JP5059512B2 - 高強度、高延性Al合金およびその製造方法 - Google Patents

高強度、高延性Al合金およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、急冷凝固法により得られたAl−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金であって、高強度な割に高延性なAl合金およびその製造方法に関するものである。
本発明で言う、急冷凝固法により得られたAl合金とは、Al合金溶湯をガスアトマイズにより急冷凝固させた粉末乃至プリフォーム体を固化させたAl合金である。この固化させたAl合金とは、急冷凝固粉末乃至プリフォーム体を、押出、鍛造、圧延などの熱間塑性加工により緻密化させたAl合金のことであり、緻密化後に、溶体化処理、時効処理などの調質処理が施された、種々の形状を有するAl合金材のことである。そして、その用途に応じて、高延性を利して所望の形状に冷間などで成形加工され、高強度を利して所望の部材、部品とされるAl合金材のことを言う。
近年、軽量化の要求が高まっている自動車部品、電子材料用端末機械、精密機械部品などには、高強度で軽量なAl合金材料が幅広く使用されている。
ただ、Al合金の常温での機械的特性は、近年飛躍的に向上しているとはいうものの、高強度鋼に比べると未だ十分とはいえず、その使用も制限されている。例えば、高力Al合金として広く用いられている、所謂A7000系Al合金でさえも、その強度は不十分であり、その使用範囲は限られている。
これに対して、従来の溶解鋳造合金では、その強度などの機械的特性の飛躍的な向上には限界がある。このため、A7000系Al合金の強度を一層高めることを目的として、アトマイズ法による急冷凝固粉末として得る方法が、従来から提案されている。この急冷凝固法によれば、合金元素の含有量を、前記溶解鋳造Al合金よりも増すことができる。したがって、これら合金元素を多量に含有したAl合金を急冷凝固によって粉末化し、これを固化成形することで、強度に優れたAl合金を得ることができる。
例えば、特許文献1では、A7000系Al合金の成分組成を特定量のAgを配合したものとし、空気アトマイズ法により得た、この成分組成の急冷凝固合金粉末を押出による粉末冶金法により固化成形体としている。因みに、この成形体を均質化処理および時効硬化処理したT6調質後の成形体材の引張強度は、約900MPaまで増大することが開示されている。この特許文献1では、A7000系Al合金のより具体的な組成として、Zn5〜11%、Mg2〜4.5%、Cu0.5〜2%およびAg0.01〜0.5%含み、残部が実質的にAlからなるA7000系Al合金急冷凝固粉末が開示されている。
特開平7−316601号公報(全文)
この特許文献1には、高強度となったA7000系Al合金の開示はあるものの、この高強度Al合金の伸びの開示が無い。ただ、この特許文献1のようなA7000系Al合金の急冷凝固粉末であっても、高強度になるほど伸びが大きく低下することは、やはり避けられない。例えば、文献などに公開されたデータとして、Al−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金におけるA7090のAl合金急冷凝固粉末固化成形材の引張強度が625MPaの場合の伸びは約6%程度でしかない。また、通常の鋳造材であるA7075Al合金押出材であっても、引張強度が570MPaの場合の全伸びは11%程度である。
このような低い伸びでは、その用途に応じて、所望の部材乃至部品形状に冷間にて成形加工する際の成形性が著しく低く、冷間加工が困難となる。例えば転造などの加工率が高い冷間成形加工の際には特に割れが発生しやすい。このため、このような冷間成形加工の制約からも、高強度な7000系Al合金の用途は大幅に制約されていたのが実情である。
本発明は、かかる問題に鑑みなされたもので、引張強度が600MPa以上のの高強度を有するとともに、高強度の割に、伸びが高く、冷間成形加工性に優れたAl−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金を提供することを目的とする。
この目的を達成するために、本発明の高強度、高延性Al合金の要旨は、急冷凝固法により得られたAl合金であって、質量%で、Zn:5〜12%、Mg:2〜4%、Cu:1〜2%を各々含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、このAl合金に含まれる酸素量が、熱フェノールによる抽出残査法によって、このAl合金から分離抽出された0.1μm 以上のサイズを有する固体残査中の酸素として0.1質量%以下であり、このAl合金の常温での機械的な特性として、600MPa以上の引張強度を有し、かつ、引張強度が600MPa以上、800MPa未満の場合には15%以上の伸びを有するとともに、引張強度が800MPa以上の場合には10%以上の伸びを有することである。
