本発明の液晶ディスプレイは、液晶パネルの画像表示部表面に、少なくともカチオン重合性樹脂組成物を用いて形成される層(I)と、保護層(II)とが積層されたものであって、前記カチオン重合性樹脂組成物が3個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオール(A)とグリシジル基含有化合物(B)と重合開始剤(C)とを含有するものであることを特徴とする。
ここで、本発明でいう液晶ディスプレイは、液晶パネルを構成する液晶物質の配向を調整することによって、バックライト等からの光の透過を調整し、画像表示部に所望の画像を表示することが可能なものであって、例えばバックライト等の光源と、カラーフィルターと、液晶パネルと、その表面に積層される少なくとも層(I)と層(II)とから構成される。
本発明の液晶ディスプレイの大きさや形状は特に制限されないが、屋外で使用する場合であっても良好な視認性を維持でき、かつ落下等によって液晶ディスプレイに強い衝撃が加わった場合であっても良好な耐衝撃性を維持できることから、例えば携帯型無線機や携帯型テレビジョン受信機等の比較的小型のディスプレイに好適に適用できる。
はじめに、前記液晶ディスプレイを構成する液晶パネルの画像表示部表面に積層される層(I)及びそれを構成するカチオン重合性樹脂組成物について説明する。
前記層(I)は、液晶ディスプレイに優れた視認性と耐衝撃性とを付与するうえで重要である。また、前記層(I)は、カチオン重合反応によって比較的均一に硬化が進行しているため、前記液晶パネルによって表示された画像の鮮明さを低下させない。
前記層(I)は、液晶ディスプレイの使用される分野等によって異なるが、液晶ディスプレイを薄型にするうえで、概ね10〜500μmの厚みであることが好ましく、100〜500μmの厚みであることが好ましい。
前記層(I)は、3個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオール(A)、グリシジル基含有化合物(B)、重合開始剤(C)、及び必要に応じてその他の添加剤等を含有するカチオン重合性樹脂組成物を用いて形成することができる。
前記カチオン重合性樹脂組成物は、紫外線が照射されることによって前記ポリエーテルポリオール(A)の有する水酸基と前記グリシジル基含有化合物(B)の有するグリシジル基とのカチオン重合を進行する。しかし、前記カチオン重合は、常温下では比較的ゆっくりと進行するため、カチオン重合の速度を飛躍的に向上させ、本発明の液晶ディスプレイの生産効率を向上させる観点から、紫外線を照射した後に、概ね40〜80℃程度の温度で加熱することが好ましい。
前記3個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオール(A)は、前記グリシジル基含有化合物(B)の有するグリシジル基との反応に寄与する水酸基を3個以上有する。前記水酸基は、概ね30個以下であることが好ましく、3〜20個であることがより好ましい。
前記ポリエーテルポリオール(A)としては、300〜8000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、なかでも300〜2000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することがより好ましい。
前記3個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオール(A)としては、例えば分子中に活性水素含有基を3個以上有する反応開始剤とアルキレンオキサイドとを反応させて得られるポリエーテルポリオールや、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオールを使用することができる。
はじめに分子中に活性水素含有基を3個以上有する反応開始剤とアルキレンオキサイドとを反応させて得られるポリエーテルポリオールについて説明する。
前記ポリエーテルポリオールの製造に使用可能な前記反応開始剤としては、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、メチルグルコシド、ソルビトール、蔗糖、蔗糖アミン化合物等を使用することができ、これらを単独使用または2種以上を併用してもよい。前記反応開始剤としては、特にグリセリンやトリメチロールプロパンやソルビトールを使用することがより好ましい。
前記アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を使用することができ、これらを単独使用または2種以上を併用してもよい。なかでもプロピレンオキサイドを使用することが好ましい。
前記反応開始剤とアルキレンオキシドとの反応により得られるポリエーテルポリオールの具体例としては、例えばグリセリンやトリメチロールプロパンやソルビトール等の反応開始剤に、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオールを使用することが好ましい。
また、前記反応開始剤とアルキレンオキシドとの反応により得られるポリエーテルポリオールとしては、300〜8000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、特に300〜2000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましい。
次に、前記ポリエーテルポリオール(A)として使用可能なヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオールについて説明する。なお、ここでいう「多分岐」は、分子鎖が2以上に分岐した先で更に2以上に分岐した分子構造を意味する。
前記ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)としては、例えば、下記一般式(1)で表される構造を有するものを使用することができる。
(一般式(1)中のR1は、メチレン基、エチレン基またはプロピレン基を表し、R2は、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシアルキル基、または炭素原子数1〜6のヒドロキシアルキル基を表す。)
