JP5396628B2 - 潤滑油組成物 - Google Patents

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本発明は、潤滑油組成物、特に低トラクション潤滑油組成物および潤滑油組成物のトラクション係数の低減方法に関するものであり、さらに、詳しくは、転がり軸受、歯車、カム等をはじめとする自動車用歯車および工業用歯車の歯車機構の潤滑に用いられる潤滑油組成物に関するものである。
近年、地球温暖化対策が不可欠な状況下において、車両、その他の駆動系動力機関の環境保全対策として燃費節減効果の大きい環境対応型潤滑油の開発が強く要求されている。
かかる要求に対し、潤滑油による駆動系機械要素のエネルギー損失低減方法としては、潤滑油の低粘度化による撹拌抵抗の低減が図られてきており、また、摩擦調整剤の配合による金属間接触部位の摩擦低減化も行なわれている。
さらに、低トラクション化による弾性流体潤滑(Elastohydrodynamic lubrication、EHL)の潤滑部位におけるエネルギーの損失低減が有効な手段とされている。トラクションは、転がり接触面に挟まれた油膜に作用するせん断力に対する潤滑油自体の抵抗であるから、かかる抵抗を制御できれば、EHLの潤滑部位におけるエネルギー損失も抑制可能と推定される。
かかるEHLの潤滑部位でのエネルギー損失の低減による環境対応型潤滑油の前記の開発状況下にあって、低トラクションの潤滑油として、例えば、先行技術1(US2006/0178279A1(以下「特許文献1」という))には、基油とトラクション低減材料との組合せにより調製された低トラクション潤滑油が開示されている。該特許文献1には、トラクション低減材料として低粘度の合成潤滑油基油と1価の脂肪酸エステルが記載されており、トラクション係数の低下効果が得られることは記載されている。
しかし、前記特許文献1に記載の潤滑油組成物には低粘度成分、すなわち、低分子量の潤滑油基油が存在するため、歯車機構等の高温条件下で使用する潤滑油に要求される十分高い引火点(例えば170℃以上)を得ることができない、という難点が包蔵されている。
また、エステルと高粘度の基油からなる潤滑油はすでに知られているが、従来の製品に含有されているエステルは、多塩基酸、または多価アルコールを原料として製造されるジエステルおよびトリエステルが主要なものであり、かかるエステルのトラクション係数は、それぞれ0.035および0.04の高レベルであり、これらを用いたのでは低トラクション潤滑油を得ることができない。例えば、先行技術2(米国特許第4956122号明細書(以下、「特許文献2」という。)には、(a)100℃動粘度が40〜100cStのポリアルファオレフィン、(b)100℃動粘度が1〜10cStのポリアルファオレフィン、(c)実質的に2価の脂肪酸エステル、および(d)添加剤パッケージからなる潤滑油組成物が開示されているが、かかる潤滑油組成物は、粘度の低い、低分子量のポリアルファオレフィンを含有しているため、高い引火点は得られない。
また、先行技術3(特開昭63−139150号公報(以下、「特許文献4」という。)にはエステル化合物潤滑剤として、R1−Cb−R2(Cbは−O−CO−または−CO−O−のモノカルボキシル基)のR1がC4−C10第三級アルキル基、R2がC1−C20アルキル基またはC2−C20アルケニル基であるモノエステルが記載されている。
しかし、トラクション係数および引火点のいずれについても些かの開示もなく、また、示唆もない。
前記の如く、従来、低トラクション化による環境対応型潤滑油についてはほとんど提案されておらず、わずかに前記の特許文献1で提案されているが、そこで開示されている低トラクションを示す潤滑油基油は、引火点が低く、駆動油として、使用する場合に、特に高温条件下においては、実用上難点があり、使用に耐え得る低トラクション特性、かつ高引火点を有する潤滑油は開示されている状況にはなかった。

米国公開第2006/0178279号 米国特許第4956122号明細書 特開昭63−139150号公報
従って、本発明の課題の第1は、前記の如き従前の低トラクション潤滑油の開発状況に鑑み、溶剤精製または水素化処理等による精製鉱油およびポリアルファオレフィン(以下「PAO」ということがある。)およびエチレンアルファオレフィン共重合体(以下「EAO」ということがある。)等の炭化水素系合成油のトラクション係数と比較してさらに低いトラクション係数を発現し、かつ引火点の高い潤滑油組成物を提供することにある。
また、課題の第2は、潤滑油基油として用いられるPAOまたはEAO等の炭化水素系合成油からなる潤滑油組成物のトラクション係数の低減方法を提供することにある。
課題の第3は、PAOおよびEAO等の炭化水素系合成油を用いて高引火点かつ低トラクション係数を有する潤滑油組成物の製造方法を提供することにある。
また、課題の第4は、自動車用歯車または工業用歯車の潤滑においてエネルギー損失の抑制可能な歯車装置の潤滑方法を提供することにある。
そこで、本発明者らは、前記の本発明の課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、前記ジエステルおよびトリエステルでは、低トラクション係数が得られない理由は、かかる化合物の構造的な障害が大きいことによるのではないかとの推定に基き、ジエステルおよびトリエステルに比較して構造的な障害が少ないと予測されるモノエステルに着目し、多数の実験を繰り返し、さらに検討を重ねた結果、モノエステルのトラクション係数はジエステルまたはトリエステルに比較して小さく、しかも炭化水素基の炭素数が特定範囲にあるモノエステルはトラクション係数が低く、かつ、引火点が高いことを見出し、これらの知見に基いて本発明を想到するに至った。
かくして、本発明によれば、
下記の成分Aおよび成分Bを含有する潤滑油組成物であって、
前記成分Aが、次の一般式(1);