本発明の高強度、高延性Al合金は、高強度化のために、更に、Agを0.01〜0.1質量%含有してもよく、また、更に、Si、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、Zr、TiおよびVから選ばれた一種または二種以上を合計で0.1〜0.5質量%含有してもよい。
また、上記目的を達成するために、本発明の高強度、高延性Al合金の製造方法の要旨は、質量%で、Zn:5〜12%、Mg:2〜4%、Cu:1〜2%を各々含み、更に、Agを0.01〜0.1質量%か、Si、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、Zr、TiおよびVから選ばれた一種または二種以上を合計で0.1〜0.5質量%を選択的に含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl合金溶湯を、G/M比が2〜15Nm3 /kgの範囲とした不活性ガスによってスプレイフォーミングし、これによって得たプリフォーム体を金属容器に入れて真空封入した上で、熱間押出加工して固化させ、その後調質処理してAl合金を得るとともに、このAl合金に含まれる酸素量を、熱フェノールによる抽出残査法によって、このAl合金から分離抽出された0.1μm 以上のサイズを有する固体残査中の酸素として0.1質量%以下となし、このAl合金の常温での機械的な特性として、600MPa以上の引張強度を有し、かつ、引張強度が600MPa以上、800MPa未満の場合には15%以上の伸びを有するとともに、引張強度が800MPa以上の場合には10%以上の伸びを有することである。
本発明では、ガスアトマイズにより急冷凝固させた粉末乃至プリフォーム体を固化させたAl−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金中の酸素を、上記規定のように低減する。これによって、このAl合金組織中の酸化物系介在物が減少し、600MPa以上の高強度であっても、高い伸びを有することが可能となる。
対象Al合金中に含まれる実質的に全ての酸素は、組織中において酸化物系介在物を形成している。この酸化物系介在物は破壊の起点となり、伸びを低下させ、冷間加工における成形性を著しく阻害する。
これに対して、本発明のように、この対象Al合金に含まれる酸素量を上記熱フェノールによる抽出残査法による規定のように低減すれば、対象Al合金組織中の酸化物系介在物が著しく減少し、上記伸びの規定のように、600MPa以上の高強度であっても、劇的に高い伸びを有することが可能となる。即ち、本発明によって、ガスアトマイズにより急冷凝固させた粉末乃至プリフォーム体を固化させた、Al−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金の、引張強度が600MPa以上(800MPa未満)の場合の伸びを15%以上、引張強度が800MPa以上の場合の伸びを10%以上とすることができる。
因みに、対象Al合金中の酸素量を、本発明規定のように低減すれば、後述する通り、SEMやTEMによる組織観察によっても介在物を知見できない程度に、組織中の酸化物系介在物を低減できる。この事実は、対象Al合金が600MPa以上の高強度であっても、劇的に高い伸びを有する上記効果を裏付けるものである。
(Al合金組成)
本発明Al合金の化学成分組成(単位:質量%)について、各元素の限定理由を含めて、以下に説明する。なお、各元素の含有量の%表示は全て質量%の意味である。
本発明Al合金の化学成分組成は、後述する急冷凝固法により得られたAl−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金として、本発明で意図する機械的な特性を保証するために決定される。この観点から、本発明Al合金の化学成分組成は、質量%で、Zn:5〜12%、Mg:2〜4%、Cu:1〜2%を各々含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものとする。この組成に対し、選択的な添加元素として、更に、Agを0.1〜0.01%の範囲で、Si、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、Zr、TiおよびVから選ばれた一種または二種以上を合計で0.1〜0.5%の範囲で、各々含有させても良い。
