JP5399808B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、複数のブロック列を有する空気入りタイヤ、特には、溝により区画してなるブロックの偏摩耗および摩耗を低減させた空気入りタイヤに関するものである。
タイヤは一般に、タイヤの負荷転動に当たって、ブロックが過剰に変形することで、ブロックの蹴出側部分の剛性低下やその部分の滑りに起因して、タイヤの転動によって、ブロックの、その蹴出側部分が早期に摩耗するヒールアンドトー摩耗が発生するおそれがあった。
これがため、例えば、特許文献1には、複数のブロック列のうちの少なくとも一列を構成する前記ブロックのタイヤ幅方向断面の長さが前記ブロックのタイヤ周方向両端から中間部にかけて増大するとともに、同一の周方向溝に面する前記ブロックの二辺がタイヤ周方向に対して反対側に向いており、かつ前記ラグ溝とタイヤ赤道面とのなす角度が70乃至85°として、ブロックのタイヤ幅方向及び周方向の滑りの不均一を低減する技術が提案されている。
しかるに、空気入りタイヤは、例えばセンター領域対比ショルダー領域のように径差が存在する領域が存在するため、タイヤの負荷転動時に、それらの領域が一回転で進む距離が同じになるように、接地面でのトレッドゴムの伸縮や、周長が長い領域はタイヤ回転方向に対して方向に滑り、周長が短い領域はタイヤ回転方向と反対方向に滑ることにより径差を相殺することが多く、特許文献1に記載の技術では、ブロック蹴出端の、タイヤ回転方向と同方向の滑りを低減、すなわち、タイヤ回転方向と反対方向の滑りを増加させることができるものの、このタイヤ回転方向と反対方向の滑りはブロックの蹴出側部分が路面に摺れることで偏摩耗を生じ、特に従動輪に装着された場合には走行とともにヒールアンドトー摩耗が増加していくおそれがあった。
また、横力による摩耗やブロック蹴出端と踏込端の滑り量差などによる偏摩耗が発生すると、その摩耗によって摩耗が発生した領域の周長が小さくなり(接地長が短い)、その摩耗領域でのタイヤ回転方向に対して反対方向の滑りは大きくなるので、その摩耗は更に進行するおそれがあった。
特開2007−145209号公報
ところで、発明者は、タイヤの摩耗および偏摩耗に関して、図7(a)、図8(a)に示すようなトレッドパターンのタイヤの、負荷転動時の接地形状を図7(b)、図8(b)に示すように、接地長さが短い領域は長い領域よりも周長が短く、その短い領域は接地圧がその周囲よりも低いため、その領域のトレッドゴムの撓み変形量が小さくなり、ゴムの非圧縮性による膨出変形が小さくなることで、トレッドゴムが過剰に倒れ込み変形して、ブロックの蹴出側部分に、タイヤの回転方向と反対方向の滑りが起きやすいとの知見を得た。
したがって、蹴出時のゴム変形をタイヤ回転方向と同じ方向に変形することができれば、タイヤ回転方向と反対方向の滑りを抑制して、その滑りに起因する剪断力を小さくすることで、その結果、その領域でのヒールアンドトー摩耗を低減させることができることを見出した。
この発明の空気入りタイヤは、トレッド踏面に、直線状に延在する溝により区画した、五角形以上の角数の、相互に独立した複数個の多角形ブロックを互いに密集させて配置してなるブロック群を設けたものであって、ブロック群における多角形ブロックの基準ピッチ長さをP(mm)、ブロック群の幅をW(mm)としたとき、前記基準ピッチ長さPと幅Wとで区画される、ブロック群の基準区域内に存在するブロックの個数をa(個)、基準区域内のネガティブ率をN(%)とし、
Figure 0005399808
で与えられる、ブロック群の単位実接地面積当たりのブロック個数密度Sを0.003〜0.04個/mmの範囲内であり、タイヤ負荷転動時に、トレッド踏面の接地圧が平均接地圧より小さくなる領域で、ブロックのトレッド周方向の中間部に、トレッド踏面の展開平面視で、トレッド幅方向断面の長さが、そのブロックのトレッド周方向端部から中間部にわたって減少した凹部を形成してなることを特徴とするものである。