(式中、R1およびR2は、それぞれ炭化水素基であり、互いに同一でも、または異なるものでもよく、R1およびR2の炭素数の合計が13〜28である。)
で表される少なくとも一種のモノエステルであり、
前記成分Bが、100℃における動粘度が20〜3000mm2/sの少なくとも一種の炭化水素系合成油であり、
前記成分Aおよび前記成分Bの合計含有量全重量基準で、
前記成分Aの含有量が1〜99重量%であり、前記成分Bの含有量が99〜1重量%であって、
前記潤滑油組成物の引火点が170℃以上に制御されたことを特徴とする潤滑油組成物が提供される。
また、本発明によれば、
100℃における動粘度が20〜3000mm2/sであって、170℃以上の引火点を有する炭化水素系合成油からなる潤滑油組成物に対して、 一般式(1);

(式中、R1およびR2は、それぞれ炭化水素基であり、互いに同一でも、または異なるものでもよく、R1およびR2の炭素数の合計が13〜28である。)
で表される少なくとも一種のモノエステルを前記炭化水素系合成油のトラクション係数にとって有効量混合することを特徴とする炭化水素系合成油からなる潤滑油組成物のトラクション係数の低減方法が提供される。
さらに、本発明によれば、
下記の成分Aおよび成分Bを含有する潤滑油組成物であって、
前記成分Aが、次の一般式(1);

(式中、R1およびR2は、それぞれ炭化水素基であり、互いに同一でも、または異なるものでもよく、R1およびR2の炭素数の合計が13〜28である。)
で表される少なくとも一種のモノエステルであり、
前記成分Bが、100℃における動粘度が20〜3000mm2/sの少なくとも一種の炭化水素系合成油であり、
前記成分Aおよび前記成分Bの合計含有量全重量基準で、
前記成分Aの含有量が1〜99重量%であり、前記成分Bの含有量が99〜1重量%であって、
前記潤滑油組成物の引火点が170℃以上に制御された潤滑油組成物を自動車用歯車または工業用歯車の潤滑に用いることを特徴とする歯車機構の潤滑方法が提供される。
本発明によれば、モノエステルおよび炭化水素系合成油からなり、さらに、必要に応じて配合された少なくとも一種の添加剤からなる潤滑油組成物が提供され、
また、炭化水素系合成油からなる潤滑油組成物にモノエステルを混合することにより、引火点のレベルの維持のもとにおける潤滑油組成物のトラクション係数の低減方法が提供され、
さらに、前記潤滑油組成物を用いる歯車装置の潤滑方法が提供されるが、さらに好ましい実施の態様として次に掲げるものを包含する。
なお、本明細書において、便宜上、モノエステルの炭化水素基R1の炭素数をX,R2の炭素数をYと表示することがある。
1)前記モノエステルおよび炭化水素系合成油が潤滑油基油である前記潤滑油組成物。
2)前記モノエステルの合計炭素数(X+Y)が14〜25である前記潤滑油組成物。
3)前記モノエステルの合計炭素数(X+Y)が14〜25であり、かつYが1〜10で ある前記潤滑油組成物。
4)前記炭化水素系合成油が、100℃における動粘度20〜2000mm2/sのポリ アルファオレフィンである前記潤滑油組成物。
5)前記炭化水素系合成油が、100℃における動粘度20〜2000mm2/sのエチレン−アルファオレフィン共重合体である前記潤滑油組成物 。
6)前記ポリアルファオレフィンの100℃における動粘度が、40〜1000mm2/sである前記潤滑油組成物。
7)前記エチレン−ポリアルファオレフィン共重合体の100℃における動粘度が40〜2000mm2/sである前記潤滑油組成物。
8)前記合計炭素数(X+Y)が14〜25のモノエステルと100℃における動粘度20〜2000mm2/sのポリアルファオレフィンとからなる前記潤滑油組成物。
9)前記合計炭素数(X+Y)が14〜25のモノエステルと100℃における動粘度20〜2000mm2/sのエチレン−アルファオレフィン共重合体とからなる前記潤滑油組成物。
10)0.023を超えるトラクション係数を有する炭化水素系合成油からなる潤滑油組成物に対して、合計炭素数(X+Y)が14〜25のモノエステルを混合し、前記トラクション係数を0.023以下に低下させることからなる前記潤滑油組成物のトラクション係数の低減方法。
11) 100℃における動粘度が40〜2000mm2/sであって、170℃以上の引火点および0.023を超えるトラクション係数を有する炭化水素系合成油からなる潤滑油組成物に合計炭素数(X+Y)が14〜25のモノエステルを混合し、引火点170℃以上でトラクション係数を0.023以下に低下させることからなる前記潤滑油組成物のトラクション係数の低減方法。
12) 前記炭化水素系合成油からなる潤滑油組成物が、100℃における動粘度が40〜1000mm2/sのポリアルファオレフィンまたは100℃における動粘度が40〜2000mm2/sのエチレン−アルファオレフィン共重合体である前記潤滑油組成物のトラクション係数の低減方法。
13) 前記トラクション係数の測定の条件が、周速度;3.1m/sec平均ヘルツ圧;0.7GPa および油温;40℃である前記潤滑油組成物のトラクション係数の低減方法。
14) 前記自動車用歯車が、マニュアルトランスミッション(MT)、マニュアルトランスアクスル(MTX)、終減速機デフの内部要素である歯車機構の潤滑方法。
本発明に係る潤滑油組成物は、前記の如く、特定の成分Aおよび特定の成分Bからなり、または少なくとも一種の潤滑油用添加剤が配合されてなる場合、次の(1)および(2)の二律相反の性能を同時に満たすことができる、という著しく顕著な効果を奏する。
(1)鉱油およびPAO、EAO等の炭化水素系合成油等のトラクション係数に比較してさらに低いトラクション係数を発現する。
(2)潤滑油組成物の引火点が170℃以上である。

