表面は平滑 (平坦)となる。前記した通常の A1 基合金の金属間化合物の表面が平滑であるのは、このためである。このように、前記 界面が平衡状態になると、 A1マトリックスと金属間化合物相との界面強度が弱くなり、 弾性変形域で破断しやすくなり、高温疲労特性は低下する。
[0094] この表面が平滑な金属間化合物の、 A1基合金組織を 15000倍の TEMで観察した 際の組織写真を図 3に示す。図 3において、点在する球状物が金属間化合物であり 、例えば、図 3の中央部にある黒い金属間化合物の表面は、凹凸があまり無い平滑 であることが分力ゝる。
[0095] これに対して、本発明のような、金属間化合物の表面が凹凸形状を有する (金属間 化合物の表面がデコボコ、あるいはギザギザである)場合は、金属間化合物と金属 A1 マトリックスとの界面において、前記平衡状態に達してはいない、界面拡散の過渡期 で止まった状態となっている。即ち、この界面 (金属間化合物の表面)では、金属 A1 マトリックス力も金属間化合物にかけて、金属間化合物に移行 (析出)しょうとする合 金元素の濃度が連続的に変化する、濃度勾配がついた非平衡状態になっているも のと推考される。
[0096] したがって、金属間化合物の表面が凹凸形状を有する力否かは、単に物理的なァ ンカー効果などの凹凸形状効果ではなぐ上記したような、冶金的な非平衡状態効 果を示している。即ち、この非平衡状態における合金元素の濃度勾配によって、高 温での変形によっても、硬い金属間化合物力 軟らかい金属 A1マトリックス力 剥離 しにくい界面強度が保持されているものと推考される。したがって、金属間化合物の 界面強度は、金属間化合物の表面が凹凸形状を有するほど、非平衡状態となって 高くなる。一方、金属間化合物の界面強度は、金属間化合物の表面が平滑であるほ ど、平衡状態となって低くなる。
[0097] この表面が凹凸形状を有する金属間化合物の、 A1基合金組織を 15000倍の TE Mで観察した際の組織写真を図 1に示す。図 1において、前記図 3と同様に、図の中 央にある大きな球状物が金属間化合物であるが、これらの金属間化合物の表面は、
前記図 3の金属間化合物表面のように平滑ではなぐ表面が凹凸形状を有すること が分かる。
[0098] 但し、金属間化合物のサイズの大きさには種々有り、サブミクロン単位のサイズの極 端に小さいものは表面の形状の判別が難しい。また、これらサイズの小さなものは、 サイズの大きなものに比して、より剥離しにくぐ破壊の起点になりにくい。更に、サイ ズの大きい金属間化合物表面が凹凸形状を有するように制御すれば、サイズの小さ な金属間化合物表面も凹凸形状を有する方向にいき、高温疲労特性向上の方向に 向かう。したがって、本発明では、より破壊の起点になりやすぐ高温疲労特性により 影響度が大きな、サイズの大きな金属間化合物表面が凹凸形状を有するように制御 する。このため、本発明では、このサイズの比較的大きな金属間化合物として、 0. 5 μ m以上の粒径を有する金属間化合物を選択する。
[0099] そして、これら 0. δ μ ι以上の比較的大きな粒径を有する金属間化合物の表面の 凹凸形状を、金属間化合物面積 Sと金属間化合物の周長 Lとの関係 L2ZSが 13以 上の形状と規定する。
[0100] 前記図 1の金属間化合物を模式ィ匕して示す図 2において、個々の金属間化合物の 周長 Lが、金属間化合物表面の凹凸形状を形成している。したがって、金属間化合 物の周長 Lは、金属間化合物表面の凹凸長さを表す。これらの金属間化合物面積 S に対して、周長 Lが長いほど、凹凸の長さが長ぐ金属間化合物表面の凹凸が大きい ことを示している。金属間化合物の断面が真円の場合、(2 Ti r) 2で表される金属間化 合物の周長 Lの 2乗と π ΐ:2で表される面積 Sとの比 L2/Sは、 (2 π τ) 2/ π τ2 =4 π ( 約 13)となる。したがって、金属間化合物面積 Sに対して周長 Lが長い、表面が凹凸 の状態とは、 L2ZSが 4 π =約 13以上のことを言う。この金属間化合物の表面の凹 凸形状に関わる L2ZSが 13未満では、凹凸の長さが短くなつて(凹凸が小さくなつて )、金属間化合物の外周が円に近づき、従来の表面が平滑な金属間化合物と大差な くなる。このため、界面強度が低いなり、高温疲労特性を向上できない。
[0101] 本発明では、更に、 L2ZSが 13以上の表面凹凸形状を有する金属間化合物の数 を保障して、高温疲労特性向上を保障するために、前記 TEM視野内に存在する 0. 5 m以上の金属間化合物の内、 L2ZSが 13以上の表面凹凸形状を有する金属間
化合物が 40%以上存在するように規定する。
[0102] この L2/Sが 13以上である 0. 5 /z m以上の金属間化合物の数は多いほど好ましく 、前記 TEM視野内に存在する 0. 5 m以上の金属間化合物が全て L2ZSが 13以 上であれば良い。但し、表面凹凸形状を有する金属間化合物を制御するための、製 造の限界や製造コストの問題もあり、 L2ZSが 13以上である 0. 5 μ ηι以上の金属間 化合物の数は高温疲労特性を向上させるに足る量であれば良い。この点、 L2,Sが 13以上の表面凹凸形状を有する金属間化合物の割合は、好ましくは 45%以上、よ り好ましくは 50%以上である。
[0103] 例えば、前記図 1において、 TEM視野内に存在する 0. 5 u m以上の金属間化合 物が 20個とすれば、このうちの好ましくは 9個以上、より好ましくは 10個以上の L2ZS が 13以上とする。一方、 L2ZSが 13以上の表面凹凸形状を有する金属間化合物が 40%未満では、界面強度が低い従来の表面が平滑な金属間化合物 (破壊の起点と なる金属間化合物)が多過ぎ、高温疲労特性向上を保障できない。
[0104] 本発明では、このように、金属間化合物の表面凹凸形状の制御によって、金属間 化合物の金属 A1マトリックスとの界面強度を高めて、高温で応力が負荷された場合 でも、金属間化合物が金属 A1マトリックス力も剥離しにくくし、金属間化合物を破壊の 起点となりに《している。この結果、 A1基合金の高温疲労特性を高めることができる
[0105] このように、金属間化合物の表面凹凸形状を制御するためには、後述する通り、ス プレーフォーミング法により得られる A1基合金のプリフォーム体を、 400〜550°Cの 温度範囲で、但し、加工前の加熱を含めた熱間加工における、その温度範囲での保 持が 30分〜 3時間以内として、 HIP、鍛造、押出、圧延から選択される熱間加工を行 なう。
[0106] (金属 A1のプールの最大長さ)
本発明耐熱性 A1基合金では、特に、高温疲労特性を向上させるために、前記金属 間化合物相にて区切られた前記金属 A1のプールの最大長さの平均を 40 m以下 とすることが好ましい。
[0107] 金属 A1マトリックス中に金属間化合物相が分散した組織となって 、る A1基合金の場
合に、前記金属間化合物相にて区切られた金属 Alのプールの大きさが大きくなるほ ど、前記した通り、耐熱機械部品としての A1基合金使用中に、強度の低い金属 A1の プール部分に応力が集中する。このように、強度の低い金属 A1のプール部分に高温 で応力が集中した場合、疲労特性は当然低下してしまう。
[0108] また、前記金属 A1のプールの大きさが大きくなるほど、前記した通り、 A1基合金組 織における金属 A1のプールと金属間化合物相の分散状態も、どうしても不均一とな らざるを得ない。このため、 A1基合金組織において、金属間化合物相が集中する部 分と、金属間化合物相が無い、あるいは疎となる部分とが多く生じる。このように、硬 い金属間化合物相と軟らかい金属 A1のプールとが不均一に分散する結果、高サイク ルの疲労など、製品 A1基合金に、引張り-圧縮の繰返し応力が高温で付与された場 合には、疲労強度は著しく低くならざるを得ない。また、耐熱性ゃ耐磨耗性も低くなら ざるを得ない。
[0109] この傾向は、前記金属 A1のプールの大きさが大きくなつて、この金属 A1のプールの 最大長さの平均力 O /z mを超えた場合に顕著となる。このため、前記金属 A1のプー ルの大きさが大きくなると、前記した金属間化合物の表面凹凸形状制御による高温 疲労特性向上効果を減らす可能性がある。したがって、本発明では、前記金属間化 合物相にて区切られた前記金属 A1のプールの最大長さの平均を 40 m以下とする ことが好ましぐより好ましくは 30 μ m以下とする。
