JP5409361B2 - 猫免疫不全ウイルスワクチン接種猫の検査方法、および該検査用抗原 - Google Patents

猫免疫不全ウイルスワクチン接種猫の検査方法、および該検査用抗原 Download PDF

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Description

本発明は、抗猫免疫不全ウイルス(FIV)抗体陽性の猫について、その原因がFIVに感染したことによるのか、FIVワクチンを接種したことによるのかを、血清学的に鑑別する方法に関する。
FIV感染症は小動物獣医学領域における最も重要な感染症の一つとして、またヒト免疫不全ウイルス感染症の動物モデルとして注目されてきた。1986年のFIV発見以来、FIVワクチンの研究は世界中で行われたが、FIVには複数のサブタイプが存在することから、ワクチンの開発は難しかった。米国のヤマモト博士は、複数のサブタイプを組み合わせることにより、有効性が高いワクチンの開発に成功し、このワクチンをマルチサブタイプワクチンと呼んだ(非特許文献1)。このマルチサブタイプワクチンの抗原として、北里大学と北里研究所との共同研究で発見されたFIV静岡株を使用することは、有効性を高めるのに効果的であった(非特許文献2)。FIV静岡株を含むマルチサブタイプワクチンは、2002年に、米国FortDodge Animal Health社から販売された(商品名Fel-O-Vax FIV)。このワクチンは、世界初のレンチウイルスワクチンとして注目された。
一方、このFIVワクチンの接種は、FIV感染の診断方法に関する新たな問題を引き起こした。それは、FIV感染猫とFIVワクチン接種猫の鑑別に関する問題である。これまでFIV感染の診断は、抗FIV抗体を検出することにより行われてきた。抗FIV抗体を検出するための診断薬は、複数の会社から市販されており、臨床現場での診断用に一般的に利用されている。しかし、FIVワクチンを接種した猫も、これらの診断薬では陽性と判定される。これは、FIVワクチン接種猫が抗FIV抗体を産生するために起こる。即ち、現在の診断薬では、FIV感染猫とFIVワクチン接種猫の両方が陽性と判定されてしまい、抗FIV抗体陽性猫が真のFIV感染猫であるかどうかについて鑑別することができない。その結果、FIVワクチン接種は、これら血清学的検査の意義を相対的に下げてしまう。この問題はFIVワクチンの普及を制限する要因となっている。
FIV感染の診断方法として、ウイルスを検出する検査方法もある。ウイルスを検出する検査方法は、抗体の有無に依存しないので、ワクチン接種とは無関係に正しい診断ができる。ウイルスを検出する方法として一般的であり実用的なものは、PCR法に代表される遺伝子増幅法である。PCR法は、感度、特異性とも高いので、診断意義が高く、血清学的検査法では診断が確定できない場合は有効な検査方法となる。しかし、これらの遺伝子増幅法には特別な器具器材が必要であるため、臨床現場での使用には適していない。そこで、FIV感染とFIVワクチン接種の鑑別について、臨床現場でも使用できる、簡便な検査方法が求められている。
Pu R, Coleman J, Omori M, Arai M, Hohdatsu T, Huang C, Tanabe T, Yamamoto JK., Dual-subtype FIV vaccine protects cats against in vivo swarms of both homologous and heterologous subtype FIV isolates. (2001) AIDS 15(10):1225-1237. Hohdatsu T, Okada S, Motokawa K, Aizawa C, Yamamoto JK, Koyama H., Effect of dual-subtype vaccine against feline immunodeficiency virus infection. (1997) Vet. Microbiol. 58(2-4): 155-165
本発明は、抗猫免疫不全ウイルス(FIV)抗体陽性の猫について、その原因がFIVに感染したことによるのか、FIVワクチンを接種したことによるのかを、血清学的に鑑別する方法の提供を課題とする。
本発明者らは、FIV感染猫とFIVワクチン接種猫を、血清学的手法により鑑別する検査方法の開発を試みた。
FIVは猫リンパ球の初代培養細胞、猫のリンパ球に由来する株化細胞であるFeT-J細胞やKumi-1細胞、猫の腎臓に由来するCRFK細胞などで増殖する。これまで試験された実験的なワクチンの多くは、培養細胞で増殖させたウイルスのウイルス粒子や一部の蛋白質を用いて作製されたものであった(Uhl,E.W.,Heaton-Jones,T.G.,Pu,R. and Yamamoto,J.K.,2002. FIV vaccine development and its importance to veterinary and human medicine: a review FIV vaccine 2002 update and review. Vet.Immunol.Immunopathol.90, 113-132.)。そのなかでも、FIVを感染させた培養細胞をホルマリン処理して固定し、そのままワクチン抗原として使用したワクチンは、高い有効性を示した。