ここで、「ブロックの基準ピッチ長さ」とは、ブロック群を構成する一つのブロック列におけるブロックの繰り返し模様の最小単位を指すものとし、例えば一つのブロックとそのブロックを区画する溝によってパターンの繰り返し模様が規定されている場合は、ブロック一個分のトレッド周方向長さと、このブロックのトレッド周方向に隣接する溝一本分のトレッド周方向長さとを加算したものをブロックの基準ピッチ長さとする。
なお、「ブロック群の基準区域内のブロックの個数a」は、ブロックが基準区域の内外に跨って存在し、一個として数えることができない場合は、ブロックの表面積に対する、基準区域内に残ったブロックの残存面積の比率を用いて数え、例えば、基準区域の内外に跨り、基準区域内にその半分しか存在しないブロックの場合は、1/2個と数えるものとする。
「ブロック群の幅W」とは、ブロックを密集配置してなるブロック群のトレッド幅方向長さを指し、例えばブロック群がトレッド全体に存在する場合は、トレッド接地幅をいうものとする。
ブロック群の「実接地面積」とは、ブロック群の基準区域内にある全ブロックの総表面積をいうものとし、すなわち、基準ピッチ長さPと幅Wとの積で規定される、上記基準区域の面積から個々のブロックを区画している溝の面積を減算した面積をいうものとする。
「平均接地圧」とは、荷重を接地面積で割って算出したトレッド踏面内の平均的な接地圧をいうものとする。
「ブロックの中間部」とは、ブロックのトレッド周方向中央位置からブロック両端に延び、ブロックのトレッド周方向長さの5〜30%の範囲の領域をいうものとする。
「凹部」は、ブロック中央が窪む形状であれば、直線状ならず曲線状でもよく、また、一方の端部側やトレッド幅方向の片側のみに設けることもできる。
このようなタイヤにおいてより好ましくは、前記凹部を、ショルダー領域に存在するブロックに形成する。
「ショルダー領域」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会) YEAR BOOK、欧州ではETRTO(European Tyre and Rim Technical Organisation) STANDARDS MANUAL、米国ではTRA(THE TIRE and RIM ASSOCIATION INC.)YEAR BOOK等に規定されたリムに、タイヤを組み付けて、JATMA等の規格にタイヤサイズに応じて規定された、最高空気圧を充填した状態で、トレッド側縁から、トレッド幅方向で測定した10〜35%の範囲をいうものとする。
また好ましくは、前記凹部を、この凹部を設けたブロックのトレッド幅方向最大長さdに対する、トレッド周方向端部と中間部との間のトレッド幅方向長さwの比w/dが0.14〜0.32範囲で、トレッド周方向両端部から中間部にわたって減少する。
ところで、タイヤ負荷転動時に、トレッド踏面の接地圧が平均接地圧より大きくなる領域で、ブロックのトレッド周方向の中間部に、トレッド踏面の展開平面視で、トレッド幅方向断面の長さが、そのブロックのトレッド周方向両端部から中間部にわたって増加した凸部を形成することが好ましい。
ここで、「凸部」とは、ブロック端部が窪む形状であれば、直線状ならず曲線状でもよく、例えばブロック形状が六角形では、その辺がトレッド周方向に対して直角の向きや、頂点を結ぶ対角線がトレッド周方向に対して平行に配置したり、五角形では、辺に垂直で頂点を通る直線がトレッド周方向に平行に配置や、頂点がブロックの踏込端である場合および辺がブロックの踏込端とすることもでき、また、この凸部を一方の端部側やトレッド幅方向の片側のみに設けることもできる。
また好ましくは、前記凸部を、トレッド踏面のトレッドセンター付近に存在するブロックに形成する。
ここで、「トレッドセンター付近」とは、トレッドセンターからトレッド幅の1/8〜3/16の範囲をいうものとする。
そしてまた好ましくは、前記凸部を、この凸部を設けたブロックのトレッド幅方向最大長さdに対する、トレッド周方向端部と中間部との間のトレッド幅方向長さwの比w/dが、0.20〜0.87範囲で、トレッド周方向両端部から中間部にわたって増加する。
好ましくは、前記多角形ブロックをトレッド周方向に千鳥状に配置する。