[0110] 金属間化合物相の体積分率が少なすぎるか、金属 A1の体積分率が大きくなりすぎ る場合に、前記金属間化合物相にて区切られた軟らかい金属 A1のプールの大きさ は、最大長さの平均 40 mを超えて大きくなりやすい。
[0111] また、たとえ金属間化合物相の体積分率が多くても、スプレーフォーミング法など急 冷凝固法により得られたままの、プリフォーム体などの A1基合金組織では、金属 A1の プールの大きさが最大長さの平均 40 mを超えて大きくなりやすい。これは、急冷 凝固法により得られたプリフォーム体などの A1基合金を、更に CIPや HIPで固化成 型した場合でも同様である。
[0112] このため、金属間化合物相の体積分率を多くした上で、前記金属間化合物相にて 区切られた前記金属 A1のプールの最大長さの平均を 40 m以下とするためには、
急冷凝固法により得られた Al基合金を、熱間にて、鍛造、押出、圧延から選択される 熱間加工を行なうことが好ましい。これらの熱間加工 (塑性加工)によって、 A1基合金 組織における、金属 A1のプールの大きさが微細化されるとともに、金属 A1のプールと 金属間化合物相とが、微細均一に分散される。なお、前記 HIPあるいは CIPでは、こ のような金属 A1のプールの微細化効果は無!、。
[0113] (金属 A1のプールの最大長さ測定)
本発明では、測定誤差を少なくして再現性あるものとするために、前記金属間化合 物相にて区切られた前記金属 A1のプールの最大長さを、目安として、最大長さが 20 μ m以上のレベルにある場合には、 500倍の走査型電子顕微鏡(SEM)にて、また 、最大長さが 20 m以下のレベルにある場合には、 1000倍の走査型電子顕微鏡( SEM)にて、後述する実施例にて詳細を記載する通り、測定する。この SEMの倍率 は、金属 A1のプールの最大長さに応じて決めており、倍率が大き過ぎると、視野の大 きさが前記金属 A1のプールの最大長さよりも小さくなり、倍率が小さ過ぎると、金属 A1 のプール自体の識別が不明瞭となる。
[0114] 図 4は、耐熱 A1基合金の 1000倍の SEMによる組織写真である。図 4は、金属 A1の プールの最大長さの平均が 40 m以下である、本発明耐熱 A1基合金 (後述する実 施例表 3における発明例 1)である。
[0115] 図 4において、多数の白い点々が金属間化合物 (粒子)であり、黒い筋状の模様が 、金属 A1のプール部分 (A1マトリックッス部分)である。本発明耐熱 A1基合金では、こ の視野内にある黒い筋状の模様である、個々の(各)金属 A1のプール部分の最も長 い部分を、後述する通り計測して平均化する。
[0116] 図 4の通り、本発明 A1基合金では、金属間化合物相を、体積分率を 50%以上と多 くしているので、複数の金属間化合物が互いに隣接して集合体 (金属間化合物相)を 形成しているのが分かる。言い換えると、金属 A1のプール部分力 細かぐ金属間化 合物相によって区切られている(仕切られている)ことが分かる。そして、このような金 属間化合物相が多ぐ金属 A1のプール部分が細かい組織状態が、 A1基合金の耐熱 性と耐磨耗性、また、高温疲労強度を保障する。
[0117] (製造方法)
以下に、本発明 Al基合金の製造方法を説明する。本発明 A1基合金は、合金元素 量が多いために、金属間化合物相を多く析出させるために、通常の溶解铸造方法で はなぐ急冷凝固法によって、プリフォーム体を制作することが好ましい。また、急冷 凝固法のうち、急冷粉末冶金法によっても製造可能である力 好適にはスプレーフォ 一ミング法で製造される。
[0118] 急冷凝固法の一つである急冷粉末冶金法によって、本発明 A1基合金を製造する 場合、上記本発明成分組成の A1合金のアトマイズ粉末の内、平均粒径が 20 /z m以 下、好ましくは 10 m以下の微粒粉を分級して使用する。平均粒径が 20 m以下 の微粒粉のみを CIPや HIPで固化成型する。平均粒径が 20 μ mを越えるアトマイズ 粉末は、冷却速度が遅いため、金属間化合物相が粗大化する可能性がある。
[0119] スプレーフォーミング法は、通常の溶解铸造法(インゴットメイキング)よりも、格段に 速い冷却'凝固速度を有するために、晶出核生成頻度が高ぐ各金属間化合物相を 多量に、かつ微細に、組織中に析出させることができる。また、個々の金属間化合物 粒子の成長速度が相対的に小さいために、隣接粒と接触する頻度も小さくなり、金属 間化合物相である金属間化合物の連続体の寸法も小さくなる。
[0120] この際、 Cr、 Fe、 Tiを各々含む組成では、 Al- Cr系、 Al- Fe系、 Al- Ti系などの金 属間化合物相のいずれかに、当該金属間化合物を構成する元素以外のいずれかの 元素を強制固溶させて、 A1基合金の耐熱性と耐磨耗性とをより向上させることができ る。
[0121] 但し、スプレーフォーミング法でも、その冷却.凝固速度の最適化は必要である。ス プレーフォーミング法による好ましい態様は、上記本発明成分組成の A1合金を、溶 解温度1100〜1600でで溶製した後、溶湯のスプレーを開始して、スプレーフォーミ ング法によりプリフォームを作製する。
[0122] 溶解温度を 1100°C以上としたのは、上記本発明成分組成の A1合金において、各 金属間化合物相を完全に溶解させるためである。また、各合金元素の含有量が多い ほど、各金属間化合物相を完全に溶解させるためには、溶解温度を 1100°C以上の より高 、温度とすることが好ま 、が、 1600°Cを超える温度とする必要は無!、。
[0123] 溶湯のスプレーを開始する際、好ましくは、前記溶湯を、スプレー開始温度まで 10
0°C/h以上の冷却速度で冷却し、その後 900〜1200°Cで、この溶湯のスプレーを 開始する。前記高温で溶解するのは、金属間化合物相を完全に溶解させるためであ る力 ここで一且溶湯を冷却して力 スプレーを開始するのは、金属間化合物をある 程度晶出させ、晶出した金属間化合物を核として、スプレーフォーミング中に、他の 金属間化合物を微細に晶出させる効果があるためである。また、低温からスプレーを 開始すると、スプレーの冷却速度を上げ、晶出する金属間化合物が更に微細化され る効果がある。
[0124] このように、一且溶湯を冷却する際に、溶湯のスプレー開始温度までの前記冷却速 度が 100°CZh未満では、上記した、スプレー開始までに、金属間化合物をある程 度晶出させ、晶出した金属間化合物を核として、スプレーフォーミング中に、他の金 属間化合物を微細に晶出させることができず、晶出する金属間化合物を微細化でき ない可能性が高い。
[0125] 溶湯のスプレー開始温度は、スプレー過程 (スプレーフォーミング過程)における、 冷却'晶出速度に影響する。即ち、溶湯のスプレー開始温度は、低温の方が冷却速 度を速くしやすい。しかし、スプレー開始温度が 900°C未満では、スプレー過程前に 、溶湯中に金属間化合物が晶出してしまい、ノズルが閉塞しやすくなる。一方、スプ レー開始温度が 1200°Cを超えると、スプレー過程中での冷却速度が遅くなり、スプ レーフォーミング法により作製されたプリフォームの金属間化合物を微細化できない 可能 ¾が高い。
[0126] スプレー過程 (スプレーフォーミング過程)では、冷却速度を十分に速くすることが 重要となる。冷却速度を十分に速くすると、金属間化合物の晶出核生成頻度が多く なるために金属間化合物粒子の粗大化を防止でき、金属間化合物相を微細化でき る。また、金属間化合物粒子が微細化されるために、隣接粒と接触する頻度も小さく なり、金属間化合物相の外郭寸法も小さくできる。
[0127] スプレーフォーミングにおける(スプレー過程中の)冷却速度は、例えば、ガス Zメタ ル比(GZM比:単位質量あたりの溶湯に吹き付けるガスの量)によって制御できる。 本発明では、 GZM比が高いほど、冷却速度を速くでき、本発明で規定するような微 細な金属間化合物相が得られ、後述する熱間加工によって、最終的に A1基合金組
織における、金属 A1のプールの最大長さを小さくできる。また、金属間化合物相に、 前記した金属間化合物を構成する以外の元素を強制固溶させられる。
[0128] これらの条件を満足する GZM比の下限は、例えば、 3Nm3Zkg以上、好ましくは