(Zn、Mg)
必須の合金元素であるZn、Mgは、T6処理後にGPゾーンあるいは中間析出相と呼ばれるMgZn2 、Mg32AlZn49などの微細分散相を形成して強度を向上させる。Znが5%未満、Mgが2%未満など、Zn、Mgの含有量が少な過ぎると、これら微細分散相が不足して、強度が低下する。
一方、Znが12%超え、Mgが4%超えなど、Zn、Mgの含有量が多過ぎると、溶湯の急冷凝固を経たとしても、これらの元素は、Al中に固溶できないため、粗大な晶出物を形成し、Al合金の強度低下の原因となる。また、冷間加工性も著しく低下する。更に、Znの含有量が多過ぎると、溶体化処理中に、溶体化処理温度にもよるが、液相が生成しやすくなり、温度を下げて溶体化効果を犠牲にする必要が生じるなど、溶体化処理自体が困難となる。したがって、これらの含有量は、Zn:5〜12%、Mg:2〜4%の範囲とする。
(Cu)
必須の合金元素であるCuは、固溶強化によって強度を向上させる。Cuが1%未満と、Cuの含有量が少な過ぎると、固溶Cu量が減って、強度が低下する。一方、Cuの含有量が2%を超えて多過ぎると、析出物が粗大化し、耐応力腐食割れ性などの耐食性が著しく低下する。したがって、Cuの含有量は、1〜2%の範囲とする。
(Ag)
選択的な添加元素であるAgは、析出物の微細化効果があり、Al合金の強度を向上させる。この効果を発揮させるために含有させる場合には0.01%以上含有させ、0.1%を超えて含有させる必要は無い。したがって、Agを選択的に含有させる場合は0.1〜0.01%の範囲とする。
(Si、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、Zr、Ti、V)
選択的な添加元素であるSi、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、Zr、TiおよびVは、析出効果によって、Al合金の強度を向上させることができる。この効果を発揮させるために含有させる場合には、Si、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、Zr、TiおよびVから選ばれた一種または二種以上を合計で0.1%以上を含有させる。但し、これらの含有量が合計で0.5%を超えた場合、これらの元素の粗大析出物が形成され、むしろ強度や延性の低下の原因となる。したがって、これらの元素から選ばれた一種または二種以上を選択的に含有させる場合は、合計量(総量)で0.1〜0.5%の範囲とする。
(酸素)
本発明では、ガスアトマイズにより急冷凝固させた粉末乃至プリフォーム体を固化させたAl合金中の酸素、実質的には、組織中に酸化物系介在物として存在する酸素の合計量を、上記熱フェノールによる抽出残査法による規定のように低減する。
即ち、上記成分組成からなるAl合金溶湯を、ガスアトマイズにより急冷凝固させた粉末乃至プリフォーム体を固化させたAl合金に含まれる酸素量を、熱フェノールによる抽出残査法によって、このAl合金から分離抽出された0.1μm 以上のサイズを有する固体残査中の酸素として0.1質量%以下とする。
これによって、SEMやTEMによる組織観察によっても介在物を知見できない程度に、Al合金組織中の酸化物系介在物を低減できる。即ち、破壊の起点となるAl合金組織中の酸化物系介在物を低減できる結果、伸びを著しく向上させ、冷間加工における成形性を著しく向上させることができる。
この効果は、本発明で規定する通り、Al合金の常温での機械的な特性として、600MPa以上の引張強度(高強度)を有し、かつ、引張強度が600MPa以上、800MPa未満の場合の伸びが15%以上であるとともに、引張強度が800MPa以上の場合の伸びが10%以上であるレベルとなって現れる。この伸びの向上効果は、高強度なAl−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金としては、かなり画期的である。ここで、本発明で言う引張強度が800MPa以上とは、より具体的には、上限は950MPa程度であり、引張強度が800〜950MPaまでの高強度の範囲を言う。したがって、15%以上の伸びを有する600MPa以上の引張強度とは、600MPa以上、800MPa未満の範囲である。
通常、添加元素であればその添加量、不純物元素であればその低減量などに応じて、特性は向上するが、その向上の仕方は、大抵、比例的あるいは反比例的な直線関係としかならない。また、前記した特許文献1のように、通常は、Al−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金の急冷凝固粉末であっても、高強度になるほど伸びの大幅な低下は避けがたい。それゆえ、前記した通り、また、前記した特許文献1を含めて、高強度なAl−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金は、冷間加工性が著しく悪かったものである。