この発明の空気入りタイヤでは、ブロック群Gの単位実接地面積当たりのブロック個数密度S(個/mm)を0.003〜0.04個/mmの範囲で形成することで、例えば従来のスタッドレスタイヤのs=0.002個/mm以下の密度と比べ、密度Sが増加し、優れた接地性及びエッジ効果の確保と、ブロックによる効率的な水膜の除去とを実現することにより、ブロック剛性とエッジ効果との両立をより高い次元で達成することができ、氷上性能を飛躍的に向上させることができる。
すなわち、Sが0.003未満の場合には、ブロックの表面積が大きくなり、トレッド踏面の接地性を向上することができないおそれがあり、一方、Sが0.04を超えると、ブロックの一個あたりの表面積が小さくなり、サイプを配設しない場合であっても、所望のブロック剛性の実現が困難である。
また、タイヤ負荷転動時に、トレッド踏面の接地圧が平均接地圧より小さくなる領域で、ブロックのトレッド周方向の中間部に、トレッド踏面の展開平面視で、トレッド幅方向断面の長さが、そのブロックのトレッド周方向両端部から中間部にわたって減少した凹部を形成することで、図1にタイヤ回転方向に対するブロックの接地形状の様子を示すように、トレッド踏面の接地圧が平均接地圧より小さくなる領域、図7(b)の接地形状では特にショルダー領域に、図8(b)の接地形状ではショルダー領域のみではなく、センター領域と、センター領域と接地端との間で接地長さが最大(Lmax)となる位置の間に、図1(a)に示すような形状のブロックを配置することになる。図1(a)に示すような形状のブロックは、撓んだブロックの側壁が、ゴムの非圧縮性により側壁と垂直方向に膨出するが、図1(b)(c)に示すようなブロック形状に比べて、蹴出時に、ブロック側壁はタイヤ回転方向と同じ方向に膨出することになるとともに、そのブロックの中間部分に位置するゴム領域もタイヤ回転方向に変形し、タイヤ回転方向と反対方向の滑りが起き難くなるため、蹴出時に回転方向と同方向にブロックを滑らせることができる。その結果、トレッド踏面の接地圧が平均接地圧より小さくなる領域でのトレッドゴムの撓みが小さくても、その滑りが起きにくくなり滑り摩耗を低減することができる。
(a)本発明の空気入りタイヤの一の実施形態を示すブロック形状と、タイヤ負荷転動時のタイヤ周方向断面形状を示す図と、その拡大図、(b)一の実施形態を示すブロック形状と、タイヤ負荷転動時のタイヤ周方向断面形状を示す図と、その拡大図、(c)従来の空気入りタイヤのブロック形状と、タイヤ負荷転動時のタイヤ周方向断面形状を示す図と、その拡大図である。 本発明の空気入りタイヤの一の実施形態を示すトレッドパターンの部分展開図である。 本発明の空気入りタイヤの他の実施形態を示すトレッドパターンの部分展開図である。 本発明の空気入りタイヤの他の実施形態を示すトレッドパターンの部分展開図である。 本発明の空気入りタイヤの他の実施形態を示すトレッドパターンの部分展開図である。 本発明の空気入りタイヤの他の実施形態を示すトレッドパターンの部分展開図である。 (a)は、従来の空気入りタイヤを示すトレッドパターンの部分展開図と、(b)は、タイヤの負荷転動時の接地形状を示す図である。 (a)は、従来の空気入りタイヤを示すトレッドパターンの部分展開図と、(b)は、タイヤの負荷転動時の接地形状を示す図である。 従来の空気入りタイヤを示すトレッドパターンの部分展開図である。 空気入りタイヤの実施形態を示すトレッド部の一部の幅方向断面図である。
以下に、図面を参照しながら本発明の空気入りタイヤを詳細に説明する。
図2は、本発明の空気入りタイヤの一の実施形態を示すトレッドパターンの部分展開図である。
タイヤ内部の補強構造は、一般的なラジアルタイヤまたはバイアスタイヤのそれと同様であるので、図示を省略する。
図中1はトレッド踏面を示し、このトレッド踏面1には、トレッド幅方向に延在する複数の直線状の横溝2と、この横溝2の端部からトレッド周方向に対して10〜80°の範囲で傾斜して四方向に延びる直線状の傾斜溝3と、ショルダー領域には傾斜溝3の端部からトレッド周方向に延在する縦溝4を配設する。