5Nm3Zkg以上、さらに好ましくは 6Nm3Zkg以上であり、 GZM比の上限は、例え ば、 20Nm3Zkg以下、好ましくは 15Nm3Zkg以下とすることが推奨される。これより GZM比が小さい(冷却速度が遅い)と、金属間化合物が粗大化しやすぐまた、後 述する熱間加工によっても、 A1基合金組織における、金属 A1のプールの最大長さを 小さくできない可能性が高い。
[0129] このようなスプレーフォーミング法より得られた A1基合金は、この A1基合金プリフォ ーム体をー且真空容器中に密封した状態で CIPや HIP処理を行なうか、あるいは、 そのままのプリフォーム体の状態で、熱間にて、鍛造、押出、圧延のいずれかで加工 する。また、前記急冷粉末冶金法によって得られた粉末も、 CIPや HIPでー且固化 成型した A1基合金 (プリフォーム体)を、上記熱間加工することが好ましい。但し、 HI P処理は、高温に 3時間以上の長時間 A1基合金 (プリフォーム体)を曝すことになるの で、金属間化合物が粗大化しやすぐ平均サイズが 5 mを超えやすくなる。このた め、本発明では、 HIP処理はしない方が好ましい。
[0130] 前記鍛造、押出、圧延のいずれかの熱間加工を行なう場合、前記した通り、金属間 化合物の表面が凹凸形状を有するように制御するためには、熱間加工における、温 度範囲と保持時間とを制御する必要がある。
[0131] 即ち、金属間化合物の表面凹凸形状を本発明のように制御するためには、前記ス プレーフォーミング法などにより得られた A1基合金のプリフォーム体を、 400〜550°C の温度範囲で熱間加工する必要がある。但し、この際、加工前の加熱を含めた熱間 加工における、その温度範囲での保持を 30分〜 3時間以内として、 HIP、鍛造、押 出、圧延などの熱間加工を行なう必要もある。これらの保持時間とは、厳密には、熱 間加工前の加熱処理における加熱温度到達時から、熱間加工時間を含め、熱間加 ェ後に 400°C未満の温度まで冷却される合計時間である。
[0132] これらの鍛造、押出、圧延の熱間加工温度が 400°C未満では、熱間加工が困難と なるとともに、熱間加工による、金属間化合物の表面凹凸形状制御効果が得られな
い。また、金属 A1のプールの大きさの微細化効果や、金属 A1のプールと金属間化合 物相との微細均一分散効果も得られな 、。
[0133] 一方、熱間加工温度が 550°Cを超えた場合も、熱間加工による、金属間化合物の 表面凹凸形状制御効果が得られない。また、金属 A1のプールの大きさが粗大化する 。金属 A1のプールの粗大化防止の観点からは、熱間加工温度が 450°C以下である ことが好ましい。
[0134] また、熱間加工に際しての、 A1基合金のプリフォーム体の前記高温での保持時間 は重要で、金属間化合物と金属 A1マトリックスとの界面において、非平衡状態 (界面 拡散の過渡期)で止め、金属間化合物の表面を本発明のような凹凸形状とするため には、熱間加工前の加熱処理時間を含めて、前記した通り、 400〜550°Cの温度範 囲での保持を 30分〜 3時間とする必要がある。このため、熱間加工前の加熱処理時 間や熱間加工時間を短くするとともに、熱間加工後に急冷することが好ましい。
[0135] この高温での保持時間が、 3時間を超えて保持した場合には、本発明のように、金 属間化合物相の体積分率が多い場合 (合金元素量が多い場合)、金属間化合物と 金属 A1マトリックスとの界面において、金属 A1マトリックス中力も金属間化合物への合 金元素の析出が進み過ぎて、平衡状態に達してしまう。因みに、通常の HIP、鍛造、 押出、圧延などの熱間加工では、高温での保持時間は、熱間加工前の加熱処理時 間を含めると、 3時間を超えることが普通である。このため、前記界面において、金属 A1マトリックス中力 金属間化合物への合金元素の析出が進み過ぎて、平衡状態に 達してしまい、金属 A1マトリックスとの界面である金属間化合物の表面は平滑 (平坦) となってしまう。この結果、 A1マトリックスと金属間化合物相との界面強度が弱くなり、 律速し、弾性変形域で破断しやすくなる。
[0136] 一方、その温度範囲での保持が 30分未満では、その温度範囲への均一加熱や熱 間加工自体が困難となる。この結果、実質的に、熱間加工による、金属間化合物の 表面凹凸形状制御効果が得られなくなる。
[0137] また、 HIPを除ぐこれらの条件範囲の、鍛造、押出、圧延などの熱間加工によって 、 A1基合金組織における、金属 A1のプールの大きさが微細化されるとともに、金属 A1 のプールと金属間化合物相とが、微細均一に分散される。また、 A1マトリックス中に固
溶する前記添加元素の固溶量が確保され、析出している金属間化合物粒子の粗大 化を防止できる。
[0138] このように熱間加工された A1基合金は、そのまま、あるいは、機械加工など適宜の 処理が施されて、製品 A1基合金とされる。
[0139] (0:、 6、1の金属八1への固溶量)
金属 A1中に、 Cr、 Fe、 Tiが、これらの総和で 0. 02〜10質量%固溶することによつ て、金属 A1マトリックスの強度が上昇し、耐熱機械部品に使用された場合でも、金属
A1マトリックスが硬 、金属間化合物相を表面に保持でき、 A1基合金の耐摩耗性を向 上させるこがでさる。
[0140] Cr、 Fe、 Tiの固溶量力 これらの総和で 0. 02%質量未満では、金属 A1マトリック スの強度が、耐熱機械部品に使用された場合に、硬い金属間化合物相を表面に保 持できる程度に上昇しない。
[0141] 一方、 Cr、 Fe、 Tiの固溶量が、これらの総和で 10質量%を超えた場合、金属 A1マ トリックスが脆くなつて、靱性が低下し、耐熱機械部品として使用できなくなる。
[0142] 金属 A1マトリックスへの Cr、 Fe、 Tiの固溶量は、元素の固溶量測定は、 5000〜15 000倍の TEM (透過型電子顕微鏡)および、この TEMに付随の 45000倍の EDX( Kevex社製、 Sigmaエネノレギー分散型 X線検出器: energydispersive X— ray spe ctrometer)〖こより、前記 TEM視野内の金属 Alマトリックスを各々 10点測定し、平均 化する。
実施例 1
[0143] 下記表 1に示す A— 1〜J— 1の成分組成の A1合金の溶湯を、表 2に示す溶解温度 で溶解し、この溶湯をスプレー開始温度まで 100°CZh以上の冷却速度で冷却し、 その後表 2に示す温度で溶湯のスプレーを開始して、表 2に示す GZM比でスプレ 一フォーミング (使用ガス: N )し、種々のプリフォームを作製した。表 1において、 A
2
— 1〜E— 1および I— 1、J— 1は Cr- Fe- Ti系組成、 F— 1は Mn- Fe- Si系組成、 G — 1は Fe- V- Si系組成、 H— 1は Cr- Fe- Ti- Mn- Si- V系組成である。
[0144] 得られた各プリフォーム (表 2に示す発明例 1〜9、比較例 10〜16)を、表 2に示す 、加熱温度、保持時間 (加熱 +熱間加工)の条件で、発明例はそのまま熱間鍛造、
比較例は HIPあるいは熱間鍛造加工した。なお、高温での保持時間は、熱間加工前 の 400°C以上の温度での加熱保持時間、熱間加工時間、熱間加工後に 400°C未満 の温度まで冷却される時間とし、この高温での保持時間を各々調節した。各例とも、 熱間鍛造の歪み速度は 10_4Zs、圧下率 80%と同じにした。
[0145] 表 2に示す HIP処理は、各プリフォーム体を SUS製の缶に装填し、 13kPa (100To rr)以下に減圧した状態で、 575°Cの加熱温度で 2時間保持して脱気し、缶を密封し てカプセルを形成した。得られたカプセルを 550°Cに再加熱して、 HIP処理 [圧力: 1 OOMPa (1000気圧)、保持時間: 2時間]して、 A1基合金を得た。これら一連の HIP 処理における 400°C以上の温度での保持時間は約 5時間である。
[0146] これら熱間加工後の A1基合金および HIP処理後の試験材の特性を以下のようにし て評価した。これらの結果を各々表 3に示す。
[0147] (金属間化合物の L2ZSの評価解析方法)