また、かかる低トラクション潤滑油組成物は、自動車用ギヤ油として、手動変速機(マニュアルトランスミッション(MT)、マニュアルトランスアクスル(MTX)、終減速機(デフ)において、円滑な作動に寄与することができ、また、省エネルギー型の工業用ギヤ油として、例えば、鉱鋼および金属工場の圧延設備の駆動関係においても効率よく用いることができる。
本発明によれば、トラクション係数が0.023を超えるポリアルファオレフィンまたはエチレン−アルファオレフィン共重合体等の炭化水素系合成油に、前記の特定のモノエステルを混合することにより、炭化水素系合成油のトラクション係数を著しく低減させることができる。
さらに、本発明によれば、特定の炭化水素系合成油と特定のモノエステルとを混合することにより、炭化水素系合成油単独、およびモノエステル単独のトラクション係数に比較してさらに低いトラクション係数を有し、かつ高い引火点を有する潤滑油組成物の簡便で効率的な製造方法を提供することができる。
以下、本発明に係る潤滑油組成物の構成要素について詳細に説明する。
1.成分A−モノエステル
本発明に係る潤滑油組成物の構成成分であるモノエステルは、一価カルボン酸と一価アルコールとから誘導されるエステルであり、次の一般式(1);

で表される化合物を包含する。
前記一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれ炭化水素基である。
1とR2の炭化水素基は互いに同一でも、または異なるものでもよい。
また、R1およびR2の各炭化水素基の炭素数の合計炭素数(X+Y)が13〜28であり、好ましくは14〜25、さらに好ましくは15〜25である。合計炭素数(X+Y)を13〜28に制御したモノエステルを潤滑油組成物の構成成分として使用することにより、トラクション係数を0.023以下かつ引火点を170℃以上に制御された潤滑油組成物を提供できるのに対し、合計炭素数(X+Y)が12以下では高い引火点が得られないという問題があり、一方、合計炭素数(X+Y)が29以上では融点が高く、固体になりやすいので実用に供することが困難であるという難点が包蔵されている。
1は炭化水素基であり、炭化水素基の炭素数(X)は1〜27であり、低トラクション係数を有し、かつ高引火点の潤滑油組成物を実現する観点から実施例にも示すように、好ましくは6〜20、さらに好ましくは7〜18、最も好ましくは7〜17である。
2は炭化水素基であり、その炭素数が1〜27であり、低トラクション係数および高引火点を実現する観点から好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜12、最も好ましくは1〜8である。
1とR2の炭化水素基としては、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、直鎖状または分岐状のいずれでもよい。また、飽和または不飽和炭化水素基のいずれでもよいが、R1およびR2の少なくとも一方が飽和で分岐のある脂肪族炭化水素基であることがさらに好ましい。
従って、一般式(1)において、R1およびR2の合計炭素数(X+Y)が13〜28のモノエステルは、R1が炭素数1〜27の脂肪族炭化水素基であり、R2が炭素数1〜27の脂肪酸炭化水素基である場合、例えば、下記記載の脂肪酸および脂肪族アルコールの群から選択して組み合せることにより合成することができる。
脂肪酸としては、エタン酸(酢酸)、プロパン酸(プロピオン酸)、ブタン酸(ブチル酸)、ペンタン酸(バレリアン酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸(エナント酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、デカン酸(カプリン酸)、ウンデカン酸(ウンデシル酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、トリデカン酸(トリデシル酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸(ペンタデシル酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸(ノナデシル酸)、イコサン酸(アラキジン酸)、ヘンイコサン酸、ドコサン酸(ベヘン酸)、トリコサン酸、テトラコサン酸(リグノセリン酸)、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸(セロチン酸)、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸(センタン酸)、ノナコサン酸、およびこれらの不飽和酸およびこれらの分岐酸を挙げることができる。

不飽和酸としては、例えば、以下に例示する群から選択することができる。
2−プロペン酸、2−ブテン酸、3−ブテン酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸、4−ペンテン酸、2−ヘキセン酸、3−ヘキセン酸、4−ヘキセン酸、5−ヘキセン酸、2−ヘプテン酸、5−ヘプテン酸、2−オクテン酸、3−オクテン酸、2−ノネン酸、3−ノネン酸、2−デセン酸、9−デセン酸、(カプロレイン酸)、9−ヘンデセン酸、2−ドデセン酸、2−トリデセン酸、4−テトラデセン酸、5−テトラデセン酸、9−テトラデセン酸、2−ペンタデセン酸、2−ヘキサデセン酸、7−ヘキサデセン酸、9−ヘキサデセン酸、2−ヘプタデセン酸、6−オクタデセン酸(cis)(ペトロセリン酸)、6−オクタデセン酸(trans)(ペトロセライジン酸)、9−オクタデセン酸(cis)(オレイン酸)、9−オクタデセン酸(trans)(エライジン酸)、11−オクタデセン酸、9−イコセン酸、11−ドコセン酸、15−テトラコセン酸、17−ヘキサコセン酸等およびこれらの直鎖不飽和酸に対応する分岐不飽和酸。