図では、トレッドセンター付近のセンター領域には、横溝2と傾斜溝3で輪郭形状が正八角形となる五列の八角形ブロック5を区画し、ショルダー領域では、横溝2と傾斜溝3と縦溝4で輪郭形状を糸巻き形状となる一列の糸巻き形ブロック6を区画し、これらブロック5,6をトレッド周方向に連続して密集させてなるブロック群Gを形成する。
ここでは、それぞれの八角形ブロック5をトレッド周方向に千鳥状に配置する。
ここで、例えば、それぞれの横溝2は、溝幅を1.0〜10mm、溝深さを2〜11mmの範囲とし、傾斜溝3は、溝幅を0.1〜1.0mm、溝深さを1〜10mm、溝の延在長さを1〜15mmの範囲とし、縦溝4は、溝幅を0.1〜1.2mm、溝深さを1〜10mm、溝の延在長さを1〜15mmの範囲とする。
また、ブロック5,6のトレッド周方向長さを5〜25mm、トレッド幅方向長さを5〜25mm、表面積を25〜330mmの範囲とし、トレッド幅方向に隣接するブロック間距離を1.0〜10mmの範囲とすることができる。
このように、横溝2を配設することにより、接地時に横溝2内に水を保持しウェット路面の操縦安定性を向上させることができ、傾斜溝3および縦溝4を配設することにより、横溝を傾斜溝および縦溝で分断しない時と比較して、ブロック剛性の低下を低減して、ブロックの接地性を向上させることができる。
そしてこの空気入りタイヤではさらに、ブロック群Gにおけるブロックの基準ピッチ長さをP(mm)、ブロック群Gの幅をW(mm)(この実施形態では、トレッド踏面1の全体にブロックが配置されているので、トレッド接地幅と等しい。)、基準ピッチ長さPと幅Wとで区画される、ブロック群Gの基準区域Z内に存在するブロック5,6の個数をa(個)、基準区域Z内のネガティブ率をN(%)としたとき、
Figure 0005399808
として表される、ブロック群Gの単位実接地面積当たりのブロック個数密度S(個/mm)、すなわち接地面積(溝分を除いた)中の単位面積(mm)当たり小ブロックが配置された部分のブロック個数は、0.003〜0.04個/mm、好ましくは0.003〜0.035個/mmの範囲で形成する。
また、特に従動軸側のタイヤで、タイヤ負荷転動時に、トレッド踏面の接地圧が平均接地圧より小さくなる領域、図ではショルダー領域のブロックのトレッド周方向の中間部に、トレッド踏面の展開平面視で、トレッド幅方向断面の長さが、そのブロックのトレッド周方向両端部から中間部にわたって減少した凹部6aを形成して糸巻き形ブロック6とする。
好ましく、ブロック群Gのネガティブ率Nは5%〜50%の範囲とし、この範囲とすることで、操縦安定性を向上させることができる。
すなわち、ネガティブ率Nが5%未満の場合は、溝面積が小さ過ぎ排水性が不十分となる他、ブロック一つ一つの大きさが大きくなり過ぎて所要のエッジ効果の実現が難しくなるおそれがあり、一方、50%を超えると接地面積が小さくなり過ぎて、操縦安定性が低下する傾向がある。
このようなタイヤにあっては、ブロック群Gにおいて十分な溝面積を確保しつつブロック5,6を密集配置する構成とすることで、それぞれのブロック5,6のトータルエッジ長さ及びエッジ方向(異なる方向に向いたエッジの数)を増大させ、優れたエッジ効果を発揮させることができる。また、ブロック5,6の大きさを小さくしたことから、ブロック一つ一つの接地性を向上させることができるので、氷上路面およびウェット路面等の摩擦係数μの低い路面での制動性と操縦安定性を向上することができる。しかも、それぞれのブロック5,6を小さくすることで、ブロック5,6の中央域からブロック周縁までの距離を小さくして、ブロック5,6による水膜の除去効果を向上させることができる。
また、トレッド踏面1で接地圧が平均接地圧より小さい領域はその周囲よりも滑りやすく摩耗量が大きくなる一方で、接地圧が平均接地圧より大きい領域は前後力や横力が発生した際にその領域で大きな剪断力が発生して周囲よりも摩耗量が大きくなるおそれがある。
そこで、この空気入りタイヤにおいて好ましくは、タイヤ負荷転動時に、トレッド踏面1の接地圧が平均接地圧より大きくなる領域、図ではトレッドセンター付近に位置するブロックのトレッド周方向の中間部に、トレッド踏面の展開平面視で、トレッド幅方向断面の長さが、そのブロックのトレッド周方向両端部から中間部にわたって増加した凸部5bを形成した八角形ブロック5を配置する。
