JP5408780B2 - 型締装置および型締装置の制御方法 - Google Patents

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本発明は、固定金型が取付けられる固定盤に対して可動金型が取付けられる可動盤を型開閉機構により移動させ、ハーフナット機構のハーフナットを係合部に係合した後に型締機構により型締を行う型締装置および型締装置の制御方法に関するものである。
ハーフナット機構により型締シリンダ側の部材と可動盤側の部材とを係合した後に型締機構により型締を行う型締装置および型締装置の制御方法としては特許文献1ないし特許文献3に記載されたものが知られている。ハーフナット機構によりハーフナットと係合溝を係合する場合の最も一般的な方法は、特許文献1に示されるように、ハーフナットの歯部を係合部(結合歯の間)の中心に位置させて係合させる方法である。この方法の場合、ハーフナット側または係合部側のいずれかの作動誤差や成形金型の温度変化等により、ハーフナットと係合部との相対的な位置関係が型締側または型開側のどちら側に僅かにズレた場合であっても対応できるというメリットがある。しかし特許文献1のものは、ハーフナットの歯部は、係合部の中心を目標として係合されるので、係合後に型締シリンダを作動させてハーフナットと係合部を当接させるまでの空走距離が長く、型締シリンダおよびハーフナットが前記空走距離を移動する間は、型締作動に入ることができないので、タイムロスが長くなるという問題があった。また特許文献1では、作動誤差や金型の温度変化等によりハーフナットおよび係合部の相対的な位置関係が一定量を超えてズレると対応できなくなり再調整する必要があった。
前記の作動誤差や成形金型の温度変化等によるハーフナットおよび係合部の相対的な位置関係が一定量を超えてズレた際に対応するものとして、特許文献2および特許文献3に記載されたものが知られている。特許文献2は、型閉じ工程中における可動盤の型厚調整用原点からの移動距離から算定されるねじ噛合位置の理論偏差量と、型閉じ位置における可動盤および型締シリンダ間の間隔から計測されるねじ噛合位置の計測偏差量 との差が、ねじ噛合位置の許容偏差範囲内に設定されるように可動盤および型締シリンダ間の前記間隔(或いは、計測偏差量 )を制御駆動機構の制御シリンダで制御するものである。よって特許文献2では、特許文献1においてハーフナットと係合部との相対的な位置関係が一定量を超えてズレた場合に対応できなくなるという問題は解消される。更に特許文献3についても、前回の成形サイクル時までの可動盤停止位置に基づく可動盤停止予測位置に対応する位置にタイバ等を移動させておくことにより、成形サイクルを重ねる上での金型の温度変化等への対応を図ることができる。
特開2003−236904号公報(0031、図2) 特開平9−193162号公報(0013、図1) 特開2005−335075号公報(0006、0013、図2)
しかしながら特許文献2では、特許文献1においてハーフナットと係合部との相対的な位置関係が一定量を超えてズレた場合に対応できなくなるという問題は解消されるものの、前記理論偏差量と計測偏差量の差が所定以内の場合にはどの位置でもそのままハーフナットが係合されるので、係合後に型締シリンダを作動させて成形金型の型締を行うまでのタイムロスが解消できないという問題は依然として解消できなかった。また前記理論偏差量と計測偏差量の差が所定以上の場合は、その時点で型締シリンダを作動させて補正を行ってからハーフナットの係合を行うので更にタイムロスが発生するという問題があった。更にまた特許文献3についても、特許文献2と同様に係合可能範囲は、係合中心を中心として両側の範囲に設定されており、その範囲内であればハーフナットが係合されるので、係合後に型締シリンダを作動させて実際の成形金型の型締を行うまでのタイムロスが解消できないという問題は依然として解消されていなかった。
本発明では上記の問題を鑑みて、金型の温度変化等の成形サイクルを重ねた際に発生する問題に対応して、型締装置のハーフナット機構のハーフナットと係合部とを係合後に型締シリンダを作動させて成形金型の型締を行うまでのタイムロスを極めて小さくすることを可能とした型締装置および型締装置の制御方法を提供することを目的とする。
