本発明の一実施形態に係る画像処理装置は、例えば被検査体などの対象物の画像から生成される特徴点の基準位置からの変位に基づいて当該特徴点近傍の局所的な位置ずれ量を求める。被検査体は例えば、電子部品が実装された電子基板である。特徴点は例えば、対象物またはその画像の全体に分布するパターンであって、位置補正に要求される精度よりも高い設計精度を有するパターンから生成される。このようにすれば、高い位置精度を有する特徴点を全体的に分布させることができるので、局所的な位置ずれ量を任意の位置でより高い精度で求めることが可能となる。また、局所的位置ずれ量に基づいて局所的な位置補正を高い精度で行うことも可能となる。
電子基板の場合には、実装される電子部品を相互に接続する配線パターンから特徴点を生成することが好ましい。基板上の部品の高密度実装化により、高い位置精度で配線パターンが形成されるようになってきているからである。また、各部品を接続するために通常、電子基板の配線パターンは、基板表面全域にわたって屈曲しながら延びる多数のラインを含む。なおここで、配線パターンには電子基板が動作するときに実際には機能しない配線パターンも含まれ得る。基板共通化により生産コストを低減するために、搭載される部品のセットに応じて実際に機能する配線パターンが異なるからである。よって、一般化して言えば、電子基板の場合には、電子部品を実装し得る複数の実装位置を相互に接続する配線パターンから特徴点を生成することが好ましい。
特徴点の基礎となるパターンに含まれるラインの例えば屈折点、端点、及び交点を特徴点として用いてもよい。このようにパターン上に実在する特徴点を以下では「実体特徴点」と呼ぶことがある。電子基板の場合には、配線パターンを折れ線として認識し、折れ線上の折れ点、端点、及び交点を特徴点としてもよい。
また、特徴点の基礎となるパターンから、実体特徴点が存在しない位置に仮想的に特徴点を生成してもよい。これを以下では「仮想特徴点」と呼ぶことがある。例えば、パターンの一部を仮想的に延長したときにパターンの他の部分と交差して得られる交点を特徴点としてもよい。折れ線に含まれる線分を延長して得られる交点を特徴点としてもよい。このようにすれば、より多くの特徴点を位置補正に用いて位置ずれ量を正確に求めることができる。また、実体特徴点が存在しない領域にも仮想特徴点を設けて位置ずれ量を求めることが可能となる。
なお、使用可能であるすべての特徴点を用いて位置ずれ量を求める必要はなく、位置補正装置は、選択された一部の特徴点の基準位置からの変位に基づいて位置ずれ量を求めてもよい。位置補正装置は、実体特徴点のみを用いて位置ずれ量を求めてもよいし、仮想特徴点のみを用いて位置ずれ量を求めてもよい。あるいは位置補正装置は、実体特徴点と仮想特徴点とを併用して位置ずれ量を求めてもよい。
また、一実施形態においては、被検査体の検査装置は、被検査体を撮像する撮像部と、被検査体画像から認識可能であるパターンを利用して検査位置を補正する位置補正部と、被検査体画像から被検査体の良否を判定する検査部と、を備えてもよい。位置補正部は、被検査体画像に含まれるパターンから特徴点を生成する特徴点生成部と、特徴点の基準位置からの変位に基づいて被検査体画像の位置ずれ量を演算する位置ずれ量演算部と、を備えてもよい。位置補正部は、位置補正範囲を設定する位置補正範囲設定部を備えてもよい。
被検査体を撮像する撮像部は、検査を適切に実行し得る画像が得られる限り、いかなる撮像手段であってもよい。例えば、撮像部が撮像のために被検査体に照射する照明光は、可視光、X線、紫外光、及び赤外光を含む任意の波長の照明光であってもよい。また、以下では被検査体画像が2次元画像である実施形態を説明しているが、被検査体画像は3次元画像であってもよい。この場合、撮像部は被検査体の3次元画像を取得するよう構成される。撮像部は例えば、複数の異なる方向から照明光を照射して複数の2次元画像を取得し、これら複数の2次元画像から被検査体の3次元画像を合成してもよい。また、撮像部は、複数の異なる方向から放射線(例えばX線)を照射して被検査体の複数の2次元透過画像を取得し、これら複数の2次元透過画像に基づいて被検査体の外観形状及び内部構造を表す3次元画像を再構成してもよい。さらに、再構成により得られた3次元画像の断面画像である2次元画像を被検査体画像として、以下に説明する実施形態を適用することも可能である。
図1は、本発明の一実施形態に係る位置補正処理を模式的に示す図である。この実施例は、部品を実装した電子基板を撮像した画像の位置補正に関する。図1には、電子基板画像のうち特定の電子部品1002を含む局所領域1000が示されている。この電子部品1002は例えば、実装状態について所望の検査がなされるべき電子部品であり、局所領域1000の位置補正後に当該検査が行われる。局所領域1000には、電子部品1002の近傍を通る折れ線状の配線パターン1004が含まれている。図1において局所領域1000内に実線で記載されている電子部品1002及び配線パターン1004は、検査のために撮像した画像を示している。破線で記載されているのは、検査の判定基準となる基準画像において対応する電子部品1003及び配線パターン1005である。
位置補正処理は例えば検査装置の制御ユニットにより実行される。制御ユニットは、位置補正処理を司る位置補正部を備える。位置補正部は、局所領域1000において配線パターン1004上に特徴点1006を生成する。図1においては、配線パターン1004上の特徴点1006が黒丸で示されており、特徴点1006に対応する基準画像上の基準点1007が白丸で示されている。位置補正部は、配線パターン1004の屈折部を特徴点1006として生成する。基準画像上の配線パターン1005の屈折部が基準点1007である。
位置補正部は、図示されるように、配線パターン1004の複数の屈折部から一部を選択して特徴点1006としてもよい。局所領域1000が十分に小さい領域である場合には特徴点1006が1つであっても十分な位置補正精度を実現可能であると考えられる。また、例えば回転角度も含めて更なる位置補正精度を追求する場合には、他の屈折部1008も含めて特徴点1006を複数生成してもよい。
この例においては、特徴点1006と、その特徴点1006に対応する基準点との対応関係は位置補正部に予め入力され記憶されている。すなわち、被検査体画像上の特徴点1006と位置を比較すべき基準画像上の基準点1007が予め定められている。よって、特徴点1006と基準点1007との位置の差が特徴点1006の位置ずれ量となる。位置補正部は、特徴点1006の座標と基準点1007の座標との差を演算して特徴点1006の位置ずれ量1010を求める。位置補正部は、演算した位置ずれ量1010に等しい位置補正量1012だけ局所領域1000の位置を補正する。その結果、基準画像に対して高い精度で位置を補正された局所的な被検査体画像を得ることができる。被検査体画像と基準画像とを検査対象の局所領域で正確に一致させることができる。次いで、検査装置は、電子部品1002に対し所望の検査項目について検査を行う。