15000倍の組織の FE-TEM (日立製作所製、 HF-2000電界放射型透過電子顕 微鏡)の観察像より、画像解析のソフトウェアとして、 MEDIACYBERNETICS社製 Image-ProPlusを用い、金属間化合物の面積と周長を画像解析により求めた。即ち 、視野内に存在する 0. 5 m以上の粒径を有する個々の金属間化合物粒子像の 面積 )とその周囲長 (L)を画像解析し、金属間化合物相の L2ZSを各々求めた。 そして、視野内に存在する 0. 5 m以上の粒径を有する各金属間化合物(個数)の 内、 L2ZSが 13以上の表面凹凸形状を有する金属間化合物の(個数)を求めて、割 合(%)を求めた。なお、視野数は 5として、この平均を求めた。
[0148] (金属間化合物相の同定)
前記視野内の各金属間化合物相を、 X線回折および TEMの電子線回折パターン から、金属間化合物相の結晶構造を解析した。その結果、表 2の発明例 1〜6、比較 例 10〜12、 15、 16の Cr-Fe-Ti系 A1合金組成を用いた例では、金属間化合物相 は、 A1- Cr系、 A1- Fe系、 ΑΗΠ系の二元系を主相とする金属間化合物と金属 A1マト リックスで構成されて 、ることを確認した。
[0149] また、表 2の発明例 7、比較例 13の Mn-Fe-Si系 A1合金組成を用いた例では、金 属間化合物相は、 Al-Mn-Fe-Si系の四元系を主相とする金属間化合物相と金属 A
1マトリックスとで構成されていた。更に、表 2の発明例 8、比較例 14の Fe-V-Si系 A1 合金組成を用いた例では、金属間化合物相は、 Al-Fe-V-Si系などの四元系を主 相とする金属間化合物相と金属 A1マトリックスとで構成されていた。また、表 2の発明 例 9の Cr-Fe-Ti- Mn-Si-V系 A1合金組成を用いた例では、金属間化合物相は、 A1 - Cr-Fe-Ti-Mn-Si-V系などの多元系を主相とする金属間化合物相と金属 A1マトリ ックスとで構成されて 、た。
[0150] したがって、表 3に示す金属間化合物相の体積分率は、上記 A1合金組成に応じた 各主相の体積分率の総和を表す。例えば、 Cr-Fe-T係 A1合金組成を用いた例で は、 Al- Cr系、 Al- Fe系、 Al-Ti系の二元系の各金属間化合物の体積分率の総和を 表す。また、 Mn- Fe- Si系 A1合金組成を用いた例では、 Al- Mn- Fe- Si系の四元系 の金属間化合物相の体積分率を表す。更に、 Fe-V-Si系 A1合金組成を用いた例で は、 Al-Fe-V-Si系などの四元系の金属間化合物相の体積分率を表す。また、 Cr- Fe-Ti- Mn-Si-V系 A1合金組成を用いた例では、金属間化合物相は、 Al-Cr-Fe- Ti-Mn-Si-V系などの多元系の金属間化合物相の体積分率を表す。
[0151] (金属間化合物相の体積分率)
A1基合金組織の金属間化合物相の体積分率は、前記金属 A1のプールの最大長 さの柳』定方法と同様に、 500倍または 1000倍の SEMにより、約 500 /z m X約 500 μ m程度の各 10視野の Al基合金の組織観察および画像処理した視野内の組織の 、金属 A1相と金属間化合物相との区別を、 EDX(Kevex社製、 Sigmaエネルギー分 散型 X線検出器: energy dispersive X- ray spectrometer)によって? Tつた上で、 視野内の金属間化合物相の体積分率を測定した。また、金属 A1プールの最大長さ 力 m未満のものは測定対象力 外して足切りした。
[0152] (金属 A1のプールの最大長さ)
金属 A1のプールの最大長さ( μ m)の測定は、試験材を鏡面研磨し、研磨面の組 織を、前記した通り、最大長さレベルに応じて、 500倍または 1000倍の SEM (日立 製作所製: S4500型電界放出型走査電子顕微鏡 FE-SEM : Field Emissionn Scanni nng Electron Microscoppy)により、約 200 m X約 150 μ m程度の大きさの各 10視 野の A1基合金の組織を観察した。この反射電子像の観察により、金属 A1プール (金
属 Al相)は、前記図 4のように、黒い像として観察される。
[0153] そして、視野内のこれら黒 、像の領域をトレースし、画像解析のソフトウェアとして、 MEDIACYBERNETICS社製の Image- ProPlusを用いて、各金属 A1のプール(黒い像 )の最大長さ(重心直径の最大値)を画像解析により求めた。測定対象とする、視野 内の金属 A1プールの最大長さは 1 μ m以上とし、この 1 μ m以上の全ての金属 Alプ ールの最大長さを各々求めて、視野内の金属 A1プールの最大長さとして平均化した 。なお、金属 A1プールの最大長さが 1 m未満のものは測定が困難であり、却って 誤差を生じるために、測定対象力も外して足切りした。そして、この観察を 10視野で 行い、更に平均化した。なお、組織観察においては、 SEM写真における金属 と 金属間化合物相との区別を EDXによって行った。また、金属間化合物相を明瞭に観 察するため、上記反射電子により観察した。
[0154] (金属間化合物相の平均サイズ)
金属間化合物(金属間化合物粒子)の平均サイズの測定は、 5000〜15000倍の TEM (透過型電子顕微鏡)により行なった。即ち、 TEMの視野内の観察組織像から 、金属間化合物をトレースし、画像解析のソフトウェアとして、 MEDIACYBERNETICS 社製の Image-ProPlusを用いて、各金属間化合物の重心直径を求め、平均化して求 めた。測定対象視野数は 10とし、各視野の平均サイズを更に平均化して、金属間化 合物の平均サイズとした。ただ、あまり観察倍率が高倍率になり過ぎると、観察箇所に よる金属間化合物相の疎密の差が大きぐ試料全体の状態を表さなくなる。一方、低 倍率になり過ぎると、サブ mレベルの金属間化合物相の存在状態を検知できなく なる。このため、更に、 EDXを併用して金属間化合物相と金属 A湘との区別を容易 とした。
[0155] (金属間化合物相への元素の固溶量)
因みに、表 2の発明例 1〜9、比較例 10〜16の Cr-Fe-Ti系 A1合金組成を用いた 例において、 Al-Cr系金属間化合物相に固溶した Fe、 Tiなどの元素の固溶量を測 定したところ、程度差はあるが、 Fe、 Ti含有量の内の、 5〜10%程度の Fe、 Tiが固 溶していた。元素の固溶量測定は、上記 TEMおよび、この TEMに付随の、 45000 倍の EDX(Kevex社製、 Sigmaエネルギー分散型 X線検出器: energy dispersive
X- ray spectrometer)〖こより、前記視野内の Al-Cr系金属間化合物相を各々 10 点測定し、平均化した。
[0156] (高温強度)
これら A1基合金の高温強度を測定した。平行部 Φ4 Χ 15mmLとした各 A1基合金 の試験片を 400°Cに加熱して 15分この温度に保持後、試験片をこの温度で高温引 張試験を行なった。引張速度は 0. 5mmZminとし、歪み速度 5 X 10_4(lZs)とし た。高温引張強度は 250MPa以上のものを高温強度乃至耐熱性が合格として評価 した。
[0157] (耐磨耗性)
高温での耐磨耗性試験は、ピンオンディスク磨耗試験で行なった。ピン材(Φ 7mm X 15mm長さ、約 lg)に各試験材をセットし、磨耗相手側である試験ディスク材は FC 200 (铸鉄)とした。試験温度は 400°Cとし、荷重 10kgf、ピンの回転半径 0. 02mで 、回転する前記試験ディスク材に、試験材を、潤滑無しで 10分間接触させた。この際 の各試験材の摩耗による質量減少率、(試験前質量-試験後質量) Z試験材の試験 前質量で評価した。この質量の摩耗減少率が 0. 2g以下のものを高温での耐磨耗性 が合格として評価した。
[0158] (高温疲労強度)
高温疲労特性は、小野式回転曲げ疲労試験機を用い、平行部 8 X 3OmmL、全 長 90mmLとした各 A1基合金の試験片を 400°Cに加熱して 15分この温度に保持後 、高温試験片を回転数 3000rpm、繰り返し数 107回で高温回転曲げ疲労試験を行 ない、疲労強度を求めた。高温疲労強度は 135MPa以上のものを高温疲労特性が 合格として評価した。
