JP5397305B2 - 火花点火式内燃機関 - Google Patents
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Description
本発明は火花点火式内燃機関に関する。
機械圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構と吸気弁の閉弁時期を制御可能な可変バルブタイミング機構とを具備し、機関負荷にかかわらずに実圧縮比をほぼ一定に維持するようにした火花点火式内燃機関が公知である(例えば、特許文献1を参照)。この内燃機関では、機関負荷が高くなるにつれて、すなわち要求吸入空気量が多くなるにつれて吸気弁の閉弁時期が吸気下死点に近づくように進角され、このとき実圧縮比をほぼ一定に維持するために要求吸入空気量が多くなるにつれて機械圧縮比が低下せしめられる。
また、可変圧縮比機構としては、例えば、シリンダブロックとクランクケースとを相対移動可能に連結すると共にその連結部分にカムシャフトを設け、このカムシャフトを回転させることで機械圧縮比を変更するようにしているものが知られている(例えば、特許文献2を参照)。
特に、この可変圧縮比機構では、カムシャフトを駆動する駆動モータの回転角度と機械圧縮比との関係はリニアではなく、特に低機械圧縮比領域においては駆動モータの回転角度の変化に対する機械圧縮比の変化の割合が小さい。このため、低機械圧縮領域においては一定時間に変更可能な機械圧縮比の量が小さいものとなる。そこで、特許文献2に記載の内燃機関では、機械圧縮比を検出する検出装置の出力に基づいて機械圧縮比が目標機械圧縮比となるようにフィードバック制御すると共に、低機械圧縮比領域においてはフィードバック制御における制御ゲインを大きくすることにより、低機械圧縮比領域においても一定時間に変更可能な機械圧縮比の量を大きなものにするようにしている。
ところでこのように要求吸入空気量の変化に応じて吸気弁閉弁時期と機械圧縮比を変化させる方法として、一定時間間隔毎に目標吸気弁閉弁時期及び目標機械圧縮比を算出し、算出された目標吸気弁閉弁時期及び目標機械圧縮比となるように吸気弁閉弁時期及び機械圧縮比を制御する方法が挙げられる。
斯かる方法では、一定時間間隔毎に目標吸気弁閉弁時期及び目標機械圧縮比を算出するにあたり、この一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の量(以下、「閉弁時期変更可能量」という)及び一定時間に変更可能な機械圧縮比の量(以下、「圧縮比変更可能量」という)を考慮する必要がある。すなわち、算出される目標吸気弁閉弁時期は現在の吸気弁閉弁時期から上記閉弁時期変更可能量以内にある吸気弁閉弁時期である必要があり、算出される機械圧縮比は現在の機械圧縮比から上記圧縮比変更可能量以内にある機械圧縮比である必要がある。
ここで、圧縮比変更可能量は様々な要因で変化する。例えば、特許文献2に記載した可変圧縮比機構を用いた場合には、圧縮比変更可能量は、上述したように、機械圧縮比に応じて変化する。また、圧縮比変更可能量は機関負荷(又は内燃機関の出力トルク)に応じても変化する。すなわち、機関燃焼室内での混合気の燃焼によって生じる燃焼圧は機関負荷が高いほど大きくなるが、斯かる燃焼圧は機械圧縮比を低下させる方向に作用する。したがって、機関負荷が高いほど、機械圧縮比を高くするのに対する抵抗が大きくなり、逆に機械圧縮比を低くするのに対する抵抗が小さくなる。この結果、機械圧縮比を高くする際には圧縮比変更可能量は機関負荷が高いほど小さくなり、一方、機械圧縮比を低くする際には圧縮比変更可能量は機関負荷が高いほど大きくなる。
一方、燃料噴射弁からの燃料噴射を停止させる燃料カット制御中は機関負荷はゼロであり、よって圧縮比変更可能量は機関負荷に応じては変化しない。その一方で、燃料カット制御中は圧縮比変更可能量は実圧縮比や吸入空気量に応じて変化する。したがって、圧縮比変更可能量を機械圧縮比や機関負荷のみに基づいて算出すると、燃料カット制御中に圧縮比変更可能量を適切に算出することができず、この結果、燃料カット制御中に機械圧縮比を適切に制御することができなくなってしまう。
そこで、上記問題に鑑みて、本発明は、可変圧縮比機構及び可変バルブタイミング機構を具備する火花点火式内燃機関において、燃料カット制御中であっても機械圧縮比を適切に制御することができるようにすることを目的とする。
上記課題を解決するために、第1の発明では、機械圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構と、吸気弁の閉弁時期を制御可能な可変バルブタイミング機構とを具備し、機関運転状態毎に機械圧縮比と吸気弁閉弁時期との組合せを示す動作点が到達すべき要求動作点を設定し、機関運転状態が変化したときに機械圧縮比と吸気弁閉弁時期との組合せを示す動作点が変化後の機関運転状態に対して設定された要求動作点に向けて変化するように一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量及び一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量に基づいて一定時間毎に目標動作点を算出し、機械圧縮比及び吸気弁閉弁時期を該目標動作点に向けて変化させる、火花点火式内燃機関において、燃料噴射弁からの燃料供給を停止する燃料カット制御中には上記一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量を現在の吸入空気量及び現在の実圧縮比のうち少なくともいずれか一方に応じて変えるようにした。
燃料カット制御中には通常運転時とは異なり一定時間に変更可能な機械圧縮比の量が機関負荷ではなく吸入空気量及び実圧縮比に応じて変化する。第1の発明によれば、一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量を現在の吸入空気量又は現在の実圧縮比に応じて変えるようにしているため、燃料カット制御中であっても一定時間に変更可能な機械圧縮比を適切に算出することができる。
燃料カット制御中には通常運転時とは異なり一定時間に変更可能な機械圧縮比の量が機関負荷ではなく吸入空気量及び実圧縮比に応じて変化する。第1の発明によれば、一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量を現在の吸入空気量又は現在の実圧縮比に応じて変えるようにしているため、燃料カット制御中であっても一定時間に変更可能な機械圧縮比を適切に算出することができる。
第2の発明では、第1の発明において、上記一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量は、機械圧縮比を高くするときには現在の吸入空気量が多いほど小さくされ、機械圧縮比を低くするときには現在の吸入空気量が多いほど大きくされる。
第3の発明では、第1又は第2の発明において、上記一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量は、機械圧縮比を高くするときには現在の実圧縮比が高いほど小さくされ、機械圧縮比を低くするときには現在の実圧縮比が高いほど大きくされる。
第4の発明では、第1〜第3のいずれか一つの発明において、機械圧縮比と吸気弁閉弁時期との組合せに対して侵入禁止領域が設定されており、上記目標動作点は、機関運転状態が変化したときに機械圧縮比と吸気弁閉弁時期との組合せを示す動作点が変化後の機関運転状態に対して設定された要求動作点に向けて上記侵入禁止領域に侵入することなく変化するように一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量及び一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量に基づいて算出される。
第5の発明では、第4の発明において、上記目標動作点は、現在の動作点又は前回の目標動作点から一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量及び一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量以内に位置する動作点のうち上記侵入禁止領域に侵入しない範囲で現在の動作点から最も離れた動作点とされる。
第6の発明では、第1〜第5のいずれか一つの発明において、上記燃料カット制御が行われていない通常運転中には、上記一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量を機関負荷に応じて変えるようにした。
第7の発明では、第1〜第6のいずれか一つの発明において、上記可変圧縮比機構は回転するカムを用いたクランク機構によりクランクケースとシリンダブロック間の相対位置を変化させて機械圧縮比を変化させ、上記一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量を上記カムの回転角度に応じて変えるようにした。
本発明によれば、燃料カット制御中であっても機械圧縮比を適切に制御することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
図1に火花点火式内燃機関の側面断面図を示す。
図1を参照すると、1はクランクケース、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はピストン、5は燃焼室、6は燃焼室5の頂面中央部に配置された点火プラグ、7は吸気弁、8は吸気ポート、9は排気弁、10は排気ポートをそれぞれ示す。吸気ポート8は吸気枝管11を介してサージタンク12に連結され、各吸気枝管11にはそれぞれ対応する吸気ポート8内に向けて燃料を噴射するための燃料噴射弁13が配置される。なお、燃料噴射弁13は各吸気枝管11に取付ける代りに各燃焼室5内に配置してもよい。
図1を参照すると、1はクランクケース、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はピストン、5は燃焼室、6は燃焼室5の頂面中央部に配置された点火プラグ、7は吸気弁、8は吸気ポート、9は排気弁、10は排気ポートをそれぞれ示す。吸気ポート8は吸気枝管11を介してサージタンク12に連結され、各吸気枝管11にはそれぞれ対応する吸気ポート8内に向けて燃料を噴射するための燃料噴射弁13が配置される。なお、燃料噴射弁13は各吸気枝管11に取付ける代りに各燃焼室5内に配置してもよい。
サージタンク12は吸気ダクト14を介してエアクリーナ15に連結され、吸気ダクト14内にはアクチュエータ16によって駆動されるスロットル弁17と例えば熱線を用いたエアフロメータ18とが配置される。一方、排気ポート10は排気マニホルド19を介して例えば三元触媒を内蔵した触媒コンバータ20に連結され、排気マニホルド19内には空燃比センサ21が配置される。なお、以下の説明では、スロットル弁17から吸気弁7までの吸気枝管11、サージタンク12、吸気ダクト14等の部分を吸気管部分と称する。
一方、図1に示した実施形態ではクランクケース1とシリンダブロック2との連結部にクランクケース1とシリンダブロック2のシリンダ軸線方向の相対位置を変化させることによりピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を変更可能な可変圧縮比機構Aが設けられており、更に実際の圧縮作用の開始時期を変更可能な実圧縮作用開始時期変更機構Bが設けられている。なお、図1に示した実施形態ではこの実圧縮作用開始時期変更機構Bは吸気弁7の閉弁時期を制御可能な可変バルブタイミング機構からなる。
図1に示したようにクランクケース1とシリンダブロック2にはクランクケース1とシリンダブロック2間の相対位置関係を検出するための相対位置センサ22が取付けられており、この相対位置センサ22からはクランクケース1とシリンダブロック2との間隔の変化を示す出力信号が出力される。また、可変バルブタイミング機構Bには吸気弁7の閉弁時期を示す出力信号を発生するバルブタイミングセンサ23が取付けられており、スロットル弁駆動用のアクチュエータ16にはスロットル弁開度を示す出力信号を発生するスロットル開度センサ24が取付けられている。なお、本実施形態では、現在の機械圧縮比を検出するための機械圧縮比検出装置として相対位置センサ22が用いられるが、機械圧縮比検出装置としては相対位置センサ22以外の検出装置を使用することも可能である。
電子制御ユニット30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35および出力ポート36を具備する。エアフロメータ18、空燃比センサ21、相対位置センサ22、バルブタイミングセンサ23およびスロットル開度センサ24の出力信号はそれぞれ対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。また、アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42が接続される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して点火プラグ6、燃料噴射弁13、スロットル弁駆動用アクチュエータ16、可変圧縮比機構Aおよび可変バルブタイミング機構Bに接続される。