前記一般式(1)中のR2を構成し得る炭素原子数1〜8のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、及び2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
また、前記一般式(1)中のR2を構成し得る炭素原子数1〜5のアルコキシアルキル基の例としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基等が挙げられる。
また、前記一般式(1)中のR2を構成し得る炭素原子数1〜6のヒドロキシアルキル基の例としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、及びヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
前記ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)としては、慣性半径がより小さく、多分岐ポリエーテルポリオールの低粘度、液状化に効果的であるとの観点より、一般式(1)中のR1がメチレン基であり、かつ、R2が炭素原子数1〜7のアルキル基である化合物を使用することが好ましく、なかでも3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン、及び3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタンを使用することがより好ましい。
また、上記ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と開環重合反応する1官能性エポキシ化合物(a2)としては、例えば下記一般式(2)で示される様な化合物を使用することができる。
(一般式(2)中、R3は有機残基を表す。)
前記式(2)中のR3は、2価の有機残基等を介してエポキシ基を形成する炭素に結合して環を形成していても良く、また、前記一般式(1)中のR2として例示したものと同様のものであっても良い。
前記1官能性エポキシ化合物(a2)としては、より具体的には、オレフィンエポキサイド、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物等を使用することができる。
前記オレフィンエポキサイドとしては、特に限定されないが、具体例としては、プロピレンオキサイド、1−ブテンオキサイド、1−ペンテンオキサイド、1−ヘキセンオキサイド、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシドデカン、シクロヘキセンオキシド、シクロオクテンオキシド、シクロドデセンオキシド、スチレンオキシド、及び、フッ素原子数1〜18のフロロアルキルエポキシド等を使用することができる。
前記グリシジルエーテル化合物としては、特に限定されないが、具体例としては、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、n−プロピルグリシジルエーテル、i−プロピルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、i−ブチルグリシジルエーテル、n−ペンチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシル−グリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、アリールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2−メチルフェニルグリシジルエーテル、4−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、4−ノニルフェニルグリシジルエーテル、4−メトキシフェニルグリシジルエーテル、及び、1〜18のフッ素原子数を有するフロロアルキルグリシジルエーテル等を使用することができる。
前記グリシジルエステル化合物としては、特に限定されないが、具体例としては、グリシジルアセテート、グリシジルプロピオネート、グリシジルブチレート、グリシジルメタクリレート、及びグリシジルベンゾエート等を使用することができる。
前記1官能性エポキシ化合物(a2)としては、多分岐ポリエーテルポリオールの低粘度、液状化に効果的であるとの観点よりオレフィンエポキサイドを使用することが好ましく、なかでもプロピレンオキサイド、1−ブテンオキサイド、1−ペンテンオキサイド、または1−ヘキセンオキサイドを使用することがより好ましい。
前記多分岐ポリエーテルポリオールは、例えば前記ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と前記1官能性エポキシ化合物(a2)との開環重合反応により製造することができる。かかる製造方法としては、例えば以下の方法が挙げられるが、特に限定される訳ではない。
(方法)
ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを、モル基準で、[ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)/1官能性エポキシ化合物(a2)]=1/1〜1/10、好ましくは1/1〜1/6、より好ましくは1/1〜1/3となる割合で混合する。
前記で得られた混合物と、パーオキサイドフリーの有機溶剤、例えば、ジエチルエーテル、ジ−i−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−i−ブチルエーテル、ジ−t−ブチルエーテル、t−アミルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルまたはジオキソランとを、[{(a1)+(a2)}/有機溶剤]の質量比が、1/1〜1/5、好ましくは1/1.5〜1/4、更に好ましくは1/1.5〜1/2.5となる割合で混合、溶解したものを原料溶液とする。
次に、重合開始剤、またはその有機溶剤溶液を0.1〜1時間、好ましくは0.3〜0.8時間、より好ましくは0.3〜0.5時間かけて、−10℃〜−15℃に冷却された原料溶液中に攪拌しながら滴下する。
前記重合開始剤は、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)との全モル量に対して好ましくは0.01〜1.0モル%、より好ましくは0.03〜0.7モル%、特に好ましくは0.05〜0.5モル%なる割合で使用できる。
