JP5408768B2 - 高温強度および樹枝状晶組織を有するNi基耐熱合金鋳塊およびこれからなるガスタービン翼鋳物 - Google Patents
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Description
Cr:13.1〜15.0%、Co:8.5〜10.5%、Mo:1.0〜3.5%、W:3.5〜4.5%、Ta:3.0〜5.5%、Al:3.5〜4.5%、Ti:2.0〜3.2%、C:0.06〜0.12%、B:0.005〜0.025%、Zr:0.010〜0.050%、Mgおよび/またはCa:1〜100ppmを含有し、さらに必要に応じてHf:0.2〜1.5%を含有し、さらに必要に応じてPt:0.02〜0.5%、Rh:0.02〜0.5%、Re:0.02〜0.5%の内の1種または2種以上を含有し、さらに必要に応じてHf:0.2〜1.5%およびPt:0.02〜0.5%、Rh:0.02〜0.5%、Re:0.02〜0.5%の内の1種または2種以上を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなる組成を有する、高温強度、高温耐酸化性および高温耐蝕性に優れたNi基耐熱合金(特許文献2参照)、
Cr:12.0〜14.3%、Co:8.5〜11.0%、Mo:1.0〜3.5%、W:3.5〜6.2%、Ta:3.0〜5.5%、Al:3.5〜4.5%、Ti:2.0〜3.2%、C:0.04〜0.12%、B:0.005〜0.05%を含有し、さらにMgおよび/またはCa:0.5〜100ppmを含有し、さらに必要に応じてPt:0.02〜0.5%、Rh:0.02〜0.5%、Re:0.02〜0.5%の内の1種または2種以上を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなる組成を有する健全な鋳肌および鋳物内部組織を得ることのできる柱状晶組織を有するガスタービン翼用Ni基耐熱合金(特許文献3参照)、などが知られている。
このような大型ガスタービン翼を一方向凝固させて柱状晶組織を有する大型ガスタービン翼鋳物を製造するには熟練と時間がかかり、そのためにコスト高となる。したがって、前記ガスタービンの後段側(低圧側)に設けられる大型ガスタービン翼は一般に普通鋳造により作製されている。しかし、普通鋳造して得られた大型ガスタービン翼であっても一層の高温強度を有するが求められていることには変わりなく、ガスタービン翼が大型化するほど自身の自重を減らさなければならないために一層の高温強度化が求められている。
さらに、一般に、Ni基耐熱合金は融点が高いことから、従来のNi基耐熱合金を溶解し鋳造して大型ガスタービン翼鋳物を作製すると、Ni基耐熱合金溶湯の温度が高いために鋳型のセラミックスと反応して得られた大型ガスタービン翼鋳物の鋳肌が悪くなる。
(イ)従来から知られているNi基耐熱合金を溶解し普通鋳造し得られた大型ガスタービン翼鋳物はいずれも高温強度および鋳肌に関して満足のいく結果は得られなかったが、先の特許文献2記載のNi基耐熱合金に比べてCr含有量を少なくしてCr:12.1〜13.0%とし、さらにW量を多くしてW:6.3〜7.0%とし、Mo、Ta、Al、Ti、C、B、Zrをできる限りバランスよく添加してそれらの成分組成をCr:12.1〜13.0%、Co:8.5〜11.0%、Mo:0.5〜2.0%、W:6.3〜7.0%、Ta:5.0〜6.0%、Al:3.6〜4.6%、Ti:2.0〜2.9%、C:0.06〜0.16%、B:0.005〜0.035%、Zr:0.010〜0.070%となるように調整し、さらにMgおよびCaの内の1種または2種を合計で1〜100ppm添加することにより酸素、硫黄等の不純物による悪影響を押えた成分組成を有するNi基耐熱合金鋳塊を作製し、このNi基耐熱合金鋳塊を溶解し普通鋳造して得られる鋳物は鋳肌が良好となり、高温強度が一層向上することから、このNi基耐熱合金鋳塊を溶解し鋳造して一層高温強度を有し良好な鋳肌を有する大型のガスタービン翼鋳物を作製することができる、
(ロ)前記(イ)記載のNi基耐熱合金に、さらにPt、Rh、ReをPt:0.02〜0.5%、Rh:0.02〜0.5%、Re:0.02〜0.5%の内の1種または2種以上を含有せしめると、耐食性が一層向上する、などの研究結果が得られたのである。
(1)質量%で(以下、%は質量%を示す)、Cr:12.1〜13.0%、Co:8.5〜11.0%、Mo:0.5〜2.0%、W:6.3〜7.0%、Ta:5.0〜6.0%、Al:3.6〜4.6%、Ti:2.0〜2.9%、C:0.06〜0.16%、B:0.005〜0.035%、Zr:0.010〜0.070%、MgおよびCaの内の1種または2種を合計で1〜100ppmを含有し、残りがNiと不可避不純物からなる成分組成を有する高温強度および普通鋳造によって形成された樹枝状晶組織を有するNi基耐熱合金鋳塊、