この構成により、特に駆動軸側のタイヤで、トレッド踏面の滑り摩耗が発生し易い蹴出時では、トレッド部がベルトによって路面に対し斜めに押し付けられるため、ブロックの中間部に圧縮応力が集中して、図1(b)に示すように、ブロックの中間部のゴムが蹴出側部分から踏込側部分に向かって変形しようとする力が発生しても、ブロックの蹴出側部分のトレッド周方向に対して傾斜するブロックの側壁が法線方向に膨出しようとする力が発生するので、その力がブロックの中間部のゴムが蹴出側部分から踏込側部分に向かって変形しようとする力に抗することから、ブロックの過剰な変形を抑制して、タイヤの負荷転動にトレッド踏面で発生する力および、ブロックの滑り摩耗を低減することができる。
本発明の好ましいタイヤでは、トレッド踏面内で接地圧が平均接地圧より小さく偏摩耗が発生し易い領域に凹部6aを設けたブロックと、接地圧が平均接地圧より大きく摩耗が発生し易い領域に凸部5bを設けたブロックとを配置することで、トレッド踏面の接地圧が均一になり、ヒールアンドトー摩耗を抑制するとともに、タイヤ回転方向と反対方向の蹴出端側の滑りに起因した摩耗を抑制することができる。
なお、トレッド幅方向に隣接するセンター領域のブロック5は、トレッド周方向に半ピッチずれて配設されていることが好ましく、この構成により、タイヤ負荷転動時に、倒れ込み変形する変形力をトレッド幅方向に隣接するブロックに有効に伝達することができるので、トレッド部の単位面積あたりの駆動力負担を低下させて、ブロックの路面に対する滑り現象に起因した偏摩耗を低減することができる。
また好ましくは、凹部6aは、ショルダー領域に位置するブロックに形成し、この領域は、センター領域と径差が存在することが多いため、トレッド踏面の平均接地圧よりも接地圧の低い領域となる傾向があるためである。
そしてまた好ましくは、凸部5bはセンター領域に位置するブロックに形成し、この範囲は、トレッド踏面の平均接地圧よりも接地圧の低い領域となる傾向があるためである。
ところで、凹部6aは、この凹部6aを設けたブロックのトレッド幅方向長さdに対する、トレッド周方向端部と中間部との間のトレッド幅方向長さwの比w/dが0.14〜0.32範囲で、トレッド周方向両端部から中間部にわたって減少することが好ましい。
/dが0.14満では、凹部を設けたブロックの変形が小さくなり、タイヤ回転方向と反対方向の滑りを抑制する効果が小さくなるおそれがあり、一方、w/dが0.32超えると、ブロック端部が細くなり剛性が低下し、また凹部6aの頂点間の幅が狭くなり剛性が低下するため、ブロック変形が大きくなり滑りも大きくなる傾向がある。
また好ましくは、凸部5bは、ブロックのトレッド幅方向長さdに対する、トレッド周方向両端部と中間部との間のトレッド幅方向長さwの比w/dが、0.20〜0.87範囲で、トレッド周方向両端部から中間部にわたって増加する。
/dが0.20未満では、ブロックの蹴出側部分のトレッド周方向に対して傾斜するブロックの側壁が法線方向に膨出しようとする力が発生する効果が小さくなり、タイヤ回転方向と同方向の滑り抑制効果が小さくなるおそれがあり、一方、w/dが0.87を超えると、ブロック端部が細くなりタイヤ蹴出時の変形が大きくなりすべりが大きくなる傾向がある。
なお、ブロックが、平均接地圧よりも低い部分と高い部分に跨る場合には、そのブロックの、平均接地圧よりも低い部分に凹部を、平均接地圧よりも高い部分に凸部の形状を組み合わせることになり、それら領域の耐偏摩耗および耐摩耗性を両立させることができる。
また、それぞれのブロックには、タイヤ転動時の接地面内で閉塞する細溝を設けることができる。
各ブロックをトレッド周方向に千鳥状に配置することで、タイヤ転動時に、より多くのブロックの形成下で、それぞれのエッジを逐次作用させて一層優れたエッジ効果を発揮させることができるとともに、トレッド幅方向に隣接するブロックの相互間で路面への接地タイミングをずらすことができるので、パターンノイズを低減させることもできる。