前記重合開始剤としては、特に問題の無い限り如何なるものも使用できる。例えば、H2SO4、HCl、HBF4、HPF6、HSbF6、HAsF6、p−トルエンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸などのブロンステッド酸、BF3、AlCl3、TiCl4、SnCl4などのルイス酸、トリアリールスルフォニウム−ヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルフォニウム−アンチモネート、ジアリールイオドニウム−ヘキサフルオロホスフェート、ジアリールイオドニウム−アンチモネート、N−ベンジルピリジニウム−ヘキサフルオロホスフェート、N−ベンジルピリジニウム−アンチモネートなどのオニウム塩化合物、トリフェニルカルボニウム−テトラフルオロボレート、トリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロアンチモネートなどのトリフェニルカルボニウム塩、p−トルエンスルホニルクロライド、メタンスルホニルクロライド、トリフルオロメタンスルホニルクロライド、p−トルエンスルホン酸無水物、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、p−トルエンスルホン酸メチルエステル、p−トルエンスルホン酸エチルエステル、メタンスルホン酸メチルエステル、トリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステルなどのアルキル化剤等を挙げることができる。
前記重合開始剤としては、反応性を向上する観点から、HPF6、HSbF6、HAsF6、トリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロホスフェート、BF3を使用することが好ましく、なかでもHPF6、トリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロホスフェート、及びBF3を使用することがより好ましい。
前記重合開始剤を有機溶剤溶液として使用する場合の有機溶剤としては、パーオキサイドフリーの有機溶剤、例えば、ジエチルエーテル、ジ−i−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−i−ブチルエーテル、ジ−t−ブチルエーテル、t−アミルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルまたはジオキソランを使用することができる。
また、前記重合開始剤の有機溶剤溶液を使用する場合、反応性を向上する観点から、当該溶液中の重合開始剤の濃度は、1〜90質量%、好ましくは10〜75質量%、より好ましくは25〜65質量%である。
滴下終了後、この重合開始剤を含む原料溶液が25℃になるまで攪拌し、次にリフラックスする温度まで加熱し、0.5〜20時間かけてヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)との大部分が多分岐ポリエーテルポリオールに転化するまで重合反応を行うことによって重合体溶液を得る。なお、前記ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)及び前記エポキシ化合物(a2)の、多分岐ポリエーテルポリオールへの転化率は、ガスクロマトグラフィー、核磁気共鳴装置、赤外吸収分光分析器を用いることによって確認することができる。
前記開環重合反応終了後、得られた反応溶液中に残存する重合開始剤は、同当量の水酸化アルカリ水溶液やナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシドを用いて失活させる。その後、前記反応溶液を濾過し、溶媒を用いて多分岐ポリエーテルポリオールを抽出した後、減圧下で有機溶剤を留去することによって、多分岐ポリエーテルポリオールを得ることができる。
また、前記多分岐ポリエーテルポリオールの具体的構造には、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環重合反応させて得られる種々の構造が含まれ得る。
具体例を挙げれば、例えば、下記一般式(1)で表されるヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、下記一般式(2)で表される1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環反応させた場合には、以下の様な構造単位が含まれる。即ち下記の構造で表される、繰り返し単位、及び、末端構造単位、の中から適宜選択される構造単位によって、前記多分岐ポリエーテルポリオールは構成され得る。
(一般式(1)中のR1は、メチレン基、エチレン基またはプロピレン基を表し、R2は、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシアルキル基、または炭素原子数1〜6のヒドロキシアルキル基を表す。)
(一般式(2)中、R3は有機残基を表す。またR3は2価の有機残基などを介してエポキシ基を形成する炭素に結合して環を形成していても良い。またR3はR2の例から選択される基であっても良い。)
ここで、前記OR1〜OR3、OE1、OE2、ER1、EE1、及びEE2の各構造単位の実線部分は当該構造単位内の単結合を示し、破線部分は、その構造単位とその他の構造単位と間でエーテル結合を形成する単結合を示す。
また、前記OR1〜OR3、OE1、及びOE2は、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)に起因する構造単位であって、そのうちOR1〜OR3は繰り返し単位を表し、OE1及びOE2は多分岐ポリエーテルポリオールの末端構造単位を表す。
また、ER1、EE1、及びEE2は、前記1官能性エポキシ化合物(a2)に起因する構造単位であって、そのうちER1は繰り返し単位を表し、EE1及びEE2は多分岐ポリエーテルポリオールの末端構造単位を表す。
上記多分岐ポリエーテルポリオールは、前記OR1〜OR3及びER1から選択される繰り返し単位によって、連続する多分岐構造が形成され得る。そしてその多分岐構造の末端に前記OE1、OE2、EE1、及びEE2から選択される末端構造単位を有することができる。尚、これらの繰り返し単位及び末端構造単位は、特に問題の無い限りどのような構成で存在しても良く、またどのような割合や量で存在していても良い。例えば、繰り返し単位及び末端構造単位はランダムに存在していても良いし、OR1〜OR3が分子構造の中心部分を構成し、末端に前記末端構造単位を有するものであって良い。