本発明の請求項1に記載の記載の型締装置は、固定金型が取付けられる固定盤に対して可動金型が取付けられる可動盤を型開閉機構により移動させ、ハーフナット機構のハーフナットを係合部に係合した後に型締機構により型締を行う型締装置において、前記ハーフナット機構はハーフナットと係合部とが隙間がある状態で係合可能に設けられ、前記ハーフナットを係合部に対して係合した後に型締機構の作動によるハーフナットの型締面と係合部の型締面とが当接されるまでの空走距離の実測値に基づいて、後の成形サイクルにおいて型締側の部材であるハーフナットまたは係合部が補正された係合開始位置に移動制御されることを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の型締装置は、請求項1において、前記空走距離に基づくハーフナットまたは係合部の補正された係合開始位置は、型締側の部材の位置を検出する位置センサの検出値を用いて演算されることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の型締装置の制御方法は、固定金型が取付けられる固定盤に対して可動金型が取付けられる可動盤を型開閉機構により移動させ、ハーフナット機構のハーフナットを係合部に係合した後に型締機構により型締を行う型締装置の制御方法において、前記ハーフナット機構はハーフナットと係合部とが隙間がある状態で係合可能に設けられ、前記ハーフナットを係合部に対して係合した後に型締機構の作動によるハーフナットの型締面と係合部の型締面とが当接されるまでの空走距離の実測値に基づいて、後の成形サイクルにおいて型締側の部材であるハーフナットまたは係合部が補正された係合開始位置に移動制御されることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の型締装置の制御方法は、請求項3において、前記空走距離に基づく次回のハーフナットまたは係合部の補正された係合開始位置への補正は、成形サイクル1回毎、成形サイクル複数回毎、および所定時間毎のいずれかによって行われることを特徴とする。
本発明の型締装置および型締装置の制御方法は、固定金型が取付けられる固定盤に対して可動金型が取付けられる可動盤を型開閉機構により移動させ、ハーフナット機構のハーフナットを係合部に係合した後に型締機構により型締を行う型締装置において、前記ハーフナット機構はハーフナットと係合部とが隙間がある状態で係合可能に設けられ、前記ハーフナットを係合部に対して係合した後に型締機構の作動によるハーフナットの型締面と係合部の型締面とが当接されるまでの空走距離の実測値に基づいて、後の成形サイクルにおいて型締側の部材であるハーフナットまたは係合部が補正された係合開始位置に移動制御されるので、成形サイクルを重ねて型厚等の環境が変化した際にもハーフナットを係合した後に型締シリンダを作動させて成形金型の型締を行うまでのタイムロスを極めて小さくすることができる。
図1は、本実施形態の型締装置の一部断面した側面図であって型開時の状態を示す図である。 図2は、本実施形態の型締装置の一部断面した側面図であって型閉時の状態を示す図である。 図3は、本実施形態のハーフナット機構の作動を示す拡大断面図である。 図4は、本実施形態の型締装置の制御方法を示すフローチャートの前半部分である。 図5は、本実施形態の型締装置の制御方法を示すフローチャートの後半部分である。 図6は、別の実施形態の型締装置の側面図である。 図7は、更に別の実施形態の型締装置の側面図である。
本発明の実施形態の射出成形機の型締装置について、図1および図2を参照して説明する。射出成形機11は、型締装置12とその側方に設けられた射出装置13から基本的な部分が構成される。本実施形態の型締装置12は、固定金型14が取付けられる固定盤15に対して可動金型16が取付けられる可動盤17を型開閉機構18により移動させ、ハーフナット機構19のハーフナット20を係合部21に係合した後に型締機構22により型締を行うものである。更に詳しくは型締装置12は、ベッド上に固定盤15と受圧盤23とが設けられ、固定盤15と受圧盤23の間には四本のタイバ24が平行に配設されている。そしてタイバ24には、可動盤17が挿通され、可動盤17は固定盤15に対して型開閉方向に移動可能となっている。そして固定盤15には型開閉機構18のサーボモータ25が固定されるとともに、ボールネジ26が型開閉方向には移動不可能であって回転可能に軸支されている。また可動盤17にはボールネジナット27が固定され、前記ボールネジナット27にボールネジ26が回転自在に挿通されている。そして固定盤15に対する可動盤17の位置は、型開閉機構18のサーボモータ25の位置センサであるロータリエンコーダ28により検出される。なお型開閉機構18としては、ベッド上や可動盤17にサーボモータ25等の電動機が取付けられたものでもよく、油圧を用いるものでもよい。