また、脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール(カプリリル)、1−ノナノール(ノニル)、1−デカノール(カプリル)、1−ウンデカノール、1−ドデカノール(ラウリル)、1−トリデカノール、1−テトラデカノール(ミリスチル)、1−ペンタデカノール、1−ヘキサデカノール(セチル)、1−ヘプタデカノール、1−オクタデカノール(ステアリル)、1−ノナデカノール、1−イコサノール(アラキニル)、1−ヘンイエサノール、1−ドコサノール、1−トリコサノール、1−テトラコサノール、1−ペンタコサノール、1−ヘキサコサノール、1−ヘプタコサノール、1−オクタコサノール、1−ノナコサノールおよびこれらの不飽和アルコールおよびこれらの分岐アルコールを挙げることができる。
成分Aとして好適なモノエステルは、前記の脂肪酸と脂肪族アルコールとのエステルのなかから選択されたR1の炭素数6〜17の脂肪酸とR2の炭素数1〜8の脂肪族アルコールとの組合せからなるモノエステルであり、具体的には、次に記載のものを示すことができる。
オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ペンチル、オレイン酸ヘキシル、オレイン酸ヘプチル、オレイン酸オクチル、カプリル酸オクチル、ペラルゴン酸オクチル、カプリン酸オクチル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸オクチル、ミリスチン酸プロピル、ミリスチン酸オクチル、パルミチン酸ブチル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチルおよびこれらのR1、R2の一方あるいは両方が分岐しているものを挙げることができる。
本発明に係る潤滑油組成物にとって、特に好適なモノエステルとしては、次に挙げるものを例示することができる。
カプリル酸2−エチルヘキシル (C7)COO(C8)(X+Y=15)
ペラルゴン酸2−エチルヘキシル (C8)COO(C8)(X+Y=16)
カプリン酸2−エチルヘキシル (C9)COO(C8)(X+Y=17)
ラウリン酸2−エチルヘキシル (C11)COO(C8)(X+Y=19)
ミリスチン酸2−エチルヘキシル (C13)COO(C8)(X+Y=21)
ミリスチン酸イソプロピル (C13)COO(C3)(X+Y=16)
パルミチン酸2−エチルヘキシル (C15)COO(C8)(X+Y=23)
オレイン酸メチル (C17)COO(C1)(X+Y=18)
オレイン酸イソブチル (C17)COO(C4)(X+Y=21)
ステアリン酸n−ブチル (C17)COO(C4)(X+Y=21)
ステアリン酸2−エチルヘキシル (C17)COO(C8)(X+Y=25)

最も好適なモノエステルは、合計炭素数15〜25のものであり、具体的には、ミリスチン酸−エチルヘキシル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸2−エチルヘキシルおよびオレイン酸イソブチル等を挙げることができる。
なお、前記のモノエステルは二種以上の混合物として使用することもでき、二種以上のエステルが混合物として用いられる場合、前記潤滑油組成物の説明において、一般式(1)のR1およびR2の炭素数は、各平均値を意味するものとする。
また、本発明に係る潤滑油組成物の成分Aの配合量は、成分Aと成分Bの合計含有量を1として、1〜99%、好ましくは5〜95%、さらに好ましい配合量は15〜95%である。

2.成分B−炭化水素系合成油
本発明に係る潤滑油組成物の基油の構成成分である炭化水素系合成油としては、次に挙げる炭化水素系重合体および炭化水素系共重合体の群より選択することができる。かかる重合体および共重合体は、後述するように低粘度から高粘度にわたる広範囲のものを含み、オリゴマー、コオリゴマーを選択することもできる。
(1)ポリアルファオレフィン(PAO);
炭化水素系合成油の具体例であるポリアルファオレフィンとしては、例えば、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)等およびこれらの混合物を挙げることができる。具体例としては、前記の1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数6〜12のアルファオレフィンの単独重合体または混合モノマーの共重合体を挙げることができ、100℃における動粘度として20〜2000mm2/s、特に20〜1000mm2/sのものを使用することができる。なお、かかるポリアルファオレフィンのオレフィンモノマーは、ここに記載のものに限定されるものではなく、通常、C4〜C10のアルファオレフィンを単独または混合したものが重合原料として用いられる。

(2)エチレン−アルファオレフィン共重合体(EAO)
エチレン−アルファオレフィン共重合体としては、例えば、エチレンと炭素数3〜20のアルファオレフィンとの共重合体、具体的には、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等のアルファオレフィンの一種または二種以上の混合物との液状共重合体を挙げることができる。
エチレンとアルファオレフィンとの液状共重合体としては、市場で提供される100℃動粘度が10mm2/s、20mm2/s、40mm2/s、100mm2/s、150mm2/s、600mm2/s、2000mm2/s等の粘度グレードのものを選択して使用することができる。かかる液状重合体は、数平均分子量(Mn)としては、650〜3600のものが好ましい。

本発明において、炭化水素系合成油の100℃における動粘度は20〜3000mm2/sであり、好ましくは25〜2500mm2/s、さらに好ましくは40〜2000mm2/sである。100℃動粘度が20mm2/sに達しないか、または、3000mm2/sを超えると、これを構成成分とする潤滑油組成物のトラクション係数が0.023を超えるので目的とする潤滑油組成物を提供することができない。
かかる成分Bの配合量は、前記成分Aと成分Bの合計含有量を1として、99〜1%、好ましくは95〜5%であり、さらに好ましい配合量は85〜5%である。