一実施形態においては、対象物を走査しながら撮像して走査方向に分割された部分画像を順次取得する撮像部と、対象物の全体が撮像された全体画像に部分画像を合成する画像合成部と、が設けられていてもよい。画像合成部は、取得済みの部分画像から、全体画像の一部である局所画像を合成してもよい。局所画像は、取得済みの部分画像をすべて合成したものであってもよいし、必要な検査領域を局所的に合成した局所検査領域であってもよい。位置補正部は、局所画像に含まれるパターンから特徴点を生成し、特徴点の基準位置からの変位に基づいて局所画像の位置ずれを補正してもよい。
位置補正部は、対象物の撮像中に局所画像の位置を補正してもよい。検査部は、位置が補正された局所画像の検査を対象物の撮像中に開始してもよい。検査部は例えば、検査対象の電子基板の端部に形成されている複数の基準マークのすべての撮像が完了する前に局所画像の検査を開始してもよい。このようにすれば、撮像の完了を待たずに位置補正さらには検査を開始することができるので、タクトタイムを短縮することができる。
図2は、本発明の一実施形態に係る位置補正処理を説明するためのフローチャートである。この位置補正処理は、例えば基板への実装部品搭載処理後、あるいは部品搭載処理及び加熱処理(例えばリフロー処理)の後のように基板に不均一に変形が生じ得る処理の後に実行されることが好ましい。局所的な位置補正により後続の処理(例えば実装状態検査処理)を高い精度で行うことが可能となる。
図2に示される処理においては、位置補正部はまず、位置補正範囲を設定する(S10)。位置補正範囲は、入力画像上の位置補正がなされるべき領域である。入力画像は、対象物の全体を撮像した画像であってもよい。また、対象物を走査しながら撮像する場合には、入力画像は、撮像が完了したところまでの対象物画像の全体または局所的に選択された一部分であってもよい。例えば電子基板の検査装置での位置補正処理においては、位置補正範囲は例えば、電子基板画像の全体または一部のうち検査対象となる電子部品を含む局所的な領域である。言い換えれば、位置補正範囲は、被検査体画像の局所検査領域に一致していてもよいし、局所検査領域の一部であってもよい。
位置補正部は、入力画像の位置補正範囲内に特徴点を生成する(S12)。位置補正部は、入力画像を処理することにより特徴点を生成し、特徴点の位置を記憶する。位置補正部は例えば、入力画像の位置補正範囲に存在するパターンを認識し、パターン上に実体特徴点を生成してもよい。また、位置補正部は、入力画像の位置補正範囲に存在するパターンに基づいて、実体特徴点が存在しない位置に仮想特徴点を生成してもよい。あるいは、位置補正部は、入力画像のうち位置補正範囲の外部に存在するパターンに基づいて、位置補正範囲の内部で実体特徴点が存在しない位置に仮想特徴点を生成してもよい。位置補正部は、位置補正範囲内に生成し得る特徴点候補のうち一部を選択して特徴点として生成してもよい。この場合、位置補正部は、所望の位置補正精度を実現するよう位置補正範囲内の特徴点の分布を調整してもよい。
位置補正部は、特徴点と基準点との対応関係を取得する(S14)。基準点は基準画像から予め生成され位置補正部に入力され記憶されていてもよいし、上述の特徴点と同様に、位置補正部は位置補正範囲に対応する基準画像上の領域に基準点をその都度生成してもよい。図1を参照して説明した一実施例のように特徴点と基準点との対応関係が既知である場合には、位置補正部は、その既知の対応関係を用いて以降の処理を実行する。ところが、位置補正範囲には通常複数の特徴点が生成され、基準点も複数存在する。一般には、複数の基準点のうち、ある1つの特徴点に対応する基準点がいずれであるかが未知である。よって、位置補正部は、例えば後述の変位ベクトル分類処理を用いて、複数の基準点候補から特徴点に対応する基準点を選択する。
変位ベクトル分類処理においては、位置補正部は、ある特徴点とその特徴点の基準点候補との間の変位を表すベクトルを複数の基準点候補の各々について求め、さらにこれを位置補正範囲内の複数の特徴点について行う。位置補正部は、得られた変位ベクトルを複数の区分に分類し、最も高頻度である区分の変位ベクトルから特徴点と基準点との対応関係を求める。
位置補正部は、特徴点と基準点との対応関係に基づいて基準点からの特徴点の位置ずれ量を演算する(S16)。位置補正部は、位置ずれ量に基づいて位置補正範囲の位置を補正する(S18)。次いで、例えば電子基板の検査装置においては、位置補正により正確に位置決めされた局所検査領域に対して所望の検査項目について検査を行う。検査が終了すると、位置補正部は別の位置補正範囲について図2に示される位置補正処理を実行し、すべての位置補正範囲の処理が終了するまで図2に示される処理を繰り返す。また、例えば基板処理装置(例えばマウンタ)においては、入力画像の位置を補正する代わりに、撮像された基板自体の位置を補正してもよい。
なお、上述の実施形態においては位置補正範囲設定処理(S10)を特徴点生成処理(S12)の前に行うようにしているが、これに限られない。例えば、位置補正部は、基準点との対応関係を取得する処理(S14)の前に位置補正範囲を設定するようにしてもよい。この場合、位置補正部は、入力画像の全体について特徴点を生成してもよい。また、位置補正部は、位置ずれ量演算処理(S16)の前に位置補正範囲を設定するようにしてもよい。この場合、位置補正部は、入力画像の全体について特徴点を生成し各特徴点と基準点との対応関係を取得してもよい。
また、一実施例においては、位置補正部は、パターンが非周期的に配列されている領域を位置補正範囲に設定してもよい。例えば多数の直線パターンが一定間隔に配列された規則的パターンを位置補正範囲に含めるよりも、例えば図3に示すように不規則なパターンを有する領域を位置補正範囲とするほうが高精度の位置補正が可能であることが経験的にわかっている。よって、位置補正部は、パターンが不規則である領域を位置補正範囲に設定してもよい。
そのために、位置補正部は例えば、入力画像のパターン分布の空間周波数を測定し、パターン分布の空間周波数の帯域幅がしきい値よりも大きい領域を位置補正範囲に設定してもよい。つまり空間周波数のバラツキが大きい領域を位置補正範囲に設定してもよい。この帯域幅しきい値は例えば、要求される位置補正精度に基づいて設定することができる。