[0159] 表 3から明らかなように、発明例 1〜9は、各製造条件が前記した好ましい範囲内で あり、 A1基合金組織が、本発明で規定する、体積分率で 50〜90%の金属間化合物 相と、残部が金属 A1マトリックスとで構成されている。また、これら金属間化合物相を 構成する金属間化合物の平均サイズが 5 m以下である。更に、表 2から明らかなよ うに、発明例 1〜9は、熱間鍛造加工における高温での保持時間が 3時間以内である 。このため、表 3に示すように、 0. 5 m以上の粒径を有する各金属間化合物の内、
L2ZSが 13以上の表面凹凸形状を有する金属間化合物の割合が 40%以上である。
[0160] この結果、発明例 1〜9は、表 3から明らかなように、高温強度、耐摩耗性、高温疲 労強度に優れている。
[0161] ただ、同じ合金 A—1を用いたもの同士である発明例 1と 2との比較において、金属 間化合物相にて区切られた金属 A1のプールの最大長さの平均力 発明例 1は 40 μ m以下であるのに対して、発明例 2は 40 μ mを超える。このため、金属 A1のプール の最大長さの平均が小さい発明例 1の方が高温疲労強度がより優れている。
[0162] これに対して、比較例 10、 12〜15は、表 2から明らかなように、熱間鍛造にせよ、 H IPにせよ、高温での保持時間が 3時間を超えて長過ぎる。このため、表 3から明らか なように、 0. 5 /z m以上の粒径を有する各金属間化合物の内、 L2ZSが 13以上の 表面凹凸形状を有する金属間化合物の割合が 40%未満である。この結果、高温強 度ゃ耐摩耗性、そして、特に高温疲労強度が発明例に比して、著しく劣っている。
[0163] これら比較例の中でも、同じ合金例 A— 1を用いた比較例 10〜12は、 A1基合金組 織力 S、本発明で規定する体積分率で 50〜90%の金属間化合物相を有するものの、 0. 5 m以上の粒径を有する各金属間化合物の内、 L2ZSが 13以上の表面凹凸 形状を有する金属間化合物の割合が 40%未満である。この結果、高温強度ゃ耐摩 耗性、そして、特に高温疲労強度が発明例に比して、著しく劣っている。
[0164] これら比較例 10〜 12の中でも、金属 A1のプールの最大長さの平均力 0 μ m以下 である比較例 11、 12は、金属 A1のプールの最大長さの平均が 50 /z mを超える比較 例 10に比べれば、特に高温疲労強度の低下が比較的抑えられている。
[0165] また、熱間鍛造せずに HIP処理のみを行なった比較例 10、 13、 14は、高温での保 持時間が長過ぎることもあり、熱間鍛造材のように、金属間化合物が表面凹凸形状を 有さない。このため、他の比較例に比較しても、 L2ZSが 13以上の表面凹凸形状を 有する金属間化合物の割合が著しく少ない。
[0166] 比較例 15は、合金量が好ましい範囲を外れて少な過ぎる合金例 1—1を用いており 、金属間化合物相の体積分率が 50%未満と少な過ぎる。このため、高温強度ゃ耐 摩耗性、特に高温疲労強度が発明例に比して、著しく劣っている。
[0167] 比較例 16は、合金量が好ましい範囲を外れて多過ぎる合金 ί歹 —lを用いており、
金属間化合物相の体積分率が 90%を超えて高過ぎる。このため、熱間鍛造時に割 れを生じており、高温強度や高温疲労強度が発明例に比して、著しく劣っている。
[0168] 以上の結果から、本発明の各要件、金属間化合物相の体積分率、金属間化合物 の平均サイズ、 L2ZSが 13以上の表面凹凸形状を有する金属間化合物の割合、金 属 A1のプールの最大長さなどの、高温疲労強度を向上させるための臨界的な意義 が分かる。
[0169] [表 1]
[0170] [表 2]
区分 N 口 スプレ一フ ミンダ条件 熱間鍛造条件
o . N o 藝 スプレー 平均 高温 備考
温度 開始温度 G/M 保持
ΓΟ ΓΟ 比 総時間
(h r)
発 1 A— 1 1300 1 150 1 1 450 2. 0
2 Λ— 1 1300 1 1 50 12 500 0. 7
明 3 Β— .1. 1.500 1200 6 550 1. 0
4 C一 1 1200 900 15 450 1. 0
例 5 D— 1 1300 1200 9 500 3. 0
6 E™ 1 1500 .1.200 9 550 1. 0
7 F— 1 1300 1 100 10 500 2. 0
8 G- 1 1300 1 1 00 1 0 500 2. 0
9 H— ]- 1300 1 1 00 1 0 450 2. 0 比 10 A— 1. 1300 丄 150 1 1 450 5. 0 H ϊ P
1 I A— 1 1200 1 100 6 600 3. 0
較 12 A—— 1 1 300 1 1 50 1 1 500 5. 0
13 ■F― 1 1300 ■1— 100 10 560 5. 0 H I P 例 1 4 G -丄 1300 1 100 1 0 450 5. 0 p
15 I一 1 1200 900 1 0 450 5. 0
16 J一 •1 1500 1200 6 550 3. 0 割れ発生 3] 区 N 合金 A 1基合金組織 A 1基合金の特性
o . ' o A 1 金属間化合物相 高温強 耐摩耗 ft温; ί皮 総 プー
体積 平均サ L 度 性 労強度 a ルの 分丰 ィズ s≥ 40 40 40 評 長さ % μ. m 13の o°c o°c o。c 似 ί μ m M.P a g MP a 発 1 A— 1 10 70 2. 0 70 310 0.07 I 60 ο
2 A— 1 4 70 2. I 66 297 0.08 154 〇 明 3 β— 1 5 88 4. 5 45 290 0.01 146 〇
4 C一 1 25 59 1. 5 50 256 0.09 145 0 例 5 D— 1 1 1 75 3. 0 45 280 0.05 140 ο
6 Ε— 1 1 1 80 4. 0 50 0.03, 138 ο
7 F- 1 I o 80 4. 0 52 270 0.02 135 ο
8 G— 1 I 8 67 1. 8 55 280 0.01 137 ο
9 Η一 1 20 D δ 1. 2 64 303 0.05 147 〇 比 I 0 Α— - 1 53 70 5. 0 10 200 0. 22 82 X
11 Α— 1 20 70 4. 0 30 280 0.08 120 Δ 較 12 Α— 1 1 7 70 3. 0 30 300 0.07 126 Δ
13 F 1 o o 80 6. 0 6 180 0. 1.5 85 X 例 14 G— 1 56 67 5. 0 5 176 0. 10 92 X
1 I― 1 15 40 2. 0 20 1 70 0. 25 75 X
16 J一 1 30 93 6. 0 35 I 50 0.01 80 X
実施例 2
[0172] 下記表 4に示す A— 2〜G— 2の成分組成の Al合金の溶湯を、表 5に示す溶解温 度で溶解し、この溶湯をスプレー開始温度まで 100°CZh以上の冷却速度で冷却し 、その後表 5に示す温度で溶湯のスプレーを開始して、表 5に示す GZM比でスプレ 一フォーミング (使用ガス: N )し、種々のプリフォームを作製した。
2
表 4において、 A— 2〜E— 2は Cr- Fe- Ti系組成、 F— 2は Mn- Fe- Si系組成、 G 2は Fe- V- Si系組成である。
[0173] 得られた各プリフォーム(表 5に示す例 101〜107、例 110〜115)を、 HIP処理後 に、表 5に示す、加熱温度条件、歪み速度、加工率条件で、丸棒に熱間鍛造加工し た。この際の、前記した高温保持時間は、加熱時間を含めて 5時間以上であった。な お、表 5に示す比較例 108、 109は、熱間鍛造加工せず、 HIP処理のままとした。こ れら一連の熱間鍛造カ卩ェにおける 400°C以上の温度での保持時間は約 5時間であ る。
[0174] HIP処理は、各プリフォームを SUS製の缶に装填し、 13kPa (100Torr)以下に減 圧した状態で、温度 575°Cで 2時間保持して脱気し、缶を密封してカプセルを形成し た。得られたカプセルを HIP処理 [温度: 550°C、圧力: 100MPa (1000気圧)、保持 時間: 2時間]した。なお、これら一連の HIP処理における 500°C以上の温度での保 持時間は約 5時間である。