また、前記多分岐ポリエーテルポリオールは、その分子構造中に1級水酸基及び2級水酸基を有することが好ましい。とりわけ、2級水酸基に起因して、本発明で使用するカチオン重合性樹脂組成物の硬化性及び基材に対する密着性を一層向上することが可能となる。
また、前記多分岐ポリエーテルポリオールの分子構造は、多分岐に起因して球状形状や樹枝形状等の三次元的な構造を有する。このとき、水酸基は、前記形状の外側を向いて存在すると推定される。したがって、2級水酸基の存在によって反応速度が低下した場合であっても、最終的には多分岐ポリエーテルポリオール中に存在するほとんどの水酸基が反応に十分に関与できるため、本発明で使用するカチオン重合性樹脂組成物硬化性及び基材に対する密着性を一層向上することが可能となる。
このように、本発明で使用するカチオン重合性樹脂組成物の硬化性及び基材に対する密着性を一層向上する観点から、前記多分岐ポリエーテルポリオール接着剤中の前記2級水酸基の数は、多分岐ポリエーテルポリオールが有する1級水酸基(H1)と2級水酸基(H2)との合計水酸基の数に対して、20〜70%であることが好ましく、25〜60%であることがより好ましい。
前記多分岐ポリエーテルポリオールの数平均分子量(Mn)は、1000〜4000の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、1300〜3500がより好ましい。
また、前記多分岐ポリエーテルポリオールの水酸基価は、好ましくは150〜350mg・KOH/g、より好ましくは170〜330mg・KOH/gである。
かかる範囲の数平均分子量及び水酸基価を有する多分岐ポリエーテルポリオールは、常温で液状であり、良好な流動性を示す為、グリシジル基含有化合物(B)、酸発生剤(C)等との配合が容易であり、また該多分岐ポリエーテルポリオールを使用したカチオン重合性樹脂組成物は、前記液晶パネルの画像表示部表面または保護基材に塗布し易く、濡れ性に優れる。
尚、前記した液状とは、室温で流動性を有することを意味し、具体的には、配合の容易さの観点よりBH型回転粘度計による粘度が、100Pa・s(25℃)以下である状態をいう。
また、前記ポリエーテルポリオール(A)としては、テトラヒドロフランの開環重合により得られるポリテトラメチレングリコールや、ウレタン変性ポリエーテルポリオールや、ポリエーテルエステルコポリマーポリオールや、各種ポリオール中でアクリロニトリル及びスチレンモノマー等のビニル基含有モノマーをグラフト重合して得られるポリエーテルポリオール(一般に、ポリマーポリオールといわれる。)や、各種ポリエーテル中にポリウレアが安定分散したポリオール(一般にPHDポリオールといわれる。なお、PHDは、polyharnsstoff dispersionの略である。)を使用することもできる。これらを単独使用または2種以上を併用してもよい。
次に、本発明で使用するグリシジル基含有化合物(B)について説明する。
グリシジル基含有化合物(B)は、前記ポリエーテルポリオール(A)の有する水酸基とのカチオン重合反応を進行させ、硬化を十分に行ううえで重要である。また、本発明で使用するカチオン重合性樹脂組成物に適度なオープンタイムを付与し、該組成物に紫外線等を照射した後、液晶パネルと保護基材とを貼りあわせることを可能とするうえで重要である。
前記グリシジル基含有化合物(B)としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ジグリシジルオルトフタレート、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル、ビフェニルポリグリシジルエーテル、ナフタレンポリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールジグリシジルエーテル等を使用することができる。なかでも、硬化収縮による塗膜内部応力を緩和する化合物として、ジグリシジルエーテル化合物を使用することが好ましい。
また、必要に応じて、上記ポリグリシジルエーテル化合物に対して、更に、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エチレンオキサイド付加フェノールグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェノールグリシジルエーテル、エチレンオキサイド付加ラウリルアルコールグリシジルエーテル、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等の単官能グリシジルエーテル化合物を併用しても良い。
また、本発明で使用することができるグリシジルエーテル型のエポキシ化合物以外のカチオン重合性化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、リモネンジエポキシド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等の様なシクロヘキセンオキシド基を有する化合物、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(シクロヘキシロキシ)メチルオキセタン、1,3−ビス[(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ベンゼン、4、4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビフェニル、3−エチル−3−{[(3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン等の様なオキセタン環を有する化合物、エポキシ化ポリブタジエン等のビニル基を有するオリゴマーをエポキシ化した化合物等がある。
前記グリシジル基含有化合物(B)は、前記ポリエーテルポリオール(A)の有する水酸基と前記グリシジル基含有化合物(B)の有するグリシジル基との質量割合が、[(A)の有する水酸基/(B)の有するグリシジル基]=0.9以上となる割合で使用することが好ましく、1〜3の割合で使用することがより好ましい。グリシジル基含有化合物(B)を前記割合で使用することによって、紫外線を照射した後のカチオン重合性樹脂組成物を加熱し硬化を進行させる際の温度を、従来よりも低い、概ね40〜70℃程度に設定することができる。