これに対して、本発明では、Al−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金において、Al合金組織中の酸化物系介在物を低減するだけで、引張強度が600MPaの場合の伸びを、従来の約6%程度から15%以上、引張強度が800MPa以上の場合の伸びを、従来の約2〜3%程度から10%以上に、飛躍的に向上させることができる。これは転造などの厳しい冷間加工が、今までは出来なかったのを可能とすることを意味する。したがって、このような効果は、前記した、不純物元素の低減効果の常識や、Al−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金の急冷凝固粉末における高強度になるほど避け難い伸びの大幅な低下の常識からすると画期的であると言える。
(酸素低減方法)
本発明Al合金は、後述する急冷凝固法により製造するが、この溶湯の急冷凝固の際に、酸素を低減する、あるいは酸素を増加させないことが重要となる。酸素を低減するためには、スプレイフォーミング法によるにせよ、アトマイズ粉末法(急冷粉末冶金法)によるにせよ、噴霧ガスには、空気を用いずに、窒素、ArまたはHeなどの、不活性な噴霧ガスを用いる。前記特許文献1が、本発明のように酸素を低減できず、伸びを向上させることができないのは、噴霧ガスに空気を用いていることが大きな原因である。
(酸素測定方法)
本発明で用いる、熱フェノールによる抽出残査法は、合金を熱フェノール処理して、金属を液相として、組織中に析出している金属間化合物を固相として分離する。そして、金属Al中の合金元素固溶量や、析出している金属間化合物量や金属間化合物組成を、定性的、定量的に測定する手段として汎用されている。
本発明では、この熱フェノールによる抽出残査法を利用して、Al−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金を熱フェノール溶液により溶解させる。この際、金属であるマトリックスのAl、このAlに固溶しているCu、Agなどは、ともに熱フェノール溶液に溶解させる。その一方で、組織中に析出している酸化物系介在物などの金属間化合物は、溶解せずに固相として残る。
ここで、この熱フェノール溶液を0.1μm のメッシュサイズを有するフィルターでろ過すれば、0.1μm 以上のサイズを有する酸化物系介在物などの金属間化合物は、固体残査として、フィルター上に残留する。この際、0.1μm 未満のサイズの酸化物系介在物などの金属間化合物があれば、上記金属分が溶解した熱フェノール溶液とともに、前記フィルターを透過する。実用的なフィルターのメッシュサイズは0.1μm が最小であり、また、0.1μm 未満のサイズの酸化物系介在物は、絶対量が少ないか、伸び特性に殆ど影響しないために、本発明では無視する。
このフィルター上に残留した固体残査(0.1μm 以上のサイズを有するAl基金属間化合物)の中の総酸素量を計測すれば、この総酸素量は、酸化物系介在物などの酸素の総量と見なすことができる。なお、このフィルター上に残留した固体残査中の総酸素量の計測は、ICP発光分析やX線分析により、適宜行なうことができる。そして、この総酸素量の計測結果を、上記固体残査中の酸素量(質量%)とし、同時に7000系Al合金に含まれる酸素含有量とする。
(不純物)
以上記載した元素以外のその他の元素は、上記酸素のように、基本的に不可避的不純物であり、本発明の意図する機械的な特性を阻害しない範囲において、通常のAl−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金に含まれる範囲までは許容する。
(製造方法)
以下に、本発明Al合金の製造方法を説明する。本発明Al−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金は、Zn、Mg系の金属間化合物を多く析出させ、高強度化させるために、通常の溶解鋳造方法ではなく、急冷凝固法によって製造する。この急冷凝固法は、Al合金溶湯をガスアトマイズにより急冷凝固させた粉末乃至プリフォーム体を固化させるものである。この固化は緻密化であり、急冷凝固粉末乃至プリフォーム体を押出、鍛造、圧延などの熱間塑性加工により、種々の形状に加工して行なう。そして、この緻密化(固化)後に、溶体化処理、時効処理などの調質処理が施される。
(急冷凝固法)