また、位置補正部は、入力画像とその同一画像とのイメージマッチングをとり、イメージマッチング結果に基づいて位置補正範囲を設定してもよい。位置補正部は例えば、入力画像とその同一画像との位置をずらしながら複数の位置でイメージマッチングを行う。入力画像上の周期的パターンを有する領域は、当該画像領域をずらしながら複数位置でマッチングをとった場合にマッチング率が高くなる位置が非周期的パターンに比べて多くなる。非周期的パターンの場合通常は、マッチング率が高くなる位置は1箇所だけである。よって例えば、位置補正部は、マッチング率がしきい値よりも高くなる位置の出現回数が所定回数以内(例えば1回のみ)である領域を位置補正範囲に設定してもよい。マッチング率及び出現回数のしきい値は、上述の空間周波数しきい値と同様に例えば、要求される位置補正精度に基づいて設定することができる。
次に、本発明の一実施形態に係る特徴点の生成処理について更に詳しく説明する。一実施形態においては、特徴点生成部は、入力画像からパターンを認識するパターン認識部と、パターン上に実体特徴点を生成する実体特徴点生成部と、パターンを仮想的に延長して仮想特徴点を生成する仮想特徴点生成部と、生成された実体特徴点及び仮想特徴点から位置補正に使用する特徴点を選択する特徴点選択部と、を備えてもよい。
パターン認識部は、複数の線分の連続的な配列、すなわち折れ線としてパターンを認識してもよい。また、パターン認識部は、パターンを複数の線分の集合として認識してもよい。実体特徴点生成部は、線分の端点及び交点を実体特徴点の候補としてもよい。仮想特徴点生成部は、線分の延長線上に仮想的に形成される他の線分または延長線との交点を仮想特徴点の候補としてもよい。特徴点選択部は、実体特徴点及び仮想特徴点の候補から位置補正処理に使用する特徴点を選択してもよい。特徴点選択部は例えば、実体特徴点を優先的に選択し仮想特徴点を必要に応じて付加するようにしてもよい。
特徴点選択部は、特徴点が非周期的に分布するよう特徴点を選択してもよい。特徴点が例えば格子状等のように周期的に分布している場合よりも非周期的に分布している場合のほうが経験的により高精度の位置補正が可能である。言い換えれば、特徴点は位置補正範囲において不規則に分布していることが好ましい。特徴点選択部は、特徴点分布の空間周波数の帯域幅をしきい値よりも大きくするよう特徴点分布を調整することが好ましい。この帯域幅しきい値は例えば、要求される位置補正精度に対応する特徴点分布の周期性に基づいて設定される。また、特徴点選択部は、同一の2つの特徴点分布間で位置をずらしながら複数位置でマッチングをとり、そのマッチング結果に基づいて特徴点分布を調整してもよい。このようにすれば、非周期的に特徴点を分布させることが可能となる。
図3は、本発明の一実施形態に係る特徴点生成処理を模式的に示す図である。特徴点生成部はまず、制御ユニットに付随するメモリから、特徴点を生成する画像1014の入力を受ける。入力画像1014はパターン1016を含む。入力画像1014が電子基板画像の一部分である場合には、パターン1016は例えば配線パターンである。特徴点生成部は、入力画像1014に対し線分抽出処理を実行する。図3においては線分抽出処理を矢印1018で表している。線分抽出処理1018は、パターン1016を複数の線分の集まりとしてパターン1016から抽出する処理である。線分抽出処理の一例については図4を参照してさらに詳しく説明する。
線分抽出処理1018がなされた入力画像1014は、元のパターン1016に対応するラインを含む。図3に示される例の場合、パターン1016に対応して5本のライン1020、1022、1024、1026、1028がパターン1016から抽出される。このうち、ライン1020、1022、1026は折れ線であり、ライン1024は端点を有する線分であり、ライン1028は入力画像1014内に折れ点及び端点を有しない直線である。
特徴点生成部は、抽出されたラインに対し特徴点の候補を生成する処理を実行する。図3においては、特徴点候補生成処理を矢印1030で示している。特徴点候補生成処理には、実体特徴点の候補を生成する処理と、仮想特徴点の候補を生成する処理とが含まれる。仮想特徴点候補生成処理には、入力画像1014の内部の抽出ラインを仮想的に延長した延長ライン1036を用いる第1仮想特徴点候補生成処理と、入力画像1014の外部のパターンに基づく抽出ライン1042を用いる第2仮想特徴点候補生成処理と、が含まれる。この外部の抽出ライン1042は例えば、対象物を走査しながら撮像して走査方向に分割された部分画像を順次取得するいわゆるラインスキャン方式の場合には、取得済みの画像のうち入力画像1014外部のパターンから抽出されたラインである。図3においては、実体特徴点候補生成処理、第1仮想特徴点候補生成処理、及び第2仮想特徴点候補生成処理をそれぞれ、上段、中段、及び下段に示している。
実体特徴点候補生成処理においては、特徴点生成部は、抽出ライン1020、1022、1024、1026、1028上に実在する特徴点を特徴点候補とする。具体的には、特徴点生成部は、パターン1016を表す折れ線1020、1022、1026の折れ点1032を特徴点候補とする。また、特徴点生成部は、パターン1016を表す線分1024の端点1034を特徴点候補とする。図3においては、実体特徴点の候補を白丸で示している。
第1仮想特徴点候補生成処理においては、特徴点生成部は、入力画像1014内で抽出ライン1020、1022、1024、1026、1028を仮想的に延長し、延長ライン1036を形成する。図3においては、抽出ライン1020、1022、1024、1026、1028を破線で示し、延長ライン1036を実線で示している。特徴点生成部は、抽出ライン1020、1022、1024、1026、1028と延長ライン1036との交点1038を仮想特徴点の候補とする。また、特徴点生成部は、2本の延長ライン1036の交点1040を仮想特徴点の候補とする。図3においては、第1仮想特徴点候補生成処理による仮想特徴点の候補を黒丸で示している。
第2仮想特徴点候補生成処理においては、特徴点生成部は、入力画像1014の外部のパターンに基づく抽出ライン1042と、入力画像1014内の抽出ライン1020、1022、1024、1026、1028またはこれらの延長ライン1036との交点1044を仮想特徴点の候補とする。また、特徴点生成部は、入力画像1014の外部のパターンに基づく2本の抽出ライン1042の交点のうち入力画像1014の内部に形成される交点を仮想特徴点の候補としてもよい。図3においては、第2仮想特徴点候補生成処理による仮想特徴点の候補を二重丸で示している。
特徴点生成部は、特徴点候補から特徴点を選択する処理を実行する。図3においては、特徴点選択処理を矢印1046で示している。特徴点生成部は、図3に示される例においては、実体特徴点候補(白丸)のすべて、第1仮想特徴点候補(黒丸)のすべて、及び第2仮想特徴点候補(二重丸)の一部を位置補正処理に使用する特徴点として選択している。図3においては、選択されなかった特徴点候補1048を破線で示している。特徴点生成部は、入力画像1014における特徴点分布が不規則となるように特徴点候補からランダムに特徴点を選択してもよい。