図2は図1に示す可変圧縮比機構Aの分解斜視図を示しており、図3は図解的に表した内燃機関の側面断面図を示している。図2を参照すると、シリンダブロック2の両側壁の下方には互いに間隔を隔てた複数個の突出部50が形成されており、各突出部50内にはそれぞれ断面円形のカム挿入孔51が形成されている。一方、クランクケース1の上壁面上には互いに間隔を隔ててそれぞれ対応する突出部50の間に嵌合せしめられる複数個の突出部52が形成されており、これらの各突出部52内にもそれぞれ断面円形のカム挿入孔53が形成されている。
図2に示したように一対のカムシャフト54、55が設けられており、各カムシャフト54、55上には一つおきに各カム挿入孔53内に回転可能に挿入される円形カム58が固定されている。これらの円形カム58は各カムシャフト54、55の回転軸線と共軸をなす。一方、各円形カム58の両側には図3に示すように各カムシャフト54、55の回転軸線に対して偏心配置された偏心軸57が延びており、この偏心軸57上に別の円形カム56が偏心して回転可能に取付けられている。図2に示したようにこれら円形カム56は各円形カム58の両側に配置されており、これら円形カム56は対応する各カム挿入孔51内に回転可能に挿入されている。また、図2に示したようにカムシャフト55にはカムシャフト55の回転角度を表す出力信号を発生するカム回転角度センサ25が取付けられている。
図3(A)に示すような状態から各カムシャフト54、55上に固定された円形カム58を図3(A)において矢印で示したように互いに反対方向に回転させると偏心軸57が互いに離れる方向に移動するために円形カム56がカム挿入孔51内において円形カム58とは反対方向に回転し、図3(B)に示したように偏心軸57の位置が高い位置から中間高さ位置となる。次いで更に円形カム58を矢印で示した方向に回転させると図3(C)に示したように偏心軸57は最も低い位置となる。
なお、図3(A)、図3(B)、図3(C)にはそれぞれの状態における円形カム58の中心aと偏心軸57の中心bと円形カム56の中心cとの位置関係が示されている。
図3(A)から図3(C)とを比較するとわかるようにクランクケース1とシリンダブロック2の相対位置は円形カム58の中心aと円形カム56の中心cとの距離によって定まり、円形カム58の中心aと円形カム56の中心cとの距離が大きくなるほどシリンダブロック2はクランクケース1から離れる。すなわち、可変圧縮比機構Aは回転するカムを用いたクランク機構によりクランクケース1とシリンダブロック2間の相対位置を変化させていることになる。シリンダブロック2がクランクケース1から離れるとピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積は増大し、したがって各カムシャフト54、55を回転させることによってピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を変更することができる。
図2に示したように各カムシャフト54、55をそれぞれ反対方向に回転させるために駆動モータ59の回転軸にはそれぞれ螺旋方向が逆向きの一対のウォーム61、62が取付けられており、これらウォーム61、62と噛合するウォームホイール63、64がそれぞれ各カムシャフト54、55の端部に固定されている。この実施形態では駆動モータ59を駆動することによってピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を広い範囲に亘って変更することができる。
一方、図4は図1において吸気弁7を駆動するためのカムシャフト70の端部に取付けられた可変バルブタイミング機構Bを示している。図4を参照すると、この可変バルブタイミング機構Bは機関のクランク軸によりタイミングベルトを介して矢印方向に回転せしめられるタイミングプーリ71と、タイミングプーリ71と一緒に回転する円筒状ハウジング72と、吸気弁駆動用カムシャフト70と一緒に回転し且つ円筒状ハウジング72に対して相対回転可能な回転軸73と、円筒状ハウジング72の内周面から回転軸73の外周面まで延びる複数個の仕切壁74と、各仕切壁74の間で回転軸73の外周面から円筒状ハウジング72の内周面まで延びるベーン75とを具備しており、各ベーン75の両側にはそれぞれ進角用油圧室76と遅角用油圧室77とが形成されている。
各油圧室76、77への作動油の供給制御は作動油供給制御弁78によって行われる。この作動油供給制御弁78は各油圧室76、77にそれぞれ連結された油圧ポート79、80と、油圧ポンプ81から吐出された作動油の供給ポート82と、一対のドレインポート83、84と、各ポート79、80、82、83、84間の連通遮断制御を行うスプール弁85とを具備している。
吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相を進角すべきときは図4においてスプール弁85が右方に移動せしめられ、供給ポート82から供給された作動油が油圧ポート79を介して進角用油圧室76に供給されると共に遅角用油圧室77内の作動油がドレインポート84から排出される。このとき回転軸73は円筒状ハウジング72に対して矢印方向に相対回転せしめられる。
これに対し、吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相を遅角すべきときは図4においてスプール弁85が左方に移動せしめられ、供給ポート82から供給された作動油が油圧ポート80を介して遅角用油圧室77に供給されると共に進角用油圧室76内の作動油がドレインポート83から排出される。このとき回転軸73は円筒状ハウジング72に対して矢印と反対方向に相対回転せしめられる。
回転軸73が円筒状ハウジング72に対して相対回転せしめられているときにスプール弁85が図4に示した中立位置に戻されると回転軸73の相対回転動作は停止せしめられ、回転軸73はそのときの相対回転位置に保持される。したがって可変バルブタイミング機構Bによって吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相を所望の量だけ進角させることができ、遅角させることができることになる。
図5において実線は可変バルブタイミング機構Bによって吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相が最も進角されているときを示しており、破線は吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相が最も遅角されているときを示している。したがって吸気弁7の開弁期間は図5において実線で示す範囲と破線で示す範囲との間で任意に設定することができ、したがって吸気弁7の閉弁時期も図5において矢印Cで示す範囲内の任意のクランク角に設定することができる。
図1および図4に示した可変バルブタイミング機構Bは一例を示すものであって、例えば吸気弁の開弁時期を一定に維持したまま吸気弁の閉弁時期のみを変えることのできる可変バルブタイミング機構等、種々の形式の可変バルブタイミング機構を用いることができる。
次に図6を参照しつつ本願において使用されている用語の意味について説明する。なお、図6の(A)、(B)、(C)には説明のために燃焼室容積が50mlでピストンの行程容積が500mlであるエンジンが示されており、これら図6の(A)、(B)、(C)において燃焼室容積とはピストンが圧縮上死点に位置するときの燃焼室の容積を表している。
図6(A)は機械圧縮比について説明している。機械圧縮比は圧縮行程時のピストンの行程容積と燃焼室容積のみから機械的に定まる値であってこの機械圧縮比は(燃焼室容積+行程容積)/燃焼室容積で表される。図6(A)に示した例ではこの機械圧縮比は(50ml+500ml)/50ml=11となる。
図6(B)は実圧縮比について説明している。この実圧縮比は実際に圧縮作用が開始されたときからピストンが上死点に達するまでの実際のピストン行程容積と燃焼室容積から定まる値であってこの実圧縮比は(燃焼室容積+実際の行程容積)/燃焼室容積で表される。すなわち、図6(B)に示したように圧縮行程においてピストンが上昇を開始しても吸気弁が開弁している間は圧縮作用は行われず、吸気弁が閉弁したときから実際の圧縮作用が開始される。したがって実圧縮比は実際の行程容積を用いて上記の如く表される。図6(B)に示した例では実圧縮比は(50ml+450ml)/50ml=10となる。
図6(C)は膨張比について説明している。膨張比は膨張行程時のピストンの行程容積と燃焼室容積から定まる値であってこの膨張比は(燃焼室容積+行程容積)/燃焼室容積で表される。図6(C)に示した例ではこの膨張比は(50ml+500ml)/50ml=11となる。
次に図7および図8を参照しつつ本発明において用いられている超膨張比サイクルについて説明する。なお、図7は理論熱効率と膨張比との関係を示しており、図8は本発明において負荷に応じ使い分けられている通常のサイクルと超高膨張比サイクルとの比較を示している。
図8(A)は吸気弁が下死点近傍で閉弁し、ほぼ吸気下死点付近からピストンによる圧縮作用が開始される場合の通常のサイクルを示している。この図8(A)に示す例でも図6の(A)、(B)、(C)に示す例と同様に燃焼室容積が50mlとされ、ピストンの行程容積が500mlとされている。図8(A)からわかるように通常のサイクルでは機械圧縮比は(50ml+500ml)/50ml=11であり、実圧縮比もほぼ11であり、膨張比も(50ml+500ml)/50ml=11となる。すなわち、通常の内燃機関では機械圧縮比と実圧縮比と膨張比とがほぼ等しくなる。
図7における実線は実圧縮比と膨張比とがほぼ等しい場合の、すなわち通常のサイクルにおける理論熱効率の変化を示している。この場合には膨張比が大きくなるほど、すなわち実圧縮比が高くなるほど理論熱効率が高くなることがわかる。したがって通常のサイクルにおいて理論熱効率を高めるには実圧縮比を高くすればよいことになる。しかしながら機関高負荷運転時におけるノッキングの発生の制約により実圧縮比は最大でも12程度までしか高くすることができず、斯くして通常のサイクルにおいては理論熱効率を十分に高くすることはできない。
一方、このような状況下で機械圧縮比と実圧縮比とを厳密に区分しつつ理論熱効率を高めることが検討され、その結果理論熱効率は膨張比が支配し、理論熱効率に対して実圧縮比はほとんど影響を与えないことが見出されたのである。すなわち、実圧縮比を高くすると爆発力は高まるが圧縮するために大きなエネルギーが必要となり、斯くして実圧縮比を高めても理論熱効率はほとんど高くならない。
これに対し、膨張比を大きくすると膨張行程時にピストンに対し押下げ力が作用する期間が長くなり、斯くしてピストンがクランクシャフトに回転力を与えている期間が長くなる。したがって膨張比は大きくすれば大きくするほど理論熱効率が高くなる。図7の破線ε=10は実圧縮比を10に固定した状態で膨張比を高くしていった場合の理論熱効率を示している。このように実圧縮比εを低い値に維持した状態で膨張比を高くしたときの理論熱効率の上昇量と、図7の実線で示す如く実圧縮比も膨張比と共に増大せしめられる場合の理論熱効率の上昇量とは大きな差がないことがわかる。
このように実圧縮比が低い値に維持されているとノッキングが発生することがなく、したがって実圧縮比を低い値に維持した状態で膨張比を高くするとノッキングの発生を阻止しつつ理論熱効率を大巾に高めることができる。図8(B)は可変圧縮比機構Aおよび可変バルブタイミング機構Bを用いて、実圧縮比を低い値に維持しつつ膨張比を高めるようにした場合の一例を示している。
図8(B)を参照すると、この例では可変圧縮比機構Aにより燃焼室容積が50mlから20mlまで減少せしめられる。一方、可変バルブタイミング機構Bによって実際のピストン行程容積が500mlから200mlになるまで吸気弁の閉弁時期が遅らされる。その結果、この例では実圧縮比は(20ml+200ml)/20ml=11となり、膨張比は(20ml+500ml)/20ml=26となる。図8(A)に示した通常のサイクルでは前述したように実圧縮比がほぼ11で膨張比が11であり、この場合に比べると図8(B)に示した場合には膨張比のみが26まで高められていることがわかる。これが超高膨張比サイクルと称される所以である。