ウイルスを培養細胞で増殖させて作製した抗原には、その培養細胞の成分を含むことが多い。そこで本発明者は、このように培養細胞で増殖させたFIVを細胞ごと固定して抗原として用いたワクチンを猫に免疫した場合、ワクチンに含まれる細胞成分に対して、猫が抗体を産生するのではないかと考えた。一方、FIVの自然感染では、そのような培養細胞に対する抗体は産生されない。そこで、培養細胞に由来する細胞成分に対する抗体を検出することで、FIVワクチンを接種した猫のみを検出することができないか実験を行った。
まず初めに、FIVワクチンを接種した猫の血清が細胞成分に反応するかを、ELISA法(酵素結合免疫測定法)を用いて確認した。FIVが最もよく増殖するのは、猫のリンパ球由来の細胞であることから、猫のリンパ球に由来するFeT-J細胞を可溶化したものをELISA用抗原として用いた。その結果、FIVワクチン接種猫の血清は、FeT-J細胞の細胞成分に対し強く反応することが示された。一方、FIV感染猫の血清は、この抗原に対しほとんど反応を示さなかった(実施例1参照)。また、不活化ワクチンを製造する際は、ホルマリン処理によってウイルスを不活化(固定処理)することが一般的であるため、FeT-J細胞のELISA用抗原をホルマリンで固定処理したものについても反応性を確認した。その結果、細胞成分をホルマリンで固定処理することにより、ワクチン接種猫血清と反応性が高くなることが確認された(実施例1参照)。また、細胞成分に対する抗体が、FIVワクチンを接種した猫で特異的に産生されるものなのかを確認するため、FIVを含まない猫用ワクチン(猫汎白血球減少症ウイルス、猫カリシウイルス、猫伝染性鼻気管炎ウイルス、猫白血病ウイルス等を含む)で免疫した猫の血清の、FeT-J細胞の細胞成分に対する反応性を確認した。その結果、FIVを含まない猫用ワクチンを接種した猫の血清は、FeT-J細胞の細胞成分にはほとんど反応しなかった(実施例2参照)。従って、FeT-J細胞に由来する細胞成分を診断用抗原に用いることにより、FIVワクチン接種猫とFIV感染猫を区別できることが確認された。
次に、このような反応がFeT-J細胞以外の細胞株でもみられるのかを確認するため、種々の培養細胞の細胞成分に対するFIVワクチン接種猫血清の反応性を確認した。その結果、猫のリンパ球に由来する3201細胞、猫の腎臓に由来するCRFK細胞および猫の胎仔に由来するfcwf-4細胞のいずれから作製したELISA用抗原でも、FeT-J細胞と同様に、FIVワクチン接種猫の血清と高い反応性を示し、FIV感染猫の血清とは反応しなかった。加えて、サルの腎臓に由来するVero細胞でも同様の反応が確認された。従って、このような反応性は、細胞の由来動物種や由来組織に依存するものではなく、特定の細胞株に限定されるものでもないことが確認された(実施例3参照)。
このようなFIVワクチンを接種した猫が産生する細胞成分に対する抗体は、培養細胞の構成成分のうちどれに反応しているのかを確認するため、FeT-J細胞を可溶化して、細胞質、細胞膜、細胞核および細胞骨格に分画し、それぞれの分画と猫血清との反応性を、ELISA法を用いて確認した。その結果、FIVワクチンを接種した猫では、細胞質、細胞膜、細胞核および細胞骨格のいずれに対する抗体も産生されることが確認された(実施例4参照)。従って、細胞の構成成分のうち一部の分画を用いて猫血清との反応を測定する場合、その細胞構成成分は、細胞質、細胞膜、細胞核および細胞骨格のいずれでもよいことが示された。そのうち、細胞膜および細胞骨格で、より高い反応が認められた。
FIVワクチン接種猫血清の培養細胞の細胞成分に対する反応の特異性を、ドットブロット法を用いて確認した。超音波破砕したFeT-J細胞の細胞成分をニトロセルロース膜に吸着させ、FIVワクチン接種猫血清、FIV感染猫血清、SPF猫血清を反応させて、その反応を観察した。その際、FIV感染の診断に有用な、FIVの構造蛋白質であるトランスメンブランの免疫優性ドメインの合成ペプチド(TMペプチド)についても、同様にニトロセルロース膜に吸着させ、反応を確認した。その結果、FIV感染猫の血清はTMペプチドに反応したが細胞成分には反応しなかった。一方、ワクチン接種猫血清はTMペプチドにも細胞成分にも反応した。また、SPF猫血清はどちらにも反応しなかった(実施例5参照)。従って、ドットブロット法によっても、細胞成分はFIVワクチン接種猫血清と特異的に反応することが示された。