3.潤滑油用添加剤
本発明に係る潤滑油組成物には、用途により、要求される性能に応じて、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、酸化防止剤、金属清浄剤、無灰分散剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤、極圧剤、耐摩耗剤、油性剤、消泡剤、防錆剤、金属不活性化剤等からなる群より選択される少なくとも一種の潤滑油用添加剤を配合することができる。
具体的には、
酸化防止剤としては、一般にアルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネイト等の硫黄系酸化防止剤、ホスファイト等のリン系酸化防止剤、モリブデン系酸化防止剤、さらにジチオリン酸亜鉛等が挙げられ、特に、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤およびこれらの組合せが好ましく用いられる。これらは、通常0.04〜1重量%の割合で使用される。

金属清浄剤としては、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属サリシレート、アルカリ土類金属フェネートのいずれかまたはこれらの混合物が用いられる。アルカリ土類金属スルホネートは、長鎖アルキルベンゼン、アルキルナフタレン等のスルホン酸のアルカリ土類金属塩である。
アルカリ土類金属サリシレートは、アルキルサリチル酸または硫化アルキルサリチル酸のアルカリ土類金属塩である。
また、アルカリ土類金属フェネートは、アルキルフェノールまたは硫化アルキルフェノールのアルカリ土類金属塩である。
前記スルホネート、サリシレートおよびフェネートのアルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、バリウム等が挙げられる。また、これらのアルカリ土類金属塩は、中性塩または塩基性塩または過塩基性塩いずれでもよい。

無灰分散剤としては、コハク酸イミド、コハク酸アミド、ベンジルアミン、コハク酸エステル、コハク酸エステル−アミド等を含有する添加剤等が挙げられるが、コハク酸イミド系が好ましく用いられる。
前記の金属清浄剤と無灰分散剤を合計量として0.2〜10重量%の割合で使用される。
流動点降下剤としては、一般にエチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等が挙げられ、特に、ポリメタアクリレートが好ましく用いられる。これらは、通常0.02〜5重量%の割合で使用される。

粘度指数向上剤としては、一般にポリメタアクリレート、分散型ポリメタアクリレート、オレフィンコポリマー(ポリイソブチレン、エチレン−プロピレン共重合体)、分散型オレフィンコポリマー、ポリアルキルスチレン、スチレン−ブタジエン水添共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、星状イソプレン等が挙げられるが、オレフィンコポリマー(ポリイソブチレン、エチレン−プロピレン共重合体)が好ましく用いられる。特にポリイソブチレンやエチレン−プロピレン共重合体の分子量としては、重量平均分子量で10万以上(GPC分析においてポリスチレン換算量)のものが特に好ましく用いられる。分散型オレフィンコポリマーとは、分子中に酸素または窒素を含有しているものである。これらは、通常0.01〜30重量%の割合で使用される。

極圧剤としては、一般に無灰系サルファイド化合物、硫化油脂、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩等が挙げられる。

特に、歯車機構の潤滑に用いられる潤滑油組成物には、耐荷重能が要求されることから、硫黄系添加剤、例えば、炭化水素サルファイド化合物が用いられる。

摩耗防止剤としては、一般にジチオリン酸亜鉛、ジチオリン酸金属塩(Sb,Moなど)、ジチオカルバミン酸金属塩(Zn,Sb,Moなど)、ナフテン酸金属塩、脂肪酸金属塩、ホウ素化合物、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩、リン酸金属塩、リン酸エステル金属塩、亜リン酸エステル金属塩等が挙げられる。特にジアルキルジチオリン酸亜鉛が好ましい。極圧剤と摩耗防止剤と合せて1〜15重量%の割合で使用される。

消泡剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ポリアクリレート等が挙げられ、通常極く少量、例えば5〜100ppm程度添加される。

防錆剤としては、例えば、脂肪酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、脂肪酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アミン、酸化パラフィン、アルキルポリオキシエチレンエーテル等が挙げられ、これらは、通常0.05〜1重量%の割合で使用される。

金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、トリアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、チアジアゾール、チアジアゾール誘導体等が挙げられ、これらは0.02〜1重量%の割合で使用される。

添加剤全量の配合量は、潤滑油組成物全重量基準で50%以下、好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下に調整される。
また、前記の如き添加剤は、各種添加剤を組み合せた添加剤パッケージを使用することもできる。

4.潤滑油組成物
本発明に係る潤滑油組成物は、前記成分Aと前記成分Bとからなり、必要に応じて配合された少なくとも一種の潤滑油添加剤とからなるものである。添加剤としては潤滑油の用途に応じて構成された添加剤のパッケージを使用することができる。
潤滑油組成物の引火点は、170℃以上、好ましくは175℃以上である。
また、トラクション係数は0.023以下であり、好ましくは0.022以下である。さらに好ましくは0.020以下である。トラクション係数が0.023を超えるとギヤおよびベアリング等において抵抗が高くなり、エネルギー損失が大きくなり、燃費が低下するという問題が生じ、環境対応型潤滑油を提供することができない。

本発明に係る潤滑油組成物は、低トラクションで、高引火点の特性を有することから自動車の歯車機構、例えば、手動変速機(マニュアルトランスミッション、MT)、終減速機(ディファレンシャル、デフ)、ミッションとデフを一体化したマニュアルトランスアクスル(Manual Transaxle, MTX)等に用いることができ、MTのヘリカルギヤ、デフのハイポイドギヤの荷重のかかる潤滑においても、エネルギー損失を低減することができる。
40℃における動粘度(KV値(40))の範囲は、13〜200mm2/sであり、好ましくは15〜90mm2/sである。かかる動粘度が13mm2/sより低いと、油膜切れを起こすおそれがあるため、かかる潤滑油組成物は実用には供し得ない。