一般的に言って内燃機関では機関負荷が低いほど熱効率が悪くなり、したがって機関運転時における熱効率を向上させるためには、すなわち燃費を向上させるには機関負荷が低いときの熱効率を向上させることが必要となる。一方、図8(B)に示した超高膨張比サイクルでは圧縮行程時の実際のピストン行程容積が小さくされるために燃焼室5内に吸入しうる吸入空気量は少なくなり、したがってこの超高膨張比サイクルは機関負荷が比較的低いときにしか採用できないことになる。したがって本発明では機関負荷が比較的低いときには図8(B)に示す超高膨張比サイクルとし、機関高負荷運転時には図8(A)に示す通常のサイクルとするようにしている。
次に図9を参照しつつ運転制御全般について概略的に説明する。
図9には或る機関回転数における機関負荷に応じた吸入空気量、吸気弁閉弁時期、機械圧縮比、膨張比、実圧縮比およびスロットル弁17の開度の各変化が示されている。なお、図9は、触媒コンバータ20内の三元触媒によって排気ガス中の未燃HC、COおよびNOxを同時に低減しうるように燃焼室5内における平均空燃比が空燃比センサ21の出力信号に基いて理論空燃比にフィードバック制御されている場合を示している。
図9には或る機関回転数における機関負荷に応じた吸入空気量、吸気弁閉弁時期、機械圧縮比、膨張比、実圧縮比およびスロットル弁17の開度の各変化が示されている。なお、図9は、触媒コンバータ20内の三元触媒によって排気ガス中の未燃HC、COおよびNOxを同時に低減しうるように燃焼室5内における平均空燃比が空燃比センサ21の出力信号に基いて理論空燃比にフィードバック制御されている場合を示している。
さて、前述したように機関高負荷運転時には図8(A)に示した通常のサイクルが実行される。したがって図9に示したようにこのときには機械圧縮比は低くされるために膨張比は低く、図9において実線で示したように吸気弁7の閉弁時期は図5において実線で示される如く早められている。また、このときには吸入空気量は多く、このときスロットル弁17の開度は全開に保持されているのでポンピング損失は零となっている。
一方、図9において実線で示したように機関負荷が低くなるとそれに伴って吸入空気量を減少すべく吸気弁7の閉弁時期が遅くされる。またこのときには実圧縮比がほぼ一定に保持されるように図9に示される如く機関負荷が低くなるにつれて機械圧縮比が増大され、したがって機関負荷が低くなるにつれて膨張比も増大される。なお、このときにもスロットル弁17は全開状態に保持されており、したがって燃焼室5内に供給される吸入空気量はスロットル弁17によらずに吸気弁7の閉弁時期を変えることによって制御されている。
このように機関高負荷運転状態から機関負荷が低くなるときには実圧縮比がほぼ一定のもとで吸入空気量が減少するにつれて機械圧縮比が増大せしめられる。すなわち、吸入空気量の減少に比例してピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積が減少せしめられる。したがってピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積は吸入空気量に比例して変化していることになる。なお、このとき図9に示した例では燃焼室5内の空燃比は理論空燃比となっているのでピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積は燃料量に比例して変化していることになる。
機関負荷が更に低くなると機械圧縮比は更に増大せしめられ、機関負荷がやや低負荷寄りの中負荷L1まで低下すると機械圧縮比は燃焼室5の構造上限界となる最大限界機械圧縮比に達する。機械圧縮比が最大限界機械圧縮比に達すると、機械圧縮比が最大限界機械圧縮比に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域では機械圧縮比が最大限界機械圧縮比に保持される。したがって低負荷側の機関中負荷運転時および機関低負荷運転時にはすなわち、機関低負荷運転側では機械圧縮比は最大となり、膨張比も最大となる。別の言い方をすると機関低負荷運転側では最大の膨張比が得られるように機械圧縮比が最大にされる。
一方、図9に示した実施形態では機関負荷がL1まで低下すると吸気弁7の閉弁時期が燃焼室5内に供給される吸入空気量を制御しうる限界閉弁時期となる。吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達すると吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域では吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に保持される。
吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に保持されるともはや吸気弁7の閉弁時期の変化によっては吸入空気量を制御することができない。図9に示した実施形態ではこのとき、すなわち吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域ではスロットル弁17によって燃焼室5内に供給される吸入空気量が制御され、機関負荷が低くなるほどスロットル弁17の開度は小さくされる。
一方、図9において破線で示すように機関負荷が低くなるにつれて吸気弁7の閉弁時期を早めることによってもスロットル弁17によらずに吸入空気量を制御することができる。したがって、図9において実線で示した場合と破線で示した場合とをいずれも包含しうるように表現すると、本発明による実施形態では吸気弁7の閉弁時期は、機関負荷が低くなるにつれて、燃焼室内に供給される吸入空気量を制御しうる限界閉弁時期L1まで吸気下死点BDCから離れる方向に移動せしめられることになる。このように吸入空気量は吸気弁7の閉弁時期を図9において実線で示すように変化させても制御することができるし、破線に示すように変化させても制御することができるが、以下本発明について吸気弁7の閉弁時期を図9において実線で示すように変化させた場合を例にとって説明する。
ところで前述したように図8(B)に示す超高膨張比サイクルでは膨張比が26とされる。この膨張比は高いほど好ましいが図7からわかるように実用上使用可能な下限実圧縮比ε=5に対しても20以上であればかなり高い理論熱効率を得ることができる。したがって本発明では膨張比が20以上となるように可変圧縮比機構Aが形成されている。
次に図10から図13を参照しつつ侵入禁止領域と、機械圧縮比および吸気弁閉弁時期に対する基準動作線について説明する。
図10は要求されている機関負荷を得るのに必要な吸入空気量、すなわち要求吸入空気量と、機械圧縮比と、吸気弁閉弁時期とを示している。なお、図10において要求吸入空気量は原点0から離れるにしたがって増大し、機械圧縮比は原点0から離れるにしたがって増大する。また、図10において吸気弁閉弁時期は吸気下死点後(ABDC)のクランク角で表されており、したがって吸気弁閉弁時期は原点0から離れるにしたがって遅角される。
一方、図10においてQ1、Q2、Q3、Q4、Q5はそれぞれ同一吸入空気量面を表している。また、θmaxはスロットル弁17が全開しているスロットル全開面を表しており、図10からわかるようにこのスロットル全開面θmaxは上に凸の湾曲面からなる。このスロットル全開面θmaxの下方の領域では下方にいくほどスロットル開度が小さくなる。
この様子を図11に示す。図11の曲面θ1、θ2はそれぞれスロットル開度がθ1、θ2となっているときを示す同一スロットル開度面であり、図11からわかるように各スロットル開度面θ1、θ2は上に凸の湾曲面からなる。また、スロットル開度θmax、θ2、θ1の関係はθmax>θ2>θ1となっており、スロットル開度が小さいほど、同一機械圧縮比及び同一吸気弁閉弁時期における吸入空気量が少なくなる。
図10においてハッチングで示した領域は各同一吸入空気量面Q1、Q2、Q3、Q4、Q5内における侵入禁止領域を示している。一方、図12は図10の上からみたところを示しており、図13(A)は図10における左側面S1を矢印方向からみたところを示しており、図13(B)は図10における右側面S2を矢印方向からみたところを示しており、これら図12および図13(A)、(B)においてもハッチングで示した領域は侵入禁止領域を示している。
図10、図12、図13(A)、(B)から侵入禁止領域は3次元的に広がっており、さらにこの侵入禁止領域は高負荷側の領域X1と低負荷側の領域X2との2つの領域からなることがわかる。なお、図10、図12、図13(A)、(B)からわかるように高負荷側侵入禁止領域X1は要求吸入空気量が多く、吸気弁閉弁時期が進角側で機械圧縮比が高い側に形成され、低負荷側侵入禁止領域X2は要求吸入空気量が少なく、吸気弁閉弁時期が遅角側で機械圧縮比が低い側に形成される。
さて、図9は要求吸入空気量に対して最小燃費の得られる、吸気弁閉弁時期と機械圧縮比と実圧縮比とスロットル開度の関係を示しており、これらの関係を満たす線が図10および図12において実線Wで示されている。図10からわかるようにこの線Wは同一吸入空気量面Q3よりも吸入空気量が多い側ではスロットル全開面θmax上を延びており、同一吸入空気量面Q3よりも吸入空気量が少ない側では右側面S2上を延びている。この同一吸入空気量面Q3は図9の負荷L1に対応している。
すなわち、図9においてL1よりも機関負荷が高い領域では機関負荷が高くなるほど、すなわち要求吸入空気量が増大するほどスロットル弁17が全開に保持された状態で吸気弁閉弁時期が進角され、このとき機械圧縮比は実圧縮比が一定となるように要求吸入空気量が増大するほど低下せしめられる。このときの機械圧縮比と吸気弁閉弁時期との関係が図10のスロットル全開面θmax上における線Wで表されている。すなわち、図10に示したように同一吸入空気量面Q3よりも吸入空気量が多い側では要求吸入空気量が増大するほどスロットル弁17が全開に保持された状態で吸気弁閉弁時期が進角され、このとき機械圧縮比は実圧縮比が一定となるように要求吸入空気量が増大するほど低下せしめられる。
一方、図9においてL1よりも機関負荷が低い領域では機械圧縮比および吸気弁閉弁時期が一定に保持され、機関負荷が低くなるほど、すなわち要求吸入空気量が減少するほどスロットル弁17の開度が減少せしめられる。このときの機械圧縮比と吸気弁閉弁時期との関係が図10の右側面S2上における線Wで表されている。すなわち、図10に示したように同一吸入空気量面Q3よりも吸入空気量が少ない側では機械圧縮比および吸気弁閉弁時期が一定に保持され、機関負荷が低くなるほど、すなわち要求吸入空気量が減少するほどスロットル弁17の開度が減少せしめられる。
本願明細書では、要求吸入空気量が変化したときに機械圧縮比と吸気弁閉弁時期とが辿る線を動作線と称しており、特に図10に示した線Wは基準動作線と称されている。なお、前述したようにこの基準動作線は最小燃費の得られる最小燃費動作線を示している。
前述したようにこの基準動作線W上では実圧縮比が一定とされている。実圧縮比はスロットル弁17の開度とは無関係であって機械圧縮比および吸気弁閉弁時期のみによって定まるので図10において基準動作線Wを通り垂直方向に延びる曲面上では同一実圧縮比となる。この場合、この曲面よりも機械圧縮比の高い側では実圧縮比が高くなり、この曲面よりも機械圧縮比の低い側では実圧縮比が低くなる。すなわち、大雑把に言うと、高負荷側侵入禁止領域X1は基準動作線W上における実圧縮比よりも実圧縮比の高い領域に位置しており、低負荷側侵入禁止領域X2は基準動作線W上における実圧縮比よりも実圧縮比の低い領域に位置している。
さて、燃費を向上するために実圧縮比を高くするとノッキングが発生し、ノッキングの発生を阻止するために点火時期を遅角させると燃焼が不安定となってトルク変動を生ずる。高負荷側侵入禁止領域X1はこのようなトルク変動を生ずる運転領域であり、したがって機関運転時には機関の運転状態がこのようなトルク変動を生ずる運転領域内に入らないようにする必要がある。一方、吸入空気量が少なく実圧縮比が低くなると燃焼しづらくなり、スロットル弁17の開度が小さくなって圧縮端圧力が低くなると燃焼が悪化してトルク変動を生ずる。低負荷側侵入禁止領域X2はこのようなトルク変動を生ずる運転領域であり、したがって機関運転時にはこの運転領域にも機関の運転状態が入らないようにする必要がある。
一方、実圧縮比が高くなるほど燃費が向上し、したがってノッキングやトルク変動を生ずることなく最小の燃費が得られる最小燃費動作線は図10および図12においてWで示したように高負荷側侵入禁止領域X1の外部において高負荷側侵入禁止領域X1の外縁に沿いつつ延びている。前述したように本発明による実施形態ではこの最小燃費動作線が基準動作線Wとされており、基本的には要求吸入空気量に応じて機械圧縮比および吸気弁閉弁時期との組合せを示す動作点がこの基準動作線W上を移動するように機械圧縮比、吸気弁閉弁時期およびスロットル弁17の開度が制御される。なお、現在の動作点は相対位置センサ22、バルブタイミングセンサ23およびスロットル開度センサ24により常時検出されている。
次に本発明による機械圧縮比、吸気弁閉弁時期およびスロットル弁17の開度の制御の仕方について基本的な制御の仕方から説明する。この基本的な制御の仕方が図14から図16に示されている。