特徴点生成部は、生成された特徴点の位置を、例えば付随するメモリに記憶する。特徴点生成部は、互いに直交する2つの座標軸(典型的にはX軸及びY軸)を有する座標平面における座標で各特徴点を記憶する。つまり、X成分及びY成分を有する2次元ベクトルとして各特徴点は記憶される。特徴点生成部は、上述の特徴点生成処理と同様にして基準点を生成してもよい。すなわち特徴点生成部は、基準画像に対して特徴点生成処理を実行して基準点を生成し2次元ベクトルとして記憶してもよい。
一実施例においては、特徴点生成部は、位置を示す成分に新たな成分を加えて3次元以上の次元を有するベクトルとして特徴点ベクトル及び基準点ベクトルを生成してもよい。例えば、特徴点ベクトルは、その特徴点の性質を示す次元を有してもよい。特徴点の性質としては例えば、その特徴点が実体特徴点または仮想特徴点のいずれであるか、その特徴点が端点であるか交点であるかなどがある。特徴点ベクトルの第3の成分は例えば、その特徴点が実体特徴点である場合に「1」を割り当て、その特徴点が仮想特徴点である場合に「0」を割り当ててもよい。その他の特徴点の性質としては例えば、その特徴点近傍の特徴点分布密度を示す指標(例えば特徴点近傍の特徴点分布の空間周波数)であってもよいし、その特徴点の基礎となったパターンの画素の性質(例えば輝度や色彩等)であってもよい。また、特徴点ベクトルの第3の成分は、パターンを表す線分から特徴点を生成する場合には、線分に関連していてもよい。例えば特徴点が2つの線分の交点である場合には、特徴点ベクトルの新たな成分として、線分の交差する角度を入れてもよい。この場合、特徴点が線分の端点である場合には、交差角度としてはあり得ない値(例えばゼロ)とすることにより、その特徴点が交点であるか端点であるかを識別することもできる。
また、一実施例においては、特徴点生成部は、線分抽出処理を省略し、入力画像上のパターンから特徴点を直接生成するようにしてもよい。この場合、特徴点生成部は適宜の公知のパターン認識処理を用いてもよい。特徴点生成部は、生成された特徴点を互いに接続する直線を仮想的に形成し、これらの仮想直線の交点を仮想特徴点としてもよい。
図4は、本発明の一実施形態に係る線分抽出処理を模式的に示す図である。上述のように、線分抽出処理は、入力された画像上のパターンを複数の線分の集まりとしてパターンから抽出する処理である。線分抽出処理は例えば、特徴点生成部のパターン認識部により実行される。パターン認識部はまず、線分を抽出する画像1050の入力を受ける。入力画像1050はパターン1052を含む。入力画像1050が電子基板画像の一部分である場合には、パターン1052は例えば配線パターンである。
パターン認識部は、パターンを表す代表画素を選択する代表画素選択処理を実行する。代表画素選択処理は図4において最左欄に示す。パターン認識部は、入力画像1050の各画素の輝度を測定し、測定輝度としきい値を比較して代表画素を選択する。具体的には例えば、パターン認識部は、入力画像1050をX方向(図4において横方向)及びY方向(図4において縦方向)のそれぞれについて一定間隔おきに複数位置で走査し、各走査位置でのX方向及びY方向に沿う測定輝度列1058を取得する。図4においては、X方向の輝度測定を矢印1054で示し、Y方向の輝度測定を矢印1056で示す。
パターン認識部は例えば、測定輝度列1058のうち輝度しきい値よりも暗い部分1060から代表画素を選択する。なお図4に示される実施例においては入力画像1050上でパターン1052が周囲よりも暗いことがわかっているので輝度しきい値よりも暗い部分1060から代表画素を選択するが、パターン認識部は、入力画像1050上でパターン1052が周囲よりも明るい場合には輝度しきい値よりも明るい部分から代表画素を選択してもよい。輝度しきい値はパターン1052を周囲と識別することができるように適宜設定すればよく、例えば、パターン1052の平均的な輝度値と周囲の例えばレジストの平均的な輝度値との中間値に設定してもよい。
パターン認識部は、輝度しきい値よりも暗い部分1060(パターン1052が周囲よりも明るい場合には明るい部分)の中点1062に位置する画素を代表画素として選択する。なお、代表画素として輝度しきい値よりも暗い部分1060または明るい部分の中点以外の画素を選択することも可能である。例えば、輝度しきい値に最も近い輝度値をとる画素を代表画素としてもよい。このようにしてパターンを表す代表画素1062を選択した結果、図4の中央部に示されるように、入力画像1050における代表画素分布図1064が得られる。
パターン認識部は、入力画像1050のパターン1052を含む部分を複数の分割画像に分割する。例えば図4に示されるように、パターン1052を含む部分を多数の格子状分割画像1066に分割する。言い換えれば、パターン認識部は、代表画素分布図1064において近接する代表画素1062をグループ化する。パターン認識部は例えば、基準となる代表画素1062を定め、その基準代表画素から所定距離内にある近傍の代表画素1062を1つのグループとする。
パターン認識部は、分割画像1066の大きさすなわち隣接基準代表画素間距離をパターン1052の配列に基づいて設定する。パターン認識部は例えば、パターン1052の設計情報、または被検査体画像に対する空間周波数測定から最小のパターン間隔を取得し、隣接基準代表画素間距離を最小パターン間隔よりも小さい値に設定する。このようにすれば、1つの分割画像1066に含まれる代表画素分布が複数の線分を形成しないことが保証される。よって、1つの分割画像1066中に分布する代表画素を1つの線分として抽出することが合理的となる。
パターン認識部は、1つの分割画像1066に含まれる代表画素1062を最もよく表す部分線分1068を抽出する。パターン認識部は、各代表画素1062に例えば最小二乗法を適用して部分線分1068を抽出する。パターン認識部は、すべての分割画像1066に対して部分線分1068の抽出を行う。
さらに、パターン認識部は、隣接する分割画像1066の部分線分1068を結合する処理を実行する。パターン認識部は、隣接する分割画像1066の境界1070上の隣接する2本の部分線分1068の端点が十分に近接し、かつ隣接する2本の部分線分1068の傾きが実質的に等しい場合には、2本の隣接する部分線分1068を1本の共通の線分1072に結合する。図4の右欄上方にこの例をしめす。パターン認識部は、2本の部分線分1068の端点間の距離がしきい値より小さい場合に、端点が十分に近接すると判定する。また、パターン認識部は、2本の隣接する部分線分1068の傾きの差がしきい値より小さい場合に、傾きが実質的に等しいと判定する。