次に、本発明で使用する重合開始剤(C)について説明する。
本発明で使用する重合開始剤(C)は、紫外線が照射された際に酸成分を発生させ、前記ポリエーテルポリオール(A)と前記グリシジル基含有化合物(B)とのカチオン重合を開始させる。
前記重合開始剤(C)としては特に制限なく必要に応じて選択できるが、例えば、カチオン部分が、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム、芳香族アンモニウム、チオキサントニウム、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄カチオン、及びチアンスレニウムであって、アニオン部分が、BF4 −、PF6 −、SbF6 −、[BX4]−(但し、Xは、フェニル基の有する水素原子の2個以上が、フッ素原子またはトリフルオロメチル基によって置換された官能基を示す。)で構成される、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族アンモニウム塩、チオキサントニウム塩、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄塩、等を単独で使用または2種以上を併用することができる。
前記芳香族スルホニウム塩としては、例えばビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム テトラフルオロボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
また、前記芳香族ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウム テトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム テトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム テトラフルオロボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
また、前記芳香族ジアゾニウム塩としては、例えばフェニルジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウム テトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
また、前記芳香族アンモニウム塩としては、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム ヘキサフルオロアンチモネート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム テトラフルオロボレート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウム テトラフルオロボレート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
また、前記チオキサントニウム塩としては、S−ビフェニル 2−イソプロピル チオキサントニウム ヘキサフルオロホスフェート等を使用することができる。
また、前記(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄塩としては、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄(II)ヘキサフルオロアンチモネート、2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄(II)テトラフルオロボレート、2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
前記重合開始剤としては、例えば、CPI−100P、CPI−200K、CPI−101A(以上、サンアプロ(株)製)、サイラキュア光硬化開始剤UVI−6990、サイラキュア光硬化開始剤UVI−6992、サイラキュア光硬化開始剤UVI−6976(以上、ダウ・ケミカル日本(株)製)、アデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172(以上、旭電化工業(株)製)、CI−5102、CI−2855(以上、日本曹達(株)製)、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L、サンエイドSI−110L、サンエイドSI−180L、サンエイドSI−110、サンエイドSI−145、サンエイドSI−150、サンエイドSI−160、サンエイドSI−180(以上、三新化学工業(株)製)、エサキュア1064、エサキュア1187(以上、ランベルティ社製)、オムニキャット432、オムニキャット440、オムニキャット445、オムニキャット550、オムニキャット650、オムニキャットBL−550(アイジーエム レジン社製)、イルガキュア250(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、ロードシル フォトイニシエーター2074(RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074(ローディア・ジャパン(株)製)等が市販されている。
前記重合開始剤の使用量は、良好な硬化性と耐光安定性を維持するの点からできるだけ少ないことが好ましく、具体的には、ポリエーテルポリオール(A)100質量部に対して、0.2〜5質量部が好ましく、0.5〜3質量部がより好ましい。
本発明で使用するカチオン重合性樹脂組成物は、例えば密閉型プラネタリーミキサー等を用いて前記ポリエーテルポリオール(A)と、グリシジル基含有化合物(B)と、必要に応じて各種添加剤等とを均一になるまで混合、攪拌し、次いで、前記で得られた混合物と前記重合開始剤(C)とを混合、攪拌することによって製造することができる。
本発明で使用するカチオン重合性樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、各種の添加剤を含んでいてもよい。