急冷凝固法は、通常の溶解鋳造法(インゴットメイキング) よりも、格段に速い冷却・凝固速度を有するために、微細な金属間化合物(上記分散相)を密度高く形成させることができる。また、この分散相の時効析出硬化によって、Al−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金の強度をさらに向上させることができる。更に、Al合金溶湯を急冷凝固させることにより、合金元素の晶出、偏析を抑制し、また、Al中にできるだけ多く固溶させることができ(合金元素の固溶範囲を高濃度側へ大きく拡張でき)、この面からもAl合金の強度をさらに向上させることができる。
急冷凝固法においては、前記した通り、酸素を低減する、あるいは酸素を増加させないことが重要となる。酸素を低減するためには、スプレイフォーミング法によるにせよ、アトマイズ粉末法(急冷粉末冶金法)によるにせよ、前提として、噴霧ガスには、空気を用いずに、窒素、ArまたはHeなどの、不活性な噴霧ガスを用いる。噴霧ガスに空気を用いた場合には、高強度化は図れるものの、酸素が本発明のように低減できず、伸びを向上させることができない。また、窒素を噴霧ガスとして用いた場合には、噴霧の過程で窒素(N)がAl合金に含有されるために、高強度、高延性に加えて、更にAl合金の靱性を向上させることができる。Al合金に含有される窒素は、AlNとして微細に析出しており、脱気、溶体化、人工時効の熱処理などのAl合金製造工程において、Al合金結晶粒の粗大化を防止して、微細結晶粒組織とし、Al合金の靱性を向上させるものと推考される。なお、Al合金に含有される窒素の量は、後述する窒素のガス/メタル比(G/M比)などの噴霧条件にもよる。
(アトマイズ粉末法)
急冷凝固法の一つであるアトマイズ粉末法(急冷粉末冶金法)によって、本発明Al合金を製造する場合、アトマイズ粉末法自体は、常法に従って製造することができる。例えば、本発明による組成を有するAl合金を高周波溶解炉において800〜1100℃の温度で溶解、出湯させる。このAl合金溶湯をるつぼに流し込み、このるつぼ底部の開口部からアトマイズノズルの溶湯噴出口まで導いてアトマイズする。
したがって、Al合金溶湯がアトマイズノズル溶湯噴出口に達する直前に、ノズル穴から、高圧の窒素、ArまたはHeなどの、不活性な噴霧ガスを噴出させこのガスの圧力により、溶湯噴出口から出てきたAl合金溶湯を細かく粉砕する。この様に細かく粉砕された溶湯は、高圧のガスおよび/または雰囲気により、直ちに冷却され、凝固することにより、Al合金急冷凝固粉末が得られる。
アトマイズされたAl合金粉末は、用途に応じてふるい分けされる。この際、平均粒径が150μm以下、好ましくは100μm以下の微粒粉を分級して使用することが好ましい。このような微粒粉のみをCIPやHIPで固化成型することで、本発明のAl合金が得られやすい。平均粒径が20μmを超える粗大なアトマイズ粉末は、冷却速度が遅いため、Cu、Agなどの固溶量を確保できておらず、用いると、強度が向上しない可能性がある。
(スプレイフォーミング法)
本発明合金を得る場合、上記アトマイズ粉末法(急冷粉末冶金法)よりも、スプレイフォーミング法の方が好適である。急冷凝固法の一つであるスプレイフォーミング法は、ガスを噴出させこのガスの圧力によりスプレイする点は、アトマイズ粉末法と機構は同じである。ただ、アトマイズ粉末法は、アトマイズ時には不活性な噴霧ガスを用いたとしても、粉末のハンドリングは大気中で行なわざるを得ず、酸化により、Al合金中の酸素が増加しやすくなる。これに対して、スプレイフォーミング法は、ハンドリングを大気中で行なったとしても、ある程度の密度を有するプリフォーム体が得られており、酸化しにくく、Al合金中の酸素が増加しにくい。
また、スプレイフォーミング法は、ある程度の密度を有するプリフォーム体が得られ、CIPやHIPでの予備的な固化成型が不要な点でも、アトマイズ粉末法に比して有利となる。アトマイズ粉末は、固化する前に、CIPやHIPでの予備的な固化成型が必要となる。更に、スプレイフォーミング法は、アトマイズ粉末法に比して、冷却凝固速度をより大きくとれるので、組織(金属間化合物相)を微細化できる利点もある。
但し、このスプレイフォーミング法でも、用いる噴霧ガスは、高圧の窒素、ArまたはHeなどの不活性な噴霧ガスとし、空気など酸素を含む噴霧ガスは、Al合金中の酸素を増すために、これを用いない。また、その冷却凝固速度の最適化も必要である。スプレイフォーミング法による好ましい態様は、上記本発明成分組成のAl合金を800〜1100℃で溶解後、この温度範囲で、スプレイフォーミング法により、溶湯の不活性ガスによるスプレイを開始して、下方の回転床上にプリフォーム体を作製する。