更に、市販の簡易血清診断薬で一般的に使用されているイムノクロマト法を用いて、FIVワクチン接種の有無を確認できるか、確認を行った。FeT-J細胞の細胞成分を吸着させたイムノクロマト膜に、FIVワクチン接種猫血清、FIV感染猫血清およびSPF猫血清を反応させ、続けて金コロイド標識抗猫IgG抗体を反応させたところ、FIVワクチン接種猫の血清のみが細胞成分に反応し、FIV感染猫血清やSPF猫血清では反応が認められなかった(実施例6参照)。
これらの実験成績から、このような抗原を用いることにより、血清学的検査方法により、FIV感染猫とFIVワクチン接種猫を鑑別できることが明らかとなった。
上述のように本発明者は、例えば、FIVワクチン製造の際のFIV培養に使用した細胞の構成成分に対する抗体の有無を指標とすることにより、猫のFIVワクチン接種歴の有無を検査することが可能な新たな方法を開発することに成功した。
即ち、猫へのFIVワクチンの接種により産生され、FIV感染によっては産生されない抗体を検出することによって、猫のFIVワクチン接種歴の有無を検査する方法を開発し、本発明を完成させた。
本発明は、抗猫免疫不全ウイルス(FIV)抗体陽性の猫について、その原因がFIVに感染したことによるのか、FIVワクチンを接種したことによるのかを、血清学的に鑑別する方法に関し、より具体的には、
〔1〕 猫のFIVワクチン接種歴の有無を検査する方法であって、猫へのFIVワクチンの接種により産生され、FIV感染によっては産生されない抗体を検出することを特徴とする検査方法、
〔2〕 抗原抗体反応法によって前記抗体が検出された場合に、被検猫はFIVワクチン接種歴が有るものと判定する、〔1〕に記載の検査方法、
〔3〕 猫への接種により抗体が産生され得る物質を、前記抗原抗体反応法における抗原として用いる、〔2〕に記載の検査方法、
〔4〕 前記物質がFIVワクチンに含まれる物質(ただし、FIVもしくはFIV由来の物質を除く)である、〔3〕に記載の検査方法、
〔5〕 前記物質が細胞を構成する物質である、〔3〕に記載の検査方法、
〔6〕 前記細胞を構成する物質が、細胞膜、細胞質、核、または細胞骨格である、〔5〕に記載の検査方法、
〔7〕 前記細胞が猫由来の細胞である、〔5〕または〔6〕に記載の検査方法、
〔8〕 前記細胞が猫以外の動物由来の細胞である、〔5〕または〔6〕に記載の検査方法、
〔9〕 被検猫由来の血清、血漿、または全血を被検試料とする、〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の検査方法、
〔10〕 〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の検査方法において抗原として用いられる物質を有効成分とする、FIVワクチン接種猫検査薬、
〔11〕 前記物質が細胞を構成する物質である、〔10〕に記載のFIVワクチン接種猫検査薬、
〔12〕 前記細胞を構成する物質が、細胞膜、細胞質、核、または細胞骨格である、〔11〕に記載のFIVワクチン接種猫検査薬、
〔13〕 前記細胞が猫由来の細胞である、〔12〕に記載のFIVワクチン接種猫検査薬、
〔14〕 前記細胞が猫以外の動物由来の細胞である、〔12〕に記載のFIVワクチン接種猫検査薬、
を提供するものである。
また本発明は以下を提供する。
〔15〕 猫へのFIVワクチンの接種により産生され、FIV感染によっては産生されない抗体を検出する工程を含む、猫のFIVワクチン接種歴の有無を検査する方法であって、抗原抗体反応法によって前記抗体が検出された場合に被検猫はFIVワクチン接種歴が有るものと判定され、前記抗体が検出されない場合に被検猫はFIVワクチン接種歴が無いものと判定される検査方法。
〔16〕 〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の検査方法において抗原として用いられる物質の、FIVワクチン接種猫検査薬の製造における使用。
FIVワクチン接種猫血清の細胞成分に対する反応の特異性を示す図である。ワクチンを接種したSPF猫から得られた血清の、FeT-J細胞に由来する細胞成分に対する反応性をELISAで測定した。横軸1は猫3種(猫汎白血球減少症ウイルス、ネコカリシウイルス、猫伝染性鼻気管炎ウイルス)混合ワクチン群(白丸)、横軸2は猫白血病ワクチン群(白三角)、横軸3は猫3種+猫白血病ワクチン群(白四角)、横軸4はFIVワクチン群(白ひし形)を示す。 細胞株による反応性の比較を示す図である。FIVワクチンを接種したSPF猫から得られた血清及びFIVを実験感染させたSPF猫から得られた血清の、猫の様々な組織及びサルの腎臓の細胞に由来する細胞成分に対する反応性をELISAで測定した。横軸1はFIVワクチン群(黒三角)を、横軸2はFIV感染群(白丸)をそれぞれ示す。 ドットブロット法によるFIVワクチン接種猫とFIV感染猫の鑑別の結果を示す写真である。FIVワクチンを接種したSPF猫から得られた血清、FIVを実験感染させたSPF猫から得られた血清及びSPF猫から得られた血清の、FeT-J細胞成分抗原とTM peptide抗原に対する反応性をドットブロット法で測定した。 イムノクロマト法によるFIVワクチン接種猫の検出の結果を示す写真である。FIVワクチンを接種したSPF猫から得られた血清、FIVを実験感染させたSPF猫から得られた血清、及びSPF猫から得られた血清の、FeT-J細胞成分抗原と金コロイド標識抗猫IgGに対する反応性をイムノクロマト法で測定した。