(2)Cr:12.1〜13.0%、Co:8.5〜11.0%、Mo:0.5〜2.0%、W:6.3〜7.0%、Ta:5.0〜6.0%、Al:3.6〜4.6%、Ti:2.0〜2.9%、C:0.06〜0.16%、B:0.005〜0.035%、Zr:0.010〜0.070%、MgおよびCaの内の1種または2種を合計で1〜100ppmを含有し、さらにPt:0.02〜0.5%、Rh:0.02〜0.5%、Re:0.02〜0.5%の内の1種または2種以上を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる成分組成を有する高温強度および普通鋳造によって形成された樹枝状晶組織を有するNi基耐熱合金鋳塊、
(3)前記(1)または(2)記載の高温強度および普通鋳造によって形成された樹枝状晶組織を有するNi基耐熱合金鋳塊からなるガスタービン翼鋳物、に特徴を有するものである。
この発明のNi基耐熱合金鋳塊からなるタービン翼鋳物は、先に作製した成分調整されたNi基耐熱合金鋳塊を再び真空溶解し、セラミックス鋳型に直接鋳込むことにより得られ、その組織は樹枝状晶を有し、オーステナイト結晶粒内にγ´相{Ni3(Al,Ti,Ta)}が分散析出した組織を有している。
(a)Cr
産業用ガスタービンでは、燃焼によって生じた酸化性および腐食性物質を含有する燃焼ガスと接触するため、高温における耐酸化性及び耐蝕性が要求されるが、近年、燃料は腐食性の低い天然ガスや良質な軽質油が使用されており、タービン翼に施すコーティングの信頼性が向上したことと合わせて合金に求められる高温における耐酸化性および耐食性は低くなっている。しかし、高温における耐酸化性及び耐蝕性は依然として必要であり、Crはこれらの要求を満たす成分であるので添加するが、その含有量が12.1%未満ではその効果は少なく、一方、この発明の健全な鋳肌および普通鋳造組織を得ることのできるNi基耐熱合金では、他にCo、Mo、W、Ta等も添加されるため、これらとのバランスをとるため13.0%を越えて含有することは好ましくない。よって、Cr含有量は12.1〜13.0%に定めた。
Coは、Ti、Al等を高温で素地に固溶させる限度(固溶限)を大きくさせ、熱処理によってγ´相{Ni3 (Ti,Al,Ta)}を微細分散析出させて健全な鋳肌および鋳物内部組織を得ることによりNi基耐熱合金の強度を向上させる作用があるので添加するが、この発明に含まれるTi,Al量ではCo量は8.5%以上であることが必要であり、一方、Co含有量が11.0%を越えると、Cr、Mo、W、Ta、Al、Ti等の他の元素とのバランスが崩れ、有害相の析出による延性低下をもたらすことからCo含有量は8.5〜11.0%に定めた。
Moは、素地中に固溶して、Wとの相乗作用によって高温強度を上昇させる作用があるので添加するが、その含有量が、0.5%未満では不十分であり、一方、2.0%を越えて添加すると有害相の析出により延性が阻害されるのでMo:0.5〜2.0%に定めた。
WはMoと同様に主として固溶強化の作用があり、高温強度の付与に寄与する効果があるが、他の添加成分とのバランスにより添加量が制限され、その量は5.5%以上必要である。しかし、あまり多く含有し過ぎると、有害相を析出するとともにW自身比重が大きい元素であるため合金全体の比重が大きくなり、遠心力の働くタービン翼では不利であるところから、その上限を7.0%にした。したがって、この発明のNi基耐熱合金に含まれるW含有量を、実施例に基づき6.3〜7.0%とした。
Taは固溶強化及びγ´相析出強化により高温強度の向上に寄与し、所望の強度を得るためには5.0%以上含まれることが必要である。しかし多く添加し過ぎると延性を低下するのでその上限を6.0%とした。従って、この発明のNi基耐熱合金に含まれるTa含有量は5.0〜6.0%に定めた。
AlはTiと同様にγ´相を生成する元素であり、析出強化によって合金の高温強度を上げると共に、高温での耐酸化性、耐蝕性の付与に寄与する作用を有し、その作用はCrとの相乗効果による。そのためにこの発明のNi基耐熱合金に含まれるAl量は3.6%以上であることが必要であるが、一方、4.6%を越えて多量に添加し過ぎると延性を阻害するようになる。したがって、Al含有量は3.6〜4.6%に定めた。
Tiはγ´析出強化型Ni基合金の高温強度を上げるためのγ´相の析出に必要な元素であるので添加するが、その含有量は2.0%未満ではγ´相の析出が不十分で、要求強度を満足することができず、一方、2.9%よりも多量に添加すると析出量が多くなり過ぎて延性を阻害するので好ましくない。従って、Ti含有量は2.0〜2.9%に定めた。