スプレイフォーミングにおける(スプレイ過程中の)冷却凝固速度は、例えば、ガス/メタル比〔G/M比:単位質量(kg)あたりの溶湯に吹き付けるガスの量(Nm 3)比〕によって制御する。本発明では、このG/M比が高いほど、冷却速度を速くでき、微細な金属間化合物が得られ、金属Alマトリックッス中にCu、Agを所定量固溶させることができる。
このG/M比が低過ぎると冷却凝固速度が不足する。このため、合金元素による金属間化合物も粗大となり強度が不足する。一方で、G/M比が高過ぎると、プリフォームの歩留まり(溶湯の堆積効率)が低下したり、不活性ガスの使用量が増加し、製造コストが高くなる。
これらの条件を満足するG/M比は、好ましくは2〜15Nm3 /kgの範囲とする。G/M比の下限は2Nm3 /kg以上、好ましくは4Nm3 /kg以上、さらに好ましくは6Nm3 /kg以上であり、G/M比の上限は、15Nm3 /kg以下、好ましくは13Nm3 /kg以下とすることが推奨される。
このような条件でのスプレイフォーミング法より得られたAl合金プリフォーム体は、気孔率が例えば10体積%程度のままが得られる。因みに、このプリフォームのままでは気孔率が高く、靱性が不足するため、プリフォームを脱気あるいはプリフォームの空孔を圧潰して緻密化するプリフォームの固化を行なう必要がある。
(固化、緻密化)
この固化の方法としては、プリフォーム体をAlなどの金属容器に入れて真空封入した上で、熱間で押出加工して固化(緻密化)させることが好ましい。この際は、Al合金の酸化を防止して、酸素が低い状態を維持するために、プリフォーム体を直接熱間加工するのではなく、純アルミニウムや適宜のアルミニウム合金などの金属製の収容容器に入れて、真空封入した上で熱間加工することが好ましい。
この他、プリフォーム体や前記急冷粉末冶金法によって得られた粉末は、鍛造、圧延、あるいは、押出、鍛造、圧延を適宜組み合わせた熱間加工によって、固化(緻密化)させても良い。
この際、熱間加工の前に、上記得られたプリフォーム体や粉末を、一旦真空容器中に密封するなどしてCIPやHIP処理を行なって固化(空孔、気孔の圧潰)成型し、予め(予備的に)緻密化しても良い。但し、HIP処理などは、高温に長時間Al合金(プリフォーム体)を曝すことになるので、金属間化合物が粗大化しやすくなる。このため、前記した通り、スプレイフォーミング法よるプリフォーム体では、このHIP処理などの予備的な緻密化処理はしない方が好ましい。
前記した鍛造、押出、圧延の熱間加工における加工温度は425〜500℃の範囲と、比較的低くすることが好ましい。このような加工温度範囲において熱間加工すると、Al基金属間化合物相を含めた金属間化合物が微細化されるとともに、均一に分散される。熱間加工における加工温度が高すぎると、金属間化合物が粗大化する。一方、加工温度が低過ぎると、熱間加工による緻密化が達成できない。
同様の主旨で、これらの熱間加工における加工率はできるだけ大きくする。熱間押出の場合は、押出比を6以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上として、また、熱間圧延や熱間鍛造の場合には、加工率を70%以上とする。押出比や加工率がこれより小さ過ぎると、熱間加工による緻密化が達成できない可能性が高い。
この熱間加工後の固化(緻密化)したAl合金は、更に、480〜520℃×2〜8時間程度の溶体化処理および100〜150℃×10〜50時間程度の時効硬化処理を行なうT6処理(調質処理)を施されて、本発明Al合金である、Al−Zn−Mg−Cu系の7000系製品Al合金(部品、部材などの素材)を得る。
この製品Al合金は、自動車部品、電子材料用端末機械、精密機械部品などの用途に応じて、所望の部材乃至部品形状に、転造などの冷間にて成形加工されて、その用途の部材乃至部品とされる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(実施例1)
下記表1に示す各成分組成のAl−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金溶湯をスプレイフォーミングするが、下記表2に示すように、噴霧ガスとして窒素(N2 )ガスと空気とを使い分け、最終的に得られるAl合金中の酸素量を制御、変化させて、酸素量によるAl合金の機械的特性と冷間加工性への影響を評価した。
具体的には、下記表1に示すA〜Oまでの各成分組成(A〜J、N〜Oが発明例組成、K〜Mが比較例組成)のAl合金の溶湯を、共通して1000℃の溶解温度で溶解してスプレイフォーミングした。この際のG/M比と噴霧ガスの種類とを表2に示す。