すなわち、図14は機械圧縮比および吸気弁閉弁時期が基準動作線W上のm点における値に維持されているときに要求吸入空気量が増大せしめられた場合を示している。ところで本発明による実施形態では例えば予め定められた時間毎に要求吸入空気量が算出されており、この予め定められた時間毎に算出される要求吸入空気量を満たす基準動作線W上の動作点が順次算出される。この要求吸入空気量を満たす動作点、すなわち要求動作点の一例が図14においてa1、a2、a3、a4、a5、a6で示されている。すなわち、この例では要求吸入空気量が増大せしめられた後に最初に検出された要求吸入空気量を満たす要求動作点がa1であり、次に検出された要求吸入空気量を満たす要求動作点がa2であり、次に検出された要求吸入空気量を満たす要求動作点がa3である。
要求動作点が変化すると機械圧縮比および吸気弁閉弁時期を示す動作点は新たな要求動作点に向けて変化する。すなわち、図14に示した例では機械圧縮比および吸気弁閉弁時期を示す動作点は要求動作点がa1とされるとm点からa1点に向けて変化し、要求動作点がa2とされると機械圧縮比および吸気弁閉弁時期を示す動作点はa2に向けて変化する。この場合、要求動作点が変化する前に機械圧縮比および吸気弁閉弁時期が要求動作点に到達すれば機械圧縮比および吸気弁閉弁時期は何の問題もなく要求動作点の変化に追従して変化する。しかしながら要求動作点が変化する前に機械圧縮比および吸気弁閉弁時期が要求動作点に到達しない場合には問題を生ずる場合がある。
すなわち、図14において機械圧縮比および吸気弁閉弁時期が点mにあるときに要求動作点a1となったときには機械圧縮比および吸気弁時期は変化せず、このとき要求吸入空気量を満たすべくスロットル弁17の開度が増大せしめられる。アクチュエータ16によるスロットル弁17の開度変化の応答性は極めて早く、したがって要求動作点がa1になると機械圧縮比および吸気弁閉弁時期を示す動作点はm点からa1点にただちに移る。
次いで要求動作点がa2になると機械圧縮比がわずかばかり低下せしめられ且つ吸気弁閉弁時期がわずかばかり進角されつつスロットル弁17が全開にされる。このとき機械圧縮比および吸気弁閉弁時期は次の要求動作点a3が算出される頃には要求動作点a2の近くまで到達する。このとき到達する機械圧縮比および吸気弁閉弁時期が図14の上方からみたところを示す図15において動作点b2で示されている。
要求動作点a3が算出されると機械圧縮比および吸気弁閉弁時期は動作点b2から要求動作点a3に向けて移動を開始する。すなわち、スロットル弁17が全開の状態で機械圧縮比は低下せしめられ、吸気弁閉弁時期は進角せしめられる。ところが可変圧縮比機構Aによる機械圧縮比変化の応答性および可変バルブタイミング機構Bによる吸気弁7の閉弁時期変化の応答性はそれほど早くなく、特に可変圧縮比機構Aによる機械圧縮比変化の応答性はかなり遅い。したがって要求吸入空気量の増大速度が速い場合には要求動作点と機械圧縮比および吸気弁閉弁時期の実際の値を示す動作点とが次第に離れていくことになる。例えば図15において要求動作点がa6まで移動したときに機械圧縮比および吸気弁閉弁時期の実際の値を示す動作点が依然としてb2付近に位置するような状態が生ずる。
しかしながらこのような場合、機械圧縮比および吸気弁閉弁時期を侵入禁止領域X1内に侵入することなく要求動作点に向けてフィードバック制御により移動させるようにすると機械圧縮比および吸気弁閉弁時期が要求動作点に達するまでに時間を要することになる。すなわち、この場合、吸気弁閉弁時期を進角させることにより動作点が侵入禁止領域X1内に侵入しそうになったときには吸気弁閉弁時期の進角作用が停止され、次いで機械圧縮比が一定量だけ減少せしめられる。機械圧縮比が一定量だけ減少せしめられると吸気弁閉弁時期が再び進角され、動作点が侵入禁止領域X1内に侵入しそうになると吸気弁閉弁時期の進角作用が停止される。以下、これが繰返される。
すなわち、機械圧縮比および吸気弁閉弁時期を要求動作点に向けてフィードバック制御により移動させるようにすると機械圧縮比および吸気弁閉弁時期を示す動作点が侵入禁止領域X1の外縁に沿ってジグザグ状に移動することになり、斯くして機械圧縮比および吸気弁閉弁時期が要求動作点に達するまでに時間を要することになる。その結果、要求吸入空気量の変化に対して良好な機関の応答性が得られないことになる。
そこで本発明では、要求吸入空気量が変化したときに、動作点が要求吸入空気量を満たす要求動作点に向けて侵入禁止領域X1、X2内に侵入することなく変化するように、一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量及び一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量に基づいて一定時間毎に目標動作点を算出し、機械圧縮比および吸気弁閉弁時期をこの目標動作点に向けて変化させるようにしている。
次にこの本発明を具体化した一実施形態についてスロットル全開面θmaxを示す図15を参照しつつ説明する。前述したように図15は要求動作点がa3になったときに機械圧縮比および吸気弁閉弁時期を示す動作点がb2である場合を示している。この場合において矢印R2は要求動作点a3に向けて予め定められた一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量を表しており、矢印T2は要求動作点a3に向けて予め定められた一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量を表している。また、図15においてc2は現在の動作点b2から要求吸入空気量を満たす要求動作点a3に向けて侵入禁止領域X1内に侵入することなく一定時間後に到達可能な目標動作点を示している。
図15に示したように要求吸入空気量が増大せしめられ且つ動作点b2および要求動作点a3がスロットル全開面θmax上にあるときにはこの目標動作点c2は基準動作線W上に、図15に示した例では最小燃費動作線W上に位置する。すなわち、図15に示した例では、スロットル弁17が全開状態に維持されているときには目標動作点は侵入禁止領域X1の外部であって侵入禁止領域X1の外縁に沿って延びる最小燃費動作線W上を移動せしめられる。
また、図15において要求動作点がa6であるときに機械圧縮比および吸気弁閉弁時期を示す動作点がbiであったとするとこの場合にも目標動作点は基準動作線W上の点ciとされる。なお、図15において矢印Riは同様に一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量を表しており、矢印Tiは一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量を表している。
このように図15に示した例では動作点がb2であるときに目標動作点c2が算出されると一定時間後に機械圧縮比および吸気弁閉弁時期を示す動作点は目標動作点c2に到達する。このとき現在の動作点c2から要求吸入空気量を満たす要求動作点に向けて侵入禁止領域X1内に侵入することなく一定時間後に到達可能な次の新たな目標動作点が算出され、動作点は一定時間後にこの新たな目標動作点に到達する。この場合、本発明による実施形態では機械圧縮比、吸気弁閉弁時期およびスロットル弁17の開度はPID(比例積分微分)制御によって目標動作点に到達せしめられる。
このように図15に示した例では機械圧縮比および吸気弁閉弁時期を示す動作点は基準動作線Wに沿って停滞することなく滑らかに移動する。すなわち、図14において機械圧縮比および吸気弁閉弁時期がm点に維持されているときに要求吸入空気量が増大せしめられると機械圧縮比および吸気弁閉弁時期は図16において矢印で示したように基準動作線Wに沿って停滞することなく滑らかに変化せしめられる。その結果、要求吸入空気量の変化に対して良好な機関の応答性を確保することができることになる。
この場合、要求吸入空気量に対する機関の応答性を更に向上するためには目標動作点c2、ciをそれぞれ対応する現在の動作点b2、biからできる限り離すことが好ましい。したがって本発明による実施形態では目標動作点c2、ciは、対応する現在の動作点b2、biから一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量及び一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量以内に位置する動作点のうち、侵入禁止領域X1内に侵入しない範囲で要求吸入空気量を満たす要求動作点に向けて現在の動作点b2、biから最も離れた動作点とされている。
すなわち、現在の動作点がb2の場合には動作点b2からの機械圧縮比の到達限界が目標動作点c2とされ、吸気弁閉弁時期についてはこの目標動作点c2は動作点b2からの吸気弁閉弁時期の到達限界よりも手前となる。したがってこのときには機械圧縮比は可能な最大速度でもって低下せしめられ、吸気弁閉弁時期は可能な最大速度よりもゆっくりとした速度で進角される。これに対し、現在の動作点がbiの場合には動作点biからの吸気弁閉弁時期の到達限界が目標動作点ciとされ、機械圧縮比についてはこの目標動作点ciは動作点biからの吸気弁閉弁時期の到達限界よりも手前となる。したがってこのときには吸気弁閉弁時期は可能な最大速度でもって進角され、機械圧縮比は可能な最大速度よりもゆっくりとした速度で減少せしめられる。
吸気弁閉弁時期の可能な最大変更速度、すなわち一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の量は機関の運転状態の影響をほとんど受けず、したがって一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の量は機関運転状態にかかわらず一定となる。これに対して、機械圧縮比の可能な最大変更速度、すなわち一定時間に変更可能な機械圧縮比の量は機関の運転状態等の影響を強く受ける。次に、このことについて図17から図20を参照しつつ説明する。
図17は一定時間に変更可能な機械圧縮比の量、すなわち現在の機械圧縮比と一定時間後に到達可能な機械圧縮比との圧縮比差と、機関負荷との関係を示している。図17は機械圧縮比が或る機械圧縮比とされているときの一定時間に変更可能な機械圧縮比の量(以下、「圧縮比変更可能量」という)を示しており、図17において一点鎖線F0は機関が停止しているときの圧縮比変更可能量を示している。また、図17には燃焼圧によって可変圧縮比機構Aに加わるトルクが破線で示されている。このトルクはシリンダブロック2をクランクケース1から引き離す方向に、すなわち圧縮比を低下させる方向に作用する。このトルクは破線で示したように燃焼圧が高くなるほど、すなわち機関負荷が高くなるほど大きくなる。
このようにこのトルクは可変圧縮比機構Aに対して圧縮比を低下させる方向に作用するので機械圧縮比を低下させる場合には機械圧縮比は容易に低下し、したがってこの場合には圧縮比変更可能量は大きくなる。図17において実線F1はこの場合の圧縮比変更可能量を示しており、この場合の圧縮比変更可能量は機関負荷が高くなるほど大きくなる。これに対して、このトルクは機械圧縮比の増大に対して抵抗するので機械圧縮比を増大させる場合には機械圧縮比を低下させる場合に比べて圧縮比変更可能量は小さくなる。図17において実線F2は機械圧縮比を増大させる場合の圧縮比変更可能量を示しており、この場合の圧縮比変更可能量は機関負荷が高くなるほど小さくなる。
本実施形態では、図17においてF0で示した基準となる圧縮比変更可能量が予め記憶されており、この基準圧縮比変更可能量を図17においてF1及びF2で示す関係により補正することで、機関負荷に応じた圧縮比変更可能量の予想値が算出される。すなわち、本実施形態では、圧縮比変更可能量の予想値を機関負荷に応じて変えるようにしている。
図18は一定時間に変更可能な機械圧縮比の量とカムシャフト54、55の回転角度、すなわち円形カム58の回転角度との関係を示している。なお、図18において横軸の左側は図3(A)に示した機械圧縮比の最も低い状態のときを示しており、図18において横軸の右端は図3(C)に示した機械圧縮比の最も高い状態のときを示している。また、図18は機関負荷が或る負荷とされているときの圧縮比変更可能量を示しており、図18において破線は燃焼圧によって可変圧縮比機構Aに加わるトルクを示している。
図2に示した実施形態では、ウォームギアとしてウォームホイール63、64によりウォーム61、62が回転せしめられることのない型式の、すなわちウォーム61、62がウォームホイール63、64の逆転止め作用をなしている型式のウォームギアが用いられており、図18の一点鎖線G0はこのようなウォームギアが用いられている場合において機関の運転が停止されているときの圧縮比変更可能量を示している。図3(A)、(B)、(C)からわかるように機械圧縮比が中間のとき、すなわち図3(B)に示したときにカムシャフト54、55の単位回転角度当たりの圧縮比変化量が最も大きくなり、したがって図18の一点鎖線G0で示したように機械圧縮比が中間のときに圧縮比変更可能量は最も大きくなる。