5.トラクション係数の低減方法
本発明に係る潤滑油組成物のトラクション係数の低減方法は、ポリアルファオレフィンまたはエチレン−アルファオレフィン共重合体からなる潤滑油組成物に、前記モノエステルを有効量混合することからなるものである。
前記ポリアルファオレフィンまたはエチレン−アルファオレフィン共重合体は100℃における動粘度が20〜3000mm2/sの範囲のものであり、好ましくは20〜2000mm2/s、さらに好ましくは40〜2000mm2/sのものである。
かかる炭化水素系合成油のトラクション係数は0.023を超えるものであるが、前記モノエステルの混合により引火点を170℃未満に低下させることなく、トラクション係数を0.023以下に低減させることができる。
潤滑油組成物のトラクション係数の低減方法に用いられる前記モノエステルとしては、合計炭素数(X+Y)が13〜28のものである。かかるモノエステルの混合における有効量は、1〜99重量%、好ましくは5〜95重量%、さらに好ましくは15〜95重量%の範囲で採用される。
本発明におけるトラクション係数の低減方法において100℃動粘度が100〜150mm2/sの炭化水素系合成油に合計炭素数(X+Y)が14〜25、さらに好ましくは18〜25のモノエステルを混合することが、潤滑油組成物のトラクション係数が炭化水素系合成油およびモノエステルの各々のトラクション係数よりも低下する点で特に好適である。
次に、本発明について、実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。もっとも本発明は、これらの実施例等により限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において用いた各潤滑油基油、添加剤、潤滑油組成物およびそれらの粘度性状および性能評価としてトラクション係数および引火点を下記記載の方法により測定した。
また、実施例、比較例において、「%」は重量%を示す。
1.潤滑油基油
(1)成分A−モノエステル
(3)成分C−ジエステル等


2.添加剤
市販ギヤ油用添加剤パッケージ
(1)市販MT油用添加剤パッケージ D1
(2)市販デフ油用添加剤パッケージ D2

3.評価方法
(1)最大トラクション係数の測定方法
四円筒型トラクション試験機を用いて次の条件で測定した。
周速度;3.1m/sec
平均ヘルツ圧;0.7GPa
油温 ;40℃
(2)引火点
ASTM D92準拠

実施例1
成分A(以下、「モノエステル」という。)として、表1に示す合計炭素数(X+Y)=16のミリスチン酸イソプロピルA149.2%と、成分B(以下、「炭化水素系合成油」という。)として、表2に示す選択したポリアルファオレフィンB250.8%の試作油を調製した。
各試作油の40℃動粘度が26.7mm2/sであり、トラクション係数;0.022、引火点;172℃の充足した結果を得た。

実施例2
実施例1と同様に、合計炭素数(X+Y)=16のミリスチン酸イソプロピルA1を使用し、実施例1で使用したポリアルファオレフィンB2の代わりにエチレン−アルファオレフィンコオリゴマーB10を使用し、表4に示す割合で試作油を調製した。
試作油の粘度性状および評価結果を表4に示す。

実施例3〜5
モノエステルとして、X+Y=16のミリスチン酸イソプロピルA1と、炭化水素系合成油として、選択したポリアルファオレフィンB2、ポリアルファオレフィンB3、エチレン−アルファオレフィンコオリゴマーB10とそれぞれ混合し、さらに添加剤パッケージD1を配合し、表4に示す割合の試作油を調製した。
各試作油の粘度性状および性能評価の結果を同表に示す。

実施例6〜9
モノエステルとして、X+Y=18のオレイン酸メチルA2を使用し、炭化水素系合成油として、ポリアルファオレフィンB2、ポリアルファオレフィンB4、ポリアルファオレフィンB6、エチレン−ポリアルファオレフィンコオリゴマーB10をそれぞれ使用し、表4に示す割合の試作油を調製した。
各試作油の粘度性状および性能評価の結果を同表に示す。

実施例10〜18
モノエステルとして、X+Y=18のオレイン酸メチルA2を、表4に示す割合で、炭化水素系合成油として、選択したポリアルファオレフィンB2、ポリアルファオレフィンB3、ポリアルファオレフィンB4、ポリアルファオレフィンB5、ポリアルファオレフィンB6、エチレン−アルファオレフィンコオリゴマーB7、エチレン−アルファオレフィンコオリゴマーB10とそれぞれ混合した後、添加剤パッケージD1を配合し、試作油を調製した。
なお、実施例14においては、添加剤パッケージD1の代わりに添加剤パッケージD2を使用した。
実施例19
モノエステルとして、X+Y=21のステアリン酸n−ブチルA3を、表4に示す割合で、炭化水素系合成油として、選択したポリアルファオレフィンB3を混合した後、これに添加剤パッケージD1を配合し、試作油を調製した。
試作油の粘度性状および性能評価の結果を同表に示す。

実施例20
モノエステルとして、X+Y=21のオレイン酸イソブチルA4を、表4に示す割合で、炭化水素系合成油として、選択したポリアルファオレフィンB3と混合した後、これに添加剤パッケージD1を配合し、試作油を調製した。
試作油の粘度性状、性能評価の結果を同表に示す。

実施例21
モノエステルとして、X+Y=23のステアリン酸2−エチルヘキシルA5を、表4に示す割合で、炭化水素系合成油として選択したポリアルファオレフィンB3と混合した後、添加剤パッケージD1を配合し、試作油を調製した。
試作油の粘度性状および性能評価の結果を同表に示す。