これによって得た各プリフォーム体を、共通して、HIP処理などの予備的な緻密化処理をせずに、アルミ容器に入れて真空封入した上で、加工温度460℃、押出比を15として、直接熱間押出加工して固化させ、10mmφの丸棒を得た。その後このAl合金丸棒を、やはり共通して、500℃×5時間の溶体化処理を行なった後、125℃×30時間の時効硬化処理を行なうT6処理(調質処理)を施して、Al−Zn−Mg−Cu系の7000系製品Al合金を得た。
これらのAl合金から試験片を採取して、Al合金に含まれる酸素量や介在物を調査するとともに、機械的な特性や冷間加工性を以下のようにして評価した。これらの結果を各々表2に示す。
(酸素量)
これらのAl合金試験片に含まれる酸素量を、前記した熱フェノールによる抽出残査法によって、このAl合金から分離抽出された0.1μm 以上のサイズを有する固体残査中の酸素量を求めた。
(介在物)
また、同時に、これらのAl合金試験片組織中に存在する酸化物系介在物を、15000倍のTEM(透過型電子顕微鏡)による組織観察により調査した。測定対象視野数はAl合金丸棒の任意の場所から採取した20箇所とした。これらのいずれからも酸化物系介在物が観察されない場合には、酸化物系介在物が無しとした。また酸化物系介在物が観察される場合には、20箇所でのその総数を、個数としてカウントした。
(強度、伸び)
各例とも、得られた10mmφの丸棒を切断して試験片とし、押出方向の室温引張り試験を行い、引張強度(MPa)、全伸び(%)を測定した。室温引張り試験はJIS Z2241(1980)に基づき、室温20℃で試験を行った。引張り速度は5mm / 分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。
(冷間加工性)
各例とも、10mmφの丸棒を5本ずつ切断して試験片とし、丸棒試験片の一方の端部にフランジ部を形成した断面T字状のピン形状に、冷間で転造加工した。その際に、5回とも割れが生じずに転造加工できたものを○、1回でもフランジ部などに割れが生じたものを×と評価した。また、割れまでは生じなかったが肌荒れ等が発生したものは△と評価した。
表1〜2から明らかなように、各発明例1〜12、19、20は、本発明組成のAl合金(溶湯)A〜J、N〜Oを用い、窒素ガスによるスプレイフォーミングを行なっている。
この結果、Al合金に含まれる酸素量が前記した熱フェノールによる抽出残査法で0.1質量%以下であり、酸化物系介在物が観察されない。それゆえ、Al合金が、常温での機械的な特性として、600MPa以上の引張強度を有し、かつ、引張強度が600MPa以上、800MPa未満の場合には15%以上の伸びを有するとともに、引張強度が800MPa以上の場合には10%以上の伸びを有する。このため、冷間加工性にも優れる。
ただ、スプレイフォーミングの際のG/M比が、好ましい条件の下限値2Nm3 /kgであり比較的小さな発明例2、4は、このG/M比が比較的大きく、かつ、このG/M比のみが相違する発明例1、3に比して、引張強度と伸びが比較的低い。
これに対して、比較例13、14、15は、本発明組成範囲内である表1のA、B、Jの各々組成であり、G/M比も好ましい範囲内であるものの、空気を用いてスプレイフォーミングしている。
この結果、比較例13、14、15は、Al合金に含まれる酸素量が前記した熱フェノールによる抽出残査法で0.1質量%を超えて高く、実質量の酸化物系介在物が観察されている。それゆえ、引張強度が600MPa以上の場合の伸びや、引張強度が800MPa以上の場合の伸びが著しく低い。即ち、比較例13、14、15は、従来と同様に、高強度ではあるが伸びが著しく低く、また、冷間加工性も著しく劣っている。
比較例16はZnが下限に外れる表1の合金Kを用いている。比較例17はMgが下限に外れる表1の合金Lを用いている。比較例18はCuが下限に外れる表1の合金Mを用いている。
このため、比較例16〜18は、好ましい製造方法で製造されているものの、引張強度が低く600MPa未満である。この結果、Al合金に含まれる酸素量は前記した熱フェノールによる抽出残査法で0.1質量%以下であり、酸化物系介在物が観察されておらず、伸びや冷間加工性も高いものの、用途において要求される高強度を満足できていない。
以上の結果から、Al−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金が高強度と高延性とを満足するための、本発明各要件や好ましい各要件の、臨界的な意義が裏付けられる。
Figure 0005059512
Figure 0005059512
(実施例2)