また、図18において破線で示したように燃焼圧によって可変圧縮比機構Aに加わるトルクは図3(B)に示したとき、すなわち機械圧縮比が中間のときに最も高くなる。一方、図18において実線G1は機械圧縮比を低下させる場合を示しており、実線G2は機械圧縮比を増大させる場合を示している。図18に示したように、機械圧縮比を低下させるときの圧縮比変更可能量G1は機械圧縮比を増大させるときの圧縮比変更可能量G2よりも大きくなる。また、機械圧縮比が中間のときに圧縮比に基づくトルクが最も高くなるのでこのとき圧縮比変更可能量G1は高くなり、圧縮比変更可能量G2は低下する。
本実施形態では、図18においてG0で示した基準となる圧縮比変更可能量が予め記憶されており、この基準圧縮比変更可能量を図18においてG1およびG2で示した関係により補正することによって、カムシャフト54、55の回転角度に応じた圧縮比変更可能量が算出される。さらに、この圧縮比変更可能量を図17においてF1およびF2で示した関係により補正することによってカムシャフト54、55の回転角度および機関負荷に応じた圧縮比変更可能量の予測値が算出される。すなわち、この本実施形態では圧縮比変更可能量の予測値を回転するカム58の回転角度および機関負荷に応じて変えるようにしている。
一方、図19は可変圧縮比機構Aの全ての軸受をすべり軸受から構成した場合においてすべり軸受による潤滑状態が圧縮比変更可能量に与える影響を示している。すなわち、機関負荷が高いほど油膜切れを生じ始める境界潤滑領域となりやすく、また軸受面上における動作速度が遅いほど境界潤滑領域となりやすい。従って図19に示したように(機関負荷/動作速度)が或る限界値を越えると潤滑状態が境界潤滑領域となり、その結果すべり軸受における摩擦力が増大するために圧縮比変更可能量が小さくなる。
本発明による別の実施形態ではすべり軸受における潤滑状態も考慮に入れて圧縮比変更可能量の予測値が算出される。例えば図17においてF0で示した基準圧縮比変更可能量を図17においてF1およびF2で示した関係により補正し、補正された圧縮比変更可能量を図18においてG1およびG2で示した関係により補正し、補正された圧縮比変更可能量を図19に示した関係により補正することによって機関負荷、カムシャフト54、55の回転角度および(機関負荷/動作速度)に応じた圧縮比変更可能量の予測値が算出される。
図20は機関負荷の変動を検出し、検出された機関負荷の変動に基づいて圧縮比変更可能量を算出するようにした実施形態を示している。サイクル間或いは気筒間において燃焼圧が変動すると偏心軸57が撓み、シリンダブロック2とクランクケース1との相対位置が変化する。このシリンダブロック2とクランクケース1との相対位置の変化、即ちシリンダブロック2とクランクケース1との間隔の変化は相対位置センサ22によって検出される。このシリンダブロック2とクランクケース1との間隔は燃焼圧が高くなると大きくなる。
前述したように可変圧縮比機構Aには燃焼圧によりトルクが加わり、このトルクは可変圧縮比機構Aに対して圧縮比を低下させる方向に作用する。従って燃焼圧が高くなると可変圧縮比機構Aにより容易に機械圧縮比を低下しうるようになる。図20のH1は機械圧縮比を低下させるときの圧縮比変更可能量を示しており、図20のH2は機械圧縮比を増大させるときの圧縮比変更可能量を示している。
この実施形態では燃焼圧の変動に応じて圧縮比変更可能量の予測値を適切に算出することができる。特に圧縮比変更可能量の予測値を図17に示したように機関負荷に応じて算出し、このとき圧縮比変更可能量の予測値を図20に示したように燃焼圧の変動に基づいて更に算出すると圧縮比変更可能量の予測値を最適な値に精密に制御することができる。なお、ウォームギアとしてウォームホイール63、64によりウォーム61、62を回転しうる型式のウォームギアを用いると燃焼圧が変動したときの偏心軸57の撓みが更に大きくなり、その結果燃焼圧により可変圧縮比機構Aに作用するトルクの変動を相対位置センサ22により更に精度よく検出することができる。
次に図21から図36を参照しつつ要求吸入空気量が減少せしめられた場合について説明する。なお、図21から図36のうちで図21および図22は要求吸入空気量がゆっくりと減少せしめられた場合を示しており、図23から図30は要求吸入空気量が比較的速く減少せしめられた場合を示しており、図31から図36は要求吸入空気量が急激に減少せしめられた場合を示している。なお、図21から図36は機械圧縮比および吸気弁閉弁時期の組合せを示す動作点が基準動作線W上のn点にあるときに要求吸入空気量の減少作用が開始された場合を示している。
まず初めに図21および図22を参照しつつ要求吸入空気量がゆっくりと減少せしめられた場合について説明する。なお、図22は図15と同様なスロットル全開面θmaxを示している。
図22はこの場合における現在の動作点と要求動作点との関係を示している。すなわち、図22には現在の動作点がeiであるときの要求動作点がdiで示されており、このとき一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量がRiで示されており、このとき一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量がTiで示されている。更に図22には現在の動作点がejであるときの要求動作点がdjで示されており、このとき一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量がRjで示されており、このとき一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量がTjで示されている。
この場合には要求動作点diは機械圧縮比の到達限界の手前となり、吸気弁閉弁時期の到達限界の手前となるので要求動作点diが目標動作点となる。同様に要求動作点djは機械圧縮比の到達限界の手前となり、吸気弁閉弁時期の到達限界の手前となるので要求動作点djが目標動作点となる。したがってこの場合には動作点は基準動作線Wに沿って移動する。すなわち、要求吸入空気量がゆっくりと減少するときにはスロットル弁17が全開に保持された状態で吸気弁閉弁時期が徐々に遅角され、実圧縮比が一定となるように機械圧縮比が徐々に増大される。
次に図23から図30を参照しつつ要求吸入空気量が比較的速く減少せしめられた場合について説明する。前述したように本発明による実施形態では例えば予め定められた時間毎に要求吸入空気量が算出されており、順次算出される要求吸入空気量を満たす基準動作線W上の要求動作点が図23においてd1、d2、d3、d4、d5で示されている。
なお、本発明による制御を容易に理解しうるように図23は要求動作点d1における要求吸入空気量がQ5であり、要求動作点d2における要求吸入空気量がQ5とQ4の中間値であり、要求動作点d3における要求吸入空気量がQ4であり、要求動作点d4における要求吸入空気量がQ4とQ3との中間値であり、要求動作点d5における要求吸入空気量がQ3であった場合を示している。すなわち、順次算出された要求吸入空気量がQ6(スロットル全開面θmax上のn点)から、Q5、Q5とQ4の中間値、Q4、Q4とQ3の中間値、Q3に変化した場合を示している。
また図24はスロットル全開面θmaxを示しており、図25は吸入空気量がQ5の同一吸入空気量面を示しており、図26は吸入空気量がQ5とQ4の中間値の同一吸入空気量面を示しており、図27は吸入空気量がQ4の同一吸入空気量面を示しており、図28は吸入空気量がQ4とQ3の中間値の同一吸入空気量面を示しており、図29は吸入空気量がQ3の同一吸入空気量面を示している。
さて、機械圧縮比および吸気弁閉弁時期が図23に示した動作点nに保持されているときに要求吸入空気量がQ6からQ5に変化し、その結果要求動作点がd1になったとすると、まず初めに図24に示したようにスロットル全開面θmax上において目標動作点e1が算出される。この目標動作点e1の算出方法はこれまで述べてきた算出方法と同じであって、一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量と一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量から侵入禁止領域X1内に侵入することなく要求動作点d1に最も近い目標動作点e1が算出される。図24に示した例ではこの目標動作点e1は基準動作線W上に位置している。
ところでこの目標動作点e1における吸入空気量は上述したQ6とQ5の中間値であって要求吸入空気量Q5よりも大きい状態にある。しかしながら吸入空気量はできる限り要求吸入空気量に一致させることが好ましい。ところが要求吸入空気量が減少せしめられる場合にはスロットル弁17の開度を変化させることによって吸入空気量を調整することができる。そこで目標動作点e1における吸入空気量が要求吸入空気量Q5よりも大きい状態にある場合には機械圧縮比および吸気弁閉弁時期に対する目標値は変化させることなく吸入空気量を要求吸入空気量Q5とするのに必要な目標開度までスロットル弁17を閉弁させるようにしている。
すなわち、図23において、図24に示したスロットル全開面θmax上の目標動作点e1の真下に位置する同一吸入空気量面Q5上の点が最終的な目標動作点e1とされる。この同一吸入空気量面Q5上の最終的な目標動作点e1が図23および図25に示されており、機械圧縮比、吸気弁閉弁時期およびスロットル弁17の開度はこの最終的な目標動作点e1に向けて変化せしめられることになる。すなわち、このときには機械圧縮比は増大せしめられ、吸気弁閉弁時期は遅角され、スロットル弁17の開度は全開状態から小さくされる。
次いで要求吸入空気量がQ5とQ4の中間値になって要求動作点がd2になると、今度は図25に示したように現在の吸入空気量Q5における同一吸入空気量面上において目標動作点e2が算出される。この目標動作点e2の算出方法もこれまで述べてきた算出方法と同じであって、一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量と一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量から侵入禁止領域X1内に侵入することなく要求動作点d2に最も近い目標動作点e2が算出される。図25に示した例ではこの目標動作点e2は同一吸入空気量面Q5内における基準動作線W上に位置している(なお、このときの基準動作線Wは図10に示した基準動作線Wとは異なるものであり、同一吸入空気量面Q5内における最小燃費動作線を示している)。
ところでこの場合にも目標動作点e2における吸入空気量は要求吸入空気量よりも大きい状態にある。したがってこの場合にも、図23において、図25に示した同一吸入空気量面Q5上の目標動作点e2の真下に位置する同一吸入空気量面(Q5とQ4の中間値)上の点が最終的な目標動作点e2とされる。この同一吸入空気量面(Q5とQ4の中間値)上の最終的な目標動作点e2が図23および図26に示されており、機械圧縮比、吸気弁閉弁時期およびスロットル弁17の開度はこの最終的な目標動作点e2に向けて変化せしめられることになる。このときにも機械圧縮比は増大せしめられ、吸気弁閉弁時期は遅角され、スロットル弁17の開度は全開状態から小さくされる。
次いで要求吸入空気量がQ4となり、次いでQ4とQ3の中間値となり、次いでQ3になると同様なことが順次繰返される。すなわち、要求吸入空気量がQ4になると図27に示したように同一吸入空気量面Q4上における最終的な目標動作点e3が算出され、要求吸入空気量がQ4とQ3の中間値になると図28に示したように同一吸入空気量面(Q4とQ3との中間値)上における最終的な目標動作点e4が算出され、次いで要求吸入空気量がQ3になると図29に示したように同一吸入空気量面Q3上における最終的な目標動作点e5が算出される。
この間、すなわち機械圧縮比、吸気弁閉弁時期およびスロットル弁17の開度が順次最終的な目標動作点e3、e4、e5に向けて変化せしめられている間、機械圧縮比は増大せしめられ、吸気弁閉弁時期は遅角され、スロットル弁17の開度は小さくされる。
要求吸入空気量がQ3になると図29に示したように同一吸入空気量面Q3上において順次最終的な目標動作点e6、e7、e8、e9、e10が算出され、機械圧縮比、吸気弁閉弁時期およびスロットル弁17の開度は順次これら最終的な目標動作点e6、e7、e8、e9、e10を経て要求動作点d5まで変化せしめられることになる。この間、機械圧縮比は増大せしめられ、吸気弁閉弁時期はe8に達するまで遅角され、スロットル弁17の開度は徐々に大きくされてe8に達すると全開せしめられる。