Cは炭化物を形成し、特に結晶粒界、樹枝状晶境界に析出して粒界や樹枝状晶境界を強化し、高温強度の向上に寄与するので0.06%以上添加することが必要であるが、一方、0.16%を越えて添加すると延性を阻害するので大型ガスタービン翼の鋳造を考慮すると好ましくない。したがって、Cの含有量を0.06〜0.16%とした。
B成分は、結晶粒界における結合力を増して素地を強化し、高温強度を向上させる作用を有するので添加するが、その含有量が0.005%未満では所望の効果が得られず、一方、0.035%を越えて含有すると延性を阻害する恐れがあるので大型ガスタービン翼の鋳造による製造を考慮すると好ましくない。したがって、Bの含有量を0.001〜0.035%と定めた。
Zrも結晶粒界における結合力を増して素地を強化し、高温強度を上昇させるので必要な成分であるが、その含有量が0.010%未満では所望の効果が得られず、一方、あまり多く添加すると延性を阻害する恐れがあるため大型ガスタービン翼の鋳造を考慮するとZr含有量を0.070%を越えて含有させることは好ましくない。したがって、Zrの含有量を0.010〜0.070%とした。
これら成分は酸素、硫黄等の不純物との結合力が強く、さらに酸素、硫黄等の不純物による延性低下を防止する作用があるが、その含有量が1ppm未満では十分な作用が得られず、一方、100ppmを越えて含有するとかえって結晶粒界の結合を弱めて割れの原因になるので好ましくない。したがって、Mgおよび/またはCaの含有量は1〜100ppmと定めた。
Pt、Rh、Reは耐食性向上作用があるので必要に応じて添加するが、その含有量がそれぞれ0.02%未満では所望の効果が得られず、一方、その含有量がそれぞれ0.5%を越えて含有すると、なお一層の効果が望めないほか、貴金属であるために価格が高くなるので好ましくない。したがって、Pt、Rh、Reの内の1種または2種以上はそれぞれ0.02〜0.5%に定めた。
通常の高周波真空溶解炉を用い、それぞれ表1〜3に示される成分組成をもった本発明Ni基耐熱合金1〜15、比較Ni基耐熱合金1〜20および従来Ni基耐熱合金1からなるNi基合金溶湯を溶製し、これを金型に鋳造して鋳塊を作製した。この鋳塊の一部を再び高周波真空溶解して温度:1570℃に保持された溶湯を作製し、これをアルミナ鋳型に鋳造して直径:30mm、長さ:150mmの試験片鋳物を作製した。
さらに得られた試験片鋳物を1200℃、2時間保持の溶体化処理し、さらに830℃で24時間保持の時効処理を行ったのち、前記試験片鋳物を大気中、温度:870℃に負荷:300MPaをかけて保持し、破断に至るまでの寿命(時間)を測定し、従来Ni基耐熱合金1からなる試験片鋳物の寿命を1として本発明Ni基耐熱合金1〜15、比較Ni基耐熱合金1〜20からなる試験片鋳物の破断寿命の比を測定し、高温クリープ破断強度を評価した。
Claims (3)
- 質量%で(以下、%は質量%を示す)、Cr:12.1〜13.0%、Co:8.5〜11.0%、Mo:0.5〜2.0%、W:6.3〜7.0%、Ta:5.0〜6.0%、Al:3.6〜4.6%、Ti:2.0〜2.9%、C:0.06〜0.16%、B:0.005〜0.035%、Zr:0.010〜0.070%、MgおよびCaの内の1種または2種を合計で1〜100ppmを含有し、残りがNiと不可避不純物からなる成分組成を有することを特徴とする高温強度および普通鋳造によって形成された樹枝状晶組織を有するNi基耐熱合金鋳塊。
- 質量%で(以下、%は質量%を示す)、Cr:12.1〜13.0%、Co:8.5〜11.0%、Mo:0.5〜2.0%、W:6.3〜7.0%、Ta:5.0〜6.0%、Al:3.6〜4.6%、Ti:2.0〜2.9%、C:0.06〜0.16%、B:0.005〜0.035%、Zr:0.010〜0.070%、MgおよびCaの内の1種または2種を合計で1〜100ppmを含有し、さらにPt:0.02〜0.5%、Rh:0.02〜0.5%、Re:0.02〜0.5%の内の1種または2種以上を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる成分組成を有することを特徴とする高温強度および普通鋳造によって形成された樹枝状晶組織を有するNi基耐熱合金鋳塊。
- 請求項1または2記載の高温強度および普通鋳造によって形成された樹枝状晶組織を有するNi基耐熱合金鋳塊からなることを特徴とするガスタービン翼鋳物。
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