[発明を実施するための形態]
本発明は猫について、FIVワクチン接種歴の有無を検査する方法を提供する。本発明の検査方法の好ましい態様としては、猫へのFIVワクチンの接種により産生され、FIV感染によっては産生されない抗体を検出することを特徴とする方法である。
本発明の検査方法は、前記抗体が検出された場合に、被検猫はFIVワクチン接種歴が有るものと判定する方法である。
該抗体の検出は、通常、抗原抗体反応法によって行うことができる。当業者であれば、所望の抗体について、抗原抗体反応法により被検試料における存在の有無を評価することは容易である。抗原抗体反応法は、一般的な公知技術、具体的には、ELISA、蛍光抗体法、免疫クロマトグラフィー、ウエスタンブロット、ドットブロット、免疫沈降反応、凝集反応などにより適宜実施することができる。
本発明における上記抗原抗体反応法において、抗体の検出に利用可能な抗原としては、例えば、猫への接種によって抗体が産生され得る物質(本明細書において「本発明の検出用抗原」と記載する場合あり)を好適に示すことができる。
本発明の検出用抗原の好ましい態様においては、例えば、ワクチンに含まれるFIV、FIV由来の物質またはFIVの遺伝情報を基に作られる物質ではない物質であり、ワクチンを接種した動物がその物質に対する抗体を産生し得る物質を挙げることができる。
即ち、本発明の好ましい態様としては、FIVワクチンに含まれる物質(ただし、FIVもしくはFIV由来の物質を除く)であって、猫への接種により抗体が産生され得る物質を、前記抗原抗体反応法における抗原として用いる検査方法が挙げられる。
本発明の検査用抗原としては、例えば、ワクチンを製造する際にFIVの増殖に用いられる培養細胞に由来する物質(細胞の構成成分)を用いることができる。この場合、細胞はFIV非感染の状態であることが望ましいが、感染した状態であっても、必要な抗原を分画することにより使用することができる。
即ち本発明の好ましい態様としては、FIVワクチン製造の際のFIV培養に使用した細胞の構成成分(細胞に由来する物質)を、前記抗原抗体反応法における抗原として用いることを特徴とする検査方法である。
本発明における前記細胞は、好ましくは、猫由来の細胞である。例えば、猫リンパ球に由来する細胞に由来する物質を用いることができる。具体的には、猫リンパ球初代培養細胞、猫リンパ球由来インターロイキン2依存性継代細胞、3201継代細胞、FeT-J継代細胞(ATCC number CRL-11967)などを使用することができる。
また、リンパ球以外の猫の組織に由来する細胞についても、細胞に由来する物質を用いることができる。具体的には、猫の腎臓に由来するCRFK細胞や猫の胎仔に由来するfcwf-4細胞などを用いることができる。更に、猫由来の細胞でなくても、他の種の細胞に由来する物質を用いることもできる。この場合、猫に由来する細胞と同様に、リンパ球に由来する細胞であってもよいし、その他の組織に由来する細胞であってもよい。具体的には、サルの腎臓に由来するVero細胞などを用いることができる。このような細胞は、生体から分離した直後の細胞や初代培養細胞であっても、株化して持続的に増殖し続ける細胞であってもよく、それらに分子生物学的な修飾を加えた細胞であってもよい。
なお、本発明において検査用抗原の由来する細胞は、FIVワクチン製造の際にFIV培養に用いられる細胞であってもよいし、ワクチン製造に使用した細胞とは異なる細胞であってもよい。
例えば、ワクチン製造に使用する細胞が猫の細胞であり、本発明の検査用抗原として、ワクチン製造に使用する細胞とは異なる猫の細胞を用いる態様が挙げられる。さらに、ワクチン製造に猫の細胞を用いた場合に、本発明の検査用抗原として猫以外の細胞を用いる態様が挙げられる。これらの態様は本発明に含まれる。
これらの細胞に由来する物質を抗原として使用する場合、細胞を可溶化することにより、抗原として取扱いが容易になる。具体的には、Triton X-100やNONIDET P-40などの界面活性剤によって可溶化した抗原は、種々のアッセイ系に使用するのに適している。また、細胞を超音波で破砕することにより、界面活性剤を用いずとも、界面活性剤で可溶化した場合と同様の抗原を得ることができる。
細胞を、可溶化、超音波破砕、その他の化学的・物理的方法により分解したものは、そのままでも用いることができるが、一部の成分を、密度勾配遠心、限外濾過、各種クロマトグラフィー、ゲル濾過などの方法によって分画・精製して診断用抗原に用いることもできる。この場合、細胞成分のうち細胞膜、細胞質、核および細胞骨格のいずれの成分も使用することができる。好ましくは、細胞膜または細胞骨格を検査抗原として使用することができる。