また、パターン認識部は、隣接する分割画像1066の境界1070上の隣接する2本の部分線分1068の端点が十分に近接し、かつ隣接する2本の部分線分1068の傾きが実質的に異なる場合には、2本の隣接する部分線分1068を折れ線1074に結合する。図4の右欄下方にこの例をしめす。この場合、隣接する分割画像1066の境界1070上に折れ点1076が形成される。この折れ点1076は実体特徴点の候補となる。パターン認識部は、2本の隣接する部分線分1068の傾きの差がしきい値より大きい場合に、傾きが実質的に異なると判定する。一方、パターン認識部は、隣接する2本の部分線分1068の端点が近接していない場合、つまり端点間の距離がしきい値より大きい場合には、部分線分1068を結合しない。
パターン認識部は、隣接する2つの分割画像1066のすべての組について部分線分1068を結合するか否かを判定する。パターン認識部は、複数の隣接する部分線分1068を1本の共通の線分に結合する場合には、結合前の部分線分を構成する代表画素に最小二乗法を再度適用して1本の結合線分を作成する。すなわち、複数の隣接する分割画像1066に分布する各代表画素1062に最小二乗法を適用して結合線分1072を再計算する。このようにして、入力された画像上のパターンを複数の線分の集まりとしてパターンから抽出することができる。
なお、一実施例においては、検査装置の検査部は、被検査体画像のパターンから抽出された線分の配列を、基準画像のパターンから抽出された線分の配列と比較することにより、被検査体画像のパターンの良否を判定してもよい。このようにすれば、例えば被検査体が電子基板である場合には、配線パターンの断線を検出することもできるようになる。
次に、本発明の一実施形態に係る位置ずれ量の演算処理について更に詳しく説明する。一実施形態においては、位置ずれ量演算部は、特徴点を表す特徴点ベクトルと基準点を表す基準点ベクトルとの差を表す変位ベクトルを生成するベクトル生成部と、変位ベクトルを複数の区分に分類するベクトル分類部と、を含む。ベクトル生成部は、複数の特徴点ベクトルのうち任意の1つと複数の基準点ベクトルのうち任意の1つとの差を変位ベクトルとして生成する処理を反復して複数の変位ベクトルを生成する。
ベクトル生成部は、特徴点と基準点との被検査体画像上の位置の差を表す位置成分とは異なる成分を変位ベクトルに付加してもよい。ベクトル分類部は、付加された成分と位置成分とに基づいて変位ベクトルを分類してもよい。この場合、ベクトル分類部は、付加された成分により変位ベクトルを予備的に複数の区分に分類したうえで、予備的に分類された各区分において位置成分により変位ベクトルをさらに複数の区分に分類してもよい。
位置ずれ量演算部は、特徴点とその特徴点に対応する基準点との対応関係をいわば事後的に取得する。つまり、位置ずれ量演算部は、位置ずれ量の演算に使用する特徴点を生成してから、各特徴点がそれぞれどの基準点に対応しているかを決定する。よって、位置ずれ量演算部は、特徴点と基準点との対応関係が未知である場合に自動的に対応関係を取得して位置ずれ量を演算することができる。
位置ずれ量演算部は例えば、複数の特徴点のそれぞれについてベクトル生成範囲内の複数の基準点からの変位を表すベクトルを生成して分類し、変位ベクトルの分類結果に基づいて被検査体画像の位置ずれ量を演算してもよい。位置ずれ量演算部は、始点を共通の原点としたときの終点の位置に応じて変位ベクトルを複数の区分に分類し、最も高頻度である区分に基づいて位置ずれ量を演算してもよい。位置ずれ量演算部は、変位ベクトルの次元に等しい次元を有する空間を例えば格子状に区分し、変位ベクトルの終点が位置する区分により分類してもよい。
図5及び図6は、本発明の一実施形態に係る変位ベクトル分類処理を模式的に示す図である。位置ずれ量演算部はまず、メモリから入力画像の位置補正範囲1080に含まれる特徴点1082、1083、1084の入力を受ける。それとともに、位置ずれ量演算部は位置補正範囲1080に含まれる基準点1085、1086、1087の入力を受ける。図5及び図6においては特徴点を白丸で示し、基準点を三角で示す。
図5及び図6においては説明をわかりやすくするために、位置補正範囲1080に第1特徴点1082、第2特徴点1083、第3特徴点1084の3つの特徴点だけが存在する例を示す。同様に基準点も第1基準点1085、第2基準点1086、第3基準点1087の3つだけが位置補正範囲1080に存在する。なお、一般には特徴点と基準点との対応関係及び位置ずれ量は未知であるから、位置補正範囲1080における特徴点と基準点の数は同数であるとは限らない。
位置ずれ量演算部は、各特徴点についてベクトル生成範囲内の基準点からの変位を表す変位ベクトルを生成する。ここで、ベクトル生成範囲は位置補正範囲1080に一致する領域である。また、変位ベクトルは一般には、基準点の位置ベクトルと特徴点の位置ベクトルとの差で与えられる。この変位ベクトル生成処理を図5では矢印1088で示す。
まず、位置ずれ量演算部は、第1特徴点1082を始点とし第1乃至第3基準点1085、1086、1087のそれぞれを終点とする変位ベクトル1090、1091、1092を求める(図5中央上段)。また、位置ずれ量演算部は、第2特徴点1083を始点とし第1乃至第3基準点1085、1086、1087のそれぞれを終点とする変位ベクトル1093、1094、1095を求める(図5中央中段)。さらに同様にして、位置ずれ量演算部は、第3特徴点1084を始点とし第1乃至第3基準点1085、1086、1087のそれぞれを終点とする変位ベクトル1096、1097、1098を求める(図5中央下段)。
次に、位置ずれ量演算部は、変位ベクトル分類処理1100を実行する。位置ずれ量演算部は、生成した変位ベクトル1090乃至1098を共通のXY平面上にクラスタリングする。つまり、位置ずれ量演算部は、変位ベクトル1090乃至1098の始点を共通の原点に一致させたときの終点の位置によって変位ベクトル1090乃至1098を分類する。その結果、図示されるように3つの変位ベクトル1090、1094、1098は重なり合うが、その他の変位ベクトルはすべて異なる位置に終点を有する。第1特徴点1082から第1基準点1085への変位ベクトル1090と、第2特徴点1083から第2基準点1086への変位ベクトル1094と、第3特徴点1084から第3基準点1087への変位ベクトル1098と、が重なり合っている。
この場合、第1特徴点1082と第1基準点1085とが対応しており、第2特徴点1083と第2基準点1086とが対応しており、第3特徴点1084と第3基準点1087とが対応していると結論づけることができる。また、特徴点と基準点との対応関係を示す変位ベクトル1090、1094、1098が、特徴点と基準点との位置ずれ量を表していると言える。