図30は図23に示したように目標吸入空気量がQ6(n点)からQ3(目標動作点d5)まで比較的速く減少せしめられた場合の吸気弁閉弁時期、機械圧縮比、実圧縮比、スロットル開度の変化を示している。図30からこの場合には要求吸入空気量が最終的な目標値Q3となった後(動作点e4)、吸気弁閉弁時期の遅角動作が完了し(動作点e8)、次いで機械圧縮比の増大作用が完了する(目標動作点d5)ことがわかる。一方、実圧縮比は吸気弁閉弁時期の遅角作用が完了するまで(動作点d8)徐々に減少し、その後徐々に上昇する。また、スロットル開度は動作点が同一吸入空気量面Q3上の動作点e5となるまで全開状態から徐々に低下せしめられ、次いで吸気弁閉弁時期の遅角動作が完了するまで(動作点e8)まで全開状態まで徐々に開弁せしめられる。
図23から図30に示したように要求吸入空気量が比較的速く減少せしめられたときには機械圧縮比および吸気弁閉弁時期の制御に加えてスロットル開度も制御される。本発明ではこのときには機械圧縮比と吸気弁閉弁時期とスロットル開度との組合せに対し3次元的侵入禁止領域X1、X2が設定されており、機械圧縮比と吸気弁閉弁時期とスロットル開度との組合せを示す動作点がこの3次元的侵入禁止領域X1、X2内に侵入するのが禁止される。
なお、この場合にも要求吸入空気量が変化したときに、機械圧縮比および吸気弁閉弁時期については、動作点が要求吸入空気量を満たす要求動作点に向けて3次元的侵入禁止領域X1、X2内に侵入することなく変化するように、一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量及び一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量に基づいて一定時間毎に目標動作点を算出し、機械圧縮比および吸気弁閉弁時期が算出された目標動作点に向けて変化せしめられる。さらにこの場合、要求吸入空気量が変化したときにスロットル開度は3次元的侵入禁止領域X1、X2に侵入しないように要求吸入空気量に応じて変化せしめられる。
なお、この場合でも機械圧縮比、吸気弁閉弁時期およびスロットル開度ができる限り早く要求吸入空気量を満たす要求動作点に達するように、目標動作点は、現在の動作点から一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量及び一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量以内に位置する動作点のうち、3次元的侵入禁止領域X1、X2内に侵入しない範囲で要求吸入空気量を満たす要求動作点に向けて動作点から最も離れた動作点とされる。
またこの場合、本発明による実施形態では、要求吸入空気量が減少したときに、機械圧縮比および吸気弁閉弁時期については現在の動作点から要求吸入空気量を満たす動作点に向けて現在の吸入空気量における侵入禁止領域X1、X2内に侵入することなく一定時間後に到達可能な目標動作点が算出されると共に機械圧縮比および吸気弁閉弁時期が算出された目標動作点に向けて変化せしめられる。一方、この場合、スロットル開度については算出された目標動作点において要求吸入空気量を満たす目標開度が算出されると共に目標開度が3次元的侵入禁止領域X1、X2でない限りはスロットル開度が目標開度まで変化せしめられる。
次に図31から図36を参照しつつ要求吸入空気量が急激に最小吸入空気量Q1まで減少せしめられた場合について説明する。前述したように本発明による実施形態では例えば予め定められた時間毎に要求吸入空気量が算出されており、順次算出される要求吸入空気量を満たす基準動作線W上の要求動作点が図31においてd1、d2、d3で示されている。
なお、この場合にも本発明による制御を容易に理解しうるように図31は要求動作点d1における要求吸入空気量がQ4であり、要求動作点d2における要求吸入空気量がQ2とQ3の中間値であり、要求動作点d3における要求吸入空気量がQ1であった場合を示している。すなわち、順次算出された要求吸入空気量がQ6(スロットル全開面θmax上のn点)から、Q4、Q3とQ2の中間値、Q1に変化した場合を示している。
また図32はスロットル全開面θmaxを示しており、図33は吸入空気量がQ4の同一吸入空気量面を示しており、図34は吸入空気量がQ3とQ2の中間値の同一吸入空気量面を示しており、図35は吸入空気量がQ1の同一吸入空気量面を示している。
さて、機械圧縮比および吸気弁閉弁時期が図31に示した動作点nに保持されているときに要求吸入空気量がQ6からQ4に変化し、その結果要求動作点がd1になったとすると、まず初めに図32に示したようにスロットル全開面θmax上において目標動作点e1が算出される。この目標動作点e1の算出方法は図24に示した算出方法と同じであって、一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量と一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量から侵入禁止領域X1内に侵入することなく要求動作点d1に最も近い目標動作点e1が算出される。図32に示した例ではこの目標動作点e1は基準動作線W上に位置している。
一方、このとき図23に示した場合と同様に機械圧縮比および吸気弁閉弁時期に対する目標値は変化させることなく吸入空気量を要求吸入空気量Q4とするのに必要な目標開度までスロットル弁17が閉弁せしめられる。
すなわち、図31において、図32に示したスロットル全開面θmax上の目標動作点e1の真下に位置する同一吸入空気量面Q4上の点が最終的な目標動作点e1とされる。この同一吸入空気量面Q4上の最終的な目標動作点e1が図31および図33に示されており、機械圧縮比、吸気弁閉弁時期およびスロットル弁17の開度はこの最終的な目標動作点e1に向けて変化せしめられることになる。このときには機械圧縮比は増大せしめられ、吸気弁閉弁時期は遅角され、スロットル弁17の開度は全開状態から小さくされる。
次いで要求吸入空気量がQ3とQ2の中間値になって要求動作点がd2になると、今度は図33に示したように現在の吸入空気量Q4における同一吸入空気量面上において目標動作点e2が算出される。この目標動作点e2の算出方法もこれまで述べてきた算出方法と同じであって、一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量と一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量から侵入禁止領域X1内に侵入することなく要求動作点d2に最も近い目標動作点e2が算出される。この場合にも、図31において、図33に示した同一吸入空気量面Q4上の目標動作点e2の真下に位置する同一吸入空気量面(Q3とQ2の中間値)上の点が最終的な目標動作点e2とされる。この同一吸入空気量面(Q3とQ2の中間値)上の最終的な目標動作点e2が図31および図34に示されている。
次いで要求吸入空気量がQ1になって要求動作点がd3になると図34に示したように同一吸入空気量面(Q3とQ2の中間値)上において目標動作点e3が算出され、次いで図35に示したように同一吸入空気量面Q1上における最終的な目標動作点e3が算出される。最終的な目標動作点e3が算出されると機械圧縮比、吸気弁閉弁時期およびスロットル弁17の開度はこの最終的な目標動作点e3に向けて変化せしめられる。このときにも機械圧縮比は増大せしめられ、吸気弁閉弁時期は遅角され、スロットル弁17の開度は全開状態から小さくされる。
ところでこのように要求吸入空気量が小さくなると同一吸入空気量面内に低負荷側侵入禁止領域X2が現われてくる。この同一吸入空気量面内に現われる低負荷側侵入禁止領域X2は吸入空気量が小さくなるほど大きくなり、この同一吸入空気量面に現われる低負荷側侵入禁止領域X2は図35に示したように要求吸入空気量が最小Q1になったときに最大となる。なお、本発明による実施形態ではこの低負荷側侵入禁止領域X2の周りには低負荷側侵入禁止領域X2からわずかな間隔を隔てて、低負荷侵入禁止領域X2内への動作点の侵入を防止するための侵入阻止面が予め設定されており、この侵入阻止面と同一吸入空気量面との交線である侵入阻止線が図35においてWXで示されている。
さて、本発明による実施形態では吸入空気量が要求吸入空気量Q1になると図35に示したように同一吸入空気量面Q1上において一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量と一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量から要求動作点d3に最も近い各目標動作点e4、e5、e6、e7、e8、e9、e10、e11、e12が順次算出される。この場合、目標動作点e4のように要求動作点d3に最も近い算出された目標動作点が侵入阻止線WXに対し侵入禁止領域X2と反対側に位置するときには算出された目標動作点が目標動作点e4とされる。これに対し、要求動作点d3に最も近い算出された目標動作点が侵入阻止線WXよりも侵入禁止領域X2に近い側にあるときには機械圧縮比および吸気弁閉弁時期のいずれかの到達限界となる侵入阻止線WX上の点が目標動作点e5、e6、e7、e8、e9とされる。
すなわち、要求吸入空気量がQ1になると機械圧縮比、吸気弁閉弁時期およびスロットル弁17の開度は同一吸入空気量面Q1上において順次最終的な目標動作点e4、e5、e6、e7、e8、e9、e10、e11、e12を経て要求動作点d3まで変化せしめられることになる。この間、機械圧縮比は増大せしめられ、吸気弁閉弁時期はe10に達するまで遅角され、スロットル弁17の開度は徐々に大きくされてe10に達すると全開せしめられる。
図36は図31に示したように目標吸入空気量がQ6(n点)からQ1(目標動作点d3)まで急激に減少せしめられた場合の吸気弁閉弁時期、機械圧縮比、実圧縮比、スロットル開度の変化を示している。図36からこの場合には要求吸入空気量が最終的な目標値Q1となった後(動作点e2)、吸気弁閉弁時期の遅角作用が完了し(動作点e10)、次いで機械圧縮比の増大作用が完了する(目標動作点d3)ことがわかる。一方、実圧縮比は吸気弁閉弁時期の遅角作用が完了するまで(動作点e10)徐々に減少し、その後徐々に上昇する。また、スロットル開度は動作点が同一吸入空気量面Q1上の動作点e3となるまで全開状態から低下せしめられ、次いで吸気弁閉弁時期の遅角作用が完了するまで(動作点e10)まで徐々に開弁せしめられる。
なお、要求吸入空気量が変化したときに要求吸入空気量を満たすスロットル弁17の開度が3次元侵入禁止領域内、すなわち低負荷側侵入禁止領域X2内となる場合がある。この場合にはスロットル弁17の開度は前述した侵入阻止面まで、すなわち3次元侵入禁止領域内に侵入する手前まで変化せしめられ、次いで機械圧縮比と吸気弁閉弁時期とスロットル開度との組合せを示す動作点は要求吸入空気量を満たす動作点に向けて3次元侵入禁止領域内に侵入することなく変化せしめられる。
また、上記実施形態では、要求動作点は、要求吸入空気量(要求機関負荷)を満たす基準動作線W上の動作点となっている。したがって、要求動作線は要求吸入空気量に基づいて、すなわち機関運転状態に基づいて設定されるといえる。また、上述した基準動作線Wは燃費を最低にすることが必要される機関運転状態において動作点が通るべき動作線を示しており、例えば機関冷間始動時等、内燃機関や三元触媒の昇温が必要とされている機関運転状態ではこの動作線は上記基準動作線Wとは異なるものとなる。したがって、燃費を最小にする運転状態と内燃機関を昇温させる運転状態とでは要求動作点は異なるものとなる。これらをまとめて表現すると、要求動作点は各機関運転状態において最適な動作点であり、機関運転状態毎に設定されるといえる。
図37は現在の動作点から予め定められた一定時間後に到達可能な目標動作点を算出するための、すなわち機械圧縮比、吸気弁閉弁時期およびスロットル開度の目標値を算出するためのルーチンを示している。
このルーチンでは予め定められた一定時間後に到達可能な目標動作点がこの予め定められた一定時間毎に算出される。したがって図37に示したルーチンはこの予め定められた時間毎の割込みによって実行される。この予め定められた時間は任意に定めることができるが本発明による実施形態ではこの予め定められた一定時間は8msecとされている。したがって本発明による実施形態では図37に示した目標値の算出ルーチンは8msec毎に実行され、現在の動作点から8msec後に到達可能な目標動作点が8msec毎に算出されることになる。
図37を参照するとまず初めにステップ100において要求吸入空気量GXが算出される。この要求吸入空気量GXは例えばアクセルペダル40の踏込み量および機関回転数の関数として予めROM32内に記憶されている。次いでステップ101では要求吸入空気量GXに応じた基準動作線W上の要求動作点が算出される。次いでステップ102では現在の動作点が要求動作点であるか否かが判別され、現在の動作点が要求動作点であるときには処理サイクルを完了する。これに対し、現在の動作点が要求動作点でないときにはステップ103に進んで要求吸入空気量GXが現在の動作点における吸入空気量GAよりも大きいか否かが判別される。