受圧盤23には型締機構22である型締シリンダ29のシリンダ筒30が形成されている。そして前記シリンダ筒30の内部には、円筒状の型締ラム31が挿通されている。またシリンダ筒30と型締ラム31の間には型締側油室32aおよび型開側油室32bが形成されるようになっている。そして前記型締側油室32aおよび型開側油室32bには、ポンプ33から切換バルブ34等を介して作動油が供給されるようになっている。型締ラム31の先端側にはハーフナット機構19のハーフナット20が取付けられている。ハーフナット20は、向かい合う一対のハーフナット20からなる。図3に断面が示されるようにハーフナット20の形状は、公知のものであって、中央部には半円形の凹部が設けられており、前記凹部には後述する係合部21の複数の溝部21aに対応して係止可能なように前記溝部21aの幅よりも狭い幅の歯部20aが型開閉方向に複数列並んで設けられている。従ってハーフナット機構19は、ハーフナット20の可動盤側に向けられた前進側の側面である型締面20bに対して係合部21の反可動盤側に向けられた側面である型締面21bとが隙間のある状態で係合可能となっている。またそれぞれのハーフナット20は、油圧シリンダ35または電動機等のハーフナットの作動機構により係合完了位置と離脱位置の間で、型開閉方向と直交方向に移動されるようになっている。そして受圧盤23と型締側の部材である型締ラム31(または型締側の部材であるハーフナット20)の間には、ハーフナット20等の位置を検出する磁歪式リニア変位センサー等からなる位置センサ36が取付けられている。なおハーフナット機構19の形状は図3のものに限定されずノコ歯形状のものやネジ状のものでもよい。また係合部21の側を歯部と称しハーフナット20の側を溝部と称するものでもよく、単にブロックを穴に係合するものでもよい。
また可動盤17の背面中央には、受圧盤23側に向けて円柱状のメカニカルラム37が固定されている。従ってメカニカルラム37は可動盤17の一部であって可動盤側の部材に属する。メカニカルラム37の周囲の円筒面には、ハーフナット20の歯部20aと係合する溝部21aが複数形成された係合部21が設けられている。本発明ではハーフナット20、その作動機構である油圧シリンダ35、およびメカニカルラム37の係合部21等からハーフナット機構19が形成される。また射出成形機11には制御装置38が取付けられており、前記サーボモータ25のロータリエンコーダ28や位置センサ36等と接続されている。また制御装置38は、前記サーボモータ25の駆動制御系や型締シリンダ29や油圧シリンダ35の油圧回路の駆動制御系とも接続されている。更に射出成形機11には、設定部である設定画面39が設けられ、設定画面39と制御装置38は接続されている。
次に本実施形態の型締装置12の制御方法、とりわけハーフナット機構19の制御方法について説明する。本実施形態では、ハーフナット20を係合部21に対して係合した後に型締機構22の作動によるハーフナット20の型締面20bと係合部21の型締面21bとが当接されるまでの空走距離(設定値)T、空走距離(実測値)T1、空走距離(制御用値)T2を用いて型締側の部材であるハーフナット20が係合開始位置(型締ラムの演算位置Ln)に移動制御されるようになっている。従って本発明において係合開始位置とは、型締ラム31の移動方向における位置を指す。次により具体的な制御方法について図4と図5にわたるフローチャートを用いて説明する。まず図4のフローチャートの前半部分に示されるように、成形金型を取付ける前か或いは成形金型を取付けて型厚調整を行った後に作業者が射出成形機11の設定画面39から空走距離(設定値)T(前進側ロック隙間)の入力を行う(S1)。空走距離(設定値)Tとは、前記ハーフナット20を係合部21に対して係合した後に型締機構22の作動によってハーフナット20の歯部20aの型締面20bが係合部21の溝部21aの型締面21bと当接されるまでの距離のことを指す。