よって、位置ずれ量演算部は、特徴点と基準点との対応関係を示す変位ベクトル1090、1094、1098を位置補正範囲1080の位置ずれ量と決定する。なお、実際には例えば測定誤差の影響により、特徴点と基準点との対応関係を示す変位ベクトル1090、1094、1098が厳密には一致しないこともある。よって、位置ずれ量演算部は、最も高頻度である分類区分に含まれる変位ベクトルを平均して位置ずれ量を決定してもよい。
一方、図6は、例えば被検査体画像が不鮮明であることにより第3特徴点1084を生成することができなかった場合を示す。この場合でも、生成することができた第1特徴点1082及び第2特徴点1083に対して変位ベクトル生成処理1088及び変位ベクトル分類処理1100を実行することにより、位置ずれ量1090、1094を決定することができる。よって、上述の変位ベクトル分類処理により、一部の特徴点を生成することができなかった場合であっても精度の高い位置補正を行うことができる。
なお、上述の実施例ではベクトル生成範囲を位置補正範囲に一致させ、位置補正範囲内のすべての特徴点及び基準点について変位ベクトルを生成しているが、これに限られない。ベクトル生成範囲は、位置補正範囲の一部であってもよく、位置補正範囲内の各特徴点に共通の領域であってもよい。あるいはベクトル生成範囲は、特徴点ごとに異なっていてもよく、例えば各特徴点の近傍領域であってもよい。ベクトル生成範囲は、想定される位置ずれ量を含むように設定することが好ましい。ベクトル生成範囲を小さくすることにより、変位ベクトル生成処理に要する計算量を小さくすることができる。
また、上述の実施例では、特徴点ベクトル及び基準点ベクトルを2次元ベクトルとしているので変位ベクトルも2次元ベクトルであるが、これに限られない。上述のように特徴点ベクトル及び基準点ベクトルを3次元以上の次元を有するベクトルとした場合には、変位ベクトルもこれに等しい次元のベクトルとなる。
あるいは、位置ずれ量演算部は、追加された新たな次元に基づいて特徴点ベクトルを複数の特徴点ベクトル群に予備的に分類してから、各ベクトル群について変位ベクトル生成処理を実行してもよい。変位ベクトルの予備的分類は、各ベクトル群ごとに個別の分類空間で行う。例えば、実体特徴点と仮想特徴点とに分類し、基準点も同様に実体点と仮想点とに分類し、実体点と仮想点とでそれぞれ別々に変位ベクトル生成処理を実行してもよい。実体特徴点と仮想基準点とはそもそも対応するはずがないから、無駄な変位ベクトルを求めなくても済む。変位ベクトル分類処理は、実体特徴点の変位ベクトルと仮想特徴点の変位ベクトルとを共通のXY平面に分類する。このようにすれば、実体特徴点と仮想特徴点とを区別することなく一律に変位ベクトルを生成し分類した場合と同レベルの精度で位置ずれ量を求めることが可能である。
一実施形態においては、被検査体の検査装置は、被検査体を照明する照明光源と、照明された被検査体からの光を受けるセンサと、センサ出力に基づく被検査体の検査を制御するメイン制御ユニットと、を備えてもよい。検査装置は、被検査体からの光をセンサへと導く光学系と、センサと被検査体とを相対的に移動させる移動機構と、を備えてもよい。センサは撮像部であってもよい。
図7は、本発明の一実施形態に係る外観検査装置10の構成を模式的に示す図である。この装置は、被検査体の検査面をラインセンサで走査して画像を形成し、画像認識によって被検査体の部品実装状態等の合否を判定するものである。ラインセンサによる撮像ラインに対して垂直に走査ヘッドを駆動することで順次ラインごとの画像が得られ、走査ヘッドの一次元運動で検査が完了する。
図7のごとく、外観検査装置10は、メインユニット12と試験ユニット14を備える。試験ユニット14の下部には支持台22が設けられ、被検査体である基板1が把持される。支持台22にはコンベアが設けられており、被検査体である基板1が把持された状態で、例えば、他の工程から一定の速度で流れてくるようになっている。試験ユニット14の上部には、走査ヘッド16と、それを駆動するステッピングモータ20と、走査ヘッド16を支持するリニアガイド等のガイド18が設けられている。
走査ヘッド16は照明ユニット30、レンズ32およびラインセンサ34を有する。これらの部材はフレーム36上に固定されている。照明ユニット30は、後述の落射照明源、側方照明源、ハーフミラーなどを内蔵する。基板1から垂直上方への反射光はミラーでレンズ32へ導かれ、レンズ32を通過した後、一次元CCDセンサであるラインセンサ34へ入力される。ラインセンサ34はライン単位に基板1を撮像してその画像データ54を出力する。
ラインセンサ34は、それぞれがRGB3色のいずれかに対応した赤色撮像素子列、緑色撮像素子列、青色撮像素子列とからなる。これら素子列は5000個〜10000個の撮像素子が配置されて構成される。赤色撮像素子列は、赤色成分を抽出する赤色カラーフィルタがその入射面に設けられる。同様に、緑色撮像素子列と青色撮像素子列の入射面に、それぞれ緑色成分を抽出する緑色カラーフィルタと青色成分を抽出する青色カラーフィルタとが設けられる。よって、ラインセンサ34は、赤成分画像、青成分画像、及び緑成分画像をメインユニット12に出力する。
これらRGB3色の画像には、各色の撮像素子の配置に起因してわずかな位置ズレが生じる場合がある。この位置ズレを解消するための位置補正をしながら合成することによって、ズレのない検査用カラー画像を生成してもよい。RGB3色の画像の位置補正および合成は、ラインセンサ34からメモリ44へ取り込む際にメモリ制御ユニットによって実行してもよいし、RGB3色の画像を別個にメモリ44へ取り込んでおき、後に解析ユニット46によって位置補正および合成を実行してもよい。また、解析ユニット46は、RGB3色の画像のいずれかを検査用画像として選択してもよい。
試験ユニット14には、検査前の待機状態における待機位置にある走査ヘッド16と対向する位置にシェーディング補正用の基準プレート60が設けられている。基準プレート60は、基準プレート60の位置を調整する位置調整機構(図示せず)に接続されている。基準プレート60は、蛍光増白剤を含む樹脂製の白色の板状部材である。基準プレート60に代えて、蛍光増白剤を含む樹脂製の白色シートであってもよい。
メインユニット12は、本装置全体を統括的に制御するもので、ハードウエアとしては、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエアとしてはメモリにロードされたコーティング検査機能のあるプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