実施例22〜23
モノエステルとして、X+Y=25のステアリン酸2−エチルヘキシルA6を、表4に示す割合で、炭化水素系合成油として、選択したポリアルファオレフィンB2、エチレン−アルファオレフィンコオリゴマーB10とそれぞれ混合し、試作油を調製した。
各試作油の粘度性状および性能評価の結果を同表に示す。

実施例24〜26
モノエステルとして、X+Y=25のステアリン酸2−エチルヘキシルA6を、表1に示す割合で、炭化水素系合成油として、選択したポリアルファオレフィンB2,ポリアルファオレフィンB3,エチレン−アルファオレフィンコオリゴマーB10とそれぞれ混合した後、添加剤パッケージD1を配合し、試作油を調製した。
各試作油の粘度性状および性能評価の結果を同表に示す。

比較例1
モノエステルとして、X+Y=23のパルミチン酸2−エチルヘキシルA5のみからなる試作油を調製した。試作油を粘度性状の測定および性能評価に供したところ、表5に示す結果を得た。

比較例2
炭化水素系合成油として選択したポリアルファオレフィンB3のみからなる試作油を調製した。試作油を粘度性状の測定および性能評価に供したところ、表5に示す結果を得た。
比較例1のモノエステル、比較例2のポリアルファオレフィンのみではトラクション係数が高く、本発明の範囲を逸脱するものであった。
また、40℃動粘度が著しく大きいか、または著しく小さいものであった。

比較例3
モノエステルとして、X+Y=16のミリスチン酸イソプロピルA1を、表5に示す割合で、炭化水素系合成油として選択したポリアルファオレフィンB1と混合し、試作油を調製した。
試作油の粘度性状および性能評価の結果を表5に示す。前記モノエステルのX+Yが本発明の範囲内のものであっても、炭化水素系合成油が本発明の範囲を逸脱することにより、試作油の性能が著しく低下することが示されている。

比較例4
モノエステルとして、X+Y=12のラウリン酸メチルA7と、炭化水素系合成油として選択したポリアルファオレフィンB4を使用し、表5に示す割合の試作油を調製した。
試作油の粘度性状および性能評価の結果を表5に示す。表5によれば、試作油の40℃動粘度の低下はみられなかったが、トラクション係数が低下したものの引火点も低下した。

比較例5〜10
モノエステルとして、X+Y=12のラウリン酸メチルA7を、炭化水素系合成油として選択したポリアルファオレフィンB1,ポリアルファオレフィンB2,ポリアルファオレフィンB3,ポリアルファオレフィンB4,ポリアルファオレフィンB5,ポリアルファオレフィンB6と表5に示す割合で、それぞれ混合した後、添加剤パッケージD1を配合し、試作油を調製した。
各試作油の粘度性状および性能評価の結果を同表に示す。

比較例11
モノエステルとして、X+Y=25のステアリン酸2−エチルヘキシルA6に添加剤パッケージD1を配合し、試作油を調製した。
試作油の粘度性状および性能評価の結果を表5に示す。
モノエステル単独ではトラクション係数が高く、本発明の範囲を逸脱しているが、後述するように、炭化水素系合成油との混合による混合効果が顕著であり、混合用成分として有用である。

比較例12
ステアリン酸2−エチルヘキシルA6(X+Y=25)を、表5に示す割合で、ポリアルファオレフィンB1と混合した後、添加剤パッケージD1を配合し、試作油を調製した。
試作油の粘度性状および性能評価の結果を表5に示す。

比較例13
表5に示すように、炭化水素系合成油として選択したポリアルファオレフィンB1に添加剤パッケージD1を配合して試作油を調製した。
試作油の粘度性状および性能評価の結果を同表に示す。

比較例14
モノエステルとして、X+Y=29のステアリン酸n−ドシデルA8を、表5に示す割合で、炭化水素系合成油として選択したポリアルファオレフィンB3と混合した後、添加剤パッケージD1を配合したが、ステアリン酸n−ドシデルA8が、X+Y=29では固体状態となり、分離してしまい、潤滑油として使用することができなかった。

比較例15〜16
表5で示すように、成分Aのモノエステルと成分Bの炭化水素系合成油と成分Cの100℃動粘度2mm2/sのポリアルファオレフィンとの三成分(比較例15)または成分Aのモノエステルと成分Cの100℃動粘度2mm2/sのポリアルファオレフィンとの二成分(比較例16)の混合油に、それぞれ添加剤パッケージD1を配合して試作油を調製した。

比較例17
表5で示すように、ポリアルファオレフィンB2とアジピン酸ジイソデシルC2の混合油に、添加剤パッケージD1を配合して試作油を調製した。
試作油の粘度性状および性能評価の結果を同表に示す。

比較例15〜17により得られた試作油の性能評価の結果、前記低粘度のポリアルファオレフィンを含有する三成分系では引火点が低下し、また、モノエステルと前記低粘度のポリアルファオレフィンとでは40℃動粘度が低下し、本発明の目的とする潤滑油としての機能を欠如することがわかった。
さらに、ジエステルはトラクション係数を著しく上昇させることが示されている。