図2に示すようなタイヤでは、高負荷がかかった際に隣り合うブロックの支え合いブロック剛性および氷上性能を向上させることができる。
図3は、本発明の空気入りタイヤの他の実施形態を示すトレッドパターンの部分展開図である。なお、先の図に示したタイヤと同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
この実施形態では、ショルダー領域に、二列の糸巻き形ブロック6,7と、そのトレッド幅方向外側であって、接地端上に位置するブロック8とに区画し、この構成によれば、特にショルダー領域の偏摩耗が著しいタイヤにおいて、タイヤ回転方向と反対方向の滑りをブロック8に集中させて、糸巻き形ブロック7の滑りを抑制するとともに、糸巻き形ブロック7の凹部により、さらにその滑りを抑制することができるので、効果的である。
図4は、本発明の空気入りタイヤの他の実施形態を示すトレッドパターンの部分展開図である。なお、先の図に示したタイヤと同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
この実施形態では、センター領域に、三列の八角形ブロック5を配置し、ショルダー領域に二列の糸巻き形ブロック6を配置し、この構成によれば、例えばショルダー領域が横力により摩耗して図7(b)のような接地形状に、センター領域が駆動力により摩耗して図8(b)のような接地形状となった場合であっても、特にセンター領域とショルダー領域の偏摩耗を抑制することができる。
図5は、本発明の空気入りタイヤの他の実施形態を示すトレッドパターンの部分展開図である。なお、先の図に示したタイヤと同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
この実施形態では、センター領域に、六列の八角形ブロック5を配置し、ショルダー領域に二列の糸巻き形ブロック6を配置し、この構成によれば、それぞれのブロックの接地面積を変えて、それぞれの効果をさらに大きくすることができる。
図6は、本発明の空気入りタイヤの他の実施形態を示すトレッドパターンの部分展開図である。なお、先の図に示したタイヤと同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
この実施形態では、センター領域に、六列の八角形ブロック5を配置し、装着内側のショルダー領域に二列の糸巻き形ブロック6と、装着外側のショルダー領域に一列の糸巻き形ブロック6を配置し、この構成によれば、特にセンター領域とショルダー領域の偏摩耗、特に装着内側の偏摩耗を抑制することができる。
また、本発明では、溝の底上げ等を行わないため、溝深さを変えずに、新品時から摩耗時までトラクション性能を維持しつつ、ブロックの偏摩耗および摩耗を抑制することができる。
図10は、空気入りタイヤ一の実施形態を示す子午線断面図である。
図中の11はトレッド部を示し、そのトレッド部11には、例えば一枚のカーカスプライからなるカーカス12を配置し、このカーカス12のクラウン域の外周側に、コードをタイヤ赤道面に対して15〜30°で傾斜した向きに延在させた、ゴム被覆ベルト層の二層以上、図では二層の傾斜ベルト層13を配設し、このような傾斜ベルト層13の半径方向外方には、タイヤの赤道面に沿って延びるコードの多数本をゴム被覆してなる、図では一層の周方向ベルト層14を配設する。
図10に示すような構造を有する、195/65R15のサイズのタイヤを試作し、表1,2に示すように、それぞれの諸元を変化させた実施例タイヤ1〜5および、比較例タイヤ1〜3とのそれぞれにつき、耐偏摩耗性および耐摩耗性を評価した。
なお、比較例タイヤでは、他の構成は実施例タイヤに準ずるものとした。
Figure 0005399808
Figure 0005399808
(耐偏摩耗性)
実施例タイヤ1〜5および、比較例タイヤ1〜3のそれぞれを、リムサイズ6J×15のリムに装着し、内圧を210kPa、負荷質量4.4kNとし、平均速度40km/hで、5000kmを走行し、センター陸部とショルダー陸部との摩耗量差を評価し、その結果を表3に示す。