これらの抗原は、ホルマリンで固定処理して使用することができる。抗原を固定処理することにより、抗原の安定性が高まり、同時に反応性を高めることができる。この固定処理には、ホルマリンの他、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グルタールアルデヒドなどの他、蛋白質を化学的に変性・固定させる種々の試薬を用いることができる。さらに、γ線照射や加温処理といった物理化学的処理法を用いることもできる。
また、本目的のための抗原として、ワクチンの製造に使用される細胞以外の培養細胞であっても、細胞に由来する物質を用いることができる。
検査に用いる抗原は、培養細胞に由来する物質でなくてもよく、ワクチンに含まれる、FIV、FIV由来の物質及びFIVの遺伝情報を基に作られる物質ではない物質であり、ワクチンを接種した動物がその物質に対する抗体を産生し得る物質ならば、用いることができる。それはワクチンに添加される安定剤であってもよいしアジュバントでもよい。安定剤としては一般的にゼラチンやアルブミンが使用される。アジュバントとしては一般的にコレラトキシン、hemolysin-like proteinやFreundアジュバントが使用される。
また、検査に用いる抗原は、ワクチンの製造工程に由来するものでなくてもよい。例えば、通常の動物の血清では反応しない蛋白質もしくはペプチドなどであって、抗原性を有するものを、ワクチンに添加してもよい。ワクチンによる免疫と自然感染を鑑別し易くするために、ワクチンに何らかの修飾を施したものをマーカーワクチンと呼ぶことがあるが、このように外来性の免疫原性を持つ蛋白質・ペプチドなどを含有するワクチンは外来性ポジティブマーカーワクチン(positive marker vaccine)、該物質は外来性ポジティブマーカーとも呼ばれる。
本発明の検査に用いる抗原であって、ワクチンの製造工程に由来するものではないものの具体例としては、例えば以下の条件に合う外来性ポジティブマーカーが利用可能である。
1.猫の飼育環境中には存在しないか、猫が曝露される可能性が無い、あるいは極めて低い物質
2.猫に施用されるワクチンや医薬品中には存在しない物質
3.通常の(免疫前の)猫の血清とは反応しない物質
4.抗原性を有する物質
5.猫に対して無害(毒性が低い)である物質
また外来性ポジティブマーカーの具体例として、豚のマイコプラズマワクチンでの報告(Blending of a conventional Mycoplasma hyopneumoniae vaccine with a positive marker: tracking of mmunised pigs by peptide-specific antibodies raised to the marker component, B. Walders et al./ Research in Veterinary Science 78 (2005) 135-141.)が知られている。この報告では、13残基のD-アミノ酸(非天然型)からなるペプチドとKeyhole Limpet Hemocyanin(KLH)を化学結合させた構造物がマーカーとして利用されており、この構造物を免疫した豚は、非常に強い抗ペプチド抗体を産生した。また、この構造物は豚の飼育環境及び市販ワクチン中には存在せず、非免疫豚の血清はこの構造物に反応しなかった。従って、本発明においてワクチンの製造工程に由来するものではないものの具体例として、非天然型であるD-アミノ酸を含むペプチドが挙げられる。また、猫には感染しない病原体の構成蛋白質であって、その病原体に特異的な抗原性を有する蛋白質もしくはペプチド(例えば、ウシパピローマウイルスの一部の蛋白質)等を例示することができる。
ワクチンを接種した動物は、これらの蛋白質もしくはペプチドに対する抗体を産生するので、ワクチン接種歴の有無について検査することができる。
また本発明の方法を利用することにより、FIV感染猫とFIVワクチン接種猫とを鑑別(識別)することができる。該鑑別方法においては、既存のFIV感染猫診断法(抗FIV抗体を検出する検査方法)と、本発明の検査方法とを併用することにより、適宜実施することができる。即ち、被検猫について、既存のFIV感染猫診断法の結果が陽性(抗FIV抗体陽性)であり、かつ、本発明の検査方法の結果が陰性である場合には、被検猫はFIVに感染しているものと判定される。
このように、FIV感染の有無を判定するために、既存のFIV感染猫診断法と、本発明の方法とを組み合わせた態様についても、本発明の方法を利用する限り本発明に含まれる。
本発明の方法に供される試料は、通常、被検猫に由来する試料であり、好ましくは被検猫由来の血清、血漿、あるいは全血(抗凝固処理血液)を試料として用いる。
本発明は、FIV感染猫とFIVワクチン接種猫を、血清学的検査方法により鑑別するための抗原を提供する。該抗原は、本発明の検査方法に利用する検査薬として有用である。即ち本発明は、本発明の検査方法において抗原として用いられる物質を有効成分とする、FIVワクチン接種猫検査薬(本明細書において「本発明の検査薬」と記載する場合あり)を提供する。