GX>GAのとき、すなわち吸入空気量を増大すべきときにはステップ104に進み、図14から図16に基づいて説明したようにして目標動作点が決定される。すなわち、ステップ104では要求吸入空気量GXに応じた目標スロットル開度が算出される。この目標スロットル開度は要求動作点がスロットル全開面θmax上に位置すると通常は全開となる。次いでステップ105では一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量が算出され、次いでステップ106では一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量が算出される。
次いでステップ107では図15に基づいて説明した方法でもって目標動作点が決定される。次いでステップ108では決定した目標動作点から機械圧縮比の目標値および吸気弁閉弁時期の目標値が算出される。スロットル開度の目標値はステップ104において既に目標スロットル開度として算出されている。
一方、ステップ103においてGX≦GAであると判別されたとき、すなわち吸入空気量を減少すべきかまたは吸入空気量が要求吸入空気量となっているときにはステップ109に進み、図21から図36に基づいて説明したようにして目標動作点が決定される。すなわち、ステップ109では一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量が算出され、次いでステップ110では一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量が算出される。次いでステップ111では図22、図24〜図29及び図32〜図35に基づいて説明した方法でもって目標動作点が決定される。
次いでステップ112では要求吸入空気量を満たす目標スロットル開度が算出され、この目標スロットル開度がスロットル開度の目標値とされる。ただし、要求吸入空気量GXを満たすスロットル開度が侵入禁止領域内となるときには目標スロットル開度は前述した侵入阻止面上の値とされ、機械圧縮比および吸気弁閉弁時期が要求動作点に近づくにしたがって目標スロットル開度は侵入阻止面に沿って変化せしめられる。
なおこれまで説明していなかったが要求吸入空気量が増大する場合にも同様なことが生じうる。例えば、動作点が図14において高負荷側侵入禁止領域X1の下方領域に位置するときに要求吸入空気量が増大すると目標スロットル開度が高負荷側侵入禁止領域X1内になる場合がある。このときには目標スロットル開度は各同一吸入空気量面に対し予め設定されている各基準動作線Wを含む基準動作面上の値とされ、機械圧縮比および吸気弁閉弁時期が要求動作点に近づくにしたがって目標スロットル開度はこの基準動作面に沿って変化せしめられる。
図38はPID制御を用いて機械圧縮比、吸気弁閉弁時期およびスロットル開度が図37に示したルーチンにおいて算出された目標値になるように可変圧縮比機構A、可変バルブタイミング機構Bおよびスロットル弁17を駆動するための駆動ルーチンを示している。このルーチンは機関の運転が開始されると繰返し実行される。
図38を参照するとステップ200では吸気弁閉弁時期の目標値IT0と現在の吸気弁閉弁時期ITとの差ΔIT(=IT0−IT)が算出され、機械圧縮比の目標値CR0と現在の機械圧縮比CRとの差ΔCR(=CR0−CR)が算出され、スロットル開度の目標値θ0と現在のスロットル開度θとの差Δθ(θ0−θ)が算出される。
次いでステップ201ではΔITに比例定数Kp1を乗算することによって可変バルブタイミング機構Bに対する駆動電圧の比例項Ep1が算出され、ΔCRに比例定数Kp2を乗算することによって可変圧縮比機構Aに対する駆動電圧の比例項Ep2が算出され、Δθに比例定数Kp3を乗算することによってスロットル弁17に対する駆動電圧の比例項Ep3が算出される。
次いでステップ202ではΔITに積分定数Ki1を乗算してこの乗算結果(Ki1・ΔIT)を積算することにより可変バルブタイミング機構Bに対する駆動電圧の積分項Ei1が算出され、ΔCRに積分定数Ki2を乗算してこの乗算結果(Ki2・ΔCR)を積算することにより可変圧縮比機構Aに対する駆動電圧の積分項Ei2が算出され、Δθに積分定数Ki3を乗算してこの乗算結果(Ki3・Δθ)を積算することによりスロットル弁17に対する駆動電圧の積分項Ei3が算出される。
次いでステップ203では現在のΔITと前回算出されたΔIT1との差(ΔIT−ΔIT1)に微分定数Kd1を乗算することにより可変バルブタイミング機構Bに対する駆動電圧の微分項Ed1が算出され、現在のΔCRと前回算出されたΔCR1との差(ΔCR−ΔCR1)に微分定数Kd2を乗算することにより可変圧縮比機構Aに対する駆動電圧の微分項Ed2が算出され、現在のΔθと前回算出されたΔθ1との差(Δθ−Δθ1)に微分定数Kd3を乗算することによりスロットル弁17に対する駆動電圧の微分項Ed3が算出される。
次いでステップ204では比例項Ep1と積分項Ei1と微分項Ed1とを加算することにより可変バルブタイミング機構Bに対する駆動電圧E1が算出され、比例項Ep2と積分項Ei2と微分項Ed2とを加算することにより可変圧縮比機構Aに対する駆動電圧E2が算出され、比例項Ep3と積分項Ei3と微分項Ed3とを加算することによりスロットル弁17に対する駆動電圧E3が算出される。
これら駆動電圧E1、E2、E3にしたがってそれぞれ可変バルブタイミング機構B、可変圧縮比機構Aおよびスロットル弁17が駆動されると吸気弁閉弁時期、機械圧縮比およびスロットル開度はそれぞれ順次変化する目標値に向けて変化することになる。
ところで、多くの内燃機関では燃費向上等を目的として機関運転状態に応じて燃焼室5への燃料供給を停止する燃料カット制御が行われる。燃料カット制御を行う場合としては、例えば機関負荷が低下して減速運転が行われる場合、機関回転数や内燃機関を搭載した車両の車速が過剰に上昇して機関回転数や車速の低下が必要とされる場合、内燃機関を搭載した車両のオートマチックトランスミッションにおいてシフトアップが行われる際に機関回転数を低下させる場合等が挙げられる。
このような燃料カット制御が行われている間は燃焼室5内で混合気の燃焼が行われないため、動作点が侵入禁止領域X1、X2内に侵入しても実質的な問題は生じない。しかしながら、燃料カット制御を終了して通常運転に復帰するときに動作点が侵入禁止領域X1、X2内に位置すると、通常運転復帰時に異常燃焼やトルク変動が発生してしまう。したがって、燃料カット制御中においても通常運転時と同様に動作点が侵入禁止領域X1、X2内に侵入しないようにすることが必要となる。
ところで、上述した実施形態では、図17を用いて説明したように、燃焼圧を考慮して機関負荷に基づいて一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量を算出し、これに基づいて目標動作点を算出するようにしている。したがって、図17に示したように機関負荷に基づいて一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量を算出する際には、燃料カット制御中には一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量は一定として算出されることになる。
また、上述した実施形態では、図18を用いて説明したように、カムシャフト54、55の回転角度及び燃焼圧を考慮して、カムシャフト54、55の回転角度に基づいて一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量を算出している。しかしながら、燃料カット制御中には燃焼圧は発生しない。このため、燃料カット制御中には一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量はカムシャフト54、55の回転角度に基づいて図18に一点鎖線G0で示したように算出されることになる。
しかしながら、燃料カット制御中においては、一定時間に変更可能な機械圧縮比の量は必ずしもカムシャフト54、55の回転角度のみに応じて変化するわけではなく、燃焼室5内に供給される吸入空気量や実圧縮比に応じて変化する。このため、燃焼カット制御中において、一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量をカムシャフト54、55の回転角度のみに基づいて図18に一点鎖線G0で示したように算出すると、一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量を正確に算出することができなくなってしまう。
このように一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量を正確に算出することができなくなると、機械圧縮比及び吸気弁閉弁時期の組合せを示す動作点が侵入禁止領域X1、X2内に侵入してしまう場合がある。以下、このことについて簡単に説明する。
機関負荷が低下して減速運転が行われる場合における燃料カット制御について考えると、この場合、機関負荷はゼロとなっており、したがって要求吸入空気量も最低、すなわち図10に示したQ1となっている。このため、燃料カット制御中には機械圧縮比及び吸気弁閉弁時期の組合せを示す動作点は例えば図31〜図36に示したように移動せしめられることになる。
このとき動作点が同一吸入空気量平面Q1上の動作点となった後は図31及び図35に示したように目標動作点が同一吸入空気量平面Q1上を移動せしめられ(e3〜e12)、特に動作点e5〜e9は侵入阻止線WX上に位置する。
図39は、図35に示した吸入空気量平面Q1の一部の拡大図である。現在の動作点がe5にある状態で図35に示した場合と同様に次の目標動作点を算出する場合、現在の動作点から一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量R及び一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量T以内に位置する動作点のうち侵入阻止線WXよりも侵入禁止領域X2側とならない動作点e6が次の目標動作点として算出されることになる。
ところが、一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量Rに誤差があり、実際には一定時間に機械圧縮比はR’のみしか変更できないと、目標動作点が図39の点e6であるのに対して、実際に到達する動作点は図39の点e6’となってしまう。図39からわかるように動作点e6’は侵入禁止領域X2内に位置するため、動作点がe6’にある状態で燃料カット制御を終了して通常運転に復帰してしまうと、通常運転復帰時に異常燃焼やトルク変動が発生してしまうことになる。
そこで、本実施形態では、燃料カット制御中には機関負荷ではなく吸入空気量及び実圧縮比に基づいて一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量を算出することとしている。以下では、このことについて図40から図43を参照して説明する。
図40は、一定時間に変更可能な機械圧縮比の量(圧縮比変更可能量)と吸入空気量との関係を示している。図40は機械圧縮比及び吸気弁閉弁時期が或る機械圧縮比及び或る吸気弁閉弁時期とされているときの圧縮比変更可能量を示している。
ここで、燃料カット制御中、すなわち機関負荷がゼロであっても、吸気弁7が閉弁してからピストン4が圧縮上死点に到達するまでの間に燃焼室5内の混合気の圧縮作用が発生する。逆にいうと、ピストン4が上昇している間、燃焼室5内の混合気によりピストン4にはピストン4を下降させる方向に力が作用し、この力はシリンダブロック2をクランクケース1から引き離す方向に、すなわち圧縮比を低下させる方向に作用する。この力は、図40に破線で示したように、吸気弁7の閉弁時に燃焼室5内に供給されている吸気ガス量、すなわち吸入空気量が大きくなるほど大きくなる。
このようにこの力は可変圧縮比機構Aに対して圧縮比を低下させる方向に作用するので機械圧縮比を低下させる場合には機械圧縮比は容易に低下し、したがってこの場合には圧縮比変更可能量は大きくなる。図40において実線I1はこの場合の圧縮比変更可能量を示しており、この場合の圧縮比変更可能量は吸入空気量が多くなるほど大きくなる。これに対して、この力は機械圧縮比の増大に対して抵抗するので機械圧縮比を増大させる場合には機械圧縮比を低下させる場合い比べて圧縮比変更可能量は小さくなる。図40において実線I2は機械圧縮比を増大させる場合の圧縮比変更可能量を示しており、この場合の圧縮比変更可能量は吸入空気量が多くなるほど小さくなる。
一方、図41は、一定時間に変更可能な機械圧縮比の量(圧縮比変更可能量)と実圧縮比との関係を示している。図41は吸入空気量が或る吸入空気量とされているときの圧縮比変更可能量を示している。