従って換言すれば、空走距離(設定値)Tは、ハーフナット20が前進する側に形成されている前進側ロック隙間のことを指す。なお前記空走距離(設定値)Tは、ハーフナット機構19のハーフナット20と係合部21の形状等からサイクル短縮に最適な固定値が予め設定されているものでもよい。この空走距離(設定値)Tの値は、より小さいほうが成形サイクルを短縮する上では望ましい。しかし図3(b)に示されるようにハーフナット20が係合部21に対して係合する際に空走距離が0となっていると、ハーフナット20の歯部20aの型締面20bと係合部21の溝部21aの型締面21bが接触しながら当接することになるので、ハーフナット20にカジリが生じたりしてハーフナット機構19を破損する可能性がある。よって一定の空走距離(設定値)Tの存在は必要である。
本実施形態では次に型厚調整を行う。成形金型の交換が行われ、固定盤15と可動盤17にそれぞれ新しい固定金型14と可動金型16からなる成形金型のセットが取付けられると、可動盤17を固定盤15に向けて移動させて成形金型を当接させる。そしてその際の値(成形金型の厚み)がサーボモータ25のロータリエンコーダ28により検出されて制御装置38に送られ、設定型厚W2として記憶されるとともに型閉完了位置Cが設定される(S2)。そして次の数1の演算式によりメカニカルラム37の係合部21のどの係合溝21aにハーフナット20を係止するかメカニカルラムロック溝数Nを決定する(S3)。
そして次にハーフナット係合時の型締ラム31の演算位置L1(仮のロック位置)を次の数2の演算式により求める(S4)。そしてハーフナット係合時のハーフナットの係合開始位置(型締ラムの演算位置)L1はLnに読み替えられる。なお数2の演算式においてaは、演算位置L1を求める上で微調整を行うための原点シフト位置である。原点シフト位置aが必要となる理由は、(設定型厚W2―最小型厚W1)とメカニカルラム溝ピッチ長さPに自然数であるメカニカルラムロック溝数Nを乗算した値とは一致しないのでS1において設定した空走距離(設定値)Tの位置にハーフナットが係止されるためには、前記の原点シフト位置a分の微調整を行う必要がある。
そして型締シリンダ29を作動させ制御装置38によりクローズドループ制御を行ってハーフナット係合時のハーフナットの係合開始位置(型締ラムの演算位置)Lnへ型締ラム31(ハーフナット20)を移動させる(S5)そして停止した際のハーフナット係合時の型締ラムの位置r1を位置センサ36により検出し、制御装置38に記憶させる(S6)。次に制御装置38から型開閉機構18のサーボモータ25に指令を送りクローズドループ制御を行って可動盤17(メカニカルラム37と係合部21を含む)を型閉方向へ移動させる(S7)。そして可動金型16が固定金型14と当接されて型閉完了位置Cが検出されたか(S8)を確認し、型閉完了位置Cに到達したことが確認されたら可動盤17を停止させる(S9)。次に油圧シリンダ35を作動させて既に係合開始位置に移動されて待機しているハーフナット20をそれぞれ型開閉方向と直交方向に移動させて、係合部21の溝部21aの間に係合する(S10)。なおハーフナット係合時の型締ラムの位置r1は、ハーフナット20を係合後に検出記憶してもよい。
ハーフナット20が係合部21に係合された状態は、図3(a)に示されるように、ハーフナット20の歯部20aの型締面20bと係合部21の溝部21aの型締面21bとが、理論的には空走距離(設定値)Tを隔てた状態となる。またハーフナット20の歯部20aの後退側の側面である強力型開面20cと係合部21の溝部21aの可動盤側に向けられた側面である強力型開面21cとの間には、後方側ロック隙間Gが形成された状態となる。そして前記空走距離(設定値)Tと後方側ロック隙間Gの総和が、係合部21の溝部21aの幅からハーフナット20の歯部20aの幅を減算した値(隙間の合計)となる。なおこの際に成形品の取出不良等により可動盤17が型閉完了位置に到達されなかったり、別の理由でハーフナット20が係合できなかった場合は、型締装置12の作動を停止させる。