本発明の検査薬において、前記物質として例えば、細胞を構成する物質が挙げられる。該細胞を構成する物質としては、具体的には、細胞膜、細胞質、核、または細胞骨格が挙げられる。また、該細胞は猫由来の細胞であることが好ましいが、猫以外の動物由来の細胞であってもよい。
本発明の検査薬の成分である抗原は、好ましくは、本発明の検査方法において抗原抗体反応法のための試薬(検出用抗原)として用いられる。抗原を用いて所望の抗体を検出する方法は、一般的な技術であり、当業者であれば特段の困難を伴うことなく実施することができる。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]細胞成分に対するFIV感染猫血清およびFIVワクチン接種猫血清の反応性
<材料と方法>
RPMI1640培養液で培養したFeT-J細胞を、リン酸緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄し、細胞数が約2.0×107/mLになるようにPBSに再浮遊した。この細胞浮遊液にTritonX-100を最終濃度0.05%になるように加え、4℃で1時間、ゆっくり撹拌して細胞を溶解した。このうち一部を20,000×g、10分間遠心し、回収した上清を0.2μmフィルターでろ過したものをホルマリン未処理抗原とした。残りにはホルマリンを最終濃度0.3%になるように加え、室温で36時間以上撹拌してホルマリン処理(固定)した。これを20,000×g、10分間遠心し、回収した上清を0.2μmフィルターでろ過したものをホルマリン処理抗原とした。
検体として、FIVワクチンを3週間隔で3回接種したSPF猫12頭の血清(FIVワクチン群)と、FIVを感染させたSPF猫6頭の血清(FIV感染群)を用いた。
ホルマリン未処理抗原とホルマリン処理抗原をそれぞれ固相化用緩衝液で希釈し、96穴ELISAプレートに100μLずつ分注して4℃に一晩静置し、固相化した。各血清を血清希釈液でそれぞれ100倍希釈し、洗浄液で洗浄した固相化プレートに100μLずつ加え、37℃で1時間反応させた。プレートを洗浄液で洗浄後、POD標識抗ネコIgGヤギ血清を100μLずつ加え、37℃で30分間反応させた。プレートを洗浄液で洗浄後、TMB基質液を100μLずつ加えて室温で20分間反応させ、停止液を100μLずつ加えて発色を停止させから、450nmで吸光度(O.D.値)を測定した。
<結果と考察>
FIVワクチン群の全ての血清は、FeT-J細胞から調製したELISA抗原に対して、強く反応した。この際、抗原にホルマリン処理を施すことにより、FIVワクチン群の血清に対する反応性がO.D.値の比にして1.9〜5.6倍も高くなることが確認された(表1)。一方、FIV感染群の血清は、ホルマリン未処理抗原に対してもホルマリン処理抗原に対しても、ほとんど反応を示さなかった(表1)。
Figure 0005409361
*:ホルマリン処理抗原に対するOD値/ホルマリン未処理抗原に対するOD値
従って、FeT-J細胞に由来する細胞成分は、FIVワクチンを接種した猫を検出する診断用抗原として有用であり、更に、抗原をホルマリン処理して使用することにより、高い反応性が得られることが示された。
[実施例2]FIVワクチン接種猫血清の細胞成分に対する反応の特異性
<材料と方法>
SPF猫12頭に、市販の猫3種混合ワクチン(猫汎白血球減少症ウイルス、猫カリシウイルス、猫伝染性鼻気管炎ウイルス)を接種し、3種混合ワクチン群とした。SPF猫4頭に、市販の猫白血病ワクチンを接種し、猫白血病ワクチン群とした。SPF猫4頭に、猫3種混合ワクチンと猫白血病ワクチンを接種し、猫3種+猫白血病ワクチン群とした。これらのワクチンはいずれも2週間隔で2回接種し、2回目のワクチン接種の2週後に採取した血清を検体とした。FIVワクチン群は、SPF猫14頭にFIVワクチンを3週間隔で3回接種し、3回目のワクチン接種の3週後に採取した血清を検体とした。
ELISA用抗原には、実施例1で作製したホルマリン処理抗原を使用した。実施例1と同様にして反応を行い、各血清の細胞成分に対する反応を測定した。ただし、発色液としてOPD基質液を用い、吸光度は492 nmで測定した。
<結果と考察>
FIVワクチン群では細胞成分に対して強い反応が認められた。一方、猫3種混合ワクチン群、猫白血病ワクチン群および猫3種+猫白血病ワクチン群では、僅かに細胞成分に反応している個体も見られたが、いずれの群も、細胞成分に対する反応性は、FIVワクチン群に比較して明らかに低いものであった(図1)。
従って、このような細胞成分に対する血清の反応性は、FIVワクチンを接種した猫に特異的なものであることが示された。
[実施例3]細胞株による反応性の比較
<材料と方法>