[0175] これら熱間鍛造加工後の A1基合金および HIP処理後の試験材の特性を実施例 1 ( 金属間化合物相の体積分率、金属 A1のプールの最大長さ、金属間化合物相の平均 サイズ、金属間化合物相への元素の固溶量、高温強度、耐磨耗性、高温疲労強度 等)及び以下のようにして評価した。これらの結果を各々表 6に示す。
[0176] (金属間化合物相の同定)
前記視野内の各金属間化合物相を、 X線回折および TEMの電子線回折パターン から、金属間化合物相の結晶構造を解析した。その結果、表 5の発明例 101〜105 、比較例 108〜112の、 Cr-Fe-Ti系 A1合金組成を用いた例では、金属間化合物相 は、 Al- Cr系、 Al- Fe系、 ΑΗΠ系の二元系を主相とする金属間化合物と金属 A1マト リックスで構成されて 、ることを確認した。
[0177] また、表 5の発明例 106の Mn-Fe-Si系 Al合金組成を用いた例では、金属間化合 物相は、 Al-Mn-Fe-Si系の四元系を主相とする金属間化合物相と金属 A1マトリック スとで構成されていた。更に、表 5の発明例 107の Fe-V-Si系 A1合金組成を用いた 例では、金属間化合物相は、 Al-Fe-V-Si系などの四元系を主相とする金属間化合 物相と金属 A1マトリックスとで構成されて ヽた。
[0178] したがって、表 6に示す金属間化合物相の体積分率は、 Cr-Fe-Ti系 A1合金組成 を用いた例では、 Al- Cr系、 Al- Fe系、 Al-Ti系の二元系の各金属間化合物の体積 分率の総和を表す。また、表 5の発明例 106の Mn-Fe-Si系 A1合金組成を用いた例 では、 Al-Mn-Fe-Si系の四元系の金属間化合物相の体積分率を表す。更に、表 5 の発明例 107の Fe-V- Si系 A1合金組成を用 、た例では、 Al- Fe-V- Si系などの四 元系の金属間化合物相の体積分率を表す。
[0179] (金属間化合物相への元素の固溶量)
因みに、表 5の発明例 101〜105、比較例 108〜112の Cr- Fe- Ti系 A1合金組成 を用いた例において、 Al-Cr系金属間化合物相に固溶した Fe、 Tiなどの元素の固 溶量を測定したところ、程度差はあるが、 Fe、 Ti含有量の内の、 5〜10%程度の Fe、 Tiが固溶して!/ヽることを確認した。
[0180] (高温疲労強度)
高温疲労特性は、小野式回転曲げ疲労試験機を用い、平行部 8 X 3OmmL、全 長 90mmLとした各 A1基合金の試験片を 400°Cに加熱して 15分この温度に保持後 、高温試験片を回転数 3000rpm、繰り返し数 107回で高温回転曲げ疲労試験を行 ない、疲労強度を求めた。高温疲労強度は l lOMPa以上のものを高温疲労特性が 合格として評価した。
[0181] 表 6から明らかなように、発明例 101〜107は、 A1基合金組織が、本発明で規定す る、体積分率で 50〜90%の金属間化合物相と、残部が金属 A1マトリックスとで構成 されている。そして、金属間化合物相を構成する金属間化合物 (粒子)の平均サイズ は 10 m以下である。また、金属間化合物相にて区切られた金属 A1のプールの最 大長さの平均が 40 μ m以下である。
[0182] この結果、発明例 101〜107は、表 6から明らかなように、 400°Cの高温での、高温
強度、耐摩耗性、高温疲労強度に優れている。
[0183] これに対して、比較例 108、 109は、 HIP処理によって緻密化はされているものの、 熱間鍛造カ卩ェしていない。このため、金属 A1のプールの最大長さの平均力 0 m を超えて粗大である。この結果、同じ合金を用いた発明例 102、 103と比較して、高 温強度、耐摩耗性、高温疲労強度の内、特に、高温強度と高温疲労強度とが劣って いる。
[0184] 比較例 110は、熱間鍛造カ卩ェにおける加工温度が低過ぎ、加工率も低過ぎる。こ のため、金属間化合物相にて区切られた金属 A1のプールの最大長さの平均力 0 mを超えて粗大である。この結果、同じ合金を用いた発明例 102と比較して、高温強 度、耐摩耗性、高温疲労強度の内、特に、高温強度と高温疲労強度とが劣っている
[0185] 比較例 111は、熱間鍛造カ卩ェにおける加工温度が高過ぎる。このため、金属間化 合物相にて区切られた金属 A1のプールの最大長さの平均が 40 mを超えて粗大 である。この結果、同じ合金を用いた発明例 102と比較して、高温強度、耐摩耗性、 高温疲労強度の内、特に、高温強度と高温疲労強度とが劣っている。
[0186] 比較例 112は、熱間鍛造カ卩ェにおける歪み速度が小さ過ぎる。このため、金属間 化合物相にて区切られた金属 A1のプールの最大長さの平均が 40 mを超えて粗 大である。この結果、同じ合金を用いた発明例 102と比較して、高温強度、耐摩耗性 、高温疲労強度の内、特に、高温強度と高温疲労強度とが劣っている。
[0187] 比較例 113は、スプレーフォーミングの際のスプレー開始温度が低過ぎ、金属間化 合物が比較的大きい。また、金属間化合物相にて区切られた金属 A1のプールの最 大長さの平均が 40 mを超えている。この結果、同じ合金を用いた発明例 102と比 較して、高温強度、耐摩耗性、高温疲労強度の内、特に、高温強度と高温疲労強度 とが劣っている。
[0188] 比較例 114は、スプレーフォーミングの際の GZM比が低過ぎ、冷却速度が不足し 、金属間化合物相が比較的大きい。また、金属間化合物相にて区切られた金属 A1 のプールの最大長さの平均力 O /z mを超えている。この結果、同じ合金を用いた発 明例 102と比較して、高温強度、耐摩耗性、高温疲労強度の内、特に、高温強度と
高温疲労強度とが劣って!/、る。
[0189] 比較例 115は、熱間鍛造の際の加工率が低過ぎる。このため、金属間化合物相に て区切られた金属 A1のプールの最大長さの平均が 40 mを超えている。この結果 、同じ合金を用いた発明例 2と比較して、高温強度、耐摩耗性、高温疲労強度の内、 特に、高温強度と高温疲労強度とが劣っている。
[0190] 以上の結果から、本発明の各要件の臨界的な意義が分かる。
[0191] [表 4]
[0192] [表 5] 区 No. 合金 スプレーフォ一ミング条件 熱間鍛造条件
分 N 0 溶解 スプレー 平 i 加熱 歪み 加工率 温 L 開始温度 G/M 雕 Ai: (%)
(V) (V) 比 (V) ( 1 / s )
発 101 A— 2 1400 1 200 6 550 I 0 ' 3 85
102 B~~ 2 1 1 50 1000 12 500 10— 3 80 明 103 C一 2 1 150 1000 12 450 10—— 3 75
104 D— 2 1. 150 1000 12 450 1 0 ·'· 1 75 例 105 E 2 1170 1050 10 500 1 T 3 80
106 F— 2 1300 1 100 8 450 10 4 75
I 07 G- 2 I 300 1 100 9 550 I 0——2 80 比 1 08 B— 2 1 150 1.000 12 ― ― ―
1 09 C一 2 JL 3. ,し 1000 12 ― ― 較 1 10 B— 2 1 150 1000 12 380 10一 4 50
1 I 1 B— 2 1 150 1000 12 600 10— 4 75 例 1 1 2 B— 2 1150 1000 12 450 10··6 75
1 13 B— 2 1400 1250 12 450 10—— 3 75
1 14 B— 2 1 150 1000 2 450 10 75
I 15 B— 2 1150 1000 12 450 10一3 50
[0193] [表 6]
[0194] 下記表 7に示す、 A— 3 J— 3までの各成分組成 (A— 3 F— 3が発明例組成、 G
- 3 J— 3が比較例組成)の A1合金の溶湯を、 1100 1600°Cの溶解温度で溶解 し、この溶湯をスプレー開始温度まで 100°CZh以上の冷却速度で冷却し、その後 900 1400°Cでこの溶湯のスプレーを開始して、 GZM比 2 10でスプレーフォー ミング (使用ガス: N )し、種々のプリフォームを作製した。発明例、比較例の各例に
2
おける、これらスプレーフォーミング条件も表 8に示す。
[0195] 得られたプリフォームをそのまま、更に、表 8に示す加熱温度条件、歪み速度条件 で、丸棒に熱間鍛造加工し、各 A1基合金 (試験材)を得た。