上述したように、燃料カット制御中でもピストン4の圧縮作用により圧縮比を低下させる方向に力が作用するが、この力は、図41に破線で示したように、実圧縮比によっても変化する。すなわち、実圧縮比が高くなると圧縮上死点付近での燃焼室5内の圧力が高くなり、これに伴って圧縮比を低下させる方向に作用する力が大きくなる。したがって、上述した吸入空気量の場合と同様に、機械圧縮比を低下させる場合、図41において実線J1で示したように実圧縮比が高くなるほど圧縮比変更可能量は大きくなる。一方、機械圧縮比を増大させる場合、図41において実線J2で示したように実圧縮比が高くなるほど圧縮比変更可能量は小さくなる。
これらをまとめると、燃料カット制御中には、圧縮比変更可能量と吸入空気量及び実圧縮比との関係は図42に示したようになる。図42(A)は機械圧縮比を低下させる場合、図42(B)は機械圧縮比を増大させる場合をそれぞれ示している。図42(A)に示したように、機械圧縮比を低下させる場合には、吸入空気量が多いほど且つ実圧縮比が高いほど圧縮比変更可能量は大きくなる。一方、図42(B)に示したように、機械圧縮比を増大さえる場合には、吸入空気量が多いほど且つ実圧縮比が高いほど圧縮比変更可能量は小さくなる。
そこで、本実施形態では、図42に示したような関係を予め求め、燃料カット制御中には、図17に示した機関負荷に基づく圧縮比変更可能量の予測値の算出を行わずに、図42に示したような関係に基づいて吸入空気量及び実圧縮比に応じて圧縮比変更可能量の予測値の算出が行われる。すなわち、本実施形態では、燃料カット制御中には、圧縮比変更可能量の予測値を吸入空気量及び実圧縮比に応じて変えるようにしている。なお、圧縮比変更可能量の予測値は、必ずしも吸入空気量及び実圧縮比の両方に応じて変えるようにしなくてもよく、これらのうちの一方に応じて変えるようにしてもよい。
また、燃料カット制御を行っていない通常運転中には、圧縮比変更可能量は燃焼圧の影響を受けて図18に示したようにカムシャフト54、55の回転角度に応じて変化する。一方、燃料カット制御を行っているときにも、同様に、圧縮比変更可能量はピストン4による圧縮作用の影響を受けてカムシャフト54、55の回転角度に応じて変化する。この様子を図43に示す。
図43は、図18と同様な図であり、図18の一点鎖線K0はピストン4による圧縮作用が生じていないとき(例えば、吸気弁7及び排気弁9が開いたままになっているとき)の圧縮比変更可能量を示しており、また、図中の破線はピストン4による圧縮作用により圧縮比を低下させる方向に作用する力を示している。この力の大きさは図18に示した場合の燃焼圧に比べて小さいが、燃焼圧と同様に作用する。したがって、機械圧縮比を低下させる場合には図43に実線K1で示したように圧縮比変更可能量が大きくなると共に、機械圧縮比を増大させる場合には実線K2で示したように実圧縮比変更可能量が小さくなる。さらに、機械圧縮比が中間のときに、機械圧縮比を低下させる場合の圧縮比変更可能量が大きくなる程度および機械圧縮比を増大させる場合の圧縮比変更可能量が小さくなる程度が最も大きくなる。
そこで、本実施形態では、図43に示したような関係を予め求め、燃料カット制御中には、図18に示した回転角度及び機関負荷に基づく圧縮比変更可能量の予測値の算出を行わずに、図43に示したような関係に基づいて回転角度に応じて圧縮比変更可能量の予測値の算出が行われる。特に、本実施形態では、図43に示した関係に基づいて算出された圧縮比変更可能量の予測値を、図42に示した関係により補正することによって最終的な圧縮比変更可能量の予測値を算出が行われる。
なお、上記実施形態では、燃料カット制御中においても、図21〜図36に示した例と同様に動作点を制御しており、これにより燃料カット制御中においても吸入空気量を迅速に要求吸入空気量に到達させることができると共に要求吸入空気量を満たす要求動作点動作点を迅速に到達させることができる。しかしながら、燃料カット制御中においては、燃焼室5内での混合気の燃焼が行われていないため、必ずしも吸入空気量を迅速に要求吸入空気量に到達させなくてもよい。したがって、燃料カット制御中においては例えば動作点が基準動作線W上を移動するように機械圧縮比及び吸気弁閉弁時期を制御するようにしてもよい。これにより、燃料カット制御から復帰したときには動作点は基準動作線W上に位置することになり、よって燃料カット制御からの復帰時に燃費の良い運転を行うことができる。
図44は圧縮比変更可能量の予測値を算出するためのルーチンを示すフローチャートである。図44に示したルーチンによって算出された圧縮比変更可能量の予測値は、図37に示したルーチンのステップ106及びステップ110において利用される。また、図44に示したルーチンは予め定められた一定時間(例えば、8msec)毎の割込みによって実行される。
まず、ステップ201において、現在、機械圧縮比の変更が行われているか否かが判別され、機械圧縮比の変更が行われていないときには圧縮比変更可能量の予測値を算出する必要がないため処理サイクルを完了する。これに対し、現在、機械圧縮比の変更が行われているときにはステップ202へと進む。ステップ202では、現在、燃料カット制御中であるか否かが判別され、燃料カット制御中ではないときにはステップ203へと進み、図17から図20に基づいて説明したようにして圧縮比変更可能量の予測値が算出される。
すなわち、ステップ203では、現在、機械圧縮比が減少されているか否かが判別され、減少されているときにはステップ204からステップ206によって基本予測値及び補正係数が算出される。具体的には、ステップ204では、図18にG1で示した関係に基づいて作成された図45(A)にG1’で示したようなマップを用いてカムシャフト54、55の回転角度に基づいて基本予測値Rbaseが算出される。ステップ205では、図17にF1で示した関係に基づいて作成された図45(B)にF1’で示したようなマップを用いて機関負荷に基づいて補正係数R1が算出される。ステップ206では、図19に示した関係に基づいて作成された図45(C)に示したマップを用いて機関負荷/動作速度に基づいて補正係数R2が算出される。
一方、ステップ203において機械圧縮比が増大されていると判定されたときには、ステップ207からステップ209によって基本予測値及び補正係数が算出される。具体的には、ステップ207では、図18にG2で示した関係に基づいて作成された図45(A)にG2’で示したようなマップを用いてカムシャフト54、55の回転角度に基づいて基本予測値Rbaseが算出される。ステップ208では、図17にF2で示した関係に基づいて作成された図45(B)にF2’で示したようなマップを用いて機関負荷に基づいて補正係数R1が算出される。ステップ209では、図19に示した関係に基づいて作成された図45(C)に示したマップを用いて機関負荷/動作速度に基づいて補正係数R2が算出される。
一方、ステップ202において、燃料カット制御中であると判定されたときには、ステップ210へと進み、図41から図43に基づいて説明したようにして圧縮比変更可能量の予測値が算出される。
すなわち、ステップ210では、現在、機械圧縮比が減少されているか否かが判別され、減少されているときにはステップ211からステップ213によって基本予測値及び補正係数が算出される。具体的には、ステップ211では、図43にK1で示した関係に基づいて作成された図46(A)にK1’で示したようなマップを用いてカムシャフト54、55の回転角度に基づいて基本予測値Rbaseが算出される。ステップ212では、図42(A)に示した関係に基づいて作成された図46(B)に示したようなマップを用いて機関負荷に基づいて補正係数R1が算出される。ステップ213では、燃焼室5内で混合気の燃焼が行われていないときには、境界潤滑になるほど可変圧縮比機構Aの軸受に負荷がかからないことから、補正係数R2が1とされる。
一方、ステップ210において機械圧縮比が増大されていると判定されたときには、ステップ214からステップ216によって基本予測値及び補正係数が算出される。具体的には、ステップ214では、図43にK2で示した関係に基づいて作成された図46(A)にK2’で示したようなマップを用いてカムシャフト54、55の回転角度に基づいて基本予測値Rbaseが算出される。ステップ215では、図42(B)に示した関係に基づいて作成された図46(C)に示したようなマップを用いて機関負荷に基づいて補正係数R1が算出される。ステップ216では、ステップ213と同様に補正係数R2が1とされる。
このように基本予測値及び補正係数が算出された後にはステップ217において、ステップ204等で算出された基本予測値Rbaseにステップ205等で算出された補正係数R1及びステップ206等で算出された補正係数R2を乗算することにより、圧縮比変更可能量の予測値Rが算出される(R=Rbase・R1・R2)。
なお、図44に示したルーチンでは図20に示した関係に基づく補正を行っていないが、図44に示したルーチンによって算出された圧縮比変更可能量の予測値を図20に示した関係に基づいてさらに補正するようにしてもよい。
1 クランクケース
2 シリンダブロック
3 シリンダヘッド
4 ピストン
5 燃焼室
7 吸気弁
17 スロットル弁
A 可変圧縮比機構
B 可変バルブタイミング機構
2 シリンダブロック
3 シリンダヘッド
4 ピストン
5 燃焼室
7 吸気弁
17 スロットル弁
A 可変圧縮比機構
B 可変バルブタイミング機構
Claims (7)
- 機械圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構と、吸気弁の閉弁時期を制御可能な可変バルブタイミング機構とを具備し、
機関運転状態毎に機械圧縮比と吸気弁閉弁時期との組合せを示す動作点が到達すべき要求動作点を設定し、機関運転状態が変化したときに機械圧縮比と吸気弁閉弁時期との組合せを示す動作点が変化後の機関運転状態に対して設定された要求動作点に向けて変化するように一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量及び一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量に基づいて一定時間毎に目標動作点を算出し、機械圧縮比及び吸気弁閉弁時期を該目標動作点に向けて変化させる、火花点火式内燃機関において、
燃料噴射弁からの燃料供給を停止する燃料カット制御中には上記一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量を現在の吸入空気量及び現在の実圧縮比のうち少なくともいずれか一方に応じて変えるようにした、火花点火式内燃機関。 - 上記一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量は、機械圧縮比を高くするときには現在の吸入空気量が多いほど小さくされ、機械圧縮比を低くするときには現在の吸入空気量が多いほど大きくされる、請求項1に記載の火花点火式内燃機関。
- 上記一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量は、機械圧縮比を高くするときには現在の実圧縮比が高いほど小さくされ、機械圧縮比を低くするときには現在の実圧縮比が高いほど大きくされる、請求項1又は2に記載の火花点火式内燃機関。
- 機械圧縮比と吸気弁閉弁時期との組合せに対して侵入禁止領域が設定されており、上記目標動作点は、機関運転状態が変化したときに機械圧縮比と吸気弁閉弁時期との組合せを示す動作点が変化後の機関運転状態に対して設定された要求動作点に向けて上記侵入禁止領域に侵入することなく変化するように一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量及び一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量に基づいて算出される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の火花点火式内燃機関。
- 上記目標動作点は、現在の動作点又は前回の目標動作点から一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量及び一定時間に変更可能な吸気弁閉弁時期の予測量以内に位置する動作点のうち上記侵入禁止領域に侵入しない範囲で現在の動作点から最も離れた動作点とされる、請求項4に記載の火花点火式内燃機関。
- 上記燃料カット制御が行われていない通常運転中には、上記一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量を機関負荷に応じて変えるようにした、請求項1〜5のいずれか1項に記載の火花点火式内燃機関。
- 上記可変圧縮比機構は回転するカムを用いたクランク機構によりクランクケースとシリンダブロック間の相対位置を変化させて機械圧縮比を変化させ、上記一定時間に変更可能な機械圧縮比の予測量を上記カムの回転角度に応じて変えるようにした、請求項1〜6のいずれか1項に記載の火花点火式内燃機関。
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