猫のリンパ球に由来する細胞株であるFeT-J細胞および3201細胞、猫の腎臓に由来する細胞株であるCRFK細胞、猫の胎仔に由来する細胞株であるfcwf-4細胞、およびアフリカミドリザルの腎臓に由来する細胞株であるVero細胞を用いた。それぞれの細胞を培養し、実施例1と同様にして可溶化およびホルマリン処理をおこない、ELISA用抗原とした。
検体として、FIVワクチンを3週間隔で3回接種したSPF猫27頭の血清(FIVワクチン群)と、FIVを感染させたSPF猫8頭の血清(FIV感染群)を用いた。
ELISAを実施例2と同様にしておこない、各細胞の細胞成分に対する反応性の違いを確認した。
<結果と考察>
FIVワクチン群の血清は、猫由来のいずれの細胞株の細胞成分に対しても高い反応を示した。加えて、サル由来であるVero細胞の細胞成分に対しても高い反応を示した。一方、FIV感染猫血清は、どの細胞株の細胞成分に対しても反応しなかった(図2)。
従って、猫がFIVワクチンを接種されているか確認する目的で、猫血清の細胞成分に対する反応性を測定する場合、診断抗原となる細胞成分を調製する細胞は、特定の細胞株や由来動物種に限定されないことが示された。
[実施例4]FIVワクチン接種猫の血清が反応する細胞の各構成成分
<材料と方法>
FeT-J細胞を、市販の細胞分画キット(Calbiochem, Subcellular ProteoExtract Kit)を用いて、細胞質、細胞膜、細胞核および細胞骨格に分画した。各分画を実施例1と同様にしてホルマリン処理し、ELISA用抗原とした。各分画のELISA用抗原は、蛋白質量が200 ng/wellとなるように固相化用緩衝液で希釈し、96穴ELISAプレートに固相化した。
FIVワクチン群として、FIVワクチンを3週間隔で3回接種したSPF猫3頭の血清を用いた。対照としては、FIVを感染させたSPF猫1頭と猫3種混合ワクチンを接種したSPF猫1頭の血清を用いた。
ELISAを実施例2と同様にしておこなった。
<結果と考察>
FIVワクチンを接種した猫の血清は、いずれの細胞分画とも反応を示し、特に細胞膜と細胞骨格に強く反応した。一方、FIV感染猫の血清はいずれの細胞分画とも反応せず、猫3種混合ワクチンを接種した猫の血清では微弱な反応を示すのみであった(表2)。
Figure 0005409361
a) FIV感染猫
b) 猫3種混合ワクチン接種猫
c) 2穴の平均OD値(492 nm)
従って、細胞の構成成分のうち一部の分画を用いて猫血清との反応性を測定する場合、その細胞構成成分は、細胞質、細胞膜、細胞核および細胞骨格のいずれでもよく、特に細胞膜と細胞骨格を用いることにより高い反応が得られることが示された。
[実施例5]ドットブロット法によるFIVワクチン接種猫とFIV感染猫の鑑別
<材料と方法>
FeT-J細胞を、細胞数が約2.0×108/mLになるようにPBSに浮遊し、出力200 W、10分間の超音波処理を施して細胞を破砕した。これを実施例1と同様にしてホルマリン処理し、20,000×g 10分間遠心した上清を0.2μmフィルターでろ過してFeT-J細胞成分抗原とした。
FIVの構造蛋白質であるトランスメンブラン蛋白質の免疫優性領域は、FIV感染の血清診断に有用であると報告されている(Fontenot,J.D.,Hoover,E.A.,Elder,J.H.,Montelaro,R.C.,1992. Evaluation of feline immunodeficiency virus and feline leukemia virus transmembrane peptides for serological diagnosis. J.Clin.Microbiol. 30,1885-1890.)。これに相当する14残基アミノ酸(MQELGCNQNQFFCK;配列番号:1)の合成ペプチドをMultiple Antigen Peptide(MAPs)として作製し、TM peptide抗原として用いた。
SPF猫にFIVワクチンを3週間隔で3回接種した3週後の血清、FIVを実験感染させたSPF猫の血清および無処置のSPF猫の血清を検体とした。
FeT-J細胞成分抗原とTM peptide抗原を、それぞれTBS緩衝液で2倍階段希釈し、ドットブロッティング装置(バイオ・ラッド)を用いてニトロセルロース膜に吸着させた。ニトロセルロース膜を5%スキムミルクに浸し、4℃に一晩置いてブロッキングした。血清希釈液で100倍に希釈した各猫血清の希釈液にニトロセルロース膜を浸漬し、室温で1時間反応させた。ニトロセルロース膜を洗浄後、血清希釈液で至適濃度に希釈したPOD標識抗猫IgG山羊血清に浸漬して、室温で1時間反応させた。ニトロセルロース膜を洗浄後、基質液に浸漬して発色させた。
<結果と考察>
FIVワクチン接種猫血清は、TM peptide抗原とFeT-J細胞成分抗原のいずれに対しても反応を示した。一方、FIV感染猫血清は、TM peptide抗原に対して強い反応を示したが、FeT-J細胞成分抗原に対しては反応しなかった。また、SPF猫血清は、どちらの抗原に対しても反応を示さなかった(図3)。