これらの結果から、成分Aとしてモノエステル、成分Bとしてポリアルファオレフィンまたはエチレン−アルファオレフィンからなる炭化水素系 合成油を用いることにより調製した潤滑油組成物についてトラクション係数0.023以下、引火点170℃以上を性能基準として観察すると、次の事実が判明し、本発明の特異性が明らかになった。
1.合計炭素数(X+Y)が13〜28の範囲内にあるモノエステルを100℃動粘度が20〜2000mm2/sの範囲内のポリアルファオレフィンまたはエチレン−アルファオレフィンコオリゴマーと組み合せることにより低トラクション係数を有し、かつ高引火点の潤滑油組成物を提供することができる(実施例1〜26)。
2.前記合計炭素数(X+Y)が21と25の13〜28の範囲内にある2種のモノエステルを100℃動粘度が100mm2/sのポリアルファオレフィンとそれぞれ混合することにより得られた混合油のトラクション係数は、該混合油を構成する前記モノエステル、または前記ポリアルファオレフィンのいずれのトラクション係数に比較しても低くなる、という次の結果が示された。
トラクション係数 引火点(℃) KV40(mm 2 /s)
比較例11;ステアリン酸2-エチルヘキシルA6 0.024 226 12.2
比較例2 ;ホリアルファオレフィンB3 0.025 296 1292
実施例25 A6/B3 0.020 230 28.0

比較例1 ;パルミチン酸2-エチルヘキシルA5 0.027 211 8.4
比較例2 ;ポリアルファオレフィンB3 0.025 296 1292
実施例21 A5/B3 0.021 216 27.7

3.前記合計炭素数(X+Y)が13〜28の範囲内にあるモノエステルであっても、100℃動粘度が20mm2/s未満のポリアルファオレフィンと組み合せた場合、トラクション係数はほとんど低下せず、また、低下しても相乗的な効果は見られない、という結果が得られた(比較例11〜13)。
例えば、合計炭素数(X+Y=25)のモノエステルと100℃における動粘度が6mm2/sのポリアルファオレフィンとの混合油が次に示すように、トラクション係数の低減において混合効果が得られなかった。

トラクション係数 引火点(℃) KV40(mm 2 /s)
比較例11;ステアリン酸2-エチルヘキシルA6 0.024 226 12.2
比較例13;ポリアルファオレフィンB1 0.027 244 34.6
比較例12 A6/B1 0.025 256 27.5

4.前記合計炭素数(X+Y)が13に達しないモノエステルは、炭化水素系合成油の粘度の如何に拘らず、トラクション係数と引火点の両者またはいずれかを満たすことができない(比較例4〜10)。
5.DIDAで代表するジエステルを用い、ポリアルファオレフィンと混合した場合、モノエステルを用いた場合とは異なり、前記第2項で示したような混合効果はなく、ポリアルファオレフィンとの混合油は、トラクション係数が著しく高く、本発明が目的とする低トラクション/高引火点の潤滑油組成物を実現することができなかった。(比較例17)。かかる結果からも特定のモノエステルが特異性を有することが鮮明になった。

Claims (9)

  1. 下記の成分Aおよび成分Bを含有する潤滑油組成物であって、
    前記成分Aが、次の一般式(1);
    (式中、R1およびR2は、それぞれ脂肪族炭化水素基であり、互いに同一でも、または異なるものでもよく、R1の炭素数が11〜18であり、かつR1およびR2の炭素数の合計が13〜28である。)
    で表される少なくとも一種のモノエステルであり、
    前記成分Bが、100℃における動粘度が20〜3000mm2/sの少なくとも一種の炭化水素系合成油であり、
    前記成分Aおよび前記成分Bの合計含有量の全重量基準で、
    前記成分Aの含有量が1〜99重量%であり、前記成分Bの含有量が99〜1重量%であって、
    前記潤滑油組成物の引火点が170℃以上に制御されたことを特徴とする潤滑油組成物。
  2. 前記成分Aの一般式(1)において、R1の炭素数が13〜17であり、かつR1およびR2の炭素数の合計が16〜25である請求項1に記載の潤滑油組成物。
  3. 前記成分Aの一般式(1)において、R1およびR2の炭素数の合計が13〜28であり、かつR2の炭素数が2〜17である請求項1に記載の潤滑油組成物。
  4. 前記成分Aの一般式(1)において、R1およびR2の炭素数の合計が13〜28であり、かつR2の炭素数が2〜12である請求項3に記載の潤滑油組成物。
  5. 前記成分Aが、ラウリン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸メチル、ステアリン酸n−ブチル、およびステアリン酸2−エチルヘキシルからなる群より選択される少なくとも一種のモノエステルである請求項1に記載の潤滑油組成物。
  6. さらに、少なくとも一種の添加剤が配合されてなる請求項1に記載の潤滑油組成物。
  7. 前記成分Aおよび前記成分Bを含有する潤滑油組成物であって、トラクション係数が0.023以下であり、かつ引火点が170℃以上に制御された請求項1に記載の潤滑油組成物。
  8. 100℃における動粘度が20〜3000mm2/sであって、170℃以上の引火点を有する炭化水素系合成油からなる潤滑油組成物に対して一般式(1);
    (式中、R1およびR2は、それぞれ脂肪族炭化水素基であり、互いに同一でも、または異なるものでもよく、R1の炭素数が11〜18であり、かつR1およびR2の炭素数の合計が13〜28である。)
    で表される少なくとも一種のモノエステルを、前記潤滑油組成物のトラクション係数の低下にとって有効量の範囲で混合することを特徴とする、炭化水素系合成油からなる潤滑油組成物のトラクション係数の低減方法。
  9. 請求項1ないし7のいずれか一項の潤滑油組成物を自動車用歯車または工業用歯車の潤滑に用いることを特徴とする歯車機構の潤滑方法。
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