更に、窒素を噴霧ガスとして用いた場合の、Al合金への窒素(N)の含有量とAl合金の靱性向上効果とを調査した。表1に示す合金番号Bの組成のAl−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金溶湯を用い、全て発明例として、表3に示すように、噴霧ガスとして窒素(N2 )ガスを用い、G/M比が前記した好ましい条件範囲内でスプレイフォーミングした。なお、比較、参考のために、やはり発明例ではあるが、噴霧ガスとしてアルゴン(Ar)ガスを用い、G/M比が前記した好ましい条件範囲内でスプレイフォーミングした。
これによって得た各発明例プリフォーム体を、共通して、実施例1と同じ前記製造条件として、T6処理した10mmφの丸棒を得た。これらのAl合金から試験片を採取して、汎用されるシャルピー衝撃試験により、Al合金の室温靱性を調査、評価した。また、実施例1と同じく、Al合金に含まれる酸素量や介在物を調査するとともにAl合金に含まれる窒素量も調査し、更に機械的な特性や冷間加工性を評価した。これらの結果を各々表3に示す。
表3の通り、窒素を噴霧ガスとして用いた発明例21〜24は、アルゴンを噴霧ガスとして用いた発明例25、26に比して、当然ながら窒素含有量が高くなっている。このうち、発明例21〜23は、スプレイフォーミングにおけるG/M比がより適切であるために、Al合金の靱性も発明例25、26に比して高くなっている。したがって、Al合金の靱性向上への、含有窒素の寄与や、このための窒素ガス噴霧あるいは噴霧条件の意義が裏付けられる。なお、Al合金への窒素が含有される量は、表3のデータを参考にすると、前記した好ましいガス/メタル比(G/M比)の範囲では、概ね0.0002〜0.01質量%の範囲である。
Figure 0005059512
以上説明したように、本発明は、急冷凝固粉末乃至プリフォーム体を固化させたAl−Zn−Mg−Cu系の7000系Al合金であって、高強度な割に高延性なAl合金およびその製造方法を提供できる。したがって、その用途に応じて、高延性を利して所望の形状に冷間などで成形加工され、高強度を利して所望の部材、部品とされる、自動車部品、電子材料用端末機械、精密機械部品などに好適である。

Claims (4)

  1. 急冷凝固法により得られたAl合金であって、質量%で、Zn:5〜12%、Mg:2〜4%、Cu:1〜2%を各々含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、このAl合金に含まれる酸素量が、熱フェノールによる抽出残査法によって、このAl合金から分離抽出された0.1μm 以上のサイズを有する固体残査中の酸素として0.1質量%以下であり、このAl合金の常温での機械的な特性として、600MPa以上の引張強度を有し、かつ、引張強度が600MPa以上、800MPa未満の場合には15%以上の伸びを有するとともに、引張強度が800MPa以上の場合には10%以上の伸びを有することを特徴とする高強度、高延性Al合金。
  2. 前記Al合金が、更に、Agを0.01〜0.1質量%含有する請求項1に記載の高強度、高延性Al合金。
  3. 前記Al合金が、更に、Si、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、Zr、TiおよびVから選ばれた一種または二種以上を合計で0.1〜0.5質量%含有する請求項1または2に記載の高強度、高延性Al合金。
  4. 質量%で、Zn:5〜12%、Mg:2〜4%、Cu:1〜2%を各々含み、更に、Agを0.01〜0.1質量%か、Si、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、Zr、TiおよびVから選ばれた一種または二種以上を合計で0.1〜0.5質量%を選択的に含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl合金溶湯を、G/M比が2〜15Nm3 /kgの範囲とした不活性ガスによってスプレイフォーミングし、これによって得たプリフォーム体を金属容器に入れて真空封入した上で、熱間押出加工して固化させ、その後調質処理してAl合金を得るとともに、このAl合金に含まれる酸素量を、熱フェノールによる抽出残査法によって、このAl合金から分離抽出された0.1μm 以上のサイズを有する固体残査中の酸素として0.1質量%以下となし、このAl合金の常温での機械的な特性として、600MPa以上の引張強度を有し、かつ、引張強度が600MPa以上、800MPa未満の場合には15%以上の伸びを有するとともに、引張強度が800MPa以上の場合には10%以上の伸びを有することを特徴とする高強度、高延性Al合金の製造方法。
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