メインユニット12のヘッド制御ユニット40はまず、照明制御クロック50(以下、同期信号ともいう)を照明ユニット30へ供給し、1ライン毎に落射照明と側方照明とを交互に切り替えて点灯させる。ヘッド制御ユニット40はさらに、モータ制御信号52をモータ20へ、試験開始信号56をメモリ制御ユニット42へそれぞれ出力する。モータ制御信号52によってモータ20のステップ制御がなされ、検査の開始に際し、走査ヘッド16が基板1の端部へ移動する。以下、この位置を「スタート位置」という。以降、1ライン撮像するたびにモータ制御信号52によって走査ヘッド16が1ライン分進行する。一方、試験開始信号56を参照し、メモリ制御ユニット42はメモリ44への画像データ54の書込を制御し、以降、画像データ54がライン単位で記録されていく。画像データ54は、落射照明で撮像されたものと、側方照明で撮像されたものとが1ライン毎に選択的に入力され、全ラインの撮像が終わると、メモリ44内には、落射照明で撮像された画像と、側方照明で撮像された画像とが形成される。
メインユニット12は、例えば待機状態においてシェーディング補正をする。待機状態においては外観検査装置10に基板1は設けられていない。メインユニット12のヘッド制御ユニット40は、シェーディング補正をするとき、モータ制御信号52によってモータ20を制御して走査ヘッド16を待機位置に維持する。ヘッド制御ユニット40は、照明制御クロック50を照明ユニット30へ出力し、シェーディング補正のための点灯状態を制御する。メインユニット12は、それぞれの光源で基準プレート60を照明したときに得られる反射光の輝度が予め設定された基準輝度となるようシェーディング補正値を生成する。シェーディング補正は、ラインセンサ34のRGBの色成分それぞれについて行う。
なお、メモリ44の内部構成、メモリ44内の画像データ54の配置については設計上の自由度があり、いろいろな構成が可能である。たとえば、メモリ44内に、複数の画像を個別に格納するための独立した2つの記憶領域が設けられ、メモリ制御ユニット42は、1ライン毎に各記憶領域に分けて画像データ54が個別に格納されるように制御してもよい。あるいは、メモリ44内には、複数の画像を格納するための単一の記憶領域が設けられ、メモリ制御ユニット42は、その単一の記憶領域に画像データ54が1ラインずつ交互に格納されるように制御してもよい。
解析ユニット46は、走査と並行して、または走査完了後にメモリ44から画像データを読み出し、先に得られたシェーディング補正値を加味し、判定基準記憶部48に予め記録された判定基準に照らして、検査項目ごとに合否を判断する。検査項目としては例えば、部品の位置ずれ、欠品、ハンダのヌレ、ハンダブリッジの有無、実装部品の間違い、極性の反転、基板表面の汚れやキズの有無などがある。解析ユニット46はさらに、各検査項目について基板上の位置を特定してもよい。判定基準記憶部48には予め合否に関する判断基準または基準画像が記録されている。解析ユニット46は、実際にラインセンサ34で取得された画像にそれらの基準または画像を適用して合否判定を行う。あるいは、解析ユニット46は、実際に撮像した画像を処理して作成した検査画像に判定基準を適用して合否判定を行う。
図8は試験ユニット14の斜視図、図9は試験ユニット14を撮像ラインの方向110(以下、単に撮像ライン方向と呼ぶ)から見た模式図である。図8または図9に示した状態で1ライン分の画像データが取り込まれると、走査ヘッド16はガイド18(図7参照)によって駆動方向114へ1ライン分送り出される。以降同様の処理を繰り返すことにより、基板1全面にわたる画像データが取得される。
照明ユニット30は落射照明源100と側方照明源102を有し、これらがハーフミラー108を取り囲んでいる。落射照明源100とハーフミラー108にはレンチキュラーシート106が間挿され、落射光はレンチキュラーシート106、ハーフミラー108を通過して基板1の検査面へ入射角がほぼゼロで投じられる。側方照明源102の下にはアクリルシート104が設けられる。この実施の形態では落射照明源100に幅をもたせており、基板1が反ったときでも入射角がゼロになるような落射光成分が存在するよう配慮している。
アクリルシート104は、側方照明源102からの側方光を拡散する。側方照明源102は点光源であるLEDの集合体であるため、拡散作用がないと、スポット的な光が画像データへ写り込んで検査精度に悪影響を及ぼす懸念がある。一方、レンチキュラーシート106は、撮像ライン方向110について落射光を基板1に垂直な成分に絞り込むよう作用する。なお、落射光に関する拡散作用はレンチキュラーシート106によって実現される。
図9のごとく、落射照明源100は中央からふたつのサブ基板100a、100bに分かれ、それぞれ撮像ライン方向110にLED(発光ダイオード)群をもつ。落射照明源100は緑色LED群からなる。これらのサブ基板100a、100bは微妙に内側を向け合う形で接続され、それぞれのLED群が効率的に検査中のライン112へ落射光を投ずる配置とされている。
一方、ふたつの側方照明源102は、3列のLED群をもつ高側方照明源102aと、1列のLED群をもつ低側方照明源102bとを有し、落射照明源100同様、ライン112へ効率的に側方光を投ずるよう傾斜がつけられている。高側方照明源102aは白色LED群からなり、低側方照明源102bは青色LED群からなる。高側方照明源102aよりも低側方照明源102bのほうが、より大きい入射角(入射光線と入射点での法線とがなす角度)で照明光をライン112に照射する。ライン112からの反射光はハーフミラー108で反射し、レンズ32へ向けられる。これを図8で示せば、落射照明源100内のある点Pからの落射光L1は基板1上の点Q付近で反射し、反射光L2がハーフミラー108で再度反射し、その反射光L3がレンズ32へ入射する。なお、落射照明源100、高側方照明源102a、及び低側方照明源102bは、それぞれ独立に点灯制御可能なよう、図示しない電源が別系統になっている。
また、照明ユニット30は、基板1に平行な面内で落射照明源100が撮像ライン方向110と任意の交差角度をなすように、図示される標準位置から落射照明源100を回転または移動させる駆動機構(図示せず)を備えてもよい。同様に、照明ユニット30は、基板1に平行な面内で側方照明源102が撮像ライン方向110と任意の交差角度をなすように側方照明源102を回転または移動させる駆動機構(図示せず)を備えてもよい。複数の角度で照明して撮像することにより、照明の当たらない死角を減らすことができる。なお、ミラー108等の付随する光学系、及びラインセンサ34等の角度または位置を変更する駆動機構を更に備えてもよく、落射照明源100または側方照明源102の交差角度を標準位置から変更したときは、ミラー108等の付随する光学系、及びラインセンサ34等もこの移動機構により対応する角度または位置に移動させてもよい。