なお、表中の値は、比較例タイヤ1の値を基準として求めたものであり、数値が小さいほど、摩耗量差が小さくショルダー陸部の耐偏摩耗性能が優れていることを示す。
(耐摩耗性)
実施例タイヤ1〜5および、比較例タイヤ1〜3のそれぞれを、リムサイズ6J×15のリムに装着し、内圧を210kPa、負荷質量4.4kNとし、平均速度40km/hで、20000kmを走行し、溝が完摩して、ウェアインジケータが表面に露出するまでの距離を評価し、その結果を表3に示す。
なお、表中の値は、比較例タイヤ1の値を基準として求めたものであり、数値が大きいほど、完摩するまでの走行距離が長く、耐摩耗性が優れていることを示す。
Figure 0005399808
表3の結果から、実施例1〜5は、比較例1〜3に対して、偏摩耗性および耐摩耗性が優れている。
1 トレッド踏面
2 横溝
3 傾斜溝
4 縦溝
5 八角形ブロック
5b 凸部
6 糸巻き形ブロック
6a 凹部
7 糸巻き形ブロック
8 ブロック
11 トレッド部
12 カーカス
13 傾斜ベルト層
14 周方向ベルト層
G ブロック群
P ブロック群の基準ピッチ長さ
W ブロック群の幅
Z 基準区域

Claims (7)

  1. トレッド踏面に、直線状に延在する溝により区画した、五角形以上の角数の、相互に独立した複数個の多角形ブロックを互いに密集させて配置してなるブロック群を設けた空気入りタイヤにおいて、
    ブロック群における多角形ブロックの基準ピッチ長さをP(mm)、ブロック群の幅をW(mm)としたとき、前記基準ピッチ長さPと幅Wとで区画される、ブロック群の基準区域内に存在するブロックの個数をa(個)、基準区域内のネガティブ率をN(%)とし、
    Figure 0005399808
    で与えられる、ブロック群の単位実接地面積当たりのブロック個数密度Sが0.003〜0.04個/mmの範囲内であり、
    タイヤ負荷転動時に、トレッド踏面の接地圧が平均接地圧より小さくなる領域で、ブロックのトレッド周方向の中間部に、トレッド踏面の展開平面視で、トレッド幅方向断面の長さが、そのブロックのトレッド周方向両端部から中間部にわたって減少した凹部を形成してなることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記凹部を、ショルダー領域に存在するブロックに形成してなる請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記凹部は、この凹部を設けたブロックのトレッド幅方向最大長さdに対する、トレッド周方向端部と中間部との間のトレッド幅方向長さwの比w/dが0.14〜0.32範囲で、トレッド周方向両端部から中間部にわたって減少してなる請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
  4. タイヤ負荷転動時に、トレッド踏面の接地圧が平均接地圧より大きくなる領域で、ブロックのトレッド周方向の中間部に、トレッド踏面の展開平面視で、トレッド幅方向断面の長さが、そのブロックのトレッド周方向両端部から中間部にわたって増加した凸部を形成してなる請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記凸部を、トレッド踏面のトレッドセンター付近に存在するブロックに形成してなる請求項4に記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記凸部は、この凸部を設けたブロックのトレッド幅方向最大長さdに対する、トレッド周方向端部と中間部との間のトレッド幅方向長さwの比w/dが、0.20〜0.87範囲で、トレッド周方向両端部から中間部にわたって増加してなる請求項4または5に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記多角形ブロックをトレッド周方向に千鳥状に配置してなる請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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