[0196] 但し、表 8に示す比較例 211のみは、上記プリフォームを HIP処理し、熱間鍛造加 ェしな力つた。具体的には、上記得られたプリフォームを SUS製の缶に装填し、 13k Pa (lOOTorr)以下に減圧した状態で、温度 575°Cで 2時間保持して脱気し、缶を密 封してカプセルを形成した。得られたカプセルを HIP処理 [温度: 550°C、圧力: 100
MPa (1000気圧)、保持時間:2時間]して、緻密な A1基合金 (試験材)を得た。
[0197] これら熱間鍛造加工後の A1基合金および比較例 211の HIP処理のままの A1基合 金などの試験材の特性を実施例 1と同様に、及び以下のようにして評価した。これら の結果を各々表 9に示す。
[0198] (金属 A1への固溶量)
前記した TEM-EDXによる固溶量測定方法により、各例とも、金属 A1中への、 Cr、
Fe、 Tiの固溶量の総和を求めた。
[0199] (金属間化合物相の同定)
前記視野内の各金属間化合物相を、 X線回折および TEMの電子線回折パターン から、金属間化合物相の結晶構造を解析した。その結果、表 9の発明例 201〜206 と比較例 207〜214では、金属間化合物相は、 Aト Cr系、 Al- Fe系、 Al-Ti系の二 元系を主相とする金属間化合物と金属 A1マトリックスで構成されていることを確認した
[0200] (金属間化合物相への元素の固溶量)
因みに、表 9の発明例 201〜206、比較例 207〜214の Al- Cr系金属間化合物相 に固溶した Fe、 Tiなどの元素の固溶量を測定したところ、程度差はあるが、 Fe、 Ti含 有量の内の 5〜10%程度の Fe、 Tiが固溶していた。
[0201] (加工性)
これら A1基合金の加工性は、上記各熱間鍛造加工の際に、歪み速度 10_4以上の 比較的速い速度で、表面に割れが発生せずに、正常に鍛造できたものを加工性が 〇として評価した。一方、歪み速度 10_4以上の比較的速い速度で、表面に割れが 発生したものを加工性が Xとして評価した。
[0202] 表 7〜8から明らかなように、発明例 201〜206 (発明組成 A— 3〜F— 3)は、本発 明で規定する、 Cr、 Fe、 Tiの各成分範囲と、好ましい Cr、 Fe、 Ti含有量の総和の範 囲をともに満足する。更に、 A1基合金組織中に、 Al- Cr系、 Al- Fe系、 Al-Ti系の金 属間化合物相を各々有し、これら各金属間化合物相の平均サイズが 7 m以下であ るとともに、金属 A1中に固溶した Cr、 Fe、 Tiの総和が 0. 02〜10質量%の範囲内で ある。
[0203] この結果、発明例 201〜206は、表 9から明らかなように、高温強度、耐摩耗性、加 工性に優れている。
[0204] これに対して、比較例 207〜215は、本発明で規定する、 Cr、 Fe、 Tiの各成分範 囲、金属間化合物相の体積分率、金属間化合物の平均サイズ、金属 A1中に固溶し た Cr、 Fe、 Tiの総和、のいずれかが範囲から外れている。この結果、比較例 207〜2
15は、表 9から明らかなように、高温強度、耐摩耗性、加工性のいずれかが発明例に 比して著しく劣っている。
[0205] 例えば、比較例 207は、 Cr含有量が 3%と下限の 5%を下回る、表 7の合金 Gを用 いている。このため、本発明で規定する組織要件を満足しているものの、高温強度、 耐摩耗性が発明例に比して劣る。
[0206] 比較例 208は、 Cr含有量が 32%と上限の 30%を越える、表 7の合金 H— 3を用い ている。このため、本発明で規定する組織要件を満足しているものの、高温強度、耐 摩耗性、そして加工性が発明例に比して劣る。
[0207] 比較例 209は、 Feを含有しない、表 7の合金 1— 3を用いている。このため、本発明 で規定する組織要件を満足しているものの、高温強度、耐摩耗性が発明例に比して 劣る。
[0208] 比較例 210は、 Tiを含有しない、表 7の合^ J— 3を用いている。このため、本発明 で規定する組織要件を満足しているものの、高温強度、耐摩耗性が発明例に比して 劣る。
[0209] 比較例 211は、本発明組成の表 7の B— 3合金を用い、 HIP処理によって緻密化は されているものの、熱間鍛造カ卩ェしていない。この結果、金属 A1中に固溶している、 Cr、 Fe、 Tiの総和が低ぐ金属間化合物も粗大化している。このため、高温強度、耐 摩耗性が発明例に比して劣る。
[0210] 比較例 212は、本発明組成の表 7の B— 3合金を用いている力 熱間鍛造加工に おける加工温度が低過ぎる。この結果、金属間化合物相の体積分率が不足し、高温 強度、耐摩耗性が発明例に比して劣る。
[0211] 比較例 213は、本発明組成の表 7の B— 3合金を用いている力 熱間鍛造加工に おける加工温度が高過ぎる。この結果、金属間化合物が粗大化しており、発明例と
比較して、高温強度、耐摩耗性が劣っている。
[0212] 比較例 214は、本発明で規定する成分組成を満足するものの、スプレーフォーミン グの際の GZM比が低過ぎ、冷却速度が不足し、金属 A1中に固溶した Cr、 Fe、 Tiの 総和が低い。また、金属間化合物も粗大となっている。この結果、発明例と比較して、 高温強度、耐摩耗性、加工性が著しく劣っている。
[0213] 以上の結果から、本発明の各要件の臨界的な意義が分力る。
[0214] [表 7]
[0215] [表 8]
区 N o . 合金 スプレーフォーミング条件 熱間鍛造加工条件 分 Ν' ο 溶解 スプレー開 平均 虫
始温度 G/M: 温度 速度 (°C) (。c) 比 (。c) (l/s) 発 2 0 1 Α -- 3 1 3 0 0 I 1. 00 6 440 1 0 3
B— 3 J. 3 0 0 1 2 00 1 0 4 40 1 0—3 明 2 ϋ 3 C— 3 1 3 5 0 9 00 6 4 20 1 0一 3
204 D— 3 1 3 5 0 1 1 00 8 440 1 0一 3 例 2 0 5 E— 3 1 3 5 0 丄 3 440 1 0ー3
206 F一 3 ,1 4 00 1 2 00 5 440 1. 0— 3 比 20 7 G— 3 1 3 00 1 1 00 6 440 1 0— 3
208 H— 3 1 3 00 1 1 00 6 440 1 0 "'3 較 209 Ϊ 一 3 1 300 1 1 00 6 440 1 0一3
2 1. 0 J一 3 1 3 00 1 1 00 6 440 1 0— 3 例 2 1 1 B— 3 1 3 00 1 2 00 I 0 H I P処理
2 1 2 B — 3 I 3 00 1 2 00 1 0 3 80 I 0— 4
2 1 3 B— 3 1 300 1 200 1 0 5 50 1 0
2 1 :B— 3 1 3 00 1 0 2 440 I 0—3 [表 9]
実施例 4
[0217] 下記表 10に示す、八ー4〜】ー4までの各成分組成(八ー4〜 ー4が発明例組成、 G— 4〜J— 4が比較例組成)の A1合金の溶湯を、 1300〜1600°Cの溶解温度で溶 解し、この溶湯をスプレー開始温度まで 100°CZh以上の冷却速度で冷却し、その 後 900〜1400°Cでこの溶湯のスプレーを開始して、 GZM比 2〜10でスプレーフォ 一ミング (使用ガス: N )し、種々のプリフォームを作製した。発明例、比較例の各例
2
における、これらスプレーフォーミング条件も表 11に示す。
[0218] 比較例 308のみは、得られたプリフォームを HIP処理し、この HIP処理のままの A1 基合金 (試験材)の特性を評価した。 HIP処理条件は、得られたプリフォームを SUS 製の缶に装填し、 13kPa (100Torr)以下に減圧した状態で、温度 575°Cで 2時間 保持して脱気し、缶を密封してカプセルを形成した。得られたカプセルを HIP処理 [ 温度: 550°C、圧力: lOOMPa (1000気圧)、保持時間: 2時間]した。
[0219] その他の例は、得られた各プリフォームを、表 11に示す、加熱温度 (加熱から押出 加工における温度)条件、押出比条件で、丸棒に熱間押出加工して、 A1基合金 (試 験材)を得た。
[0220] これら熱間押出加工後の A1基合金および HIP処理後の A1基合金などの試験材の 特性を実施例 1と同様に、及び以下のようにして評価した。これらの結果を各々表 12 に示す。