次に図5のフローチャートの後半部分に示されるようにハーフナット20の係合部21への係合が確認されたら、次に型締シリンダ29を作動させ型締ラム31(ハーフナット20)を型締方向へ移動させる(S11)。そして前記ハーフナット20の歯部20aの型締面20bが、係合部21の溝部21aの型締面21bに当接されたかどうかを検出する(S12)。前記検出は通常の場合、可動盤17およびメカニカルラム37がサーボモータ25の駆動によらずに移動開始したかどうかにより検出する。より具体的にはロータリエンコーダ28によって検出される位置データに少しでも変化(パルス等の検出)があったら前記ハーフナット20の歯部20aの型締面20bが、係合部21の溝部21aの型締面21bに当接されたと判断される。そして図3(b)に示されるように、ハーフナット20と係合部21が当接された際のハーフナット20の位置データが型締側の部材の位置を検出する位置センサ36により検出され、その値はハーフナット当接時の型締ラムの位置r2として制御装置38に記憶される(S13)。
次にハーフナット20を係合部21に対して係合した後に型締機構22の作動によるハーフナット20と係合部21と当接されるまでの空走距離(実測値)T1を次の数3の演算式により演算する(S14)。
空走距離(実測値)T1は、実際の空走距離(前進側ロック隙間)に対して、ハーフナット当接後にロータリエンコーダ28からのパルスが検出されるまでのラグや機械的な誤差等により若干の相違があるので、次の数4の演算式によりオフセット位置O(距離)を加算して、空走距離(制御用値)T2として使用する(S15)。オフセット位置Oは、実際にロック隙間を測定した値と、空走距離(実測値)T1とを比較することにより演算され、通常の場合は固定値が用いられる。なお実際の前進側ロック隙間の測定値と空走距離(実測値)T1の間に相違がない場合や無視できる程度の差の場合は、オフセット位置Oを加算しないでもよい。
次に次回の成形時にハーフナット20を係合部21に係合する際の次回のハーフナット20の係合開始位置(型締ラムの演算補正位置)Ln+1を次の数5の演算式により演算する(S16)。従って空走距離(実測値)T1に基づいてハーフナット20の係合開始位置(演算補正位置)Ln+1は、型締側の部材の位置を検出する位置センサ36の検出値を用いて演算されることになる。
そして型締シリンダ29の型締側油室へ作動油を供給して成形金型の型締、射出装置13による成形金型のキャビティ内への射出、キャビティ内の成形品の冷却工程が行われる。更に冷却工程が完了すると型締シリンダ29の型締側の油室の作動油の圧力を落とす圧抜きが行われ、次に型締シリンダ29の型開側油室に作動油が供給されて型締ラム31およびハーフナット20が型締時と反対方向に向けて移動され、強力型開が行われる。強力型開では、図3(c)に示されるようにハーフナット20の歯部20aの強力型開面20cと係合部21の溝部21aの強力型開面21cが当接されて力が及ぼされることにより、固定金型14から可動金型16が離型される。そして一定距離離型された後は、油圧シリンダ35を作動させて係合部21からハーフナット20の係合を外す。そして型開閉機構18のサーボモータ25のみを駆動させて可動金型16および可動盤17を型開完了位置へ移動させて型開完了位置で成形品の取出が行われる。なお強力型開終了後の型締ラム31の位置は、図3(a)に示されるようにハーフナット20と係合部21の係合時には前進側ロック隙間Tに加えて後方側ロック隙間Gが存在しており、強力型開時には、後退側ロック隙間Gが解消されるように型締ラム31が移動されているので、ハーフナット20の係合時の型締ラム31の位置よりも後退した位置(型締側からの検出値としては数値が増加した位置)となっている。
そして射出成形機11の成形サイクルが継続される場合(S17)は、Ln+1をLnに読み替える(S18)。そして再び(S5)へ戻って、前記のサーボモータ25のみを用いて可動盤17を型開閉している際や可動盤17が型開完了位置に停止している間に、型締シリンダ29を作動させて、(S16)で演算されたハーフナットの係合開始位置(演算補正位置)へ型締ラム31(ハーフナット20)を戻す。