図10は、本発明の一実施形態に係る解析ユニット46の構成の一例を示す図である。解析ユニット46は、検査部70及び位置補正部72を含んで構成される。検査部70は、判定基準記憶部48に予め記録された判定基準と検査画像とに基づいて、検査項目ごとに合否を判断する。また、不合格の場合、検査部70は、検出された異常の位置を検査画像上において特定してもよい。位置補正部72は、メモリ44から画像データを読み出して検査画像を合成し、当該画像の位置を補正する。位置補正部72は、検査画像の基準位置からのずれ量が許容範囲内にある場合には位置補正をしなくてもよい。位置補正部72は、検査画像の基準位置からのずれ量が許容範囲を超えかつ位置補正可能範囲内にある場合に位置補正をしてもよい。位置補正部72は、位置を補正した検査画像を検査部70に与える。なお解析ユニット46は、検査画像の基準位置からのずれ量が位置補正可能範囲を超える場合には被検査体の撮像をやり直してもよい。
位置補正部72は、特徴点生成部74、位置ずれ量演算部76、位置補正範囲設定部78、及び画像合成部80を含んで構成される。特徴点生成部74は、パターン認識部82、実体特徴点生成部84、仮想特徴点生成部86、及び特徴点選択部88を含んで構成される。位置ずれ量演算部76は、ベクトル生成部90及びベクトル分類部92を含んで構成される。
図11は、本発明の一実施形態に係る外観検査装置10の撮像処理を示すフローチャートである。落射照明の点灯と側方照明の点灯を同期信号に合わせて選択して行い、基板1上を走査ヘッド16が一回移動する間に落射照明による画像と側方照明による画像の両方の画像を個別かつ一度に形成する。具体的には、緑色LED照明による単色画像、白色LED照明によるカラー画像、及び青色LED照明による単色画像が一度に得られる。なお、外観検査装置10による画像解像度は十分に高く、画像を数ラインおきに取得しても十分検査目的に耐えるとする。
まず、第1モードである落射照明モードが選択され、走査ヘッド16がスタート位置へ送られる(S50)。落射照明モードの選択に伴い、ヘッド制御ユニット40によって落射照明源100が点灯状態、高側方照明源102a及び低側方照明源102bが消灯状態におかれる。落射照明のもと、ラインセンサ34により第1ラインの撮像が実施され(S52)、その画像データ54がメモリ44へ書き込まれる(S54)。
つづいて、ヘッド制御ユニット40により走査ヘッド16が駆動方向へ1ライン分送られ(S56)、予め入力されていた基板1に関する情報に従い、その位置が走査のエンド位置、すなわち基板1の終了端であるか否かが判定される(S58)。エンド位置でなければ(S58のN)、高側方照明モードへ切り替えが行われる(S60)。高側方照明モードの選択に伴い、ヘッド制御ユニット40によって側方照明源102のうち高側方照明源102aが点灯状態、落射照明源100及び低側方照明源102bが消灯状態におかれる。高側方照明のもと、ラインセンサ34による第2ラインの撮像、メモリ44への画像データ54の書込、走査ヘッド16の進行(S52、S54、S56)が行われる。
さらに同様にして、ヘッド制御ユニット40により走査ヘッド16が駆動方向へ1ライン分送られ(S56)、その位置が走査のエンド位置であるか否かが判定される(S58)。エンド位置でなければ(S58のN)、低側方照明モードへ切り替えが行われる(S60)。低側方照明モードの選択に伴い、ヘッド制御ユニット40によって側方照明源102のうち低側方照明源102bが点灯状態、落射照明源100及び高側方照明源102aが消灯状態におかれる。低側方照明のもと、ラインセンサ34による第3ラインの撮像、メモリ44への画像データ54の書込、走査ヘッド16の進行(S52、S54、S56)が行われる。
走査ヘッド16がエンド位置にくるまでS52からS60の処理は繰り返され、複数の画像が形成される。3N+1番目(N=0,1,2,・・・)のラインの画像は、落射光によって形成される画像であり、3N+2番目(N=0,1,2,・・・)のラインの画像は、高側方照明によって形成される画像であり、3N番目(N=1,2,・・・)のラインの画像は、低側方照明によって形成される画像である。このインターリーブ方式によれば、走査ヘッド下に基板1を1度通過させることにより複数画像を取得でき、検査時間の短縮が実現される。走査ヘッド16がエンド位置にくれば(S58のY)、撮像処理は終了する。支持台22のコンベア上を流れてくる後続の基板1に対する撮像処理を続ける場合には、その基板1に対して上述の撮像処理を繰り返す。このようにして順次流れてくる基板1を連続的に撮像することができる。
図12は、本発明の一実施形態に係る検査処理を示すフローチャートである。解析ユニット46は、図12に示される処理を図11に示される被検査体の撮像処理と並列に実行する。このため、本実施形態においては、被検査体の撮像が完了する前に検査処理を開始することができる。解析ユニット46の画像合成部80は、取得済みのライン画像を合成して被検査体の画像を作成する(S70)。被検査体の撮像処理中である場合には、画像合成部80は、取得済みのライン画像から被検査体画像を部分的に作成する。撮像処理が完了している場合には、画像合成部80は、被検査体画像の全体を作成する。画像合成部80は、検査項目ごとに異なる照明光による画像を選択して作成してもよい。
解析ユニット46の位置補正部72は、作成された画像の位置補正を行う(S72)。位置補正処理は例えば、図2乃至図6を参照して説明した位置補正処理である。位置補正部72は、被検査体画像の局所検査領域の全体またはその一部を位置補正範囲に設定し、位置補正範囲に特徴点を生成して基準点との位置ずれ量を演算する。位置補正部72は、演算された位置ずれ量に基づく補正量だけ局所検査領域の位置を補正する。
解析ユニット46の検査部70は、位置が補正された局所検査領域に対し各検査項目について検査する(S74)。検査の合否判定基準その他の情報は判定基準記憶部48から読み出され、利用される。検査が終わると結果が表示され(S76)、一連の処理を終える。合否は表示だけでなくメモリ44へ記録してもよい。解析ユニット46は、未検査の別の局所検査領域に対して同様に検査処理を実行する。解析ユニット46は、すべての局所検査領域の検査が完了するまで上述の検査処理を繰り返す。
本発明の一実施形態によれば、比較的高い位置精度で形成されている電子基板の配線パターンから特徴点を生成することにより、局所的な位置補正をすることができる。特に、配線パターンが存在しない領域にさえ特徴点を仮想的に生成することにより、位置特定の基準となりうる実在の形状またはマークが存在しない局所的領域の位置補正も可能となる。また、基板上の実在の形状またはマークの配置にとらわれることなく特徴点分布を調整して位置補正精度を高めることもできる。
また、典型的に基板の4隅に形成されている従来の基準マークの撮像を待たずに、撮像済みの配線パターンを利用して速やかに位置補正をすることができる。これに伴い、検査処理等の後続の処理も迅速に開始することができるので、装置のスループットを向上することができる。