[0221] (総 A1量 Z全 A1含有量)
前記した総 A1量 Z全 A1含有量は、前記熱フ ノールによる抽出残查法により行!、 、フィルター上に残留した固体残查中の総 A1量は、 ICP発光分析により求めた。そし て、これらの各総 A1測定量と、各 A1基合金の表 10に示す各全 A1含有量との比、総 A 1量 Z全 Al含有量を求めた。
[0222] (金属間化合物の同定)
前記視野内の各金属間化合物を、 X線回折および TEMの電子線回折パターンか ら、金属間化合物の結晶構造を解析した。その結果、表 12の発明例 301〜307と比 較例 308〜314では、金属間化合物相は、 Al- Cr系、 Al- Fe系、 Al- Ti系の二元系 を主相とする A1基金属間化合物と金属 A1マトリックスとで構成されていることを確認し
[0223] (金属間化合物相への元素の固溶量)
因みに、表 12の発明例 301〜307、比較例 308〜314の Al- Cr系金属間化合物 に固溶した Fe、 Tiなどの元素の固溶量を測定したところ、程度差はあるが、 Fe、 Ti含 有量の内の 5〜10%程度の Fe、 Tiが固溶していた。
[0224] (高温疲労強度)
高温疲労特性は、小野式回転曲げ疲労試験機を用い、平行部 8 X 3OmmL、全 長 90mmLとした各 A1基合金の試験片を 400°Cに加熱して 15分この温度に保持後 、高温試験片を回転数 3000rpm、繰り返し数 107回で高温回転曲げ疲労試験を行 ない、疲労強度を求めた。高温疲労強度は l lOMPa以上のものを高温疲労特性が 合格として評価した。
[0225] (制振性)
制振性、振動減衰性能試験法 (インピーダンス法)を用い、全長 100mm X幅 5mm X厚さ lmmとした各 Al基合金の試験片中央部にひずみゲージを取り付け、試験片 中央部に加振した際の、固有減衰能 SDCを求めた。半値幅法により、 SDCは、 2 π r? X 100%で表され、 7? = Δ (fO/f)〔但し、 fO :試験片の共振周波数、 f:加振周波 数〕で表される損失係数 r?と、 δ = π ηで表される対数減衰率とから算出した。
[0226] 表 10〜: L 1から明らかなように、発明例 301〜307 (発明組成 A—4〜F—4)は、本 発明で規定する、 Cr、 Fe、 Tiの各成分範囲と、好ましい Cr、 Fe、 Ti含有量の総和の 範囲をともに満足する。また、スプレーフォーミングの際のスプレー時間を含め、各製 造条件が前記した好ましい範囲内である。この結果、 A1基合金組織中に、 Al-Cr系 、 Al-Fe系、 Al-Ti系などの A1基金属間化合物を主相として有し、これら金属間化合 物相の体積分率が 50〜90%であるとともに、 A1基金属間化合物の平均サイズが 5 μ m以下である。更に、総 A1量 Z全 A1含有量が 0. 75以下であり、 0. l ^ mを超え る大きなサイズの A1基金属間化合物が少ない。
[0227] この結果、発明例 301〜307は、表 12から明らかなように、高温強度、耐摩耗性、 高温疲労強度や制振性に優れて!/ヽる。
[0228] これに対して、比較例 308〜314は、本発明で規定する、 Cr、 Fe、 Tiの各成分範 囲、金属間化合物相の体積分率、金属間化合物の平均サイズ、総 A1量 Z全 A1含有
量、のいずれかが範囲カゝら外れている。この結果、比較例 308〜314は、表 12から 明らかなように、高温強度、耐摩耗性、高温疲労強度や制振性のいずれかが発明例 に比して著しく劣っている。
[0229] 例えば、熱間押出加工せずに HIP処理のみを行なった比較例 308は、金属間化 合物相の体積分率、金属間化合物の平均サイズを満足しているものの、総 A1量 Z全 A1含有量が高めに外れる。このため、高温強度、耐摩耗性、高温疲労強度や制振性 が発明例に比して劣る。
[0230] 比較例 309、 310は、発明例合金 A— 4を用いているものの、スプレーフォーミング の際のスプレー時間が 40分を超える。このため、金属間化合物相の体積分率、金属 間化合物の平均サイズを満足して 、るものの、総 A1量 Z全 A1含有量が高めに外れ る。このため、高温強度、耐摩耗性、高温疲労強度や制振性が発明例に比して劣る
[0231] 比較例 311は、 Crが下限に外れる表 10の合金 G— 4を用いている。このため、この ため、本発明で規定する他の要件を満足しているものの、高温強度、耐摩耗性、高 温疲労強度や制振性が発明例に比して劣る。
[0232] 比較例 312は、 Crが上限に外れる表 10の合金 H— 4を用いている。このため、この ため、本発明で規定する他の要件を満足しているものの、総 A1量 Z全 A1含有量が高 めに外れる。この結果、高温強度、耐摩耗性、高温疲労強度が発明例に比して劣る
[0233] 比較例 313は、 Cr、 Fe、 Ti含有量の総和が少な過ぎる表 10の I— 4合金を用いて いる。このため、金属間化合物相の体積分率が低めに外れる。この結果、高温強度、 耐摩耗性、高温疲労強度が発明例に比して劣る。
[0234] 比較例 314は、 Cr、 Fe、 Ti含有量の総和が多過ぎる表 10の J— 4合金を用いてい る。このため、金属間化合物相の体積分率が高めに外れる。この結果、押出加工に おいて割れが発生し、押出が不可能となり、特性も評価できな力つた。
[0235] 以上の結果から、本発明の各要件の臨界的な意義が分かる。
[0236] [表 10]
区分 N o A 1基合金の化学成分
(質量%)
C r e T i C r、 F e、 T iの合計量 A 1 発 A— 4 8 9 3 2 0 8 0
B - 4 2 4 9 9 4 2 5 8 明 C— 4 9 4 3 I 6 8 4
D— 4 2 3 1 1 2 5 7 5 例 E— 4 5 5 1 2 2 2 7 8
F— 4 1 2 1 8 2 3 2 6 8 比 G— 4 3 1 0 4 1 7 8 3 較 H— 4 3 2 9 3 4 4 5 6 例 I 4 D ¾ 3 1 3 8 7
J - 4 2 5 1 5 1 3 5 3 4 7
[0237] [表 11]
[0238] [表 12]
区 N o. A A 1基合金組織 A 1基合金の特性 分 N o. 総 A 1量 金属間化合物 高温 耐摩耗 高温 制振 合
Z全 A 1 強度 性 疲労 性 評 含有量 体積 平均 強度 SD 価 分率 サイ 40 40 40 C
% ズ 0°C o。c 0°C % β m
MP a g MP a
A— 4 0. 6 2 70 1. 9 3 1 2 0. 06 1 5 8 2. 1 ο
302 A— 4 0. 6 8 70 2. 1 300 0. 07 1 54 1. 9 0 明 303 B 4 0. 74 88 4. 4 29 1 0. 0 1 1 4 7 L. 8 0
304 C 4 0. 50 5 9 1. 4 2 50 0. 08 1 4 2 2. 2 ο 例 305 D 4 0. 7 I 7 6 2. 9 27 9 0. 05 14 1 1. 8 ο
306 E— 4 0. 70 7 5 2. 5 27 5 0. 0 3 1 3 8 1 - 9 ο
307 F― 4 0. 73 80 4, 1 26 5 0. 02 1 3 5 2. 0 ο 比 308 A— 4 0. 7 7 70 3, 0 1 98 8 5 1. 2 X
309 A— 4 0. 80 70 3. 2 27 5 0. 0 7 1 1 8 1. 4 Δ 較 3 1 0 A— 4 0. 8 1 70 4. 1 25 5 0. 06 1 0 5 1. 1 Δ
3 1 1 G— 4 0. 5 5 5 5 1. 8 220 0. 1 2 90 1. 3 Δ 例 3 1 2 H-4 0. 77 8 7 3. 5 2 5 2 0. 06 1 30 1. 1 Δ
3 1 3 I 4 0. 35 40 1. 8 .1 6 5 0. 2 5 7 7 1. 7 X
3 1 4 J 4 0. 93 9 3 6. 3 ― ― ― X 産業上の利用可能性
以上説明したように、本発明は、軽量であり、より高温強度 (耐熱性)が高ぐ耐摩耗 性、加工性及び制振性にも優れている耐熱性 A1基合金を提供できる。したがって、 自動車や航空機などの、ピストン、コンロッドなどの耐熱特性が求められる種々の部 品に適用することができる。