従って、ドットブロット法を用いても、細胞成分に対する血清の反応性を調べることにより、FIVワクチン接種猫とFIV感染猫を区別できることが示された。
[実施例6]イムノクロマト法によるFIVワクチン接種猫の検出
<材料と方法>
粒径40 nmの金コロイド溶液1 mLに、pH8.0になるように0.1 M炭酸カリウムを1μL添加し、更に0.5 mg/mL抗猫IgG山羊血清を40μL添加して撹拌後、室温で1時間静置した。次に、10%BSA加2 mM Borax溶液を100μL添加して撹拌後、室温で1時間静置した。15,000 rpmで10分間遠心して上清を除去し、沈殿を1 mLの標識抗体保存液(1%BSA, 0.15 M NaCl, 0.1%NaN3, 10 mM Tris-HCl, pH8.0)で再浮遊した。再度15,000 rpmで10分間遠心して上清を除去し、沈殿を0.25 mLの標識抗体保存液に再浮遊して金コロイド標識抗猫IgG抗体とした。
陽性ライン用抗原として、実施例5で作製したFeT-J細胞成分抗原を用いた。対照ライン用抗原として、抗山羊IgGウサギ血清を用いた。それぞれの抗原を蛋白質量が1.5 mg/mLとなるように調製してニトロセルロース膜に塗布し、風乾後、数ミリ程度の幅に切断したものをストリップとして使用した。
SPF猫にFIVワクチンを3週間隔で3回接種した3週後の血清、FIVを実験感染させたSPF猫の血清および無処置のSPF猫の血清を検体とした。
猫血清8μL、PBS8μL、展開液(3%Tween20加PBS)8μLをマイクロウェル中で混合し、この混合液にストリップの先端を浸した。5分後、ストリップを洗浄し、37℃で30分間乾燥させた。抗猫IgG抗体結合金コロイド16μL、展開液8μLをマイクロウェル中で混合し、この混合液に乾燥させたストリップの先端を浸した。5分後、各ラインの有無を確認した。
<結果と考察>
FIVワクチン接種猫血清では、陽性ラインと対照ラインが確認された。一方、FIV感染猫血清とSPF猫血清では、対照ラインのみが確認された(図4)。
従って、細胞成分を用いたワクチン接種猫の鑑別診断法は、簡易診断法として一般的に用いられるイムノクロマト法にも応用可能であることが示された。
これまでFIV感染の診断は抗体検査によっておこなわれてきた。現在、臨床で利用できる簡易診断キットが市販されており、検査は専ら院内でおこなわれている。しかしFIVワクチンの上市後は、ワクチン接種猫がこれらのキットで陽性と判定されてしまうため、ワクチン接種猫と感染猫の鑑別診断には、検査機関によるPCR検査が必要になる。この問題は、獣医師がワクチンを接種する妨げとなることがある。
本発明者による研究によって、FIVワクチン接種猫では、FIVの培養に使用される培養細胞の細胞成分に対する抗体が産生されていることが明らかとなった。この細胞成分に対する反応性はFIVワクチン接種猫に特異的なものであり、このような抗原はワクチン接種猫と感染猫を血清学的に鑑別するための抗原として有用である。
上記抗原を利用した本発明の検査方法により、抗FIV抗体陽性の猫において、FIV感染猫とFIVワクチン接種猫を、血清学的検査方法により効率的に鑑別することが可能となった。

Claims (9)

  1. 猫のFIVワクチン接種歴の有無を検査する方法であって、猫へのFIVワクチンの接種により産生され、FIV感染によっては産生されない抗体を検出することを特徴とする検査方法であり、ここで、前記抗体がFIVの培養に使用される培養細胞の細胞成分に対するものであり、抗原抗体反応法によって前記抗体が検出された場合に、被検猫はFIVワクチン接種歴が有るものと判定し、猫への接種により抗体が産生され得る物質を、該抗原抗体反応法における抗原として用いる方法であり、さらにここで、該物質がFIVワクチンに含まれる物質(ただし、FIVもしくはFIV由来の物質を除く)であり、かつ、該物質はFIVの培養に使用される培養細胞を構成する物質である、検査方法。
  2. 前記細胞を構成する物質が、細胞膜、細胞質、核、または細胞骨格である、請求項に記載の検査方法。
  3. 前記細胞が猫由来の細胞である、請求項またはに記載の検査方法。
  4. 前記細胞が猫以外の動物由来の細胞である、請求項またはに記載の検査方法。
  5. 被検猫由来の血清、血漿、または全血を被検試料とする、請求項1〜のいずれかに記載の検査方法。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の検査方法において抗原として用いられる物質を有効成分とする、FIVワクチン接種猫検査薬。
  7. 前記細胞を構成する物質が、細胞膜、細胞質、核、または細胞骨格である、請求項に記載のFIVワクチン接種猫検査薬。
  8. 前記細胞が猫由来の細胞である、請求項に記載のFIVワクチン接種猫検査薬。
  9. 前記細胞が猫以外の動物由来の細胞である、請求項に記載のFIVワクチン接種猫検査薬。
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