射出成形機11による成形においては、成形金型内のキャビティに高温の溶融樹脂が射出されるので、成形金型や該成形金型が取付けられる固定盤15や可動盤17(メカニカルラム37を含む)の温度が上昇し、熱膨張するという問題がある。それに対して受圧盤23の熱的な影響による位置変化量は小さいため、当初に成形サイクルの短縮に最適な空走距離(設定値)T(前進側ロック隙間)が設定されており、ハーフナット20と係合部21が係合されていたとしても、空走距離(実測値)T1は成形サイクルを重ねるについて変化してくる。そのため射出成形機11を停止させずになるべく短い成形サイクルを継続する上では、本発明のように成形サイクル毎に空走距離(実測値)T1を求め、ハーフナット係合時の型締ラム31(ハーフナット20)の位置を継続的に補正することが有効である。なお上記の空走距離T,T1,T2に基づいた次回のハーフナット20(または係合部)係合開始位置の補正は、成形サイクル1回毎、成形サイクル複数回毎、および所定時間毎のいずれかにより行えばよい。
また本実施形態では、固定金型14と可動金型16が当接された際を型閉完了位置Cとして、次にハーフナット20と係合部21を係合する例について説明したが、射出圧縮成形(射出プレスを含む)等の成形方法で、型当接位置以外の位置に可動盤17を停止させた後にハーフナット20と係合部21とを係合するものでもよい。その場合は、設定画面から型停止位置を入力し、その位置を原点として、ハーフナット20が係合されるメカニカルラム37の溝数Nやハーフナット係合時のハーフナット20の係合開始位置(型締ラムの演算位置)L1等が決定される。
また本発明は、図6に示されるような別の実施形態の型締装置41にも適用可能である。型締装置41は、固定金型42が取付けられる固定盤43に対して可動金型44が取付けられる可動盤45を型開閉機構46により移動させ、ハーフナット機構47のハーフナット48を係合部49に係合した後に型締機構50により型締を行うものである。更に詳しくは固定盤43には型締機構50の型締シリンダ51が取付けられ、その型締ラムがタイバ52となっている。そして型締側の部材であるタイバ52の円筒面には、ハーフナット機構47の一部である係合部49の係合溝が形成されている。また前記タイバ52が挿通される可動盤45の背面であって、タイバ52が挿通される部分に隣接する部分には、ハーフナット機構47の一部である一対のハーフナット48がそれぞれ取付けられている。ハーフナット48は、油圧シリンダ53等により開放位置と係合開始位置の間で移動可能となっている。また固定盤43には型開閉機構46の型開閉シリンダ等の駆動手段が取付けられ、そのロッドの先端が可動盤45に取付けられている。また固定盤43と可動盤45の間には、可動盤45の位置を検出する位置センサ54が設けられている。更には固定盤43には型締シリンダ51のピストンおよびタイバ52の位置の微調整のための副油圧シリンダ55が設けられるとともに、ピストンおよびタイバ52(係合部49)の型開閉方向の位置を検出する位置センサ56が取付けられている。また位置センサ54,56、図示しない設定画面(設定部)、および各作動機構等は、制御装置57に接続されている。なお型締装置41については、可動盤45の側に型締シリンダ51が設けられ、固定盤43にハーフナット48が設けられたものや、型締シリンダ51とハーフナット48が同じ盤に結合して設けられ他方の盤に係合部が設けられたタイバが固定的に設けられたものでもよい。
図6に示される型締装置41の制御方法についても先の図1等に示される実施形態と一部同様であって、型厚調整の前後いずれかにハーフナット48の空走距離(設定値)Tの入力を行う。そして型厚調整により型閉完了位置におけるハーフナット48が噛合される係合部49の溝数Nが決定され、ハーフナット係合時のタイバ52の係合開始位置(型締ラムの演算位置)L1(Ln)も決定される。そして成形時にハーフナット係合時のタイバ52の実測位置r1とハーフナット当接時のタイバ52の実測位置r2をそれぞれ位置センサ56により検出し、前者から後者を減算して空走距離(実測値)T1を求め、オフセット位置Oを加算して空走距離(制御用値)T2を算出する。そして空走距離(設定値)Tから空走距離(制御用値)T2を減算したものを、今回の成形におけるハーフナット係合時のタイバ52の係合開始位置(型締ラムの演算位置)L1(Ln)に加算して、次回のハーフナット係合時のタイバ52の係合開始位置(型締ラムの演算補正位置)Ln+1を演算する。そして次回のハーフナット係合時までに型締シリンダ51を作動させてタイバ52の位置を係合開始位置(型締ラムの演算補正位置)Ln+1に補正する。前記の制御は制御装置57で行われる。なお図1等に示される実施形態と図6に示される実施形態の大きな相違点は、図1等では型締ラム31(ハーフナット20)の側が移動されて次回の係合開始位置が制御されるのに対して、図6に示される実施形態では係合部49(タイバ52)の側が移動されて次回の係合開始位置が制御される点である。従って型締装置41のハーフナット機構47は、可動盤45に対して型開閉方向には固定的に配設されており、調整のためにハーフナット47のみが型開閉方向には移動されない。