次に、本発明の液晶ディスプレイを構成する保護層(II)について説明する。
前記保護層(II)は、本発明の液晶ディスプレイを構成する液晶パネルの画像表示部が外的な衝撃によって破損することを防ぐことを目的として設けられる。前記保護層(II)としては、液晶パネルに表示される画像等を視認できる程度に透明なガラス基材やプラスチック基材等を使用することが好ましい。なお、前記基材の表面は着色されていても良い。
前記プラスチック基材としては、一般に使用されるアクリル樹脂等からなる基材やPC(ポリカーボネート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)等からなるからなる基材を使用することができる。
次に、本発明で使用する液晶パネルについて説明する。
本発明で使用する液晶パネルは、所望の画像や画像を表示することが可能なものであれば特に限定されず、一般に使用されるものを使用することができる。
前記液晶パネルとしては、例えば液晶物質が、ガラスやプラスチック等からなる透明な基板間に封止されたものの片面又は両面に、偏光板や偏光フィルタ、電極、及び必要に応じて視野角補償フィルム等の各種機能性付与基材が積層されたものを使用することができる。
前記層(I)と前記保護層(II)は、例えば前記液晶パネルを構成する偏光板や偏光フィルタ等の表面に直接、積層されることが好ましく、なかでも偏光板の表面に積層されることが好ましい。
偏光板としては、一般にポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化物等の親水性高分子化合物からなるプラスチック基材に、ヨウ素や二色性染料等の二色性材料を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等を使用することができる。
また、前記偏光板の表面には、必要に応じて、セルロースアセテート樹脂や、いわゆるシクロオレフィンポリマーといわれる樹脂からなる保護フィルムが貼付されていても良い。
前記液晶パネルの厚みについては、本発明の液晶ディスプレイを使用する分野や用途、求められる機能等に応じた厚みであれば良い。
次に、本発明の液晶ディスプレイの製造方法について説明する。
本発明の液晶ディスプレイを製造する方法としては、例えば前記液晶パネルの画像表示部表面に、常温で液状の前記カチオン重合性樹脂組成物を塗布し、該塗布面に紫外線を照射した後、該塗布面に保護層(II)を形成する前記基材載置し、貼りあわせたものを40〜80℃で加熱し、前記カチオン重合性樹脂組成物の硬化を進行させる方法がある。前記カチオン重合性樹脂組成物の塗布は、前記液晶パネルの画像表示部表面にある偏光板上に直接行ってもよく、また、該偏光板の表面にセルロースアセテート樹脂等からなる保護フィルムが貼付されている場合には、その表面に直接、行っても良い。
また、液晶ディスプレイを製造する方法としては、前記保護層(II)を形成する前記基材の表面に、常温で液状の前記カチオン重合性樹脂組成物を塗布し、該塗布面に紫外線を照射した後、該塗布面に前記液晶パネルの画像表示部表面を載置し、貼りあわせたものを40〜80℃で加熱し、前記カチオン重合性樹脂組成物の硬化を進行させる方法があってもよい。
前記液晶パネルの画像表示部表面や前記保護層(II)を形成する基材の表面に、前記カチオン重合性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えばオフセット印刷法、フレキソ印刷法、ロールコート法、グラビアコート法、カーテンフローコート法、バーコーター法等等が挙げられる。
前記カチオン重合性樹脂組成物の塗布量は、液晶ディスプレイを薄型化する観点から、概ね100〜300μm程度であることが好ましい。
次いで、前記カチオン重合性樹脂組成物の塗布面に紫外線を照射し、該組成物のカチオン重合を開始させる。
照射後、該照射面に前記液晶パネルの画像表示部表面または前記保護層(II)を形成する基材を載置し、例えば圧締する等して一定期間養生することによって、液晶パネルの画像表示部表面に、カチオン重合性樹脂組成物からなる層を介して保護層が形成された本発明の液晶ディスプレイを得ることができる。
また、前記カチオン重合性樹脂組成物は、紫外線照射のみであってもカチオン重合を進行させることができるが、重合速度を促進し、本発明の液晶ディスプレイの生産効率を向上する観点から、紫外線を照射し前記液晶パネル等を積層した後、40〜80℃で加熱することが好ましく、40〜70℃であることがより好ましい。
加熱温度が高すぎると液晶パネルを構成する偏光板の変形を引き起こし、鮮明な映像を表示することができなくなる場合があり、加熱温度が常温程度である場合には、液晶ディスプレイの生産効率を向上することは困難となる。
本発明で使用するカチオン重合性樹脂組成物であれば、前記偏光板をはじめとする液晶ディスプレイを構成する各種部品に悪影響を与えることなく、かつ液晶ディスプレイの生産効率を飛躍的に向上することが可能である。
また、本発明の液晶ディスプレイを製造する方法としては、前記した方法の他に、下記の方法を採用することもできる。例えば液晶パネルと保護層(II)とが予め一体化したものであって、その液晶パネルと保護層(II)との間に、一般にエアギャップといわれる空隙を有する液晶ディスプレイに対しては、前記空隙に前記カチオン重合性樹脂組成物を流し込んだ後、その流入口を封止し、次いで、前記保護層(II)上面から紫外線を照射し、更に40〜70℃の温度で加熱し前記カチオン重合性樹脂組成物の硬化を進行させる方法によって製造することもできる。
以下、本発明を実施例、及び比較例により、一層具体的に説明する。
<多分岐ポリエーテルポリオール(A−1)の合成>
リフラックスコンデンサー、マグネット式攪拌棒、温度計を具備した2リットル三口フラスコ中で、十分に乾燥した3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン348質量部(3モル)とプロピレンオキサイド348質量部(6モル)とを混合し、次いで、それらを過酸化物フリーの1リットルのジエチルエーテルに溶解した後、−14℃のアイスバスで冷却した。
次いで、開始剤としてHPF65.5質量部の60質量%水溶液を前記フラスコ内に10分で滴下した。フラスコ内の混合物は僅かに白濁した。
次いで、前記フラスコ内の混合物を室温で一晩反応させ、翌朝、透明な反応混合物を3時間還流した。
次いで、前記開始剤を、NaOCH39質量部の30質量%メタノール溶液を用いて失活させた。