また本発明は、図7に示されるような更に別の実施形態の型締装置61にも適用可能である。型締装置61は、固定金型62が取付けられる固定盤63に対して可動金型64が取付けられる可動盤65を型開閉機構66により移動させ、ハーフナット機構67のハーフナット68を係合部69に係合した後に型締機構70により型締を行うものである。更に詳しくは固定盤63にはタイバ71が固定され、タイバ71の周囲には係合部69が設けられている。またタイバ71には、可動盤65と移動型締盤72が挿通されている。そしてベッド73と移動型締盤72の間には型開閉機構66が設けられている。本実施形態ではベッド73上に固定されたサーボモータ74とサーボモータ74によって回転自在なボールネジ75が設けられ、移動型締盤72にはボールネジナット76が固定され、ボールネジナット76の内部に前記ボールネジ75が回転自在に挿通されている。そしてサーボモータ74のロータリエンコーダにより移動型締盤72の位置が検出される。
またベッド73に対してリニアガイド77を介して型開閉方向に移動自在に設けられた移動型締盤72の下部は、固定盤63側に向けて伸びている基台78となっており、前記基台78の上には図示しないリニアガイドを介して可動盤65が型開閉方向に移動自在に載置されている。そして移動型締盤72の内部には型締機構70である型締シリンダ79が内蔵されており、型締シリンダ79の型締ラム80が可動盤65の背面に固定されている。また移動型締盤72の背面のタイバ71が挿通される部分に隣接する部分にはハーフナット機構67の一対のハーフナット68がそれぞれ取付けられている。更に移動型締盤72と可動盤65の間には可動盤65の位置(移動型締盤72と可動盤65の間の距離)を検出する位置センサ81が取付けられている。なお型締装置61については前方の可動盤65の下部から後方に伸ばされた基台の上に移動型締盤72と型締シリンダ79が載置されたものでもよい。
図7に示される型締装置61の制御方法についても先の図1等に示される実施形態と一部同様であって、型厚調整の前後いずれかにハーフナット68の空走距離(設定値)Tの入力を行う。そして型厚調整により型閉完了位置におけるハーフナット68が噛合される係合部69の溝数Nが決定され、係合時のハーフナット68の係合開始位置(型締ラムの演算位置)L1(Ln)も決定される。そして成形時にハーフナット係合時のハーフナット68の実測位置r1とハーフナット当接時のハーフナット68の実測位置r2をそれぞれサーボモータ74のロータリエンコーダにより検出し、前者から後者を減算して空走距離(実測値)T1を求め、オフセット位置Oを加算して空走距離(制御用値)T2を算出する。そして空走距離(設定値)Tから空走距離(制御用値)T2を減算したものを、更に今回の成形における係合時のハーフナット68の係合開始位置(型締ラムの演算位置)L1(Ln)に加算して、次回の係合時のハーフナット68の係合開始位置(型締ラムの演算補正位置)Ln+1を演算する。そして次回のハーフナット係合時までに型締シリンダ79とサーボモータ74を作動させてハーフナット68の位置を補正する。前記制御は図示しない制御装置で行われる。
なお本発明は、図1等に示される実施形態の型締装置12や図6に示される実施形態の型締装置41、図7に示される実施形態の型締装置61に限定されず、型開閉機構により型開閉を行った後、ハーフナットを係合し、型締機構により型締を行う全ての型締装置に適用できる。
本発明の型締装置は、射出成形機の他、ダイカスト成形機、およびプレス装置等、固定金型と可動金型を型開閉機構により型閉後に、型締機構により型締(増圧)する全ての装置に使用することができる。また射出成形機に用いる場合、射出圧縮成形、射出プレス成形、発泡成形等を行うものであってもよく、成形材料も限定されない。

11 射出成形機

12,41,61 型締装置

14,42,62 固定金型

15,43,63 固定盤

16,44,64 可動金型

17,45,65 可動盤

18,46,66 型開閉機構

19,47,67 ハーフナット機構

20,48,68 ハーフナット

20b,21b 型締面

21,49,69 係合部

22,50,70 型締機構

23 受圧盤

24,52,71 タイバ

25,74 サーボモータ

28 ロータリエンコーダ

29,51,79 型締シリンダ

31,80 型締ラム

37 メカニカルラム

T 空走距離(設定値)

T1 空走距離(実測値)

T2 空走距離(制御用値)

L1(Ln) ハーフナット(タイバ)の係合開始位置(型締ラムの演算位置)

Ln+1 ハーフナット(タイバ)の係合開始位置(型締ラムの演算補正位置)

r1 ハーフナット係合時の型締ラムの位置

r2 ハーフナット当接時の型締ラムの位置

Claims (4)

  1. 固定金型が取付けられる固定盤に対して可動金型が取付けられる可動盤を型開閉機構により移動させ、ハーフナット機構のハーフナットを係合部に係合した後に型締機構により型締を行う型締装置において、
    前記ハーフナット機構はハーフナットと係合部とが隙間がある状態で係合可能に設けられ、
    前記ハーフナットを係合部に対して係合した後に型締機構の作動によるハーフナットの型締面と係合部の型締面とが当接されるまでの空走距離の実測値に基づいて、後の成形サイクルにおいて型締側の部材であるハーフナットまたは係合部が補正された係合開始位置に移動制御されることを特徴とする型締装置。
  2. 前記空走距離に基づくハーフナットまたは係合部の補正された係合開始位置は、型締側の部材の位置を検出する位置センサの検出値を用いて演算されることを特徴とする請求項1に記載の型締装置。
  3. 固定金型が取付けられる固定盤に対して可動金型が取付けられる可動盤を型開閉機構により移動させ、ハーフナット機構のハーフナットを係合部に係合した後に型締機構により型締を行う型締装置の制御方法において、
    前記ハーフナット機構はハーフナットと係合部とが隙間がある状態で係合可能に設けられ、
    前記ハーフナットを係合部に対して係合した後に型締機構の作動によるハーフナットの型締面と係合部の型締面とが当接されるまでの空走距離の実測値に基づいて、後の成形サイクルにおいて型締側の部材であるハーフナットまたは係合部が補正された係合開始位置に移動制御されることを特徴とする型締装置の制御方法。
  4. 前記空走距離に基づく次回のハーフナットまたは係合部の補正された係合開始位置への補正は、成形サイクル1回毎、成形サイクル複数回毎、および所定時間毎のいずれかによって行われることを特徴とする請求項3に記載の型締装置の制御方法。
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