開始剤失活後の反応混合物を濾過した後、減圧下、バス温度75℃で加熱し反応混合物中のジエチルエーテルを留去することによって多分岐ポリエーテルポリオール(A−1)667質量部を得た。収率89質量%であった。
この多分岐ポリエーテルポリオール(A−1)は、数平均分子量(Mn)=1,440、重量平均分子量(Mw)=3,350、水酸基価(OHV)=265mg・KOH/gであり、プロトンNMRから、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタンとプロピレンオキサイドとのモル比率が1:1.9であった。
また、その分子構造中には1級水酸基と2級水酸基の存在が確認され、全水酸基数に対する2級水酸基数の割合は、39.0%であった。
[調製例1]
密閉型プラネタリーミキサー中に、前記多分岐ポリエーテルポリオール(A−1)50.0質量部、EX−216L「シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)製、商標:デナコール、エポキシ基当量重量=150g」37.7質量部を仕込み、均一になるまで混合、攪拌した。
次に、CPI−200K「ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム塩のプロピレンカーボネート50質量%溶液、サンアプロ(株)製」の1.75質量部を混合、攪拌することで、カチオン重合性樹脂組成物を調製した。
[調製例2]
密閉型プラネタリーミキサー中に、前記多分岐ポリエーテルポリオール(A−1)50.0質量部、EX−214L「ブチレングリコールジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)製、商標:デナコール、エポキシ基当量重量=120g」の30.1質量部を仕込み、均一になるまで混合、攪拌した。
次に、CPI−200Kの1.6質量部を混合、攪拌することで、カチオン重合性樹脂組成物を調製した。
[調製例3]
密閉型プラネタリーミキサー中に、前記多分岐ポリエーテルポリオール(A−1)50.0質量部、EX−212L「1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)製、商標:デナコール、エポキシ基当量重量=135g」の33.9質量部を仕込み、均一になるまで混合、攪拌した。
次に、CPI−200Kの1.68質量部を混合、攪拌することで、カチオン重合性樹脂組成物を調製した。
[調製例4]
密閉型プラネタリーミキサー中に、前記多分岐ポリエーテルポリオール(A−1)50.0質量部、EX−216Lの42.8質量部を仕込み、均一になるまで混合、攪拌した。次に、
CPI−200Kの1.86質量部を混合、攪拌することで、カチオン重合性樹脂組成物を調製した。
[調製例5]
密閉型プラネタリーミキサー中に、前記多分岐ポリエーテルポリオール(A−1)50.0質量部、EX−216Lの51.4質量部を仕込み、均一になるまで混合、攪拌した。次に、
CPI−200Kの2.03質量部を混合、攪拌することで、カチオン重合性樹脂組成物を調製した。
[調製例6]
密閉型プラネタリーミキサー中に、エクセノール430「ポリプロピレントリオール、旭硝子(株)製、水酸基当量重量=143.3g」の50.0質量部、EX−216Lの57.6質量部を仕込み、均一になるまで混合、攪拌した。
次に、CPI−200Kの2.15質量部を混合、攪拌することで、カチオン重合性樹脂組成物を調製した。
[調製例7]
密閉型プラネタリーミキサー中に、エクセノール1030「ポリプロピレントリオール、旭硝子(株)製、水酸基当量重量=333.3g」50.0質量部、EX−216Lの24.8質量部を仕込み、均一になるまで混合、攪拌した。
次に、CPI−200Kの1.5質量部を混合、攪拌することで、カチオン重合性樹脂組成物を調製した。
[調製例8]
密閉型プラネタリーミキサー中に、エクセノール385SO「ポリプロピレンヘキサノール、旭硝子(株)製、水酸基当量重量=83.3g」50.0質量部、EX−216Lの99.0質量部を仕込み、均一になるまで混合、攪拌した。
次に、CPI−100P「ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェートのプロピレンカーボネート50質量%溶液、サンアプロ(株)製」の2.98質量部を混合、攪拌することで、カチオン重合性樹脂組成物を調製した。
[調製例9]
密閉型プラネタリーミキサー中に、エクセノール385SO「ポリプロピレンヘキサノール、旭硝子(株)製」50.0質量部、EX−216Lの99.0質量部を仕込み、均一になるまで混合、攪拌した。
次に、CPI−100Pの1.49質量部を混合、攪拌することで、カチオン重合性樹脂組成物を調製した。
[比較調製例1]
密閉型プラネタリーミキサー中に、前記多分岐ポリエーテルポリオール(A−1)50.0質量部、サイラキュアUVR−6110「3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ダウ・ケミカル日本(株)製」31.7質量部を仕込み、均一になるまで混合、攪拌した。
次に、CPI−200Kの1.63質量部を混合、攪拌することで、カチオン重合性樹脂組成物を調製した。
[比較調製例2]
密閉型プラネタリーミキサー中に、エクセノール420「ポリプロピレングリコール、旭硝子(株)製、水酸基当量重量=200.0g」50.0質量部、EX−216Lの41.3質量部を仕込み、均一になるまで混合、攪拌した。
次に、CPI−200Kの1.83質量部を混合、攪拌することで、カチオン重合性樹脂組成物を調製した。
[比較調製例3]
密閉型プラネタリーミキサー中に、エクセノール510「ポリエチレングリコール、旭硝子(株)製、水酸基当量重量=2000.0g」の50.0質量部、EX−216Lの4.1質量部を仕込み、均一になるまで混合、攪拌した。
次に、CPI−200Kの1.08質量部を混合、攪拌することで、カチオン重合性樹脂組成物を調製した。
[比較調製例4]
密閉型プラネタリーミキサー中に、BAC−45「ポリブタジエン末端アクリレート、大阪有機化学工業(株)製」の50.0質量部及びIRGACURE819「ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン(株)製)」の2.5質量部を混合、攪拌することで、カチオン重合性樹脂組成物を調製した。
[比較調製例5]
密閉型プラネタリーミキサー中に、EBECRYL204「ウレタンアクリレート、ダイセル・サイテック(株)製」の50.0質量部及びIRGACURE819の2.5質量部を混合、攪拌することで、カチオン重合性樹脂組成物を調製した。
[実施例1〜9及び比較例1〜5]
調製例1〜9及び比較調製例1〜5に記載の樹脂組成物を、アプリケーターを用いて、保護基材としてのアクリル板[PMMA(2×100×100mm、(株)エンジニアリングテストサービス製)](例えば図1でいう保護基材1)上に厚さ約200μmで塗布した。次いで、コンベアタイプの紫外線照射装置CSOT―40(日本電池(株)製、高圧水銀ランプ使用、強度120W/cm)を用いて、紫外線照射量が約1000mJ/cm2となる様に、各塗布面へ紫外線を照射した。
その後、紫外線照射面に、液晶パネル(例えば図1でいう液晶パネル3)の偏光板からなる面を貼りあわせ、50℃で1分間硬化させることによって、液晶ディスプレイ(例えば図1でいう液晶ディスプレイ4)を製造した。なお、前記液晶パネルとしては、ポリビニルアルコールからなる偏光子の両面にトリアセチルセルロースからなる保護層を有する市販の偏光板を画像表示部に有する、縦100mm×横100mm×厚み0.2mmの液晶パネルを使用した。
[視認性の評価方法]
視認性は、一般に、前記カチオン重合性樹脂組成物またはラジカル重合性樹脂組成物からなる硬化物の屈折率と、液晶ディスプレイを構成する保護基材の屈折率とが同程度である場合に良好になるものと考えられる。そこで、本発明の液晶ディスプレイの視認性は、調製例及び比較調製例で得られたカチオンまたはラジカル重合性樹脂組成物等の硬化物の屈折率を測定し、かかる値と前記保護基材の屈折率との差に基づいて評価した。
調製例1〜9及び比較調製例1〜3のカチオン重合性樹脂組成物及び比較調製例4、5ラジカル重合性樹脂組成物を、アプリケーターを用いてポリプロピレン板上に200μmの厚さとなるよう塗布した後、コンベアタイプの紫外線照射装置CSOT―40(日本電池(株)製、高圧水銀ランプ使用、強度120W/cm)を用いて、紫外線照射量が1000mJ/cm2となる様に、該塗布面へ紫外線を照射し、その後、50℃で1分間乾燥させることで、膜厚約150μmの硬化物シートを得た。尚、上記の紫外線照射量は、UVチェッカーUVR−N1(日本電池(株)製)を用いて300〜390nmの波長域において測定した値を基準とした。
前記硬化物シートの屈折率を、エルマ社製の屈折率計「ナトリウムD線(589nm)、25℃」を用いて測定した。
[視認性の評価基準]
液晶ディスプレイの保護基材として一般に使用されるアクリル樹脂からなる基材の屈折率が約1.49であり、ガラスからなる基材の屈折率が約1.52であることから、前記硬化物シートの屈折率がそれらの屈折率に近接した範囲、具体的には1.45〜1.55の範囲のものを、実用上十分な視認性を有すると評価した。
[密着性の評価方法]
(試験片作成方法)
前記方法で得られた各液晶ディスプレイを80℃の環境下に1000時間放置した後、各液晶ディスプレイを構成する保護基材と液晶パネルとの間で、浮きや剥がれが発生したものを「不良」と評価し、浮きや剥がれが発生していないものを「良好」と評価した。
* EX−212L:1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル「ナガセケムテックス(株)」製、商標:デナコール、エポキシ基当量重量=135g)
* EX−214L:1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル「(ナガセケムテックス(株)」製、商標:デナコール、エポキシ基当量重量=120g)
* EX−216L:シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル「(ナガセケムテックス(株)」製、商標:デナコール、エポキシ基当量重量=150g)
* UVR−6110:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(ダウ・ケミカル日本(株)製、商標:サイラキュア、エポキシ基当量重量=137g)。
* エクセノール420:ポリプロピレングリコール「旭硝子(株)製」
* エクセノール510:ポリエチレングリコール「旭硝子(株)製」
* エクセノール430:ポリプロピレントリオール「旭硝子(株)製」
* エクセノール1030:ポリプロピレントリオール「旭硝子(株)製」
* エクセノール385SO:ポリプロピレンヘキサノール「旭硝子(株)製」
* BAC−45:ポリブタジエン末端アクリレート「大阪有機化学工業(株)製」
* EBECRYL204:ウレタンアクリレート「ダイセル・サイテック(株)製」
* CPI−100P:ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェートのプロピレンカーボネートの50質量%溶液「サンアプロ(株)製」。
* IRGACURE819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルフォスフィンオキサイド「チバ・ジャパン(株)製」
[実施例1〜9について]
特定のカチオン重合性樹脂組成物を用いて得られた本発明の液晶ディスプレイは、優れた視認性を有し、また、前記組成物が硬化性に優れることから、保護基材と液晶パネルとの間で浮きや剥がれを発生させることなく、優れた密着性を有することが分かった。
[比較例1について]
比較例1で使用したカチオン重合性樹脂組成物は、本発明で使用するグリシジル基含有化合物の代わりに脂環式エポキシ化合物を用いたものであるため、保護基材と液晶パネルとの密着性が十分ではなかった。
[比較例2及び3について]
比較例2及び3で使用したカチオン重合性樹脂組成物は、本発明で使用する3個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオールの代わりに2個の水酸基を有するポリエーテルポリオールを用いたものであるため、保護基材と液晶パネルとの密着性が十分でなかった。
[比較例4及び5について]
ラジカル重合性樹脂組成物は、紫外線を照射されている間のみ重合が進行するため、前記した方法では、保護基材と液晶パネルとの密着性は不十分であった。
また、ラジカル重合性樹脂組成物が十分に硬化するまで紫外線を継続的に照射する方法では、液晶ディスプレイの生産効率が著しく低下した。